竜人戦記 番外編 クロス・ワールド(11)

  • 2014.01.22 Wednesday
  • 19:47
竜と悪魔、光と闇、そして科学と魔術。
相反する力は衝突を繰り返し、それでもなお力が尽きることはない。
ウェインの剣は魔人を切り裂き、魔人の爪はウェインを抉る。
しかし超絶の再生力と防御力により、いずれの攻撃も致命傷になることはなかった。
「ふふふ、どうしたウェイン。俺に引導を渡すんじゃなかったのか?」
「言われなくてもやってやるさ。しかしこの場所では・・・・。」
ウェインはチラリと竜王の石像を見る。
偉大なる竜族の長は、ウェインを見守るように赤い瞳を輝かせていた。
「お前も俺と一緒で、あの石像が気になるようだな。
それゆえに本気が出せない。」
「・・・・・・・・・・・・。」
魔人は竜王の石像に宿る力を欲している。
だからこそ、祠の中で本気を出すことは出来なかった。
下手をして竜王の石像を破壊してしまえば、お目当ての力は手に入らなくなる。
そして、ウェインもまた竜王の石像を守りたかった。
自分の祖先であり、かつて悪魔の軍勢を退けた誇り高き戦士に、傷を負わせたくなった。
しかし二人の持つ力は凄まじく、手加減をして戦っている以上は決め手に欠ける。
お互いが隙を窺い、最小限の力で敵を仕留めるタイミングを窺っていた。
「竜王の力は欲しい。しかしこのままではジリ貧だ。
ウェインよ、ここは一つ、戦う場所を変えてみないか?
お前とてあの石像は守りたいのだろう?」
「その提案に依存はないが、どうせまた何かを企んでいるんだろう?
・・・・だが、ここで戦えば決め手に欠けるのも事実。
お前の悪だくみに乗ってやろう!」
「ふふふ、それでいい。では俺について来い!」
魔人は翼を広げ、穴のあいた天井に飛び上がって行く。
ウェインもそれを追うように天井に舞い上がった。
「ウェインさん!私も行きます!」
「駄目だ!ケイトはここにいろ!これ以上は命に関わる。」
ウェインは剣を向けて険しい目で睨む。
しかしケイトは首を振り、聖者の腕輪を振りかざした。
「大丈夫・・・。今の私ならきっと役に立てる。
だって、この腕輪の真意を知ることが出来たから・・・。」
「聖者の腕輪の真意だと・・・・?」
「そうです!あの時、悪魔になったロビンを浄化したように、魔人だって浄化出来るかもしれない。
この腕輪は・・・神の御心に身を委ねる者に、真の光を与えてくれる神器なんです!
その時こそ・・・また奇跡が起こせる!」
ウェインは宙に浮きあがったまま、思慮深い目でケイトを見つめる。
ケイトの言葉は本気であり、魔人と戦う覚悟も決めている。
そのことは知っていたが、やはり迷いがあった。
大幅にパワーアップした魔人を相手に、ケイトを守りながら戦えるのか?
一抹の不安が胸をよぎり、素直に頷けないでいた。
するとケイトは、その心を見透かしたように叫んだ。
「私は誰にも守ってもらおうなんて思ってません!
いいえ・・・、それどころか、私が守りたいんです!
