マーシャル・アクター 最終話 約束は守れない

  • 2014.01.17 Friday
  • 18:47

〜『約束は守れない』〜

「小僧の妹め、余計なことをしおって・・・。」
フレイがブーツを履きながら不満そうに愚痴っている。
「まあまあ、これはレインが僕達を大切に想ってくれていた証ですよ。
こうしてまたこの世界で生きられるのはありがたいことです。
弟子の命と引き換えにというのはなんとも心が痛いですが・・・。」
「ふん、そんなことは分かっておるわ。
俺が言いたかったのは、なぜこの役目が俺ではないのかということだ。
どうして若い命が先に散って、俺のような剣一筋の老兵が生き返るのか・・・。」
フレイはベッドから降りて背を伸ばした。
ククリは窓から射し込む光に目を細めながら、命を散らした最愛の弟子に想いを馳せていた。
すると突然ドアがノックされ、若い女の声が響いた。
「あの・・・ジョシュ君の出発の準備が出来たみたいなので、そろそろ・・・。」
ククリはガチャリとドアを開け、彼女の頭に手を置いた。
「ああ、すまないシーナ。剣聖はどうも低血圧らしくてね。
昔はこんなことなかったんだけど、どうも最近歳のせいか・・・・痛いッ!」
頭を押さえるククリの後ろで、フレイが拳骨を作って立っていた。
「余計なことを言うでない。まだそこまで年老いておらんわ。」
「剣聖さん、おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
フレイもシーナの頭に手を置き、グシャグシャと髪の毛を掻き回した。
「きゃあ!やめて下さい!」
シーナは頭を押さえながら慌てて離れた。
そしてグシャグシャになった自分の髪を見て、泣きそう声で呟く。
「ひ、ひどいです・・・。せっかく可愛く結ってあったのに・・・。
こんなグシャグシャじゃジョシュ君に笑われちゃう・・・。」
グスンと鼻を鳴らして自分の髪を触るシーナ。
そんな彼女を見て、フレイは声を上げて笑った。
「あの小僧がそんな繊細なことを気にするものか。
綺麗に結ってあろうが乱れていようが気づくまいて。ははははは!」
「そ、そんなあ〜・・・。」
うるうると目に涙を溜めるシーナの横に立ち、ククリは呆れた顔で肩を竦めた。
「やだね〜、デリカシーの無い人は。乙女心を分かってないんだから。
女の子はこういうことを凄く気にするもんですよ。
どれ、僕が結い直してあげよう。」
手際良くシーナの髪を結いあげるククリを見て、フレイはつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「ふん、随分慣れた手つきだな。
どうせ今まで遊んできた女にやり方でも教わったのだろう。
間違って自分の弟子に手を出すでないぞ。」
あっという間に元の髪型に戻し、ククリはシーナの頭を撫でた。
「出すわけないでしょう。この子は僕にとって娘みたいなものですからね。
まあ間違って下らない男が手を出してきたら、その時はどういう目に遭わすか分かりませんけど。」
「うむ、それは同感だ。シーナよ、悪い虫が寄って来たらまず俺に言え。
次の日にはこの剣の錆びになっておるわ、ははははは!」
「ふ、二人とも怖いです・・・。」
シーナは杖をギュッと握りしめ、豪快に笑う二人を見上げていた。

             *

三人がクラナドの街の館を出ると、門の前にジョシュが立っていた。
朝陽をじっと眺めていたが、フレイ達に気づくと笑いながら振り返った。
「師匠、おはようございます。相変わらず朝が遅いっすね。
とても武術家とは思えないですよ。やっぱりそれって歳のせい・・・・・痛ッ!」
