微睡む太陽 最終話 微睡む太陽(2)
- 2017.05.22 Monday
- 11:58
JUGEMテーマ:自作小説
紅葉はまだまだだけど、空気はひんやりしている。
さっきまで琴音さんと話をしていた。
俺は長袖のTシャツを着て、デニムジャケットを羽織る。
そして宇宙人捜索用ライト、通称懐中電灯というが、その電池を買いに出かけた。
昼前なので陽は高く、空気は涼しいが、陽射しが暑い。
ジャケットはいらなかったなと思いながら、汗ばむ背中を撫でた。
電器屋に着き、電池のコーナーへ向かう。
途中でテレビのコーナーを抜けるのだが、そこでこんなニュースが流れていた。
『先日見つかった大型肉食恐竜の化石ですが、11月23日に一般公開されることが決まりました。
このニュースには海外も注目していて、多くの学者が詰めかけています。
公開は五日間の限定となっており、連休も重なることから、かなりの混雑が予想されています。』
アナウンサーがニュースを読み上げ、コメンテーターが『楽しみですね』と喜んだ。
「また人が多くなるな。」
ようやく登山制限が解除されたのに、人混みで溢れてはUFOの捜索は難しいだろう。
「公開中は他の場所を探すか。」
電池を握りしめ、カウンターに歩く。
家に帰り、古くなった電池を抜いて、新しいのを入れた。
「こいつは必須アイテムだからな。」
カチカチと入れたり切ったりして、部屋の中に光を飛ばす。
点滅する光、自由自在に駆け抜ける閃光。
きっとUFOはこんな感じで空を飛ぶのだろう。
「・・・・・・・・・。」
カーテンを引き、部屋の電気を消し、床に寝転がる。
ライトを握ったまま、好きなだけ光を遊ばせた。
薄暗くなった部屋の中に、跳ねるように駆ける光の玉。
壁を、天井を、カーテンを。
一瞬で部屋の隅まで移動したかと思えば、次の瞬間には天井に張り付いている。
そうやって何度も何度もライトで遊んだ。
手首をちょいっと動かすだけで、光はどこへでも飛んでいく。
窓を開ければ、一瞬で空の向こうまで駆け抜けるだろう。
「・・・・・・・・・。」
俺はじっと光を睨む。
というのも、さっきから奇妙なことが起きているからだ。
懐中電灯の光の他に、もう一つ光が飛んでいる。
俺はスイッチを切って、電灯を置いた。
「なんだこれは?」
やっぱりもう一つ光が飛んでいる。
懐中電灯と似たような動きをしながら、シュババ!っと部屋を駆け回っている。
時々チカチカと点滅して、色まで変わった。
いや、色だけじゃない。
細長くなったかと思えば、真四角になった。
三角にもなるし、輪っかのようにもなる。
「これはUFOか!」
そう叫んで立ち上がろうとしたが、やめた。
黙って寝転んだまま、光を眺めることにした。
光は好きなように飛び回る。
色も形も自由自在で、瞬間移動かと思うほど速く動く。
そして・・・・・、
「すごい。」
壁や天井を駆けていた光が、宙に舞い上がる。
そして俺の頭上までやってきた。
「・・・・・・・・。」
光と目が合う。
じょじょに降りてきて、手を伸ばせば届きそうな位置で止まった。
俺は手を伸ばし、光に触れようとした。
しかし途中でやめた。
手を引っ込め、じっと見つめる。
すると光の中から優二が出てきた。
《行かないの?》
「ああ。」
《約束したじゃん。一緒に行こうって。》
