初夏日

  • 2019.04.26 Friday
  • 12:09

JUGEMテーマ:写真

 

 

 

 

 

今年はたくさん菜の花が咲いています。

ここ数年はあまり見なかったんですが、数が回復したようです。

 

 

 

 

 

 

 

初夏に近いくらいの暑さの日がありますね。

半袖を引っ張りして着ています。

昔は真夏でも30度を超えることは少なかったですが、今では40度に達する日もあります。

今年の夏、例年より暑くなるかもしれないですね。

稲松文具店〜燃える平社員と動物探偵〜第三部 第十九話 敵陣(1)

  • 2019.04.26 Friday
  • 11:54

JUGEMテーマ:自作小説

稲松文具グループ、家具のカグラ。
世界に名だたる大企業を中心としたグループの一角を担うこの会社は、何も霊獣だけが戦力ではない。
再びカグラの本社にやって来た俺たちは、いきなり警察に拘束される羽目になってしまった。
なんとビルの周りに大勢の警官とパトカーが詰めかけていて、ガッチリと警備していたのだ。
カグラには警察を動かす力もあるらしい。
そういえば岡山での一件だって大きな報道はされていないし、あの工場の火事だって同じだ。
警察どころかマスコミにさえ影響力がある。
でもまあそれは不自然なことじゃないのかもしれない。
猫又の源ちゃんだって刑事をやってるんだから、カグラの息のかかった霊獣が、警察やマスコミに入り込んでいたとしても不思議じゃない。
金だってあるし人脈だってあるんだろう。
「お前らがやったんだろ?」
パトカーの中、陰湿そうな刑事が睨んでくる。
先ほどカグラで暴れた件について尋ねているのだ。
「会社に忍び込んで散々暴れたそうじゃないか。目的はなんだ?金か?それとも・・・まさかテロってわけじゃないだろうな。」
陰湿な顔がさらに陰湿に歪む。
俺はじっと目の前の刑事を観察してみた。
《多分・・・・いや、間違いなくこの人はただの人間だ。》
霊獣と接しているうちに、なんとなくだけど違いが分かるようになってきた。
おそらくこの刑事さんは何の事情も分かっていないだろう。
俺たちをただの犯罪者だと思い込んでいる。
隣のパトカーに目をやると、アカリさんがこっちを見ていた。
『ソイツただの人間』
声は届かないけど、口の動きでそう言っているのが分かる。
俺は分かってますよと頷いた。
ちなみにアカリさんのパトカーに乗っている刑事は、なんとなくだけど霊獣っぽいなという雰囲気があった。
きっと霊獣には霊獣の刑事をぶつけているんだろう。
暴れられたりしたら人間じゃ歯が立たないから。
「どこ見てんだ?」
陰湿な刑事に顎を掴まれ、グイっと前を向かされる。
「防犯カメラにお前が映ってんだよ。」
「カメラ?」
「お前、社長室に侵入してただろ?」
「・・・・・・・・。」
「あんな場所にどっから入ったのか知らんが、間違いなくお前の顔だった。」
「その映像って見せてもらえますか?」
刑事がムスっとした顔で「おい」と部下を呼ぶ。
ノートパソコンを受け取り、「どうやんだこれ?」と尋ねていた。
部下に操作してもらいながら、「これだこれ」と画面を指さした。
「こりゃどう見てもお前だろうが。」
「・・・・・・・・。」
カメラの映像を見る。そして《編集済みか》と眉を歪めた。
霊獣が出てくるシーンは全てカットしてああった。
狼の背中に乗って社長室に入る瞬間、そして霊獣との戦闘シーンも。
もちろん俺が霊獣に変わる瞬間もだ。
ちょくちょくノイズが入って映像が飛んでいるのだ。
そこを指摘しても、ただ画像が乱れてるんだと反論されるだけだろう。
「ま、とりあえず署に行こうや。」
