マーシャル・アクター 第十二話 魔導大師マリオン

  • 2014.01.13 Monday
  • 18:53
〜『魔導大師マリオン』〜

フレイ、ククリのタッグチームとマリオン。
そしてジョシュとヨシムラ。
それぞれの間に、戦いの先を取らんとする激しい気のせめぎ合いが起きていた。
「どうした、好戦的なお前らしくもない。早くかかってきたらどうだ?」
マリオンがフレイを挑発する。
「ぬかせ、貴様相手にうかつに飛び込めるか。」
「そうですよ、あなたは相手の裏をかく達人ですからね。
地雷があると分かっている場所をわざと踏みに行く輩はいません。」
二人の慎重な態度を見てマリオンは笑った。
「大きな口を叩いていたわりには消極的だな・・・。
いいだろう・・・こちらから攻めやる・・・。」
マリオンが人差し指を立て、魔力を集中させると灼熱の炎がたちあがった。
もう片方の指にも魔力を集中させ、巨大な氷塊を生み出す。
「まずは小手調べだ・・・。」
二本の指をふっと軽く吹くと、炎は虎に、氷塊は鷲に変わって飛びかかって来た。
「これしきッ!」
氷の鷲を横一閃に斬り払い、その回転を利用して後ろ回し蹴りを放つフレイ。
バキンッ!と氷の砕ける音がして鷲は崩れ落ちた。
しかし崩れ落ちたその場が一瞬にして凍り、フレイは膝の下まで氷で固められてしまった。
「チィッ!」
すかさずマリオンが稲妻を放ち、動きを止められたフレイに追撃を加えた。
「うおおおおおッ!」
オーラを纏った腕を交差させて防御したものの、稲妻は確実にフレイにダメージを与えていた。
「く・・・ッ。やはり強いな・・・。」
ククリも炎の虎の猛攻を冷却魔法で防御していた。
「ふんッ!」
杖の先から吹雪を放ち、虎の動きを止める。
「消えろッ!」
印を結んで氷柱の槍を作り出し、虎に向けて撃ち出した。
「グオオオオオオンッ!」
虎は雄叫びを上げて苦しみ、消滅する寸前に最後のあがきとばかりに爆炎を放った。
灼熱の爆風がククリに襲いかかる。
「まずい!」
自分の体を氷で覆い、火炎は防いだが風圧で吹き飛ばされてしまった。
「痛たた・・・。まったく、よく詠唱を必要とせずにこんな強力な魔法を撃てるな・・・。」
膝をつく二人を見下ろしてマリオンは口元を笑わせている。
「どうした・・・。こんな小手調べで参ったわけではあるまい・・・。」
フレイとククリはゆっくりと立ち上がり、服の汚れをはらった。
「やれやれ・・・前に闘った時とは段違いの力だな。」
「ですね。僕達の知るマリオンのイメージは捨てた方がよさそうだ。」
「ふふふ、ごたくを並べていないでさっさと来い・・・。」
マリオンは手を持ち上げて挑発する。
「ククリ!無駄に長引かせると何が出てくるか分からん。ここで決めるぞッ!」
「ええ、最大の攻撃をもって当たりましょう。」
二人が奥義の構えに入った。
「ふふふ・・・受けて立ってやるぞ。・・・来い!」
フレイ達が戦う少し離れた場所で、ジョシュはヨシムラと睨み合っていた。
「どうしたよ科学者さん?ビビって足が出ないか?」
手を招いて挑発するジョシュ。ヨシムラは剣を向けて余裕の笑みで返した。
「それはあなたの方でしょう。剣の無い剣士など無力に等しいですからな。」
「ほざけ。学者が剣をまともに扱えるかっての。お前なんざ素手で十分だ!」
ジョシュは床を蹴って飛びかかった。右の正拳がヨシムラの顔めがけて放たれる。
「ふん、この程度!」
剣で斬り払おうとするヨシムラだったが、ジョシュの拳は寸前で止まった。
「ばーか、フェイントだっての。」
体を沈ませて、ジョシュはヨシムラの顎に回転蹴りを放った。
「ぐう・・・!」
後退するヨシムラにジョシュの追撃が襲いかかる。
「おらああああ!」
鮮やかなコンビネーションブローがヒットし、身体を曲げたヨシムラにアッパー気味の掌底が決まった。
「ぐぼあッ!」
ヨシムラの体が宙に舞い、握っていた剣が弧を描いて飛んで行く。
音を立てて床に落ち、顎を押さえて憎しみの目を向けてきた。
