カメラは見ている

  • 2016.07.06 Wednesday
  • 12:14

JUGEMテーマ:自作小説

コンビニ、AM.2:00
茶髪の若い男性、冷蔵庫からビールを二本取り出す。
そのうちの一本を自分のバッグに隠す。
店員は気づかず、万引きを許してしまう。
 
ガソリンスタンド AM.1:32
店の前で軽ワゴンとスクーターが衝突。
スクーターの運転手は道路に投げ出されて重体。
軽ワゴンは猛スピードでその場を立ち去る。
ビジネスホテル PM.12:10
ホテルの入り口から女性客が入って来る。
その後ろにはもう一人女性がいるが、フロントの人間は後ろの女性には見向きもしない。
また最初に入ってきた女性客も、後ろにいる女性にまったく気づかない。
一人分の予約を済ませ、部屋まで向かう。
その後ろをもう一人の女性が追いかけていく。
学校の正門前 AM.5:22
サングラスと目指し帽を被った人物が、門を乗り越えて校内に侵入。
脇には大きなバッグを抱えている
30分後、急ぎ足で戻って来る。
そして門を乗り越え、どこかへ逃走。
脇に抱えていたバッグは持っておらず。
同日のAM.9:00
学校に爆破予告の電話が掛かってくる。
某県の天体観測所 PM.0:47
冥王星付近を映していたカメラに、不規則な動きをする物体が映る。
しばらく冥王星の近くを浮遊した後、二つに分裂。
その数分後にカメラから消える。
都内某レストラン PM.7:50
残業で遅くなると妻に言った男性が、若い女性と食事をしている。
一時間ほど後、連れだって店から出る。
その数分後に、近くにあるホテルのロビーに現れる。
同じ部屋を予約し、翌日のAM.6:00にチェックアウト。
某県ローカル線のホーム PM.10:00
陸橋に立っていた若い女性が、電車から降りてきた若い男性を突き落す。
女性は線路の傍へ降りて、カメラを構える。
突き落された男性は女性の元へ行き、何かを話しかける。
女性は線路に向けてシャッターを切った後、カメラを男性に渡して立ち去る。
某県○○市の女性の自宅 AM.11:35
購入したパソコンを起動させると、画面に自分の写真が大量に表示される。
女性はカナヅチでパソコンを破壊。
その数日後、精神を病んで入院。
某カメラ店 PM.9:18
営業を終えた店内で、男性スタッフ二名が残業。
すると裏口から鍬を持った老婆が侵入し、二人のスタッフを撲殺。
死体を引きずり、店から消える。
翌日、別の場所で若い男性の遺体が発見される。
亡くなっているのは自宅で、頭を鈍器のような物で割られていた。
布団の傍には二眼レフカメラが置かれていた。
通学路 AM.10:15
サッカーボールを追いかける少年が、トラックに撥ねられる。
トラックの運転手は逃走。
その翌日、事故の瞬間を収めたカメラが決め手となり、トラックの運転手を逮捕。
決め手となったそのカメラは、亡くなった少年の机の上に置かれていた。
学校の傍にある地蔵が、カメラを持って入るのを見たという生徒がいるが、真偽は不明。
高層マンション PM.1:42
マンションにある公園内で、主婦と学生が揉める。
数分後、SNSにその動画が投稿される。
マンションの五階から、一連の出来事を盗撮していた男性の元に、学生と揉めていた主婦が現れる。
その二日後、盗撮を行っていた男性は、別のマンションへ引っ越す。
盗撮を行っていたカメラは、ゴミ袋に入れて破棄した。
????? ??.?:????
大きな一つ目の生き物が、ゴミ袋を破って現れる。
小さな足を動かしながら、もぞもぞと外へ這い出た
以前の飼い主は、引っ越しの際に自分を捨てていった。
ゴミ袋を抜け出すと、そこは見知らぬ場所。
周りに人はおらず、ズームを使って遠くの風景を映し出した。
「・・・・・・・・。」
人間は二つの目を持っているが、もう一つ目を欲しがる人間もいる。
カメラという目を・・・・・。
大きな一つ目の生き物は、のそのそと歩き出す。新たな飼い主を求めて・・・・・。

 

