小説の終わりのご挨拶

  • 2010.10.02 Saturday
  • 09:29
 昨日竜人戦記が完結しました。
初めてのファンタジーを書いて思ったことがあります。
それはとても書くのが難しいということです。
特に戦闘シーンを書くのが難しかったです。
でも何とか書き終えてホッとしています。
次の小説ですが、まだ何を書くのか決まっていません。
だから小説はしばらくお休みします。
今まで竜人戦記を読んで下さった方、本当にありがとうございました。

竜人戦記 最終話

  • 2010.10.01 Friday
  • 09:19
 地獄の門はもう開かれることはなく、魔人もこの世からいなくなった。
もうこの世の危機は去ったのだ。
みんなの奮闘のおかげで、この世は地獄にならずにすんだ。
もう戦いは終わったのだ。
ケイト達は、とりあえずカリオンの街を目指していた。
その旅の途中、マリーンが妹を火葬したいと言った。
ケイト達は枝や枯れ葉などをたくさん集め、その中にマリーンの妹を入れた。
そしてウェインが手から炎の球を放った。
マリーンの妹は、燃えながら煙となり、空に舞い上がって行く。
ケイトは十字架を握って祈りを捧げた。
やがて炎も消え、そのあとにはマリーンの妹の骨が少しだけ残っていた。
「エリーナ・・・。」
マリーンはそう言って骨の一部を拾い、自分の胸にしまった。
残りの骨はその場に埋めた。
マリーンはその場所に花を摘んできて置いた。
そしてケイト達は旅を続けてカリオンの街まで戻って来た。
とりあえずこの街で一晩泊ることにした。
その夜、宿の部屋でケイトはマリーンとリンとそしてエレンとで、今後のことについて話し合っていた。
「マリーンはこれからどうするの?」
ケイトは尋ねた。
「私はお世話になったエルフの村に戻ろうと思っているわ。
そこでエリーナのお墓を作るの。
これからは静かに暮らしたいわ。」
マリーンは答えた。
「妹さんのことは残念だったわね・・・。」
ケイトは言った。
「そうね。
でも仕方なかったことなのよ。
ああすることでしかエリーナを止められなかったから・・・。
悲しみはまだあるけど、覚悟はしていたことだから。」
マリーンはエリーナの骨が入れてある胸の辺りを触って言った。
「マリーンは強いね。」
リンが言った。
「そんなことはないわ。
私は強くなんかない。
ただ自分のやるべきことをやって、悲しみにくれて生きるのはやめようと思っているだけよ。」
それを強いというと思うのだが、ケイトは口には出さなかった。
「リンはこれからどうするの?」
今度はリンに尋ねた。
「私はまだ修行の旅を続けるわ。
お兄ちゃんと話し合ってそう決めたの。
自分の国に帰るのは、もっと立派な武道家になってからにしようって。」
リンは真剣な顔で言った。
「そうなの。
立派な武道家になれるといいわね。」
ケイトは笑顔で言った。
「うん、絶対になるよ!」
リンは勢い良く答えた。
「エレンはこれからどうするの?」
マリーンが聞いた。
「私はマリーンについて行く。」
エレンは言った。
「自分の故郷に帰らなくていいの?」
マリーンが言う。
「いいの。
私はマリーンと一緒に行くの。」
そう言ってエレンはマリーンの肩に乗った。
マリーンは仕方ないわねというふうに、微笑みながら頷いた。
「それで、ケイトはこれからどうするの?」
マリーンが尋ねてきた。
ケイトは返事に困った。
「まだ決めていないの。」
ケイトは答えた。
「そうなの?
自分の故郷には帰らないの?」
マリーンが聞いてくる。
「私は幼い頃に両親を亡くして、ある村の神父様に引き取られたの。
でもその村が魔人のせいでめちゃくちゃにされて、それで色々とあって私は村を追い出されたの。
だからこれからどうしようか考えている所なのよ。」
ケイトは答えた。
「そうなの。
それは大変ね。」
マリーンが心配そうな顔で言ってくる。
「じゃあケイトも武道家を目指して私達と一緒に旅をすればいいじゃない。」
リンが言った。
ケイトは思わず笑ってしまった。
「私に気を遣ってくれるのは嬉しいけど、私はシスターとして生きるつもりだから。
ごめんね、リン。」
そう言うとリンはちょっと寂しそうに俯いた。
「あの竜人さんは、これからどうするのかしらね。」
マリーンが言った。
そうだ。
ウェインはこれからどうするのだろう。
ウェインはもう自分の使命は果たした。
これからどのようにして生きるつもりなのだろう。
「これは私の考えだけどね。」
マリーンがそう前置きしてから言った。
「きっとあの竜人さんはこれからは静かに暮らしたいんじゃないかしら。
私も妹を追ってずっと旅をしていたから、彼の気持ちが少し分かるの。
重大な使命から解放されて、今はゆっくりと暮らしたいはずよ。」
「そうなのかなあ。」
ケイトは思った。
ウェインは本当に静かに暮らしたいのだろうか。
ケイトにはウェインの気持ちは分からなかった。
それから四人で他愛無いお喋りを続け、楽しい夜を過ごした。
そして翌朝、みんなは宿屋の前に集まった。
「これからみんなはどうするんだ?」
マルスが言った。
「私はお世話になったエルフの村に帰るわ。」
マリーンが言った。
「私もマリーンと一緒に行くのよ。」
エレンは言った。
「そうか。」
マルスは頷いた。
「フェイはどうするんだ?」
マルスが尋ねる。
「ああ、俺とリンはこれからも修行の旅を続けるよ。
だから今日ここでお別れだ。」
フェイが言った。
「そうなの?」
ケイトはリンを見て言った。
昨日の夜、修行の旅を続けるとは言っていたが、今日別れるなんて聞いていなかった。
「うん。
私はお兄ちゃんと旅を続ける。
昨日はなんだかみんなと別れるのが寂しくて言えなかったけど、お別れするのは今日なんだ。」
リンは少し寂しそうに言った。
「お前らと旅が出来て楽しかったよ。
いい経験にもなった。」
フェイが言う。
「気をつけて旅をしろよ。」
マルスがそれに笑顔で答えた。
「ケイト・・・。」
リンがケイトの名前を呼んだ。
そして抱きついてきた。
「私、ケイトのことを本当のお姉さんみたに思ってた。
一緒に旅が出来てすごく嬉しかった。」
リンは泣いていた。
「私もリンのことを本当の妹みたいに思っていたわ。」
そう言ってケイトはリンを抱きしめた。
しばらくそうしたあと、リンはケイトの顔を見て言った。
「またいつか絶対に会おうね。」
リンは涙を拭いて笑顔を見せた。
「うん。
またいつか会いましょう。」
ケイトも笑顔で言った。
「それじゃあ。」
リンは手を振って、フェイとともに去って行く。
「リン、元気でねー。」
ケイトは大きな声で言った。
リンは振り返り、大きく手を振った。
ケイトはフェイとリンの姿が見えなくなるまで見送った。
「マルスはこれからどうするの?」
マリーンが尋ねた。
「ああ、俺は故郷の街に帰るつもりだ。
もう仇の魔人もいなくなったことだしな。」
マルスは言った。
「ウェインさんはこれからどうするんですか?」
ケイトは尋ねた。
「俺も故郷の村に帰るつもりだ。」
ウェインは答えた。
「そうですか・・・。」
ケイトは思った。
やっぱりウェインはマリーンの言った通り、静かに暮らしたいのかもしれない。
故郷の村でゆっくりと暮らすつもりなのだろう。
みんな自分の帰る場所があるのだ。
「ケイトはどうするんだ?」
マルスが聞いてくる。
「私はまだ決まってなくて・・・。」
ケイトは顔を伏せて言った。
「そうなのか。
まあ時間はたっぷりある。
ゆっくり決めればいいさ。」
マルスはそう言った。
そしてウェインもマリーンもマルスも、故郷に帰るには船に乗って一旦ウッズベックの街に戻らなければならないと言った。
ケイトもそうすることにした。
そしてカリオンの港から、ウッズベックに向かう船に乗せてもらった。
それから二週間かけて船はウッズベックに到着した。
その間、ケイトはこれから自分はどうしようかとずっと悩んでいた。
そしてあることを思いついた。
みんなは船を降りて、ウッズベックの街に入った。
そしてウッズベックの街の出口まで来た所で、マリーンとエレン、そしてマルスとはお別れとなった。
「じゃあな、みんな元気でな。」
マルスが言う。
「あなたには本当にお世話になったわ。
ありがとう。」
マリーンがマルスに言った。
「いいってことさ。
それより気をつけてエルフの村に帰るんだぞ。」
マルスが言った。
「ええ、そうするわ。」
そう言ってマリーンは微笑んだ。
マルスも笑った。
二人はしばらく見つめ合っていた。
「なんだか二人は恋人みたい。」
エレンがそう言って笑った。
マリーンはその言葉に微笑み、マルスは照れたように頭を掻いた。
「じゃあもう行くよ。」
マルスが言った。
「あなたも気をつけてね。」
マリーンがそう言って手を振る。
ケイトはこの二人は恋人になるんじゃないかと密かに思っていたが、そうはならなかった。
「じゃあな!」
マルスが大きく手を振り、西に向かって去って行く。
ケイトとマリーンも手を振り返した。
「じゃあ私も行くわ。」
マリーンがケイトを見て言った。
「マリーン、また会えるよね。」
ケイトはマリーンの手を握って言った。
「ええ、いつか会えるわよ。」
マリーンもケイトの手を握り返した。
「私も握手する。」
エレンも握手を求めてきたので、ケイトはエレンの小さな手を握った。
「じゃあね、ケイト。」
そう言ってマリーンは最後にケイトを抱きしめた。
ケイトは泣きそうになるのをこらえながら、マリーンを抱きしめ返した。
「それじゃあ、元気でね。」
マリーンはケイトにそう言い、ウェインとケイトに手を振って去って行く。
「マリーン、またねー。」
ケイトは大きな声で言った。
マリーンは振り返って微笑み、肩にエレンを乗せて、手を振って東に去って行った。
「みんな行っちゃいましたね。」
ケイトはウェインに言った。
「ああ、そうだな。」
ウェインは短く答える。
「ウェインさんも自分の故郷に帰るんですよね。」
「ああ。」
「ウェインさんの村って、教会はありますか?」
ケイトは聞いた。
「無いな。」
ウェインは素っ気なく答えた。
「じゃあ教会を建てましょう。
それで私がそこのシスターになります。」
そう言うと、ウェインはケイトを見た。
「本気か?」
ウェインが尋ねる。
「ええ、本気です。」
ケイトは笑って答えた。
「ねえ、ウェインさん。
私もウェインさんの故郷の村に連れて行って下さい。」
そう言うと、ウェインは少し戸惑った表情をした。
「私、もう帰る所がないんです。
だから、ウェインさんの村に連れて行ってもらえませんか?」
ウェインはケイトと目を合わさず、宙を見ていた。
「ウェインさん。」
ケイトは真剣な目でウェインを見た。
するとウェインは南に向かって歩き出した。
それを追うケイト。
「ねえ、ダメですか?」
ケイトはウェインの横顔を見る。
ウェインはチラリとケイトを見ると言った。
「好きにしろ。」
「はい、好きにします。」
ケイトは笑顔で言った。
こうしてケイトはウェインの故郷の村に行くことになった。
空には眩しく太陽が輝いている。
そして青い空を雲が流れていっている。
ケイトはそんな空を見上げながら、ウェインとともに、ウェインの故郷の村を目指して歩いて行った。
青い空の下を吹く風が、ウェインとケイトを包んでいるようだった。