「はあはあ・・・おのれえええ。この野蛮人めえ・・・。」
よろめきながら立ち上がると、目の前に剣を構えたジョシュが立っていた。
「う・・・。」
息を飲んでヨシムラは後ずさる。
「俺の剣、返してもらったぜ。」
「・・・・・・。」
ヨシムラは震えながら後退し、やがて壁にぶつかって立ち竦んだ。
「な、なぜだ・・・。さっきは圧倒できたのに・・・。」
ジョシュは「ふふん」と鼻を持ち上げて笑う。
「あの時は前をナメてたからだ。
最初からある程度やるってわかってたら、あんな失態は犯さねえよ。」
ジョシュの眼光ヨシムラを射抜き、剣が首に当てられる。
「ま、待ってくれ!」
慌てて膝をつき、ヨシムラは膝をたたんで土下座した。
「私もシーナ君と一緒でマリオンに逆らえないんだ!」
「なにい・・・。」
ヨシムラは顔を上げて救いの目を向ける。
「わ、私もホムンクルスなんだ・・・本物のヨシムラ博士はとうに殺されている。
グリムという魔導士がやったんだ!もちろんマリオンの命令でな。」
「・・・グリム・・・またあの野郎か・・・。」
剣を握るジョシュの手に力が入る。
「私は彼の死体を元に生み出されたただのホムンクルスだ。
マリオンはヨシムラ博士の頭脳だけを欲していたからな・・・。
私は好きで悪さをしたわけじゃない、全てはマリオンの命令なんだ。
だから頼む!殺さないでくれ!ひどい事をしたのは謝る・・・。
だから、だからどうか許してくれ!この通りだ!」
ヨシムラのホムンクルスは手を持ち上げて祈るように懇願する。
ガチガチと震える彼を見て、ジョシュは構えていた剣を下ろした。
「はあ・・・。んなこと言われたら何も出来ねえじゃんか・・・。」
ヨシムラが顔を上げてジョシュを見る。
「じゃ、じゃあ・・・。」
「・・・いいよ、もう。ホムンクルスは生みの親には逆らえないんだろ?
だったら仕方ねえじゃねえか。」
「ああ・・・ああああ。・・・ありがとう、ありがとう!」
祈りのポーズをとったままヨシムラは何度も頭を下げた。
「お前のことをどうするかは師匠やククリさんと相談して決めるよ。
それまでそこで大人しくしてるんだな。」
「も、もちろんだ!大人しくここで座っている。」
短く鼻で息を吐いて、ジョシュはフレイ達の方を振り返った。
「おわあ!すげえ戦いだなこりゃ・・・。
俺が加勢するとかえって足手まといかなあ・・・。」
巨大な力を放って隙を窺う三人を見て、ジョシュは心底感心した。
「あのマリオンってのただ者じゃねえなあ・・・。」
「・・・・・・・・。」
「うん、やっぱここで大人しく見てるか!」
剣を足元に置き、ジョシュはどかっと腰を下ろした。
「・・・・・・・・・・・・。」
完全に力を抜き、三人の戦いを見守るジョシュ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ガキィンッ!という鋭い音が突然響いた。
そしてジョシュの座っていた場所にヨシムラの鉤爪が突き刺さっていた。
「な、消えたッ!」
鉤爪を引き抜き、焦った顔で辺りを見回すヨシムラ。
「クソッ!どこだ!」
そう言って後ろを向いた瞬間、鉤爪は手首から斬り落とされていた。
「・・・・・ッ!な、何だッ?」
パニックを起こすヨシムラの首に、背後からジョシュの剣が当てられた。
「やっぱりクズだな、てめえは・・・。」
ジョシュは怒ったように、そして呆れたように呟く。
「い、いや・・・違うんだこれは・・・。」
ヨシムラの額を冷や汗が流れ落ちた。
「ん、何が違うんだ?」
ジョシュは惚けた顔で尋ねる。
「こ、これもマリオンの命令なんだ!あいつが私の脳に念を送ってきて・・・。
そ、それで君を殺せと言ったんだ!ほんとだよ、信じてくれ!」
「ほう、そうかい・・・。」
必死に訴えるヨシムラに、ジョシュはマリオンの方を指差した。
「あのマリオンって奴、あいつの気は完全に師匠とククリさんに向けられてる。
当然だよな、あの二人相手によそ見してたら一瞬でやられる。
だからさ、こっちに意識を向ける余裕なんてないんだよ・・・。分かる?
