屋根裏の住人

  • 2019.09.12 Thursday
  • 12:49

JUGEMテーマ:

屋根裏から顔を出すヒヨドリ

 

屋根裏をトットットと走るヒヨドリのヒナ

 

餌を運んでくる親鳥

 

屋根裏からクチバシを覗かせるヒナ

 

八月のカレンダーをめくる頃

 

屋根裏には誰もいなくなっていた

 

勇気の証のイラスト

  • 2019.09.12 Thursday
  • 11:37

JUGEMテーマ:イラスト

 

   藤井とエル(左)とハチロー(右)

勇気の証 最終話 いつかまた(3)

  • 2019.09.12 Thursday
  • 11:33

JUGEMテーマ:自作小説

嵐は前触れもなくやってきて、節操もなく去っていく。
散々暴れてあちこち滅茶苦茶にしたことなんてお構いなしに。
日本に戻ってきてこの数日の出来事は、昨日の夜に終わりを迎えた。
だけど私の心は晴れない。
悪霊、亜津子さん、絹川さん。
三人の間に本当は何があったのか?
昨日は偉そうに語ってしまったけど、霊感が消えた今となっては、ただの勘違いにも思える。
絹川さんにヒドイことを言ってしまったと、朝一番に謝りに行った。
「いいっていいって。気にしちゃいないから。」
笑って許してくれたけど本心はどうなんだろう?
気にはなるけどこれ以上探るのはやめよう
勘が鋭かった昨日までとは違って、余計な詮索をしたいとは思わなくなっていた。
「むしろあんたには感謝してるんだ。悪霊を退治してくれたこと、そしてハチローを救ってやってくれたこと。
10年あっても俺じゃ無理だった。本当に助かったよ。」
そう言って「これ奢りだ」と豪華なお弁当を作ってくれた。
「近くに来た時はいつでも寄ってくれよ。腕振るってご馳走するからさ。」
「ありがとうございます。それじゃいつかまた。」
荷物を抱えながらロビーを横切っていく。
すると忙しそうに走る内藤さんに出くわした。
「あ、藤井さん!」
手を振りながら駆け寄ってくる。
「今日お帰りですか?」
「はい。予約は明日までなんですけど、もう用事は済んだから。」
「だったらゆっくりしていけばいいのに。」
「今から東京へ向かわなきゃいけないんです。その後は岡山に寄って、実家に預けてる猫たちにも会いに行かないと。」
「そっかあ。忙しいんですね。」
少し残念そうな顔をしながら「もっと藤井さんと話したかったです」と言った。
「私ね、実は転職しようかと考えてるんですよ。」
「そうなんですか?この仕事、すごく向いてそうなのに。」
「だってオーナーの人遣いか荒いから。休日出勤なんてしょっちゅうですよ。」
不満そうに唇を尖らせている。
私は「休みくらいはきっちり欲しいですよね」と頷きを返した。
「だけど転職っていっても、次に何をやりたいとかは決まってるんですか?」
「いえ、とんと。」
「ならもう少し考えてもいいと思いますよ。休日のことはよくオーナーさんに相談して、改善してくれるならそれでいいし、無理なら本気で転職を考えればいいし。」
「話せば分かってくれると思うんですけど、どうもねえ・・・・。私が役に立つならまあ仕方ないかなって思ったりもするんです。
一生懸命働いてお客様が喜んで下さるならいいかなって。ただもうちょっと休みを多くしてほしいっていうか・・・・、」
「だったら尚の事すぐに決めない方がいいですよ。勝手かもしれないけど、この仕事って内藤さんの天職のような気がするから。」
「ほんとですか?」
「ほんとですよ。」
「ああ、やっぱりもっと藤井さんと話したかったなあ。あ、変な意味じゃないですよ。
なんかこう私の知らない事とかたくさん知ってそうで、話してるだけで勉強になるんじゃないかなって。」
「買いかぶりですよ。私なんかとっくに東京へ着いてなきゃいけないのに、寄り道ばっかりで遅れちゃって。きっと内藤さんの方がしっかりしてます。」
