マーシャル・アクター 第十話 死神ククリ

  • 2014.01.12 Sunday
  • 19:44
〜『死神ククリ』〜

「まるでこの世の終わりみたいな風景だな・・・。」
亜空間に飲み込まれたククリは、乾いてヒビ割れた大地に立っていた。
枯れた木がちらほらと立っていて、空は分厚い雲で覆われていた。
全てが色を失くし、生気のない灰色の空間であった。
「そろそろ姿を見せたらどうだ?」
ククリの声に呼応するように、大地のヒビからもくもくと黒い煙が現れた。
「相変わらず悪趣味なセンスだな。僕ならもう少しカラフルな空間を作るけどね。」
杖を向け、ククリは黒い煙に語りかけた。
「ふふふ、お前に悪趣味と言われたくはないな。」
黒い煙が集まり、人の形に変わっていく。
陰気で、そして邪悪な気を纏ってグリムが姿を現した。
「魔導協会でのお前の異名、死神ククリに悪趣味さで敵う奴なんていないよ。」
黒い法衣を纏い、狡猾そうな笑みを浮かべてグリムが言う。
「心外だな。その呼び名は周りが勝手に付けたんだよ。僕はこんなにいい人なのに。」
ククリは両手を開いておどけてみせた。
「普段と戦闘時のギャップがそう呼ばせているのさ。
お前にくらべりゃ俺なんか可愛い方だよ。」
法衣を脱ぎ捨て、化け物の身体を露わにするグリム。
「・・・醜いな・・・。そんな身体になってまで何がしたい?
世界の覇権とやらは人間を捨ててまで得る価値があるのかい?」
何も答えずに、グリムはただ笑みを浮かべていた。
「僕はね・・・・・」
ククリが目を伏せて語り出す。
「僕は・・・人生で一番大切なものを失ってしまったよ。
いや、奪われたというほうが正しいのかもしれない。
死神と恐れられ、醜い呪術を得意とし、マリオンの一番弟子ということが僕の周りから人を遠ざけていった。」
ククリはヒビ割れた大地の中に視線を落としていた。
「妻と子供だけさ。本当に僕を愛してくれたのは。
たとえ人から嫌われ、恐れられようとも、妻と子供が愛してくれるのなら・・・。」
ククリは目を閉じ、杖を握りしめた。
「他には何もいらなかった・・・。僕のすべきことはただ、家族の愛に応え、妻と子供達を笑顔にしてやることだけだった・・・。
妻と子供達の笑顔があるなら・・・僕は何もいらなかった。」
腰に手を当て、グリムは興味深そうに聞いている。
ククリは淀んだ空を見上げ、力を抜いて佇んでいた。
「グリムよ・・・君に分かるかい?愛する者を奪われる痛みが・・・・・。
人生で最も大切なものを失う悲しみが・・・・・。」
空を見上げるククリの髪が、青から白黒に変わっていく。
纏う法衣の色も、白と黒が浸食するように変化していった。
「僕はね・・・僕の大切なものを奪った君が許せない・・・。
もう二度とこの顔を見せまいと思っていたけど・・・やっぱり君だけは許せない・・・。」
そう言ってグリムを睨むククリ。
その顔は真っ白に変化し、目の下から首にかけて黒い線が走っていた。
目は灰色に変色し、瞳は渦を巻く白黒模様になっていた。
「ふふふ・・・その顔は久しぶりに見るな。
死神ククリを知る者なら誰でも背筋が凍るだろう・・・、だが!」
グリムは魔力を溜め、両手を交差させた。
割れた大地から無数の死霊が湧き上がり、グリムの身体に吸収されていく。
交差させた手を解き放つと、全身に死霊の顔が浮かび上がってきた。
「どうだい?素晴らしいだろう、この身体。マリオン大師より授かった古代魔法の力さ。
このおかげで僕のネクロマンサーとしての力は何倍にも増幅された。」
「やはり醜いな・・・。」