まあ素人のお前には気の流れなんて分かんねえか。」
「う・・・ぐ・・・ッ。」
ヨシムラの顔が泣き笑いの表情でだらだらと冷や汗を流し、唇を震わせて俯いた。
「あ、あ、今のは間違いで・・・、そうだ!プログラムされているんだよ!
わ、私の身体はきっと、敵を目の前にすると自動的に闘うプログラムが組み込まれているんだ!そうに違いない!く、くそう・・・マリオンの奴めえ・・・・ッ!」
首に当てられている剣に力が入っていくのを感じ、ヨシムラは怯えた目でジョシュを見上げる。
「まったくよお・・・。よく次から次へとそんな嘘を思いつくなあ・・・。」
「う、嘘じゃない!本当なんだ!信じてく・・・、」
ジョシュの眼光が殺気を増し、ヨシムラはその迫力に気圧されて黙りこむ。
「うるせえよ、お前の屁理屈はもう聞き飽きた。続きはあの世でやってくれ。」
「・・・・・うぐ・・・ぐおおおおおおおッ!」
ヨシムラは雄叫びを上げて鉤爪を振りかざし、ジョシュに襲いかかった。
しかし次の瞬間、ジョシュの剣が音も無く彼の首を斬り落としていた。
ゴロゴロと床を転がって行く頭と、その場に崩れ落ちる胴体。
シーナの時と同様に、ヨシムラは乾いた砂となってさらさらと崩れ去っていった。
剣についた血を払い、ジョシュは砂となったヨシムラを見下ろす。
「向こうに行ったらシーナに伝言頼むわ、生まれ変わったらまた友達になろうってな。
・・・ていうか会うわけねえか。お前は確実に地獄行きだもんな。」
砂となったヨシムラを一瞥して、ジョシュはフレイ達の方に目をやった。
「くそ・・・!やっぱ生身じゃこの戦いには参戦出来ねえな・・・。
マーシャル・スーツさえ発動すりゃあ助太刀出来るのに。
・・・・・そういやマリオンが言ってたマーシャル・アクターって何なんだ?
俺はまだ未熟だとかなんとか言ってたけど、こいつを操るには俺にはまだ足りない何かがあるってことなのか・・・?」
しばらく考え込むジョシュだったが、すぐに表情を切り替えて顔を上げた。
「いや、今はそんなことより大事なことがあるじゃねえか。」
そう言って顔を上げ、女神像の方に駆けて行った。

           *

マリオン、フレイ、ククリの三人の間には巨大な気がぶつかり合って大きな渦が出来ていた。
いつでも奥義を撃てるフレイとククリだったが、マリオンの気が二人に牽制をかけていた。
「どうした・・・、見合っていないでさっさと来い・・・。」
迂闊に攻撃すればカウンターを喰らうことは必至で、フレイはなんとか隙を見つけ出そうと気の流れを窺っていた。
しかしマリオンの気に死角はなく、フレイはククリに目配せをした。
ククリは小さく頷き、杖の先をマリオンに向ける。
紫の炎が杖の周りに燃え上がり、地面を伝ってマリオンの足元へと伸びて行った。
「ふん、この程度の呪術で何をするつもりだ?」
マリオンは指先から光を放ち、いとも簡単に紫の炎を消し去った。
しかし背後に殺気を感じて振り返ると、東洋の呪術文字が浮かび上がり、強力な邪気を発していた。
ククリは印を結んで呪術を唱え、魔力を込めて杖を振り上げた。
「なんと・・・!」
マリオンの背後から棍棒を握った巨大な鬼が現れた。
「なるほど・・・さっきのは囮か・・・。」
鬼の金棒を片手で受け止めると、心臓に指をつき刺して一瞬のうちに燃やし尽くしてしまった。
「ふん、この程度の召喚術で何をしようというのだ?これならまだシーナの方が・・・・。」
そう言いかけた次の瞬間、フレイの剣がマリオンの首元まで迫っていた。
「見え見えだな・・・。」