「どいつもこいつも人を年寄り扱いしおって。」
フレイの拳骨に頭を押さえながら、ジョシュは苦笑いをして顔を上げた。
ククリは可笑しそうに二人の間に入り、手を空に向けた。
「ジョシュ君、旅立つにはいい朝だね。もしかして晴れ男かい?」
「まあね。レインは雨女でしたけど、ははは。」
頭で手を組んで笑うジョシュの元に、シーナが恥ずかしそうに駆け寄ってきた。
「ジョシュ君・・・。」
「おう、シーナ!あれ・・・さっきと髪型違うじゃん。なんか可愛くなってる。」
「え!ほ、ほんとに?か、可愛いですか・・・?」
「うん、すごい似合ってるよ。
そっちの方が可愛い・・・、いや元の髪型も捨てがたいかなあ・・・。
けど元々が可愛いから、どっちも似合ってるよ。」
「・・・そ、そう言ってもらえると嬉しいです・・・。」
頬を赤らめて顔を伏せるシーナに、ややキザっぽいセリフだったかなと恥ずかしそうに頭を掻くジョシュ。
「ふん、女垂らしめ。そんなことを覚えているとククリのようになってしまうぞ。
こいつがそれだけ女に泣かされたか・・・。俺の知る限り最低でも・・・・、」
「あー、あーッ!余計なことは言わないで下さいよ。
それ全部誤解だし、若い子に僕のイメージを壊すようなことを吹き込むのはやめて下さい。」
「どこが誤解か。確かマオが言っておったな。
サラに迫られて、まんざらでもなさそうな顔で夜の街に消えていったとかなんとか・・・。」
「してませんよそんなこと!まったく・・・どんどん僕のイメージが・・・。」
腕を組んで面白そうに見下ろすフレイの前で、ククリは額に手を当てて項垂れていた。
「シーナもククリさんと二人きりの時は気をつけた方がいいかもね。」
「・・・はい。一応先生を信じていますけど、万が一ということもありますから・・・。」
「だからあ〜、なんでみんな人を女垂らしみたいに言うのさ・・・。」
「ははは、人を年寄り扱いした罰だ!」
がっくりと肩を落として項垂れるククリ。
三人は可笑しそうに笑いながら街の方へと歩いていった。
館の門を出て街の通りを歩き、ジョシュは懐かしい顔を見つけた。
「あ!お前はあの時の!」
露天の長椅子に座り込んでいるのは、この街に来た時に喧嘩をした魔導士達だった。
「あ、あんたは・・・。」
黒い法衣の魔導士が立ち上がり、驚いた顔で見つめた。
そしてジョシュの横で怖い顔をして立っているフレイに気づき、慌てて顔を逸らした。
「久しぶりだな。どうだ小僧共、あの時の続きをやるか?」
そう言って拳を持ち上げるフレイを見て、魔導士達はぶるぶると首を振った。
「い、いや・・・滅相もないです・・・。
あの時はフレイ剣聖だとは知らずに調子に乗ってしまって・・・。」
フレイは二コリと笑うと、俯く魔導士に「顔を上げい!」と怒鳴った。
そして恐る恐る顔を上げた瞬間に、ゴツンと拳骨を落とした。
「・・・・・ッ!」
頭を押さえてうずくまる魔導士に、フレイは腕を組んで見下ろしながら言った。
「これで勘弁してやる。ただ次に調子に乗っていたら・・・。」
「は、はいッ!すいません!二度と調子に乗ったマネはしません!」
魔導士達は慌ててフレイの元から走り去っていった。
「まあいいお灸ですね。
これを機にしっかりした魔導士になってくれればいんだけど。」
「何を言っておるか。ああいう若い魔導士の教育はお前の役目であろうが。
今やこのグラナドが魔導協会の本部なのだぞ。
そしてお前は魔導協会の会長ではないか。」
バツが悪そうに頭を掻くククリだったが、負けじとフレイに言い返す。
「剣聖こそまた武術連盟の会長に納まったんでしょう?