                                         完

竜人戦記 第五十五話

  • 2010.09.30 Thursday
  • 09:30
 激しい斬り合いを続けているウェインと魔人。
それをケイトとフェイ達は見守っていた。
「ウェインに加勢しないの?」
マリーンが聞いてきた。
「下手に加勢したら、ウェインの足手まといになっちまうんだ。」
フェイが答えた。
ケイト達はただ、ウェインの闘いを見守るしかなかった。
魔人が斬り合いの隙をついて、口から黒い炎の球を吐いた。
ウェインは横に飛んでそれをかわす。
すると魔人は呪文を唱えた。
魔人の上に無数の黒い針が現れる。
無数の黒い針は、ウェインめがけて飛んでいった。
ウェインは大剣を大きく振りまわし、その風圧で無数の黒い針を吹き飛ばした。
そしてウェインは大剣を振り、光の刃を放った。
魔人はシールドを張ってそれを防いだ。
魔人は次の呪文の唱える。
今度は魔人の上に黒い鎌が現れた。
黒い鎌は、まるで自分の意思を持っているかのように動きながらウェインに襲いかかる。
ウェインは大剣で黒い鎌を受け止めた。
そこへ魔人が斬りかかる。
ウェインは左肩を斬られてしまった。
黒い鎌は自在に動き、ウェインの背後から襲いかかる。
ウェインは上へ飛んでそれをかわすと、黒い鎌に斬りつけた。
黒い鎌は真っ二つになり、砂のように崩れ去った。
そしてウェインは魔人に斬りかかる。
魔人はウェインの剣を受け止めた。
するとウェインは目から光を放った。
魔人が一瞬苦しんだ。
その隙にウェインが斬りかかる。
魔人の体は、ウェインの大剣によって大きく斬られた。
魔人は一旦後ろへジャンプした。
「相変わらずやるな、ウェイン。」
魔人は言った。
「何としてもここでお前を倒す。」
ウェインはそう言って再び魔人に斬りかかる。
魔人はウェインの大剣をかわし、口からまた黒い炎の球を吐いた。
ウェインはしゃがんでそれをよけると、下から上に向かって大剣を振り上げた。
すると炎の竜巻が発生し、魔人に迫っていく。
魔人はまたシールドを張り、炎の竜巻を防いだ。
そして炎の竜巻が消えると、ウェインはまた魔人に斬りかかった。
ウェインと魔人の斬り合いが始まる。
両者の闘いは互角だった。
お互いに一歩も譲らない。
「すげえ闘いだ。」
フェイが言った。
ケイトは十字架を握ってウェインの勝利を願っていた。
そしてウェインと魔人の斬り合いがしばらく続いたあと、魔人は大きく後ろへジャンプした。
「もういい。」
魔人は言った。
「お前達を殺してから地獄の門を開くつもりだったが、このままウェインと闘っていてもらちがあかない。
もう地獄の門を開くことにする。」
魔人はそう言うと、飲み込んでいた地獄の門の鍵を吐き出した。
そして剣のように変えていた手を元に戻すと、魔人は地獄の門の鍵を持って、魔法陣の中にある扉に鍵を差し込もうとした。
ウェインがそうはさせまいと魔人に斬りかかる。
すると魔人は口から黒い霧を放った。
ウェインはそれをくらって一瞬立ち止まる。
その間に魔人は魔法陣の中にある扉に、地獄の門の鍵を差し込んだ。
「あとはこの鍵を右に回せば地獄の門は開く。」
魔人は言った。
魔人が地獄の門の鍵を右に回そうとする。
しかし黒い霧をくらって立ち止まっていたウェインが再び動き出し、魔人に斬りかかった。
魔人は後ろへ飛んでそれをかわす。
「邪魔をするなウェイン!」
魔人は叫んだ。
ウェインは地獄の門の鍵を抜こうとした。
「させるか!」
魔人はそう言って、ウェインに体当たりをしてきた。
それをくらって後ろによろけるウェイン。
魔人は地獄の門の鍵を掴むと、右に回した。
すると魔法陣の中の扉が大きな音をたてた。
そしてゆっくりと、地獄の門が開かれていった。
「何てことだ!」
マルスは叫んだ。
地獄の門は少しずつ、ゆっくりと開いていく。
その中からおぞましいほどの邪悪な気が放たれてきた。
この門の向こうは地獄と繋がっているのだ。
その門が、今開かれようとしていた。
「ははは、やったぞ。!
地獄の門を開いたぞ!」
魔人は大きく笑う。
ウェインは再び魔人に斬りかかった。
しかし魔人はそれをかわすと、もう闘うそぶりを見せなかった。
魔人としては目的を達成したのだ。
もう闘う必要はないということだろう。
ウェインは大剣を振りながら魔人を追いかける。
しかし魔人は笑いながらウェインの剣をかわして逃げている。
その間にもどんどん地獄の門が開いていく。
門の中からは邪悪な気がどんどんあふれてくる。
そしてケイトは、門の奥の方から無数の邪悪な気配を感じた。
きっと地獄の悪魔達がこの門を目指してやって来ているのだ。
「クソ!
何とか出来ないのか。」
マルスが悔しそうに言った。
「私達、何にも出来ないの・・・。」
リンが絶望したように言った。
地獄の門はどんどん開いていく。
「何か手はないのかしら。」
マリーンも焦ったように言った。
「ははは、この世は地獄に変わるぞ。」
ウェインの大剣から逃れながら、魔人が笑ってそう言った。
地獄の門は、もう半分まで開いている。
その時ケイトは、聖者の腕輪に願った。
地獄の門を閉じて欲しい。
何度も強くそう願った。
すると聖者の腕輪が光り出した。
ケイトは地獄の門に向かって、聖者の腕輪を投げつけた。
聖者の腕輪は地獄の門に当たった。
すると辺りに眩い光が放たれた。
地獄の門の近くで、聖者の腕輪が光っている。
地獄の門は閉じなかったが、門が開くのが止まった。
「この小娘!
何をした!」
魔人がそう言いながらケイトに向かって来る。
フェイ達とマリーンがケイトを守ろうとしたが、魔人はフェイ達とマリーンを殴り飛ばしてしまった。
「ケイト、逃げて!」
殴り飛ばされたマリーンが言った。
魔人がケイトの前に立つ。
ケイトは魔人を見上げた。
「余計なことをしやがって!
殺してやる。」
そう言うと魔人は手を剣のように変えて、ケイトめがけて突き刺そうとした。
殺される。
そう思ってケイトは目を閉じた。
その時だった。
ドス!っという音が響いた。
ケイトが目を開けてみると、ウェインが魔人の体を後ろから大剣で突き刺していた。
「うおおおお!」
そう言いながらウェインは魔人を突き刺したまま大剣を持ち上げた。
「何をする気だ、ウェイン!」
魔人は叫んだ。
するとウェインは半分まで開いた地獄の門まで行った。
「貴様はこの世にいてはいけない存在だ。
地獄へ行け!」
そう言ってウェインは大剣を引き抜き、魔人を地獄の門の中へ落とそうとした。
しかし魔人は抵抗した。
「ウェイン、やはり貴様は殺す!」
魔人が言った。
そしてウェインに向かって斬りかかって来た。
ウェインはそれをかわすと、再び魔人の体に大剣を突き刺した。
そしてそのまま大剣を地獄の門の中へと振り下ろした。
魔人の体はウェインの大剣から抜け、地獄の門の中へと落ちて行く。
「ウェインー!
こんなことをしても何も変わらんぞー!
俺を地獄に落としても地獄の門が閉じるわけじゃないからなー!」
地獄に落ちて行きながら魔人は叫んだ。
「俺は再び地上に戻る!
悪魔とともにな!
この世が地獄に変わるのをこの目でみてやるのさ。
ははは。」
そう言って魔人は笑った。
ウェインは大剣を振りかぶった。
大剣の輝きが今までにないほどに増す。
そしてウェインは大剣を地獄の門の中に向かって振った。
光の刃が魔人めがけて飛んでいく。
それをくらった魔人は真っ二つにされた。
しかし真っ二つにされた魔人はなおも笑っていた。
そしてその姿は地獄に落ちて行って見えなくなった。
その時、聖者の腕輪がパキンという音をたてて壊れた。
地獄の門が開くのを止めていた聖者の腕輪。
しかし地獄の門の開く力に耐えられなくなったのだろう。
聖者の腕輪の力がなくなった地獄の門は、再び開き始めた。
ウェインは大剣を床に置き、地獄の門を閉めようとしている。
「俺達も手伝うぜ!」
そう言ってフェイ達とマリーンも地獄の門を閉じようとした。
しかし地獄の門は閉まらない。
ケイトも地獄の門を閉めようとした。
何とかこれを閉めないと、この世が地獄に変わってしまう。
するとウェインが床に置いた大剣を掴んだ。
「どいていろ。」
ウェインはフェイ達に言った。
ウェインは「はあああ!」と言いながら力を込めた。
そして大剣で地獄の門の右側を斬りつけた。
大剣が地獄の門の右側に当たって凄まじい音が響いた。
その衝撃で門の右側が閉まった。
そして今度は門の左側に斬りつけた。
同じうように門の左側も閉まった。
地獄の門は閉まった。
しかしまた開こうとしている。
みんなで必死にそれを押さえ、その間にウェインが地獄の門の鍵を左に回して鍵を閉じた。
ようやく地獄の門は閉じられた。
すると地獄の門の魔法陣も消えた。
ウェインは地獄の門の鍵を床に置くと、大剣で真っ二つにした。
そして地獄の門の鍵に向かって手から光の球を放った。
地獄の門の鍵は消滅した。
「ふう、終わったな。」
フェイが笑いながら言った。
「どうなることかと思ったよ。」
マルスも安堵したように言う。
「全て終わりましたね、ウェインさん。」
ケイトはウェインの傍に寄って言った。
「ああ、目的は全て果たした。」
そう言ってウェインは少し微笑んだ。
「じゃあこんな塔とはさっさとおさらばしようぜ。」
フェイが言った。
その言葉を合図に、みんなが塔の階段を下り始めた。
そして途中にあった部屋で、一人のエルフが死んでいた。
マリーンはそのエルフに駆け寄り、まだ心臓に刺さっていた矢を抜いた。
「エリーナ、一緒に行きましょう。」
そう言うとマリーンはエリーナをおんぶした。
「その人がマリーンの妹さんなのね。」
ケイトは言った。
「ええ、そうよ。
この子のお墓を作ってあげないと。」
マリーンはそう言った。
みんなは階段を下り、塔の出口までやって来た。
そして塔の扉を開けて外に出た。
太陽が眩しく輝いていた。
全て終わった。
ケイトはそう思い、塔を見上げた。
もう地獄の門が開かれることもないし、魔人もいなくなった。
「何やってるの、ケイト。
早く行こうよ。」
リンが塔を見上げていたケイトに呼びかける。
みんなは先に歩いて行っていた。
ケイトは笑顔で頷き、みんなの元へ走って行った。