「俺は地球がいいんだ。」
《どうして?》
「宇宙には何もないから。ここから見上げるだけでいいんだ。」
《見てるだけでいいの?楽しいこといっぱいあるよ?》
「でも寂しい場所だ。」
《行ったことないのに、どうして分かるの?》
「・・・・・・・。」
《怖いんでしょ?》
「ああ。」
《平気だよ、僕がいるから。》
「お前は幻だ。どこにもいない。」
《違うよ、僕はいる。宇宙人がみんなの記憶を操作して、真実を隠してるんだ。》
「そうかもしれないけど、俺は行かない。でも会いに来てくれて嬉しいよ。」
身を起こし、優二と向かい合う。
「お前は幻か?そうじゃないのか?そんなのはもうどうでもいいんだ。」
《僕はよくない。》
「お前は本当の宇宙人で、俺の記憶が間違ってたとしよう。だけど俺はこの星を離れたくない。」
《じゃあなんでUFOを探すの?乗りたいからでしょ?》
「いいや、探そうって思う気持ちが大事なんだ。そうする限り、俺は空を見ることをやめないだろう。」
《いつでも見られるよ。宇宙に出たら。》
「この星に立ってることが大事なんだ。それで空を見上げる。それでいいんだ。」
《変なの。もうチャンスはないよ。》
「構わない。」
《本当に?後悔しない?》
「しない。」
《・・・・分かった。じゃあ別の人を乗せていくよ。》
「誰を?」
《兄ちゃんもよく知ってる人。その人もUFOに乗りたがってるんだ。
悲しい気持ちを抱えてるから、ずっと空を見てる。》
優二はUFOに戻る。
そしてパッと光って消えてしまった。
「おい!」
部屋から光が消える。
俺は電気を点け、カーテンを開けた。
外を見渡しても、UFOはどこにもいない。
「・・・・まさか。」
俺はすぐにおばさんの家に電話を掛けた。
「・・・・もしもし?おばさんですか?」
『ああ、勇作君。今日は休み?』
「はい。それより陸翔君はいますか?」
『部屋でゲームしてるはずだけど。呼んでくる?』
「お願いします。」
『ちょっと待っててね』と言い残し、おばさんの足音が遠ざかる。
そしてしばらくすると『UFOの人?』と声がした。
「陸翔君!無事か?」
『何が?』
「UFOが君をさらいに行くかもしれないんだ。」
『ほんとに?』
「俺もすぐにそっちへ行く。もしUFOが来ても、絶対に乗っちゃいけないぞ!」
『分かった。』
俺は電話を切り、車を飛ばした。
陸翔君の家に着くと、「無事か!?」と駆けこんだ。
「UFOの人!」
車椅子を押しながら出て来る。
そして「UFOは来なかったよ」と笑った。
「本当か?」
「ほんとほんと。」
そう言って「今日も晩御飯食べて行けば?」と誘った。
「そのあと一緒にゲームしようよ。」
「すまない。今はそれどころじゃないんだ。」
「何かあったの?」
「優二が来たんだ!あいつ・・・・誰かをさらっていくつもりだ。」
「UFOの人、また・・・・、」
陸翔君はおばさんを振り向く。
「UFOの人がまたおかしくなっちゃった。」
「そうね・・・・。引っ張ってでも病院に連れて行った方がいいかしら?」
「また溺れたりするかもしれないもんね。」
おばさんは頷き、「勇作君」と呼んだ。
「明日バイトを休んで、病院に行かない?」
「どうして?」
「勇作君がUFOを追いかけたい気持ちは分かる。
だけど・・・・たまにね、そうやって興奮する時があるでしょう?
