格闘技の抱えるジレンマ

  • 2021.12.29 Wednesday
  • 13:23

JUGEMテーマ:格闘技全般

格闘技にはロマンがあります。
異種格闘技をやればどの格闘技が一番強いのか?
逆転KOや、倒し倒されての凄まじい死闘。
打撃で圧倒されていた選手が寝技で逆転したり、もちろんその逆もあります。
けどやはり一番のロマンは・・・言葉は悪いけど「合法的な喧嘩」を見られるということでしょう。
暴力は御法度です。喧嘩もNGです。
しかし人間には決して消すことの出来ない闘争心や闘争本能が備わっていることもまた事実です。
もしこの世から格闘技が消えたらどうなるか?
街での喧嘩は多発し、暴力事件も増えるでしょう。
喧嘩は駄目と言いつつも、もし街で殴り合いの喧嘩が始まれば、多くの野次馬が群がります。
一方的な暴力やイジメでない限り、まるで決闘を見ているような興奮がそこにはあるからです。
自分自身が戦うわけじゃなくても、誰かの戦う姿に闘争心を刺激され、、満たされるからです。
それを合法的に見せてくれる格闘技の社会的役割はとても大きいです。
と同時に、いったいどこでスポーツと喧嘩の線を引くのかという問題もあります。
格闘技はスポーツでもあるので、当然のことながらルールがあります。
多くの選手はルールを守って試合をやりますし、悪質な反則であれば失格負けとなります。
ボクシングでキックをすれば反則だし、柔道で殴れば反則だし、総合格闘技でも噛み付きやローブローは反則です。
全ては競技性と安全性の為です。
キックを打ちたいならキックボクシングや空手を、パンチを打ちたいならボクシングや総合格闘技をやればいいですし、噛み付きやローブローは危険なので禁止は当然です。
この点について異論を唱える人はいないでしょう。
しかしレフェリーやセコンドが試合を止めるタイミングについては様々な意見があります。
選手の安全を第一に考えるなら、危険と判断した時点ですぐに止めるのがベストです。
しかしプロの試合は興業でもあるので、あまりにストップが早過ぎると、観客の満足感は低くなるし、選手も「もっと出来るのに!」と憤るでしょう。
この見極めは本当に難しいと思います。
かつての格闘技はそう簡単には止めませんでした。
滅多打ちにされようが流血まみれになろうが平気で続行していたんです。
今よりもずっとラウンド数は長く、しかもダウンした相手の近くに立っていてもいいから、立ち上がった瞬間にまたボコボコなんてこともありました。
ですのでボクシングだとラウンド数は15から12へ変更され、ほとんどの格闘技でダウンを取った場合はニュートラルコーナーへ下がることがルールになっています。
総合格闘技でもルールの改変は何度も繰り返されました。
寝技で押さえ込んでから頭部への膝蹴りをする。
倒れた相手に肘を落とす。
団体によっては寝ている状態の相手には脚を使って攻撃してはいけないとか、二度と歩けなく可能性があるので脚への関節技は禁止という場合もあります。
つまり様々な失敗や事故などを経て、なるべく安全に戦えるように変わってきたわけです。
ただそうなると昔のような死闘が繰り広げられる試合は少なくなりました。
ある有名な格闘家が言っていました。
お客さんは喧嘩を見たいのだと。
あまりにスポーツライクに偏りすぎると喧嘩とは程遠くなっていきます。しかも競技として洗練されればされるほど、これまたスポーツへと近づいていきます。
つまり競技として進化すればするほど喧嘩を見たいという観客の要望に応えることが出来ず、結果として格闘技の人気が下がってしまうというジレンマが起きてしまうわけです。
選手はより強く、上手くなりたい。そして勝ちたい。
観客はより刺激的で喧嘩に近いモノを求めている。そして満足したい。
戦っている選手、見ているお客さん。
どちらも格闘技が大好きなはずなのに、実はなかなか埋められない大きな溝があります。
格闘技が抱えている最大のジレンマだと思っています。
私は選手が帰らぬ人となってしまうような試合を見るのは嫌です。
かといって極端に安全性ばかりを追求してしまっては、今まで通り面白いと思えるかどうかは自信がありません。
選手の安全か?それとも観客の胸を満たす刺激か?
この二つはいつだって天秤に掛けられていて、格闘技の在り方を左右してきました。
スポーツライクになるのを嫌がって、グローブを外して顔面を殴り合う格闘技もあります。
競技の安全性を重視して、本気で当てること自体を禁止している格闘技もあります。
格闘家の間でも意見が分かれているようです。
今後はどうなっていくのか?
一格闘技ファンとして見守りたいです。

もし人間に角、牙、爪が備わっていたら格闘技はどう変わったか?