竜人戦記 第五十四話

  • 2010.09.29 Wednesday
  • 09:14
 ケイト達は、地獄の門の鍵のある、塔の最上階にやって来た。
最上階には大きな窓がいくつもあり、太陽の光が射し込んできている。
その光がケイト達に影を作っていた。
最上階の部屋の一番奥には台座があり、その上に鍵があった。
その鍵を覆うようにして、緑色の光を放つシールドのようなものが張られていた。
おそらくそのシールドが地獄の門の鍵の封印だろう。
ケイト達は台座に近づいた。
「これが地獄の門の鍵か。」
フェイがシールドの中の鍵を見てそう言う。
「何とか魔人より先に見つけられたね。」
リンが言った。
「この地獄の門の鍵をどうするんだ?」
マルスがウェインに聞いた。
「大剣で真っ二つにする。」
ウェインは答えた。
そしてウェインは懐から地獄の門の鍵の封印を解く石を取り出した。
それを緑色に光るシールドに当てた。
すると眩い光が辺りに放たれ、緑色に光るシールドは消えた。
ウェインは大剣を構える。
地獄の門の鍵を真っ二つにするつもりだ。
その時だった。
辺りにとても邪悪な気がはしった。
この気は魔人の気だった。
ケイトとウェインは辺りを見回す。
しかしどこにも魔人はいなかった。
するとケイトの背後から魔人の声がした。
「やっと見つけたぞ、地獄の門の鍵。」
ケイトは後ろを振り向いた。
するとケイトの影から魔人が現れた。
ケイトは思った。
ずっと背後に感じていた違和感は、魔人が自分の影にひそんでいたからだと。
カレンというゴーストがいた村を出て以来、ずっと背後に違和感を感じていたのだ。
あれは魔人がケイトの影にひそんでいたからだ。
ウェインが大剣を振りかぶって地獄の門の鍵に斬りつけようとした。
しかしそれより速く、魔人は地獄の門の鍵を奪った。
「ははは、これで地獄の門が開けるぞ。」
魔人は地獄の門の鍵を手にして笑った。
そして魔人は何やら呪文を唱え始めた。
すると部屋の床に大きな黒い影が現れた。
「これは禁断の魔法だ。
この魔法があれば、悪魔の石板がなくても、地獄の門の鍵があれば地獄の門を開くことが出来る。」
魔人はそう言った。
禁断の魔法。
それはウッズベックの少し先の海の祠の洞窟で、魔人が手に入れたものだった。
魔人は続いて呪文を唱え始める。
すると大きな黒い影の中に、巨大な魔法陣が現れた。
その魔法陣の中には扉があった。
「この魔法陣の扉を地獄の門の鍵で開けば、地獄の門が開く。」
そう言って魔人は魔法陣の扉に地獄の門の鍵を差し込もうとした。
しかしそこでウェインが魔人に斬りかかった。
魔人は後ろに飛んでそれをかわす。
「地獄の門は絶対に開かせない。」
ウェインは言った。
「ふふふ、どこまでも邪魔をするな、ウェインよ。」
そう言って魔人は地獄の門の鍵を飲み込んだ。
「地獄の門を開くのはお前達を殺してからにしよう。」
そう言うと魔人は両手を剣のように変え、そして体は倍ほどの大きさになり、顔は山羊に角が生えたように変わった。
ウェインの方は体を光の膜で覆い、大剣は黄金の光を放ち始め、顔は竜と人を混ぜたようになった。
魔人は両手を上にあげた。
すると魔人の上に魔法陣が現れ、そこからライオンの顔と体に翼の生えた黒い魔物が現れた。
頭には角が生えていた。
魔物は全部で三匹現れた。
「さあ、ウェイン、最後の闘いを始めよう。」
魔人はそう言ってウェインに襲いかかって来た。
それと同時にライオンの魔物もウェインに襲いかかる。
「ウェイン、俺達も加勢するぜ!」
そう言ってフェイ、リン、マルスがライオンの魔物に闘いを挑んだ。
「私も加勢するわ。」
マリーンが言った。
「私も闘う。」
エレンも言った。
こうしてウェインと魔人、そしてライオンの魔物とフェイ、リン、マルス、マリーン、エレンが闘うことになった。
ウェインは魔人に斬りかかる。
魔人はそれを両手の剣で受け止めた。
そして魔人は後ろへ下がると、呪文を唱え始めた。
するとウェインの足元から黒い鎖が出てきて、ウェインの体を縛った。
魔人はウェインに斬りかかる。
しかしウェインは体から衝撃波を放って黒い鎖を吹き飛ばした。
ウェインは大剣で魔人の剣を受け止める。
そしてウェインは後ろへジャンプした。
ウェインの大剣の黄金の光が増す。
ウェインが大剣を振ると、光の刃が魔人めがけて飛んでいった。
魔人はそれをかわそうとしたが、光の刃は魔人の右腕を斬り落とした。
斬り落とされた魔人の右腕は砂のようになって崩れ去った。
しかし魔人はすぐに右腕を再生させた。
ウェインはもう一度光の刃を放つ。
魔人はそれをジャンプしてかわすと、また呪文を唱え始めた。
すると魔人は口から黒い球を放った。
ウェインはその黒い球を斬り裂いた。
すると黒い球は爆弾のように弾けた。
ウェインはその爆発をくらってうしろによろめいた。
そこへ魔人が斬りかかる。
ウェインは左腕を斬られた。
するとウェインはまた体から衝撃波を放った。
それをくらった魔人が後ろへ吹き飛ばされる。
ウェインは光の刃を連続で二発放った。
魔人は呪文を唱え、シールドを張った。
光の刃はシールドに阻まれた。
ウェインは魔人に距離を詰めて斬りかかった。
それに応戦する魔人。
ウェインと魔人の斬り合いが続いた。
そしてフェイとリンはライオンの魔物の一匹と闘っていた。
ライオンの魔物が翼を羽ばたかせて風をおこす。
フェイとリンは後ろへ吹き飛んだ。
そこへライオンの魔物が襲いかかる。
狙いはリンだった。
リンはライオンの魔物の爪をかわすと、その体に蹴りを放った。
そしてフェイもライオンの魔物に飛び蹴りを放つ。
ライオンの魔物は大きく吠えて、フェイにむかって炎の球を吐いた。
フェイは上へ飛んでそれをかわす。
そこへリンがライオンの魔物に強烈なパンチを打ち込んだ。
ドスン!という低い音がする。
ライオンの魔物はまた吠えて、リンに向かって襲いかかって来た。
リンはそれを横に飛んでかわすと、ライオンの魔物の顔に数発パンチを放った。
そしてフェイもライオンの魔物に強烈なパンチを打ち込んだ。
またドスン!という低い音が響く。
それをくらってライオンの魔物は少しよろめいた。
そしてマリーンとエレンもライオンの魔物と闘っていた。
マリーンがライオンの魔物に向かって矢を放つ。
それはライオンの魔物の顔に命中した。
苦しそうな声を出すライオンの魔物。
そしてもう一匹のライオンの魔物はマルスが闘っていた。
ライオンの魔物の巨大な爪がマルスを襲う。
マルスはそれを剣で受け止めると、ライオンの魔物の体に斬りつけた。
ライオンの魔物はマルスに向かって吠えた。
マルスは再びライオンの魔物に斬りつける。
ライオンの魔物は苦しそうな声を出してから、マルスに向かって炎の球を吐いた。
それを上に飛んでかわすマルス。
しかしそこへライオンの魔物が体当たりをしてきた。
マルスは大きく後ろへ吹き飛ばされて、壁に激突した。
「ぐう!」
苦しそうな声を出して膝をつくマルス。
そこへライオンの魔物が襲いかかる。
「エレン、マルスを助けて!」
マリーンは言った。
するとエレンはマルスの体を宙に浮かした。
そのおかげでライオンの魔物の攻撃をかわすことが出来たマルス。
「ありがとう。」
マルスはエレンに言った。
「どういたしまして。」
そう言ってエレンはマルスを床に下ろした。
そしてウェインと魔人の闘い。
しばらく斬り合いが続いていた。
しかしだんだんとウェインの方が優勢になってきた。
ウェインの大剣が魔人の体に斬りつけられる。
魔人は後ろに下がり、また呪文を唱えた。
そして両手から黒い霧を放ってきた。
黒い霧はやがて刃のようになり、ウェインに襲いかかる。
ウェインはその刃をかわした。
そこへ魔人が斬りかかって来る。
ウェインは右足に魔人の剣をくらった。
するとウェインは目から光を放った。
黒い霧の刃は消滅した。
魔人は次の呪文を唱える。
すると魔人の手からゴーストが現れた。
ゴーストはウェインに襲いかかる。
ウェインはゴーストに斬りつけた。
ゴーストはあっさりと消滅した。
しかしその間に魔人はウェインに斬りかかって来た。
ウェインは右肩を斬られた。
しかしウェインはひるむことなく魔人に斬りかかる。
魔人はウェインと斬り合いを続けながら、次の呪文を唱えるタイミングをうかがっていた。
そしてフェイとリン。
ライオンの魔物はフェイとリンの連携攻撃に翻弄されていた。
リンがライオンの魔物の顔に蹴りを放つ。
ライオンの魔物は怒ってリンに襲いかかる。
しかしその後ろからフェイが強烈なパンチを放つ。
それをくらってライオンの魔物はよろめきながらフェイの方を向く。
すると今度はリンがライオンの魔物の後ろから蹴りを放つ。
ライオンの魔物は、フェイとリン、どちらを攻撃していいのか分からなくなっていた。
そしてマリーン。
マリーンはライオンの魔物の攻撃をかわしながら、連続で矢を三本放った。
全ての矢が命中し、ライオンの魔物は苦しんだ。
マリーンはなおも矢を放つ。
しかしライオンの魔物はその矢をかわした。
するとライオンの魔物は翼を羽ばたかせて風をおこした。
マリーンは後ろに吹き飛ばされる。
そこへライオンの魔物が襲いかかって来る。
マリーンは咄嗟に身をかわした。
そしてライオンの魔物の近距離から矢を放った。
矢はライオンの魔物の顔に命中した。
ライオンの魔物は大きく吠えて苦しんだ。
マリーンは苦しむライオンの魔物に連続で二本の矢を放った。
一本は顔に、一本は首に命中した。
ライオンの魔物は大きく吠えながら倒れた。
そして砂のようになって崩れ去った。
マリーンはライオンの魔物を一匹倒した。
一方マルスは苦戦を強いられていた。
ライオンの魔物の爪がマルスに襲いかかる。
マルスは何とか剣でそれを防いでいる。
するとライオンの魔物がまた体当たりをしてきた。
マルスは後ろに吹き飛ばされて壁に激突する。
「うぐ!」
苦しそうな声をあげて倒れるマルス。
そこへライオンの魔物が巨大な口をあけて襲いかかってきた。
ケイトは聖者の首飾りを触って念じた。
マルスを守って欲しい。
すると聖者の首飾りが光出し、マルスの周りをシールドが囲んだ。
ライオンの魔物の攻撃は、シールドによって阻まれた。
そこへマリーンが助けに入る。
ライオンの魔物に向かって矢を放った。
矢はライオンの魔物の体に命中した。
ライオンの魔物は怒ってマリーンの方を向いた。
そして聖者の首飾りの光が消え、マルスを囲んでいたシールドも消えた。
エレンがマルスの傍に飛んで行く。
エレンは回復の魔法を使った。
マルスのダメージは消えた。
マルスは立ち上がり、マリーンの方を向いているライオンの魔物の体に斬りつけた。
ライオンの魔物は苦しそうな声を出した。
そこへマリーンがライオンの魔物に向かって矢を放った。
矢はライオンの魔物の顔に命中した。
大きく吠えて、苦しむライオンの魔物。
そこへ、またマルスがライオンの魔物の体に斬りつける。
ライオンの魔物はマルスの方を向いた。
「来い!
とどめをさしてやる!」
マルスは言った。
ライオンの魔物がマルスに巨大な口を開けて襲いかかった。
マルスは地面すれすれにしゃがんでそれをかわし、ライオンの魔物の懐に入った。
そしてライオンの魔物の首に剣を突きさした。
ライオンの魔物は苦しみながら倒れた。
そして砂のようになって崩れ去った。
マルスもライオンの魔物を倒した。
フェイとリンももうライオンの魔物にとどめをさす手前だった。
フェイとリンの連携攻撃を受け、ライオンの魔物はよろめいていた。
そこへフェイとリンが同時に強烈なパンチを放つ。
ドスン!という低い音が二重に響いた。
ライオンの魔物は倒れてしまい、砂のように崩れ去った。
残るはウェインと魔人だった。
両者は激しい斬り合いを続けていた。
ウェインと魔人の闘いを、ケイトは十字架を握って見守っていた。

