マーシャル・アクター 第十五話 双子の絆

  • 2014.01.16 Thursday
  • 19:47
〜『双子の絆』〜

「どうなってんだ・・・ここは?レインの精神の中なのか?」
ジョシュは奇妙な風景の中にいた。
森が広がるかと思えば、空には逆さまに街が浮かんでいる。
海が壁のようにそびえ立ち、花咲く野山が川のように連なっている。
パズルのピースを滅茶苦茶に散りばめたような世界は、見ているだけでジョシュの頭を酔わせた。
「これは・・・レインの精神というより記憶なのかな?
なんか見たことのある場所もいくつか混じってるけど・・・。」
ククリにレインの中へと飛ばされ、気がつけばこのような奇妙な場所に立っていた。
「これは・・・幽体ってやつか・・・?」
自分の身体をしげしげと見つめ、普段とまったく違和感がないことを不思議に思っていた。
「まあ細かいことはいいや。とにかくレインの精神の中に入らねえとな。
なんかいくら兄妹とはいえ他人の心の中を覗き見るのは気が引けるけど、緊急事態だから仕方ねえよな。」
この世界の中では空を飛べることに気づき、ジョシュは見覚えのある場所へと順番に降りていった。
そしてそれぞれの場所にはジョシュとレインの思い出となる光景があった。
花かんむりを作った花咲く野山、初めての彼女を助けた海、森の奥には二人の家があり、武術連盟から帰って来たジョシュに抱きつくレインがいた。
立体映像が繰り返し再生されるように、それらの光景は延々とループしていた。
「・・・・・あんまり人の記憶を覗くってのは気持ちのいいもんじゃねえな。」
妙な罪悪感を覚えながらも、ちぐはぐなパズルの世界を飛び回った。
そしてある街に下りた時、見覚えのある顔がいた。
「マリオン!」
咄嗟に身構えるジョシュであったが、すぐに記憶の映像であることに気づいて構えを解いた。
「二度と見たくない顔だけど、記憶の中には生きてんだよな・・・。
そう考えるとなんか腹立ってきたな。」
近くで顔を見てやろうとジョシュは近づいていった。
マリオンの周りには見たことのない魔導士が何人もいて、何やらマリオンに話しかけている。
そしてその中にもう一人、二度と会いたくない人物がいた。
「グリム・・・ッ!」
相変わらずの嫌味な顔でマリオンの横に立っている。
無理だと知りながらもジョシュはグリムに殴りかかった。
ジョシュの拳はスルッとすり抜け、グリムは何事もなかったかのようにマリオンに話しかけていた。
そしてその背後にもう一人憎き人物がいた。ヨシムラだった。
「こいつも顔を見たくない人間の一人だよな・・・。
けど俺が知ってるのはホムンクルスのヨシムラなんだよな。
もしかしたら本物はいい奴だったりして。」
憎き敵達の顔を眺め、自分の中に抑えきれない苛立ちが湧き上がってくるのを感じた。
「まずいまずい。こいつらに腹立ててる場合じゃないよな。
もう全員くたばった連中なんだから。」
踵を返してジョシュは別の場所に飛んで行こうとした。
宙に浮いて街を離れた頃、自分の中に妙な違和感があるのに気づいた。
空中で胡坐をかき、腕を組んでさきほどの街を見下ろすジョシュ。
「なんだ・・・この違和感。何かが引っ掛かるんだよなあ・・・。」
しばらく考え込み、ハッとして顔を上げた。
「そうだ!なんでヨシムラがいるんだ?。
レインは会ったことねえはずだし、それにあいつはあんまりメディアに出ないって言ってたから顔を知ることも出来ないのに・・・。」
その時だった。ジョシュの首に何かが巻きついてきた。
それは人間の手だった。強い力でジョシュの首を締め上げていく。
「ぐ、が・・・ッ!てめえは・・・。」
身をよじって後ろを振り返ると、マリオンが笑いながらジョシュの首を締め上げていた。
「ふふふ・・・あんな幻覚に騙されるとは、やはりまだ若造よな・・・。」
マリオンの腕に手を掛け、ジョシュは身体を捻って蹴りを放った。
みぞおちにヒットした蹴りがマリオンを吹き飛ばし、ジョシュは拳を構えて睨みつけた。
「てめえ!やっぱ邪魔してきやがったか。」
殺気立つ彼を見てマリオンは笑った。
「もうこれ以上誰にも私の夢の邪魔はさせない。ここから出ていってもらおう。」
両手を開いて前に突き出し、マリオンは光を放ってジョシュを吹き飛ばした。
「ぐあああああああッ!」
地上に叩きつけられて苦しむジョシュの元に降り立ち、指を向けて笑う。
「幽体での戦いは魂を直接傷付け合うのだ。
すなわち敗北は完全なる消滅を意味する。もはや転生することも出来ん。
お前はフレイよりやっかいな存在になるかもしれんからな。
