短編小説第2弾を書き終えて

  • 2010.12.09 Thursday
  • 09:19
 昨日短編小説第2弾が終わりました。
今回は楽しく書けました。
前から猫の話を書きたいと思っていたので、書けてよかったです。
読んで下さった方、ありがとうございました。
なお、この短編小説をもって、一旦小説は終わりにしたいと思います。
書きたい小説が無いのが理由です。
次に書くのは、いつになるか分かりません。
また書きたい小説ができたら、書こうと思います。
その時は、よかったら読んでやって下さい。
今まで小説を読んで下さった方、本当に感謝です。

自由に、気ままに 最終話 胸焦がすこの想い

  • 2010.12.08 Wednesday
  • 09:04
 肉屋の裏にある細い路地を抜けると、君の家の近くに出る。
俺はいつものようにその路地を抜け、君の元へ向かう。
今日、君はどうしているだろうか?
昨日会ったばかりなのに、君のことが気になって仕方がない。
俺は塀の上にジャンプし、そこから君の家の屋根に上る。
ベランダの近くにある窓を、前足でパンパンと叩く。
すると窓に白い影か映った。
俺はもう一度窓を叩く。
窓の向こうの白い影が、もそもそと動く。
そして窓が開いた。
「おはよう、ミロ。」
「おはよう、ケント。」
君が窓の外に出てくる。
「今日は暖かいね。」
君が太陽の光に目を細めながら言う。
「そうだね。
今日は暖かい。」
俺はじっと君を見つめた。
「どうしたの?
じっと見つめて。」
「あ、いや、何でもないよ。」
「今日は気持ちのいい日ね。
ちょっとそこの空き地まで行ってみましょう。」
「ああ。」
俺達は、君の家の前にある空き地へと移動した。
「今日は風も冷たくないわね。」
「そうだね。」
「日向ぼっこをするにはいい日だわ。」
「うん、そうだね。」
「やっぱり天気は晴れている方がいいわよね。」
「ああ、そうだね。」
すると君はクスリと笑った。
「ケントったら、さっきから相槌ばっかり。」
「え、そうかい。」
「うん、そうだねってばっかり言ってる。」
「ああ、そうだね。」
「ほら、また言った。」
「ほんとだ。
何でだろう。」
君といると、今でも少し緊張する。
「ケントと友達になってから、もう半年も経つのね。」
「うん、早いね。」
「ケントはいつも私に会いに来てくれるね。
どうして。」
「それは、まあ、その・・・。」
また君が笑った。
「私はいつもケントが会いに来てくれて嬉しいわ。」
「それはよかった。」
「ケントって不思議ね猫ね。」
「そうかい?」
「うん、なんだか掴みどころがないって言うか、いまいちどんな猫なのか分からないわ。」
俺はドキリとした。
どういう意味で言っているんだろう。
「それって、褒め言葉?」
「うん、そうよ。」
俺は安堵の息を吐き出した。
「ケントはどういう猫なのかよく分からないところがある。
だから、私はケントと一緒にいると楽しいの。」
「そう言われると嬉しいな。」
空き地に生えいる木に、一羽の小鳥がとまってこちらを見ている。
「ねえ、ケントは野良猫よね。
生活は苦しくない?」
「そんなことないよ。」
「そうなんだ。
私は野良猫になったら、生きていく自信がないわ。」
「もしミロが野良猫になったら、生きていけるように手助けするよ。」
「本当?」
「うん、本当。」
木にとまっていた小鳥が、二羽になっていた。
「野良猫って楽しい?」
「うん、まあ誰にも束縛されない自由はあるから楽しいよ。
でも苦労することもあるけど。」
「具体的にどんなことが楽しいの?」
「うーん、それは・・・。」
俺は君に会いに来るのが楽しかった。
でもそれを口にできない自分の不甲斐なさに、少し腹が立った。
「具体的に言うのは難しいな。」
「そう。
じゃあ苦労することってどんなこと?」
「それはやっぱり食べ物かな。」
「ケントは食べ物に苦労しているの?」
「たまにね。
いつも野良猫に餌をくれる人間のおばさんがいるんだ。
でもその人が来ない時は、自分で餌を探さないといけないから。」
「ふーん。
大変なのね。」
木にとまっている二羽の小鳥が、お互いを毛繕いしている。
「ミロの方はどう?
家猫って楽しい?」
「うん、楽しいっていうか幸せよ。」
「へえ、どんなところが?」
「家のみんなが私に優しくしてくれるところかな。
特にママは優しいの。」
「ママって、ミロを拾ってくれた人だよね。」
「そうよ。
公園に捨てられていた、まだ小さかった私を拾ってくれたの。」
「いい人だね。」
「うん。
私、ママのことが大好きよ。
それに家猫は、食べ物に苦労しないから。」
「その部分は羨ましいなって思うよ。」
「じゃあケントも私の家で一緒に住む?」
「え、いや、あの・・・。」
「ふふふ、冗談よ。」
俺は木にとまっている小鳥を見た。
「ああ、楽しいな。
ケントといると。」
「そう?」
「うん、だってケントは私のたった一匹の友達だもん。」
「本当は、もっとたくさん友達がほしい?」
「うん、できればね。
でもいいの。
私にはケントがいてくれるから。」
嬉しい言葉だった。
「ねえ、ケント。
ケントは私のことをどう思ってる?」
「え、どうって・・・。」
「私はケントのことが好きよ。」
ミロはよく俺のことが好きだと言ってくれる。
しかしそれがどういう意味での好きなのかは、分からなかった。
気になるなら確認すればいいだけの話だが、俺にはそんな勇気がなかった。
「ケントといると楽しい。
でもケントの方はどうだろうって思ったの。
ねえ、ケントは私と一緒にいて楽しい?」
「え、あ、うん、楽しいよ。」
「よかった。
じゃあ私のこと好き?」
「えーと、それは・・・。」
「嫌いなの?」
「い、いや、そんなことはないよ!」
「じゃあ好きなのね?」
「え、うん、その・・・、好きかな。」
「よかった。」
そう言って君は笑った。
「私はケントにどう思われてるんだろうって、ずっと気になってたの。
でも、最後にその言葉が聞けてよかった。」
「最後?
どういう意味?」
すると君は、木にとまっている小鳥を見つめて言った。
「あのね、私の家、引っ越しするの。」
「え、それは・・・。」
「ごめんね。
ずっと言おうと思ってたんだけど、なんか言い出せなくて。」
「いつ引っ越しするの?」
「明日。」
「明日!」
俺は固まってしまった。
「だからもうケントとは会えなくなるの。」
「そう・・・。
それは・・・、寂しいな。」
「うん、私も寂しい。」
木にとまっていた二羽の小鳥が、どこかに飛び立って行った。
「ねえ、ケント。
私のこと忘れないでね。」
俺は黙っていた。
「ケント?」
「忘れるわけないだろ・・・。」
「ケント・・・。」
「ミロがどこに行っても、ミロのことを忘れるわけないだろ。」
「そう言ってくれて嬉しい。」
それから、君とどんなことを話して、どんなふうに別れたのか覚えていない。
次の日になり、俺は君に会いに行こうかどうしようか迷った。
本当は会いたい。
でも、会ったら別れるのが辛くなる。
それが怖かった。
でも、本当にこのままでいいのか?
俺はちゃんと、ミロに自分の気持ちを伝えるべきじゃないのか。
行こう。
君に会いに。
俺はいつもの路地を通り、君の家に行った。
そしていつものように窓を前足で叩く。
誰も来ない。
俺はもう一度窓を叩いた。
しかし、君は出て来なかった。
もう引っ越したのか?
俺は君の家の前に回ってみた。
すると、一台の車が、家のガレージから出て行くところだった。
俺はその車を見た。
すると車の窓から、人間のおばさんに抱かれた君の姿が見えた。
「ミロ!」
俺は叫んだ。
ミロが俺に気付いてこちらを見る。
「ミロ!
俺、忘れないから!
ミロのこと、絶対に忘れないから!」
ミロが窓の近くにやって来た。
「ケント!
私も忘れない!
ケントのこと、忘れないから!」
車の中で君はそう叫んだ。
車が走り去って行く。
「ミロー!」
「ケントー!
私、ケントと出会えてよかったー!」
俺は車を追いかけた。
しかし車はどんどんスピードを上げ、俺との距離は離れていく。
「ミロ―!
俺、ずっとミロのことが好きだったー!
友達としてじゃなく、女の子として好きだったー!」
車は遠くにある角を曲がり、見えなくなった。
最後の最後に自分の気持ちを言った。
今になって、もっと早く自分の気持ちを言っておけばよかったと後悔した。
でももう遅い。
「ミロ・・・。」
もう君とは会えない。
窓をパンパンと叩いても、君が出て来ることはない。
寂しさが押し寄せてくる。
俺は昨日君とお喋りをしていた空き地に向かった。
今日も小鳥が二羽、木にとまっている。
小鳥は仲良く、お互いを毛繕いしていた。
「ミロ・・・、さようなら。」
俺は押し寄せてくる寂しさをこらえ、君と出会えたことに感謝していた。
小鳥が、空に向かって飛び立った。