それならもう少し行儀よくですね・・・・、」
そう言いかけるククリの裾を、シーナがクイクイと引っ張った。
「ジョシュ君はもう先に行っちゃいましたよ。」
「ああ、ほんとだ!」
「無愛想な奴め。師匠を無視して置いて行くとは。」
ジョシュは通りを眺めながら初めてこの街に来た時のことを思い出していた。
あの頃は一つの肉体に二人の魂が宿っていた。
その問題を解決する為だけにここへ来たのに、気がつけば思いもしない大きな戦いに巻き込まれていた。
傷つき、失い、しかし師との出会いや、戦いの中で生まれる絆もあった。
ほんの少し前のことなのに、随分の昔のことのように感じられた。
街の門まで来ると、衛兵がジョシュに気づいて駆け寄ってきた。
何日かこの街にいてすっかり顔馴染みになった衛兵と言葉を交わし、今日この街を出ることを告げた。
気を付けてと言葉をかける衛兵に対し、ジョシュは笑って手を振り、街の外へ出た。
「ジョシュ君!待って・・・!」
シーナがはあはあと息を切らしながら駆けて来る。
「一人でスタスタ行かないで下さい・・・。
このまま別れも告げずに行っちゃうかと心配しました・・・。」
杖を握りしめて息を切らすシーナ。
ジョシュは赤く火照ったその顔をじっと見つめた。
「なんかさ・・・一人で歩いてたら分かんなくなっちゃって・・・。
色んなことがあっという間に過ぎて、気がついたらずっと一緒にいた大切な人が傍にいなくなってて・・・。
たまにさ、これって現実なのかなって・・・。」
「ジョシュ君・・・。」
シーナは一歩前に踏み出してジョシュの手を握った。
「レインさんが・・・自分の魂と引き換えにマリオンを倒してくれました。
それだけじゃなくて、最後の最後で残った力を使って私達を生き返らせてくれて・・・。
きっと、レインさんはやろうと思えば出来たと思うんです、自分を復活させること。
魂に宿った根源の力を使えば、自分は助かったかもしれないのに・・・。
私達を生き返らせる為に・・・自分を犠牲にしたんです。」
「・・・・・・・。」
シーナはジョシュの手を強く握りしめ、真っすぐに目を向けた。
頬が赤くなり、グッと息を飲み込む。
そして意を決したように口を開いた。
「ねえジョシュ君・・・私達のこと恨んでますか?
私達が生き返らなければ、レインさんがここにいたかもしれない・・・。
だから、もしそのことを恨んでるなら・・・言って下さい。
私も魔導士のはしくれです。この命を使えば、もしかしたらレインさんを・・・、」
「そんなことないよ。」
シーナの言葉を遮り、ジョシュはその手を握り返した。
ジョシュは優しい目で笑ってシーナを見つめ、少し俯いて口を開いた。
「あいつは優しい奴でさ・・・。昔っから、他人が傷つくくらいなら自分が傷ついた方がマシだっていうような奴だから。
師匠も、ククリさんも、シーナが生き返ったのも全部レインが望んだことだ。
それを俺が恨むわけがないだろう。」
「・・・・グス・・・ジョシュ君・・・。」
涙ぐんで鼻を赤くするシーナ。
ジョシュは可笑しそうに笑って彼女の鼻をつまんだ。
「ほんとによく泣くよなシーナは。
そんなに泣いてると目とか鼻が痛くなったりしないか?」
「痛いです・・・ジョシュ君が鼻をつまんでるから・・・。」
二人は顔を見合わせて笑い、恥ずかしそうに顔を俯かせた。
「な〜にをイチャイチャしてるだい?」
門の向こうから現れたククリが、ニヤニヤした顔でジョシュの肩に手を回してくる。
そしてシーナに目を向けて「ああ!」とわざとらしく叫んだ。
「ダメじゃないかジョシュ君、女の子を泣かしちゃあ。
どうしたんだいシーナ?何か変なことでもされたんじゃ・・・・・、」
「してませんよそんなこと!・・・・痛ッ!」
ジョシュの後ろでフレイが拳骨を握り、怖い顔をして立っていた。
「言ったそばからこれだ。
小僧、お前はやはりククリに似てろくな男にならんかもしれん。」
「ちょっと、師匠までなんですか・・・。」
「ははは、いいじゃないか。僕と剣聖だってひどい言われようしたんだから、君だってね。」
「そうだぞ。この拳骨は師匠からの餞別だ。ありがたく受け取れ。」
そう言って拳を振り上げるフレイからサッと身をかわし、ジョシュはシーナの後ろに回り込んだ。
「そんな餞別いりませんよ。相変わらず荒っぽいんだから、ったく・・・。」
三人の取りを見ていたシーナは、口元に手を当てて可笑しそうに笑った。
「大丈夫ですよ、ジョシュ君。私が守ってあげます。」
そう言ってジョシュの頭を撫でるシーナ。
唇を尖らせ、ジョシュは苦笑いしながら彼女を見つめた。
「なんだ、シーナまで俺のこと子供扱いすんのか?