余裕の笑みでフレイの剣も片手を受け止めると、そのまま電撃を放った。
「ぐおおおおおおッ!」
マリオンの電撃を受けて床に崩れ落ちるフレイ。
しかし頭上からククリの魔力を感じ、もう片方の手で念動力のシールドを張った。
「うおおおおおッ!」
ククリは渾身の力で杖を突き刺し、魔力を集中させてシールドを貫いた。
「ふふ・・・残念。ここまで届いていないぞ・・・。」
額の寸前で止まった杖を指で弾き、マリオンはニヤリと笑う。
「いや、先だけ突き刺されば十分だ!」
するとククリの杖の先に渦巻く穴が出現し、怨霊が溢れてきてマリオンの体に纏わりついた。
「なめているのか?こんな雑魚でなにが出来る・・・?」
「一瞬でも隙が出来ればそれでいいッ!」
オーラを放って電撃を吹き飛ばし、フレイが素早く立ち上がって斬り込んだ。
「なめるな!」
目を光らせて衝撃波を放とうとするマリオン。しかしククリがそれを許さなかった。
「させるか!」
ククリの杖から瘴気が溢れてマリオンの力を吸い取っていく。
「殺ったッ!」
フレイの剣はマリオンを頭から斬り下ろし、彼女の身体を真っ二つに切り裂いていた。
「・・・・・ぐッ!」
身体を裂かれてもなお生きているマリオンは、傷口から白い糸を伸ばして再生しようとする。
「させるか!」
フレイが身を低くして剣を構える。
「ゆくぞククリ!」
「ええ、これで終わりです!」
ククリの杖から放たれた吹雪が、瞬く間にマリオンの身体を凍らせていく。
すかさずフレイがVの字を描いて剣を振った。
「くらえい!飛燕の太刀ッ!」
湾曲した剣閃が走り、凍ったマリオンの身体が切り裂かれる。
四つに分断されたマリオンが、氷の塊となって床に崩れ落ちていく。
「これはおまけですよ!」
ククリは杖を回転させて空間を歪ませ、亜空間へと繋がる歪みの中へマリオンの身体を吸い込ませた。
フレイは剣を構え直してマリオンの気を窺う。
「・・・・、ふむ。奴の気は完全に消えたな。終わりだ。」
そう言って剣を収めて安堵の表情を見せる。
「ふう・・・見事に連携が決まってよかったですね。
あそこまでやれば復活することはないでしょう。」
二人は顔を見合わせて頷いた。
「さて、小僧はどうなったか・・・。まさかあの程度の雑魚にはやられんだろうが。」
フレイは部屋を見渡して呟く。
「彼なら心配ないですよ。あなたが直々に鍛えたんですから。」
ククリは踵を返し、悲しみの表情でシーナの元へ向かった。
「シーナ・・・。」
砂になった彼女を手に取り、悲しみの目を向けるククリ。
「僕はまた、大切な者を守れなかったな・・・。
情けないにもほどがあるよ・・・まったく・・・。」
ククリの手からさらさらと砂がこぼれ落ちていく。
「ククリ、お前も弟子を失ってしまうとは・・・・・。」
ククリの後ろに立ち、フレイは哀悼の意を捧げて黙祷した。
そんなフレイを見てククリは目を見開いて驚き、震える声で尋ねた。
「僕も?まさか六部衆は・・・・・。」
「死んだよ、全員な。そしてかつての弟子もこの手にかけてしまった・・・。
剣聖などと呼ばれているが・・・・情けない師であるのは俺も一緒だ・・・。」
「・・・・・・。」
しばらくの沈黙のあと、フレイは顔を上げた。
「だが今は感傷に浸っている時ではない・・・。これ以上弟子を失わなない為にもな。
あの小僧の妹はここにいるはずだ。なんとしても無事に救い出さねば。」
惜しむように握った砂を落とし、ククリは何も無くなった手の中をじっと見つめた。
「そうですね。あの子も僕の大切な弟子・・・いや、家族だ・・・。」
フレイは頷き、ジョシュの名を呼んだ。