「ほんとですか?」
「ほんとですよ。」
「いやあ、褒めてもらって嬉しいです。」
照れくさそうに帽子を被り直している。
受付から「内藤!なにサボってんだ」と呼ばれて「はいただいま!」と走り出した。
「また泊まりに来てくださいね。今度は悪霊なんかに邪魔されずにゆっくりと。」
「ええ、それじゃまた。」
手を振ってホテルから出る。
今日も透き通るほどの快晴で、浜辺は相変わらず賑やかだ。
楽しそうなはしゃぎ声がここまで響いている。
「・・・・さて、行くか。」
深呼吸して歩き出す。
けど何気なくポケットに手を入れた時、アレを忘れていることに気づいた。
「あ、首輪・・・・。」
陽菜ちゃんのハチロー君の首輪を部屋に置いてきてしまった。
なんだかんだで私が持ったままだったので、帰りに寄って返そうと思っていたのだ。
慌てて引き返し、内藤さんに部屋を開けてもらう。
「ごめんなさい、忙しいのに。」
「いえいえ。」
ガチャっとドアを開け、「どうぞ」と手を向ける。
「自動ロックなんで終わったらそのまま帰って頂いてで大丈夫ですから。」
ペコっと頭を下げて、忙しそうに駆け出していった。
「うん、ぜったいにこの仕事が天職よね、内藤さん。」
遠ざかる背中に笑みを送り、部屋に入る。
「ええっと・・・・たしかベッドの近くの棚に置いてたはずだけど。」
近づいても見当たらない。
どこか違う場所へ置いたのかと、部屋をあちこち探してみた。
けどどこにもない。
お風呂やトイレや洗面台など、ぜったいに置いてないだろう場所も探してみたけど見つからなかった。
「もしかして部屋をクリーニングしちゃったのかな?」
チェックアウトしてから30分以上は経っている。
受話器を取り、ロビーに確認してみようとした・・・・その時だった。
ゾワゾワっと悪寒が走る。
振り返ると悪霊がそこに立っていた。
真っ黒な影、人とアメーバを混ぜたような姿、そしてナメクジのように出っ張った目玉。
手には真っ白な首輪を握っている。
「・・・・・・。」
息を飲みながら後ずさった。
悪霊は目玉を伸ばし、私の動きを追いかけるように睨み続ける。
「成仏・・・・してなかったの?」
問いかけても答えない。
手にした首輪を放り投げ、『ハチローハドコダ・・・・』と部屋を見渡した。
「もういないよ。天国へ行ったから。」
『テンゴク・・・・・。』
「あなたから解放されて自由になったのよ。心置きなく天国に旅立っていったわ。」
『アツコモイナクナッテ・・・・ハチローモイナクナッテ・・・・オレハドウスレバイイ・・・・。』
「成仏すればいいじゃない。もうこの世に留まっていても意味なんて・・・・、」
『オマエガウバッタ・・・・。』
「え?」
『オマエサエコナケレバ・・・・。オマエガスベテヲダイナシニシタ・・・・オマエサエコナケレバ・・・・。』
怒りのせいかひどく歪み始める。
ここにいたら私も確実にあの世行きだ。
背中を向け、部屋の外に駆け出そうとした。
けど髪を掴まれ、ズルズルと引き寄せられる。
「いやあ!やめて・・・・、」
『オマエ・・・イッショニイテクレ・・・・。』
「い、一緒にいてくれって・・・、」
『オマエガスベテヲウバッタ・・・・・。ダッタラセキニンヲトレ・・・・。
ヒトリハサミシイ・・・・・オマエモシンデ・・・・オレノソバニイテクレ・・・・。』
「あんた・・・・どこまで自分勝手なのよ!」
大声で助けを呼ぼうとしたら口を塞がれてしまった。
「むうう・・・・、」
『イコウ・・・・オレトイッショニ・・・・テンゴクヘ・・・・・。』
悪霊はベッドの脇にある机から万年筆を取る。
尖ったペン先を首筋に当てられ、グっと押し込まれた。
《嫌だ!誰か・・・・誰か助けて!》
手足をバタつかせて必死に身を捩る。