ここで魂ごと消えてもらおう。」
マリオンは指先から紫に輝く光を放ち、ジョシュの魂を焼き尽くそうとする。
「があああああああッ!」
経験したことの無い苦痛が襲い、ジョシュの幽体は抵抗する術なく焼かれていく。
「さあ、これで終わりだ・・・。」
力を込め、一際強い光がジョシュに襲いかかる。
完全に幽体が消えようとした頃、突然地面が盛り上がってジョシュを包み込んだ。
そしてマリオンに纏わりつき、動きを封じて締め上げていく。
「これは・・・レインの仕業か・・・!」
纏わりつく大地の土を焼き払い、なんとか逃げ出したマリオンだったが、ジョシュの姿は消えていた。
「逃したか・・・。」
悔しそうに呟くマリオンは、霊魂となってどこかへと飛び去って行った。

            *

「・・・・・・・・・・。」
気を失っていたジョシュは強い光で目を覚ました。
水面のように揺らめく地面に倒れているのに気づき、ふらつきながら手をついて上体を起こした。
「どこだ・・・ここは・・・?ってかマリオンはッ?」
咄嗟に身を起こして構えるが、辺りにマリオンの気配がないことを感じて構えを解いた。
「確かマリオンにやられかけて・・・あまりの苦痛に意識が飛びそうになったとこまでは覚えてるんだけど・・・。」
周りを見回してみると、晴れた日の海のように澄んだ青い空が広がっていた。
少し歩いてみると、水面のような地面は波紋をおこして広がっていく。
「ここは、もしかしてレインの精神か・・・?」
目を凝らして遠くまで見つめると、広がる地平線の中にポツンと何かが建っていた。
「なんだあれ?」
歩いてそこまで近づいてみると、それは大きな氷柱だった。
周りにいくつもの小さな氷柱が立ち並び、まるで誰かが入るのを拒んでいるようだった。
ジョシュは注意しながら足を進め、大きな氷柱の手前までやってきた。
透き通るように綺麗な氷柱は、まるでダイアモンドのような美しい光沢を放っていた。
しばらく見惚れているジョシュだったが、その中に裸でうずくまっている人間がいることに気づいた。
「レインッ!」
ジョシュは氷柱を叩いて名前を呼んだ。
「おい、レインッ!俺だ、ジョシュだ!聞こえるか?」
いくら呼びかけても返事はなく、ジョシュは力づくで氷柱を壊すことにした。
「待ってろよ、今助けてやるからな。」
拳にオーラを集め、渾身の突きを氷柱に放った。
パリッと音を立ててヒビが入り、手ごたえを感じたジョシュは続けて拳を放っていく。
やがて氷柱全体に大きなヒビが入り、ジョシュは一旦離れて体内で気練った。
「レインを傷つけないように気をつけないとな・・・。」
ジョシュは練ったオーラを左足に集中させた。
そして高く飛び上がるとクルッと身体を回転させ、渾身の後ろ回し蹴りを放った。
大きな音を立てて氷柱が揺れ、無数に入ったヒビがビキビキと軋みながらガラスのように砕け散る。
崩れる氷柱の中から投げ出されたレインを抱きかかえ、ジョシュはふわりと着地した。
「おい、レイン!しっかりしろ!迎えに来たぞ!」
軽く頬を叩き、何度も名前を呼んでいるとピクリと身体を動かした。
そしてゆっくりと目を開け、ぼんやりとした視界の中でジョシュを確認すると、レインは目に涙を溜めながらジョシュにしがみついた。
「ジョシュ!」
「まったく・・・こんな殻に閉じこもりやがって。」
わんわんと泣いてしがみついてくるレインを、ジョシュは子供をあやすように優しく撫でてやった。
「ジョシュ・・・ジョシュ・・・。怖かったよお・・・、一人ぼっちになったと思ってた。
真っ暗で何も見えなくて・・・。怖かった、怖かったよお・・・。」
「よしよし、もう大丈夫だ。もう怖がらなくていいんだ。俺が傍にいるから。
一人ぼっちなんかじゃないぞ。大丈夫だ。」
レインはジョシュの首に回した手をギュッと握り、顔を埋めてしばらく泣きじゃくっていた。
そんなレインを抱きしめたまま、ジョシュはただ優しく撫でていた。
泣くだけ泣いて落ち着いたレインは、顔を上げて泣き腫らした目でジョシュを見つめた。
「よかった・・・ずっとこのまま誰もいない世界で一人ぼっちなんだって思ってた。
また会えてよかった・・・。」
服の袖で涙を拭ってやり、ジョシュは上着を脱いでレインにかけてやった。
「ちょっとデカイけど勘弁な。」
「・・・ありがとう。」
ぎゅっとジョシュの手を握り、身体を預けるように寄りかかってきた。
「なんだよ、随分甘えちゃって。よっぽど寂しかったんだな。」
レインはコクコクと頷き、もう片方の手もギュッと握りしめた。
「ごめんね・・・私が情けないせいで迷惑かけちゃって・・・。」