「くくく、お前も充分醜いさ。さて、死神が死霊の魂を狩るのか、死霊が死神の魂を喰らい尽くすのか・・・、試してみようじゃないか。」
「望むところだ。」
ククリは杖を構え、呪術で飽食の魔王を呼び出した。
「いきなり大技だな。」
地面を割って飛び出てくる飽食の魔王に、グリムは体から死霊の群れを放った。
飽食の魔王の大口に溢れんばかりの死霊が飛び込んでいき、その大群を喰らった魔王はもがき苦しみ出して内部から破裂してしまった。
「やるじゃないか・・・。」
杖を前に出し、右手の指で印を結ぶククリ。緑の波状の魔力が杖の先端から繰り出され、グリムの周りに呪殺の魔法陣が幾つも浮かび上がる。
「チッ!」
舌打ちして呪術を解除しようと魔法を唱えるグリムだったが、魔法陣の中に現れた悪魔の顔が不気味な笑い声を出して動きを止めてしまった。
「むんッ!」
ククリのかけ声とともに魔法陣が紫の炎で燃え上がり、悪魔がおぞましい叫び声をあげてグリムの体にしがみついてきた。
「オオオオオオオオオーーッ!」
苦痛の声を吐き出し、しがみついた悪魔がグリムの体を地獄へと引きずり込んでいく。
「ぬううう・・・この程度で・・・!」
抵抗するグリムだったが、その体は悪魔達によって完全に地獄へと引き込まれていった。
「・・・やったか?」
杖を下ろして辺りの気を窺うククリ。完全にグリムの気が消え去ったことを確認して、亜空間を去ろうとした。
「ッ!」
油断していたククリの背中に激痛が走った。
血を垂らし、膝をついて振り返ると、グリムの爪が背中を引き裂いていた。
「馬鹿な・・・完全に地獄に引き込んだはずなのに・・・。」
冷や汗を流して苦痛に顔を歪めるククリに、グリムは身体の死霊を解き放った。
「うおおおおおッ!」
体内に侵入した死霊が暴れまわり、ククリを痛めつけいく。
転げ回るククリの頭を踏みつけ、グリムは血の付いた爪を舐めた。
「あの程度の呪術じゃ俺を地獄へ送れないよ。こいつらが身代わりになってくれるからね。」
そう言って自分の身体に蠢く死霊達を撫で回した。
右手の五本の爪を剣のように伸ばし、死霊で苦しむククリに突き刺す。
「ぐはあッ!」
血を吐いて身を捩るククリ。
グリムは刺した爪から毒を注入し、ククリの神経を麻痺させた。
「・・・・ッ!」
爪を刺したまま、グリムは下品に笑って頭を蹴った。
「あれれ?お前ってこんなもんだったっけ?
俺の知ってるククリはもっと強かったはずなんだけど・・・。」
二発、三発と頭を蹴り飛ばし、血を吐く姿を見てグリムは楽しんでいた。
「あの時もこんな感じだったよなあ?」
爪を引き抜き、ククリの髪を掴んで持ち上げ、笑みを浮かべた顔を近づけるグリム。
「フレイが魔導協会を強襲してきた日、俺はどさくさに紛れてお前の家を襲った。
お前さえいなくなりゃ俺がマリオン大師の右腕になれると思ったからな。
さすがのククリも、家族と居る所をいきなり襲われては何も出来なかったよなあ。
俺にやられて動けなくって、目の前で嫁とガキ共の泣き叫ぶ声を聞きながらお前は叫んでたっけ。」
爪をククリの頬に当て、ゆっくりと裂きながらグリムは恍惚と目を細めた。
「最高だったぜえ、お前の嫁は。旦那の目の前で服を引き裂かれて犯されまくって。
叫び声と喘ぎ声が入り混じって、お前も正直興奮してたりして、はははははは!」
ククリは歯を食いしばり、鬼神の形相で家族の仇を睨みつけた。
「そうそう、ガキ共も傑作だったなあ。柱に磔にしてこの爪で少しずつ刻んでいってよお。
『痛いよ、痛いよ、助けてよお父さん』って、馬鹿じゃねえの!
そのお父さんのせいでこんな目に遭ってんるんだっての!