  • 2021.05.02 Sunday
  • 14:18

JUGEMテーマ:格闘技全般

角、牙、爪。
人間以外の生き物だと大事な武器になっています。
人間も爪は持っていますが、武器として使える形状でも強度でもありません。
牙の名残である犬歯もありますが、やはり武器としての機能はすでに失われています。
代わりに銃や剣などの武器を持っているわけですが、肉体の一部ではなく、常に携帯しているわけでもありません。
素手で効率よく戦うには格闘技が必要です。
ではもし人間がバッファローのような角、虎のような爪、ライオンのような牙を持っていたら、格闘技の歴史はどう変わっていたでしょうか?
格闘技の試合では銃や刃物は禁止されています。
ですが角、牙、爪は肉体の一部ですから、禁止するかどうかは意見が分かれそうです。
ここでは使用可能という前提で考えてみたいと思います。
まずパンチの技術は発達しなかったでしょう。
どんなに拳を鍛え、パンチ力を磨くよりも、鋭い爪を振る方がよっぽど強力です。
猫の爪でさえ簡単に人間の皮膚を切り裂くことが出来ます。
ではもっと大型の人間の爪であれば、皮膚どころか肉まで切り裂き、場合によっては動脈にまで達するはずです。
またガードも通用しません。
腕を上げて防いでも肉ごと切り裂かれ、いずれは失血によって戦闘不能になるでしょう。
キックも制限を受けてしまいます。
空手家やキックボクサーはキックを掴むのが上手いです。
ではもし鋭い爪で蹴り足を掴まれたらどうなるか?
これまた肉まで食い込み、もはや蹴るどころか歩くことすらままならなくなるはずです。
そもそも鋭い爪が生えていたら拳を握ることが出来ないので、やはりパンチは発達しなかったでしょう。
牙も爪と同じく強力な武器です。
基本的にどの格闘技でも噛み付きは禁止されていますが、牙を用いた攻撃となると噛み付きしかありません。
角、牙、爪は使用可能という前提ですから、ここでは噛み付きも可能とします。
牙は爪ほど使い勝手はよくありませんが、代わりに爪とは比べ物にならないほど威力があります。
動物同士の戦いでも決着は噛み付きによることが多いです。
では猛獣のように尖った牙を持った人間同士が戦ったらどうなるか?
これは安易に組み付いたり寝技に持ち込んだりすることが出来ません。
絞め技や関節技はとても強い技ですが、牙を用いた噛み付きの前ではほとんど無力になってしまうでしょう。
組み付くこと自体が危険になるからです。
チョークスリーパーが決まりそうだ、腕ひしぎが決まりそうだ。
こんな時に腕に噛み付かれたら技を掛けるどころではありません。
また爪と牙は相性がよく、爪でガッチリとホールドされて噛み付かれたら命に関わります。
やはり組み技や寝技はほとんど使えなくなってしまうでしょう。
では角の場合はどうか?
色々考えてみましたが、これはどうも微妙な感じになりそうです。
爪ほど使い勝手がいいわけでもなく、牙ほど確実にダメージを与えられるわけでもありません。
それどころか下手をしたら相手に掴まれてしまい、振り回されたり転がされたりと不利になる可能性大です。
また寝技だと角を絡める取る技とか、角を掴んで決める技なども登場し、むしろ弱点として機能してしまいそうです。
上手く角を突き出せば打撃に対する防御にはなりそうですが、頭が重くなるデメリットがあるので、むしろ動きが鈍って回避は遅れてしまいそうです。
爪と牙はこんなに役に立つのに、どうして角だけはあまり役に立たなさそうなのか?
自然界を見渡すと、角を武器にしているのは捕食される側の動物です。
ということは角は身を守るための武器であり、防御的意味合いが強い鎧のようなものかもしれません。
そして角を爪や牙を超えるほどの強力な武器に変えるには、圧倒的な体重と体格とパワーが必要になります。
サイ、バッファロー、ヘラジカ、この辺りの動物は重くて大きくて力も強いです。
最大の陸上動物であるゾウは角ではなく牙を持っていますが、その使い方は猛獣のように噛み付くのではなく、突進や突き上げで威力を発揮する角のような役割です。
部位としては牙でも、武器としての機能は角と言っていいでしょう。
虫の世界だとカブトムシも体が大きく、体重も他の虫よりも重く、さらに虫とは思えないほどの力を持っています。
ですがカブトムシは肉食ではありません。
カブトの角はオス同士の喧嘩だけでなく、鳥などの捕食者から身を守る武器でもあるのです。
ということはつまり、格闘技のようにお互いが戦う気満々で、しかも倒すことを前提とした戦いでは角はそう役に立たないのでしょう。
そもそも直立二足歩行の人間だと角を武器として使うには向いていません。
格闘技は攻めることを前提しているので、防御的意味合いの強い角はやはり向かないのでしょうね。
色々と考察しましたが、もし本当に人間に鋭い爪や牙が備わっていた場合、格闘技の歴史は大きく変わっていると思います。
見るも無残な殺し合いになるか?
はたまた危険過ぎるということで禁止になってしまうか?
それともちょうどいい落とし所を見つけて競技化するか?
仮に競技化された場合は今とはまったく違う技術体系になっているでしょうね。
それはそれで見てみたい競技ではありますが、しょせんは夢の話です。
爪や牙や角がないからこそ、格闘技は芸術的な領域にまで発達したのだと思います。
格闘技がファンが見たいのは単なる強さだけではなく、いかに美しく戦うかということでもあるので、角、牙、爪という武器がなくてよかったのかもしれませんね。