私も陸翔もそれが心配なのよ。」
「俺は平気です。」
「誤解しないでほしいんだけど、UFOを探すのをやめろって言ってるわけじゃないのよ。
ただすごく興奮する時があるでしょ?感情が不安定になるっていうか・・・・、」
「だって優二が誰かをさらおうとしているんです!放っておけません!」
俺は外に駆け出す。
車に乗り込み、エンジンを掛けた。
「勇作君!」
「UFOが来ても、絶対に家に入れないで下さい!」
「ちょっと落ち着いて・・・・、」
「今から琴音さんの所へ行ってきます。」
「琴音ちゃんの?どうして?」
「陸翔君がターゲットじゃないなら、彼女しか思いつかない。きっと今頃UFOに怯えているはずです!」
「それじゃ」と言って、陸翔君の家を後にする。
「勇作君!」
ルームミラーに、心配そうなおばさんの顔が映る。
そりゃそうだろう。
宇宙人の脅威が再び蘇ったのだから。
これを阻止できるのは俺しかいない。
急いで車を走らせ、琴音さんの元に向かう。
彼女は銭湯に向かったはずだ。
ボロッちい銭湯まで車を走らせて、「琴音さん!」と駆け込んだ。
すると番台のばあさんが「なんだい?」と睨んだ。
「琴音さんは!?」
「風呂だよ。今日が最後だから入りに来てるよ。」
「UFOは来てませんか!?」
「は?」
「宇宙人が琴音さんをさらうかもしれないんです!」
「また始まった・・・・。」
「早く保護しないと、遠い宇宙に連れて行かれてしまいます!」
俺は女湯の暖簾に駆け込む。
ばあさんは「何してんだい!」と掴みかかってきた。
「警察呼ぶよ!」
「離せ!琴音さんが危ないんだ!」
「頭おかしいんじゃないのかあんた!」
男湯の方から「どうした?」とじいさんが顔を出す。
「警察呼んどくれ!」
「なんだ?UFOの兄ちゃんじゃねえか。」
「こいつ女湯に入ろうとしてんだよ!ウチの孫が入ってるのに!」
「琴音ちゃんもべっぴんになったよなあ。そりゃその兄ちゃんも惚れるってもんだ。」
「馬鹿言ってないで警察!」
「んな大層なことじゃねえだろ。」
じいさんは「落ち着け」と俺の頭を殴った。
「ぐあ!」
年寄りとは思えないパワーだ・・・・。
俺は頭を抱えてうずくまる。
「あんたこの人に逆らわない方がいいよ。」
ばあさんがじいさんを指さす。
「こう見えて空手の先生なんだからね。」
「空手・・・?あの怪人と一緒か?」
そう言って睨むと、「怪人?」と首を傾げた。
「・・・・おお!もしかして兄ちゃんがあの変人か?ウチの息子が言ってた?」
「なにい?」
「お前陸翔と仲良くしてくれてんだろ?」
「どうして陸翔君を知ってる!?」
「そりゃ孫だからな。」
「孫!?あんた陸翔君のじいさんなのか?」
「そうだよ、知らなかったのか?」
「初めて聞いた・・・・・。」
「もっとも息子は離婚しちまったがな。でも孫は孫だ。ここんところ会ってねえけど。」
じいさんは寂しそうに呟く。
ばあさんは「いいからこいつを摘まみ出しとくれ!」と叫んだ。
「最後の日にこんなケチがつくなんて最悪だよ。」
「まあまあ、あんな可愛い子が風呂入ってりゃ、覗いてみたくもなるってもんだよなあ。」
「馬鹿言ってんじゃないよ。あんたが若い頃とは違うんだ。
覗きなんてやったら、桶で頭叩かれる程度じゃ済まないんだよ。」
ばあさんは「とっとと出ていきな!」と入口を指す。
「これ以上は本当に警察行きだよ!」
「ばあさんマジで怒ってら。兄ちゃん、出るぞ。」
そう言って男湯の方に連れて行かれる。
じいさんの拳骨は強烈で、俺はまだ頭を押さえていた。
すると「あの・・・・」と声がした。
「勇作さん・・・・来てるんですか?」
暖簾の向こうから琴音さんの声がする。
「琴音さん!無事ですか!?」
「なにかあったんですか?すごいおばあちゃんが怒ってますけど・・・・、」
「おうよ、さっき琴音ちゃんの風呂を覗こうとしてたんだ。」
「え?」
「違います!宇宙人がさらいに来るかもしれないんです!琴音さん、早く安全な所へ逃げて下さい!」
俺は暖簾をくぐり、琴音さんに駆け寄る。
するとばあさんが「近寄るんじゃない!」と箒で叩いてきた。
「痛ッ!」
「琴音!早く帰りな!こいつ何しでかすか分かんないから。」
そう言って剣豪のように箒を向ける。
しかし琴音さんは首を振った。
