竜人戦記 番外編 クロス・ワールド(6)

  • 2014.01.16 Thursday
  • 19:42
「ぬうん!」
「おおおおう!」
竜人の里の中で、ウェインと魔人が激しい戦いを繰り広げている。
ウェインの大剣が竜巻のように魔人を斬りつける。そして魔人の鋭い爪がウェインを抉ろうとする。
硬い音が響いて両者の攻撃が激突し、眩い火花を散らしていた。
「ウェイン・・・。」
小川の傍まで駆けつけたケイトは、祈るような形で手を握る。
一年前に繰り広げられた竜人と魔人の戦いが、再び目の前で起こっている。
それはケイトの胸を不安で締めつけ、暗い闇の中へ落としていく。
「すごい戦いね・・・。私の入る隙間なんてなさそうだわ・・・。」
隣に立つクレアが息を飲んで戦いを見守る。
「ここでじっとしてた方がいいと思うわ。下手に手を出せば、かえって足手まといになるから。」
ケイトの言葉に頷き、それでもクレアの闘志は衰えない。
「ねえ、トリスって人の家に案内して。銃を取って来なきゃ。」
「ダメよ!下手に戦いに加われば、きっと魔人に殺されちゃうわ。」
「・・・それでもいいわ。じっとしているくらいなら、戦って死んだ方がマシよ。
さあ、トリスの家に案内してちょうだい!」
「クレア・・・・。」
クレアの透き通った青い瞳が、ケイトの胸に突き刺さる。
「・・・分かった。その代わり私も一緒に戦う!こう見えたって、一年前は戦いの旅をして・・・・、」
そう言いかけた時、クレアがケイトを押し倒した。
「危ないッ!」
次の瞬間、二人の頭上に黒い炎弾が駆け抜けていき、大木にぶつかって爆発を起こした。
「・・・すごい威力・・。でも、怖気づいていられないわ!」
クレアはケイトの手を引いて立ち上がり、木立の中へ続く道を走り出した。
「確かこの先だったわよね?」
「うん・・・。でも、やっぱりやめた方が・・・。」
「いいえ、戦うと決めたら戦うの。私は国を守る軍人なんだから、ここであいつを倒さないと・・・。
祖国は魔物に蹂躙されてしまう。」
クレアの声は鬼気迫っていた。ケイトは躊躇いながら頷き、先を走ってトリスの家に案内していった。


                   *

「ははははは!ウェインよ!久しぶりだな!」
「バース・・・。確か地獄に封印したはずだが、なぜ戻って来た?」
ウェインは大剣を斬りつけながら尋ねる。魔人は剣のような爪で受け止め、頭突きをかましてウェインを弾き飛ばした。
「俺の本体は地獄にいるさ。いうなれば、俺は本体の分身、影のような存在だ。」
「やはりそうか・・・。もし俺に負けた時のことを考えて、保険をかけておいたわけだ。」
「その通り。本体の魂の一部を切り離し、深い闇の祠に隠しておいた。
そして時を見て復活し、力を求めて異界へ旅立ったわけだ!」
魔人は両手をかざし、黒い稲妻を放って奈落の穴を呼び出す。
「ふふふ、分身だからといって力が衰えたわけではないぞ!
一年のうちに力を蓄え、そして異界にで新たな力を手に入れた。
それをお前にも見せてやろう!」
奈落の穴から風が吹き、かまいたちとなってウェインに襲いかかる
「この程度!ぬうん!」
大剣の一振りでかまいたちを斬り払い、地面を蹴って魔人に距離を詰めて行く。
「喰らえい!」
ウェインは身体を回転させ、灼熱の業火を纏った刃で斬りつけようとする。
しかし奈落の穴から現れた何者かがそれを防ぎ、金属同士がぶつかる硬い音が響いた。
「俺の剣を弾いた・・・?どんな魔物だ?」
「ふふふ、魔物じゃない。機械兵器、ロボットというやつさ。」
「ロボット・・・?」
奈落の穴からは金属で出来た大きな腕が覗いていて、その後ろから機械で造られた巨人が現れた。
「こいつは・・・・。初めて見る魔物だ。」
「何度も言わせるな、これは魔物ではない。異界の世界において科学と呼ばれるものが生み出した、殺戮兵器だ。
この世界で言うならゴーレムに近いかもしれんが、戦闘力はケタ違いだぞ。」
大きなロボットは三つの赤い目を光らせ、鈍く光るグレーの身体を動かした。そして肩の辺りから砲身が現れて、ウェインにめがけて砲弾を放つ。