パンチの要

  • 2021.03.29 Monday
  • 19:58

JUGEMテーマ:格闘技全般

強く速いパンチは腕の力だけでは打てません。
ではパンチは要はどこにあるのか?
よく言われるのは腰です。
ただしこの場合の「腰」は「足腰」を意味しています。
地面を蹴り、腰を回すことでその力を伝えるわけです。
ボクシングを始めとして多くの格闘技でこの理論が浸透していると思います。
とても理に適っていますが、これに異を唱える人もいます。
日本人として史上二人目のミドル級世界王者になった村田諒太選手です。
パンチは腰ではなく手で打つもの。
何を当たり前のことを思うかもしれませんが、これは足腰より手の動きを重要視するという意味です。
普通はパンチを打つ場合の体の動きの順番はこうです。
地面を蹴る、腰を回す、肩を入れる、肘を入れる、ナックルを返す。
縦拳の場合はナックルを返しませんが、足から腰、肩、肘と、要するに足から手へという順番で動いていきます。
しかし村田選手はこれとは逆に、手が先行していいと語っていました。
足腰から順番に動かしていると遅くなるというのです。
例えば野球のバッティングで振り遅れというのがあります。
バットの動きが体についていかす、ヒットのタイミングを逃してしまうことです。
せっかく打てるべきタイミングを捉えていても空振りになってしまうわけですね。
しかし手が先行していればこのミスを防ぐことが出来ます。
単にヒットのタイミングが分からずに振り遅れるなら別ですが、タイミングが分かっているのに打てないのであれば、それは体の使い方が間違っているというわけです。
あの落合監督も手が先だと語っていたそうです。
ボクシングもこれと同じで、足腰から手へという動きだと遅くなります。
しかも柔軟性を失った硬いフォームになりがちで、威力も落ちてしまいます。
だから村田選手は手を先に動かすんだそうです。
しかし手を先に動かしてしまうと、単なる手打ちになってしまわないかという疑問が残ります。
村田選手曰く、そうはならないそうです。
ご自身のYouTubeチャンネルで実演なさっていました。
手で打つというのはあくまで手が先行することであって、決して手打ちになるわけではないということを。
ます手が先に動きます。
するとそれに釣られて肩、腰、足と上手く回転していくのです。
足腰で打つやり方と、手が先行するやり方を比較していたんですが、圧倒的に手が先行した方が速かったです。
ミットを受けている人も「こんなに速いんだ!」と驚いていました。
視聴者目線のカメラでもその違いは一目瞭然。
手が先行する方が断然速い!
だったら強く速いパンチの要は手にあるということでしょうか?
他のボクサーの場合を考えてみましょう。
現ミニマム級世界王者の京口紘人選手、そしてダイナマイトの異名を持つハードパンチャー、元フェザー級、スーパーフェザー級二階級王者の内山高志さん。
二人の打ち方は村田選手とは逆で、足にこそ要があるように思いました。
まず二人とも凄まじく速いパンチを打ちます。
打った瞬間に風切り音がするほどで、コラボしたYouTuberたちも驚いていました。
そのパンチの原動力となっているのは足です。
正確には蹴り足、そして踏み込みの速さです。
京口選手のパンチはミニマム級とは思えないほどの威力です。
内山さんのパンチは速射砲かと思うほどの速さとパワーです。
二人のすごいパンチを可能にしているのは手ではなく足。
ならば足こそが要なのか?
しかし村田選手は手を先行させています。そして凄まじい速さと威力を実現しています。
対して京口選手と内山さんは蹴り足と踏み込みの速さで凄まじい速さと威力を実現しています。
手か足か?
どちらの打ち方であっても、相手をノックアウトするのに充分な力を備えたパンチを打つことが可能だと、それぞれのボクサーが証明しています。
となるとどちらが正解で、どちらが間違いかなんて決めることは出来ません。
そもそも例に上げた三人は全員が世界王者。
その実力は誰もが認めるところであり、検証する必要などありません。すごいに決まっています。
強く速いパンチの要にどこにあるのか?
選手によって違うと言ってしまえばそれまでですが、正解が一つだけではないのは確かだと思います。

スポーツとしての格闘技だけが格闘技ではない

  • 2021.03.04 Thursday
  • 10:39

JUGEMテーマ:格闘技全般

世の中にはたくさんの格闘技があります。
ボクシング、キックボクシング、空手、剣道、総合格闘技、プロレスなど。
柔道やレスリング、それに柔術。
しかしこれらの格闘技は格闘技でありながらスポーツでもあります。
これを格闘競技と呼ぶそうです。
安全性や公平性の為にルールを設け、その中で互いの技を競うれっきとしたスポーツです。
しかしそうではない格闘技も世の中には存在します。
軍隊や自衛隊で学ぶ格闘術、警察官が身につけている逮捕術。
合気道や少林寺拳法やジークンドーなど、試合ではなく日常の暴力に対する護身を目的としたもの。
格闘技は闘う技全てを意味する呼称です。
つまり私たちがよく知っている格闘競技はその一部でしかありません。
実は以前、私もある護身系の武道で体験をさせてもらったことがあります。
体も鍛えてるし多少は格闘技の経験もあるので大丈夫だろうと思っていたんですが・・・・。
先生の技の前に簡単に関節を極められるわ、簡単に転がされるわ、簡単に押し返されるわで驚いた経験があります。
もちろんちゃんと手加減して下さったので怪我はしていません。
しかし私の知っている格闘技とはまったく別の、未知の世界がそこにある感じでした。
技術体系、動き方、闘い方などなど、あらゆるものが格闘競技とは異なった進化を遂げていたからです。
よくメジャー以外の格闘技は弱いのではないか?と議論にあがることがあります。
しかしこういった時にはほとんど場合、格闘競技としての前提で話を進めているのでどしても弱いと思われがちです。
格闘競技はスポーツです。
つまりサッカーや野球とも同じというわけなので、経験者を前にそれぞれの競技のルールで闘えばまず素人は勝てません。
同じ格闘競技であっても、ルールが異なれば素人になるのと同じです。
ボクサーに柔道は出来ないし、柔道家にボクシングは出来ません。
真似事のようなことはできるだろうし、トップファイターなら初心者相手にフィジカルで押し切ることも可能でしょう。
しかし実力者相手となるとまず無理です。
その競技に特化した猛者を相手に闘えるわけがありません。
要するに格闘競技ではない格闘家が、ボクシングやキックや総合で闘ってもそう良い成績を残せないのは当然のことです。
そのルールの中で進化を遂げた経験者の方が強いに決まっているからであり、負けた方が必ずしも「闘う強さ」において弱いとは限りません。
私に技を掛けて下さった武道の先生は高齢の方でした。
もしもグローブを填めてボクシングルールで闘うとなったら、おそらく私の勝率の方が高いでしょう。
グローブによって繊細な指の動きと柔軟な手首の動きは封殺され、さらにパンチだけに限定されてしまうからです。
そしてフィジカルの差がモロに出ます。
私は決してプロでもなければそこまで高いフィジカルを持っているわけでもありませんが、高齢の先生よりかは勝っているはずです。
しかも齧った程度とはいえ一応は格闘技経験者です。
こちらに有利なルールなら経験者の方が強い法則がありますから、やはり私の勝率が高くなるでしょう。
しかし格闘競技のルールを無しに闘えと言われたら・・・・・私は遠慮しておきます。
競技としての格闘技とはまったく異なる進化を遂げた格闘技は、未知の世界に足を踏み入れるがごとく、どこから何が飛び出してくるか分からない恐怖があるからです。
下手をすれば何の反応さえ出来ずに倒されたり制圧されたりしているかもしれません。
もちろん私がただ格闘技を齧っただけの大して強くない奴だからというのも理由ですが。
格闘技の世界は奥が深いです。
闘う。
ただそれだけのことなのに、そう簡単にいかないのが格闘技の魅力であり、懐の深さですね。

