道なき道

  • 2020.08.05 Wednesday
  • 12:00

JUGEMテーマ:

憧れて 憧れ続けて

 

永遠に立てない舞台を遠目に見る

 

そこに立つ資格はなんだろう

 

才能は 必要な能力は

 

どこにも道しるべはなく

 

舞台で輝く人たちの結果だけを見ている

 

今日も遠巻きに 眩い憧れを目に映す

不思議探偵誌〜探偵危機一髪〜 第九話 苦い思い出

  • 2020.08.04 Tuesday
  • 12:44

JUGEMテーマ:自作小説

陽の当たらない山の中というのは昼間でも不気味だ。
周りを高い木々に囲まれ、セミの合唱のせいで方向感覚さえ狂い、風に揺れる葉音が不穏を掻き立てる。
なによりここまで登るのに疲れる。
寂れた神社の奥、獣道の山道を歩くこと一時間。
俺の足はとっくに悲鳴を上げているのに、どう願っても目的地の方からはこっちへ近づいてはくれない。
ゼエゼエ、ハアハアと息を切らし、パンク寸前の肺と格闘するしかなかった。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。」
膝をついて肩を揺らす。
由香里君が「大丈夫ですか?」と顔を覗き込んできた。
「汗だくになってますよ。」
「夏に・・・山なんか登るもんじゃないな・・・・。」
「たしかに暑いですよね。でもずっと日陰だったからそこまででもないような。」
「君はいいさ・・・・日々空手で鍛えているんだから・・・・。こっちは運動不足のオジサンだってのに・・・・。」
「だったらいい加減タバコをやめたらいいのに。これを機会に健康を目指して禁煙アンド運動しましょ。」
そう言ってビシっと正拳突きを繰り出し、「一緒に空手やりますか?」と笑う。
「気持ちだけもらっておくよ・・・・。」
ゴロっと地面に寝転がる。
落ち葉は湿っていて、なかなか冷たくて気持ちいい。
目を閉じて耳を澄ましていると、滝の音が聴こえる。
この音だけは涼やかで心地いい。
こうまで暑いと、いっそのこと滝壺に飛び込んでやろうかという気分になる。
「探偵さん、起きた方がいいよ。」
姫月さんが言う。
「すみません・・・依頼者をほっといて寝転がるのはカッコ悪いですね・・・・。」
「そうじゃなくてさ。」
ガシっと俺の腕を掴み、「これ」と何かを指さした。
「これって・・・どれ?」
「だからこれ。蛭に吸われてる。」
腕を見ると五箇所もヤマビルが付いていた。
シャクトリムシみたいにウネウネ動きながら俺の腕に・・・・。
「勘弁してくれ!」
慌てて振り落とす。
「あ、首にも・・・・。」
由香里君が若干引き気味に言う。
「首のどこ!」
「後ろです。」
「・・・ああ〜クソ!見えん!悪いが取ってくれないか?」
「無理です!私そういうの苦手だから・・・・。」
サっと後ずさり、「私は大丈夫かな・・・・?」と自分の心配をしていた。
「俺だって苦手だぞこんなもん。」
取りたいのに取れないでいると、「じっとしてて」と姫月さんが払ってくれた。
「はい、これで全部取れた。」
「申し訳ない・・・依頼者にヒルなど取らせてしまって。」
「ここで育ったんだもん、慣れてるわ。」
そう言って周囲を見上げ、「久しぶりだ」と表情を曇らせた。
「一番来たくない場所なんだけど、そうも言ってられない。ここならあの子が・・・・恋花が現れるかもしれない。」
姫月さんは滝の音がする方へゆっくりと足を進めていく。
この先は崖になっていて、低いながらも水量の多い滝があるのだ。
そして崖のすぐ傍には『祠』がある。
そう大きな物ではない。
高さが膝下くらい。
横幅もそれより少し小さいくらいだ。
重々しい石造りで、正面は観音開きの扉になっている。
南京錠が付けられているが、ボロボロに錆びて鍵としての機能は失っているだろう。
手前にはワンコップ関脇が供えられているが、これもかなり昔の物だ。
つまりここへ来る人はほとんどないということになる。
姫月さんは膝をつき、祠に手を伸ばす。
「子供の頃ってさ、根拠のない噂っていうか、迷信みたいのが流行るじゃない?」
背中を向けたまま語りかける。
「私が中学生の頃さ、ある噂が流行ったんだよね。ケセランパサランって知ってる?」
俺は「ええ」と頷く。
由香里君も「聞いたことあります」と言った。
「綿毛みたいなふわふわしたヤツですよね。たくさん集めると願いが叶うっていう。」
「由香里ちゃんが子供の頃にも流行ってた?」
「漫画で見たことがあります。あとはコックリさんとか、トイレの花子さんとか。」
「やっぱりいつの時代でもそういうのあるんだね。」
振り返り、クスっと微笑む。すぐに祠に視線を戻し、「私の中学校ではさ」と続けた。
「ケセランパサランがものすごく流行ってたわ。捕まえたとかいう子もいたけど、絶対に見せてくれなかったり、どっかに逃げちゃったとか言い訳したり。」
「子供あるあるですね。」
由香里君もクスっと笑みを返す。
「今思えばさ、あんなの可愛い迷信よね。でも当時の私は信じてた。もう14なのにさ、ちっちゃい子供みたいに本気で信じてたのよ。なんでか分かる?」
その問いに俺たちは答えられない。
事情を知っているからこそ、迂闊に言葉には出せない。
「恋花はさ、私と瓜二つの双子なんだけど、性格はぜんぜん違ったわ。私はいつでもしかめっ面で人付き合いは不器用だった。親にもよく反抗したわ。
でも恋花はなんていうか・・・・立ち回りが上手いっていうかさ。もちろん悪い子じゃないよ。根はすごく優しくて良い子だった。
けど頭が良いっていうか、自分にとって得なこと損なことをちゃんと理解してる感じだった。
だから友達も多かったし、男子にもよくモテた。学校の先生にもすごく気に入られて。でも一番あの子を可愛がってたのは両親よ。」
一息にそう言ったあと「羨ましかった」と呟いた。
「私だって恋花みたいになりたかった。だって双子だからさ、よく比べられるのよ。恋花ちゃんは愛嬌があって可愛いけど、愛子ちゃんはイマイチねって。
あちこちで陰口を叩かれたわ。耳に入ると傷つくからさ、余計に人を寄せ付けないオーラを出すようになっちゃって。」
「それは・・・・辛いですね。」
由香里君はなんとも言えない表情で相槌を打つ。
俺に目配せをしてくるので、《黙って聞いてた方がいい》と視線を返した。
「でも性格を変えるなんてそう簡単に出来ることじゃない。だからケセランパサランが欲しかった。
たくさん集めてお願いすれば、私だって恋花みたいになれるかもしれないって・・・・そう思ったのよ。」
堅い話は空気まで堅くさせる。。
こういう時、周囲の音がよく響くものだ。
セミがうるさい。揺れる葉音が耳をつく。
滝の音さえもう涼しいとは感じられなかった。
・・・・カチャカチャと金属音がする。
姫月さんが祠の南京錠を取り外しているのだ。
錆びた鉄の塊が土の上に落ちる。
祠には申し訳程度の小さな取っ手が付いていて、姫月さんは「おりゃ!」と力を込めて観音開きの扉を開いた。
「・・・・・・・・。」
俺と由香里君は扉の奥を覗き込む。
・・・・そこには何もなかった。
小さな虫が一匹這い出てきただけで、特別な物が封印されているわけでもなければ、特別な何かが起きるわけでもない。
ただ扉が開いたというだけである。
普通なら御神体でも納まっていそうなものだが、それさえもない。
由香里君は「姫月さんの言ってた通り・・・・」と呟く。
「ほんとに何もないんですね。」
「そうよ。何もない。けど昔の私は信じてた。ここを開けばたくさんのケセランパサランが飛び出してくるって。」
「流行ってたんですね、そういう噂が。」
「今思うと馬鹿みたいでしょ。でもその時は信じて疑わなかった。だからここへ来たのよ。妹と一緒に。」
扉を閉め、南京錠を元に戻す。
「あの子は信じてなかったわ。そんなのウソに決まってるって。どっちかというとさ、あの子の方が現実主義者だった。
私は雰囲気こそ堅い現実主義者っぽく見られるんだけど、実はこういうの信じちゃう方なのよね。
この世にはきっと不思議なことがあるって。科学だけじゃ説明できない神秘的なことがあるんだって。」
俺には分かる。姫月さんの気持ちが。
なぜなら俺は本物の超能力者だからだ。
まあ彼女は信じていないが。
「そんな噂を信じるなんて馬鹿らしいから、山に行くのはやめようって恋花は嫌がってたわ。でも私は無理矢理連れて来た。なんでか分かる?」
問われた由香里君は「ええっと・・・」と困りながら、《久能さんお願い!》と目配せをしてくる。
「・・・・言っていいんですか?」
答えは知っている。
すでに彼女から聞いた話なのだ。
だが口にするにはデリケートな問題だ。本人を前にとなれば許可がいる。
姫月さんは無言のまま表情を柔らかくする。
俺はYESと受け取り、「彼女が拒否すればあなたもここへ来ることが出来ないからです」と答えた。
「たしかに貴女には妹さんがいた。しかし他の姉妹とは一つだけ違う点がある。」
こういう時、わざとらしく間を溜めたくなる。
ひと呼吸置き、もったいぶって口にした。
「二人は一つの肉体を共有していた。貴女がここへ来るなら妹さんも一緒に行かざるをえない。」
人の心に踏み込むのはとてつもなく気を遣う。
しかし自分が依頼者である以上、姫月さんは怒ることもなく「そうよ」と頷いた。
「私とあの子は同じ身体に入ってた。一心同体ならぬ二心同体ね。」
「しかしそれは・・・・、」
これは本人に言っていいのかどうか?
迷いはある。しかしここまで来たら尋ねずにはいられない。
「この秘密を知っているのは貴女だけだ。」
「ええ。」
「正直に言いましょう。俺はまだ信じられないでいる。」
「でしょうね。外からじゃ絶対に分からないから。」
「そうではなく、あなたが生を受けた時の話です。」
「生まれた時の?」
「違います。生を受けた時・・・・です。」