「小僧ッ!どこだッ?あんな雑魚にやられたなど許さんぞ!返事をしろッ!」
フレイの声が反響し、それに被せるようにジョシュの声が返ってきた。
「ここ、ここ、ここっすよ!」
二人が声の方に目をやると、ジョシュは女神像の胸元にいた。
「この像の胸元にレインがいるんです!でも身体が半分埋まってて・・・。」
「そうか!すぐに行くから待っていろ!」
颯爽と駆け出し、フレイは巨大な女神像の胸元まで一足で飛び上がった。
「レイン・・・君はいつか自分の中にある孤独が怖いと言っていたね。
けど大丈夫さ。僕も、あの二人も君を一人になんかさせやしない。」
何とかレインを助けようとする二人を見て、ククリは濡れる目尻を拭った。
「これは力でどうにかなるものではないな・・・。」
埋め込まれたレインの身体を見てフレイは言った。
「そうっすね・・・何か魔法的な処理がしてある感じもするし・・・。」
「ふむ・・・・・。無理は控えるべきか・・・。」
フレイは立ち上がり、佇むククリを怒鳴りつけた。
「ククリッ!いつまでそんな顔をしているッ!さっさと手を貸せ!」
フレイの呼び掛けに顔を上げ、ククリは小さく笑って頷いた。
「ええ、今いきます。」
そしてレインの元に駆け出そうとした時、誰かがククリの袖を引っ張った。
「ッ?」
身構えて振り向くククリだったが、目の前に立つ人物を見て思わず息を飲んだ。
「シーナ・・・・・。」
そこには砂となって崩れ落ちたはずのシーナが立っていた。
「先生・・・私・・・。」
真っすぐにククリを見つめ、シーナは杖を握る手にぎゅっと力を入れた。
気が付けばククリは彼女を抱きしめていた。
「シーナ・・・どうして・・・?いや、そんなことことより・・・すまない・・・。
さぞ怖かったろうに・・・。守ってやれなくて・・・ほんとうにすまない・・・。」
「先生・・・。」
シーナはククリの背中に手を回して強く抱きついた。
「マリオン大使が・・・生き返らせてくれたみたいです・・・。
なぜだかわからないけど・・・でも・・・また先生に会えてよかった・・・。」
「シーナ・・・大丈夫だ・・・。もう二度とこんな目に遭わせたりしない・・・。
僕が必ず守ってやる!愛しい弟子をこれ以上誰にも傷付けさせやしない!。」
死神の目からこぼれる涙が、震えるシーナの肩を濡らしていった。
ジョシュとフレイはそんなことも知らずに、レインを助けようと悪戦苦闘していた。
「くそう・・・。やっぱオーラの力じゃ無理か・・・。」
「だな・・・。お前の言う通り魔法的な力が加わっているのだろう・・・・。
ククリの馬鹿はいつまで感傷に浸っているつもりだ?自分の弟子のことであろうに。」
フレイは焦れながらククリに呼びかけようと立ち上がった。
「おいククリ!いつまでしょげて・・・・・・ッ!」
目を見開いて固まったフレイを見て、ジョシュも立ち上がった。
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
「どうしたんすか?」
ジョシュはフレイの視線の先を追った。
「ッ!」
二人は絶句して立ち尽くした。そこには血を流して倒れているククリがいた。
事態が把握出来ずにしばらく固まっていたが、やがて弾かれたようにジョシュが飛びだした。
「ククリさんッ!」
「待てッ!」
フレイが腕を掴んで引き止める。
「俺が行く・・・。お前は妹を見ていろッ!」
フレイは剣に手をかけて飛び上がった。
次の瞬間、雷鳴を響かせて稲妻が走り、フレイは煙を上げながら床に落ちていった。
「師匠ッ!」