「うおおおおおおおお!」
雷のような轟音が響き、ウェインの立っていた場所が大爆発を起こす。
「ふふふ、どうだ?素晴らしいだろう?まだまだ隠された武器があるぞ、ほら。」
魔人が指を鳴らすと、ロボットの胸が左右に開き、巨大なガトリングガンが伸びてきた。
「・・・・・くうう・・・。」
ウェインは膝をつきながら立ち上がり、大剣を構えた。
「確かに大した威力の攻撃だが、俺の身体は貫けん!」
「じゃあもっと試してやろう。おい、やれ!」
魔人が命令すると、胸のガトリングガンが火を吹いた。
「ぬおおおおおおおおおお!」
音速に等しい弾丸が嵐のように襲いかかり、ウェインを追い詰めて行く。
「ははははは!さすがウェイン、全ての弾丸を弾き返すとは!しかしこならどうだ」
今度はロボットの足と腕のハッチが開き、小型のミサイルが撃ち出される。
ウェインは高く飛び上がって回避するが、ミサイルは軌道を変えて追いかけて来た。
「これは・・・敵を追従するのか!」
「そうだ。ロックオンすればどこまでも追いかけるぞ。」
「クソッ・・・・。」
迫りくるミサイルを身体をひねってかわし、すれ違いざまに斬りつける。
すると凄まじい爆発が起きて、ウェインを空高く吹き飛ばした。
「ぐあああああああああ!」
「まだまだ!もっとミサイルを打ち込んでやれい!」
ロボットからありったけのミサイルが放たれ、宙を舞うウェインに直撃する。
「うおおおおおおおおおおおお!」
上空で巨大な爆発が起き、熱風と爆音が竜人の里に襲いかかる。
森の木々に火がつき、遠くから眺めていた者は爆風に吹き飛ばされた。
「ははははははは!慣れない攻撃に戸惑っているな!まあこんなオモチャにやられるなら、お前はしょせんそれまでだ。
私はやるべきことがあるんで、これで失礼させてもらおう。」
魔人は踵を返し、宙に舞い上がってトリスの家に向かう。
しかし背後に殺気を感じ、反射的に身を逸らした。
すると魔人のすぐ横を光の刃が駆け抜けていき、地面にぶつかって大地を切り裂いた。
「これは・・・ウェインの光刃・・・。まだ反撃する力があったか。」
光の刃は嵐のように降り注ぎ、魔人の身体を切り裂こうとする。
「甘い!こんなものは喰らわんぞ!」
剣のような爪が、鋭い鞭に変化する。それは蛇のようにしなり、迫りくる光の刃を弾き返していった。
しかしロボットの方はガトリングガンで迎撃するも、あっさりと細切れにされてしまった。
「ちッ・・・。しょせんは機械のオモチャか。攻撃はいいが防御がザルだな。」
魔人は悪態をついてロボットを蹴り飛ばし、魔力を高めて上空を睨む。
すると爆発の煙の中から、異形の姿に変化したウェインが現れた。
まるで竜と人が混ざったような顔、そして膨らんだ筋肉に、鱗を纏った硬い皮膚。
「ウェイン・・・本気になったか・・・。」
ウェインは煙の中から舞い降り、大剣に黄金の光を纏わせて魔人に向けた。
「魔人よ、お前の狙いは何だ?何の用があって竜人の里に現れた?」
二人の間に荒野のような乾いた風が吹き抜け、殺気がぶつかって緊張感が高まっていく。
「ふふふ・・・。敵にそれを尋ねられて、分かりましたと答える馬鹿がいると思うか?」
魔人は肩を竦め、お手上げのジェスチャーで苦笑いする。
「・・・何となくだが、想像はついている。この里に眠る竜王の石像が狙いだろう?
あれは今でも大きな気を宿しているから、それを利用してお前の本体を地獄から復活させるつもりなんだろう?」
魔人は何も答えず、高い鼻をポリポリと掻いた。
「お前がこだわりを持っているのは、この世界だけだ。だから異界で力を蓄え、再びこっちに戻ってきた。
本来の目的である、この世界を地獄に変える使命の為に!」
ウェインの声は高らかに響き渡る。魔人は口元を押さえてクスクスと笑い、「そうだよ」と頷く。
「異界は面白い場所だが、精神的、霊的な価値は低い。私はあんな児戯に等しい世界に用はない。
だから・・・やはりこの世界だ。この世界こそを地獄に変え、我が主、魔王の復活を叶えてみせる!