百目鬼マンション

  • 2016.07.05 Tuesday
  • 12:11

JUGEMテーマ:自作小説

仕事、つまらない。
恋人、いない。
給料、安い。
何も楽しみがない人生において、唯一の楽しみが盗撮だった。
盗撮と言っても、別に更衣室だのトイレだのに仕掛けるわけじゃない。
自宅のマンションの五階から、その辺にいる人を撮影するだけだ。
最近のビデオカメラは性能が良くて、手に収まるサイズでもかなりの望遠が効く。
それに綺麗に写るし、テープじゃないので編集も簡単だ。
今日はマンションにある公園を盗撮していた。
窓を開け、五階からカメラを向けている。
こんな場所から撮っているなんて誰も思わないから、今までに一度も気づかれたことはない。
公園には子供を連れた母親が二人、学校をサボっているっぽい学生が三人いる。
母親はお喋りに夢中で、学生の方はスマホでゲームをしている。
声は聞こえないが、口の動きや表情で会話を想像した。
こんな事だけが楽しみなんて、俺の人生は腐ってる。
でもこれまで辞めてしまったら、生き甲斐が無くなってしまう。
別に他人の人生に興味があるわけじゃないけど、こっそりと撮影する快感は堪らない。
仮に見つかったとしても、イヤらしい盗撮じゃないんだから、しょっぴかれることも無いだろう。
マンションの住人に見つかったら、ここにはいられなくなるだろうけど・・・・。
まあそうなったらそうなったで、新しい部屋を探すだけ。
だから公園の盗撮に没頭した。
お喋りをしていた母親の元に、別の母親がやって来る。
ママ友というやつだろうか?
学生の方は相変わらずゲームをしていて、画面の中に没頭しているようだ。
すると砂場で遊んでいた子供の一人が、フラフラと公園の外に向かった。
外は車の通りが激しく、小さな子供が一人で歩くのは危ない。
しかしお喋りに興じている母親たちは気づかない。
楽しそうに喋っているだけで、子供はまったく目に入っていないようだった。
このままだと、子供は道路へ出てしまう。
するとその時、学生の一人がそれに気づいた。
母親たちに声をかけ、子供が道路へ向かっていることを知らせたのだ。
母親たちは慌てて子供の元へ行く。
そして道路へ出る間一髪の所で連れ戻した。
よかった・・・・と思っていると、母親の一人が学生に詰め寄った。
怒った顔で何かを喚いている。
学生は狼狽え、助けを求めるように仲間を振り返った。
すると仲間の学生が、喚いている母親にスマホを向けた。
しばらくすると、喚いていた母親はピタリと大人しくなった。
そして子供を連れて、一目散にその場から逃げ去った。
残された他の母親たちも、学生のスマホを避けるように逃げて行く。
学生たちは、勝ち誇った顔でガッツポーズをしていた。
声は聞こえないが、ゲラゲラと笑っていそうな顔をしている。
そしてスマホの画面を見つめながら、またゲラゲラと笑っているような顔をした。
いったい何をしてるのか?
そんな疑問が浮かんだが、すぐに閃いた。
俺はスマホを取り出し、ツイッターを開く。
しばらくいじっていると、お目当てのツイートを見つけた。
「やっぱりか。」
さっきの公園でのやり取りが、ツイッターにアップされている。
そこには動画のリンクが貼り付けてあって、「バカ親に絡まれたけど撃退したったwww」と書いてある。
俺はリンク先へ行き、動画を確認した。
《なんでもっと早く言ってくれないの!》
母親が喚いている。
《危うく事故するところだったんだよ?どうしてもっと早く言わないの?》
鬼の形相で喚く母親。
すると学生たちが反論した。
《はあ?自分で見とけよ。》
《うっせえなババア。テメエのガキだろうが。なんでこっちに文句言うんだよ?》