竜人戦記 第五十三話

  • 2010.09.28 Tuesday
  • 09:25
 マリーンはエリーナの体を抱きしめてしばらく泣き続けていた。
妹を殺してしまった自分。
そうすることでしか、エリーナを止めることが出来なかった。
マリーンはしばらくエリーナの体を抱きしめたあと、そっと床に置いた。
「エリーナ、天国でまた会いましょう。」
そう言ってマリーンはもう動かなくなったエリーナの頭を撫でた。
マルスとエレンがマリーンに近寄って来る。
マルスはマリーンの肩にそっと手を置いた。
マリーンはその手を握った。
「私、自分の妹を殺してしまったわ。」
マリーンは悲しげな声で言った。
「仕方なかったんだよ。
こうする以外に彼女を止める方法はなかったんだろう?」
マルスはマリーンに聞いた。
マルスの言う通りだった。
こうする以外エリーナを止めることは出来なかった。
しかしマリーンはその問いには答えず、ただマルスの手を握っていた。
「マリーン・・・。」
エレンがマリーンの目の前に飛んで来て心配そうな目で見つめる。
マリーンはもう一度エリーナの頭を撫でると、立ち上がった。
「エリーナ、あとでちゃんとお墓を作ってあげるからね。」
マリーンは言った。
マリーンは涙を拭き、マルスの方に向き直って言った。
「エリーナがここにいるっていうことは、魔人もこの塔にいるかもしれないわ。
ケイト達のあとを追いましょう。」
マリーンはマルスを見つめて言った。
そこへフェイとリンが階段を上がってマリーン達の元へやって来た。
フェイは床に倒れて死んでいるエリーナを見て言った。
「一体何があったんだ。」
マリーンのかわりにマルスが答えた。
フェイとリンは真剣にマルスの話を聞いていた。
「そうだったの・・・。
つらいわね、マリーン。」
リンが言った。
マリーンはエリーナを見ると、目を閉じた。
幼い頃の記憶がよみがえる。
二人で楽しく遊んだ思い出。
マリーンはそれを胸にしまい、マルス達を見て言った。
「私達も上に行きましょう。
ケイト達のあとを追うのよ。」
そう言ったマリーンの目は真剣だった。
「そうだな。
そうしよう。」
マルスがそう言い、マリーン達は上の階段へ上がることにした。
「また戻って来るからね、エリーナ。」
マリーンはエリーナを振り返って言った。
その頃、ウェインはケイトを抱えて階段を駆け上っていた。
ケイトはマリーンのことが心配だった。
マリーンは妹を追って旅をしていると言っていた。
きっとあのエルフがマリーンの妹なのだろう。
マリーンは妹のエルフと闘っているのだろうと思った。
マリーンが無事なのか、ケイトは心配でたまらなかった。
そしてケイトはウェインに言った。
「ウェインさん。
もうおろしてくれていいですよ。
自分の足で歩けますから。」
しかしウェインはケイトを抱えたまま階段を駆け上がった。
「ウェインさん。」
ケイトが呼びかけても無視である。
ウェインはそのまましばらく階段を駆け上がった。
すると一つに部屋に出た。
ウェインはそこでケイトをおろした。
部屋の奥に階段がある。
きっとこの部屋にも見張り番がいるのだろう。
ケイト達は部屋を進んだ。
すると階段の手前に魔法陣が現れた。
そこから白く、長い服を着た一人の女性が出て来た。
肩までの金髪の髪に、とても美しい顔をしている。
「お前もこの塔の見張り番か?」
ウェインがその女性に尋ねた。
「ええ、そうよ。
私の名前はシール。
トリスに頼まれてこの塔の見張り番をしている魔法使いよ。」
シールと名乗った女性はそう言った。
「ならお前を倒さないと先へは進めないということだな。」
ウェインが言う。
「その通り。
先に進みたいなら、私を倒してからね。」
そう言ってシールは笑った。
ウェインは大剣を構えて前に出た。
ケイトは闘いの邪魔にならないように少し後ろへ下がった。
「じゃあ始めましょうか。」
シールはそう言うと、手から雷を放ってきた。
ウェインは大剣を避雷針がわりにして床に突き立てた。
雷が大剣に落ちる。
するとウェインは大剣を手に取ってシールに斬りかかった。
シールは手を上にかざした。
シールの周りに小さな竜巻がおこる。
ウェインの大剣は小さな竜巻によって阻まれた。
そして小さな竜巻が消えると、シールは手から氷を放った。
ウェインはその氷を大剣で斬り裂く。
するとシールは両手を上にあげた。
シールの上に魔法陣が現れ、そこから鳥の顔にライオンの体をして、翼を生やした魔物が現れた。
魔物はウェインに襲いかかって来た。
ウェインは大剣を振って応戦する。
そこへシールがウェインめがけて雷を放った。
ウェインは雷をくらってしまった。
雷をくらってぐらつくウェイン。
そこへ魔物が襲いかかる。
魔物の爪がウェインの左腕を斬り裂いた。
ウェインは魔物に向かって大剣を振る。
しかし魔物は宙に飛んで、ウェインの大剣をかわした。
そこへシールがまた手から氷を放った。
その氷はウェインの足に当たり、ウェインの足は凍りついてしまった。
また魔物が襲ってくる。
ウェインは足が凍っているので下半身は動かせない。
ウェインは大剣で魔物の爪を受け止めた。
そこへまたシールが氷を放ってきた。
それはウェインの体に当たり、ウェインの上半身も凍ってしまった。
ウェインは身動きがとれなくなった。
魔物がウェインの顔めがけて爪を振ってくる。
ウェインは首をひねって魔物の爪をかわしたが、魔物の爪はウェインの顔をかすめた。
ウェインの顔から血が流れる。
「中々やるな。」
ウェインはシールに向かって言った。
「褒めても何もでないわよ。」
シールはそう言って笑った。
「お前はまあまあ強い。
だからこちらも少し本気で闘わせてもらおう。」
ウェインがそう言うと、ウェインの体を光の膜が覆い、大剣は黄金の光を放ち始めた。
ウェインは「はあ!」と言って体を動かした。
するとウェインの体を凍らせていた氷は弾け飛んだ。
そこへ魔物が襲いかかってくる。
ウェインは大きく大剣を振りかぶると、縦一閃に大剣を振った。
魔物は一刀両断されてしまった。
そしてウェインはシールに斬りかかった。
シールは両手を前に突き出してシールドのようなものを張った。
ウェインの大剣がシールドに阻まれた。
しかしウェインはもう一度斬りかかった。
するとシールドにひびが入った。
もう一度ウェインが大剣で斬りつけると、シールドは砕け散った。
焦ったシールは宙に浮いて両手から炎と雷を放った。
ウェインはそれをかわすと、シールの真上にジャンプした。
そしてシールに斬りかかった。
シールはまた両手を突き出してシールドを張った。
しかしウェインの渾身の一撃は、一発でシールドを砕いた。
シールは床に下りて、焦って後ろに下がる。
それをウェインが追う。
するとシールは両手を広げた。
そうしたらシールが三人に分裂した。
三人のシールはそれぞれ炎、雷、氷を放ってきた。
するとウェインの大剣の黄金の輝きが増した。
ウェインは輝きの増した大剣で、三人のシールの攻撃を受け止めた。
そしてウェインは大剣を大きく横に振った。
すると光の刃が三人のシールめがけて飛んでいく。
真ん中に立っていたシールが宙に浮いて逃げ、左右にいたシールは光の刃で真っ二つにされた。
左右にいたシールは消滅した。
ウェインは大きく大剣を振りかぶっている。
また光の刃を放つ気だった。
すると宙に浮いていたシールが「待って!」と言った。
「私の負けよ。
降参するわ。」
宙に浮いていたシールは床に下りて来た。
「あなた強いわね。
私じゃ勝てないわ。」
シールはそう言って笑った。
その言葉を聞いたウェインは大剣を背中に戻した。
するとウェインの体を覆っていた光の膜が消え、大剣の黄金の光も消えた。
シールは自分が出て来た魔法陣まで戻って行った。
「この上が最上階よ。
そこに地獄の門の鍵があるわ。」
シールはそう言った。
「あなたは竜人ね。」
シールが聞いてきた。
「そうだ。」
ウェインが短く答える。
「どうりで強いはずだわ。」
そう言ってシールは笑った。
「じゃあね、竜人さん。」
そう言葉を残すと、シールは魔法陣の中へと消えて行った。
「シールはこの上に地獄の門の鍵があるって言っていましたよね。」
ケイトは言った。
「ああ、さっさと最上階へ行こう。」
ウェインが言う。
「その前にウェインさんの傷を治します。」
そう言ってケイトは聖者の腕輪を使って、ウェインの傷を治した。
「じゃあ上に行きましょう。」
ケイトがそう言った時だった。
下の階段からフェイ達が上がって来た。
マリーンもいる。
ケイトはマリーンに駆け寄った。
「マリーン!
無事だったのね。
また会えて嬉しいわ。」
ケイトは笑顔で言った。
「ええ、私もまたケイトに会えて嬉しいわ。」
そう言ったマリーンの顔は、どこか悲しげだった。
「何かあったの?」
ケイトはマリーンに尋ねた。
マリーンは一度顔を伏せてから、ケイトを見た。
「妹との決着がついたのよ。
でも、私は妹を殺してしまった。
こんな形でしか妹を止められなかった。」
そう言ったマリーンはの瞳は悲しみに満ちていた。
「そうだったの・・・。」
ケイトは何と言っていいか分からなかった。
マリーンが妹を追って旅をしていることは知っていた。
でもその結末が妹を殺すことになるなんて。
「ごめん、マリーン。
私、何て言ったらいいか・・・。」
ケイトがそう言うと、マリーンはケイトの肩に優しく手を置いた。
「いいのよ、ケイト。
私はこうなることを覚悟していたの。」
そう言ってマリーンはケイトに微笑んだ。
「この人はマリーンの友達?」
エレンが言った。
「あ、フェアリー!」
ケイトは驚くようにして言った。
そう言えばマリーンの妹に首を絞められている時、マリーンがケイトの元にやって来た時にもフェアリーがいたような気がした。
「私エレンっていうの。
よろしくね。」
エレンは笑顔で言った。
「私はケイトよ。
よろしくね。」
そう言ってケイトはエレンの小さな手と握手した。
「さあ、まだやることがあるんでしょう。
先を急ぎましょう。」
マリーンが言った。
そうだった。
この上の階には地獄の門の鍵があるのだ。
何としても魔人にそれは渡せない。
「話は済んだか。
じゃあ上の階へ行くぞ。」
ウェインが言った。
こうしてケイト達は地獄の門の鍵のある最上階を目指した。