「勇作さん、宇宙人なんていませんよ。」
「いえ、さっき優二が現れたんです。俺が一緒に行くのを拒否したもんだから、別の人間を連れて行くと言っていました。」
「きっとただの幻ですよ。」
「でも見たんです!あれは本物のUFOで、優二は間違いなく宇宙人なんです。」
「勇作さん、あのね・・・・、」
「早く逃げて下さい!でないと危な・・・・、」
「勇作さん!」
琴音さんは大声を上げる。
とても大きな声だったので、ばあさんもじいさんも驚いていた。
「ごめんなさい、私が余計なこと言ったばかりに。」
そう言って俯く。
「何がです?」
「そのままでいてほしいなんて・・・・。頑張ってUFOを探して下さないなんて。」
「それが俺の使命ですから。」
「そうですね。でも勇作さんが何を信じようと勝手だけど、人を困らせたらダメです。」
「困らせるなんて・・・・、」
「してるんです。私もおばあちゃんも、それにきっと陸翔君とおばさんも。」
「俺はみんなを守ろうとしてるんです。迷惑かもしれないけど、みんなの為なんですよ。」
「空ばかり見てると、足元につまづきますよ。」
そう言われてハッとした。
なぜ琴音さんが俺の両親と同じようなことを・・・・。
「琴音さん・・・・まさか俺の両親に会ったことが?」
「え?」
「だって言ってたんです。父と母が。そう言われたんです。」
「勇作さんのご両親に会ったことなんてないですよ。でもきっと、おばさんも陸翔君も同じことを思ってますよ。」
「・・・・・・・・・。」
「私はこれから忙しくなるから、ずっと空ばかり見てられません。
だけど勇作さんは、きっとこれからも空ばかり見てるんだと思います。
だから・・・周りにいる人は大事にした方がいいです。」
「どういうことですか?」
「勇作さんは一人で生きて行けるタイプじゃないってことです。
だからおばさんとか陸翔君とか、傍にいてくれる人を大事にしないといけないんです。
勇作さんはブっ飛んでるけど、でもすごく魅力的な人だと思います。
私だって、彼氏と別れたばかりじゃなかったら・・・・、」
「俺は陸翔君もおばさんも大事にしてます。琴音さんだって友達だから、大事にしてます。だから心配なんです。」
「分かりますよ。でももうちょっと傍を見てほしいんです。
空を見るのは悪いことじゃありません。だけどずっとずっと空ばかり見てたら、一人ぼっちになっちゃいますよ?」
そう言って「行きましょう」と外に出た。
「どこに?」
「陸翔君を誘って、兎羽山に。」
「UFOを探すんですか?」
「そうです。私だって踏ん切りをつけたいんです。子供の頃に見たUFOが本物だったのか。
だからUFO探しはこれで最後にします。」
「琴音さんが探さなくても、俺が探してあげますよ。見つけたら教えてあげます。」
「ありがとう。」
俺たちは銭湯を出て車に乗る。
ばあさんが「ちょっと!」と窓を叩いた。
「琴音!そんなのについて行っちゃいけないよ!」
「平気平気、悪い人じゃないから。」
「何言ってんだい!」
ばあさんは猛烈に怒る。
俺を睨み「琴音になんかしたら許さないからね」と言った。
「地獄だろうが天国だろうが、追いかけて殺してやるよ。」
「俺は琴音さんを守りたいだけなんです。心配しないで下さい。」
「それが心配だって言ってんだよ!」
ばあさんは発狂する。
そこへじいさんがやって来て「若いモンの青春を邪魔しちゃいけねえ」と言った。
「その兄ちゃん悪さはしねえよ。」
「なんでそんなこと言えるのさ!」
「息子から散々聞いてんだ。イラつく野郎だけど、陸翔が懐いてるってな。だから悪い奴じゃあねえ。」
「でも琴音は女の子だよ!こんなのと一緒にいたら何されるか・・・・、」
「おばあちゃん、平気だから。勇作さんはそんな人じゃないから。」
俺はエンジンを駆け、車を走らせる。
「あ、ちょっと・・・・、」
ばあさんが追いかけて来るが、じいさんが「まあまあ」と止めていた。
陸翔君の家に向けて、まっすぐに車を走らせる。
陽は傾き、空が焼けていく。
琴音さんは「綺麗ですね」と言った。
「勇作さんはずっと夕焼けの中にいるのかもしれませんね。」
「何がです?」
「夕焼けってすごく神秘的じゃないですか。でもほんのちょっとの時間が過ぎたら、夜が来るでしょ?