「いいよ、気にすんな。」
グスっと鼻をすすり、レインは俯いて身体を寄せた。
「あの時、シーナが私を介抱してくれてたの。
けど突然あのグリムって魔導士が私をさらいに来て・・・。
シーナは私を守ろうとしてくれたんだけど・・・。
でも変なんだ・・・。グリムがなぜかシーナに親しげに話しかけてたの。
演技を続けていろとかなんとか・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・ジョシュ?」
急に暗い顔になって黙りこむジョシュを見て、レインが不安そうな目を向けた。
ジョシュはレインから顔を逸らし、一瞬辛そうな顔を見せて口を開いた。
「シーナは・・・利用されてただけなんだ。
あいつにはどうしてもマリオンに逆らえない事情があって・・・。」
「・・・・・・。」
ジョシュは大きく息を吸い込んでレインを見つめた。
「けどな、あいつは悪い奴なんかじゃないんだぜ。
いつだって、マリオンの命令に従う時は心を痛めてたんだ。
いつだって、ククリさんや俺や、レインにだって申し訳ないと思ってたんだ。
悪いのは全部マリオンなんだよ、シーナは何にも悪くねえ・・・。」
「・・・・・・・。」
しばらく沈黙が流れ、意を決したようにレインが尋ねた。
「・・・・シーナは?」
目を伏せてレインを抱く腕に力を入れるジョシュ。
そして辛そうに顔を歪めて答えた。
「死んだよ・・・。俺の目の前で・・・。
泣いてたのに、何にも出来なかった・・・。
辛かったろうに・・・。」
閉じたジョシュの目から涙が一筋こぼれ落ちた。
レインはその涙にそっと指でふれ、ジョシュの頬に手を当てて言った。
「ジョシュは・・・好きだったんだね・・・シーナのこと。」
「・・・・・うん。」
顔を伏せて静かに泣くジョシュを、レインは優しく抱きしめた。
「そっか・・・シーナ・・・可哀想だったね・・・。
ごめんね、ジョシュも辛かったのに・・・力になれなくてごめんね。」
指で目尻を拭い、鼻をすすってジョシュは遠くを見た。
「怒らないんだな・・・昔みたいに。」
「・・・昔?」
「ああ、俺に彼女が出来た時にすごく不機嫌になってたじゃん。
まったく口も利かなくなってさ。」
「ああ、あったね、そんなこと。」
レインは可笑しそうに笑った。
「あの時はやきもちの塊だったから・・・。
その後その子に酷いことまでしちゃったし・・・。」
「・・・・・・・。」
眉を寄せて黙るジョシュを見て、レインはさらに笑った。
「その顔は気づいてるなあ。あの時私が何をしたか。」
「うん・・・まあ・・・。」
「ふふふ」と声を出して笑い、レインは壊れた氷柱に目をやった。
「ほんとにねえ・・・今思うとゾッとすることしてるよね、私。
笑いごとじゃ済まされなかったかもしれないし・・・。
でもね、私だってあれから成長したんだよ。昔のまんまじゃないの。
ここで一人ぼっちの間も、寂しさを紛らわす為に色々考えてて・・・。
まあ結局孤独に負けてああやって殻に閉じこもっちゃったわけだけどね。
あはは・・・。」
ジョシュは意外だった。
孤独にさらされたレインはもっと深刻な状況になっていると思っていた。
しかし泣きじゃくって抱きついてきたのは最初だけで、今はあっけらかんとした顔をしている。
「どうしたの?」
ポカンとした顔で見つめてくるジョシュに、レインは不思議そうに尋ねた。
「ああ、なんか意外だなと思って・・・。
もっと落ち込んだり塞ぎ込んだりしてるのかと思ってたからさ。」
レインはジョシュから身体を離して立ち上がり、壊れた氷柱を見つめた。
「言ったでしょ、私だって昔のまんまじゃないって。
いつまでもジョシュ、ジョシュって言ってると思ったら大間違いなんだから。」
長い髪をわずかに揺らし、レインは後ろで手を組んで振り返った。
「それにね、ジョシュが思ってるより女はずっと強いのよ。
その気になればいつだって強くなれる、女ってそういうものよ。
だから・・・。」
レインは突然右手を突き出して炎弾を放った。
それはジョシュの横を飛び抜けていき、その後ろで何かに当たって爆発した。
「ぎゃああああああッ!」
「この声は・・・ッ!」
ジョシュは素早く立ち上がり、レインを守るようにして立ちはだかった。
燃え盛る炎の中から、マリオンが苦悶の表情を浮かべながら現れてきた。
「てめえ!やっぱり来やがったな!レインには絶対指一本触れさせねえぞ!」
幽体から火をあげながら、マリオンは苦痛の表情をみせて近寄って来る。
身体の半分が溶けてゾンビのようになり、ただれた手を伸ばしてきた。
「レイン・・。なぜわかった・・・?