そう言って「出せ」と運転手に命じた。
しかし・・・・、
「あ、あれ・・・・?」
「どうした?」
「車が動かないんです。」
「なんだ?故障か。」
「そうじゃありません。なんか車体が浮いているような・・・・、」
「浮くって何を馬鹿なこと言って・・・・、」
アホらしいと言わんばかりの顔だったけど、だんだんと傾いていくパトカーに「おいおい!」と叫んだ。
「どうなってんだ!」
「分かりません!下から何かに持ち上げられてるような感じですが・・・・、」
「持ち上げるってお前・・・・重機でもなきゃ無理だぞ。」
周りを見渡す刑事、しかしどこにも重機なんてない。
「どうなってんだこりゃ・・・・」と呟いた時、パトカーは一気に持ち上がって、そのまま逆さまに倒れてしまった。
「ごふ!」
刑事は頭を打って気絶する。
運転手もパニくってもがいていた。
《チャンス!》
ドアを開け、急いで外に出る。
きっとチェリー君だ。
擬態を使い、上手くパトカーから逃げ出してみんなを助けてくれたに違いない。
「ありがとうチェリー君、助かったよ。」
そう言って振り返ると、目の前に一人の女が立っていた。
「あ・・・・・。」
驚き、恐怖、混乱・・・・頭が真っ白になり、息をすることさえ忘れてしまう。
「久しぶり〜、悠一君。」
語尾にハートマークでも付いてそうな甘ったるい声と喋り方。
ニコニコと笑っているけど、そのクセ目だけはぜったいに笑っていない。
・・・・戻ってきやがったのだ、地獄から・・・・。
恐れていたことが現実に・・・・・、
「あらあ、なあにその顔?小鳥みたいに怯えちゃってえ。カワイイ!」
両手でそっと頬を挟まれる。
顔を近づけられ、じっと見つめられた。
赤色の瞳はとても綺麗だけど、見ているだけで不安になるほど仄暗くもある。
「だ・・・・ダキニ・・・・。」
「やっと喋ってくれた。」
嬉しそうに微笑むけど、やはり目だけは笑っていない。
そう、コイツは怒っているのだ。
俺とたまきのせいで地獄に落ちたから。
でも過酷な地底での生活はもう終わり。
こうしてシャバに戻ってきたってことは・・・・、
「ずっと考えてたわあ、君とたまきのこと。一日たりとも忘れなかった。」
だんだんと声に殺気が宿ってくる・・・・。
口調こそ穏やかだけど、耳を塞ぎたくなるほど怖かった。
「地獄の生活ってね、ほんとにもう退屈で退屈で〜。私は死ぬほど退屈が嫌いなのに、君たちのせいで二年も我慢しなきゃいけなかったじゃない。」
ダキニはニンマリと笑って、「悪い子、め」と力を込めた。
俺の頬は押しつぶされた饅頭みたいにムギュウっとなって、顎の骨がメキメキっと軋んだ。
「でゅおうッ・・・・、」
「ほんとはあと二日地獄にいなきゃいけなかったんだけど、鬼たちに賄賂を渡して出てきちゃった。
ああ〜・・・・こうしてまた君に逢えるなんて嬉しいわあ。君もまた逢えて嬉しいでしょ?」
「む・・・・ぶぎゅうッ・・・・、」
痛い・・・・顎が外れそうだ。
ていうか顔そのものが潰れてしまうかも・・・・。
「こっちへ戻ってきてからね、すぐに君とたまきを捜したのよお。エボシ君って優秀な子のおかげで、すぐにどっちも見つけたわ。」
「ちょ・・・・ひゃめろ・・・・顔がちゅぶれる・・・・、」
「最初にどっちに逢いに行こうか迷ったんだけど、やっぱり君よねえ。なんたって人間のクセに私をあんな目に遭わせたんだからあ〜。もうね、お世辞抜きですごいって思ってるの。」
そう言ってふっと力を緩めた。
両手からスポンと顔が抜けて、ヘナヘナっと尻餅をついてしまった。
「まだ妖怪だった頃は人間に不覚を取ることもあったんだけどね〜。神様になってから不覚を取った人間は君だけ。後にも先にもきっと君だけよ。」