竜人戦記 第五十二話

  • 2010.09.27 Monday
  • 08:10
 マリーンはこれが最後の闘いになるだろうと思い、エリーナに矢を向けていた。
長い間エリーナを追って旅をしてきた。
しかし、それも今日ここで終わるのだ。
「いくわよ、マリーン!」
そう言ってエリーナが鞭を振ってきた。
マリーンはそれをかわす。
するとエリーナは連続で鞭を振ってきた。
しかしマリーンはエリーナの振った鞭を全てかわした。
マリーンはおかしいと思った。
いつもなら、連続で振ってくるエリーナの鞭をくらってしまう。
なのに今はかわすことが出来た。
マリーンは不思議に思いながら矢を放った。
マリーンの放った矢は、いつもより速かった。
エリーナは何とかそれをよける。
「どうしたの、マリーン。
何だか急に強くなったみたい。」
エリーナは言った。
マリーンはもしやと思って右手の指にはめた指輪を見た。
するとベッカルからもらった強者の指輪が小さく光っていた。
ベッカルは言っていた。
この指輪は、使った者の戦闘力を一時的に増すと。
今はのマリーンは、強者の指輪のおかげでいつもより強くなっていた。
エリーナが鞭を振ってくる。
マリーンはそれをかわすと、次の矢を放った。
矢はエリーナの右足に命中した。
そしてマリーンは連続で三本の矢を放った。
エリーナは矢をかわしきれず、右腕、左肩、そしてお腹に矢が命中した。
エリーナは苦しそうにしながら言った。
「どういうわけか分からないけど、いつもより強くなっているみたいね。
だったら私もそうさせてもらうわ。」
エリーナはそう言い、呪文を唱え始めた。
エリーナの周りに黒い霧が現れ、やがて黒い霧はエリーナの体に吸い込まれていった。
そして次にエリーナは体に刺さった矢を全て抜き、回復の呪文を使った。
エリーナの傷は完全に治った。
「ここからが本番よ。」
そう言ってエリーナが鞭を振ってくる。
その鞭はさきほどより速かった。
マリーンは何とかそれをかわすと、エリーナに向かって矢を放った。
しかしエリーナはあっさりと矢をかわしてしまった。
「自分を強化する呪文を使わせてもらったわ。
マリーンも強くなったみたいだけど、これで私の方が上よ。」
そう言ってエリーナは連続で鞭を振ってきた。
マリーンは鞭をかわしきれずにくらってしまった。
マリーンの白い肌から赤い血が流れる。
エリーナはなおも鞭を振ってくる。
マリーンは後ろへ飛んで何とかそれをかわすと、連続で矢を二本放った。
しかしエリーナは、マリーンの放った二本の矢を鞭で叩き落としてしまった。
そこへまたエリーナが鞭を振ってくる。
マリーンはかわしきれずにそれをくらった。
マリーンは鞭のダメージにより、膝をついてしまった。
「マリーン!」
エレンがそう叫んで両手を広げた。
辺り一面が花畑に変わる。
エレンが幻覚を使ったのだ。
「ふん、こんな幻覚に惑わされるとでも思ってるの。」
エリーナはそう言い、膝をついたマリーンに鞭を振ってきた。
マリーンはその鞭をくらって倒れてしまった。
するとエレンは魔法で自分の姿を消し、マリーンに近づいて来た。
そしてマリーンに回復の魔法を使った。
傷が癒えて立ち上がるマリーン。
それと同時に、エレンは幻覚を解いた。
花畑の風景が、元の部屋に戻る。
エリーナに幻覚は効かないと思って、エレンは幻覚を使うのをやめたのだ。
エレンは姿を消したままマリーンの傍にいた。
するとエリーナが言った。
「マリーン、以前にもそのフェアリーに助けられたわね。
今回もその邪魔なフェアリーのせいでマリーンにとどめをさしそこねたわ。」
エリーナは呪文を唱え、手を前に突き出した。
すると姿を消していたはずのエレンが、その姿を現した。
エリーナがエレンの透明になる魔法を解除したのだ。
「邪魔なフェアリー。
さっさと死になさい。」
そう言ってエリーナはエレンに鞭を振った。
エレンは慌てて逃げた。
間一髪、エレンはエリーナの鞭から逃れた。
「マリーン。」
少し離れた場所から、心配そうにマリーンの名前を呼ぶエレン。
マリーンは大丈夫よというふうに頷いてみせた。
そしてマリーンはエリーナに矢を放った。
エリーナはそれを鞭で叩き落とすと、マリーンに向かって鞭を振ってきた。
マリーンはそれを何とかかわすと、エリーナに距離をつめて、近距離から矢を放った。
マリーンの放った矢は、エリーナの右肩をかすめた。
マリーンは次の矢を構える。
その間にエリーナが鞭を振ってくる。
マリーンはエリーナの鞭をくらった。
しかしマリーンの放った矢もエリーナの右腕に命中した。
マリーンはエリーナの鞭をくらってよろめいた。
しかし次の矢を構える。
その間にエリーナが鞭を振ってくる。
しかし鞭を持つエリーナの右腕にはマリーンの放った矢が刺さっており、鞭はいつもより遅かった。
マリーンは鞭をかわすと、矢を放った。
エリーナはそれをかわそうとしたが間に合わず、左足に矢をくらった。
エリーナは一旦後ろへジャンプすると、体に刺さった矢を引き抜いた。
そして回復の呪文を使おうとした。
そうはさせまいとマリーンは連続で二本の矢を放った。
エリーナは呪文を唱えるのをやめて、マリーンの放った矢をかわした。
「中々やるわね、マリーン。」
そう言うと、エリーナは怪我をした右手から左手に鞭を持ちかえた。
そしてマリーンに向かって連続で鞭を振ってくる。
鞭のスピードは右手で振っている時より遅かった。
しかしマリーンはかわしきれずにエリーナの鞭をくらってしまった。
体から赤い血を流して倒れ込むマリーン。
「マリーン!」
マルスが叫んだ。
剣を抜いてマリーンを助けようとしている。
しかしマリーンは、「来ないで!」と言った。
「これは私の闘いなの。
私が決着をつけなければいけないの。」
マリーンは言った。
「そうね。
これはマリーンと私の闘いだものね。
だから私がマリーンを殺してあげる。」
エリーナはそう言うと、倒れているマリーンをいたぶるように鞭を振ってきた。
「あああああ!」
鞭の痛みに叫び声をあげるマリーン。
そこへエレンが回復の魔法を使おうとマリーンの傍に飛んで来た。
「目障りなフェアリーめ。」
エリーナはそう言ってエレンに鞭を振ろうとした。
マリーンは咄嗟にエレンをかばった。
エリーナの強烈な鞭をくらって苦しむマリーン。
「マリーン!」
エレンが叫ぶ。
「エレン、来ちゃダメ!」
マリーンは言った。
それからもエリーナはいたぶるようにマリーンを鞭で叩き続けた。
マリーンは苦しみの声をあげた。
エリーナの鞭によって、だんだんとマリーンの体が痛めつけられていく。
「マリーン!」
またマルスが叫んだ。
マリーンは助けに来ようとするマルスを見て、首を横に振った。
来ちゃダメ。
マリーンは心の中で言った。
エリーナは鞭でマリーンを叩くのをやめ、足でマリーンを蹴り飛ばした。
「うぐうう!」
苦しそうな声を出すマリーン。
「ねえ、マリーン。
あなたをいたぶるのはとっても楽しいわ。
もっと痛めつけてあげる。」
それからもエリーナは鞭でマリーンを叩き、足でマリーンを蹴り飛ばした。
マリーンは痛みとダメージで意識を失いそうになった。
しかし必死でそれを我慢した。
「マリーン、痛めつけられる気持ちはどう?」
エリーナはそう言って笑い、鞭を振ってくる。
「どうしたの?
もう終わり?
私を倒さなくていいの?」
エリーナは笑いながらそう言ってマリーンをいたぶる。
それを悔しそうに見つめるマルスとエレン。
それからしばらくエリーナはマリーンをいたぶった。
「じゃあ、そろそろ終わりにしましょうか。」
エリーナはそう言って大きく鞭を振りかぶった。
もう終わりだ。
私は死ぬんだ。
マリーンは思った。
何としてもエリーナを止めるつもりでいたけど、その思いは叶わなかった。
もし私が死んだら、誰がエリーナを止めるのだろう。
竜人が私にかわってエリーナを倒してくれるだろうか。
いや、それより、この場にいるマルスとエレンはエリーナに殺されてしまうだろうか。
様々な思いがマリーンの頭に浮かんだ。
「マリーン、最後に何か言いたいことはある?」
エリーナがマリーンを見下ろしながら言ってくる。
「もう一度、幼い頃に戻って、エリーナと遊びたかったわ。」
マリーンは言った。
その言葉を聞いたエリーナの表情が一瞬だけ変わった。
しかしエリーナはすぐに普段通りの表情に戻った。
「じゃあこれでお別れね。
さようなら、マリーン。」
そう言ってエリーナが大きく振りかぶった鞭を振ってきた。
マリーンは目を閉じた。
幼い頃から今までのことが走馬灯のように思い出される。
そしてエリーナの鞭がマリーンの体に当たった。
もう私は死んだ。
マリーンはそう思った。
しかしその時、パリン!という何かが壊れる音がした。
マリーンは目を開けてみた。
まだマリーンは生きていた。
そしてマリーンの首元で、身につけていたネックレスが壊れていた。
そのネックレスは、カーロイドの街でジェンキンスという剣士からもらったものだった。
確か身代わりの首飾りと言っていた。
身につけている者の命が危うくなった時、身代わりになってくれると言っていた。
何が起こったのか分からないというふうに立ち尽くすエリーナ。
マリーンはその一瞬を見逃さなかった。
素早く弓矢を構え、エリーナに向かって矢を放った。
エリーナはそれに気付いたが、かわすのが間に合わなかった。
マリーンの放った矢は、エリーナの心臓を貫いた。
「ぐうう!」
そう言って口から血を流し、ゆっくりと倒れて行くエリーナ。
「マリーン!」
そう言ってエレンがマリーンの傍に飛んでくる。
「今すぐ治してあげるからね。」
エレンは回復の魔法を使い、マリーンの傷を治した。
マリーンは立ち上がり、倒れたエリーナを抱きかかえた。
「エリーナ!」
マリーンは思わずその名を呼んでいた。
矢で心臓を貫かれたエリーナは、体から力が抜け、口から血を流し続けていた。
「マリーン・・・。」
エリーナがかすれるような声で言った。
「エリーナ。
ごめんなさい。
こんな方法でしかあなたを止められなくて。」
マリーンは泣いていた。
エリーナゆっくりと右手をあげる。
マリーンはその手を握った。
「ねえ、マリーン・・・、私ね・・・、ダークエルフになってから・・・、一度だけ昔の夢を見たことがあるの・・・。」
マリーンはエリーナの手を握りながらその言葉を聞いた。
「昔の・・・、楽しかった頃。
二人で・・・、仲良く遊んだ夢を・・・。」
「エリーナ!」
マリーンは泣きながらその名を呼んだ。
「私ね・・・、ダークエルフになってから・・・、昔のことなんてどうでもいいと思ってたの・・・。
でも・・・、一度だけ・・・、マリーンと遊ぶ・・・、幼い頃の夢を見た・・・。」
マリーンは強くエリーナの手を握った。
エリーナはマリーンの顔を見て、一瞬だけ微笑んだ。
「もし・・・、出来るなら・・・、もう一度だけ・・・、幼い頃に戻って・・・、マリーンと遊びたかった・・・。
叶わない夢だと知っていたけど・・・、もう一度だけ・・・、そうしたかった・・・。」
そう言うと、エリーナは動かなくなってしまった。
エリーナは死んだ。
マリーンは泣きながら妹の体を抱きしめた。
「ごめんなさい。
あなたを救えなくてごめんなさい。」
マリーンはそう言いながら、もう動かなくなった妹の体を抱きしめて泣き続けた。

竜人戦記 第五十一話

  • 2010.09.26 Sunday
  • 09:23
 マリーンはずっとエリーナの気を追って旅をしていた。
そして山奥の中にある塔までやって来た。
この塔の中からエリーナの気がする。
「この中にエリーナがいるわ。」
マリーンは弓矢を背負い直して言った。
「じゃあ中に入ろう。」
エレンが言う。
マリーンは頷き、エレンとともにその塔の中に入った。
中には上へと続く階段があった。
マリーンはその階段を上がった。
すると一つの部屋があり、そこに二人の人間が座り込んでいた。
マリーンはその人間達に近づいてみる。
人間達もマリーンの気配に気付いたようで、こちらを振り返った。
「あなた達は・・・。」
マリーンはその人間達の顔に見覚えがあった。
「あんたは確か・・・。」
向こうもこちらに見覚えがあるようだ。
座り込んでいるのは、一人の筋肉質な男性と、その男性と同じ服を来た女の子だった。
その女の子はマリーンを指差して言った。
「あなたは、確かマリーン。」
「ええ、そうよ。
あなたは確かリンね。」
マリーンは言った。
「知り合い?」
エレンが聞いてくる。
マリーンは頷いた。
この二人がいるといいうことは、ケイトもこの塔にいるということだ。
「ケイトは一緒じゃないの?」
マリーンはリンに尋ねた。
「うん。
ケイト達は先に上の階段に上がって行ったよ。」
リンは言った。
「この塔は一体何なの?」
マリーンは聞いた。
「この塔は地獄の門の鍵があるの。
魔人より先に地獄の門の鍵を見つける為に、この塔に来たんだよ。」
リンは立ち上がって答えた。
「そうなの。
じゃあ上に行けばケイトがいるのね。」
マリーンは聞いた。
「うん。
ウェイン達と一緒にいると思う。」
リンは疲れているのか、ふらつきながら立っていた。
すると男性の方がマリーンを見て言った。
「そう言えばさっき、あんたとは別のエルフがこの塔にやって来たぜ。
声をかけても無視して、上の階段に上がっていったぜ。」
「それは本当!」
マリーンは勢い込んで聞いた。
「本当だよ。
確か腰に鞭をつけていたと思う。」
リンが思い出すように言った。
「分かったわ。
私も上の階段に上がって来るわ。」
マリーンは部屋の奥にある階段を駆け上がった。
「何があるか分からないから気をつけてね。」
リンが階段を上がるマリーンを見て言ってくる。
マリーンは頷いて階段を上がった。
「フェアリーなんて珍しいものをつれてるな。」
階段を駆け上る途中、そう言った男性の声が聞こえてきた。
それからしばらく階段を上がると、また一つの部屋に出た。
その部屋には一人の剣士が座っていた。
マリーンはこの剣士を知っている。
マリーンは二度もこの剣士に助けられたのだ。
「マルス。」
マリーンはその剣士の名前を呼んだ。
「マリーン!」
マルスは振り向いて言った。
「また知り合い?」
エレンが尋ねてくる。
マリーンは頷きながら、マルスの方に駆け寄った。
「ひどい傷・・・。
大丈夫?」
マリーンはマルスを見て言った。
「ああ、何とかな。
マリーンは元気そうだな。
おまけにフェアリーなんて珍しいものをつれているじゃないか。」
マルスは笑いながら言った。
「私は何とか無事に旅をしているわ。
このフェアリーに助けられたこともあったけど。」
そう言うとエレンは胸を張って笑った。
「そうか。
無事で何よりだ。」
マリーンはマルスに恩がある。
二度も助けてもらったのに、何もお返しが出来ていなかった。
「ねえ、エレン。
魔法を使ってマルスの傷を治してあげて。」
マリーンは言った。
「うん、いいよ。」
エレンはマルスに近づき、回復の魔法を使った。
マルスの傷が癒えていく。
こんなことで恩返しが出来たとは思わないが、マルスの傷がなおったことでマリーンは嬉しかった。
傷が治って元気になったマルスは、立ち上がってマリーンに言った。
「さっきここを一人のエルフが階段を上がっていったんだ。」
マルスは言った。
「ええ、知っているわ。
きっと私の妹よ。」
マリーンは言った。
「そうだろうと思ったよ。
確かあのエルフは以前にマリーンと闘っていたもんな。
そしてあれは自分の妹だと言っていたはずだよな。」
マルスは言った。
「ええ、それで危ない所をあなたに助けられた。
感謝しているわ。」
マリーンは微笑んで言った。
マルスは照れたように頭を掻いた。
「今、上にはウェイン達が上がって行っている。
マリーンの妹のエルフと遭遇しているかもしれない。」
マルスは焦ったように言った。
「そうね。
急いで階段を上がりましょう。」
こうしてマリーンはマルスとともに階段を駆け上がった。
そして階段を駆け上がっていると、大剣を背負った剣士と、エリーナが向かい合っているのが見えた。
あの大剣を背負っているのが竜人だろう。
そしてエリーナはシスターの首を腕で絞めていた。
おそらくあのシスターがケイトだろう。
マリーンはエリーナの近くまで駆け上がると、弓矢を構えて言った。
「エリーナ、そのシスターを離しなさい!」
エリーナはマリーンの方を向いた。
そしてケイトもマリーンの方を見た。
ケイトの唇が、マリーンという名前を呼ぶように動いている。
きっとエリーナに首を絞められて声が出ないのだろう。
「また追って来たの。
本当にしつこいわね。」
エリーナはマリーンを見て言った。
「私はどこまでもあなたを追いかけるわ。
それよりケイトを離しなさい!」
するとエリーナは笑った。
「このシスター、ケイトっていうのね。
マリーンのお友達か何か?」
「ええ、そうよ。
ケイトは私の友達よ。」
そう言ってマリーンはエリーナに弓矢を向ける。
するとエリーナはケイトを盾にするようにマリーンの方に向けた。
「矢を放ったら、このケイトって子に当たっちゃうわよ。」
そう言われてマリーンは矢を放てなかった。
しかしその時、マリーンに気をとられているエリーナに、竜人が斬りかかった。
それに気付いたエリーナは、竜人の方にケイトを突き飛ばした。
竜人は突き飛ばされたケイトを抱えた。
「ウェイン、お前達は先に上へ上がってろ!」
マルスが叫ぶ。
そういえば竜人の名前はウェインといったかなと思い出しながら、マリーンはエリーナに矢を放った。
エリーナは体をよじって矢をかわした。
ウェインはケイトを抱えて階段を駆け上がって行く。
「待ちなさい!」
それを追おうとするエリーナ。
しかしマリーンはエリーナを呼びとめた。
「私に背中を向けていいの?
矢を放つわよ。」
そう言われてエリーナは悔しそうに唇を噛みながらマリーンを見た。
「マリーン!」
ウェインに抱えられて階段を上がっていくケイトが叫んだ。
マリーンはケイトの方を見て微笑んだ。
ケイトは心配そうにマリーンを見ていた。
やがてウェインとケイトの姿は見えなくなった。
「まったく。
いつもいつも私の邪魔をしようとするわね、マリーン。」
エリーナは怒った口調でそう言った。
「ええ、そうよ。
私の目的はあなたを止めることだもの。
いくらでも邪魔してあげるわ。」
マリーンはエリーナを見据えて言った。
「どうやらここできっちり決着をつけた方がいいみたいね。」
エリーナは言った。
「私もそう思うわ。」
マリーンは答えた。
「ここじゃ闘いづらいわ。
下にあった部屋に下りて、そこで決着をつけましょう。」
そしてマリーン達とエリーナは、マルスがいた部屋まで下りて来た。
「マリーン、今度こそ殺してあげる。」
そう言ってエリーナは腰の鞭を手に取った。
「俺も一緒に闘うよ。」
マルスは言った。
しかしマリーンはそれを断った。
「私はどうしてもこの手で決着をつけたいの。
マルスの気持ちは嬉しいけど、私一人で闘うわ。」
マリーンは言った。
「私も一緒に闘っちゃダメなの?」
エレンが聞いてくる。
「そうね。
エレンとマルスは私の闘いを見守っていてちょうだい。」
マリーンは真剣な顔で言った。
「ああ、分かった。」
マルスは頷いた。
しかしエレンは頷かなかった。
「私も一緒に闘う!」
エレンは不満そうに言った。
「でもこの闘いは・・・。」
「もう決めたの!
私も一緒に闘う!」
マリーンが言い終わる前にエレンは言った。
マリーンは仕方ないわねというふうに頷いた。
「もう話は済んだ?」
エリーナが聞いてくる。
「エリーナ、もし私を殺したら、そのあとはどうするつもりなの?」
マリーンは聞いた。
エリーナはしばらく考える仕草を見せてから言った。
「そうね。
この世の人間を殺す旅にでもで出ようかしら。」
エリーナはそう言って笑った。
マリーンはその言葉を聞いて、何としてもエリーナを倒さなければならないと思った。
そしておそらくこれがエリーナとの最後の闘いになるだろうと思った。
この闘いの末、きっとどちらかが命を落としている。
しかしマリーンは、そんな覚悟はとうにできていた。
「じゃあいくわよ、マリーン。」
そう言ってエリーナは自分の足元で鞭を振った。
マリーンも弓矢を構えてエリーナに向けた。
マリーンとエリーナの、最後の闘いが始まった。