普通の人は夜になったら家に帰って、朝が来るまで寝るんです。
だけど勇作さんは、ずっとずっと夕焼けの中にいて、太陽を見上げてる感じがするんです。
だから羨ましいなって。普通はできないんです、色々将来のこととか考えちゃうから。」
「そう言われたら、そうかもしれません。こうやって空が焼ける景色は好きなんです。
あの太陽の向こうから、UFOが飛んでくるんじゃないかって。」
俺は空を見つめる。
すると琴音さんが「あ!」と指さした。
「太陽の向こうに、もう一個太陽みたいな光がありますよ。」
「ええ。」
「あれ知ってます?幻日っていうんですよ。」
「知ってます。俺が一番好きな星です。」
道行く先に浮かぶ、二つの太陽。
一つは本物、一つは幻。
琴音さんは「やっぱり空を見てるんですね」と言った。
「あれってただの幻ですよ。星じゃないのに。」
「星なんです。俺にとっては。」
「私は本当の太陽の方がいいです。でも幻日も好きです。なんだか神秘的で。」
琴音さんは、いや・・・・きっと多くの人が、本物の太陽を選ぶだろう。
そもそも本物がなければ、幻日は消え去ってしまう。
だけど俺にとっては、紛れもない星なんだ。
あそこにはUFOがあって、宇宙人がいる。
触れることは出来なくても、そこにある。
そしていつか触れることが出来たらと、そう考えてしまう。
「あ、そっちじゃないですよ。陸翔君の家はこっちで・・・・、」
琴音さんは交差点を指さす。
でも俺は交差点を曲がらない。
真っ直ぐに突き進んでいく。
その先にある幻日に。
「ほんとに空しか目に入らないんですね。」
琴音さんは呆れたように笑う。
「いいですよ、UFO探しはやめて、ドライブにしましょうか?」
「ドライブじゃありません。あの幻の星へ行くんです。」
「届かないのに?」
「届きます。信じていればいつか届くんです。」
「でも先の信号は赤です。ちゃんと目の前も見て下さいね。」
「平気です。目はいいですから。」
赤信号で止まっている間も、ずっと空を見ていた。
傍には友達がいて、でもやっぱりこの目は空に向かってしまう。
「もう青ですよ?」
「え?ああ・・・・、」
「ほんとに大丈夫ですか?運転代わりましょうか?」
「いよいよ危なくなったらお願いします。」
「もういよいよって感じですけど・・・、」
「でもその代わり、いつかあの星に連れて行ってあげますよ。陸翔君も一緒に。」
「楽しみにしてます。」
空は激しく焼けていき、その分幻日も形が崩れていく。
まるで微睡んでいるように。
でもそれは、俺も同じかもしれない。
地球でも宇宙でもない場所で、フラフラと彷徨ってばかりだ。
寝ているのに起きているような、起きているのに寝ているような、いつだって微睡んでいる感じだ。
これは病気なのか?
それとも誰にも感じない何かを、俺だけが感じているのか?
その答えは、あの幻日に隠されている。
焼ける空の下、微睡む太陽に突き進んでいった。
- 微睡む太陽(小説)
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