甘ったるい声が消えていき、だんだんと低く沈んでいく。
ピリピリと殺気が伝わってきて、周りの空気さえ歪んで見える。
もし俺が子供ならこの時点で失禁してるだろう。
「な、なんで・・・・いきなり俺のとこに・・・・、」
「だから言ったでしょ、後にも先にも私を地獄送りへしたのは君だけなのよ。もうね、プライドがズタズタ。この怒りと悲しみと屈辱、人間の君には分からないでしょ。」
赤色の目がより赤く染まり、真紅に輝いていく。
《こ、殺される!》
逃げようと背中を向けたけど、上手く立ち上がれない。
ていうか足が地面から浮いて・・・・、
「悠一君。」
「ひいッ・・・・、」
首根っこを掴まれ、軽々と持ち上げられる。
「そんな怖がらないで。」
「こ、怖いに決まってるだろ!俺を殺しに来たんだろ!?」
「今日は挨拶だけ。」
ニコっと笑い、俺を地面に落とす。
「いたッ・・・・、」
「シャバに出たばっかりだからね。あんまり派手なことは出来ないわ。」
「じゃ、じゃあ・・・・もう俺に関わらないってことだよな?」
「まさか。」
クスっと肩をすくめる。
人差し指を伸ばし、俺の顎をツイーっと撫で上げた。
「今はって言ったでしょ、今はって。」
「てことは・・・・、」
「・・・・・・・・。」
「な、なんで黙るんだよ!」
「もちろんまた会いに来るわ。君が幸せ絶頂の時にね。」
「し、幸せの絶頂だって・・・・?」
「聞いたわよ、婚約したって。」
「な、なんでそれを!」
「情報なんてどこからでも入ってくるのよ。相手はたしかタヌキの霊獣なんでしょ?名前は小町舞。君の幼い頃の友達。」
「・・・・・・・・。」
ゾッとする・・・・。一番恐れていたことなのに。
「君も物好きよねえ。まさかタヌキの婚約者だなんて。あの子、たしか一昨年に君たちと一緒にいた子よね?」
「お・・・おい!言っとくけどな、マイちゃんに手え出したら許さないぞ!」
恐怖の中に怒りが沸いてくる。
抜けていた腰に力が戻ってきて、立ち上がって睨み返してやった。
「あの子はいっぱい苦労して、悲しい思いもしてる子なんだ。それを乗り越えていま幸せになろうとしてるのに・・・、」
「それそれ!」
嬉しそうに手を叩くので、「なにが!」と怒鳴ってやった。
「怯えるだけの小鳥を仕留めてもつまらない。そうやって誰かの為に熱くなってる方が・・・ねえ?楽しみが増すってものよ。」
「ぜったいにマイちゃんに手出しなんかさせないからな!少しでもちょっかい出してみろ、もう一度地獄に送り返してる!!」
「そういうの大歓迎よ。動物と話せるだけの君になにが出来るのか?楽しみにさせてもらうわ。」
本気で楽しそうに言って、クルっと背中を向ける。
「じゃ、今日はこれで。」
金色の長い髪を揺らしながら、ヒラヒラと手を振る。
「お、おい・・・・!」
「なに?」
笑みを残したまま冷淡な目で振り返る。
少しビクっとしたけど、「さっきこう言ったよな?」と尋ねた。
「シャバに出たばかりだから派手なことはしないって。」
「ええ。」
「だったら・・・・この件には関わらないってことだよな?」
「なにが?」
「お前なら全部知ってるはずだろ?この会社が妙な薬を作ってることくらい。」
そう言ってカグラの本社を指差すと、クスっと微笑んだ。
「それ、私の会社じゃないわ。」
「し、知ってるよ!でもお前はカマクラ家具の社長に戻るつもりなんだろ?だったら手を組んで悪さをするつもりなんじゃないのか?」
「いいえ、カマクラ家具には戻らない。」
「へ?戻らない?・・・・なんで?」
「地獄にいる間に色々考えてね。あの会社、もう飽きちゃったかなあって。」
「飽きるって・・・・代理の社長まで立てたのにか?」