竜人戦記 第五十話

  • 2010.09.25 Saturday
  • 09:09
 地獄の門の鍵のある塔の中に入ると、リオンという見張り番の武道家がいた。
フェイとリンは協力して、そのリオンという強敵を倒した。
闘いで疲れているフェイとリンを残して、ケイト達は塔の上へと続く階段を上がった。
しばらく上に続く階段が続いた。
そして一つの部屋になっている場所に上がった。
階段はその部屋の奥にあった。
「多分ここにもリオンのような見張り番がいるんだろうな。」
マルスが言った。
そしてケイト達が部屋を進んで行くと、階段の手前に魔法陣が現れた。
そこから一人の剣士が出てくる。
綺麗な顔立ちをしていてるが、その目つきは鋭かった。
鎧を着ており、手には剣を持っている。
おそらくこの剣士も塔の見張り番だろう。
「俺はジョーイという。
トリスに頼まれて、この塔の見張り番をしている。」
ジョーイと名乗った剣士はそう言った。
するとマルスが剣を抜いて前に出た。
「こいつは俺に闘わせてくれ。」
マルスは言った。
ケイトはウェインを見た。
ウェインは闘うそぶりを見せず、部屋の壁まで歩いて行ってそこにもたれかかった。
どうやらマルスに闘いを任せるらしい。
ケイトはウェインの横に並んでマルスを見守ることにした。
「お前が俺の相手か。」
ジョーイがマルスを見て言った。
「ああ、そうだ。
お前を倒して上の階段に進ませてもらう。」
マルスは剣を構えて言った。
「いいだろう。
かかってこい。」
そう言ってジョーイも剣を構えた。
しばらく二人は睨み合っていた。
そして先に動いたのはジョーイだった。
素早くマルスに斬りつけてくる。
マルスはそれを剣で受け止めると、自分もジョーイに斬りかかった。
ジョーイはそれをあっさりとかわすと、マルスの足に斬りつけた。
マルスの足から血が流れる。
しかしマルスはひるむことなくジョーイに斬りかかっていく。
マルスは激しい攻撃を繰り出した。
しかしジョーイはそれを全て剣で受け流している。
マルスの剣はかすりもしなかった。
ジョーイは一旦後ろに飛んだ。
それを追撃するマルス。
そしてマルスが斬りかかった所をジョーイがかわすと、マルスの左腕に斬りつけた。
「くっ!」
マルスは少し苦しそうな声をあげた。
しかしマルスは攻撃をやめない。
連続でジョーイに斬りかかる。
しかしジョーイは余裕でマルスの剣を防いでいる。
どう見てもマルスは劣勢だった。
そしてジョーイの剣がマルスの右肩に突き刺さった。
「ぐわあ!」
痛みに叫び声をあげるマルス。
ジョーイはマルスの右肩から剣を引き抜くと、ジョーイの首をめがけて斬りかかった。
それをしゃがんで何とかかわすマルス。
しかしジョーイは攻撃をやめない。
ジョーイは再びマルスの足に斬りつけた。
マルスは足に深いダメージを負い、苦しそうにした。
ジョーイはさらにマルスに斬りつけてくる。
マルスはジョーイの剣を防ぐので精一杯だった。
しかしジョーイの剣はマルスの剣の隙間をぬって斬りつけてくる。
右腕を斬られたマルス。
危うく剣を落としそうになった。
マルスもジョーイに斬りかかるが、両腕を斬りつけられているマルスの剣は遅かった。
ジョーイはマルスの振った剣を片手で掴んでみせた。
「どうした?
お前の実力はこんなものか?」
片手で掴んだ剣を離し、ジョーイはそう言いながら斬りつけてくる。
マルスは必死に防ぐ。
ジョーイの剣がマルスの体に当たる。
しかしマルスは鎧を着ていたおかげで助かった。
しかし斬られた鎧は大きく傷ついていた。
「この勝負、マルスは不利だな。」
ウェインが言った。
「マルスはジョーイに勝てないっていうことですか?」
ケイトは心配になって聞いた。
「その可能性が高い。
マルスは基本ができているいい剣士だが、決め手に欠ける。
このまま闘いが長引けば、負けるかもしれないな。」
「じゃあウェインさんが助けてあげて下さい!」
ケイトは言った。
しかしウェインは首を横に振った。
「あいつは自分で闘うと言ったんだ。
この闘いはあいつのものだ。
俺達が手を出すべきじゃない。」
ウェインはマルスが闘っている方を見ながら言った。
「でも、そんなこと言ってもしマルスが死んじゃったらどうするんですか!」
ケイトは叫ぶように言った。
するとウェインはケイトの目を見て言った。
「お前はマルスの仲間だろう。
だったら最後まであいつを信じて見守ってやれ。」
ウェインにそう言われ、ケイトは十字架を握りながらマルスを見た。
かなり苦戦を強いられているマルス。
ジョーイの剣がまたマルスの体に当たった。
マルスの鎧は大きく傷つけられ、体の一部が剥き出しになった。
そこへジョーイが斬りつける。
マルスは体を斬られて血を流した。
「ぐううう!」
苦しそうな声を出すマルス。
それでもマルスは諦めない。
必死にジョーイと闘っている。
しかしジョーイの剣は、だんだんとマルスを追い詰めていく。
このままではマルスがやられてしまう。
ケイトはそう思った。
マルスはダメージを受け、動きも鈍くなっていた。
ジョーイはとどめとばかりに、マルスの首を狙ってきた。
その時、マルスは自分の剣をジョーイに投げつけた。
ジョーイは一瞬ひるんだが、マルスの投げた剣を自分の剣で振り払った。
そこへマルスがジョーイに飛びかかった。
マルスはジョーイの両腕を掴んだ。
それを離そうとするジョーイ。
マルスはジョーイの両腕を掴んだまま、頭突きを放った。
予想外の出来事にうろたえるジョーイ。
そしてマルスはジョーイの体を蹴り飛ばした。
ジョーイは大きく後ろへよろめいた。
マルスは投げた剣を拾って、再びジョーイに向かって投げつけた。
マルスの投げた剣は、ジョーイの右肩に刺さった。
「この!」
そう言って刺さった剣を抜こうとするジョーイ。
しかしマルスはジョーイに駆け寄ると、ジョーイの右肩に刺さった剣を握った。
そしてそれを深く刺し込んだ。
「ぐわああ!」
痛みに叫び声をあげるジョーイ。
マルスはジョーイの右肩から剣を引き抜くと、ジョーイの右腕に斬りつけた。
そして続けてジョーイの左腕も斬りつけた。
両腕を斬られたジョーイ。
「この野郎!
やりやがったな!」
ジョーイはそう言って剣を振ってくる。
しかし両腕を斬られたジョーイの剣は遅かった。
マルスも両腕を斬られている。
しかしマルスは気合を込めて剣を振っていた。
ジョーイの剣より、マルスの剣の方が速かった。
マルスはもう一度ジョーイの右腕に斬りつけた。
右腕に深いダメージを負って、ジョーイは左腕でしか剣を握れなくなった。
「うおおおお!」
マルスは気合の声とともにジョーイに斬りかかる。
傷付いた左腕でしか剣を扱えないジョーイは、マルスの攻撃を防ぎきれなかった。
マルスの剣はジョーイの足を斬りつけた。
ジョーイは苦しそうな声を出す。
そしてマルスは再びジョーイの左腕を斬りつけた。
剣を握っていた左腕に大きくダメージを負って、ジョーイは剣を落としてしまった。
そこへマルスがジョーイの首に剣を当てる。
「もう勝負はついた。
これ以上続けるなら、首を斬り落とす。」
マルスは言った。
するとジョーイは降参というように両手をあげた。
「参った。
お前の勝ちだよ。」
ジョーイはそう言った。
その言葉を聞き、マルスは剣を鞘におさめた。
「中々楽しい闘いだったよ。」
ジョーイはそう言って出て来た魔法陣に戻った。
「強かったぜ、お前。
じゃあな。」
ジョーイはマルスにそう言うと、魔法陣の中に消えて行った。
「ふう。」
マルスはホッとしたように息を吐き出した。
ケイトがマルスに近寄って聖者の腕輪で傷を治そうとした。
しかしフェイ達と同様に、マルスもそれを断った。
「この先には何があるか分からないからな。
俺の傷は大したことはない。
ケイトはいつでも聖者の腕輪が使えるように、力を温存しておくべきだ。」
そう言ってマルスは笑ってみせた。
「でも・・・。」
「いいから。
俺のことは心配するな。
俺はちょっとこの部屋で休んでいくよ。
ウェインと一緒に先に上に行っててくれ。」
マルスにそう言われ、ケイトは聖者の腕輪でマルスの傷を治すのをやめた。
「上に行くぞ。」
ウェインに促され、ケイトは歩き始めた。
「マルス。
上で待ってるから必ず来てね。」
ケイトの言葉にマルスは頷いた。
ケイトはウェインとともに上へと続く階段を上って行った。
その頃、一人のエルフが地獄の門の鍵のある塔にやって来た。
そのエルフは塔の中に入り、階段を上がり始めた。
まずフェイとリンがそのエルフに気付いた。
「誰だ、あんた?」
フェイはそのエルフを見て言った。
そのエルフはフェイ達を無視して階段を上がって行った。
「おい、ちょっと待てよ!」
フェイはそう言って追いかけようとしたが、リオンとの闘いでまだ体にダメージが残っていた。
フェイとリンは、階段を上がって行くそのエルフを見ていることしか出来なかった。
すると今度はマルスのいる部屋にそのエルフは上がって来た。
「お前は確か、マリーンと闘っていた・・・。」
そのエルフを見て、マルスは思い出すように言いかけた。
そのエルフはマルスも無視して階段を上がって行った。
マルスもダメージを負っており、そのエルフを追いかけることが出来なかった。
そのエルフはどんどん階段を上がって行く。
すると、やがて背中に大剣を背負っている剣士と、その後ろをついて行くシスターが見えた。
そのエルフは階段を駆け上がり、シスターを捕まえると、腕で首を絞めた。
「きゃあ。」
ケイトは叫んだ。
その声を聞いて振り向くウェイン。
「魔人の気を追って来てみれば、まさか竜人がいたとはね。」
ケイトの首を絞めているエルフは言った。
そのエルフは腰に鞭をつけていた。
「離して!」
ケイトは叫ぶ。
このエルフはさっき魔人の気を追って来たと言っていた。
しかし魔人なんてどこにもいない。
ケイトはそう思いながらもエルフの腕からのがれようと身をよじった。
しかしエルフはケイトの首を絞めている腕に力を込めた。
「うぐ!」
ケイトはあえぐように言った。
「ねえ、竜人。
取り引きしましょ。
地獄の門の鍵の地図と、その封印を解く石を渡して。
そしたらこのシスターを解放してあげる。」
するとウェインは言った。
「地獄の門の鍵の地図は魔人に奪われた。
そして何よりこの塔に地獄の門の鍵がある。」
「あら、そうなの?」
ケイトの首を絞めているエルフは驚くように言った。
「この塔に地獄の門の鍵があるのね。
どうりでここから魔人の気がするはずだわ。」
そのエルフは不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「魔人だと?
奴はどこにいる。」
ウェインは言った。
「ふふふ、気付いていないのね。
魔人がどこにいるか、それは教えられないわ。
そんなことより取り引きよ。
地獄の門の鍵の地図は魔人に奪われたのよね。
なら地獄の門の鍵の封印を解く石を渡してちょうだい。
さもなくば、このシスターの命はないわよ。」
ウェインはじっとそのエルフを睨んでいた。
ケイトは首をきつく絞められて声が出せない。
息をするもの苦しい。
ケイトは心の中で思った。
私のことはいいから、このエルフに地獄の門の鍵の封印を解く石を渡したらダメ。
ケイトは強くそう思いながら、首を絞められたままウェインを見つめていた。