                                 最終話 完

自由に、気ままに 第六話 母猫と子猫

  • 2010.12.07 Tuesday
  • 09:11
 夜になり、空には月が輝いている。
冷たい風が吹いて、ぶるっと身を震わせた。
住処にしている無人の民家の下から這い出してくると、私は月明かりで目を光らせた。
「お母さん、お腹すいたよ。」
「うん。
今から食べ物を探しに行こうね。」
私には二匹の子共がいる。
本当は三匹だったけど、そのうちの一匹は産まれてからすぐに病気で死んだ。
残った子供達を失うわけにはいかない。
その為にはまず餌が必要だ。
私は二匹の子共を連れ、夜の町に餌探しに出掛けた。
「お母さん。
餌が見つかるかな?」
「見つけないといけないのよ。
じゃないと死んでしまうから。」
「見つかるといいな。」
私の子共はビビとハロという名前だ。
ビビはメスで、聞き分けのいい子だった。
ハロはオスで、かなりやんちゃなところがある。
そんな二匹の子共を連れながら、夜の町を歩く。
私がまず最初に向かったのは、近所にある畑だった。
この畑にはよくネズミが出るのだ。
畑に着くと、闇夜に目をこらして辺りを見回した。
子共達はキョロキョロしている。
ネズミがいないか注意深く探す。
すると、微かな足音が聞こえた。
ネズミの足音だ。
「あんた達、ちょっとここで待ってなさいね。」
「うん。」
私は足音のする方に向かった。
すると5メートルほど先に三匹のネズミがいた。
私は足音を消し、慎重に近づいた。
だんだんとネズミに距離を詰めていく。
そして射程圏内に入った。
私は素早く飛び跳ね、ネズミに飛びかかった。
捕まえた。
残ったネズミ達は逃げて行った。
私は咥えたネズミを子供達の方に持って行く。
「やった!
お母さん、ネズミを捕まえた。」
ハロが喜ぶ。
「まだ生きてるね。」
ビビが言った。
私は強く噛んでネズミを弱らせ、生きたまま子供達の前にネズミを置いた。
弱ったネズミはよたよたと歩く。
「あんた達、狩りの練習よ。
このネズミを自分達で仕留めなさい。」
ネズミはふらふらと歩きながら逃げて行こうとする。
「ほら、早くしないと逃げられちゃうわよ。」
私がそう言うと、まずはハロがネズミを追いかけた。
続いてビビも追いかける。
ハロが弱ったネズミを噛んだ。
しかし暴れまわるネズミに手こずっているようだ。
ハロはネズミを放してしまった。
さらに弱ったネズミが逃げて行く。
そこへビビが飛びついた。
ビビは上手くネズミの急所を噛んだ。
暴れていたネズミが動かなくなった。
「お母さん、仕留めたよ。」
ビビが言う。
「よくやったわね。
じゃあその餌はあんた達で食べなさい。」
「はーい。」
子供達は美味しそうにネズミを食べていた。
「お母さんは食べないの?」
ビビが聞く。
「お母さんまで食べたら、あんた達の食べる分が無くなっちゃうでしょ。
いいからあんた達で食べなさい。」
「うん。」
とは言ったものの、私も空腹だった。
私は痩せている。
子供達に優先させて餌を食べさせている為、私の食べる分は少なくなる。
子供達に辛い思いをさせたくない。
私はいつも自分の食べる分を我慢してきた。
「ごちそうさま。」
ハロが言った。
子供達はネズミを食べ終えた。
「じゃあ次の餌を探しに行きましょう。」
しかしその夜は、もう餌は見つからなかった。
私達は寝床の無人の民家の軒下へと帰って行った。
あのネズミ一匹では、子供達も満腹にはなっていないだろう。
子供達にもっと餌を与えないと。
私は寝床に帰ると、朝になるまで眠った。
子供達は二匹でじゃれ合っていた。
「あんた達、餌を探しに行こうね。」
起きた私は、子共達を連れて外に出た。
「お腹減った。」
ハロが言う。
「昨日はあんまり餌が見つからなかったからね。
今日は見つけようね。」
「うん。」
私は子供達を連れて公園に向かった。
公園のゴミ箱に、人間の残していった食べ物があるかもしれない。
そして公園に着くと、私はゴミ箱を漁った。
そしたら運よく、弁当の残りを見つけた。
「あんた達、餌があったわよ。」
「やった!」
ハロが喜ぶ。
「お母さんも食べてね。
お腹すいてるでしょ。」
ビビが言う。
「うん、そうするわ。」
弁当は大半が残っていた。
私達は夢中で弁当の残りを食べた。
「あ!
ゴミ箱をちらかして!」
私達が餌を食べていると、ほうきを持った人間のおばさんが怒鳴った。
「公園を汚すんじゃないよ、あっちに行きなさい。」
餌を食べいる途中で、人間のおばさんに追い払われた。
「まったく、せっかく掃除したのに。」
人間のおばさんはぶつぶつ言いながら、私達が食べていた弁当の残りをゴミ箱に入れた。
「ほら、あっちに行きな!」
ほうきで払うように、人間のおばさんが私達を追い払う。
「あんた達、行こう。」
せっかく見つけた食べ物だったのに。
私はがっかりしていた。
子供達もしょんぼりして、とぼとぼと歩いている。
「お腹すいた。」
ハロが言う。
「ごめんね、満足に餌を食べさせてあげられなくて。」
私は子供達に申し訳なかった。
「ハロ、お母さんも餌を見つけるのは大変なんだから、我慢しよう。」
ビビが言った。
「分かってるよ。」
ハロが言う。
「本当にごめんね。」
私は子供達に謝った。
「次の餌を探しに行こう。」
「うん。」
それからあてもなく歩いた。
そしてある民家までやってくると、餌の匂いがした。
私は民家の庭を覗き込んだ。
すると、餌を食べている野良猫がいた。
お皿が二つ置いてある。
そのどちらにも餌が入っていて、そのうちの一つを茶色い猫が食べていた。
私は民家の庭に入り、餌の入っているお皿に近づいた。
「あんた達、ここに餌があるよ。」
「本当だ。」
ハロが嬉しそうな声を出す。
「今度はお母さんもしっかり食べてね。」
ビビが言った。
そして私達がお皿に入った餌を食べようとすると、茶色い猫が怒った。
「お前ら、人の縄張りの餌を勝手に食べるな!」
「あの、私達お腹がすいているんです。
子供達に餌を食べさせてあげたいんです。
この餌、食べさせてもらえませんか。」
私は茶色い猫にお願いした。
「ダメだダメだ!
それは俺の相棒が食べる分の餌なんだ。
お前らはあっちに行け。」
「でも・・・。」
「さっさと失せろ!
でないと痛い目に遭わすぞ!」
「お母さん、行こう。」
ビビが言った。
私達はその場をあとにした。
「餌、見つからないね。」
ハロががっかりしたように言う。
「ごめんね。
諦めないで、餌を探そう。」
私がそう言って歩いている時だった。
前から小さな女の子を連れた、人間の親子が歩いて来た。
その親子は私達を見つけると、近寄って来た。
「ママ、猫がいるー。」
「ほんとねえ。
子共を連れてるわね。」
母親の方がハロとビビを撫でた。
「ママ、私猫が欲しいー。」
「えー、そんなこと言ったって・・・。」
「欲しい欲しい!」
「そうねえ、こっちの子は可愛いから、どうしようかしら。」
母親の方がビビを見て言う。
「ママ、この子飼いたい!」
子共の方も、ビビを撫でながら言った。
「一匹くらいなら何とかなるかしら。」
母親の方がそう言うと、ビビを抱き上げた。
「家に連れて帰って、パパに聞いてみようか。」
母親が言う。
「うん!」
子共は元気よく返事をした。
ビビが人間の親子に連れて行かれる。
「お母さんー!」
ビビが叫ぶ。
「お母さん!
ビビが連れて行かれちゃうよ!」
ハロが慌てたように言う。
私は連れて行かれるビビの方を見て言った。
「いいのよ、これで・・・。
人間に飼われた方が、あの子は幸せになれる。
餌に苦労することもなくなる。」
「お母さんー!」
ビビがまた叫んだ。
「ビビー!
その人間と一緒に行きなさい!
その方があんたの為だから!」
「嫌だよー!
お母さんー!」
私はビビと別れるのが辛かった。
しかしこれでいいのだ。
この方が、ビビは幸せになれる。
「ハロ、行こう。」
「でも、ビビが!」
「いいから。
行こう・・・。」
「お母さんー!」
叫ぶビビに背中を向け、私は歩き出した。
「ハロ、これからはお母さんと二匹で生きていくんだよ。」
ハロは悲しそうに黙っていた。
子共が幸せになってくれるならそれでいい。
私はビビを振り返ることなく、ハロと一緒に歩いて行った。
どうかビビが幸せになれますように。
そして、どうかハロをきちんと育てることができますように。
私は心の中でそう願い、餌を求めて歩き続けた。