カーフキックの流行は格闘技の進化の兆し

  • 2021.01.26 Tuesday
  • 11:08

JUGEMテーマ:格闘技全般

いま格闘技界を賑わせている蹴り技、カーフキック。
堀口選手と朝倉海選手の試合がカーフッキクで決着したことは記憶に新しいです。
パンチを主体とするボクシングスタイルの海選手に対し、堀口選手は強烈なカーフッキクを見舞いました。
そしてUFCではあのマクレガーもこの技によって敗北を喫しました。
マクレガーもパンチ主体の選手です。
海選手ほどボクシングスタイルの構えではありませんが、やはりパンチ主体の構えは前足を狙われると弱いようです。
どうしても前足荷重になってしまうし、パンチを打つ瞬間は尚更です。
そういえば昔、K-1人気が絶頂だった頃のことです。
ボクサーがK-1のリングに上がり、ローキックによって苦戦を強いられ、良い結果を残せなかったことを思い出しました。
蹴りに対して無防備なボクサーはたった一発のローキックでもバランスを崩し、大きなダメージを負います。
リズムも乱され、タイミングも掴めず、やがて踏ん張りさえ効かなくなり、まともにパンチを打てなくなります。
パンチを殺されたボクサーはもう武器がありません。
K-1ファイターに距離を詰められ、パンチでノックアウトされる展開も珍しくありませんでした。
そしてミドルキックもパンチ主体の選手にとっては大敵です。
足だけでなく腕も潰され、ガードすらままならなくなるからです。
ミドルキックは最も強く打てるキックの一つです。
そして足の力は腕の三倍。
どんなハードパンチャーのパンチよりもずっと威力があるでしょう。
正しい防御の仕方を知らないボクサーはミドルキックによって腕を赤黒く染められていました。
MMAでもだんだんとこれに近いことが起きているように思います。
進化し、洗練されたMMAは、いまのところボクシングとレスリングを組み合わせた形がもっとも強いように思います。
しかしそこに抜けているのは蹴り技です。
キックの得意な選手は大勢います。
マクレガーもキックはかなり上手いです。
それなのにどうして敗れてしまったのか?
キックが得意、キックがちゃんと使える。これの本来の意味は防御もちゃんと出来るということだと思います。
一流のボクサーはパンチの防御も一流であり、一流のレスラーはタックルの防御も一流です。
そして一流のキックボクサーやムエタイ選手はキックの防御も一流です。
極真の一流選手もキックに対しては滅法強いです。
極真の猛者の場合、下手な蹴りを打ったら蹴った方が怪我をするんじゃないかと思うほど脛が硬く、防御も上手いです。
那須川天心選手が自身の動画で語っていました。
最近はキックボクサーでもパンチメインの人が増えたと。
たしかに昔に比べるとキックボクサーでもMMAファイターでもパンチの上手い人が増えています。
上述のマクレガーは引退後のメイウェザー相手とはいえ、10ラウンドまで打ち合いました。
最終的に負けはしましたが、ボクサーでもないのにメイウェザー相手にあそこまで打ち合えるのは凄いことです。
ボクシングスパーで元二階級王者のボクサーからダウンも取っています。
MMAの舞台でも、その自慢のパンチテクニックで何度もKO勝利しています。
しかしそんな凄いパンチを持ちながらも、いま話題のカーフキックの前に敗れ去りました。
まるでK-1ファイターにローキックで沈められたボクサーたちのように・・・・。
となると次にMMAでどのよな技が流行るのか?少しだけ見当が付く気がします。
それはミドルキック。
足を潰したなら次は腕です。
ボクサータイプが相手なら足だけで充分ですが、グラップラー相手となると不十分です。
足を潰されたらタックルは満足に出来ないでしょう。
それでも優れたレスリング技術と寝技の技術はストライカーにとって脅威です。
しかし足を潰してタックルを抑え、その次に腕を潰してしまえば翼をもがれた鳥も同然です。
あとはパンチでKOするなりパウンドで仕留めるなり、そのまま蹴り続けて戦意を喪失させる、もしくはレフェリーストップを狙うなり自由です。
パンチがメインになれば当然キックが弱点になります。
しかしキックがメインになればどうか?
今度はタックルからの寝技がメインとなり、それを打ち破るにはパウンドやサッカーボールキックになります。
思えば異種格闘技の始めの頃、グレイシー柔術が猛威を振るいました。
打撃系の選手は良い結果を上げられず、対抗できるとすればレスラーか柔道の選手だけでした。
しかしやがてストライカーも進化しました。
レスリングの技術を身に付け、パウンドやサッカーボールキックを駆使することで、寝技に付き合う必要がなくなったからです。
寝技が思うように使えない柔術の選手たちはだんだんと活躍する機会が減っていきました。
無敵だったグレイシー柔術の時代は終焉を迎えたのです。
やがてプライドではストライカー、主にキックボクシングやムエタイ出身の選手の活躍が目覚しくなりましたが、UFCでは別の進化が起きていました。
こちらではとにかくレスリングが重要で、その技術をベースにボクシングを活かすというものでした。
そして今まであまり注目されていなかった武道も台頭してきました。
伝統派空手です。
K-1には極真出身の選手は多くいましたが、伝統派はほとんどいませんでした。
しかしUFCでは伝統派の技術を駆使し、レスリング+ボクシングの選手を圧倒する選手が現れます。
代表的なのはリョート・マチダ選手でしょう。
そして堀口選手も伝統派空手出身であり、その技術を最大に活かした飛び込んでからの突きは凄まじいスピードと威力です。
プライドからUFCへ移った選手たちはこれらの進化に戸惑い、良い結果を残すことは出来ませんでした。
そして今、再び進化が起ころうとしています。
そのキッカケは間違いなくカーフキックでしょう。
打撃、組み技、寝技。オールラウンドが売りなはずの競技が、たった一発の蹴り技に対してこれほど無防備だった。
しかしこの発見は決して悪い事とは思いません。
なぜならこれは格闘技の進化の兆しだからです。
きっとしばらくはカーフキックが猛威を振るうでしょう。
するとキックの攻防技術が重要になり、キックの上手い選手が活躍するかもしれません。
しかしキックの弱点は片足立ちになること。
グラップラーはレスリングを磨き、上手くテイクダウンを取るようになります。
そしてテイクダウンから先は柔術の領域。柔術の技術が重要になります。
それに対抗するためにストライカーはレスリングの技術を高め、タックルを切りつつパンチを打ち込む。
またパンチ主体時代が到来し、そしてそれを打開するためにキックが磨かれ・・・・。
一見すると堂々巡りですが、同じ場所をグルグル回っているわけではありません。
一巡するごとに格闘技は進化します。
なぜならこの回転は螺旋のように上へ昇っていくからです。
最強の選手が一時代を築き、しかし時代が変化する時にあっさり負けてしまい、次なる最強の選手が誕生するんです。
これからの格闘技はますます目が離せません。