竜人戦記 第四十九話

  • 2010.09.24 Friday
  • 09:25
 カレンというゴーストのいた村から旅を続けること二週間。
ケイト達はついに地獄の門の鍵のある塔までやって来た。
塔は高くそびえ立っており、入口の扉には魔法陣が描かれている。
「魔人は襲って来ねえな。」
フェイが言った。
四週間前、ケイト達は魔人に地獄の門の鍵の地図を奪われた。
しかし地獄の門の鍵の封印を解く石はケイト達が持っている。
だからこの塔まで来れば、きっと魔人が襲ってくるだろうとみんな予想していたのだ。
しかし魔人が襲ってくる気配はない。
「まあいいじゃないか。
魔人が襲ってこないのにこしたことはない。
早くこの塔に入ろう。」
マルスが言った。
地獄の門の鍵の塔の扉には魔法陣が描かれている。
きっと勝手に誰かが入れないように封印がしてあるのだろう。
ウェインはトリスからもらった地獄の門の鍵のある塔に入る為の鍵を取り出した。
その鍵で魔法陣の描かれている扉を開ける。
扉は一瞬光ってから開いた。
中は広い部屋で、右側に上に続く階段があった。
きっと塔の最上階に地獄の門の鍵があるのだろう。
ケイト達は塔の階段を上った。
するとそこにも広い部屋があった。
階段は部屋の奥にある。
ケイト達は奥の階段に向かって歩き始めた。
すると階段の手前に魔法陣が現れて、筋肉質な体をした鋭い目つきをした男が現れた。
着ている服は、フェイ達が着ている物とそっくりだった。
どうやらこの男も武道家のようである。
その男はケイト達に向かって言った。
「お前達は地獄の門の鍵を手に入れようとしているのか?」
「ああ、そうだ。」
フェイが答えた。
するとその男は言った。
「俺の名前はリオンという。
武道家だ。
トリスに頼まれて、この塔の番をしている。」
リオンと名乗った男はそう言った。
そう言えばトリスは、地獄の門の鍵のある塔には何人か強力な見張りをつけていると言っていた。
リオンもその一人ということだろうか。
「俺の倒さねば、この先へは進めない。」
そう言ってリオンは拳を前に出して構えた。
ウェインが大剣を構えて前に出る。
それをフェイが止めた。
「ちょっと待ってくれ、ウェイン。
あいつは武道家だ。
ならあいつの相手は俺がする。」
そう言ってフェイはリオンに近づいて行った。
「私だって武道家だもん。
私も闘う。」
リンもそう言ってリオンに近づいて行く。
「どうする、ウェイン。
ここはフェイ達に任せるか?」
マルスが言った。
ウェインはフェイ達を見てから、大剣を背中に戻した。
「あいつらの好きなようにやったらいい。」
ウェインは言った。
どうやらフェイ達に闘いを任せたようである。
「お前達も武道家だな。」
フェイ達を見て、リオンが言った。
「おうよ。
まだ修行中の身だけどな。」
フェイが答える。
「そうか。
しかし修行中の身といえど、手加減はせんぞ。」
リオンは構えながら言った。
「望むところだ。」
そう言ってフェイも構える。
「私だって修行中の身だけど、負けないもん。」
リンも構えた。
「ではいくぞ!」
リオンがフェイに素早く距離を詰めると、見えないほど速いパンチを打ってきた。
フェイは何とかそれを防ぐ。
リオンは続けて蹴りを放った。
フェイはそれを防ごうとしたが間に合わず、胸にリオンの蹴りをくらってしまった。
後ろへ大きく吹き飛ばされるフェイ。
そしてフェイを追撃するリオン。
リオンの攻撃は凄まじかった。
一発一発の攻撃に重みがあり、フェイの体に攻撃が当たる度にバシン!という大きな音が響いてくる。
フェイは防戦いっぽうだった。
「お兄ちゃん!」
そこへリンが助けに入る。
「やあ!」
そう叫びながらリンは飛び蹴りを放った。
しかしリオンは片手でリンの飛び蹴りを防ぐと、リンに蹴りを放った。
それをくらって吹き飛ばされるリン。
「このお!」
フェイが怒って反撃に出た。
強烈なパンチをリオンに打ち込む。
ドスン!という低い音が響いた。
リオンはそれを両手で防ぐと、ニヤリと笑った。
「中々いいパンチをしているな。」
そう言うと、リオンも強烈なパンチを放った。
フェイの時より大きな音が響く。
フェイはリオンのパンチを両手で防いだが、そのダメージは両手を貫通して体に伝わってきた。
「ぐはあ!」
そう言いながらフェイは倒れた。
そして倒れたフェイに拳を打ち込むリオン。
「ぐふう!」
フェイは苦しそうな声をあげた。
そこへリンが助けに入る。
リオンに向かって何発もパンチを打ち込んだ。
しかしリオンは片手でそれを防いでいる。
リンは強烈な回し蹴りを放った。
リオンはしゃがんでそれをかわすと、リンのお腹に拳を打ち込んだ。
「ぐうう!」
リンはお腹を抑えて膝をついた。
そしてリオンは、リンの頭に蹴りを放った。
リンはそれをまともにくらって倒れ込んだ。
「この野郎!」
倒れていたフェイは何とか起き上がり、リオンに向かって肘打ちを放った。
リオンはそれをかわすと、膝蹴りをフェイに放った。
「ぐはああ!」
フェイはそれをくらって、苦しそうな声を出しながら再び倒れ込んだ。
リオンは強かった。
フェイとリンとでは敵わないほどに。
「ウェインさん、フェイとリンを助けて!」
ケイトは言った。
しかしウェインは首を横に振った。
「まだ闘いは終わっていない。
あいつらを信じて見守っていろ。」
ウェインはフェイ達を見ながらそう言った。
「何だ、もう終わりか?」
リオンが倒れ込んだフェイとリンを見て言う。
するとフェイはよろめきながら立ち上がった。
「まだまだ・・・。」
フェイはふらつきながら構えた。
「リン、しっかりしろ!」
フェイは倒れているリンに声をかけた。
するとリンもよろめきながら立ち上がった。
「勝負はこれからだ。」
フェイはそう言うと、リオンにパンチを放った。
それを片手で受け止めるリオン。
しかしリオンの後ろから、リンが足払いを放った。
それをくらってよろけるリオン。
そこへフェイが強烈なパンチを放った。
「はあ!」
フェイはかけ声とともにリオンに拳を打ち込んだ。
リオンは両手でそれを防ぐ。
そこへリオンの後ろからリンが回し蹴りを放った。
リンの回し蹴りは、リオンの頭に当たった。
「くっ!」
そう言ってリオンはリンの方を向いて攻撃をしかけようとした。
するとリオンの後ろからフェイが膝蹴りを放った。
それをくらってぐらつくリオン。
そしてリンはリオンにまた足払いを放った。
転びそうになるリオン。
そこへフェイが飛び蹴りを放つ。
リオンはそれをくらって倒れ込んだ。
そしてリンは倒れ込んだリオンに拳を打ち込もうとした。
しかしリオンは素早く起き上がってそれをかわした。
フェイとリンは、リオンを挟み打ちするように立っていた。
「中々やるな。」
リオンがニヤリと笑った。
そしてフェイに向かって蹴りを放ってきた。
フェイはそれを受け止めると、自分も蹴りを放った。
それを受け止めるリオン。
しかしリオンの後ろから、リンが強烈なパンチを放った。
ドスン!という低い音がして、リオンの体に当たった。
「ぐうう!」
リオンは苦しそうな声を出した。
そこへすかさずフェイも強烈なパンチを放つ。
再びドスン!という低い音が響いて、リオンの体に当たった。
「ぐはああ!」
リオンは苦しそうな声をあげた。
リオンは、フェイとリンの連携攻撃に翻弄されていた。
リオンは片手でフェイに、片足でリンに攻撃した。
しかし二人はそれをかわすと、同時に蹴りを放った。
フェイの蹴りはリオンのお腹に、リンの蹴りはリオンの頭に当たった。
リオンは大きくよろめいた。
そしてそこへ二人揃って強烈なパンチを放った。
ドスン!という音が二重に響く。
二人のパンチをくらって、リオンは倒れた。
そしてフェイが倒れているリオンの顔めがけて拳を打ち込んだ。
しかしその拳は寸止めだった。
「どうだい?
まだ続けるか?」
フェイは拳を寸止めしたままリオンに言った。
「いや、お前達の勝ちだ。」
そう言うとリオンは二コリと笑った。
「お前達は立派な武道家になれるだろう。
将来が楽しみだな。」
リオンがそう言うと、フェイはリオンに手をさしのべた。
それを掴んで起き上がるリオン。
「あんた相当強かったぜ。
きっと俺一人じゃ負けてた。」
フェイはそう言ってリンの方を見た。
リンはニコッと笑ってピースした。
「お前達の勝ちだ。
上の階段へ上がるがいい。」
リオンは言った。
「ああ、そうさせてもらうぜ。」
フェイは笑って言った。
「お前達、立派な武道家になれよ。」
リオンはフェイとリンにそう言うと、出て来た魔法陣へと戻って行った。
リオンは魔法陣の中へと消えて行った。
ケイトはフェイとリンに近づき、聖者の腕輪を使ってダメージを回復させようとした。
しかし二人はそれを断った。
「俺達は大した怪我はしてねえからいいよ。
それよりこの先は何があるか分からねえからな。
その時の為に力を温存しとけよ。」
フェイはそう言った。
「でも・・・。」
ケイトは二人が深刻なダメージを受けていないか心配だった。
「私達なら大丈夫だよ。」
リンが笑って見せる。
「二人がそう言うなら。」
ケイトは聖者の腕輪で二人を回復させるのをやめた。
「そのかわり、俺達はちょっとここで休んでいくからよ。
お前達は先に上の階段に上がって行ってくれ。」
フェイがそう言った。
「上の階段へ行こう。」
ウェインがケイトを促した。
ケイトは頷き、フェイとリンに言った。
「じゃあ先に行ってるから。
二人も休んだら上まで来てね。」
その言葉にフェイとリンは頷いた。
「さあ、行こう。」
マルスがそう言い、ケイト達は上へと続く階段を上がり始めた。
そこでケイトは後ろを振り返った。
カレンというゴーストがいた村を出て以来、ずっと背後に違和感を感じていた。
しかし振り返っても誰もいないのだ。
ケイトは背後の違和感を気にしながらも、ウェインとマルスとともに、上へと続く階段を上がって行った。