                                  第六話 完



自由に、気ままに 第五話 ぶらりぶらりと

  • 2010.12.06 Monday
  • 09:01
 田んぼの真ん中でグイッと背伸びをして、欠伸をする。
後ろ足で耳の裏を掻いて、手で顔をブラッシングする。
今日は雲が多いが、一応晴れていると言えるだろう。
俺は田んぼを横ぎりながら、今日も一日が始まったことを実感する。
まずは餌を食べに行こう。
ここから少し離れた魚屋さんの奥さんが、毎朝猫に餌をくれる。
俺は魚屋を目指した。
そしてその途中、ゴンと会った。
「おはよう、ゴン。」
「おはよう、パン。」
俺達は連れだって魚屋に向かった。
「最近だんだんと寒くなってきたな。」
ゴンが言う。
「ああ、猫にとってはつらい季節だ。
家猫ならこたつで丸くなって、暖かく眠っているんだろうな。」
「羨ましいな。
俺も家猫になりたいよ。」
「ゴンは家猫になりたいんだな。」
「パンは違うのか?」
「俺は野良猫でいいよ。」
「何でだ?」
「だって自由だからさ。
俺は何かに縛られるのが嫌いなんだ。」
「パンらしいな。」
そして俺達は魚屋までやって来た。
魚屋の奥さんが、集まった猫達に餌をやっている。
俺達も奥さんから餌をもらった。
「こうやって毎朝決まって餌にありつけるのは、野良猫にとって幸せだよな。」
ゴンが言った。
「そうだな。
食べ物が無くて苦しんでいる野良猫だっているもんな。」
ここの奥さんは、夕方にも餌をくれる。
餌の時間は、毎回多くの猫達が集まって来ていた。
餌を食べ終えた俺は、口の周りを舌でペロペロしていた。
「ごちそうさん。
パン、これから他の猫達とネズミ狩りに行こうって言ってるんだけど、お前も来るか?」
ゴンが聞いてくる。
「いや、俺はいいよ。」
「そうか。
じゃあまたな。」
ゴンは他の猫達と一緒に去って行った。
「さて、俺は散歩でもするか。」
俺はいつものように、町をぶらぶら歩くことにした。
魚屋をあとにして、畑を横ぎり、公園の方へと向かう。
その途中でチビと会った。
「やあ、チビ。」
「こんにちは、パン。」
「何してるんだい?」
「これから魚屋さんに行こうと思って。
まだ餌はあるかな?」
「さっき俺は餌をもらったぞ。
まだ間に合うんじゃないかな。」
「そっか、よかった。」
チビが安堵したように言う。
「パンはこれからどこに行くの?」
チビが聞いてくる。
「ちょっと公園まで。」
「そう。
私はさっきまで公園にいたのよ。
アンズとお喋りしてたわ。」
「そうか。
アンズがいるのか。」
「うん。
まだいると思うわ。」
「じゃあ会ってこようかな。」
「じゃあ私は魚屋さんに行くわ。
じゃあね、パン。」
「ああ、さようなら、チビ。」
チビと別れ、俺は公園までやって来た。
遊具で人間の子共達が遊んでいる。
俺はそんな光景を尻目に、アンズを探した。
すると、公園の植え込みの陰にアンズがいた。
「やあ、アンズ。」
俺は近寄って挨拶をした。
「よう、パン。」
「アンズは今朝は魚屋に来てなかったな。」
俺は聞いた。
「ああ、実は公園のゴミ箱でフライドチキンの残りを見つけてさ。
それを食べてたんだ。」
「お前は食べ物を見つけるが上手いな。
この前も弁当の残りを見つけていたな。」
「俺は鼻がきくんだ。
食べ物の匂いには敏感さ。」
「そうか。
いい鼻を持ってるな。」
「まあな。
それよりこれから高台に行ってみようと思うんだ。
あそこもよく食べ物の残りが落ちてるからな。
パンも一緒に来ないか?」
「いや、俺はいいよ。」
「そうか。
じゃあ俺は高台に行ってくるよ。
じゃあな、パン。」
「ああ、食べ物が見つかるといいな。」
そしてアンズは去って行った。
俺は人間の子供達を眺めながら、しばらく日向ぼっこをしていた。
さて、散歩を続けるか。
俺は公園をあとにした。
気の向くままに歩き出す。
ぶらりぶらりと目的もなく歩く。
俺はそうやって歩くのが好きだった。
空を見上げると、雲がゆっくりと流れている。
ああ、俺も雲になりたいな。
あんなふうに空を漂ってみたい。
そう思いながら歩いていると、前からジジがやって来た。
「こんにちわ、ジジ。」
「あら、こんにちわ、パン。
こんな所で何してるの?」
ジジが聞いてくる。
「ちょっと散歩をしてるんだ。」
「パンは散歩が好きねえ。
いつもぶらぶらと歩いているわね。」
「そういうのが好きなんだ。」
「パンらしいわね。」
「そうかな。」
「そうよ。
パンってまるで雲みたいなところがあるもの。
何にも縛られない。
ただふわふわと流れている感じがするわ。」
「そう言われると嬉しいな。」
「どうして?」
「俺は雲になりたいからさ。」
「パンらしい答えね。」
そう言ってジジは笑った。
「変かな?」
「そんなことないわよ。
私も時々雲になりたいって思う時があるわ。」
「へえ、そうなんだ。」
「たまにだけどね。」
そう言うとジジは毛繕いを始めた。
「ジジはいつも綺麗好きだね。」
「そうかしら?」
「そうだよ。
いつも綺麗な毛並みをしているじゃないか。
ブラッシングを欠かさない証拠だよ。」
それを聞くと、ジジは嬉しそうに笑った。
「綺麗な毛並みって言われると嬉しいわね。」
「本当のことを言っただけだよ。」
「ありがとう。
私、今から川辺の方に行こうと思ってるんだけど、パンも一緒に来る?」
「いや、俺はいいよ。」
「そう。
じゃあ私は川辺に行ってくるわ。
じゃあね、パン。」
「バイバイ、ジジ。」
俺は去って行くジジを見送ると、また歩き出した。
目的もなくぶらぶらと歩く。
さっきまで射していた太陽の光が陰った。
空を見上げると、太陽に雲がかかっていた。
トンビが空を舞っている。
ピーヒョロロロとトンビが鳴く。
いいなあ。
俺はトンビを眺めた。
トンビは風に乗り、どんどん空高く舞い上がって行く。
俺はトンビが小さな点になるまで眺めていた。
次に生まれ変わるなら鳥がいいな。
大きな翼を持った、優雅に空を舞える鳥に。
俺はまた歩き出した。
再び太陽の光が射してきた。
今日も俺はぶらりぶらりと過ごす。
雲のように、流れるように。
空高く舞うトンビの鳴き声が、かすかに聞こえた。