「トヨウケヒメのことね。私の古い友人なんだけど・・・・悠一君は彼女に会ったみたいね。」
そう言って俺のポケットを指さした。
ここにはあのイヤリングが入っている。
「トヨウケヒメの霊力を感じるわ。彼女が誰かに贈り物をするなんて滅多にないことよ、君って本当に面白い子。」
一瞬だけ凶悪に顔が歪む。思わず目を背けてしまった・・・・。
「彼女に代理を頼んだのは、私のいない間に馬鹿どもが付け上がらないようにする為よ。」
「馬鹿ども?」
「いま君が揉めてる相手。伊藤と鬼神川、どっちも欲が深いからカマクラ家具まで自分の物にしようと企むかもしれないでしょ?
いくらいらない会社だからって、あんな奴らに荒らされるのは嫌だったのよ。だからトヨウケヒメに社長の椅子に座ってもらってただけ。」
「その為だけに代理を立てたのか・・・・・。」
「伊藤みたいなしょうもない男に、私の建てた会社を荒らされるなんてねえ・・・・地獄から脱獄してでも殺したくなっちゃうわ。
筋肉おバカさんの鬼神川なんかもっと殺したくなっちゃう。でもあんな奴らの為にわざわざ脱獄なんてのも面倒くさいじゃない?」
「なるほど・・・・よ〜く分かった。お前はやっぱりダキニなんだって。地獄から戻ってきてもなんにも変わっちゃいないんだな。」
少しは落ち着いたんじゃないかって、ほんのちょっとだけ期待してたんだけど、そんなのは有り得ないことだった。
だってコイツはダキニなんだから。変わるわけなんかないんだ。
「カマクラ家具に戻らないってことは、この件に関わる気はないってことでいいんだよな?」
再度尋ねると、「そうねえ〜」と甘ったるい口調に戻った。
「どうしよっかなあ〜。悠一君はどっちがお望み?」
「ふざけるなよ!・・・・まさかお前が黒幕じゃないよな?」
思い切ってぶつけてみる。
ダキニは「悠一君はどう思う〜?」と思わせぶりな表情だ。
「俺はお前が主犯だと思ってる。あの薬を使って、この世を霊獣の支配する世界に変えるつもりなんだろ?」
「う〜ん・・・半分正解ってとこかしらあ。」
「半分だって?」
「私が人間の世界に来るのは刺激があるから。別にこの世をどうこうしようなんて思ってるわけじゃないのよお。」
「じゃあ・・・・ほんとに黒幕じゃないんだな?」
「ふふふ、無関係ってわけでもないけどね。ただ伊藤や鬼神川と一緒にされちゃあ困るわあ。
私はこれでも稲荷の長なのよお?人間の世界をどうこうしようなんてレベルの低い発想はしないわ〜。」
・・・・言ってる意味が分からない。
いったいコイツは何を企んでいるんだろう。
「カグラの野望は私の知るところじゃないのよ〜。私の夢にも役立つかもしれないから、一枚噛んではいるけどお〜。」
「やっぱり!てことは俺たちの邪魔をするつもりだな?」
「さっきも言ったでしょ〜?シャバに戻ったばかりだから派手なことはしない〜って。悠一君ってば物覚えが悪くなっちゃったのかしら〜?」
クスクス笑っている。それが不気味だ・・・・。
「結局どうなんだよ?俺たちの邪魔をするのかしないのか?それだけ聞かせてくれないか?」
「うふふ、よっぽど私のことが怖いみたいねえ。そんなことで婚約者を守れるのかしら〜?」
「そ、それはいま関係ないだろ!俺が聞いてるのは・・・・、」
「そうカッカしないで。せっかちな男はモテないわよ〜。未来の奥さんに嫌われちゃうかもお。」
「余計なお世話だ!」
どんどん甘ったるい口調が強くなっていく。
これはこれでやりにくい・・・・・。
「今回の事件、矛盾してることがあるんだ。伊藤はこの世から霊獣を葬ろうとしているのに、鬼神川たちの目的はその逆だ。
これってどう考えてもおかしい。・・・・やっぱりお前が関わってるんじゃないのか?」