だけど悪霊の力は相変わらず強くて、どう足掻いても逃れることが出来なかった。
首に突きたてられた万年筆が食い込んでいく。
せっかく・・・・せっかく全て終わったと思ったのに、まだ嵐は去っていなかった。
もういい加減こんなのはごめんだ。
《お願い誰か!》
強く願った瞬間、消えたはずの霊感が戻ってきた。
と同時に「ここか!」と誰かが駆け込んでくる。
バタバタと足音が向かってきて「この悪霊が!」と怒声が響いた。
誰かが悪霊と戦っている。
しばらくの格闘の後、『アアアアア!』と悪霊の悲鳴がこだました。
・・・・・・・・。
静寂が広がる。
「大丈夫か!?」
誰かに抱え起こされて、思わず抱きついてしまった。
「こ、怖かった・・・・死ぬかと思った!」
「大丈夫、もう大丈夫。」
ポンポンと背中を撫でてくれるその手は力強い。
なんだか聞き覚えのある声で、顔を見上げて「あ!」と叫んだ。
「鬼頭さん!!」
「間に合ってよかった。」
ホっとした様子で頷いている。
「ど、どうして・・・・、」
「あれからずっと心配だったんですよ。なんだか嫌な予感がするから和歌山まで来てみたんです。
けどどこにいるのか分からない。困っていたらこちらの方が案内してくれました。」
そう言って振り返った先には一人の女性が立っていた。
私はこの人を見たことがある。
昨日、悪霊に襲われたあの場所でハチロー君が化けていたから・・・・。
「あ、亜津子さん・・・・?」
彼女はじっと私を見つめていて、申し訳なさそうに頭を下げた。
《怖い思いをさせてごめんなさい・・・・。そして・・・ハチローのこと、救ってくれてありがとう・・・・。》
そう言い残し、陽炎のように消え去った。
「い、今のはいったい・・・・、」
「彼女なんですよ、あなたをここへ呼んだのは。」
「へ?」
「ほら、あなたがタクシーに乗ってる時に俺と再会したでしょう?あの時に和歌山の南に行くようにと伝えましたよね。」
「ええ・・・。誰かの声を聴いて、それを伝えに来たって言ってましたよね?」
「あの声、さっきの女性です。」
「亜津子さんが・・・・?」
「俺をここへ案内してくれたのも彼女です。ついさっきのことなんですけど、この近くの路地をウロウロ探していたら、寂れた空き地から声が聴こえたんですよ。
振り向くとさっきの女性が立っていて、あなたの身に何があったのかを話してくれました。」
「彼女・・・成仏したんじゃなかったんだ・・・・。」
「していますよ。魂はここにはありません。」
「じゃあどうして?」
「空き地にほんの少しだけ霊力が残っていたからです。言うなれば残留思念のようなもので、魂があの場所に眠っていたわけじゃない。
もしかしたらですけど、あの土地に何か埋まっていたんじゃありませんか?本人の思い出の品とか・・・・あとは骨とか。」
「ええ、遺骨の一部が。」
「だったらそれです。それもかなり強く思念が残っていましたよ。」
「でも骨は消えたんですよ。なのにどうして?」
「あの女性の霊、亡くなったのはかなり前だと言っていました。だったら埋めた骨はとうに土に還ってるはずです。」
「・・・・あ、言われてみれば。」
「強い思念が骨をそのまま保っていたんですよ。理由はさっきの悪霊。
自分の死後、何かあった時の為に骨を保っていたんでしょう。」
「思念が骨を保つ・・・・。」
そういえば悪霊が言っていた。
強い思念が肉体を守ると。
魂の力は肉体を超えることがあると。
「強い思念が骨を保っていた。だから骨が消えたあとでも思念はまだ残っていたんです。・・・・ちなみに埋めたのは誰ですか?」
「彼女の友人です。亜津子さん、実家のお墓に入るのを嫌がってたそうだから。」
「なるほどね・・・・。でもこれは犯罪ですよ。いくら友人とはいえそこまでするとは・・・・・。もしかしたらですけど、彼女自身がそう頼んだのかもしれませんよ。」
「亜津子さん自身が?」