格闘技で筋トレは必要か不要か

  • 2020.12.04 Friday
  • 11:45

JUGEMテーマ:格闘技全般

スポーツ界にはこんな議論があります。
筋トレ不要論。
もちろん格闘技の世界にも。
不要論派の意見としてはこうです。
筋トレは役に立たない。場合によってはマイナスになる。
必要派の意見はその逆です。
筋トレは役に立つ。ちゃんとプラスになると。
これってそれぞれの主張にちゃんと根拠があるし、しかも一流選手でも意見が分かれるから、結論を出すのはかなり難しいです。
ちなみに私は必要派です。
ですが不要派の意見も分かります。
まず不要派の意見です。
筋トレで鍛えた筋肉と格闘技で使う筋肉は違う。
例えばパンチ力を上げたいからといって筋トレをしても上がるわけじゃない。
打撃は距離とタイミングであり、いかに体を上手く使って打つかが鍵。
ハードパンチャーと呼ばれる選手でも、意外と腕力はなかったり握力も低かったりすることがあります。
キックも同じです。筋肉逞しい脚だから強い蹴りが打てるわけじゃなく、パンチと同じでフォームとタイミングが大事。
この意見はよく分かります。
たしかに筋肉を鍛えたからといってそう簡単にパンチ力が上がるわけじゃないんですよね。
フォームが間違っていたり崩れたりすると力は逃げてしまいます。
それにスピードやキレのないパンチではなかなか相手の意識を断つことは出来ません。
人間ってけっこう頑丈に出来ていて、単純に力任せに打ってもダウンは狙えないんです。
KOダイナマイトの異名をもつ内山高志元世界チャンピオンも語っていました。
力んだパンチでKOしたことは一度もない。周りの選手にもいない。
現役世界チャンピオンの村田諒太選手、そしてあの井上尚弥選手も同じような意見でした。
KOパンチには手応えがない。つまりフォームとスピードとキレ。そしてタイミングよく急所を狙うこと。
Kー1元チャンピオンの魔裟斗さんも、キックに関して同じような意見でした。
パワーじゃなくてスピード。効く部位を正確に狙うこと。そっちの方が大事。
もし重いキックを打ちたいなら前に重心を乗せるようなフォームで蹴ることだそうです。
そして寝技の強い選手も案外マッチョな人は少ないです。
けっこう細身の選手が多いです。元PRIDEファイターのノゲイラ。それに生粋の寝業師の青木真也選手も。
寝技は詳しくないですが、きっと力じゃないんでしょうね。
打撃と同じでスピードやタイミングの方が大事なんだと思います。
こうして書き出してみるだけでも筋トレは必要ないんじゃないかと思ってしまいますが、でも実は多くの人がちゃんとやってるんですよ。
今は良い時代です。
動画でたくさんの選手のトレーニングを見ることが出来ます。
その多くの選手はちゃんと筋トレをやっています。
打撃ありの格闘技なら腹筋は当たり前。懸垂や重いロープを振るトレーニング、腕立てやスクワットなどなど。
これらも立派な筋トレです。
つまり筋肉を鍛えるフィジカルトレーニングなしにあの体にはならないし、強いパンチやキック、寝技の体力は養えないのでしょう。
だから私は必要派なんです。
けどこれがウィトトレーニングとなると、必ずも必要とは言い切れないと思います。
KOアーティストと呼ばれる木村ミノル選手はウェイトトレーニングを取り入れているようです。
最近ではRIZINでバンタム級王者になった朝倉海選手もパーソナルトレーニングでウェイトをやっている動画を見ました。
つまり必要としている選手や、結果を出している選手もいるわけです。
しかしウェイトをやらずとも結果を出している選手もいるわけで、こればっかりは必要か不要かの議論は簡単に決着がつきません。
そもそも選手によって筋肉の付き方、体の動かし方、得意技、得意な戦法は違うので、一概に言い切れないのは当然のことです。
よって基礎的な筋トレは必要だけど、ウェイトトレーニングは人によるのだと思います。

井上尚弥チャンピオン 初のラスベガス戦で見事にKO勝ち!