「もう悠一君ったらあ。なんでもかんでも私を疑って、心外だわあ。」
あっけらかんと笑っている。
きっと喜んでいるんだろう。疑うってことは、自分を恐れているってことだから。
「はっきり言うけど、私はなんにもしてないわ〜。伊藤には伊藤の思惑があって、鬼神川には鬼神川の思惑があるってだけよ〜。
目的が異なっても、手段が似てるなら途中まで共闘することは不思議じゃないわあ。」
「手段が似てる・・・・?」
「カグラの開発した薬よお。あれは使いようによっては霊獣にとって有利にも不利にもなるわあ。」
「まあ・・・たしかにそうかもしれない。新薬は簡単に霊獣を生み出せるけど、例の薬は霊獣を霊獣でなくしてしまうから。」
「伊藤と鬼神川は互いに利用しあってるわあ。最後に相手を化かすのはどっちか?面白いゲームよねえ。」
「ゲームって・・・・こんな大事になってるのにゲームなわけが・・・・、」
「だって見てる分には面白いじゃない〜。ま、どっちが勝っても私にはなんの影響もないしい。」
「影響がない?だって伊藤が勝ったらこの世から霊獣が消えるんだぞ。そうすればお前だって・・・・、」
「消えるって?・・・・ぶふ!あははははは!!」
腹を抱えて笑っている。目に涙を浮かべながら。
「君ってほんとに面白い子ね〜。」
怪力でグリグリと頭を撫で回される。
「痛だだだだだ!」
「君ならもう知ってるでしょ?この世には至る所に霊獣がいるわ。それを全て消そうなんて無理な話だと思わない?」
また沈んだ声に戻っている。
真紅の瞳の奥に、仄暗い井戸のような不気味さを滲ませながら。
「それにね、伊藤ごときに殺られるようなタマなら、地獄で鬼どもをコキ使って放蕩生活を送れないわよ。」
指先で俺の顎を掴み、クイっと持ち上げる。
「だからこそムカついてんの〜。たまきに不覚を取るのはまだしも・・・・テメエごとき人間に土付けられたことがよおおおおおお!!」
顎を掴んでいた手を離し、今度は首を掴まれる。
ほんの一瞬で意識が遠のきそうになって、タップすることすら出来なかった。
ブクブクっと口から泡が出てくる。
ダキニは「あらいけない」と言って手を離した。
「ごめんねえ〜、ついカっとなっちゃってえ。」
「ごふッ・・・・げほ!」
首を押さえながら屈んでいると、「痛いの痛いの飛んでいけ〜」と背中をポンポンされた。
「君には元気でいてもらわないとねえ。タヌキの婚約者と幸せになるまでは・・・・。」
顔を近づけ、妖しく瞳を輝かせる。
「たまきにも挨拶に行かないといけないから、今日はこれでね。」
長い髪を翻し、「またね〜」と背中越しに手を振った。
俺は呆然とそれを見送ることしか出来ない。
「・・・・・・・あ。」
ふと我に反る。
周りを見渡すと、全てのパトカーがひっくり返っていた。
大勢いた警官もみんな気絶している。
そしてアカリさんたちは・・・・・、
「な、何してるんですか・・・・?」
みんな植え込みの陰に隠れていた。
ブルブル震えながらこっちを見ている。
「もう帰りましたよ。」
アカリさんを筆頭にゆっくりと出てくる。
みんな冷や汗がダラダラで、「ふう〜・・・」っと額を拭っていた。
「ああ、怖かった・・・・まさかいきなり現れるなんて。」
「ヒドイじゃないですか。見てたんなら助けて下さいよ。」
「馬鹿言わないで。命が幾つあっても足りないわよ。」
鳥肌を立てながら腕をさすっている。
モンブランも「そうよ」と頷いた。
「だいたい悠一は鈍間すぎるわ。前だって一人だけ逃げ遅れてたし。」
「お前らも俺を見捨てたのか・・・。こりゃしばらく餌抜きにしないとな。」
そう言うと「やいやい!」とマサカリが怒った。
「餌抜きってのはどういうことでい!」
「そのまんまの意味だよ。お前らは薄情だ。」