《ていうか感謝されるのが先だよね?文句言うっておかしくない?》
男二人、女一人の学生たちの攻撃を受ける母親。
しかしまったく怯まない。
《暇な学生と違って、主婦は大変なんです!》
《はあ?》
《365日24時間子供を見続けるなんて無理なんです!
だから周りの助けが必要なんです!》
《意味分かんね(笑)》
《大人は忙しいの!特に子供を持ってる主婦は!》
《いや、公園で喋ってんじゃん(笑)》
そこへ別の母親が割って入る。
《君たち学生でしょ?サボってていいの?》
《今の時間は学校でしょ?どこ?どこの学校?》
《暇なのはそっちでしょ?》
今度は母親たちが笑う。
学生たちはムッときたようで、《これ、ネットに挙げるから》と言った。
《リンクつけてツイッターに挙げるよ?》
《はあ・・・・?》
《いきなりビビり出した(笑)》
《そんなことしたら訴えてやるから!》
《やれば?(笑)》
《ファビョんなよババア(笑)》
《あんたら学校に言うからね!制服とかで分かるんだから!言いつけてやるから!》
《はい、んじゃアップするね〜!》
学生は可笑しそうにケラケラ笑う。
母親は顔を真っ赤にしながら、我が子の手を引いて逃げて行った。
学生たちは動画を挙げ、まだゲラゲラと笑っている。
予想通りの展開に、俺も笑ってしまった。
「誰でも撮影できて、誰でも世間に発信できる。怖い時代だな。」
スマホを閉じ、ビデオを片手に盗撮に戻る。
するとその時、ピンポ〜ンと部屋のチャイムが鳴った。
ビデオを置き、ドアの覗き穴から見てみる。
するとさっきの母親がそこに立っていた。
俺は首を傾げ、「なんだ?」と呟く。
そしてゆっくりとドアを開けると、母親は怖い顔で睨んできた。
「あなた・・・・、」
「はい?」
「いっつも部屋からビデオ向けてますよね?」
「え?」
「あれ、何してるんですか?」
「何って・・・・、」
変な汗が出て来る・・・・。
鼓動が早くなって、口の中が乾いていく・・・・。
「あ、あの・・・・・、」
しどろもどろになりながら、パクパクと口を動かす。
母親はスマホを取り出し、俺に向けた。
「もう盗撮とかやめてくれます?」
「と・・・盗撮って・・・・、」
「いつも部屋からビデオを向けてますよね?あれ、やめて下さいって言ってるんです。」
「いや、別にあんたを撮ってるわけじゃ・・・・、」
「気持ち悪いんです。他の人もみんな言ってますよ。」
「え?みんなって・・・・・、」
「みんな知ってますから。」
母親はスマホを向けながら、じっと睨む。
俺は目を泳がせながら「あの・・・」と呟いた。
「・・・・・すいません・・・・。もう撮りません、すいませんでした・・・・。」
そう言って頭を下げると、母親は満足そうに笑った。
踵を返し、勝ち誇ったような足取りで去って行く。
俺は呆気に取られ、しばらく固まっていた。
「・・・・バレてたのか。」
部屋に戻り、バクバクする心臓を押さえる。
「訴えられたりしないよな・・・・?」
不安になり、部屋の中をうろつく。
気を紛らわす為にスマホを開き、何気なくツイッターを見てみた。
すると俺のアカウントに、誰かがこうツイートしていた。
《気持ち悪いんで、盗撮とかやめて下さいね。》
そこには動画のリンクが貼ってあり、ついさっきのやり取りがアップされていた。
アイコンを見ると、あの母親が写っている。
「・・・・・・・・・・。」
俺はスマホを閉じ、ビデオカメラを手に取る。
それをゴミ箱に捨てると、すぐに出かけた。
向かった先は不動産屋。
椅子に座り、店の人にこう言った。
「引っ越ししたいんで、部屋を紹介して下さい。なるべく早く・・・・・。」