  • 2020.11.08 Sunday
  • 11:43

JUGEMテーマ:格闘技全般

JUGEMテーマ:ボクシング

井上選手が見事なKO勝ちを収めました。
ボクシングの本場ラスベガス。そして初めての無観客試合です。
対戦相手はとても強い選手です。
名前はジェイソン・モロニー。戦績は22戦21勝(18KO)1敗。はっきり言って怪物級の強さです。
そもそも井上選手は決して弱い相手と戦いません。
常に強い相手との戦いを望んでいます。
ボクシングって最初は4回戦から始まり、そこから勝ち星を上げて6回戦、8回戦、日本ランカー。
そして日本チャンピオン、もしくは東洋チャンピオンになり、さらに世界ランキングを上げてからやっと世界戦に挑むことが出来ます。
そういう意味では自分の勝てる相手を選ぶのは悪いことではありません。
世界戦にしても、どうやったって勝てっこなさそうな相手は避けることもあります。
団体は一つではないですから、勝てそうなチャンピオンに挑むのも世界チャンピオンになるための正当な戦略です。
だから勝てる相手を選んで試合をするのは全然悪いことではないんですが、井上選手は違います。
とにかく強い相手と戦いたい。
その姿勢をずっと貫き、世界チャンピオンになり、WBSSでチャンピンの中のチャンピオンにまでなりました。
カッコイイです。尊敬するばかりです。
今回、ラスベガスでの初の試合ですが、とても落ち着いている印象を受けました。
決して勝負を焦るようなことはせず、じっくり相手を観察してから、自分の戦いに持ち込んでいました。
相手はとてもガードが上手い選手です。
無駄打ちしても意味がないどころか、タイミングとモーションを読まれてしまったらカウンターを食らう危険もあります。
しかし井上選手はとにかく冷静で、要所でジャブを当てて主導権を握っていました。
井上選手ってジャブの名手なんですよ。
スピードがあって威力もあって当てるのも上手くて、なにより打つタイミングが素晴らしいです。
相手の攻撃に合わせる、出鼻に合わせる。攻撃の起点とする。
これをやられると相手は自分のリズムを崩し、逆に井上選手は自分の土俵で戦うことができます。
そして6ラウンド。左フックでダウンを奪いました。
強烈な一撃です。相手もよく立ったなと感心するほどです。
ちょっと話が飛ぶけど、WBSSの決勝で戦ったドネア選手はあのパンチを何発も耐えたんですよ。
やはりレジェンドです。井上選手が尊敬していたボクサーですから、段違いに強かったってことですね。
そのドネアを下した井上選手は、もうバンタム級では敵はいないように思います。
今回の相手も強い選手ですが、井上選手は7ラウンドでKOしました。
カウンターの右ストレートです。
相手のワンツーの間隙を狙った一撃です。
ワンのジャブとツーのストレートのわずかなタイミングに、これでもかというほど綺麗な右ストレートを叩き込みました。
井上選手は強すぎて、漫画のキャラクターにしてしまったら現実感がなくなるほどだと言われています。
いくら漫画でもこの強さはリアリティが無いだろうと。
でも現実にこうして勝ち続けているし、すごいファイトを魅せてくれます。
7ラウンド、相手をノックアウトしたあのカウンターの右ストレートは漫画ですらそうそうお目にかかれません。
理由はさっき書いた通り。いくら創作物でもリアリティが無さすぎるほど綺麗で鮮やかだからです。
事実は小説より奇なりと言いますが、現実は漫画よりもファンタジックであるということでしょう。
もちろん普通の人間には無理なことですが、天才中の天才は漫画を超えるファンタジックなことを成し遂げてしまいます。
野球のイチロー選手だって漫画のキャラクターにしたら、凄すぎてリアリティが無いと突っ込まれるでしょう。
室伏選手や吉田沙保里選手、ウサイン・ボルト選手。ボクサーならマイク・タイソン。
誰もが漫画を超えた技と結果を現実で体現した人たちです。
井上選手も同じです。
もはやバンタム級に敵はいないので、上の階級に上げるのではないかと期待しています。
実は今回の試合、途中で足が攣ったそうです。おそらく減量のせいでしょう。
以前に比べて明らかに体が大きくなっています。
肩周りの筋肉なんか凄いですよ。背中も大きくなりました。
井上選手はフェザー級まで挑戦したいと、以前のインタビューで答えていました。
まだまだ井上選手の快進撃は続くと思います。ていうか続いてほしいです。
これからも応援を続けます。