                                  第五話 完

自由に、気ままに 第四話 あの子は俺のもの

  • 2010.12.05 Sunday
  • 09:16
 恋にライバルはつきものだ。
俺は今恋をしている。
しかし、俺にはライバル達がいた。
俺の好きな猫の名前はジャスミンという。
雑種だが、とても綺麗な毛並みをしている。
グレーのトラ模様に、青い瞳。
長い毛はいつもふわふわとしている。
「なあジャスミン。
今度はいつ会える?」
「うーん、分かんない。」
「俺は毎日君に会いたいな。」
「うふふ。
またそんなこと言って。」
「本当だよ。」
ジャスミンは毛繕いを始めた。
ジャスミンはいつも俺をじらす。
しかしそこがまた、俺にとって魅力的なところだった。
「今日のデートは楽しかったわ。」
「明日も会いに来ていいかな?」
「うーん、ちょっと無理かな。
明日はミクと会う約束だから。」
ミクか。
ミクは俺のライバルの一匹だ。
歳のわりに老けた顔をしている。
お世辞にもカッコイイ猫とは言えない。
しかしジャスミンは、ミクは性格が可愛いと言う。
あんな猫のどこの性格が可愛いのか。
俺には理解出来なかった。
「じゃあまた今度ね。
さようなら、ゴマ。」
そう言うとジャスミンは去って行った。
夕方の光が辺りをオレンジ色に染めている。
俺は去って行くジャスミンの後ろ姿を見送っていた。
「明日は会えそうにないな。」
俺は独り言をぼやき、いつもの寝床へと帰ることにした。
その日の夜、俺は考えた。
ジャスミンと知り合って、もう一年になる。
最初に彼女を見た時、俺は体中に電気が走った。
こんなに可愛い猫がいるのかと。
俺はすぐにジャスミンに話しかけた。
彼女は笑顔で喋り返してきた。
彼女の話し方、仕草、全てが俺の心を掴んだ。
俺は彼女のことがすぐに好きになった。
それから彼女をデートに誘い、豪華な餌を探してきては彼女にプレゼントした。
ジャスミンはそれをいつも喜んで受け取った。
ジャスミンが喜ぶと、俺も嬉しかった。
彼女の笑顔を見るだけで、心がふわふわと空を飛んでいるような幸せな気持ちになる。
しかし彼女と出会って一年。
ジャスミンとの間には何の進展も無かった。
彼女を好きな猫は俺だけではないと気付いたのは、彼女と出会って一ヶ月ほどしてからだった。
俺の他に二匹、ジャスミンを好きな猫がいる。
そのうちの一匹がさっき言ったミクだ。
もう一匹はハチという。
こちらは若い猫で、中々凛々しい顔をしている。
ジャスミンは、ハチのカッコイイところが好きだという。
見た目だけでなく、性格もカッコイイと。
確かにハチは性格も男前だった。
そして俺。
ジャスミンは、俺のどこが好きかというと、優しいところが好きだと言う。
俺はいつもジャスミンに優しくしていた。
当然だ。
彼女に気に入られようと努力しているのだから。
明日はジャスミンはミクと会う。
俺は思った。
このままでいいのか。
ジャスミンと出会って一年。
彼女との仲は進展が無い。
明日、ジャスミンに会いに行こうか。
ミクと会うと言っていたが、そんなものは関係なしに、彼女に会いに行ったらどうなるだろう。
決めた。
明日もジャスミンに会いに行こう。
俺は心にそう決めて、丸い月の輝く空を見上げた。
そして翌日。
俺はいつもジャスミンがいる場所へと向かった。
もしかしたら、今日は修羅場になるかもしれない。
なにせ恋のライバルが顔を合わすのだから。
俺はいつもジャスミンがいる場所へとやって来た。
辺りを見回す。
すると俺から離れた木の木陰に、ジャスミンとミクがいた。
二匹は楽しそうに喋っている。
俺は二匹の方へと近づいて行った。
「やあ、ジャスミン。」
俺は声をかけた。
振り向く二匹。
「ゴマ!
どうしてここに。」
ジャスミンが驚いて俺を見る。
「君に会いたかったからさ。」
「そんなこと言われても、今日はミクと・・・。」
「分かってるよ。
でも会いたかったんだ。」
するとミクが俺とジャスミンの間に割って入って来た。
「今日は俺とジャスミンがデートする日だぞ。
お前は帰れよ。」
ミクが怒るように言う。
「いや、俺は帰らない。
そろそろ決着をつけた方がいいと思ったんだ。」
「決着?
何の?」
「恋の決着に決まってるだろ。」
ジャスミンは困った顔をしていた。
「ジャスミン、こんな奴ほうっておいて、どこかに行こう。」
ミクがジャスミンに言う。
「待てよ、ミク。」
「何だよ。」
「俺はジャスミンに聞きたいんだ。
結局誰が一番好きなのか。」
ミクはジャスミンを見た。
「ゴマ、私を困らせないで。」
ジャスミンが悲しげな声で言う。
「ジャスミン。
俺は君のことが好きなんだ。
だからそろそろはっきりさせたいんだ。
一体君は誰が一番好きなのかを。」
「急にそんなことを言われても・・・。」
ジャスミンは顔を伏せた。
「やめろよ、ジャスミンが困っているじゃないか。」
「ミク、お前はこのままでいいのか?
ジャスミンが誰を一番好きだと思っているのか、知りたくないのか?」
「それは・・・。」
俺とミクはジャスミンを見た。
するとジャスミンは、伏せていた顔を上げて言った。
「私、今日は帰るわ。」
ジャスミンが去って行く。
「待ってくれよ、ジャスミン。」
ミクがジャスミンのあとを追いかける。
俺も追いかけた。
そしてしばらくジャスミンを追いかけていると、ジャスミンは急に立ち止まった。
「どうしたんだ、ジャスミン。」
俺は彼女の傍に寄って聞いた。
ジャスミンは真っすぐ前を見ている。
俺は彼女の視線の先を見た。
するとそこにはハチがいた。
もう一匹のライバルだ。
「ハチ・・・。」
ジャスミンが言う。
「やあ、ジャスミン。」
ハチはジャスミンの方へと寄って来た。
「どうしたんだい、困った顔してるけど。」
ハチは聞いた。
「ゴマが私を困らせるの。」
ハチは俺の方を見た。
「ゴマ、どういう理由があるのか知らないけど、ジャスミンを困らせるなよ。」
「いや、俺はそんなつもりじゃないんだ。
ただジャスミンの本当の気持ちが知りたかっただけなんだ。」
「ジャスミンの本当の気持ち?」
「ああ、一体ジャスミンは誰のことが一番好きなのか。
俺はそれを知りたいんだ。」
ハチはジャスミンを見た。
「それは俺も知りたいな。」
ジャスミンはますます困った顔になった。
「なあ、ジャスミン。
俺達が知り合ってもう一年になる。
でもその間、君との間には何の進展も無かった。
そろそろ教えてくれないか。
君は誰が一番好きなんだ?」
みんながジャスミンを見る。
「そんなことを言われても・・・。」
するとハチが言った。
「ジャスミンは俺達の気持ちを知っているはずだ。
ゴマの言う通り、そろそろ誰が一番好きなのかはっきりさせてくれてもいいと思うんだ。」
「私・・・、私・・・。」
「ジャスミン。
俺のことが一番好きだよね。」
ミクが言う。
「黙ってろよ、ミク。
ジャスミンの答えを待つんだ。」
俺は言った。
「私・・・、私・・・、誰が一番好きなのかなんて決められない!」
「ジャスミン・・・。」
ハチが呟くように言った。
「私、みんなのことが好きよ。
でも、誰が一番かなんて決められない。
みんな、ごめんなさい・・・。」
そう言うとジャスミンは走り去ってしまった。
「ああ、待って、ジャスミン。」
ミクがジャスミンを追いかけて行く。
俺とハチは顔を見合わせた。
「まだ俺達の恋の闘いは続きそうだな。」
ハチが言う。
「そうだな。
でも最終的にジャスミンの心を射止めるのは俺だけどな。」
俺はそう言い、曇った空を見上げた。
必ずジャスミンを俺に振り向かせてみせる。
心にそう誓い、俺はジャスミンのあとを追いかけた。