 

     *****

 

姫月さんは双子だ。
だが彼女の妹の存在を知っているのは姉だけである。
友人も学校の先生も、両親でさえも知らない。
その理由は何か?
なんと彼女は胎児の頃の記憶があるという。
母親のお腹にいる時、実はもう一つ命が宿っていたというのだ。
同じ細胞を持った一卵性双生児。
しかしそれは姫月さんがまだ人の形へ育つ前の段階である。
受精した一つの卵子が分裂を始め、すぐに二つの命へと別れた。
数日の間は仲良く育っていたという。
しかしある時、何が原因か定かではないが、姫月さんの細胞分裂が止まってしまった。
このままでは外の世界を知る前に天国へ召されることになる・・・・はずだった。
『大丈夫。私がいる。』
この世から消えてしまいそうになった時、恋花さんはそう言った。
なんと分裂の止まった姉の細胞を吸い込み、一つの身体に二つの魂を宿したのだという。
『私たちは元々一つ。この身体は二人の物よ。』
こうして姫月さんは命を取り留めた。
以来、二人はずっと一緒だった。
なにせ肉体が一つなのだ。どこへ行くのも何をするのも一緒だった。
今日はお姉ちゃんが身体を使っていいよとか、じゃあ明日は恋花が使っていいよとか、仲良く順番に肉体の所有権を譲り合っていた。
なんとも変わった双子の姉妹だが、二人は幸せだったという。
本当に仲が良いので、いつでも一緒というのは楽しくもあるし、寂しささえ感じることはなかった。
彼女たちには孤独という言葉は無縁だった。
しかし大人に成長するにつれ、だんだんと姉と妹に違いが現れる。
いくら一卵性双生児とはいえ、何もかもが同じというわけではない。
例え肉体が一つであっても、魂と精神は別人なのである。
まず性格が違った。
恋花さんは愛想が良く、細かい気遣いでも出来、しかも要領がいい。
おのずと人から好かれる。
頭も良く、自分を客観視するのが得意だった。
これは自分にとってプラス、こっちはマイナス、そういう具合に冷静に判断できる器量があった。
姉は正反対だった。
決して人間嫌いなわけではないが、人に愛想良くするのは苦手だった。
気遣いも出来ないわけではないが、コミュニケーションが不器用なので空回りすることを恐れ、下手に誰かと関わろうとはしない。
そして一つの事に集中するタイプであるがゆえに、要領の良さというのはなかった。
型にハマれば大きな力を発揮するが、そうでない場合はむしろ人の足を引っ張ることが多かったという。
頭は妹とは別の意味で良かった。
勉強は出来た。記憶力も良かった。
時間を掛けてもいいのなら、同級生も誰も解けないような難しい計算だってこなした。
別にどちらが上だとか下だとか、優れているとか劣っているわけではない。
双子といえども別人である以上、得手不得手に差が出るのは自然なことだ。
しかし他人の目にどう映るかとなると話は変わってくる。
恋花さんが肉体を動かしている時、気遣いと愛想の良い誰からも好かれる人となる。
しかし姫月さんが動かしている時、傍目には人を寄せ付けない近寄りがたい人となる。
同じ人物なのにこの振り幅。
周りの人たちはさぞ混乱しただろうと思うのだが、姫月さん曰くそうでもなかったらしい。
『一つの身体に二つの魂って言うと信じてもらえないけどさ、一つの脳に二つの人格って説明すると、そういう事もあるのかって感じで納得してくれたんだよね。』
なるほどと思った。
一人の人間が複数の人格を持つというのは有名な話である。
ちなみに多重人格という事にしておこうと考えたのも妹さんだ。
姫月さんの言う通り賢い人だ。
つまり周りの人たちも姫月さんと恋花さんは別人であるという認識だったのだ。
そして妹さんは誰からも好かれ、お姉さんは陰口を叩かれて疎まれた。
成長するにしたがって周囲からの評価は露骨な差が生まれた。
果たしてずっと仲良くしていられるだろうか?
答えはNOだった。
姫月さんは妹に嫉妬を抱き始めたのだ。
一度芽生え始めた後ろ向きな気持ち。
それは日に日に強くなっていく。
残念ながらマイナスな感情ほど燃え上がるのは早いもので、気づけば妹を憎んでさえいた。
しかしその憎しみをギリギリの所で抑え込んでいた出来事がある。
かつて命を助けてもらったことだ。
放っておいたら確実に天国へ旅立っていた。
そうならずにすんだのは妹のおかげだし、そもそもこの肉体だって妹の物である。
だから憎しみを向けるなんて筋違いだと、どうにか自分を抑えていた。
いたのだが、だからといって辛さが消えるわけではない。
いったどうすれば悩みは解決するのか?
なにか不思議な出来事でも起きない限りは・・・・。
そう思っていたところにケセランパサランの流行がやってきた。
フワフワした綿毛のような生き物をたくさん集めれば、どんな願いも叶えてくれる。
姫月さんは思った。
ケセランパサランにお願いして、妹のように社交的で明るい性格にしてもらおうと。
そしてもし出来ることなら、自分だけの肉体が欲しいと。
絵が得意だった姫月さんは自分なりに想像してケセランパサランを描いた。
大きな画用紙いっぱいに。
それを壁に貼り付け、いつか必ず見つけてみせると願掛けをしたのだった。
するとタイミングよくこんな噂が流行るようになった。
『滝の傍にある祠の中にいっぱいケセランパサランがいるらしいよ。』
同級生がそんな話をしているのを耳にした。
無論単なる噂である。出処さえハッキリしない。
しかし噂とはそういうものだし、姫月さんにとってはこの上なく有難い情報だった。
『きっと願掛けが効いたんだ!』
密かに喜んだ。
そして家に帰ると恋花さんに相談した。
『今度の日曜にさ、山の祠へ行ってみようよ。たくさんケセランパサランがいるって。』
しかし夢見がちな姫月さんと違い、妹さんは現実的である。
『そんなのただの噂でしょ』と一蹴した。
『そもそもケセランパサランなんて本当にいるかどうかも怪しいし。』
『いるよせったい!』
『私たちもう中学生だよ?そんなの信じてどうするの。』
『だってなんでも科学で解明できるわけじゃない。』
一つの肉体に二つの魂。
科学で説明の付かないことがここにあると反論する姫月さんだったが、『それとこれとは別だよ』と相手にしてもらえなかった。
『どう別?一緒でしょ。』
『じゃあ聞くけど、なんでそこまでケセランパサランが欲しいの?』
『それは・・・・、』
理由を話そうとして躊躇った。
妹に嫉妬しているから・・・・この肉体を出ていって自分だけの肉体が欲しいから・・・・。
面と向かって言うことは難しかった。
だが恋花さんは『知ってるよ』と笑った。
『私の性格が羨ましいから。それと自分だけの身体が欲しいから。』
『ちょっと!勝手に人の心を読まないって約束でしょ!』
肉体が同じならば脳も同じ。
互いの思考や記憶を読むことは簡単なのだが、双子ともいえどもプライバシーがある。
それだけは絶対にやめようと約束していたのに、胸の内を見透かされて恥ずかしいやら腹立たしいやらで、つい感情的になってしまった。
『なんでそういう事するのよ!』
『だってずっと悩んでるみたいだったから。心配になってつい。』
『だからって約束を破っていいわけじゃない!』
『ごめん。そんなに怒らないでよ。』
『怒るよ!だって恋花には私の気持ちは分からない!どこ行ったって一緒だから、いつだって比べられる!
恋花ちゃんは愛嬌があって良い子なのに、愛子ちゃんは無愛想で可愛げがないって。ずっとだよ!ずっと比べられる!』
『愛子が悩んでたのは知ってたよ。けど聞き出せなかった。私のことで悩んでるんだから、私じゃ相談相手になれないと思ったから。
でもずっと心配だった。だから約束を破ってごめん。傷つけるつもりはなかった・・・・、』
『そうじゃない!恋花に相談できなかったのは、恋花のおかげで私が生きてるから。
どこ行ったって比べられるなら、私は私の身体が欲しいと思った。自分だけの身体さえあれば、こんなに辛い思いせずに済むって。
でもそんなの言えない!恋花のおかげでこうして生きてるのに・・・・それが迷惑だみたいに聞こえるんじゃないかって思って・・・・。』
『思わないよそんなこと。』
『思うよ!きっと私のこと嫌いになる!それでもし・・・・この身体から出て行けなんて言われたら・・・・、』
恋花さんと話し合ううちに、ふと本心に気づいてしまった。
もしもこの身体から出ていけと言われたら、それはこの世にいられなくなることを意味する。
しかしこうして生きている。
そしてこの世に生まれてきたからには、自分だけの人生が欲しいと思い始めていたのだ。
つまるところ、妹への嫉妬はケセランパサランが欲しい本当の理由ではなかったのだ。
もちろん羨ましい気持ちはある。
こんなに誰からも好かれたら楽しいだろうと。
だがケセランパサランを集めてまで叶えたい願いかといえば、そうでもなかった。
たくさん友達が欲しいとか、先生や周りの大人に良く思われたいとか、なにより両親からの愛情を独り占めしたいとか、実の所は言い訳であると気づいてしまった。