ジョシュは剣を掴んで飛び出そうとしたが、背後に異様な気を感じて振り返った。
そして自分の目に飛び込んできたものを疑い、まばたきをして立ち竦んだ。
「な・・・なんで?どういうことだ・・・?」
女神像の頭の上にシーナが立っていた。
一瞬パニックになり、ジョシュは言葉が出て来なかった。
しかしすぐに彼女の纏う気に違和感を覚えて剣を構えた。
「・・・お前。シーナじゃねえな・・・。」
「ふふふ、鋭いじゃないか。ククリよりよほど見込みがあるかもしれんな・・・。」
シーナは不敵な笑みでジョシュに杖を向けた。
「・・・マリオンか?」
「ふむ、とっさに私の名前が出てくるか。さすがはフレイの弟子よな。」
ジョシュは倒れるククリに目をやった。
「ククリさんをやったのはお前か・・・?」
「ああ・・・。シーナの姿を見たら飛びついてきた・・・。
気を探ればすぐに私とわかったものを・・・相変わらず甘い奴よ・・・。」
「てめえ!シーナの身体を利用して騙し討ちしたのか!」
その言葉にマリオンは可笑しそうに笑い、胸に手を当てた。
「そうだ。このマリオンにとって肉体の死など関係ない・・・。
魂さえ無事なら何度でも蘇ってくるさ・・・。」
「・・・ゾンビもびっくりの化け物だな・・・。」
マリオンはジョシュの目の前に飛び下り、すぐ傍まで歩いていった。
「どうした?お前の剣の間合いだぞ。斬らんのか?」
無防備に手を広げて挑発するマリオン。ジョシュは剣を構え直して睨みつけた。
「望み通りやってやらあッ!」
首にめがけて剣を振り下ろすジョシュだったが、突然その動きが止まり、剣を握る手が震えていた。
「どうした?斬れ。」
「う・・・・・ぐ・・・・ッ。」
歯を食いしばって力を入れるが、これ以上剣を振り下ろすことを身体が拒否していた。
「シーナの身体は斬れんか・・・?」
マリオンが挑発的な顔で言う。
ジョシュの剣はカタカタと震えるばかりで、一ミリも動かすことが出来なかった。
「やはりまだ子供よな・・・。そのような甘さでは、例えマーシャル・スーツを発動させても私に勝ち目はないぞ!」
人差し指をジョシュの額に突きつけ、マリオンはニヤリと笑った。
指先から衝撃波が放たれ、ジョシュの身体は吹き飛ばされて壁に激突し、糸の切れた人形のように床に落ちていった。
マリオンは眼下に倒れる三人を無表情で眺めていた。
そして興味を失くしたように背を向け、レインの元に膝を下ろした。
「ふふふ、皆お前には手が届かなかったようだ・・・。愛する兄も、その兄の師も、そして恩あるお前の師も・・・。しかしこれは残念なことではない・・・。
お前はすぐに訪れる新時代の神となるのだから・・・。
私はその手足となって働いたに過ぎない・・・。
お前が神として目覚めた暁には、この私さえ不要なのだ・・・。」
マリオンの言葉を聞き、閉じたレインの目から涙が一筋こぼれ落ちた。
「悲しむことはないぞ。お前の愛する兄の魂はその身体の中に住まわせてやる・・・。
永遠に一緒にいられるのだ・・・喜べ・・・。」
マリオンは立ち上がり、女神像の上で両手を広げた。
「これより全てが変わるのだ!世の理も、人の在り方も、そして魔導の意義も。
この世界そのものが新しく生まれ変わるのだ!
科学、武術、現代の脆弱な魔法。
その全てが必要ない!
真なる力が世界を満たし、この宇宙の真理を体現する一端となる!
魔導とは、真なるものを求め、導く奥義なり!」
傷つき倒れた戦士達の背中に、虚しくマリオンの声が降り注いでいた。

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