完全に気配を消していたのに・・・なぜ・・・?」
レインは立ちはだかるジョシュを制し、マリオンに歩み寄っていく。
「おい、危ねえぜッ!」
「大丈夫よ。もうこんな奴怖くも何ともないから。」
全身から強力な魔力を放出しながら、レインはマリオンを睨みつけた。
おぞましい姿になったマリオンに全く恐れを見せる気配はなく、さらに近づいていく。
レインの迫力は凄まじいもので、マリオンの方が圧倒されて下がっていく。
「あなた何度も転生を繰り返しているのね。魂に人とは思えない歪みが見えるもの。
リビングデッドって知ってるわよね?今のあなたがそれよ。」
生ける屍、リビングデッド。今のマリオンはまさにそのような姿をしていた。
「燃えたからそんな醜い姿になったんじゃない。
死んだり生き返ったりを何度も繰り返しているうちにそんな姿になったんでしょ?
私の炎はあなたの化けの皮を剥いで本性を晒しただけよ。」
醜い姿のまま、マリオンは不敵に笑って魔力を高めていった。
「さすがだな・・・お前の中には私を超える力がある・・・。
だからこそ新世界の神に相応しい・・・。
どうだ、私と一緒に行かないか・・・?」
差し出されたマリオンの手をしばらく見つめ、レインはその手を握り返した。
「おい、レイン!何やってんだよ!危険だぞ、すぐ離れろ!」
助けようと飛び出すジョシュだったが、それより速くマリオンがレインに覆いかぶさった。
幽体がアメーバのように変化してレインを飲み込み、その魂を溶かして自分の物にしようとしている。
「レイン!」
マリオンに拳を打ち込むが、アメーバ状の身体はオーラも衝撃も全て吸収してしまい、全く効果がなかった。
「マリオン!てめえはどこまで執念深いんだよ!これ以上余計なマネすんな!」
いくら攻撃してもビクともしないマリオン。
ジョシュは焦りを覚えながら拳を振り続ける。。
「ふふふ・・・無駄だ。
魔導士でもないお前では、他人の精神の中で大した力は発揮できまい。
それにこの身体には物理的な力は無効だ・・・諦めるがいい。」
「ざけんな!このゾンビ野郎が!これ以上レインを傷つけんじゃ・・・・ッ!」
マリオンの中から突然大きな力が溢れてくるのを感じ、ジョシュは慌てて飛び退いた。
「これは・・・レインの気か?。」
マリオンの体内から強烈な光が溢れ出し、閃光が炸裂してアメーバ状の身体を吹き飛ばしていく。
「ぐうおおおおおおおッ!」
ほんの一部の幽体を残し、マリオンの身体は光の中に消滅していった。
そしてその光の中からレインが現れ、黄金に身体を輝かせてマリオンに手を向けた。
「言ったでしょ、あんたなんかもう怖くないって。」
「・・・馬鹿な・・・眠っている才能が目覚めたのか・・・。」
マリオンは恐れを抱いてレインを見上げていた。
そして傷ついた幽体を再生させるとその場から逃げるように飛び去った。
「無駄よ。ここは私の精神の中、この中では私から逃れる術はない。」
前に出した手をクイっと動かすと、マリオンは目に見えない強力な力で引き戻された。
「・・・なんという力・・・私の魔力がまるで役に立たんとは・・・。」
突き出したレインの手に光が集まり、輝く球体が作られていく。
「あなたはたくさんの人の大切なものを奪った。
私から、ジョシュから、ククリ先生から、それにフレイ剣聖だって・・・。
きっと、もっともっと多くの人があなたに苦しめられて、傷つけられたはず・・・。
あなたの罪は死んでも償えない・・・何もかも、魂でさえも塵に還るがいいわ。
たくさん転生を繰り返したんだし、心残りも無いでしょう?」
「待て・・・ッ!私は私の夢と理想の為にまだ消えるわけにはいかない・・・。」
レインは聞く耳持たずという感じで、二コリと微笑んだ。