「へん!相手はあのダキニだぜ。ビビらねえ方がどうかしてんだ。」
偉そうにふんぞり返っている。うん、やっぱりしばらく飯抜きにしよう。
「ねえ?ちょっといいかしら。」
マリナが手を挙げる。
「どうした?」
「ツムギ君の元気がなくなっちゃったみたい。」
「元気がないって・・・そんなに怖かったのか?」
「そうじゃないわ。ダキニに嫌われちゃったって落ち込んでるの。」
もぐもぐバナナを食べながら、「可哀想にねえ」と頭を撫でている。
「・・・・・・・・。」
「ほんとに元気がないな。大丈夫?」
「ツムギ君ってダキニのこと大好きだったでしょ。なのにダキニ様!って近づいていった瞬間、『誰アナタ?』ってすごい冷たい目で言われたの。
僕です!ツムギです!って言っても、『知らないわ』って。『気安く話しかけないでくれる?』って、シッシって追い払われたの。」
「そりゃたしかに傷つくな。」
ツムギ君は誰よりもダキニを慕っていた。
ウズメさんに反発心を抱くのもその為なのだ。
マリナが「よしよし」と慰めると、「いいんですよ、僕が悪いんだから・・・」と泣きそうだ。
「僕はダキニ様に忠誠を誓っていたんです。なのに有川なんかに手を貸してるもんだから、お怒りを買ってしまったんだ・・・・。」
「ツムギ君・・・・。」
「今回だけじゃない。去年にも手を貸したことがあった・・・・。」
「覚えてるよ。去年の秋に龍と揉めた時のことだよな?あの時はウズメさんを呼んで来てくれて助かった。君がいなきゃどうなってたか分からない。」
「有川に手を貸し、ウズメに助力を願い・・・・ああ!僕は最低だ!!これじゃダキニ様に嫌われても仕方ない!!」
頭を抱え、キツネみたいな声で泣き出す。
ロッキー君が「なんか知らないけど元気出せよ」と肩を叩き、ヒッキー君が「飴ちゃんいるか?」と気を遣っていた。
それでも泣き止まないので、マリナが「バナナいる?」と一本差し出した。
ツムギ君は泣きながらも「マリナさん・・・」と感激し、パクリと頬張っていた。
チュウベエが「マリナってけっこう男の扱い上手いな」と呟くので、「どっちかっていうと子供の扱いだと思うぞ」と返した。
ケンケン泣くツムギ君の背中を見つめていると、「なあよお」と誰かに背中をつつかれた。
振り返ると、ヌウっとチェリー君の姿が浮かび上がってきた。
「擬態して隠れてたの?」
「まあな。ありゃおっかねえ。ぜったいに喧嘩したくないぜ。」
彼まで鳥肌を立てている。「アンタ、よくあんなのと揉めて生きてたな」と、感心とも呆れともつかない様子で言われた。
「自分でもそう思うよ。」
「あんなおっかねえ奴とやり合うのはゴメンだぜ。」
「心配しなくてもそんな事にはならないよ。」
「ほんとかよ?」
「シャバに戻ってきたばっかりで、あんまり派手なことは出来ないってさ。」
「じゃあアイツはこの件には関わってこないんだな?」
「さあ?」
「おいおい、さっき心配すんなって言ったじゃねえか。」
「アイツの狙いは俺だよ。君に危害はない・・・・多分。」
「なんか頼りねえなあ。」
ポリポリとリーゼントを掻きながら顔をしかめている。
俺は「どうしても怖いならここで降りてもいいよ」と言った。
「無理強いなんて出来ないから・・・・、」
「ふん!今さら降りたってしょうがねえだろ。最後まで付き合ってやるよ。」
シュっとリーゼントを撫で付け、カグラのビルを見上げる。
「さっさと行こうぜ。お巡りどもが寝てるうちによ。」
堂々と向かっていくチェリー君。
この事件も佳境へ差し掛かっている、そんな気がする。
季節外れの冷たい風に目を細めた。

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