 

サッカー少年とお地蔵さん

  • 2016.07.04 Monday
  • 13:10

JUGEMテーマ:自作小説

学校の休み時間はいつもサッカーをする。
今日は隣のクラスの奴らと戦ってる。
今は0−2で俺のクラスが負けていた。
俺が本気を出せば逆転なんて余裕だけど、そんなことはしない。
サッカー部が本気を出したら、素人が可哀想ってもんだ。
相手のクラスにもサッカー部の奴がいるけど、もちろん本気は出していない。
適当にパスを回したり、たまに一人か二人くらい抜いてるだけだ。
サッカー部はシュートをしちゃいけない決まりになってるから、負けてても本気は出せない。
まあ決まりって言っても、なんとなくそうなってるだけなんだけど。
暗黙の了解?ってやつだ。
だけどまた相手にゴールを決められて、その次もまた・・・・。
さすがに0−4で負けるのはイヤだったから、ちょっとだけ本気を出させてもらうことにした。
これも暗黙の了解なんだけど、点差が3点以上になった時は、サッカー部もシュートをしていい決まりになってる。
だから相手のフィールドまで上がって、飛び込んで来たパスをヘディングで押し込んだ。
押し込んだ・・・・つもりが、ポールに当たって跳ね返ってくる。
俺はボールに飛び込んで、思い切りシュートを打った。
だけど相手のキーパーもこれまたサッカー部で、パンチングで上手いこと弾きやがった。
ボールはゴールを飛び越えて、グラウンドの後ろへ転がっていく。
俺は「取りに行くわ」と駆け出した。
グラウンドの周りにはフェンスが張ってあるんだけど、穴の開いてる場所がある。
ボールはコロコロと転がって、その穴から外へ出てしまった。
「ああ、面倒くさ・・・。」
フェンスの穴を潜り、外まで走る。
その時、クラスの奴が「危ない!」と言って、「え?」と振り返った。
その瞬間、すぐ目の前にトラックが来ていた。
「あ・・・・・、」
よける間もなく、トラックがぶつかる。
死んだ・・・・・そう思った。
だけどトラックはそのまま通り過ぎて、俺は無事だった。
なんで?と思ってると、背中に固い物が当たった。
振り返ると、そこにはお地蔵さんがいた。
このお地蔵さんは、学校の傍にある川の近くに立っていて、その後ろにはお墓がある。
夜になると勝手に動くって噂があって、俺はすぐに離れた。
でもその時、お地蔵さんの首にカメラがぶら下がってるのに気づいた。
「なんで?」
いつもはこんな物はないのに、なんでかカメラを持っている。
そのカメラをじっと見つめてると、お地蔵さんが喋り出した。
「ごめんな、助けてやれんで。」
「・・・・・・・・・・ッ!」
「あ、怖がらんでええから。」
お地蔵さんは「大丈夫、ビビらんでええから」と笑った。
そんなこと言ったって、怖いに決まってる。
だから逃げ出そうとしたんだけど、「後ろ振り向いたらあかん」と言われた。
「見たらあかんで。ショック受けるから。」
そう言われて、俺は「何が・・・?」と固まった。
「あのな、言いにくいんやけど・・・君死んだんや。」
「え?」
「さっきのトラックに撥ねられてな。」
「いや、でも通り過ぎて・・・・、」
「うん、君を撥ねてそのまま逃げたんや。」
「・・・・・マジ?」
「マジや。」
お地蔵さんは頷き、「ここ大型車は通行禁止なんやけどなあ」と言った。
「この道路、通学路になってるやろ?しかも道幅もそんなにないやん?
だから日中は大型車は通ったらあかんことになってんねん。」
「知ってるけど・・・・、」
「あのトラックな、ちょいちょいここ通ってんねん。
通ったらあかんって知ってるはずなんやけど、近道になるみたいでな。」
そう言って「はあ〜・・・」とため息をついた。
「君、まだ小学五年生やろ?」
「そうやけど・・・・、」
「その歳でなあ・・・・可哀想に。」
お地蔵さんは本気で悲しい顔をする。
そして「これ、役に立つと思うわ」とカメラを見せた。
「毎日ワイのお世話をしに来る人がおんねんけど、その人がコレ忘れていきよってん。