お前の嫁犯してる時も、お前のガキ共を刻んでる時も、最高に気持ち良くて笑えたぜえ!」
抱腹するほどグリムは笑い、ククリの髪を掴んだまま爪で斬りつけていく。
「あの時フレイがお前の叫び声を聞きつけて駆け込んできて・・・。
危うく俺は奴に真っ二つにされるところだった。」
笑いの表情が怒りの形相に変わり、グリムは五本の爪をククリの額に突き付けた。
「奴にはいつも肝心なところで邪魔される。下らねえ正義感振りかざしてな。
俺はあの手の奴が反吐が出るほど嫌いだ。
あいつの弟子だった奴が今頃闘っているだろうけど・・・あのグエンって若造じゃ勝ち目はないな。
いくら力があろうが中身は思い上がった甘ったれ小僧だからな、フレイはその隙を見逃すまいよ。」
二人の闘いの場面を想像するように、グリムは遠くへ目を向けた。
「しかしだ、今の俺ならフレイにもひけをとらない。もしこちらが不利になっても、あのジョシュとかいうガキを人質にとれば済むことさ。奴は情に脆いからな。」
爪を突き付けられたククリの額から血が流れる。
「どうせならあの時みたいにまたお前の目の前でいたぶってやろうか?
家族を失い、せっかく出来た仲間もまた同じ目に遭わされる。
最高の演出だぜえ!はははははははは!」
黙って聞いていたククリが、額に当てられた爪を掴んだ。
「言いたいことはそれだけか・・・。」
「ああ?」
「言いたいことは・・・それだけかと聞いている!」
ククリの体から腐敗の気が放たれ、掴んでいた爪を溶かしていった。
そして染みが広がるようにグリムの体を浸食していく。
「くッ!小賢しいことを・・・。」
腐り始めた右手を自分で斬り落とし、グリムは危険を感じて距離を取った。
ククリの中に大きな陰の気が溜まっていき、それに呼応するように足元から地獄の悪魔達が溢れ出て来た。
「グオオオオオオオッ!」
禍々しい姿の悪魔達は聞くだけで絶命するような恐怖の雄叫びを上げた。
「おお、これこそ俺の知っているククリだ・・・。」
そう言ってゴクリと唾を飲むグリム。
「俺の名は死神ククリ。苦痛と災いをもたらす異形の魔導士・・・。
今は人の理を捨て、悪魔の化身とならん・・・。」
素早く右手を再生させて、グリムは両手で印を結んで後ろへ飛んだ。
「ふふふ、やはりお前は死神の名に相応しい男だよ。
普通の人間ならこの光景を見ただけで恐怖のあまり発狂するだろうな。
しかし言ったはずだ。俺も古代魔法の力を得たと!」
印を結んだグリムの前に呪いの文字が浮かび上がり、ヒビ割れた地面から数え切れない程の怨霊が苦痛の声とともに溢れ出てきた。
ククリの前には悪魔達が、グリムの前には怨霊達が集まり、やがて一つの巨大な悪魔と悪霊へと変化していった。
「見よ!これぞ悪霊達の王、恐怖の化身レギオンだ!」
グリムの頭上におぞましい姿の巨大な悪霊が現れた。
吐き気を催すような腐敗した無数の顔が連なっており、各々の顔が苦痛の言葉を叫んでいる。
普通の人間ならば見るだけで命を落とすほど凶悪な瘴気を放ち、アメーバのように体が歪み、無数の顔が浮かび上がっては潰れていく。
そしてククリの前にも巨大な悪魔が姿を現していた。
「我が名はアスモデウス!古代の石柱に刻まれし七十二の悪魔の一人なり!