足腰に強化に効果絶大!相撲の四股とすり足

  • 2020.10.04 Sunday
  • 12:02

JUGEMテーマ:格闘技全般

JUGEMテーマ:相撲

四股とすり足。
相撲で基本的な鍛錬であり、最も大事な鍛錬でもあります。
相撲部屋の取材の映像だとよくこの二つの鍛錬をしています。
スポーツ選手でも取り入れている人が多く、あるボクサーは泊りがけで相撲部屋で稽古をさせてもらったそうです。
その結果、足腰と体幹がめちゃくちゃ鍛えられ、東洋チャンピオンにまでなったそうです。
そもそも相撲やレスリングや柔道など、組んで投げる武道や格闘技の人はとんでもなく足腰と体幹が強いです。
総合格闘技でもレスリングの出身者が多いですが、あの足腰と体幹の強さがあるからこそだろうと思います。
四股とすり足。
私もこの二つを筋トレに取り入れました。
するとどうなるか。
短い時間やっただけなのに足がパンパンです!
四股は膝の内側の角度が90度になるほど足を開きます。
そしてつま先が外側を向くようにします。この方が足を開きやすいし、股関節への負担が少ないからです。
そしてゆっくりと片方の足に重心を傾けながら、もう片方の足を持ち上げます。
この時、支えている方の足は真っ直ぐ伸ばすのがポイントだそうです。
よく持ち上げる方の足を意識してしまいますが、支える方の足が大事ということなんでしょう。
横綱、白鵬も武井壮さんとの対談で語っていました。
私は体重が150キロあるが、片足でちゃんと150キロ支えられるなら、両足だと300キロ支えられることになる。
そうすると取り組みの時でも自分と相手と両方の体重をしっかり支えることが出来る。
だから投げたり押し出したり出来るんだと。
そういう意味のことを語っていました。
とても分かりやすくて筋の通った理論です。
試しに武井壮さんが相撲を取りましたが、白鵬はビクともしませんでした。
当然ですよね、横綱なんですから。
もちろん勝てるわけないんですが、それでもあそこまでビクともしないのは、単に体重差や技術の差だけではないように思いました。
相撲の稽古で培った足腰が半端じゃなく強靭なんだと思います。
すり足もかなりキツい鍛錬です。でもこれもめちゃくちゃ足に効きます。
四股と同じようにしっかりと足を開いて腰を落とします。やはりつま先が外を向くようにします。
そして腰を落としまま足を地面を擦るようにして歩きます。
手は前に構えます。
両手を前に出し、手の平をやや上を向くようにします。
そしてすり足の動きに合わせて、相手を下から持ち上げるような感じで動かしていきます。
力士と相撲をした人がよく口にするのは「体が浮き上がるような感じがする」です。
これは相手の脇の下に手を入れ、上へ上へと持ち上げるような動作をするからです。
これをしっかりやる為には足腰の強さが欠かせません。
すり足の効果が発揮されるわけです。
実際にすり足をやってみるとですね・・・・まあキツいことこの上ないです。
足腰の強さには自信があったんですが、すり足稽古をしてみるとすぐにヘバってしまいました。
ずっと腰を落として足を開いて状態で前へ横へ後ろへと移動するわけですが、すぐに足が悲鳴を上げます。
動こうと思っても足が震えて動かなくなります。
個人的な感想ですがスクワットを100回やるより、すり足を一分間やる方が遥かにキツいです。
本当にすぐに足にきます。初めてやると30秒ももたないです。
だけどその分よく効きます。
特に普段使わない足の付け根だったり太ももの内側だったりと、いわゆるインナーマッスルが鍛えられます。
ここが鍛えられると体を支える力が強くなり、動いても疲れにくくなったり、姿勢がよくなったりします。
もちろん踏ん張る力も抜群に鍛えられるので、他のトレーニングをする時にも活きてきます。
相撲の四股とすり足。
シンプルだけど効果は絶大な鍛錬だと思います。

拳を極めるとはジャブを極めるということ

  • 2020.09.24 Thursday
  • 14:35

JUGEMテーマ:格闘技全般

左を制する者は世界を制す。
ボクシングの言葉です。
左というのはジャブのこと。
もっと正確に言うと前に構えた手のストレートです。
だからサウスポーなら右を制する者はという意味になります。
最近は総合格闘技の最高峰、UFCでもジャブを制する者は格闘技を制すると言われているようです。
格闘技は洗練されるにつれていきなり大技が決まることはなくなります。
アッパー、ハイクック、タックルからのスープレックスなどそう簡単に決まりません。
新たな格闘技が誕生し、初期の混沌した状況だとジャブはあまり使われないパンチです。
誰もが未知の戦いを経験するわけですから、一発大きいのを当ててやろうとして喧嘩に近い形になることさえあります。
ボクシングや総合でも初心者同士の戦いだとこうなります。
ほぼ喧嘩なんですよ。
とにかく大きなパンチを振り回し、当てたもん勝ちみたいな所があります。
しかし上に行けば行くほどこういった戦法は通用しなくなり、カウンターの餌食となるだけです。
ジャブは面白いパンチです。
なぜならなんにでも化けられるパンチだからです。
距離を測る、牽制する、相手の攻撃を寸断する、出鼻を挫く、ビッグパンチを当てる手がかりになる。
あらゆる役目を備えています。
連打すれば敵を寄せ付けない弾幕に、強く打てばダメージを与えるストレートに。
打ち方一つで効果も変わってきます。
逆に言えば相手のジャブをかわすことが出来れば、他のパンチももらわすにすむという意味でもあります。
ジャブが届く距離は、奥に構えた手のストレートが届く距離であり、返しのフック、ボディブローが届く距離でもあります。
ジャブで距離を測るのはその為です。
目測はそこまでアテに出来ません。
互いに正面から向き合っているわけだし、選手は素早く動きます。
目測は簡単に外れ、フェイントによって錯覚させられたりもします。
しかしジャブが当たるなら間違いなく他のパンチも当たる距離であり、ジャブが当たるなら他のパンチが当たるタイミングでもあります。
ジャブで目を狙う、強いジャブで顔を跳ね上げる、精密なジャブでガードの隙間を縫う。
初弾がヒットすれば次弾も当たりやすくなるわけで、次弾が当たれば三弾目もヒットしやすくなります。
格闘技の試合を見ていると、最初の一撃を食らった相手が次々にパンチを貰うのはこの為です。
つまりジャブの差し合いで負けると途端に不利な状況に追い込まれるわけです。
現代の洗練された格闘技においては、ボクシング、キック、総合のどれも、強い選手はジャブが上手いことが多いです。
それほどまでに重要なパンチであるジャブですが、実はなんとなく出している人が多いのも事実です。
初心者だとほぼジャブしか出ないスパーリングもあります。
理由は簡単、前に構えている手なので打ちやすく、動きも小さいので相手の反撃に対応しやすいからです。
しかしいくらジャブだけ打っても次に繋がるパンチがなければ意味がありません。
もしジャブだけでノックアウトできるなら、それはもう初心者ではないでしょう。
よほど強くなければそんな芸当は無理だからです。
ジャブはある意味では単純、しかしある意味では複雑です。
格闘技を習い始めの頃、一番最初に習うパンチであり、格闘技を極める頃、最も大事になるパンチでもあります。
ジャブは本当に面白いパンチです。
最弱だけど最強、シンプルだけど奥が深い。
パンチはジャブに始まり、ジャブに終わる。
拳を極めるとはジャブを極めるということ。
そう言っても過言ではないかもしれませんね。