その為には・・・ウェインよ、やはりお前は邪魔になる存在だ。
一年越しの決着、ここで着けさせてもらおうか!」
魔人の顔が鬼神のように凶悪に歪み、黒い身体がミチミチと音を立てて筋骨隆々となっていく。
そして禍々しい黒い息を吐き、目を紫に輝かせて雄叫びを上げた。
「ウェインよ・・・おそらくこれが俺の最後の戦いとなる。
もしここでお前に討たれれば、もう後はないからな・・・。
だから・・・この魂を懸けて貴様を殺す!」
魔人の邪気が一気に膨らみ、大気を揺らして振動する。あまりの邪気に森の鳥達が逃げていき、川の魚も狂ったように恐怖に怯える。
ウェインは黄金の光で身体をつつみ、ガチャリと剣を鳴らして刃を立てた。
「望むところだ。今日ここで、お前を跡かたも無く消し去ってやる!行くぞ!」
「来い!嬲り殺してやる!」
ウェインの放った光の刃と、魔人の放った黒い炎弾が激突し、ミサイルの乱射よりも凄まじい爆発が起こる。
大地は地震のように揺れ、大気に舞う原始の精霊が怯えて逃げていく。
二人は激しい爆炎に飛び込み、剣と拳を交差させて激闘を繰り広げる。
ウェインの鋭い一太刀と、魔人の黒い稲妻がぶつかって火花が上がる。
しかし両者は退かない。さらに前に出て一撃必殺の攻撃を繰り出し、目にも止まらぬ速さで攻防を続ける。
そして一瞬の隙をついて、ウェインの剣が魔人の腕を斬り落とした。
「ぬうう・・・・前より鋭くなっているな。ならば!」
魔人は呪いの吐息を吹きかけ、ウェインの目をくらます。
そして再び奈落の穴を呼び出し、得意の召喚術を唱えた。
「来い、、魔獣と竜のゾンビよ!憎き竜人を噛み砕けえい!」
奈落の穴からドロドロに腐敗したケルベロスと竜が現れ、おぞましい叫び声を上げてウェインを睨みつけた。
「ドラゴンゾンビと、ケルベロスのゾンビか・・・。お前にはお似合いの召喚獣だな。」
ウェインは皮肉交じりに笑う。
「何とでも言え。こちつらはゾンビでありながら、高い戦闘力と素早い動きを持っている。
いくらお前でも、私の相手をしながら完全に捌くことは無理だ!」
魔人は身体じゅうから鋭い刃を伸ばし、爪を巨大な鉈に変えていく。
「いくら雑魚を呼び出そうと、俺には通用せん!いくぞ!」
ウィンは大剣を振り上げて二匹のゾンビに挑む。
しかし何かがドラゴンゾンビの頭を撃ち抜き、思わず後ずさった。
「誰だ!」
魔人は目をつり上げて回りを見渡す。すると銃を構えたクレアが、金色の髪を風になびかせて立っていた。
「よくも私の世界を!私の恋人や仲間を・・・・。あんたは許さない。絶対に許さないわ!」
「ああ・・・異界の女か。取るにも足らん愚図が。そんなオモチャで何が出来る?」
「あんたの頭に風穴を開けてやるわ!喰らいなさい!」
クレアは引き金に指を掛け、銃弾の嵐をお見舞いする。しかし魔人は豆鉄砲でもくらったように平気な顔をして立っていた。
「ははははは!なんだそれは?ろくに魔法も使えんから、そんなオモチャに頼ることになる!」
「そんな・・・・・。」
クレアは銃を握ったまま後ずさる。すると遅れてきたケイトがクレアの腕を掴んだ。
「ダメよ!もっと下がっていないと!」
「離して!私は死んだっていいの!何も出来ずに終わるくらいなら、戦って死んだ方がいいのよ!」
「そんなのダメ!命を捨てるのと、命を懸けて戦うのは違うわ!そんな投げやりじゃ、亡くなったあなたの仲間だって浮かばれない!」
「じゃあどうしろっていうのよ!」
「ふはははははは!なんだこの喜劇は!」
魔人は馬鹿らしそうに笑い、クレアとケイトを睨みつけた。
「くだらんお友達ごっこは見ていられんな。それに・・・そっちのシスターには見覚えがある。
確かウェインと手を組んで私を追い詰めた女だ。」
「そうよ!一年前、ウェインさんと一緒に戦ったシスターよ。
だから今回だって、私も戦う!」
「そうか、なら今ここで戦い、あっさりとと死ぬがいい。」
魔人はケルベロスゾンビの足をたたき、「やれ!」と合図する。
「グウオオオオオオン!」
「きゃあッ!」
「くッ・・・・・。」
腐敗した巨大な牙が、二人を噛み砕こうと迫りくる。
しかしウェインの大剣がそれを受け止め、弾き返していた。
ケルベロスゾンビの巨大な身体が宙を舞い、頭から地面に激突する。
「バースよ、相手を間違えるな!こいつらに構っている暇があったら、俺に挑んで来い!」
「ふふふ、相変わらず正義感の強い奴だ。まあいい。全員嬲り殺してくれるわ!」
魔人と二匹のゾンビが咆哮を上げて襲いかかってくる。
「俺から離れるなよ!」
ウェインは大剣を一閃して敵の攻撃を全て受け止める。
のどかな竜人の里の静寂を切り裂き、ウェインと魔人の力がぶつかりあった。

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