ケセランパサランが欲しいのはもっとももっと単純な理由。
死なずに生まれてきた時、それだけで幸せだった。
だが生きているうちに、大人に近づくうちに、単に生きているだけで幸せとは思えなくなったのだ。
『私には私の人生があって、いつだって恋花と一緒は嫌だ!』
命の恩人である妹への本音。
命の恩人であるからこそ言い出せない本音でもある。
だからあれやこれやと理由を付けて、ケセランパサランを望んでいただけだったのだ。
・・・姫月さんはかつてお姉さんにこう説明した。
妹を死なせてしまったことを後悔している。
しかしそれ以上に後悔しているのは、憎んでいたはずの両親の愛情を独り占めしたいが為に、妹を見殺しにしたことだと。
だから自己嫌悪に陥っているのだと。
だがそれは嘘だった。
適当に取り繕った言い訳だった。
本音など語ってしまえば、お姉さんからも嫌われるかもしれない。
私という人間をワガママでカッコ悪いと思われたくなかった。
妹に生かしてもらったくせに、その妹を鬱陶しいと感じるなんて何様だと。
そう思われることは姫月さんのプライドが許さなかった。
だからもっともらしい嘘で誤魔化したのだった。
実際は両親を憎んでなどいないし、人並みに愛情ももらっていた。
たしかに妹はよく可愛がられたが、だからといって自分が可愛がられなかったわけではない。
もっと言うなら、そんなにたくさんの友達が欲しいとは思わないし、周りの大人から良く思われたところで嬉しくもなかった。
じゃあなぜ自分は自分だけの肉体が欲しいのか?
この世に生まれたなら、一人の人間として生きたかった。
それに気づいてしまった時、これ以上同じ肉体ではいられないと決心した。
『恋花、一生のお願い。山の祠に行こう。その日は私に身体を譲ってほしい。』
『でも先週の日曜も愛子だった。今週は・・・・、』
『分かってる!でも上手くいけば日曜ごとにどっちが身体を使うかなんて決める必要もなくなるよ。』
『・・・・さっきこう言ったね?私には私の人生があるから、恋花とずっと一緒はイヤだって。』
『ごめん・・・。でもそれは恋花が嫌いとかじゃないよ。そういう意味じゃないから。』
謝る姫月さんに、恋花さんは何の言葉も返さなかった。
しばらく黙っていて、やがて『わかった』と頷いた。
『そこまで言うなら行くよ。』
こうして二人は山の祠へ向かうことになった。
日曜、朝早くに家を出た。
親には高台に行くとウソをついた。
というのもあの祠へは行くなと強く言われていたからだ。
寂れた神社から一時間も獣道を進んだ先にあり、周りは鬱蒼としていつでも薄暗い。
近くには崖があり、水量の多い滝もある。
なによりほとんど人が来ない。
もし事故や怪我を負ったりしたら事である。
だから高台へ行くとウソをついた。
自転車を漕ぎ、神社を目指し、水とパンとタオルが詰まったリュックを背負い、険しい獣道を登っていった。
季節は夏だった。
なんども蜘蛛の巣が顔に引っかかった。
汗が目に入って染みたり、喉が乾いてすぐに水を飲み干してしまったりと、かなかな大変な道のりだった。
それでもどうにか頑張ってたどり着いた。
目的の祠を前に緊張する姫月さんだったが、ここで一つ問題が発生した。
祠の扉に鍵が掛かっていたのである。
以前に一度だけここへ来たことがある。
父が渓流釣りをするというので、一緒に連れてきてもらったのだ。
三年前の話である。その頃は鍵など無かった。
『なんで鍵なんかあるんだろう?』
呟く姫月さんに、『きっとケセランパサランのせいだよ』と恋花さんが言った。
『私たち以外にもここへ来た人がいるんだろうね。噂を信じてさ。でも祠の扉なんて勝手に開けたらダメだから、誰かが鍵を掛けたんだと思う。』
『だとしたらさ!やっぱりケセランパサランは本当にいるってことだよね?』
『どうして?』
『だって開けて確かめた人がいるから噂になったんだよ。きっといるよ!』
興奮気味に言ったものの、鍵を開ける術はない。
恋花さんは『諦めよう』と諭した。
『鍵がないなら無理だよ。勝手に開けたら誰かに怒られるかもしれないし。』
『平気だって。どうせ誰も見てないし、そんなに丈夫な鍵じゃなさそうだし。』
姫月さんは少し大きめの石を拾い、『これで壊せないかな』と鍵に叩きつけた。
ガツンガツンと硬い音が響く。
グラグラと祠が揺れる。
『ちょっと!やめなって。』
『待って。なんとか壊せるかも。』
古い祠である。
鍵は無理でも、鍵が付いている取っ手の部分が外れそうになっていた。
『あとちょっと。』
すでに外れかけている。
石を振り上げ、渾身の一撃を叩き込むと、鈍い音がして取っ手が地面に落ちていった。
『やった!これで開けられる!』
念願のケセランパサランが手に入る。
そうすれば自分だけの肉体も・・・・。
ドキドキとワクワクと、ほんの少しの不安に満たされていると、次なる問題に気づいてしまった。
『どうやって開けよう・・・・。』
取っ手を外したものだから、扉を引くことが出来なかった。
小さいとはいえ石造りである。
掴む場所がなければそう簡単には開けられない。
恋花さんは『だから言ったでしょ』と諌めた。
『もう諦めよ。どっか別の所に遊びに行こうよ。』
『ううん、まだなんとかなるよ。』
手で開けるのが無理なら、衝撃を与えれば開くかも。
そう思った姫月さんは思い切り祠を蹴り飛ばした。
『ちょ、ちょっと!なにしてんの!』
『倒せば勢いで開くかなって。』
『ほんとにもうやめなって!祠ごと壊れたらヤバイよ!誰かが通報とかしたらお父さんとお母さんにもここへ来たことがバレるよ。』
『その時はその時でしょ。』
もはや姫月さんは止まらない。
ガツガツと蹴りまくっていると、祠は根元から傾き始めた。
しかしなかなか倒れてくれない。
そこで助走をつけることにした。
距離と取り、走って蹴る。
直撃したキックは祠を大きく傾かせた。
『愛子!もうやめよ。こんな事したらバチ当たるって。』
『そういうの信じてないんじゃなかったっけ?』
『だってこんなのやり過ぎだよ!』
『心配しないで。あと一発でいけそうだから。』
今度はより強く蹴ってやろうと、さっきよりも距離を取る。
だがこれがいけなかった。
後ろを向いたまま距離を取ったものだから、崖に近づいていることに気づかなかったのだ。
『愛子!』
『平気だって。これで終わりだから。』
『そうじゃないって!後ろ危ない・・・・、』
警告した時には遅かった。
姫月さんの足は崖の向こう側を踏もうとしていた。
だが何もない場所を踏めるはずがなく、悲鳴を上げる間もなく崖下に落ちていく。
そう高い崖ではない。そして下は深い滝壺だ。
彼女は水に落ちていく。
おかげで衝撃は大したことはなかったが、この日一番の問題が起きてしまう。
姫月さん、カナヅチなのである。
足が届かない深さの水、そして落下のショックも相まってパニックになる。
手足をばたつかせ、必死に顔を浮かせようとするも、口の中には水が入ってくる。
『愛子!代わって!!』
恋花さんが強引に身体の支配を奪い取る。
姫月さんの意識はパニックを起こしながらブラックアウトした。
・・・・次に目を空けた時、祠のすぐ傍に倒れていた。
しかも身体の支配が自分に戻っている。
『・・・どういうこと?』
溺れていたはずなのにここにいる。それは嬉しいことだが状況が飲み込めない。
『恋花!あれからどうなったの?私の代わりにここまで登って来たの?』
尋ねるが返事がない。
『ねえ恋花!』
何度呼びかけても無駄だった。
そしてすぐに恐ろしいことに気づく。
なんと自分の中から妹の気配が消えていたのだ。
『・・・・・・・。』
呆然としながら立ち上がる。
崖に向かい、滝壺を覗き込むと、信じられないものが目に映った。
『恋花・・・・。』
自分とまったく同じ姿をした少女が滝壺に浮かんでいた。
『恋花!』
大声で呼ぶとうっすらと目を開けた。
そしてボソボソと何かを呟いてから、ゆっくりと水に沈み始めた。
『・・・・・・・。』
とにかく妹を助けなければいけない。だがどうして自分の目に彼女が映っているのか分からない。
いや、今はそんなことはどうでもいい。早く助けないとと思うが、カナヅチの自分がいったところで二人して溺れるだけである。
助けを呼ぼうにもあいにく深い山の中。この時代はケータイもない。
『恋花がいなくなる・・・・死んじゃう・・・・。』
怖かった。吐きそうなほどに。
と同時に、ほんの少しでもこんな事を考えてしまった。
この身体はもう私だけのもの・・・・。
ふとそう思ってから、凄まじい自己嫌悪に囚われた。
『違う!こんなの私は望んでいない!!』
だんだんと滝壺に沈んでいく妹。
姫月さんは目の前の光景を直視できず、後ろへ視線を逃がす。
すると奇妙な物が目に飛び込んできた。
『なんで・・・・?』
祠が倒れていたのだ。
扉は開き、中には何もない。
さっきまでは傾きながらもまだ立っていた。もちろん扉も閉まったままだ。
『恋花がやったの・・・・?』
恐怖を堪え、もう一度滝壺を覗き込む。
そこにはもう妹の姿はなかった。