コイツでバッチリ証拠を押さえたから、まあ捕まるのは時間の問題やろ。」
「・・・・・・・・・。」
「どうした?」
「あのさ、写真撮る暇があるんやったら、なんで助けてくれへんかったん?」
「まあ・・・そら最もな疑問やな。」
「だからなんでって?」
「間に合わんかった。」
「・・・・・写真撮る暇あったのに?」
「写真なんてすぐ撮れるやん。でも動いて助けに行くとなると、さすがに間に合わんかってな。」
お地蔵さん「悪いとは思てるよ」と頷く。
「ワイ、ここで子供らの安全を守るのが仕事やねん。」
「ほな助けろや。」
腹が立って、お地蔵さんを睨んだ。
「子供を守るのが仕事なんやったら、なんで助けてくれへんかってん?」
「だから間に合わんかったんやって。出来るなら助けてる。」
そう言って「すまんなあ・・・」と謝った。
「でもな、君は無駄死にちゃうで。」
「は?」
「そう怒りいな。ええか?今回事故が起きて、このカメラにバッチリ証拠が残ってる。
ということは、あのトラックの運転手はじきに捕まるいうことや。」
「それはさっき聞いたし。」
「こういう言い方をすると君に悪いんやけど、でも君の犠牲のおかげで、この道路の安全は守られるんや。」
「・・・・どういうこと?」
「トラックは二度とここを通らんいうこっちゃ。
それに今後は取り締まりも厳重になるやろし、子供らもこの道歩く時は気いつけるようになるやろ。
君が亡くなったのは不幸なことやけど、でもそれは無駄とは違う。」
「・・・・そんなん言われたって・・・・、」
何て答えていいのか分からなくて、泣きそうになってくる。
するとお地蔵さんは「こっち来い」と手招きをした。
俺は鼻をすすりながら、お地蔵さんに近づいた。
「辛いやろな。助けてやれんで堪忍な。」
「・・・・・・・・。」
「大丈夫、君は極楽に行ける。」
「でもサッカー選手・・・・・、」
「そやな、それは残念やったな。夢は諦めなしゃあない。」
「嫌や・・・・・、」
「堪忍な、堪忍。」
お地蔵さんは俺の頭を撫でる。
それは硬い石の手だけど、でもなんでか暖かく感じだ。
「人が集まってきたな。もうじき警察も来るやろ。
ワイはこれだけ渡して来るさかい、ちょっと待っててや。」
そう言って歩き出し「こっち見たらあかんで」と注意した。
しばらくすると戻って来て、「ほな行こか」と俺の手を握った。
「行くって・・・・どこに?」
「まずは家に帰ろ。お父さんとお母さんに会いたいやろ?」
「でも俺・・・・・、」
「うん。」
「死にたあない・・・・・だってサッカー選手に・・・・、」
お地蔵さんの手を引っ張って、どこにも行きたくないと首を振る。
でも逆に僕の方が引っ張られた。
「嫌や・・・・行きたあない!」
足を踏ん張っても、力が入らない。
お地蔵さんは俺を振り向いてこう言った。
「また戻って来られる。ちょっと時間は掛かるけど。」
「ほんまに・・・・?」
「ほんまや。でもその時の君が、サッカー選手になりたいかどうかは分からん。」
「なる・・・・絶対になる・・・・、」
顔を上げてそう言うと、お地蔵さんはニコッと笑った。
「君の夢は君が決めることや。せやけどしばらくはこの世を離れなあかん。
でも大丈夫、ワイが一緒におったるから。」
もう一度笑って「ほな行こ」と手を引いた。
お地蔵さんと一緒に行く時、パトカーがこっちに走って来た。
僕はちょっとだけ振り返る。
すると校長先生が、警察の人にさっきのカメラを見せていた。
「・・・・・ちゃんと捕まえてや。」
前を向き、お地蔵さんと一緒に歩いていく。
「なあ?」
「ん?」
「天国にもサッカーある?」
「あるで。」
「試合とか出来る?」
「ようやってる。」
「マジで?」
「ワイはようキーパーをやらされる。でも動きが遅いから、しょっちゅうゴール決められるけど。」
「あはは、あかんやんそれ。」
「下手でな。」
「俺が教えたるよ。」
「ほんまに?」
「うん、俺けっこう厳しいから覚悟しときや。」
「出来たらお手柔らかにしてほしいな。」
「ええか?まずキーパーっていうのは・・・・、」