術者との盟約に従い、敵を汚し、蹂躙し、喰らい尽くさん!」
人間、山羊、馬、獅子の四つの頭を持ち、悪魔の翼が生えた魔獣の身体。
それぞれの頭が息を吐く度に、地面が腐敗の瘴気で溶けていく。
「ふふふ、古代の魔王か・・・面白い。
レギオンよ!欲望のままに敵を飲み込み、喰らい尽くせ!」
「ヴォオオオウヴヴヴオオオーッ!」
レギオンが禍々しい声を上げて迫って来る。
「古代の魔王よ!術者の命に従い、我らの敵となるものを討ち滅ぼせ!」
「オオオオオウウーッ!」
アスモデウスも雄叫びを上げてレギオンを迎え撃った。
最凶の悪霊と古代の魔王が絶叫を響かせて激突した。
「ヴオオオオオオオオオッ!」
アスモデウスの四つの頭が悪霊を喰らい始めた。大木のように太い腕と剣のような爪で敵を引き裂き、悪霊の中に体を突っ込んで中から喰らい尽くそうとしている。
「ヴォオオウヴェアアアーッ!」
レギオンもアメーバのよう体でアスモデウスを包み込み、皮膚を剥がして食っている。
「ヌウウウウンッ!」
「オオオオオオッ!」
ククリとグリムがそれぞれの化け物に魔力を注ぎ込む。
わずかにククリの魔力が勝り、巨大化したアスモデウスが大口を開けてレギオンの身体の半分を飲み込んだ。
死霊が飛び散り、魔王がそれを踏み潰し、喉を震わせて次々とレギオンの体を裂いて口に運んでいく。
どんどん小さくなっていくレギオンは、もはや消滅寸前であった。
「やはり古代の魔王の力は半端じゃないな。」
感心したようにグリムが言い、しかし余裕のある笑みで両手を振りかざした。
「だがここは俺の空間!この結界の中では俺は無敵に近いと知るがいい!」
グリムが雄叫びを上げると、大地のヒビからまたもや大量の悪霊が溢れだして来た。
悪霊達はレギオンと融合し、消滅しかかっていた身体を瞬く間に再生させていった。
「もっとだ!もっと来いッ!」
次々に溢れて来る悪霊を吸収し、レギオンはアスモデウスの倍以上に巨大化していった。
「ヴウウウヴェアアアアーッ!」
恐怖を呼び起こす咆哮が空気を震わせ、さらにおぞましさを増したドス黒い身体でレギオンが迫ってくる。
アスモデウスも雄叫びを上げて迎え撃つが、レギオンの巨大さと瘴気に飲み込まれて姿が見えなくなってしまった。
気持ちの悪い音を出して体内のアスモデウスを消化するレギオン。
古代の魔王は圧倒的な悪霊の力にもがき苦しんでいた。
「ヴウウウウウオオオオーッ!」
苦痛の叫び声を上げるアスモデウス。
かつて世界を震撼させた七十二人の魔王の一人が、凶悪な悪霊に汚され、蝕まれ、蹂躙されていた。
「ヴヴヴヴウウウ・・・・。」
か細く聞こえていたアスモデウスの叫び声は、やがて終末を迎えた蝉のように静かに消えていった。
レギオンの体内には骨だけとなったアスモデウスが残り、死霊どもがその骨に群がって次々に食い尽くしていった。
「はははははは!古代の魔王も意外と大したことないな!
悪を統べる魔王が悪霊に蹂躙されてちゃ世話ないぜ!」
目の前の敵を喰い滅ぼしたレギオンは、次なる標的に向けて迫って行った。
「ククリよ、これで終わりだ!お前も魔王と同様に悪霊どもに汚され、食い尽くされるがいいッ!」
両手を前に突き出し、グリムが邪悪なエネルギーを注いだ。
「ゴオオオオヴヴヴウウウヴェアアアッ!」
「・・・・・・・。」
杖を構えるククリの身体を、レギオンはあっさりと飲み込んでしまった。
「ははははは!一瞬で消滅しちまいやがった!」
腹を抱えて笑い、グリムはレギオンに命じた。
「おい!奴の魂は俺がいたぶってやる!食うんじゃねえぞ。」
レギオンの体内に飛び込み、死霊達が群がる場所へと進んで行く。
「どけどけ!そいつは俺のオモチャだ!」
群がる死霊を踏み潰し、中に手を入れてククリの魂を探る。
「んん〜、どこだあ〜?」
嬉しそうに死霊の中を探っていると、突然その腕を掴まれた。
「ッ!」
慌てて引き抜こうとするグリムだったが、凄まじい力にビクともしなかった。
「てめえッ!生きてやがるのかッ?」
死霊の群れをかき分けてククリが姿を現した。