まるでレインみたいにさ?」
「だって子供っぽいから。戦ってる時は別ですけど、普段は・・・ね?」
シーナは首を傾げて二コリと微笑む。
バツが悪そうに拗ねた顔を見せ、ジョシュは腕を組んでそっぽを向いた。
「ははは、いいコンビじゃないか。
ずっと見ていたけど、冗談はこれくらいにして・・・。」
ククリは真剣な顔になり、腰に手を当ててジョシュを見つめた。
「ジョシュ君、本当に行くんだね。僕の言ったことはあくまで可能性の話だよ。
もしかしたら君の旅は無駄に終わり、ただ傷つくだけかもしれない。
それでも行くのかい?」
ジョシュは小さく俯き、無言のまま顔を上げて街から伸びる道に目をやった。
その道の先には良く晴れた空が広がり、大きな雲が低く雷鳴を響かせて流れていた。
「確かに、ククリさんの言う通り無駄な旅になるかもしれない。」
重い口調で言い、ジョシュは三人を見つめた。
その顔は希望に満ちているような、しかし後ろめたい何かをしに行くような表情だった。
「けどね、やっぱりこの気持ちは抑えられませんよ。
もしかしたらレインの魂が・・・その欠片がこの世界のどこかに存在しているかもしれないなんて聞かされたらね・・・。俺はあいつを放っておけない。」
そう言ってジョシュは右手にはめている手袋を取り、袖を捲り上げた。
その腕は肘から先が赤い金属の皮膚に変化していた。
「これはどう見てもレインのマーシャル・スーツですよ。
こいつがたまに、微かに振動することがある。
それはレインがこの世界のどこかで存在しているかもしれない証拠だって・・・。
ククリさんがそう言ったんですよ。」
ジョシュは自分の腕に触れ、そこにレインがいるかのように握りしめる。
小さくため息をつき、ククリは憂いを感じさせる顔でジョシュに語りかけた。
「ああ、確かに言ったよ。けどね、それはあくまで可能性の話さ。
それもとても小さな可能性だ。
仮にこの世界のどこかにいたとしても、それはどんな形で存在しているのかは分からない。
魂だけなのか、意識だけなのか、もしかしたら誰かの肉体に宿っているのか・・・。
それを見つけるのがどれほど大変なことか・・・。」
ジョシュは返事をせずに袖を戻し、手袋をはめた。
そして強く拳を握り、目を閉じて眉間に皺を寄せた。
それはこの世界のどこかにいるかもしれないレインを、じっと感じているようだった。
「ククリよ、何を言っても無駄だ。小僧の心はもう決まっておる。」
フレイは腕を組んでククリの前に立ち、厳しい中にも優しさを感じさせる口調で言った。
「人間・・・誰でも自分の想いを止められないことはある。
それが誰かの為というのならなおさらだろう。」
「師匠・・・。」
見上げるジョシュに笑いかけ、フレイは腰の剣を外して顔の前まで持ち上げた。
「これは俺と共に幾多の闘いを勝ち抜いてきた戦友だ。
最強の武術家が信頼を寄せる、最強の剣だ。持って行け。」
そう言ってジョシュに剣を差し出した。
「師匠・・・いんですか。剣士にとって剣は魂と同じなのに・・・。」
「かまわん。どうせもうこいつを必要とするほどの敵に出会うことはなかろう。
それにお前が言ったのだぞ、拳骨の餞別などいらんと。
だったら代わりにこいつをくれてやる、受け取れ。」
ジョシュは震える手で剣を受け取り、師に深く頭を下げた。
代わりに自分の剣を差し出すと、フレイは二コリと笑って受け取った。
師から授かった剣を腰に携え、遠く続く道を振り返って太陽を見上げた。
眩しいほどの光が目を細めさせ、この道の先を照らしている。
ジョシュは三人に顔を向け、二コリと笑って腰の剣に手を置いた。
「それじゃ行ってきます。この先どうなるか分からないけど、自分で決めた道ですから。
そんで・・・もしレインと出会えたら、二人でまたここに戻ってきます。」
ジョシュの言葉にフレイ達は頷き、笑顔を返した。
「ジョシュ君、ここには君とレインの仲間がいつでも待っている。
僕も、剣聖もシーナも、ずっと君達の仲間さ。
レインと二人で帰って来る日を楽しみにしているよ。」
