ほのかな梅の香り
雨上がりの夜に胸を弾ませ
憂鬱な気持ちを溶かしてくれる
並木の枝には小さな蕾
来月の今頃は満開になり
川沿いは桜を見上げる人で賑わうだろう
少しずつ 確実に 季節は入れ替わり
体を通り過ぎる風も柔らかくなっていく
橋から見える河川敷には
もうすぐ菜の花とタンポポが咲いて
蝶や鳥が踊るから 緑も鮮やかになるから
その日が来るまで顔を上げていよう
倉庫の隣 手入れのされていない空き地
南洋植物の隣に気の早い桜が立つ
寒い空に向かってピンクの色を投げ
白い雲と美しいコントラストを描く
コンクリートにはたくさんの花びら
それでもまだまだ枝は賑やかで
冷たい風をものともせずに踊っている
暦は春なのにしぶとく居座る寒気に我慢できず
気の早い桜が次の季節へ道を通す
変わり映えのない日々が感動を奪い
同じスケジュールの繰り返しが感性を鈍らせる
だけど稀に訪れる感動と 稀に尖る感性が
輝かしい気持ちに生まれ変わらせてくれる
同時に退屈なルーティーンへの耐性を失い
変わり映えのしない日々が苦しいと感じる
それを我慢し 感動も感性も忘れる頃
退屈への耐性が蘇り 苦しみからの解放と共に
夢も 憧れも 自分自身のことさえ
ただの石ころように なんの価値もないモノになり
心は本当に化石のようになっていく
人生は 古代の地層のように
そこで眠る恐竜やマンモスのように
ただ誰かに見つかるのを期待するように
またいつか訪れる感動と 尖る感性を
深い土の下で待ち続ける
夢は泥の中 希望は沼の底に
現実と挫折と後悔は水中を漂い
水面に浮かぶのは無気力と虚無感
体は浮かび 心は沈み
地球と月のように引っ張り合い
一定の距離で回り続ける
車の中は冬なのに蒸し暑くて
春の勢いに飲まれている
全部がてんでバラバラで
幸せでもなければ不幸でもないし
楽しくもなければ退屈でもないから
仕方なしにまだ生きている
また一日 夜まで歩いていくだけなのに
朝の布団を剥ぎ取るのは辛い
太陽の隠れた夜明けだから
余計にそう思うのかもしれない
どこにでも自分がいるように感じる
どこにも自分がいないようにも感じる
地に足を着いていても
どこにも立っていないような
だけど体は重く足が進まない
悲しい時はいつだってそうで
嬉しい時もいつだってそうなる
普段と違う状況になると
四方八方から強い力で引き裂かれるような
居心地の悪い気分になり
悲しかろうと嬉しかろうと
いつも通りに戻りたいと思う
何事もなく穏やかというのは
なんて幸せなんだろうと
引き裂かれるような状況の時は
相反する心身から目を逸らしたくなる
眠る龍のように
細長い雲が西へ横たわる
にわか雨は上がり
薄い虹が街を渡る
ぬかるみに誰かの足跡
植え込みに滴る雫の群れ
雨上がりは土と木々の匂いが強い
日が暮れる頃 あの龍は目覚め
太陽の光に染まりながら
遠くへ飛んでいくだろう
どこかに新しい雨を運んで
僕の見知らぬ誰かに
僕と同じように空を見上げさせ
土と木々の匂いを与え
ほんの少しの安らぎをもたらすだろう
魂の叫びは泥にまみれ
軋む心に体が追いつかない
彼は過去に囚われ
彼女は今に執着し
傍観者だったはずのあの人が
面白がって騒ぎ立て
彼と彼女の魂はより深い場所に沈み
傍観者だったあの人さえ
心と体が鎖で縛られる
人と人と人の繋がりは
蜘蛛の巣さえシンプルに見えるほど
まるで丸まった釣り糸のように
まるで川面の木にまとわりつく枯れ草のように
もはや解きようもなければ 元通りにすらならない
自分はただそれを見ていることしか出来ない
力になろうと近づけば
たちまち絡め取られてしまうだろう
呪いとは人のしがらみのこと
どんなに腕の良い魔術師でも
これを解くことは出来ない
朝霜を踏み砕き
昨晩の名残り雪をつまむ
今朝切ったばかりの爪の隙間に
冷たい冬の息吹が潜り込み
ポケットを探って
ハンカチを忘れたことを思い出す
取りに戻るには家から離れた
ジンジンとかじかむ指を揉みながら
もう一度雪をつまむ
寂しくないのに切ないのは
まばらに残った雪のせいで
深く積もった時よりも
哀愁が漂い 胸の中を撫でる
- 2024.01.20 Saturday
- 23:42
森は暗闇に閉ざされて
妖精のように 蛍のように
何かの光の球が飛び交う
それはただの埃であったり
月光の破片だったり
寝遅れた羽虫だったりする
半分瞼を閉じてボヤけると
妖精のようにさえ見えるし
魂のようにも見える
不思議で不気味で穏やかな森の夜
遠くに見える暖かい灯火は希望
だけどその光にはに背中を向け
妖精や魂の飛び交う暗闇に
気の済むまで立ち続ける
どうせ朝はやって来るから
無理に希望へ手を伸ばす必要はない
限られた夜の間に
好きなだけ悲しんで
思うだけ自分を慰めて
明日を生きる準備をしよう
月を映す茂みの川面に
獣の鳴き声と足音が響く
身を切る冷たい風が
火照った頬に気持ち良い
枯れ草の土手道は柔らかく
どこまでも歩けそうな気がする
感傷が溢れ出し
気の早い夜に感情を預ける
このまま時間が止まって
静かで暗い日没の中に
うずくまったまま埋もれていたい
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