「驕るなよ!たかが悪霊ごときが死神を殺れると思っているのかッ?」
「このおおおおッ!」
必死の形相で逃げようともがくグリム。
ククリは杖を振りかざし、持てる魔力の全てを注いだ。
「来たれッ!東洋の怨霊どもよ!我が敵を存分に喰らい尽くすがいいッ!」
「ま、まずいッ!この魔法は!」
自分の腕を引き千切り、グリムはレギオンの外へと逃れた。
「我が奥義をもって真の恐怖を味わうがいいッ!」
杖を大地に突き刺し、ククリは叫んだ。
「くらえええええいッ!骸の宴!」
大地に刺さった杖の先から東洋の呪殺文字が広がり、亜空間に広がっていく。
紫の炎が燃え上がり、ククリの足元から東洋の怨霊が大量に湧き出て来た。
「エエエエエエエエヴヴヴヴウウウッ!」
巨大な髑髏に腹を空かした餓鬼、腐り果てた鬼に恐ろしい顔をした呪縛霊、転生に失敗した妖怪や苦悶の表情の浮かべる亡者。
東洋の地獄より溢れてくる化け物達がグリムの亜空間を満たしていく。
あまりの憎悪に、悪霊の王であるレギオンが恐怖の声を上げる。
歓喜の声を上げながら暴れ回る東洋の怨霊達は、悲鳴を上げて逃げ惑うレギオンを追いかけ回し、引き千切り、かぶりつき、叩き潰し、酒池肉林の様相で喰らっていった。
そして小さな叫びを上げながら、悪霊の王は東洋の怨霊の腹の中に消えて行った。
グリムの造り出した亜空間はもはや地獄と化していた。
「この化け物どもめえ!」
必死に抵抗し、亜空間から逃れようとするグリムを怨霊達が弄ぶ。
笑いながらグリムの身体を喰いちぎり、美味そうに頬張っていた。
しかし古代魔法の力でグリムの肉体はすぐに再生し、そこをまた食われるという苦痛の連鎖が続いていた。
「ぐおおおおお!痛いいいい!苦しいいいいい!」
のたうち回ってもがくグリムを笑いながら食っていく怨霊達。
「ク、ククリ!頼む、助けてくれッ!俺が悪かった!だから・・・グオオオオッ!」
ククリは冷たい目を向け、ただグリムが苦しむ様を眺めていた。
「お、俺達は同じ釜の飯を食った仲間だろう!頼む、俺は改心する!
だからこの怨霊達を引っ込めてくれえ!ぎゃああああああああッ!」
必死に懇願するグリムの前に歩み寄り、冷徹な顔で見下ろしながらククリは言った。
「断る。」
「・・・・・・ッ!」
苦痛から絶望の表情へと変わり、グリムは顔を歪めてさらに懇願した。
「た、頼むよおおおおッ!一生のお願いだ!俺はマリオンに利用されていただけなんだよ!悪いのはあいつなんだ!な、昔の仲間を見捨てないでくれえええッ!」
地面に爪を立て、地獄に引き込まれるのを必死に抵抗しながら訴えるグリム。
ククリは二コリと微笑んで言った。
「言い訳なら地獄の閻魔に聞いてもらえばいいよ。無駄だろうけどね。」
「・・・・・ッ!」
地面に突き立てていた爪がポキリと折れ、グリムは泣き笑いの顔で地獄へと引きずり込まれていく」。
「グオオオオオオッ!」
一旦は完全に地獄に飲み込まれたものの、鬼の形相で飛び出してきて手を伸ばした。
「てめえも道連れだああああああッ!」
その手はククリの目の前まで迫ってきたが、怨霊達が纏わりついて地獄へと引き戻していく。
「君に死なんて生温いよ。肉体を持ったまま永遠に地獄で苦しむがいい。」
完全に姿が消えたかと思いきや、手だけを伸ばしてもがくグリム。
しかし怨霊がその手を絡め取り、今度こそ地獄へ引きずりこんでいった。
暴れ回っていた怨霊もそれを追うように地獄へと帰って行く。
ククリは普段の顔に戻り、がくりと膝をついて肩を落として項垂れた。
「・・・・・まったく・・・今日は最悪な日だよ。
二度とこの魔法は使うまいと思っていたのに・・・昔の心の傷も抉られるし・・・。」
しばらく茫然と佇み、ただ虚ろな目をしていた。
そして両手でパンッっと顔を叩くと、杖をついて立ち上がった。
「落ち込んでいる場合じゃない。早くジョシュ君達の後を追わないと。」
杖をかざして亜空間を脱出したククリは、「今行くからな。」と呟き、ジョシュ達の元へと駆けて行った。

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