「自分の死後、良くないことが起こることを危惧して頼んだんでしょう。」
「それって・・・自分が生きてるうちに頼んだんでしょうか?それとも死後に?」
「さあね。友人が普通の人なら生前にしか頼めないけど、霊感のある人なら死後でも頼めるわけですから・・・・それが何か?」
「ちょっと気になったんです。もし生前に頼まれていたなら友人として辛かっただろし、死後なら・・・・やっぱり同じか。
どっちにしても絹川さんは辛い思いを抱えていた・・・・。けど彼だって・・・・、」
彼だって不倫して事の原因を作った。
だからもう・・・・考えるのはやめよう。
霊感が戻ったせいで勘が鋭くなってしまったから、詮索癖まで復活してしまったようだ。
けど私が首を突っ込むことじゃない。
この件はこれでもう終わりなんだ。
「助かりました。ありがとうございます。」
立ち上がって頭を下げると、「役に立ててよかったです」と言った。
「あなたには何か恩返しがしたいと思ってたんですよ。フク丸を成仏させてくれたでしょう。」
「その為にわざわざ来てくれたんですか?」
「俺は霊感はあるけど動物と話すなんてことは出来ない。あなただからこそあいつは成仏することが出来たんです。
そういえばあの時いた猫の幽霊が見当たらないけど、あの子も・・・・、」
「はい。生まれ変わったらまた会おうって約束して。」
「そうですか。会えるといいですね。」
鬼頭さんも立ち上がり、「それじゃこれで」と去って行く。
「あの・・・・、」
「はい?」
「ここ、あと一日泊まれるんです。私はもうチェックアウトするんで、よかったらどうですか?」
「どうって・・・・俺に泊まれと?」
「だってここまで追いかけてきて疲れたでしょう?それにお腹も空いてるようだし・・・・。」
さっき少しだけお腹の音が鳴っているのが聴こえたのだ。
私を追いかけてここまで来るのにお金を使ったはずだし、そのせいでご飯が食べられなかったのなら申し訳がない。
「ボーイさんにお願いしてみます。泊まらせてあげてくれないかって。」
「いやそんな、悪いですよ。」
「料理長さんにもお願いしてみます。悪霊にトドメを刺してくれた人にご馳走を振舞ってあげてほしいって。」
手を振って遠慮する鬼頭さんだったけど、今度は大きくお腹が鳴った。
「あ・・・・、」
「ね?」
ニコっと微笑みかけると、「なら・・・お言葉に甘えて」とお腹をさすった。
「実は腹が減って仕方なかったんです。あなたに奢ってもらった牛丼しかまともな物を食べてなかったから。」
「ならこれあげます。料理が出来るまでの足しに。」
タクシーの運転手さんからもらったお菓子を渡す。
一口も食べずにっていうのは悪いので、包装紙を向いて一個だけお腹に入れた。
「どうぞ。」
「・・・・すいません。頂きます。」
受け取るなりガツガツ貪り始める。
邪魔しちゃ悪いのでそっと部屋を出た。
ドアを閉め、さっそくボーイさんと料理長さんにお願いしに行くと、お安い御用とばかりに引き受けてくれた。
《終わった・・・・これで本当にもう。》
ホテルを出て海と空を眺め、うんと背伸びをする。
さっき復活したばかりの霊感はいつの間にか消え去っていた。
今度こそ蘇ったりしないだろう。ていうかしないでほしい。
霊感のある人はみんな悪霊を恐れていたけど、その意味がやっと理解できた。
身に余る力は身を滅ぼすだけ。
とてもじゃないけど、私には霊力なんてもの使いこなさせそうにない。
でも構わない。
霊感がなくなって動物と話せるこの力があるんだから。
私が救いの手を差し出すのは幽霊に対してじゃない。
困っている動物に対してなんだから。
しばらく海を見ながらホっとしていると、ブルブルとポケットが震えた。
「あ!」
東京で待っている友人からだ。
そういえば和歌山へ来てからまったく連絡を取っていない。
着信とメールが幾つも溜まっていて、慌てて折り返した。