夜の夜明け

  • 2020.08.04 Tuesday
  • 11:47

JUGEMテーマ:

夜が夜に見えなくなった

 

光はなくても

 

自由と希望と解放に満ち

 

足元が暗くても

 

星月が程よく空を照らしてくれる

 

日暮れこそ夜明け

 

真っ暗な一日の半分に感謝する

怒ったハチ

  • 2020.08.03 Monday
  • 11:48

JUGEMテーマ:

長く伸びた草地の上

 

二匹の大きなベッコウハチが踊っている

 

興味を引かれて近づくと

 

怒ったのか猛突進してきて

 

しばらく追いかけられる

 

離れた場所から眺めていると

 

楽しそうに 嬉しそうに踊り続けている

 

虫も人と同じく

 

水を差されることは腹立たしいようで

 

邪魔して悪かったと

 

頭を下げて場を後にする

本番

  • 2020.08.02 Sunday
  • 12:25

JUGEMテーマ:写真

 

 

 

 

 

本格的に暑くなってきました。

 

 

 

 

 

 

 

稲もかなり大きく育っています。

セミもヒグラシからツクツクホーシからアブラゼミからたくさんの声が聴こえます。

セミの声、陰影の濃い緑。

これから夏本番ですね。

 

今日はお休みです

  • 2020.08.01 Saturday
  • 08:36

今日はお休みです。

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    手招き

    • 2020.07.31 Friday
    • 13:43

    JUGEMテーマ:

    暗い波音の向こう

     

    灯台の光がやたらと目立つ

     

    あの光を見ている人は他にもいるだろうか

     

    とうに日は暮れた

     

    セミの声も トンビの声も聴こえない

     

    夜に瞬く小さな光は

     

    どこかへ誘う妖しい手招きに見えた

    少しの後悔

    • 2020.07.30 Thursday
    • 13:39

    JUGEMテーマ:

    安いお菓子を買う

     

    見たこともない新製品で

     

    サクサクした食感と

     

    中身のチョコレートクリームが美味しい

     

    膝の上に食べかすが散らばる

     

    口の中には甘味が残り

     

    手には空になった袋だけ

     

    もう一つ欲しくなる

     

    店から出る時 一つどころか三つ握っていた

     

    食べ終え 腹の肉を掴み

     

