竜人戦記 番外編 クロス・ワールド(3)

  • 2012.11.03 Saturday
  • 20:09
異界と繋がるという空間のひずみ。
ウェイン達がいる世界は今、異界の異変による影響を受けている。
その影響が具体化している一つが今目の前にある空間のひずみだ。
「ウェインさん・・・。」
ケイトは不安そうな面持ちで前にあるものを見つめている。
「俺の後ろにいろ。」
ウェインが大剣を構えて一歩前に出る。
ケイトは首飾りを強く握って空間のひずみを凝視する。
いや、正確には空間のひずみから出て来ようとしている何かを凝視しているのだ。
「あれは・・・・・、人?」
ひずみからは赤黒い何かに身を包んだ人型のような者が三体現れた。
頭にはおかしな面のような物をつけており、出てきたそれらは辺りを警戒するようにキョロキョロと見回している。
お互いに何か言葉のようなものを交わし、前に歩みだそうとしたときにこちらに気づいたようだ。
そしてケイトは今になって気づいたのだが、三体とも手に何かを持っている。
見たことも無い形をした、鉄でできた筒のような物。
あれが何かはケイトにはわからない。
しかし、確実に良くない物であることは直感で感じていた。
異界から現れた人型のような者は、その鉄の筒をこちらに向けて何やら叫んでいる。
「ウェインさん・・・。」
身を乗り出そうとするケイトをウェインは押し戻した。
「ここから動くな。」
そう言ってウェインはまた一歩前に出る。
異界の者達が何やら叫ぶが、何を言っているのか言葉が理解出来ない。
真ん中の者がお面の横側をしきりにいじっている。
一体何をしているのかはケイトにはわからなかったが、何やら焦っている感じは伝わってきた。
「何者だ?答えろ。」
ウェインが鋭い目で相手を威嚇した。
異界の者達はお互いに目配せをすると頷き、そして鉄の筒をウェインに向けた。
「あれは・・・!」
ケイトは短く叫んだ。
異界の者達の敵意が増している。
それと同時に鉄の筒の先が光り、そして・・・・・。
「きゃあっ!!」
何かが鉄の筒から飛んできた。
ケイトはウェインの後ろで身を硬くした。
次の瞬間に、ケイト達の横に生えていた木が衝撃音とともになぎ倒されていた。
「ウェインさん!」
ウェインは大剣を体の前を覆うように構えており、刀身からは煙が上がっていた。
「どうやらやるつもりのようだな。」
そう呟いたウェインは地面を蹴って異界の者達に素早く距離を詰めて行く。
ウェインに向けられた鉄の筒がまた光り、そこからはじき出された何かをウェインは大剣の一閃で叩き落した。
異界の者達が慌てたように何かを叫んでいる。
真ん中にいた者が横の二体に指示のようなものをだして、迫り来るウェインを取り囲むようなかたちになった。
膠着するウェインと異界の者達。
ウェインは力を抜いたようにだらりと剣を下げると、取り囲んでいた異界の者達は一瞬ひるんだ。
彼はその隙を見逃さず、真上へ大きく飛び上がった。
異界の者達は慌てて鉄の筒を上に向け、また何かを打ち出した。
それは凄まじい速さで、ケイトでは目で追うことさえできない。
しかしウェインにはそれが見えているようで、空中で大剣を竜巻のように旋回させると鉄の筒から打ち出された物を弾き飛ばした。
そして彼は右手を真下に向け、その手の平に光が集まっていく。
「フンッ!!」
ウェインの手から放たれた光の玉は地面に当たって炸裂し、凄まじい衝撃が異界の者達を襲った。
パニックになっている異界の者の一人がウェインを探すようにキョロキョロと辺りを見回す。
ウェインはその者の背後に立っていた。
異界の者はそのことに気づいたが、鉄の筒を向けようとしたところをウェインに殴り倒された。
残る二体が鉄の筒を向けて攻撃するが、ウェインは素早くしゃがんで一気に距離をつめた。
残る二体の異界の者は下りながら迎撃しようとするが間に合わず、ウェインは右側に立っていた異界の者を蹴り飛ばした。
ウェインに攻撃された異界の者二体は完全に気を失っており、彼は残る一体に刃を向けた。
すると残った異界の者は鉄の筒を地面に捨て、手を頭の後ろに組んで降参のポーズをした。
ウェインは近寄り、大剣の切っ先を異界の者の首筋に当てて言った。
「お前達は何者だ?
何の目的があってこの世界へ来た?」
異界の者が何か喋っているが、聞いたことのない言葉でウェインもケイトも内容が聞き取れない。
「言葉が通じないか・・・。」
ウェインは眉間に皺を寄せて舌打ちをした。
「ウェインさん・・・、大丈夫ですか?」
戦いを見守っていたケイトが心配そうに尋ねる。
