全てを支配する事は何も持っていないのと同じこと 最強にして虚しい妖魔 サガフロのオルロワージュ
- 2021.01.03 Sunday
- 12:55
JUGEMテーマ:ゲーム
PSゲームの名作、サガフロンティアにオルロワージュという最強の妖魔がいます。
妖魔自体が他の種族を圧倒する優れた存在なんですが、オルロワージュはその中でも特別な存在。
これまた最強の一人であるヴァジュイールと双璧を成す妖魔です。
欲しいものは全て手に入れ、思い通りに支配してきました。
一見無敵の存在に思えますが、実はかなり虚しい人生を送っています。
側近の一人は彼をこう語っていました。
「器の小さな男」
美しいものが大好きなオルロワージュは周りに美女を侍らせています。
しかしそこに愛や信頼はありません。側近の侍女は彼を見下しています。
同性の妖魔からも尊敬や信頼はされていないようでした。
口には出さずとも、彼の周りにいる妖魔たちは知っているからです。
小心者で、寂しがり屋で、力はあっても中身がない。
となると常に力と恐怖で支配しないといけないわけで、そうやって手に入れたあらゆる物は心を満たしてくれない空虚ばかりです。
オルロワージュを簡単に表すならこうです。
「全てを支配するということは、何も持っていないのと同じこと」
オルロワージュには心を許せる相手もいなければ、一緒にいて幸せを感じる相手もいません。
どんなに高価で、どんなに美しいモノを手に入れようと、満たされることもありません。
いくら戦いに勝っても勝利の余韻もありません。
最強であるがゆえに苦難を乗り越えた勝利の喜びを味わうことが出来ないからです。
そして最強と謳う割にはオルロワージュとヴァジュイールは衝突を避けています。
二人ともお互いのことはほぼ話題に出さないし、接触しないように距離を取っている感じです。
最強の妖魔たちがその威厳を示せるのはあくまで自分より弱い相手だけであり、同等かそれ以上の者には基本的に戦いを挑みません。
傷つくこと、威厳が崩れることを恐れているように思えました。
妖魔は強い存在です。肉体も魔力も寿命も生命力も人間とは比較になりません。
と当時にどこか脆いというか、儚い存在にも思えます。
ゲームをプレイしている時、オルロワージュもヴァジュイールも強いと感じたことはありませんでした。
怖さも威厳もまったくなく、カリスマ性は多少はあるものの、同じ系統のゲームであるロマサガに登場した四魔貴族や七英雄に比べると微々たるものです。
四魔貴族は誰もが強く、カッコイイです。グウェインと共闘してビューネイに挑んだ時は緊張が半端じゃなかったです。
七英雄も同じです。洞窟でダンダークと出くわした時なんて冷や汗ものでした。
しかしサガフロの妖魔にはまったくそれがなく、オルロワージュもヴァジュイールも設定上は最強であるものの、プレイヤーの目線からすると最強感はありません。
同じ系統のゲームなのにどうしてこうも差がつくのか?
おそらくですが、制作側がわざとそうしているんだと思います。
妖魔は強い。中でもオルロワージュは別格。
反面、全てを支配する最強の妖魔は、何をしようと、何を手に入れようと満たされない、空虚で儚い存在。
オルロワージュの最期はある意味では屈辱的なものでした。
戯れで拾ったアセルスという人間の少女。面白半分に妖魔の血を与え、半人半妖としました。
実は妖魔にもランクがあり、半分が人間のアセルスは、オルロワージュから見れば眼中にもない下等な妖魔です。
ですが最終的にはアセルスに倒されます。
理由は単純でしょう。
最初から最強の者は、最後まで成長をしないからです。
強い妖魔は鍛錬などしません。そんなものは下等な者のやることだと思っているからです。
しかし結果はどうか?
苦難を乗り越え、戦いをくぐり抜けることで鍛えられたアセルスに敗北しました。
全てを持っているはずの妖魔は、最強だったはずの妖魔は、裏を返せば何も持っていない最弱の存在でした。
きっとオルロワージュは自覚していたでしょう。自分は虚しく空っぽな者なのだと。
アセルスに血を分け与えたのは、いつか自分を殺しにくることを期待してのことかもしれません。
何も持っていないちっぽけで弱いアセルスだからこそ、最初から最強であるがゆえに、成長とは無縁の自分の天敵になってくれるかもしれない。
彼はどこかで人生の終わりを望んでいたように思えました。
その願いを託したのはヴァジュイールでもなく、マジックキングダムに現れた地獄の君主でもなく、彼から見れば取るに足らない人間の少女でした。
これもまた彼の弱さを感じさせます。
もしかしたら彼はアセルスに抱かれたかったのではないかと思います。
自分の血を与え、成長を願い、自分を超える存在になってくれることで、甘えられる者が欲しかったのかもしれません。
シャアがララアに母になってくれるかもと望んでいたように、オルロワージュもアセルスのどこかに母性を見出し、虚しく儚い自分を包んでくれる存在になってほしかった。
しかし彼女は一ミリたりともオルロワージュの言うことを聞かす、最初から最後まで反発し、成長してトドメを刺しに現れました。
もしオルロワージュが死を望んでいたのなら、夢は叶ったことになります。
虚しいだけの人生を終わらせ、永遠の安らぎを与えてくれたのですから。
彼からすればこれ以上ないほど母性で満たしてくれた女神かもしれません。
以前、メガテンのキャラクターについて語りました。
メガテンには実に人間臭いキャラクターが多いんです。
それはサガシリーズも同じです。
妖魔はとても人間臭いです。力はあっても神や仏のように完璧ではなく、悪魔のように迷いなく悪に生きることも出来ません。
面白いゲームには必ず人間臭いキャラクターがいるものです。
だからこそ感情移入し、おもしろくプレイすることが出来ます。
最強を謳うキャラクターの中では、オルロワージュはこれ以上ないくらいに人間らしい弱さを見せてくれたキャラクターでした。
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