                                   第四話 完

自由に、気ままに 第三話 猫達の闘い

  • 2010.12.04 Saturday
  • 09:01
 寒い風がぴゅうっと吹き抜ける。
空は晴れているが、風は冷たい。
冬の高い空を見上げて、俺は白い息を吐いた。
今日もいつもと同じように、俺は俺の縄張りを見回る。
侵入者がいないか見回らないと、縄張りは壊れてしまう。
俺はのしのしと歩いて、縄張りの一番端っこに向かう。
目の上が痛む。
昨日、縄張りに侵入者がいた。
グレーのトラ模様で、中々体の大きい奴だった。
俺は侵入者を排除すべく、そいつに闘いを挑んだ。
最初は威嚇からだ。
全身の毛を逆立たせ、鋭い声で相手を威圧した。
しかし敵は怯まなかった。
しばらく睨み合いが続いた。
そして先に手を出してきたのは向こうだった。
痛烈な猫パンチを顔面に受けてしまった。
俺はすぐさま反撃に出た。
俺も猫パンチを返した。
猫パンチの応酬が続いたあと、取っ組み合いになった。
闘いの結果は引き分け。
俺は目の上に傷を負った。
しかし向こうも鼻の頭に傷を負っていた。
完全に俺が勝ったわけじゃない。
敵は今日も俺の縄張りに侵入している可能性が高い。
俺は昨日の闘いに決着をつけるべく、縄張りをしっかりと見回ることにした。
俺はいつも縄張りの端っこに行って、そこから順に縄張りを見回って行く。
昨日敵と遭遇したのは縄張りの端っこだった。
俺は気合を入れる。
今日こそは闘いに勝利し、侵入者を追い出さねばならない。
俺は冬の空の下を歩いた。
そしてしばらく歩くと、シーナが現れた。
「もみじ、おはよう。」
「おう、おはよう。」
シーナは俺の彼女のうちの一匹だ。
俺の縄張りには三匹のメスがいる。
全員俺の彼女だ。
シーナは一番最初に俺の彼女になった猫だった。
「もみじ、目の上を怪我してるわ。
何かあったの?」
「ああ、ちょっとな。」
「また喧嘩?」
「まあそんなもんだ。」
「もみじはよく喧嘩をするね。」
「当たり前だろう。
俺はこの辺り一帯のボスなんだから。
侵入者がいたら喧嘩になるさ。」
「あんまり無茶しないでね。」
「心配するな。」
俺は尻尾を大きく振り、シーナに別れを告げると先を歩き出した。
そして昨日敵と遭遇した場所までやって来た。
俺は辺りを見回した。
敵の姿が見えない。
「今日はいないのか。」
俺はもっと注意深く辺りを見回した。
すると、10メートルほど離れた電柱の陰に、猫の尻尾が見えた。
俺はそちらに向かって「マーオ!」と鳴いた。
電柱の陰の尻尾が動く。
俺はもう一度鳴いた。
すると、電柱の陰から一匹の猫が出て来た。
奴だ!
昨日の侵入者だ。
敵は俺を睨むと、「ナーオ!」と威嚇しながら近づいて来た。
俺は全身の毛を逆立たせた。
敵も同じようにする。
だんだんと敵が近づいてくる。
そして俺の目の前まで来ると、敵は「シャー!」と鳴いて威嚇してきた。
俺も「シャー!」と返す。
しばらく睨み合いが続いた。
昨日は先手を取られてしまった。
今日は俺が先手を取る。
俺は敵の顔に猫パンチを放った。
敵の顔に命中する。
「フシャー!」と鳴きながら、敵も猫パンチを返してきた。
俺はそれをかわすと、さらに猫パンチを放った。
しかし敵もそれをかわす。
俺は連続で猫パンチを放った。
そのうちの一発が相手の顔面を捉えた。
敵は深くしゃがみ込むと、俺に向かって飛びかかって来た。
取っ組み合いになる。
「プルギャー!」
「ギシャー!」
俺は力には自信がある。
しかし敵の力も中々のものだった。
俺は上手く体を動かし、敵の体を押さえ込むことに成功した。
敵が暴れまわる。
俺は敵の頭にガブリと噛みついた。
「キシャー!」
今度は敵の鼻に噛みついた。
「ブシャー!」
敵は苦しんでいる。
俺はとどめとばかりに敵の首筋に噛みついた。
その瞬間、敵はのけ反るように飛び跳ね、俺の押さえ込みから抜け出すと、慌てて逃げて行った。
俺は追撃して、敵のお尻に猫パンチを何発か入れてやった。
今日は俺の勝利だ。
俺は侵入者を追い出すことに成功した。
「ふん、ざまあみろ。」
俺は敵の逃げて行った方に言葉を投げかけた。
「さてと、縄張りの見回りを続けるとするか。」
俺は歩き出した。
そして少し歩くと、俺の子分の楓が現れた。