    少し後悔する

    不思議探偵誌〜探偵危機一髪〜 第八話 憂鬱な依頼

    • 2020.07.30 Thursday
    • 12:32

    JUGEMテーマ:自作小説

    「高木様ならもうチェックアウトされましたが。」
    お姉さんが泊まっている旅館、訪ねてみるとフロントでそう言われた。
    「いつですか!」
    由香里君が身を乗り出す。
    女将さんは「ええっと・・・」と上目遣いに記憶を探った。
    「たしか昨日の夜だったと思います。」
    「何時頃ですか?」
    「かなり遅い時間でしたねえ。たしか12時を回ったくらいに。」
    「そんな夜中に・・・。」
    「本当は明日の朝までのご予約だったんですけど、お連れの方が迎えに来られたようで。」
    「連れ?」
    由香里君が俺を振り返る。
    俺は姫月さんを振り返る。
    三人で目を合わせ、しばらく沈黙がおりた。
    「どんな人でした?」
    姫月さんが尋ねる。
    女将さんは「あなたによく似た方でしたよ」と答えた。
    「ていうかあなた、高木様とご一緒に泊まられていた方ですよね?」
    「そうです。」
    「でもって一昨日に先にチェックアウトなされた。」
    「ちょっと急用が出来たもので。」
    「ということは、高木様を迎えに来られたのはあなたじゃないんですか?」
    「・・・どういうことですか?」
    「だって本当にそっくりだから。先に帰られたお連れ様が迎えに来られたのかなって思ってたんですけど・・・・違うんですか?」
    「もしそうならここへ来ていませんよ。」
    「ですよねえ・・・・。でも本当にそっくりだったんですよ。あれがあなたじゃないって言うなら、まるで双子みたいに。」
    「・・・・・。」
    「でも雰囲気はかなり違ってたかも。男物のスーツを着ていたし、髪もオールバックだったし。だけど顔はほんとにそっくりでした。」
    一人で頷きながら「もしかして一卵性双生児?」と興味津々に目を輝かせた。
    姫月さんは口を開きかけたが、すぐに目を逸らして返事を放棄した。
    代わりに俺が答える。
    「まあ世の中にはそっくりさんが三人はいるって言いますから。そのうちの一人だったんでしょう。」
    「それにしたってあまりにそっくりというか・・・・、」
    「偶然でしょう。それより女将さん、高木さんはどこへ行くとか言ってませんでしたか?」
    「さあ?チェックアウトされたお客様の行き先はちょっと。」
    困ったように首を傾げる。
    そもそもチェックアウトした時点で客ではなくなるから、行き先を知らなくても当然である。
    しかし俺は探偵である。
    些細な情報を収集してなんぼの商売だ。
    何か得られる可能性があるなら尋ねるのが筋というもの。
    「なんでもいいんです。思い当たるようなことは?」
    「そう言われましても・・・・。」
    「ほんの些細なことでもいいんです。」
    「些細な事と言っても・・・・というより、お客様の情報を安易に漏らすわけはいきませんから。最近はプライバシーの問題もありますし。」
    「ごもっともで。」
    「だいたいそちらのお連れの方・・・ええっと姫月様がいらっしゃるからこそ、ここまでお話したわけで。
    もしお連れの方がいらっしゃらなかったら、いくら探偵さんでもお客様の個人的なことはお話しませんよ。」
    「それもごもっとも。ごもっともなんですが、もう少し融通を利かせて頂けるとありがたい。何か細かいことでもいいので教えてもらえませんか?」
    女将さんは口を結んで困っている。
    俺は「どうかこの通り」と手を合わせた。
    すると眉間に皺を寄せながらも、「少々お待ちを」と内線の受話器を取った。
    「ああ、もしもし私だけど。釘田さんって高木様のお部屋を担当してたわよね?チャックアウトされた後にどこへ行くか仰ってなかった?
    ・・・・はいはい、あらそうなの?へえ、うん。あらそう。まあ!・・・・ほう〜!」
    コクコクと相槌を打ち、「うんうん、ありがとう」と受話器を置く。
    「どうでした?何か分かりましたか?」
    「いえなにも。」
    「は?」
    「なにも知らないって。」
    「いやでもめちゃくちゃ相槌打ってたじゃありませんか。」
    「ああ、あれ?ごめんなさい。途中から世間話に変わっちゃって。」
    《紛らわしいぞ!》
    イラっとするのを堪え、「女将さん自身は何かご存じありませんか?」と営業スマイルを保つ。
    「そうですねえ・・・・。」
    頬に手を当て、やや演技臭い表情で思い出そうとしている。
    待つこと10秒ほど、「そういえば」と手を打った。
    「懐かしい場所へ行くとかなんとか。」
    「懐かしい場所?」
    「お連れの方がそう呟いていたんです。宿から出て行かれる時に。」
    「連れの人がそう言っていたんですね?」
    「ええ。ほんの小さな声だったから、もしかしたら聞き間違えかもしれませんけど・・・・たしかにそう聞こえました。」
    「ありがとうございます。」
    これ以上ここで聞けることはないだろう。
    俺たちは宿を後にし、自分たちが泊まっている旅館へと戻った。
    三人でテーブルを囲み、茶柱の立ったお茶をすする。
    「まさかチェックアウトしていたとはな。」
    「しかも連れが迎えに来たって言ってましたよね。」
    「ああ。それも姫月さんにそっくりな人が。」
    「お母さん、大丈夫かな・・・・。」
    心配そうな顔で呟く。
    「ねえ久能さん。これってもしかして・・・・、」
    「妹よ。」
    姫月さんが言う。
    「あの子やっぱり成仏なんかしてないんだわ。」
    「ただのそっくりさん・・・・とは考えられないですかね?」
    由香里君が尋ねると、「あの女将さんの話を聞いたでしょ」と首を振った。
    「男物のスーツにオールバック。そして私とそっくり。妹しかいないわ。」
    「ということは・・・、」
    由香里君は窓を振り返り、「久能さんが見たっていう、窓の外に立ってた男の人って・・・・、」
    「かもしれない。」
    「だとしたら、どうしてここへ来たんですかね?まさか姫月さんに会いに?」
    そう言って彼女に視線をやると、「違うわ」と言った。
    「あの子が会いに来るはずがない。私を憎んでるはずだから。」
    「そうとは限らないじゃないですか。昔は仲良しだったんでしょ。だったら・・・・、」
    「いくら仲良しだからって、私だけが生き残ったのよ。あの子はきっと恨んでる。」
    呟く姫月さんの表情は頑なで、「私が・・・・」と声を絞り出す。
    「私が殺したも同然だから。」
    「そんなこと・・・・、」
    「いいのよ慰めは。」
    どんな言葉も受け付けない。
    俯いたまま湯呑に目を落とすだけで、顔さえ見ようとしなかった。
    由香里君は俺に目配せをする。
    俺は頷きを返した。
    「姫月さん。さっきの女将さんが言っていた、連れの人が呟いたという『懐かしい場所』というのは、例の『祠』のことなんじゃありませんか?」
    「かもね。」
    「あなたが由佳子お姉さんの前から姿を消したのは、その祠に行く為だったと言いましたね?」
    「そうよ。あそこに行けば会えるかもと思ったから。」
    「しかし妹さんは現れなかった。かといってお姉さんのいる宿へ戻るわけにもいかない。黙って姿を消した手前、合わせる顔がなかったから。」
    「この島に誘ったのは私なのよ。妹を見つけるのに手を貸してくれって。由佳子は家出までして協力してくれた。
    なのにあの子に黙ったまま宿を出て行ったんだから、戻れるはずないじゃない。」
    そう言って顔を上げ、「ごめんなさい」と由香里君に謝った。
    「お母さんをこんな事に付き合わせてしまって。あなたにまで迷惑を掛けたわね。」
    「いいんです、事情さえ分かれば。」
    ニコリと笑みを返す。
    そして「ちょっと整理しましょうか」とメモ帳とペンを取り出した。
    「一連の経緯を簡単にまとめてみます。その方が話もしやすいだろうし。」
    「うむ、さすがは由香里君。こりゃ本当に将来は所長になるかもしれないな。」
    「その時は久能さんが助手をやってくれるんですか?」
    「雇ってくれるなら。」
    「仕事中にエッチな本を読まないなら。」
    「再就職先を探す必要があるな。」
    「私も助手を探す必要があります。」
    「ふふ、冗談さ。」
    「私は本気です。」
    「へ?」
    「冗談です。」
    「どっちさ?」
    「さあ。」
    意地悪に微笑む。
    由香里君が楽しいならずっと続けたって構わないのだが、今は仕事中だ。
    「先に進めよう」と言ったら、「腰を折ったのは久能さんですよ?」と、なんとも言えない冷たい目を向けられた。
    これはこれで快感なのだが、「そりゃ失敬」と肩を竦めて返した。
    「ええっと、話を整理しますね。まずはお母さんが家を出てからのことを・・・・、」
    由香里君はペンを走らせる。
    俺も今までの流れを頭の中で思い描いた。