「はい、必ずレインと一緒に帰ってきます。」
フレイは気恥ずかしそうに咳払いをし、受け取った剣を腰に差してジョシュを見据えた。
「小僧、はっきり言って貴様はまだまだ未熟だ。
我が奥義も一つしか伝授しておらんしな。
だから、その、なんだ・・・。
もし自分に限界を感じたらいつでも戻って来い。
俺が一から鍛え直してやる、いいな!」
「師匠・・・・・ありがとうございます。」
深く頭を下げて礼を言い、ジョシュは師から譲り受けた剣に手をかけた。
「けど次に戻ってきた時には俺の方が強かったりして・・・。」
「な、何おう!」
フレイは拳を握って顔を怒らせ、ジョシュに突っかかっていく。
「少し優しくすればいい気になりおって。
やはり貴様はひん曲がった根性を叩き直さねばならん!」
そう言っていつものくせで腰に手をかけるが、違和感を覚えて自分の手を見つめる。
「ぬうう・・・やはりしっくこんな、人の剣というのは・・・。」
「ははは、何やってんすか。さっき俺にくれたばっかりじゃないですか。
これ使ったら今の俺でも勝てるんじゃ・・・。」
「貴様!やはりそれを返せ!」
「べえ〜、一度もらったもんは返すなってのが家訓なんですよ。
これはもう俺のもんだから。」
「おのれ・・・。待たんか小僧!」
子供のように追いかけ合う二人を見て、ククリとシーナは声を上げて笑っていた。
「まったく・・・最近の若造ときたら・・・。」
怒りながら嬉しそうな顔をするフレイに、ジョシュもニコッと笑って舌を出した。
「あ、あの・・・ジョシュ君・・・。」
シーナが肩に力を入れてジョシュの元に駆け寄ってくる。
そしてもじもじとしながら頬を赤らめて俯き、何やら小さく呟いている。
「どうしたシーナ?」
首を傾げて尋ねてくるジョシュに、シーナはギュッと杖を握って彼を見上げた。
「あ、あの・・・私・・・ジョシュ君のことが好きです!
だから・・・またこの街に戻ってきて下さい!」
悲しそうに、そして恥ずかしそうに顔を赤くして、シーナは小さく笑った。
ジョシュは微笑みながら彼女の頭に手を置いた。
「うん・・・必ず戻って来る。そん時まだ俺のことが好きだったら・・・。
俺もちゃんと返事をするよ・・・。」
シーナの顔がパッと明るくなり、少しだけ濡れた目を拭って微笑んだ。
「はい・・・待ってます。必ずレインさんと会えるように毎日祈りながら。
だから無事に帰ってきて下さい、約束です・・・。」
シーナの差し出した小指に指切りをして、お互いに笑い合った。
「それじゃ、みんなしばらくの間さよならだけど・・・元気で。」
ジョシュは手を振って歩き出し、後ろを振り返ることなく前に進んで行った。
「もうレイドはいないんだから、マーシャル・スーツを発動させる時は気をつけるんだよ。」
背中に聞こえるククリの声に手を上げて応え、ジョシュは真っすぐと歩いて行く。
しばらく空を向いて歩き続けていると、雲が光って雷鳴が轟いた。
ジョシュは立ち止まって後ろを振り返り、街の方に目をやった。
米粒のように小さくなった街が見え、三人の姿はもうそこにはなかった。
ジョシュは小さく笑ってまた歩き出した。
そして心の中で呟く。
「レイン、ごめんな。お前との約束は守れないや。
お前がどこかにいるかもって聞いたら、やっぱりお前に縛られずに生きるなんて無理だ。
会いに行ったらお前は怒るかな?それとも喜ぶか?
まあ・・・どっちでもいいさ。
俺はもう一度お前と会う、そう決めたんだ。
俺だけ幸せにはなれねえ。
だからさ、また二人で手を繋いであの場所へ行こう。
今日みたいに晴れた日の空で、また一緒に花かんむりをつくろう。
あの日みたいに、喧嘩したり、笑い合ったりしながらさ・・・。」
晴れた空に浮かぶ雷雲が、雨を降らせて頬を濡らしていく。
低く唸る雷と、透き通る青い空に見守られながら、ジョシュは遠く地平線まで続く道を歩いていった。

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