「もしもし!ごめん連絡できなくて!」
『よかった!やっと通じた・・・・他の人たちも心配してたんだよ。何かあったのかい?』
「うん、それはもう色々と。でも今は平気。」
『もしかして危ない目に遭ってたとかじゃないよね?』
「ええっと・・・・それは・・・・、」
『やっぱり遭ってたんだね。それを心配してたんだよ。多分だけどマナコの方から首を突っ込んだんだろ?』
「ええっと、まあ・・・。」
『きっと困った動物がいたんだろうね。そういう時は見境なく突っ走るから。
アフリカでも何度も危険な目に遭ったのを忘れたのかい?銃を持った密猟者に飛びかかったり、暴れるライオンを介抱しようとしたり。
いったい何度ヒヤヒヤさせられたことか。』
「ほんっとにごめん!東京に着いたらちゃんと話すから!」
『いや、その必要はないよ。』
「その必要はないって・・・・まさかもうフォーラムが終わっちゃったの!?」
『まだ続いてるよ。』
「じゃあどうして・・・・、」
『僕が迎えに行く。』
「そんなの悪いよ!いつも迷惑かけてばっかりなのに・・・・、」
『いつもだからこそ、もう慣れっこさ。』
「ほんとにいいの・・・・?」
『もちろん。それより今はどこ?』
「和歌山の南紀白浜って場所なんだけど・・・・分かるかな?」
『ああ。もう近くまで来てるからね。』
「ええ!なんで?どうしてここが分かったの!」
『簡単なことだよ。実は僕、霊感があるんだ。』
「・・・・・・・・。」
電話を握り締めたまま固まってしまう。
すると『冗談冗談』と笑い声が返ってきた。
『マナコ、GPS機能をオンにしたままだろ?』
「GPS・・・・・ああ!」
アフリカで活動する時、仲間内で居場所が分かるようにスマホにGPS機能を持たせているのだ。
その機能をONにしたままだった。
『もうすぐ着くよ。ホテルの近くで待ってて。』
なんだか恥ずかしくて無言になってしまう。
小さく咳払いしてから「ありがとう、待ってる」と頷いた。
電話を切り、空と海を眺める。
ついさっきまで悪霊に襲われていたのがウソに感じるほどのんびりした光景だ。
中庭のベンチに腰掛け、潮風に目を細める。
海から聴こえる海水浴客の賑やかな声に耳を澄ませ、水平線の上を流れる雲を眺めた。
しばらくぼうっとしていると、浜辺から「ハチロー!」と声が聴こえた。
目を向けると子供が猫を追いかけている。
白と茶色の模様で、少しぽっちゃりしていた。
子供は猫を抱え、親のもとまで走っていく。
《あの猫はもしかして・・・・・。》
そういえば季美枝ちゃんのハチロー君、まだ見つかってないままだ。
彼女が連れて帰った猫はまったく別の猫。
ということはあの猫は・・・・・なんて考えてしまう。
ほんとはどうなのか分からない。
けどそうだったらいいなと、また空と海を眺めた。
何も考えずにただ景色を見つめていると、ふと足元を何かがよぎった。
「・・・・・・・・。」
もう霊感はない。
ないはずなのに、足元にエル君とハチロー君の姿が見えた。
ほんの一瞬だったけど、今たしかにそこにいた。
私はペンを取り出し、エル君に治してもらった手の甲に、二匹の似顔絵を描いた。
大して似てはいないけど、こうしておくことでもうしばらく一緒にいられるような気がする。
それに何より、これは忘れてはならない証なのだ。
生まれ変わったらまた必ず会おうと約束した。
この絵は消えるいつか消えるだろうけど、自分の中からは決して消えないように刻んでおきたい。
これは私とエル君とハチロー君とで困難を乗り越えた勇気の証。
『またね。』
どこかから声がささやく。
私は手を持ち上げ、二匹の絵を水平線に重ねた。
「またね。」

 

 

     勇気の証 -完-

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