「兄貴、おはようございます。」
「おう。」
「兄貴、毛が乱れてますよ。
喧嘩ですか?」
「まあな。」
「それで、勝ったんですか?」
「当たり前だ。」
「さすが兄貴だぜ。
見回り、お供します。」
「おう。」
「兄貴は本当に喧嘩が強いですね。」
「まあな。」
「俺も兄貴みたいになりたいぜ。」
楓は俺にとって可愛い子分だ。
喧嘩は強くないが、いつも俺を慕ってくる。
「そう言えば兄貴、向こうの縄張りでここら辺じゃ見かけない猫を見ましたぜ。」
「メスか?」
「いや、オスでした。」
「だったらそいつも追い出さないと。」
「真っ黒で、えらくいい体をした奴でしたぜ。
鋭い眼光を放ってました。
ありゃあかなり手強いですぜ。」
「俺が負けるとでも?」
「いえ、そんなことは思ってません。」
「その猫を見かけた所に案内しな。」
「はい!」
そして俺は、縄張りの中央までやって来た。
「さっきはこの辺にいたんです。」
俺は辺りを見回した。
「今はいないようだな。」
「俺、ちょっと見回って来ます。
兄貴はここにいて下さい。」
そう言って楓は、畑の向こうの茂みの中へと走って行った。
それから数分待つと、茂みの向こうから楓の鳴き声が聞こえてきた。
誰かを威嚇している声だ。
俺は走って茂みの向こうへ行った。
すると、楓と対峙して、真っ黒い大きな猫がいた。
「マーオウ!」
楓が威嚇する。
しかし相手は全く怯んでいない。
「マーオウウ!」
楓がさらに威嚇する。
すると敵の黒猫は、楓に近づいて来た。
そして楓に飛びかかった。
「フシャー!」
取っ組み合いになる。
しかし勝負はあっさりと終わった。
楓は尻尾を丸めて俺の方に逃げて来た。
「あ、兄貴!
俺じゃ奴に敵いません!」
黒猫は俺の方を見た。
そしてゆっくりとこちらに近づいて来る。
「楓、下がってな。」
俺も黒猫の方に近づいた。
「ナーオ!」
俺は威嚇した。
すると黒猫は鋭い目で俺を睨んできた。
俺も睨み返す。
どうやら威嚇で引き下がる相手ではないらしい。
俺は気合を入れ、その黒猫に近づいた。
そしてお互いの手が届く距離で止まった。
睨み合いが続く。
確かに手強そうだ。
俺は先手必勝とばかりに、黒猫の顔に猫パンチを放った。
俺のパンチが命中する。
すると黒猫も猫パンチを返してきた。
鋭く、強烈なパンチだった。
俺は負けずに猫パンチを返す。
黒猫はそれをしゃがんでかわすと、俺に飛びかかってきた。
「キシャー!」
「フシャー!」
俺と黒猫は激しく取っ組み合った。
辺りに俺達の毛が散乱していく。
黒猫の力は強かった。
俺は黒猫に押さえ込まれてしまった。
黒猫が俺の前足を噛む。
「シャー!」
俺は叫んだ。
黒猫の押さえ込みから逃れようと、俺は暴れた。
しかし黒猫の力は強く、俺は抜け出せなかった。
黒猫が俺の首筋を噛む。
俺は必死に抵抗した。
しかし黒猫はびくともしない。
やばい。
このままでは負ける。
「兄貴!
負けないで下さい!」
楓の声が聞こえた。
黒猫は噛む力を強めていく。
まずい。
このままでは大怪我を負う。
俺は必死に暴れたが、黒猫は強く俺を押さえ込んでいた。
このまま負けるのか。
俺は半分ほど諦めかけた。
すると、目の前を黒い物がよぎった。
黒猫の尻尾だった。
俺は咄嗟に尻尾に噛みついた。
「プルギャ!」
黒猫が叫ぶ。
俺は黒猫の押さえ込みからなんとか逃れると、尻尾を噛む顎に力を入れた。
「プギャ!プギャ!」
黒猫が痛そうに苦しむ。
俺は尻尾を放し、黒猫の鼻に噛みついた。
黒猫は飛び上がって痛がり、「フシュウ!」と鳴くと俺の前から逃げて行った。
「やった!
兄貴の勝ちだ!」
楓が喜ぶ。
俺は黒猫の逃げて行った方を見ていた。
「兄貴、やりましたね!」
俺は噛まれた前足をペロペロ舐めながら、楓を見た。
「手強い奴だった・・・。」
「そうですね。
俺、兄貴がやられるかと思いましたよ。
でも勝ちましたね。
さすが兄貴だ。」
「俺が負けるはずないだろう。
さあ、見回りを続けるぞ。」
「はい!」
縄張りを守るのも一苦労だ。
そしてしばらく歩くと、もう一匹の子分の三太がやって来た。
「兄貴、向こうでここら辺じゃ見かけない猫を見ました。」
「オスか?」
「はい。
兄貴と同じ茶トラ模様で、右目の上に傷のある猫でした。」
やれやれ、また侵入者か。
今日の俺の闘いは、まだ終わりそうになかった。