竜人戦記 第四十八話

  • 2010.09.23 Thursday
  • 09:06
 宿屋に泊っていると、ケイトとリンの部屋に、突然現れた半透明の女性。
ケイトはしばらくその半透明の女性を見ていた。
長い髪に美しい顔をしている。
リンはその半透明の女性を見て怯えていた。
どうやらこの半透明の女性をお化けだと思って怖がっているらしい。
しかしリンの考えは当たっていた。
ケイトは半透明の女に性尋ねた。
「あなたはゴーストね。」
ケイトは言った。
半透明の女性は頷く。
普通人は死ねば天に召される。
しかしそうならない場合というのは何か理由があるのだ。
そしてこうやってゴーストが人前に姿を現す時というのは、何か伝えたいことがあるのだ。
「あなたの名前は何て言うの。
私に何か伝えたいことがあるんでしょう。」
ケイトがそう言うと、ゴーストの女性は頷いて言った。
「私の名前はカレン。
悪い奴に魂を縛られているの。」
「悪い奴に魂を縛られている?」
ケイトは聞き返した。
「そう。
あなたはシスターでしょ。
なら私の魂を解放して。」
そう言ってカレンは宙に浮いたまま宿から去って行こうとする。
「待って!
一体どういうこと?」
ケイトは言った。
「村の奥にある墓地に来て。」
そう言うとカレンは消えた。
ケイトはしばらくカレンが消えた方を見ていた。
迷える魂を天に送り届けるのはシスターの仕事だ。
ケイトはカレンの言っていた村の奥にある墓地に行ってみようと思った。
ケイトは部屋を出て行こうとした。
そこへリンがしがみついて来た。
「ちょっとケイト、一人にしないでよ。」
リンは怯えた表情で言ってくる。
「でも私は行かないと。
迷える魂を救うのがシスターの仕事だから。」
ケイトはリンに向かって言った。
「じゃあ私もついて行く。
部屋で一人で残されるよりマシだもん。」
こうしてケイトとリンは、村の奥にある墓地へと向かった。
外は夜だった。
暗い中を月明かりを頼りに村の奥へと進んで行く。
するとそこには墓地があった。
リンがぎゅっとケイトの腕にしがみつく。
そう言えば、リンは以前にゾンビも怖がっていた。
どうやらリンは、ゾンビやゴーストが苦手らしい。
ケイトは墓地の真ん中まで歩いて行く。
するとカレンが現れた。
「あなたの魂を救いに来たわよ。
あなたの魂を縛っている悪い奴っていうのは、一体どこにいるの?」
ケイトはカレンに尋ねた。
するとカレンは墓地の真ん中にある、黒い大きな石を指差した。
ケイトはその黒い大きな石を見た。
何やら邪悪な気を感じる。
「来る。
出て来る。」
カレンはその黒い石を見ながら言った。
すると黒い石から、煙のような物が現れて、その中に邪悪な気を放つ黒い姿をした男性のゴーストがいた。
カレンは怯えるようにその黒いゴーストを見た。
「こいつがあなたの魂を縛っているのね。」
ケイトは黒いゴーストを見ながら言った。
黒いゴーストはニヤリと笑い、ケイトに襲いかかって来た。
「危ない!」
リンがケイトの体を引っ張って黒いゴーストから遠ざける。
黒いゴーストはケイト達を見てまたニヤリと笑った。
「ここは俺の縄張りだ。
ここにいる魂は俺が好きにしていいんだ。
誰にも邪魔はさせない。」
そう言うと黒いゴーストは爪を剣のように長く伸ばした。
「お前達も殺して、その魂を俺の好きにさせてもらう。」
そう言って黒いゴーストは襲いかかってきた。
黒いゴーストの剣のような爪がケイトに襲いかかる。
「ケイト!」
そう叫んで、リンがまたケイトの体を引っ張る。
間一髪、ケイトは黒いゴーストの爪から逃れた。
そしてリンがケイトの前に立った。
「ゴーストを怖がってちゃ、立派な武道家になれない。
このゴーストは私が倒してみせる。」
そう言ってリンは黒いゴーストにパンチを放った。
しかしリンのパンチは黒いゴーストの体をすり抜けてしまった。
リンは続けて蹴りも放つ。
しかしその蹴りも黒いゴーストの体をすり抜けてしまった。
「人間の攻撃は俺には当たらんよ。」
そう言って黒いゴーストは爪でリンに斬りつけた。
リンは腕を斬られて血を流してしまった。
それでもリンは攻撃をやめない。
パンチや蹴りを黒いゴーストに放つ。
しかしリンの攻撃は全て黒いゴーストの体をすり抜けた。
黒いゴーストが再びリンに斬りつける。
リンは足を斬られてしまった。
「こいつめえ!」
悔しそうに叫ぶリン。
そしてそんな光景をカレンは不安そうに見ていた。
「お前を殺して、その魂を俺の物にさせてもらう。」
そう言って黒いゴーストはリンの体をめがけて爪を突き刺そうとした。
その時ケイトは聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から光が放たれる。
その光に当てられた黒いゴーストは「ぎゃああああ!」と苦しそうな声を出した。
「貴様!」
そう言って黒いゴーストがケイトの方を向く。
ケイトはまた聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から光が放たれる。
しかしその光をかわしたゴーストは、ケイトに向かって襲いかかって来た。
黒いゴーストの爪がケイトの腕を斬り裂く。
「きゃああ!」
痛みに叫び声をあげるケイト。
黒いゴーストはなおもケイトを斬りつけようとした。
しかしその時、「やあ!」というリンの声が響いいた。
リンの放った飛び蹴りが黒いゴーストを蹴り飛ばしていた。
リンは全身の気を高めていた。
そして黒いゴーストに言った。
「どう。
気功を使った攻撃なら効くでしょ。」
そう言ってリンは構える。
「気功だとお!
何だそれは。」
そう言いながら黒いゴーストがリンに襲いかかってくる。
リンは黒いゴーストの爪をかわすと、強烈な蹴りをはなった。
「ぐふう!」
リンの蹴りをくらって苦しそうな声を出す黒いゴースト。
ケイトも気功というのがどういうものか分からなかったが、どうやらリンの攻撃が当たるようになったようである。
「この小娘があ!」
黒いゴーストは怒りながらリンに襲いかかって来る。
しかしリンは黒いゴーストの爪をかわすと、何発もパンチを打ち込んだ。
「ぐはああ!」
苦しむ黒いゴースト。
「すごい、リン!」
ケイトはリンに向かってそう言っていた。
リンは黒いゴーストに攻撃をしかける。
パンチに蹴り、そして肘打ちに膝蹴りだ。
黒いゴーストは、リンの攻撃にめった打ちにされた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
黒いゴーストが言った。
「何よ。」
リンが構えたまま言う。
「もう悪いことはしない。
そこの女の魂も解放する。
だから許してくれ。」
黒いゴーストは大人しくなって謝り始めた。
「その言葉は本当?
嘘をついてるんじゃないでしょうね。」
リンがきつい口調で黒いゴーストに言う。
「本当だ。
嘘じゃない。
約束する。」
黒いゴーストはしきりに謝っている。
「こう言ってるけど、どうしようか、ケイト?」
リンがこちらを向いて尋ねてくる。
「そこまで謝っているんだし、もう許してあげましょう。」
ケイトはそう言った。
「ケイトがそう言うなら、許してあげる。」
そう言ってリンは高めていた気を解放して構えを解いた。
そして黒いゴーストに背を向けてケイトの元に歩み寄ってくる。
その時だった。
黒いゴーストがいきなりリンの背後から襲いかかって来た。
「危ない、リン!」
ケイトはそう言って、聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から光が放たれる。
そしてその光に当てられた黒いゴーストが苦しんだ。
「こいつ。
騙し討ちしようとしたのね!」
リンは怒ってそう言い、再び全身の気を高めて黒いゴーストに攻撃をしかけた。
リンの渾身の飛び蹴りが黒いゴーストに当たる。
「ぐええええ!」
黒いゴーストは苦しそうな声を出した。
「これでとどめよ!」
そう言ってリンは、フェイが放つような強烈なパンチを黒いゴーストに打ち込んだ。
リンのパンチが当たって、ドスン!という低い音が響く。
「ぐおおおおお!」
黒いゴーストはダメージを受けながらも、最後の力を振り絞ってリンに襲いかかって来た。
ケイトはまた聖者の腕輪を黒いゴーストに向けた。
聖者の腕輪から放たれた光が、黒いゴーストを消し去っていく。
「うぎゃああああ!」
黒いゴーストそう叫び、聖者の腕輪の光によって消滅させられてしまった。
「やった!
勝ったね!」
リンが嬉しそうに言う。
それからケイトは聖者の腕輪を使って、自分とリンの傷を治した。
ケイトとリンは顔を見合わせて笑った。
そしてその光景を見ていたカレンが、ゆっくりとこちらに近づいて来た。
「ありがとう。
これで私の魂は解放されるわ。」
カレンは言った。
「よかったね。
これで天国に行けるよ。」
リンが笑顔で言った。
カレンは頷き、最後にケイトに向かってもう一度「ありがとう。」と言った。
そしてカレンが微笑むと、その体は光に包まれながら、空に吸い込まれるようにして消えて行った。
「よかった。
迷える魂を救えて。」
ケイトは言った。
そして黒いゴーストが出て来た黒い大きな石は、朽ちたようにボロボロになっていた。
「なんか大変な夜だったね。」
リンが言った。
「そうね。
もう一度ベッドに入って、ゆっくり寝ましょう。」
ケイトはそう言い、リンと一緒に部屋に戻って眠りについた。
翌朝、みんなは宿屋の前に集合した。
「昨日はよく眠れたか?」
何も知らないフェイが、ケイトとリンに聞いてくる。
「まあね。」
リンはそう答え、ケイトと顔を見合わせて笑った。
「何だ?
二人して笑って。
何かあったのか?」
フェイが不思議そうに聞いて来る。
「別に、何にもないよ。」
リンはそう言い、またケイトと顔を見合わせて笑った。
「変なやつらだなあ。」
そう言いながらフェイは笑った。
「じゃあ旅の再開といくか。」
マルスがそう言い、ケイト達は再び旅立つことにした。
村を出て行く前、ケイトは一瞬村の奥の墓地を振り返った。
どうかカレンが迷うことなく天国に行っていますように。
ケイトはそう願い、みんなとともに村を出た。
とても良い天気で、雲一つなく空は晴れ渡っていた。
太陽の光がケイト達の影を作っている。
その時ケイトは、背後にふと邪悪な気を感じた。
振り返ってみたが、誰もいなかった。
今の邪悪な気は一体何だったんだろうと不思議に思った。
そしてケイトは背後に何か違和感を感じた。
振り返ってみるが、やはり誰もいない。
ケイトは背後に違和感を感じたまま、ウェイン達と旅を続けた。

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