 

撮ってはいけない

  • 2016.07.03 Sunday
  • 11:04

JUGEMテーマ:自作小説

神社を撮るのが趣味だった。
特に人の来ない寂れた神社はいい。
山の麓にひっそりと立ち、木立に囲まれて光が届かない神社が最高だ。
車を走らせれば、意外とそういう神社は見つかる。
誰かが言っていたけど、参拝者の来ない神社には、近寄らない方がいいらしい。
祈りを捧げる人間がいないと、神様がどこかへ行ってしまうからだそうだ。
そしてその代わりに、悪いモノが棲みつくようになる。
ホントかどうか知らないけど、でもそういう神社こそが好きだった。
車を走らせ、人が来ない寂れた神社を探す。
すると奥まった路地の方に、鳥居らしきものが見えた。
畦道に車を止め、バッグからカメラを取り出す。
時代はデジカメだけど、僕はいまだにフィルムカメラを使っている。
それもレンズが二つ付いた二眼レフだ。
縦に二つのレンズが並んでいて、上はファインダー用、下は撮影用だ。
フィルムを装填し、露出計を携えて神社に向かう。
奥まった路地に立つ神社は、木立に囲まれて真っ暗だった。
鳥居はヒビが入り、長く手入れがされていないことが分かる。
「ええな。」
露出計を向け、光を計る。
そしてファインダーを覗き、シャッターを切った。
カチンという小さな音が響き、フィルムに鳥居が焼きつけられる。
僕は鳥居を潜り、暗い参道を歩いた。
するとすぐに本殿が見えてきた。
曲がった参道の上に、ポツンと建っている。
ここまでやって来ても、高い木立のせいで光は届かない。
薄暗い本殿、両脇に座る狛犬。
僕は胸を弾ませ、カメラを向けた。
「・・・おっと、その前にお賽銭を。」
十円を入れ、鐘を鳴らして手を叩く。
薄暗い神社を何枚も撮影し、新しいフィルムに詰め替える。
胸が弾むと、シャッターを切る回数も増える。
新しいフィルムで撮り終え、また次のフィルムを装填する。
そして撮影を終えて満足し、神社を出た。
するとその時、鍬を担いだ婆さんに出くわした。
「あんた、この神社の写真撮ったんけ?」
「ええ・・・・、」
「悪いこと言わんから、その写真は捨てとき。見たらあかんで。」
そう言い残し、婆さんはどこかへ行ってしまった。
気味悪い婆さんだなと思い、神社を後にする。
それから翌日、現像に出していた写真が仕上がった。
店に行き、写真を受け取ろうとすると、店員が難しい顔でこう言った。
「あの・・・・この写真って・・・・、」
「はい?」
「一応プリントしたんですが、ちょっと確認してもらっていいですか?」
店員は袋から写真を出す。
それを見た僕は、眉を寄せて固まった。
「なんやこれ・・・・・、」
薄暗い神社を撮ったはずなのに、そこには人が写っていた。
鳥居の前に立ち、手招きをしている。
しかも手招きをしているその人物は・・・・あの婆さんだった。
「なんであの婆さんが写って・・・・・、」
「こっちの写真も見て頂けますか?」
店員に言われ、カウンターに並べられた写真を見つめる。
そこには鍬を振り上げて、誰かを殴っている婆さんがいた。
鬼の形相で鎌を振り上げ、返り血を浴びている。
そして・・・・殴られているのは僕だった。
頭から血を流し、死にそうな顔で叫んでいる。
店員は「これって・・・・」と顔をしかめる。
僕はお金だけ払い、「破棄してもらっていいですか?」と尋ねた。
そして店員に写真を押し付け、店を後にした。
その日の夜、嫌な気分で眠りについた。
夢の中にあの神社が出て来て、僕は一人で立っている。
そこへあの婆さんがやって来て、こう呟いた。
「写真を捨てろと言うたやろ。」
そう言って鎌を振り上げ、僕を殴った。
「ここに棲みついとるって、神さんにバレたら不味いんや。
あの写真を見たもんは死んでもらうで。」
夢の中で、僕は婆さんに殺された。
でもしょせんこれは夢だと分かっていた。
怖いけれど、目が覚めればなんてことはない。
そう思って、死にゆく自分を眺めていた。
だけど・・・すぐに夢じゃないと分かった。
なぜなら死んだ僕の傍に、あの店員もいたからだ。
パックリと頭を割られて、目を剥いている。
その横には同じ制服を着た店員がいて、彼もまた死んでいた。
これは夢・・・・現実じゃない・・・・・。
そう思っても、こんな光景を見せられたら怖くなる。
だから僕は逃げた。
神社から駆け出し、とにかく逃げた。
だけどどこまで走っても、逃げることは出来なかった。
振り返ればいつだってそこに神社があり、あの婆さんが立っている。
だから僕は、逃げて逃げて逃げ続けた・・・・。
あれからどれくらいの月日が経っただろう・・・。
僕は今でも逃げ続けている。
走っても走っても終わらない道を走って、出口を探している。
そしてどんなに走っても、振り向けばそこにはあの神社があった。
鳥居の奥から婆さんが現れ、鍬を振りかざす。
僕はこの悪夢から、二度と覚めることはなかった。

 