                                  第三話 完

自由に、気ままに 第二話 ダイエットをする猫

  • 2010.12.03 Friday
  • 09:14
 しなやかな体に、俊敏な動き。
高い塀もひとっ飛びで登る。
それが猫というものだろう。
しかし今の俺は、そんな猫にはほど遠かった。
太った体にたるんだ肉。
俊敏な動きは期待できない。
低い障害物を飛び越えるのも一苦労だ。
俺は二階の窓から外を眺めていた。
野良猫が塀の上にいる。
その野良猫は、身軽な動きで塀を飛び降りると、別の塀にピョンと飛び乗った。
羨ましい。
昔は俺もあんな動きができたものだ。
しかし今は無理だ。
そうなったのは自分のせいだと分かっている。
俺はとにかく食べることが好きなのだ。
「プリン、また外を見てるの?」
俺より一年後に拾われてきたミミが話しかけてくる。
「野良猫を見てたんだ。
身軽な動きだったなあ。」
俺はしみじみと言った。
「プリンは身軽な動きなんて無理だよね。」
「言われなくても分かってるよ。」
俺は塀の上の野良猫を見つめた。
「プリンは私が拾われてきた時から太ってたもんね。」
そうなのだ。
俺は随分前から太っている。
「どうして俺はこんなに太ってしまったんだろう。」
「食べ過ぎるからでしょ。」
「そうじゃなくて、どうしてこんなに太ることを許してしまったんだろうって意味さ。」
「それは知らないわよ。」
ミミはそう言って笑った。
「プリンの生き甲斐は食べることでしょ?
その結果太ったんだから仕方ないじゃない。」
野良猫がまた塀を飛び降り、どこかへと走り去っていった。
「俺もあんなふうに身軽に動きたいな。」
俺は贅肉がいっぱいついた自分の体を見た。
まるで風船だ。
どうして俺はこんなに太るまで自分を放っておいたんだろう。
「じゃあダイエットすればいいじゃない。」
「ダイエット?」
「うん。
プリンは食べ過ぎるから太るんでしょ。
食べる量を減らせばいいじゃない。」
俺はふうっとため息をついた。
「簡単に言うけどな。
ダイエットなんてうまくいくもんかな?」
「それはプリンの努力次第じゃない。」
俺は「うーむ」と唸った。
ダイエットか。
今まで考えたことがなかったわけじゃない。
ただ実行に移さなかっただけだ。
「ダイエット、してみようかな。」
俺がそう言った時、俺達の飼い主のお母さんがやって来た。
「プリン、また太ったみたいねえ。」
そう言われて俺は落ち込んだ。
「ちょっと体重を量ってみようか。」
そう言ってお母さんは俺を抱いた。
「うわ、やっぱり重いわ。」
お母さんは俺を連れて一階にある体重計の所へ行った。
お母さんが俺を体重計に乗せる。
「15キロ。
また太ったわねえ。」
以前体重を量った時は13.5キロだった。
また太ってしまった。
俺は決意した。
ダイエットをしよう。
そして昔のしなやかな体を取り戻そう。
その日の夕方、俺は餌を残した。
「プリン、餌を残してるじゃない。
体調でも悪いの?」
お母さんが心配そうに言う。
「ニャオ。」
俺は大丈夫だと言った。
「プリン、ダイエットをする気になったのね。」
ミミが残った俺の餌を見て言う。
「そうだよ。
俺は痩せてみせる。
そして昔のしなやかな体を取り戻すんだ。」
「応援してるわ。」
次の日の朝も、俺は餌を半分も残した。
「プリン、また餌を残してるじゃない。」
お母さんが残った餌を見て言う。
「ニャーオ。」
俺は心配しないでと言っておいた。
俺は痩せてみせる、絶対に。
その日のお昼、おやつの時間になった。
お母さんが猫用のビスケットをくれる。
俺の隣でミミが美味しそうにビスケットを食べている。
しかし俺は我慢した。
俺は食べない。
だってダイエット中だから。
「プリン、おやつはいらないの?」
お母さんが俺の口の近くにビスケットを持ってくる。
俺の食欲が暴れ出した。
ダメだ!
食欲に負けちゃダメだ。
俺はそっぽを向き、その場から走り去った。
「プリンたら、どうしたのかしら。」
お母さんが不思議そうに言う声が聞こえた。
その日の夕方も、俺は餌を残した。
「頑張ってるじゃない、ダイエット。」
ミミが笑いながら言ってくる。
「俺は痩せるって決意したから。」
「偉いわ、プリン。」
そして俺は、おやつも食べず、餌を残す生活を一週間続けた。
「プリン、ダイエットちゃんと続いてるじゃない。」
「ああ・・・。」
「どうしたの、元気がないわね。」
「そんなことないよ・・・。」
「そんなことあるわよ。
声に力がないわ。」
「そうかな・・・。」
「そうよ。
いつものプリンじゃないわ。」
正直この一週間は地獄だった。
俺は食べたかった。
おやつも餌も、満腹になるまで食べたかった。
しかしそれを我慢してここまでやってきたのだ。
「俺、ちょっと体重計に乗ってくるよ・・・。」
「私もついて行く。」
そして俺は体重計に乗った。
「15キロ・・・。
体重が減ってない・・・。」
「そうねえ。
でもまだダイエットを始めて一週間じゃない。
そんなにすぐに結果はでないわよ。」
「そんな!
俺がこの一週間どんな気持ちでダイエットしてきたか。
俺は自分の中で暴れまわる食欲を必死に抑えてダイエットしてきたのに。」
「でも体重は減ってないわね。
まだダイエットを続けないと効果がないんじゃない?」
「そんなあ・・・。
まだ続けるのか・・・。」
俺はもう限界だった。
たった一週間といえど、俺は頑張ってきた。
自分の食欲と必死に闘ってきた。
それなのに効果が出ていないなんて。
俺はトボトボと二階の窓に行った。
ミミもついて来る。
俺は窓の外を眺めた。
今日も野良猫がいる。
野良猫は身軽な動きで塀に飛び乗っていた。
「食べたい・・・。
お腹いっぱい食べたい・・・。」
「プリン、もう限界なの?」
「食べたい・・・、食べたい・・・。」
「かなりやばい状態ね。」
「ダイエット・・・、しなきゃ・・・。
でも食べたい・・・。」
その日のお昼、おやつの時間になった。
「プリンは最近おやつを食べないからね。
ミミだけね。」
そう言ってお母さんはミミだけにおやつをやった。
ミミは美味しそうに食べている。
「ダイエット・・・、しなきゃ・・・。
ダイエット・・・、ダイエット・・・。」
俺は美味しそうにおやつを食べるミミを食い入るように見ていた。
そして・・・。
「きゃあ!
何をするのよ、プリン!」
俺はミミのおやつを横取りしていた。
「美味い美味い!
おやつ美味い!」
「あら、プリンもおやつを食べるの?
だったらあんたの分も持って来なきゃ。」
そう言ってお母さんは俺の分のおやつも持って来てくれた。
その量はミミの食べる三倍だ。
「美味い、美味いよ!」
俺はおやつを貪るように食べた。
「プリン・・・。」
ミミが呆れたような目で俺を見る。
「美味いよ、おやつ美味いよ!」
俺はおやつを全部たいらげてしまった。
「プリン、ダイエットは失敗ね。」
ミミが憐れむような声で言った。
俺がかつてのしなやかな体を取り戻す日。
そんな日は、しばらく来なさそうだった。