         *****


    由佳子お姉さんが家を出たのが一ヶ月前。
    そしてその原因はさらに一週間前に遡る。
    朝、いつものようにポストを確認すると、懐かしい友人から手紙が届いていた。
    『姫月愛子』
    名前を見ただけで鼓動が早くなった。
    30年も前に音信が途絶えた大親友からの知らせである。
    手が震えたとお姉さんは語っていた。
    いったいどんな内容なのか?
    単なる世間話でもあるまいし、封を切るには勇気が必要だった。
    そしてじっくりと手紙を読み終えた後、勇気をもって臨んで正解だったと頷いた。
    完結にまとめると内容はこうだ。
    『もしまだ私に友情を感じるなら助けてほしい。私一人じゃ妹を成仏させてあげられない。』
    30年ぶりの友の声は、お姉さんの気持ちを強く叩いた。
    一週間悩み続け、出した結論は友を助けにいくことだった。
    しかし詳しい内容は言えないので、あんな意味深な書置きを残して出て行ったのだ。
    お姉さんは最初、大阪へ飛んだ。
    姫月さんは会社を経営していて、そこそこ儲かっているらしく、なかなか立派なビルを建てていた。
    ロビーで待つ間、30年ぶりの再会を前に緊張した。
    いつもより唾を飲み込む回数が増えたと語っていた。
    膝の上で手を組み、俯き加減に目を落としていると、ふと人の気配を感じて顔を上げた。
    『久しぶり。変わってないからすぐ分かったよ。』
    『・・・・そっちこそ。』
    懐かしいような怖いような、嬉しいような不安なような、初めて会った時のような複雑な感情に包まれたという。
    『ちょっと外で話そうか。』
    昔とほとんど変わらないほどのスタイルの良さ、美しい顔、モデルのように颯爽と歩く姿。
    派手な柄のスーツを自然に着こなすセンスの良さ。
    お姉さんは高校時代にタイムスリップした気分になりながら、近くのカフェで話をした。
    それぞれの目の前にはアイスが置かれていて、『懐かしいね』と微笑んだ。
    『昔さ、アタリが出て次の日に二人で新しいのを貰いに行ったよね。』
    『そうそう。また出るかなって思ってたけど、そう甘くはなかったね。』
    『姫月さん、意地張って何本も買ってさ。でも当たらずじまいだった。』
    『二人じゃ食べきれないから、高台で遊んでた子供たちにあげたんだよね。』
    しばらく思い出話に花が咲く。
    楽しい時間だった。
    と同時に不安な時間でもあった。
    たしかに思い出話は楽しいが、その為に大阪に呼ばれたわけではない。
    いつ本題を切り出してくるのか?
    笑顔の奥で身構えていた。
    やがてアイスが無くなる頃、姫月さんは『あのさ・・・・』と急に声のトーンを変えた。
    お姉さんはまだ少し残っていたアイスをスプーンで掬っていたのだが、器に戻しながら背筋を伸ばした。
    『手紙・・・読んだよね?』
    『うん。』
    『だよね。だからこうして会いに来てくれたわけだし。』
    姫月さんは何かを言いたそうにしながら、遠慮がちに目を伏せた。
    空になった器をスプーンでつつきながら。コンコンと音が鳴る。
    それは緊張と不安のリズムだった。
    お姉さんは『なんでも言ってよ』とそのリズムを遮った。
    『30年ぶりだけどさ、私たち大親友じゃない。遠慮する仲じゃないでしょ?』
    『・・・あの子は・・・・、』
    『うん。』
    『まだ成仏してない。させてあげられてない。』
    『辛いね。』
    『そうだよ、きっと苦しんでる。』
    『違うよ。姫月さんが。』
    『私が?』
    『だって何十年も悩んだままだから。』
    『自業自得だから仕方ないよ。』
    『昔もそう言ってたよね。私が何度もそれは違うって言ったって、頑なに自分のせいだって聞かずに。』
    『じゃあ私以外に誰がいる?あの日、『祠』にあの子を誘ったのは私なのよ。しかも・・・・、』
    喉元で言葉がつかえ、それでも力を入れて絞り出した。
    『助けなかった。』
    『・・・・・・。』
    『怖かったからだけじゃない。・・・・ふと思っちゃったんだよ。この子がこのままいなくなればって・・・・、』
    両手で頭を抱え、『あんなに仲が良かったのに!』と声を荒げる。
    『ああいう状況になって頭に過ぎったのは、あの子を助けることじゃなかった。両親のことだった。
    このまま妹が・・・・恋花がいなくなれば・・・・親は私だけを見てくれるんじゃないかって・・・・。
    一番嫌ってたはずなのに・・・・親なんてこの世で一番嫌いだったのに・・・・。
    私は恋花より・・・・憎んでる親に好かれることを望んだ・・・・。こんなに悔しいことない!』
    あまりに大声で叫んだので、周りの客が何事かと好奇の目を向けた。
    しかしお姉さんは表情を変えずに『辛かったね』と慰めた。
    『姫月さんはもう充分苦しんだ。』
    『・・・・・・。』
    『だったらこれ以上苦しむ必要はない。と言っても聞き入れないんだろうけど。』
    『自分が許せない・・・・。これはあの子の為じゃない。妹を成仏させてあげたいなんて言い訳で、私が私を許せないだけなのよ。
    あの時、恋花より親に愛されることを選んだのは・・・・人生の一番の屈辱よ・・・・。だから・・・夢を叶えたって心の靄は晴れなかった。
    華やかな世界でスポットライトを浴びたって、憧れてた海外へ出たって、いつだって晴れやかな気分にはなれなかった・・・・。』
    姫月さんはずっと自分を責めていた。
    妹さんを亡くしてから40年、一日たりとも自分への後悔と叱責は忘れたことがない。
    しかしそんな辛い時間を少しだけ忘れられる時間があった。
    お姉さんと一緒に過ごした時間だ。
    『私さ、人と接するのが苦手なんだよね。ほんとは仲良くしたいと思っても、なんか怖がられたり取っ付きづらいと思われたり。
    そうやって他人と溝が出来ちゃうと、こっちまで人を敬遠するっていうか、寄せ付けないオーラを出すようになっちゃってさ。』
    『前にもそう言ってたね。これも悩みの一つだって。』
    『まあ仕方ないかなって。性格が不器用だからさ。でも由佳子の前だと苦手意識も感じなかった。』
    姫月さんがお姉さんに声を掛けたのは偶然だった。
    海の見える高台には姫月さんもよく行っており、最近ちょくちょく見慣れない子がいるので少し気になる程度だったそうだ。
    しかし高台へ来ては何かを悩むようにボーっと海を眺めているので、自分と重ねてしまった。
    胸につっかえた大きな悩み。
    もしかしたらこの子も私と同じような傷が・・・・。
    いったん気になり始めたら、どんどん話しかけたい衝動に駆られていった。
    しばらく離れた場所でウロウロしつつ、どう声を掛けようか考えていた。
    だが上手い言葉が思い浮かばず、こうなったら突撃しかないと迫っていったのだ。
    最初に出会った時、姫月さんがハンターのように怖い目をしていたのは緊張していたからなのだ。