増殖写真

  • 2016.07.02 Saturday
  • 12:17

JUGEMテーマ:自作小説

セルフポートレートという写真がある。
自分がモデルになって、自分を撮る写真だ。
カメラをセットし、リモコンかセルフタイマーで撮影する。
まず言っておかなければいけないのは、私には友達がいないということ。
だけど一人じゃあない。
友達はいないけど、たくさんの私が私の友達だ。
自分で自分を撮り、パソコンで加工して、別人のように仕上げていく。
時には女、時には男、時には外国人にだってなる。
コスプレも好きだから、アニメキャラになってみたり。
セルフポートレートのフォルダには、百人以上の私がいる。
どれも自分だけど、でも自分ではない自分。
私には友達がいないけど、たくさん自分がいるから寂しくない。
寂しくないけど・・・・たまには寂しいと思う時だってある。
だから自分を撮り続ける。
もっともっと自分を増やして、寂しくないようにすればいい。
髪型を変え、メイクをして、服を着替える。そして部屋を飾り付け、撮影。
新しい私が誕生して、それをパソコンで確認する。
編集ソフトを立ち上げ、自分を別の自分へと仕上げていった。
そして出来上がった写真を、セルフポートレートのフォルダに保存する。
最新の自分を見つめながら、良い出来だと満足した。
マウスを動かし、過去の自分も見返していく。
ここには百人以上の私がいるので、これを眺めていれば寂しくない。
だけど写真を見ていくうちに、「あれ?」と思った。
「・・・・増えてる?」
百枚ちょっとしかない写真が、明らかに増えている。
フォルダの情報を確認すると、表示は百三枚。
だけど実際はその倍はある。
「なんでこんなに?ていうか・・・覚えのない写真がいっぱい・・・。」
いったんフォルダを閉じ、もう一度開く。
するとまた増えていた。
「・・・・・・・・・。」
気味が悪くなって、覚えのない写真を消していく。
だけど再びフォルダを開くと復活していた。
「なにこれ・・・気持ち悪い・・・・。」
怖くなって、思わずフォルダごと消去してしまう。
その翌日、もう一度パソコンを立ち上げると、消したはずのフォルダが復活していた。
「・・・・・・・・。」
マウスを持つ手が震える・・・・・。
怖いと思いながら、フォルダを開いた。
「・・・・・・なんで・・・・、」
フォルダの中の写真は、千枚以上に増えていた。
しかも・・・・別々の写真の私が、同じコマに写ったりしている。
「勝手に・・・・動いている?」
怖いを通り越して、かえって冷静になってくる。
するとその時、画面の端に信じられないものを見つけた。
写真の中の私が勝手に動いて、自分を撮っているのだ。
他にも勝手に動いてセルフポートレートをしている自分がいる。
私はどんどん増殖していき、やがて声まで聴こえて来る。
「・・・・・・・・・。」
頭がおかしくなりそうになって、呼吸も荒くなる。
フォルダを閉じ、すぐにパソコンを消そうとした。
しかし・・・・また目を疑う出来事が起きた。
なんと画面いっぱいにセルフポートレートのフォルダが増えているのだ。
やがてが画面を覆いつくし、話し声も大きくなってくる。
私は急いでパソコンを消し、コンセントを引っこ抜いた。
中を分解してハードディスクを取り出し、カナヅチで叩き割る。
それをゴミ袋に入れて、きつく縛った。
その時、割れたハードディスクから私の声が聴こえた。
「・・・出して・・・捨てないでよ・・・。」
全身に鳥肌が立ち、急いで外に捨てた。
部屋に戻っても「出して、出して」と聴こえて、本当に頭がおかしくなりそうだった。
・・・・・次の日、私はカメラを捨てた。
もう二度と自分を撮らない為に。
私には友達がいない。
だけどたくさんの自分はもういらない。
私はここにいる私だけで充分。
だけど仕事をするのにパソコンは必要なので、新しいのを買った。
家に帰り、コンセントを繋いで起動させる。
そして液晶に表示されたものを見て、私は悲鳴を上げた。
たくさんの私が、画面の中から私を睨んでいた。
アリの大群のように、隅から隅まで私がいて、悲しむような目で睨んでいた。
私はカナヅチを手に取り、画面に向かって振り下ろす。
稲妻が走ったようにヒビが入り、画面が暗くなった。
だけど割れた画面の中に、すぐにたくさんの私が浮かんできた。
「捨てないで。」
合唱のように喚きながら、たくさんの手を伸ばす。
私は部屋の隅まで下がり、頭を抱えてうずくまった。
するとそんな私を励ますように、たくさんの私がこう言った。
「友達なんていなくても大丈夫。私たちがずっと傍にいるから。」
「いや・・・・・・、」
頭を掻きむしり、助けてと叫ぶ。
たくさんの私はクスクスと笑い、私に語り掛けた。
「私たちは離れない・・・・自分を捨てることなんて出来ないのよ・・・・・。」

 