                                   第二話 完

自由に、気ままに 第一話 昼下がりの猫

  • 2010.12.02 Thursday
  • 09:09
 ぽかぽかと太陽の光が降り注ぐ。
今日は冬にしては暖かい。
昼寝をするにはとても気持ちのいい日だった。
俺は公園の植え込みの近くで昼寝をしていた。
いつも餌をくれる人間のおばさんに餌をもらい、お腹は満腹だ。
食後の昼寝ほど気持ちいいものはない。
昼寝は俺にとって至福の時間なのだ。
俺の友達は言う。
俺は昼寝ばかりしていると。
そんな時間があれば、メスを口説く為に時間を使った方がいいと。
俺の友達は年中メスの尻ばかり追いかけている。
しかしいつもふられてばかりだった。
俺から言わせれば、それこそ無駄な時間だ。
メスを口説く暇があったら、昼寝をしていた方がいい。
俺は太陽の光を気持ちよく感じながら眠っていた。
「お母さん、ここに猫がいるよ。」
しまった!
人間の子供に見つかった。
「にゃんこ、良い子良い子。」
人間の子共が俺の体を撫で始める。
俺は人間の子供を睨んだ。
「猫、起っきしたー。」
人間の子供が無邪気な声を発する。
「あら、本当ねえ。
猫がいるわねえ。」
子共の母親も来た。
「にゃんこ、良い子。」
人間の子共がぐしゃぐしゃと俺の頭を撫でる。
俺は人間の子共が苦手だった。
やつらは猫の扱い方というものを知らない。
無造作に体を撫で回す。
それに何より一番嫌なのは、昼寝を邪魔されることだ。
人間の子共は、こちらが昼寝をしていることなどおかまいなしだ。
俺はむくっと起き上がる。
そしてぐいっと背伸びをした。
「にゃんこ、立った。」
「そうねえ。立ったわねえ。」
母親が、子共を見ながら朗らかな声で言う。
せっかく見つけた気持ちのいい昼寝場所が、人間の子共のせいで台無しになってしまった。
人間の子共はなおも俺を撫で続ける。
俺はうんざりし、せっかく見つけた心地のいい昼寝場所から移動することにした。
「にゃんこ、待って。」
人間の子共が追いかけて来る。
俺は小走りになり、人間の子共を振り切った。
やれやれ、せっかく気持ちよく昼寝をしていたのに。
俺は新たな昼寝場所を見つけるべく、トコトコと歩いた。
さっきの公園の北にある坂を上れば、人間達がくつろぐ広場がある。
そこはどういうわけか、人間の子共はあまりやって来ない。
俺はそこで新たな昼寝場所を見つけることにした。
広場までやってくると、ベンチに人間の老人が二人座っていた。
あとは広場の中央で、絵を描いている人間がいた。
俺は広場をざっと見渡す。
どこか昼寝に適した場所はないか。
すると、広場の右奥の方に、草の茂った部分があった。
日当たりもよさそうだ。
俺はそこで昼寝をすることにした。
草の茂った所までやって来て、俺は寝転んで体を丸めた。
草がいいベッドになる。
これで落ち着いて昼寝ができる。
俺はうつらうつらとまどろみ始めた。
うん、ここは気持ちいい。
さっきの昼寝場所に負けてない。
俺は気持ちよく昼寝をすることが出来ると思った。
すると少し眠ってからだろうか。
パシャ、パシャという機械音が聞こえた。
パシャ、パシャ、パシャ。
機械音はうるさく俺の耳を刺激する。
一体何なのだ。
俺は目を開けてみた。
すると若い人間の男が、カメラを持って俺を撮っていた。
パシャ、パシャ、パシャ。
男はカメラのシャッターをきりまくる。
俺は無視して寝ることにした。
どうせすぐにどこかに行くだろう。
そう思っていたが、パシャ、パシャという機械音はやまない。
俺はだんだんイライラしてきた。
目を開けてみると、男はさっきより近づいて来ていた。
俺の顔の近くでシャッターをきる。
俺はそっぽを向いた。
「こっち向いてくれよ。」
男が言う。
俺は知らん顔をした。
すると男が俺の顔の正面に回り込んで来た。
パシャ、パシャ。
機械音がうるさい。
男はまったく立ち去る気配を見せない。
「うん、お前いい顔してるよ。」
男はそう言い、シャッターをきり続ける。
俺の耳にパシャ、パシャという音がこびりついてきた。
「ニャアーオ!」
俺は男にあっち行けと言った。
しかし男はシャッターをきり続ける。
ああ、なんてことだ。
せっかくいい昼寝場所を見つけたのに、ここも落ち着いて寝られない。
俺は立ち上がり、広場から去ることにした。
男が俺を追いかけてくる。
パシャ、パシャ、パシャ。
カメラの音がうるさい。
俺は走り出して、ついて来る男を振り切った。
やれやれ、また昼寝の邪魔をされてしまった。
どうして人間はこうも昼寝の邪魔をするのか。
俺は苛立たしい気分で次の昼寝場所を探すことにした。
さっきの広場から、西に向かう道路を進んで行くと、駐車場がある。
そこの駐車場の奥は、草の茂った空き地になっている。
そこで昼寝をしよう。
俺は空き地までやって来た。
空き地の隣に建っている三階建ての人間の家が、空き地に降り注ぐはずの太陽の光を遮っている。
日当たりはよくない。
しかしここなら人間は来ないだろう。
この際日当たりが悪いのは我慢しよう。
俺は空き地の左奥で、丸くなって昼寝を再開した。
静かだった。
静かだというのは、昼寝にとってとても大事なことなのだ。
日当たりが悪くてちょっと寒いが、まあ仕方ないだろう。
これでゆっくり昼寝ができる。
俺はだんだんとまどろみ始めた。
草が俺の体温を保って、少し暖かくなってきた。
うんうん、いい感じだ。
これでやっと落ち着いて昼寝ができそうだ。
そう思って目を閉じていると、何かが近づいて来る気配がした。
「トラちゃんたら、やだあ。」
「だってタマがあまりにも可愛いからさ、つい。」
猫だった。
猫が二匹、こちらに近づいて来た。
「トラちゃんてほんとに口が上手いわよねえ。」
「そんなことないさ。
タマがあまりにも可愛いからつい言っちゃうんだ。」
二匹の猫は、空き地の中央で喋っている。
「トラちゃん、私トラちゃんのことが大好きよ。」
「俺もだよ、タマ。」
どうやら猫のカップルらしい。
俺は気にせず昼寝を続けることにした。
「もうちょっと空き地の奥に行ってみようよ。」
「そうだな。」
二匹の猫がこちらに近づいて来る。
「うわ、誰か寝てるぞ。」
トラちゃんと呼ばれる猫が言った。
「ほんとだ。
どうしよう、せっかく誰もいない場所に来れたと思ったのに。」
「そうだな。
どうしようか。」
俺はチラッと目を開けて二匹の猫を見た。
二匹とも俺を見ている。
「俺、言ってくるよ。
どこか別の場所で寝てくれないかって。」
「うん、そうして。」
トラちゃんとやらが俺の近くに来て言った。
「あのう、寝ているところを悪いんですが、俺達二匹でゆっくりしたいんですよ。
どこか他のところで寝てもらえませんか。」
なんて図々しいやつだ。
先にこの場所に来ていたのは俺だというのに。
「あのう、聞こえてます?」
俺は知らんぷりをした。
「ちょっと、聞こえてるのか?」
トラちゃんが俺の頭をパシパシと叩いた。
「何するんだ!」
「いや、俺達二匹でゆっくりしたいから、どこか他の場所で寝てくれません?」
「ここは俺が先にいたんだぞ。
なんで後から来たお前にそんなことを言われなければいけないんだ。」
「だって、昼寝なんてどこでもできるでしょ。
俺達は二匹でゆっくりできる場所を探してここに来たんです。
譲ってくれてもいいじゃないですか。」
「なんて屁理屈だ!」
するとタマという猫が言った。
「トラちゃん。
この猫私達を見て妬いてるのよ。
きっと彼女のいない寂しい猫なんだわ。」
「な、何を言う!」
「ああ、そうか。
俺達を見て妬いてたんだな。
俺達ってベストカップルだから、それも仕方ないか。」
俺はだんだん馬鹿らしくなってきた。
「分かったよ。
この場所は譲ってやるよ。
せいぜいイチャついてろ。」
俺はそう言って空き地をあとにした。
「やっぱり私達に妬いてるんだわ。」
そう聞こえたが、無視して俺は去った。
やれやれ、せっかく見つけた昼寝場所が、また台無しになってしまった。
今日は厄日だ。
心地よく、静かに昼寝できる場所はどこにあるのか。
人間の家の塀の上で、俺は大きく欠伸をした。

                                  第一話 完

短編小説第2弾

  • 2010.12.01 Wednesday
  • 09:17
 明日から、短編小説第2弾を書きます。
前回の短編小説は、稲葉さんのソロアルバムに影響された内容でした。
今回は、猫の話を書こうと思います。
野良猫や家猫の日常や恋の話です。
全七話で書こうと思います。
前回と同様に、一話完結で、一話ごとに独立しています。
一生懸命書くので、よかったら見てやって下さい。

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