    お姉さんはその視線に怯え、慌てて立ち去ろうとしたせいでカバンを忘れてしまった。
    それは姫月さんにとっては声を掛ける最高の出来事だった。
    以来、二人は親友としてなんでも話し合える仲になり、姫月さんにとっては唯一の幸せな時間であった。
    しかしだからといって妹さんのことが胸から消えるわけではなかった。
    日に日に気分は重くなり、島から離れる事を決意した。
    ・・・・それから数年後、ひょんな場所で再会を果たした。
    しばらく海外で暮らしていた姫月さんだったが、やはり妹さんの事が胸に残ったままだった。
    だから日本へ帰ってきた。
    桜が満開の季節だった。
    本当はすぐに島へ戻るはずだったが、なかなか向き合う勇気が出なかった。
    まったく違う街にアパートを借りて、向き合う勇気が出るまで待とうと思った。
    日本へ戻ってきて半年が経つ頃、隣に誰かが引っ越してきた。
    最初は特に気にしなかったのだが、隣人さんは律儀に挨拶に訪れた。
    これがお姉さんとの再会だった。
    二人は驚くと同時に、懐かしさと嬉しさがこみ上げ、また高校時代のような大親友に戻った。
    お互いの部屋へよく行き来したし、旅行にも行った。
    お姉さんは初めての一人暮らしで不安だったし、姫月さんもまた悩みを抱えたまま一人で苦しんでいた。
    そんな時に再会したのは運命のようだったと、お姉さんは語っていた。
    だがずっと青春時代を謳歌できるわけではなかった。
    どんなに楽しい時間を共有しようとも、子供の頃から続く大きな悩みが消えるわけではない。
    二人が再会して翌年の夏、姫月さんはまた日本を離れていった。
    『今はまだ向き合う勇気が出てこない。あの島へ戻るには時間が必要なんだと思う。』
    お姉さんとしてはもっと一緒にいたかったが、引き止めることは出来なかった。
    寂しい気持ちを隠し、『またいつか』と笑顔で見送るのが精一杯だった。
    まだケータイも無い、ネットも普及していない時代、一度離れた友人と連絡を取る手段はない。
    お姉さんは友を心配する気持ちを抱えたまま、一人になった寂しさを募らせていた。
    そんな中で俺と出会い、多少は気が紛れていった。
    また社会人としの生活も板に付いてきたおかげか、若くして仕事ぶりが評価され、遠い街への栄転が決まった。
    新しい街での新しい生活。
    お姉さんは気持ちを切り替えることにした。
    たしかに親友は大事だ。心配だし会いたい気持ちもある。
    だがそれにだけ囚われているわけにはいかなかった。
    自分には自分の人生がある。
    お姉さんは新しい人生をスタートさせる為、仕事だけでなくプライベートも充実させたいと思うようになっていた。
    友人を作り、恋愛にも積極的になった。
    充実した生活の中、良い人に出会い、子供を授かった。
    それから30年、お姉さんはちゃんと自分の人生を生きてきた。
    たまに姫月さんのことを思い出す瞬間はあっても、居場所を捜して会いに行こうとまでは思わない。
    今手にしているモノの方が大事だったからだ。
    だからこそ突然の手紙に驚いたのだった。
    30年ぶりに顔を合わせると、なんだか申し訳ない気持ちなったと語っていた。
    自分は幸せな人生を送ってきた。だが友はそうではなかった。
    正直なところ、こうして会いには来たものの、お姉さんの胸にはまだ迷いがあった。
    はたして自分が力になれるのだろうか?
    下手に協力したら足を引っ張るだけじゃないのか?
    だがこうして顔を合わせることで、そんな迷いは消え去った。
    力になれるかなれないかではなく、姫月さんは私を頼っているのだと。
    きっとこんな相談は私にしか出来ない。それも散々迷った挙句に手紙を送ったのだ。
    最後の別れから30年も辛さを我慢してきて、とうとう一人では限界を迎えたのだ。
    ならば行くしかない。
    ここまで来て迷うくらいなら、最初から来なければよかったのだと腹を括った。
    そして翌日、二人はこの島へやって来た。
    まずは姫月さんの実家があった場所へ行った。
    とても大きな家だったが、今は取り壊され、敷地の半分は駐車場に、半分は介護施設になっている。
    次に向かったのは山の麓にある神社だった。
    大きな山のせいで常に日陰になっていて、しかも鬱蒼とした木立に囲まれているから昼間でも薄暗い。
    ほとんど人が来ない場所で、鳥居は所々が欠け、境内は落ち葉と枯れ枝にまみれ、社殿もかなり朽ちている。
    妹とよく遊んだ場所だった。
    その次には海岸の端っこにある磯へ向かった。
    波が荒く、岩がゴツゴツしているので、ここもあまり人が来ない。
    よく妹と一緒にヤドカリや貝を採って遊んだ場所だ。
    その次に向かったのは海の見える高台だった。
    ここにもしょっちゅう遊びに来たという。
    それも夜か明け方に。人のいない時間だ。
    他にも幾つか思い出の場所をまわった。
    途中、せっかくだからとお姉さんの両親の墓参りにも行った。
    二日かけて島を巡ったが、妹に会うことは出来なかった。
    当然だ。もう亡くなっているのだから。
    しかし姫月さんは信じている。
    この島のどこかに妹さんの遺体が眠っていると。
    そして未練を残したまま漂っているはずだと。
    幽霊だろうが霊魂だろうが構わない。
    もし会うことが出来れば・・・・もし遺骨を弔うことが出来れば・・・・。
    と同時に、妹と対面するのは怖かった。
    お前が私を殺したんだと、指をさされるのが何よりの恐怖なのだ。
    会いたい気持ちと会いたくない気持ち。
    相反する複雑な感情は、最も妹さんに会える確率が高い場所へ行くことを躊躇わせていた。
    それが『祠』である。
    妹さんが亡くなった場所。
    そして姫月さんがその後数十年も後悔に悩まされる感情を抱いた場所。
    トラウマである。
    しかし行かなわいわけにはいかない。
    お姉さんの墓参りの後、二人は宿に戻った。
    そしてお姉さんは風呂へいった。誘われたが断った。
    一人になる瞬間が欲しかったのだ。
    こっそりと出ていく為に・・・・・。
    向かったのは『祠』だった。
    それは山奥にあった。
    よく妹と遊んだ麓の寂れた神社の奥、社殿の隣には山へ続く道が伸びていて、険しい獣道を一時間ほど我慢して登ると小さな『祠』が現れる。
    その奥は滝になっていて、そう高さはないものの、水量が多いせいで滝壺は深い緑に染まるほどだ。
    水はいつでも冷たく、底が見えない。
    妹さんが亡くなった場所である。
    もし出会えるとしたらここが一番可能性が高かった。
    だが姫月さんは何事もなく山を下りることになった。
    妹さんは会いに来てはくれなかった。
    そして黙って出て行った手前、お姉さんのいる宿へ戻ることも出来なかった。
    仕方なしに別の宿を借り、暖簾のかけ違えのせいで女湯が男湯になり、奇妙な探偵と出会った。
    これがお姉さんと姫月さんの今に至る流れだった。