「さようなら、永遠にね。」
「ま、待て・・・・・ッ!」
レインの手から放たれた光球は、雷より太いレーザーとなって一瞬でマリオンの魂を消し飛ばした。
光が消えた後には何も残っておらず、マリオンの気は完全に消滅していた。
ジョシュは呆然として固唾を飲み、黄金に輝くレインを見つめていた。
「すげえ・・・・・。」
レインが力を抜くと、身体を纏っていた黄金の輝きが消え、ニコッと微笑んでジョシュの前に歩いて来た。
「なあにその顔?びっくりした?」
「ん!ああ、まあ・・・。
お前がすごいのは知ってたけど、あのマリオンを一撃で吹き飛ばすなんて・・・。
神童の名は健在だな。」
「ふふふ、もう子供じゃないよ。私も、ジョシュもね。」
笑いかけるレインに釣られて、ジョシュも頭を掻いて笑みを返した。
そしてレインは、ジョシュに手を差し出して微笑む。
「行こう!ここを出て、全てを終わらせる為に。」
ジョシュは思った。もう以前の弱虫な心を持つレインはいないと。
心の奥に住んでいた泣き虫レインは、どこかへ飛び去ってしまったのだと。
透き通る青い目で見つめるジョシュに、レインは少しだけ目を伏せて口を開いた。
「私ね、ジョシュがここへ来て、私に何を言うつもりだったか分かるよ。」
「・・・・・・。」
澄んだ青い空、自分の晴れ渡った精神に目を向けてレインは言った。
「ここでずっと一人でいて気づいたの。
私の心の弱さやわがままが、どれほどジョシュを苦しめていたかって。
どんなに私がジョシュのことを愛しても、ジョシュが返せるのは兄妹としての愛だけ・・・。
もうずっと昔に分かってたのに・・・傷つくのが怖くて目を逸らしてた。
けどそれじゃダメなんだよね。
私のこの想いがジョシュを縛りつけて、自由を奪って・・・ジョシュは好きな女の子が出来ても付き合ったり出来なくて・・・。」
「知ってたのか?」
顔を空に向けたまま、レインは「うん」と言って頷いた。
「ほんとうに・・・酷い女だよね、私って・・・。
でも、ここで一人きりになって分かった・・・。
私が変わらなきゃ、ジョシュも、私も、お互い前に進めないって。だから・・・。」
全ての迷いを振り切ったような瞳で、レインはジョシュに向かって微笑んだ
「行こう!私達の、それぞれの道を歩く為に。
ここを出て、全てを終わらせて、平和な世界で二人が歩く道を見つけよう!」
ジョシュは大きく息を吸って吐き出し、頷いてレインの手を握った。
「せっかく色々と言葉を考えてたのに無駄になっちまったな。」
「何言ってるのよ。
ジョシュが来てくれなかったら、私はずっとあの氷柱の中から出られなかったわ。
ありがとう。」
二人はしばらく見つめ合い、ジョシュは顔を赤くしてコホンと咳払いをした。
「ああ、それとな、さっきから言おうと思ってたんだけど、マリオンが服を溶かしたせいでさ、今のお前・・・裸だぞ。」
ジョシュに言われて自分の身体を見つめ、レインは無言のまま胸を隠して横を向いた。
「気づいてたんなら早く言ってよ、エッチ。」
「いや、タイミングがな・・・。」
二人は目を見合わせて恥ずかしそうに笑い、ふわっと宙に舞い上がった。
「早く行かねえと師匠とククリさんが危ないかもしれねえ。」
「うん、分かってる。
マリオンが入って来た時に、まだ彼女の野望は消えてないんだって知ったから。
早く二人を助けに行こう!しっかり手を握っててね!」
再びレインの身体が輝きだし、二人は強く手を握ったまま一つの光になった。
そして一筋の閃光となって、精神世界の空を駆け抜けていった。

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