格闘技の距離の詰め方 蹴って飛び込む方法と重心移動でスライドする方法

  • 2020.09.01 Tuesday
  • 13:28

JUGEMテーマ:格闘技全般

遠い間合いから素早く懐に飛び込む。
攻撃をかわして一瞬で懐に潜り込む。
格闘技において一瞬で距離を詰める技術はとても大事です。
特にインファイトやタックルが主体の選手にとっては生命線とも言えるでしょう。
どんなにパンチ力があっても、どんなに投げが上手くても、懐が取れないのであれば苦しい戦いになります。
一瞬で距離を詰める選手はとても強いです。
マイク・タイソンはサっと懐を取ってショートパンチの連打を浴びせます。
一発一発がKOの威力があるのに、それを近距離から連打で浴びせられたら相手はたまったものではありません。
タイソンに距離を詰められることはノックアウトされるのと同義と言っても過言ではないでしょう。
それに総合の堀口恭司選手も一瞬で距離を詰めます。
遠い間合いから瞬時に踏み込み、ノーモーションのパンチを見舞います。
相手は反応すら出来ずにモロに食らうことも多々あります。しかも威力も抜群です。
しかし距離の詰め方は選手によって様々です。
大別すると「地面を蹴って勢いよく飛び込む」方法と、「重心移動でスライドするようにスルっと入り込む」方法があるように思います。
マイク・タイソンは地面を蹴って勢いよく飛び込みます。
相手のパンチをかわすと同時に跳ねるようにして中に潜り込み、強烈なフックやアッパーを繰り出します。
対して堀口恭司選手は地面を蹴るのではなく、重心を上手く前側にスライドさせながら、スルっと距離を縮める感じです。
そしてしなやかに伸びるロングストレート。
西洋の格闘技では地面を蹴って飛び込みます。
足に力を込め、前方にジャンプするような感じです。
この時、決して上に飛んではいけません。
跳ねる力は全て前に向けます。
そうすることで一瞬で距離を詰めることができます。
日本の武道だと蹴って飛び込むのは良くないとされているそうで、膝から力を抜き、重心を前に預けることでスライドする感じです。
この時に身を屈めるようにすると、対戦相手からするとあたかも消えたかのように錯覚し、パンチを食らってしまうのです。
蹴って飛び込む。
重心移動でスライドする。
果たしてどちらが効果的な距離の詰め方なのか?
ありきたりな答えだけど一長一短だと思います。
まず蹴って飛び込む方法のメリットですが、技術的にも心理的にも簡単ということです。
単に後ろ足で蹴るだけです。
そして蹴るには力まないといけません。
戦いの最中、脱力するには勇気がいるけど、力みは簡単に出来ます。
それに蹴って飛び込むということは、ある意味では体当たりをしているようなものです。
蹴って飛び込んだその瞬間から力が乗るので、被弾覚悟で距離を詰めるなら有効な方法です。
相手のパンチやキックが伸びきる前に距離を縮めれば、たとえ食らっても威力を殺すことが可能だからです。
そして飛び込む方法は体を捻る動きとも相性が良いです。
例えば相手のパンチを左に身を捻って飛び込みめば、懐を取ったあとはすでに強力なフックやアッパーを打てる体勢に入っているわけです。
タイソンがよくこの動きをしています。
懐を取られてヤバイ!と焦っても時すでに遅し。
すでにパンチの体勢に入っているタイソンはショートパンチを見舞うことが出来ます。
しかしデメリットもあります。
蹴って飛び込むという方法は、蹴り足の強さが重要になります。
もし蹴り足が弱い場合、素早く飛び込むどころか、懐に入るまでの距離が足りません。
すると相手のパンチやキックがベストな威力を発揮する距離で止まってしまい、無防備な状態を晒すことになりかねません。
それに飛び込むにはいったん踏ん張りが必要で、ダメージを受けて足に効いている時は使えません。
また飛び込むという動作はどうしても動きの「起こり」、つまりモーションが出てしまうので、普通に飛び込んでも見破られることが多いです。
蹴って飛び込むには相手のパンチをかわしながらであるとか、ボディを効かせてある程度動きを封じてからじゃないと難しいでしょう。
逆に地面を蹴らず、重心移動でスライドする場合はどうでしょうか?
最大のメリットはなんといってもノーモーションであることです。
堀口恭司選手の試合を見ていると分かりますが、踏み込む際にほとんど動きの起こりがありません。
なので相手は反応できずにパンチをもらってしまうわけです。
また重心移動のスライドは踏み込みと同時に強烈なストレートを打つことが出来ます。
ストレートはノーモーションのパンチですから相性がいいのでしょう。
体重は乗るし射程は伸びるし悟られにくいしで強力な武器になります。
タイミングさえ合えば遠い間合いからのストレート一撃で試合を終わらせることも可能でしょう。
ではデメリットはどうでしょうか?
まず技術的に難しいです。
膝から力を抜いて前に重心を預けつつ移動するって高度な技術です。
それに戦いの最中に脱力するって勇気のいることです。それこそ相手の懐に飛び込むとなると尚更です。
それに蹴って飛び込む時のように体を捻るのには向きません。
スライドする場合は体を捻るとバランスを崩し、上手くいかないからです。
だから飛び込んだあとはタイソンのように近距離で威力のあるパンチを打つことは難しいです。
軽いストレートの連打なら可能かもしれませんが、それではノックアウトは出来ません。
蹴って飛び込む。
重心移動でスライドする。
一長一短があるのでどちらが優れた方法か決めることは出来ませんが、それぞれのファイトスタイルや状況に応じての使い分けがベストなんでしょうね。
どちらにせよ一瞬で距離を詰めるのは格闘技でとても大事なことです。
上手く身に付ければ自身の格闘技がレベルアップする技術なのは間違いないでしょうね。

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