「ああ、しかし言葉が通じないのではどうしようもないな。
全員縛り上げてトリスのもとへ連れて行くか。」
そんな乱暴なとケイトは思ったが、確かにそれ以外に異界の者達をどうすることも出来ないので頷いた。
「ケイト、こいつで木のツルでもでも切って持って来てくれ。
こいつらを縛る。」
そういってウェインは鞘に入った小刀を腰から外し、ケイトに渡そうとした。
その時、ウェインに剣を突きつけられている異界の者が言葉を放った。
「・・・・・・、通じているか?」
ウェインとケイトは驚いてその者を見た。
異界の者はしきりにお面の横にある何かをいじっていた。
「・・・通じているか?私の言葉は・・・。」
ウェインは渡そうとしていた小刀をケイトに放り投げると、険しい顔でこたえた。
「ああ、この世界の言葉がわかるのか?」
ウェインの問いに異界の者は頷き、続けて言った。
「すまない。
私達はあなた方の敵ではない。
危害を加えるつもりはないのでどうかその剣を下ろしてほしい。」
それを聞いたウェインは皮肉な笑顔を見せてこたえた。
「危害を加えるつもりがないだと?
笑わせるな。
先に仕掛けてきたのはそっちだろう。」
そういって大剣を持つ手に力を込めた。
「それは・・・、すまない。
ただ私達は任務を遂行しようとしていただけだ。
攻撃を加えたのは成り行きだった。
どうか許してほしい。」
任務?
任務とは何だ?
ケイトの頭に疑問が浮かんだ。
「色々と訊かなければいけないことがありそうだな。」
ウェインはそう言うと、相手の首筋に当てていた大剣を素早く上に持ち上げた。
「きゃあッ!!」
異界の者の首が宙に飛び、ケイトは思わず目を覆った。
「ウェインさん!許しを乞う相手を殺すなんて・・・。」
ケイトがそう叫ぶと、ウェインはふんと鼻を鳴らした。
「馬鹿が。よく見ろ。」
そう言って顎で異界の者の方をしゃくる。
ケイトは恐る恐るそちらを見た。
「え?・・・あれ!?」
飛んだと思った異界の者の首は繋がっていた。
首を飛ばしたわけではなかったのだと、ケイトは安心した。
いや、それより・・・・・。
「に、人間ですか・・・・・?」
ウェインが大剣できり飛ばした異界の者の頭を指した。
「あれは・・・、付けていた面・・・?」
ウェインは頷くと、大剣を背中に戻した。
「こいつらが俺達の世界でいうところの人間であることはすぐにわかった。
発している気が同じだからな。
というより、今まで気づかなかったあんたの方がどうかしている。
やはり、一人前のシスターにはまだほど遠いか・・・。」
ため息交じりにそう言われて少し腹を立てたケイトだったが、確かにウェインの言う通りケイトは相手が人間であると見抜くことは出来なかった。
「奇妙な服装と面、そしてこれまた奇妙な武器。
そんな外見に惑わされて、こいつらが人間であるとわからなかったんだろう?
しっかりと相手の気を感じていれば、今のあんたなら十分見抜けただろうに。」
「す、すいません・・・。」
なぜ怒られなければならないのかと、ケイトは少し口を尖らせた。
「もう危険はないだろう。
戦っても勝てないとわかっているようだからな。」
それを聞いてケイトは少し近寄って、異界から来た人間の顔をまじまじと見つめた。
金色の長い髪に青みがかった瞳。
整った美しい顔をして、透き通るような白い肌をしていた。
目はやや釣り上がっており、それが気が強そうな印象を与えるが、厚めの唇は優しさを感じさせるものだった。
間違いなく女性であると思われるその顔を、ケイトはじっと見つめた。
誰かに似ている。
誰だろうとケイトは記憶を探り、もう少しで出てきそうな時にウェインが言葉を発した。
「ケイト、ぼけっとしていないで木のツルを切ってこい。
そこに寝転がってる二人も一緒に縛り上げて、トリスのもとに連れて行く。」
「・・・はい。」
ウェインの言葉に記憶の捜索を中断し、ケイトは小刀を持って手ごろなツルを探し始めた。
誰だ?
誰に似ているんだろう?
木のツルを切りながら、ケイトは記憶を探り、そして思い当たる人物が浮かんだ。
そうだ、彼女に似ているのだ。
かつてウェインやケイトと一緒に魔人を討伐しにいった仲間。
ダークエルフとなった妹を捜すために旅をしていた、凛としていて優しく、とても美しい女性。
ケイトがまた必ず会いたいと願う友人。
そう、エルフのマリーンに似ているのだった。



                           続く

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