呪いのカメラ

  • 2016.07.01 Friday
  • 12:06

JUGEMテーマ:自作小説

あれは暑い夜のことでした。
仕事を終えた私は、いつものように電車で帰宅。
駅に着き、改札を出て、線路を渡す陸橋の上で、疲れを吐き出すように背伸びをしました。
その時、後ろから誰かがぶつかってきて、思わず陸橋から落ちそうになりました。
「危な・・・・。」
慌てて手すりに摑まると、ふとおかしなものが目に目に入りました。
駅の外に子供がいたのです。
カメラを持って、じっと一点を睨んでいます。
時刻は夜の10時。
こんな時間に、子供が何をしているんだろうと不思議に思いました。
気になった私は、「僕?」と声を掛けました。
「こんな時間に何してるの?」
返事はありません。
線路を向いたまま、小さなデジカメを構えているだけです。
「写真撮ってるの?」
「・・・・・・・・・。」
「一人で来てるの?」
「・・・・・・・・・。」
「夜は危ないから、もう帰った方がいいよ。」
「・・・・・・・・・。」
子供は何も答えません。
ただじっと一点を見つめているだけです。
私は不思議に思い、子供の視線の先に目を向けようとしました。
いったい何があるのだろうと。
すると駅に停まっていた電車が、ゆっくりと動き出しました。
子供はカメラを構え、シャッターに指を掛けます。
「電車を撮るの?」
「・・・・・・・・・。」
「それ撮ったら、もう帰った方がいいよ。子供が夜に一人でいちゃ危ないから。」
子供は私を無視して、シャッターを切ります。
たった一枚、パシャっと。
すると私の方を見て、ニコリと笑いました。
「僕、これで帰れる。」
そう言ってカメラを押し付けてきました。
「じゃあね、お姉さん。ごめんね・・・・。」
子供は手を振りながら、線路の方へ歩き出します。
「危ないよ。線路は歩いちゃダメだから。」
引き止めようとすると、周りにいた人たちが慌ててやってきました。
そして子供の方を見つめています。
私はてっきり子供を線路から連れ戻そうとしているのだと思いました。
しかし・・・・そうではありませんでした。
集まってきた人たちは、ある一点をじっと見つめているのです。
「何・・・・?」
不思議に思って覗いてみると、そこには人が倒れていました。
それも上半身が無い状態で・・・・。
私は悲鳴を上げ、その場から逃げ出そうとしました。
しかしなぜか駅から出ることが出来ません。
「どうして・・・・。」
不思議に思った時、ふと子供から押し付けられたカメラが気になりました。
「あの子・・・・写真を撮ってたはず。」
電車が通る瞬間を撮っていたなら、轢かれた瞬間が写っているはず。
怖いと思いましたが、好奇心に負けて画像を再生してみました。
「・・・・・・・・・なんで?」
カメラには人が撥ねられる瞬間が写っていました。
しかし私が驚いたのは、そのことではありません。
「撥ねられてるの・・・・・私?」
カメラの中には、電車に撥ねられる私が写っていました。
まさかとは思いつつも、さっきの場所へ戻りました。
「・・・・・・・・・・。」
下半身しかない遺体・・・・それは紛れもなく私でした。
穿いているスカート、履いている靴、そして左足にある火傷の痣・・・・・。
怖くなり、足が震えました。
もう一度カメラを見つめ、画像を確認。
さっきと同じ写真が出て来て、信じられない思いで首を振りました。
「なんで・・・・どうして私が撥ねられて・・・・、」
わけが分からず、泣き出したい気分に駆られます。
その時、指がコマ送りのボタンを押してしまい、前の写真が表示されました。
それを見た私は、今度こそ悲鳴を上げました。
「あああああ・・・・、」
前のコマに写っていたもの、それはさっきの子供だったのです。
そして・・・・私と同じように、電車に撥ねられていました。
「どうして・・・・、」
まさかとは思い、他の写真も確認します。
「・・・・・・・・いや・・・、」
どの写真にも、電車に撥ねられる人が写っているではありませんか。
私はいよいよ怖くなって、ボロボロと泣き出しました。
しかしこの場から逃げようと思っても、なぜか駅の外へ出られません。
「これ・・・・もしかしたら・・・・私も撮らないといけないんじゃ・・・・、」
カメラを私に押し付けたあの子供。
あの子は写真を撮った後、嬉しそうに笑っていました。
そしてこう呟いたのです。
「僕、これで帰れる。」
私は確信しました。
あの子と同じように、人が撥ねられる瞬間を撮らないと、ここから出られないのだと。
それから二年、私はこの駅にいました。
来る日も来る日も、誰かが撥ねられないか待ち続けます。
しかし一向に事故が起きる気配はなく、とうとう痺れを切らしました。
事故が起きないなら、自分で起こすしかない・・・・。
私は陸橋の上に立ち、電車から降りて来る人達を待ちかまえました。
幸いなことに、今の私は人の目に映りません。
だから・・・・後ろからドンと突き飛ばしたのです。
私と同じくらいの年齢の、若い男の人を・・・・。
彼は線路に落ち、ピクリとも動きません。
私はすぐに駅の駐車場まで降りて、彼にカメラを向けました。
「早く・・・・早く動いて・・・・・。」
二年も待ったこの瞬間・・・・ようやくここから出られるかと思うと、手が震えます。
私はすでに死んでいるので、この駅から出たらどうなるのかは分かりません。
だけど永遠にこんな場所にいたら、天国にも地獄にも行けず、生まれ変わることもないでしょう。
だから・・・・早くと願いなら、電車を睨みました。
「あの・・・・何してるんですか?」
ふと声をかけられて、顔を上げまました。
そこにはさっき突き飛ばした若い男の人がいました。
「こんな夜に何してるんですか?」
私がニコリと微笑むと、彼は「こんな夜に写真撮ってるんですか?」と眉をひそめました。
二年前のあの夜と、まったく同じ光景・・・・。
ただ立場が逆なだけで・・・・。
ゆっくりと電車が動き出し、線路に倒れる彼に迫っていきます。
私はカメラを向け、シャッターを切りました。
「これでやっと・・・・・。」
そう呟いて、彼にカメラを押し付けます。
「あなたのおかげで自由になれます。
大変だろうけど頑張って。それじゃあ。」

 

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