         *****


    由香里君はメモ帳に目を落とす。
    ペンを置き、難しい顔で自分で書き込んだ文字を睨んでいた。
    姫月さんは黙ったまま湯呑を握り締めている。
    誰も喋らない。
    セミの声がうるさいほど響く。
    俺は頬杖をつきながら窓の外に目やる。
    そしてふと思った。
    夏ってのは楽しい空気が溢れる反面、どこか寂しくて怖い雰囲気もある。
    どうして夏にお盆があり、死者がこの世に帰ってくるのか?
    もし世界がこの世とあの世に分かれているのだとしたら、この季節だけはどこかで扉が繋がっているのかもしれない。
    こっちから向こうへ旅立つ者もいれば、向こうからこっちへ帰って来る者もいる。
    俺は姫月さんを見つめ、どこか浮世離れしたその眼差しに少しばかり恐怖を覚えた。
    《死人の捜索は難しい。だがそれ以上に難しいのは幻影を見つけ出すことだ。》
    いくら俺が腕の悪い探偵だろうと、実在している人間なら見つけ出せる可能性はゼロではない。
    実在していた人物の亡骸も同様だ。
    まだこの島のどこかに眠っているのなら、宝くじのような確率ではあるが、やはり可能性はゼロではないのだ。
    しかし相手が幻影となると・・・・。
    《気分が重いさ、まったく。》
    揺れる茶柱を指で弾く。
    立つどころか沈んでいくだけだった。

    妄惑

    • 2020.07.29 Wednesday
    • 13:35

    JUGEMテーマ:

    人のいない場所から物音がする

     

    誰もいないはずなのに話し声がする

     

    窓に映る何かの影

     

    階段を上ってくる正体不明の足音

     

    恐怖に固まり 恐怖に負けて確認しにいく

     

    誰もいない やはり人などいない

     

    安心した瞬間 鏡に映った自分と目が合う

     

    まったく違う方向から誰かの気配を感じる

     

    しかし誰もいない

     

    振り向かない もう気にしない

     

    誰もいないのだ

     

    ここにいるのは自分だけ

     

    部屋の明かりを点ける

     

    水を飲み 顔を洗う

     

    全ての怪奇現象が治まる

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