この里を、この世界を、クレアや仲間を。そして・・・・ウェインさんを!」
「ケイト・・・・。」
二人はじっと見つめ合う。しばらく沈黙が流れ、初めて出会った時のような、静かな時間が耳に響く。
「ウェインさん。」
ケイトはスッと手の伸ばす。ウェインは目を伏せ、天井の穴を見上げた。
「ふふふ、ウェインよ。こんな時に女と痴話喧嘩か?ずいぶん余裕があるのだな。
もし俺のことが邪魔なら、このまま忘れてもらってもけっこうだぞ。
お前達が恋人ごっこをしている間に、俺は竜王の力を頂くだけだ。」
「・・・・ぬかせ、お前にトドメを刺すまでは、忘れることなど出来ん。」
ウェインはケイトの傍に降りて、そっとその手を握った。
「あんたが俺を守るなんて言う日が来るとは、一年前には思いもしなかった。
しかし、あんたは強くなった。だから・・・また一緒に戦おう。
マルスやマリーン、フェイやリンがいた時のように。」
「・・・はい。今度こそ魔人を倒しましょう!」
ウェインはケイトの手を握って飛び上がり、魔人の待つ地上へと踊り出た。
「待たせて悪かったな。いま叩き潰してやる。」
「ふん、待ちぼうけをさせた奴の態度とは思えんな。
まあいい、今度こそケリを着けてやる。行くぞウェイン!」
魔人は翼のブレードを伸ばし、超高速で飛びかかって来る。
「むうんっ!」
ウェインは大剣を構えて正面から受け止め、すぐさま斬り返した。
魔人はスウェインバックでかわし、手の平の穴からレーザーを放ってくる。
「そんなものは効かんッ!」
片手でレーザーを弾き飛ばし、光の砲弾を撃って反撃する。
しかし光の砲弾は魔人の身体をスルリと抜け、後ろの岩場にぶつかって炸裂した。
「幻術か!」
足元に殺気を感じ、大剣を突き刺す。
すると地面が割れて魔人の爪が伸びてきて、しなる鞭のように襲いかかってきた。
「鈍い!遅い!」
竜巻のように剣を回転させ、一気に爪を斬り払う。
そして高く舞い上がり、離れた所に立つ小屋に向かって光の刃を放った。
「ぐうう・・・。見つかったか・・・。」
幻術で身を隠していた魔人は、ザックリと左の手足を斬りおとされた。
しかしすぐに再生させ、腕から剣を伸ばして飛びかかってくる。
「この程度で俺は倒せないッ!見よ、これぞ科学と魔術の融合だッ!」
両腕から伸びた二本の剣が、プラズマを纏って青く輝く。
そして陽炎のように揺らぎ、無数の刃に枝分かれして斬りかかってきた。
「この程度か?」
ウェインは剣を振り、余裕で捌いていく。
しかし剣のプラズマが放電し、一瞬だけ身体が痺れる。
「くッ・・・・・。」
「ははは、これで終わりだ。死ね!」
揺らめくプラズマブレードはウェインを囲むように六芒星を作りだし、グルグルと回転して高熱の火球を生み出した。
「ぐああああああああ!」
「ははははは!いくら竜人といえど、六万度の灼熱には耐えられまい?
そのまま蒸発するがいい!」
プラズマが生み出す火球は、さらに温度を上げていく。
あまりの高熱に回りの景色が歪んで見え、灼熱の熱風が辺り一面に吹き荒れる。
「きゃああああああ!」
ケイトは聖者の腕輪をかざして身を守る。
淡い光が膜のように身体を包み、灼熱の風を遮断してくれる。
「ウェインさん・・・・今助けます!」
火球に焼かれるウェインを見つめ、祈るように手を組む。
一切の雑念を捨て、ただ神の意志に心を委ねていく。
すると腕輪に填められた青い宝石から光の柱が立ち昇り、ウェインを優しく包んでいった。
「むう・・これはあの女の仕業か。小賢しい!」
魔人はケイトに向けてレーザーを放つ。
高熱のレーザーは光の膜を貫通し、ケイトの肩を撃ち抜いた。
「あああッ!」
「それ、もう一発。」
今度は左の太ももを撃ち抜かれる。
「きゃああああッ!」
激痛に耐えかねて膝をつき、祈りが消えて光の柱が消滅していく。
「はははは!大した力も無いくせに、出しゃばるからこういうことになる。
あの世でウェインが来るのを待っているがいい!」
魔人はケイトの頭に狙いを定め、レーザーを撃とうとする。
しかし銀色の龍が襲いかかり、その腕を喰いちぎっていった。
「ぐああああああ!おのれ、これはウェインの龍・・・・。」
後ろを振り向くと、プラズマの火球は跡かたもなく消し飛ばされていた。
「バースよ。科学という力を得たおかげで、確かにお前のパワーは格段に上がっている。
しかし、それこそが弱点となっているのだ!」
「な、なんだと・・・。今の俺に弱点だと・・・・。」
ウェインは剣を構え、金と銀の龍を刃に纏わせる。
そして最大級の竜気を放って魔人を睨みつけた。
「お前の本来の恐ろしさは、巧みな魔術と戦術だ。
パワーでは俺に劣るが、魔術と呪術を巧みに使うことで、幾度となく俺を苦しめてきた。
しかし、なまじ科学という力を手に入れたが為に、パワーに偏った戦い方をしている。
力と力でぶつかり合うなら、俺の方が上だッ!」
金と銀の龍が混ざり合い、竜牙刀に吸い込まれていく。
そして七色の竜が現れ、ウェインを包み込んで雄叫びを上げた。
「これが最後だバース!肉片一つ残さず粒子に砕かれるがいいッ!」
七色の竜は牙を剥き出して咆哮する。
そしてウェインは剣を突き出し、魔人に向かって突撃していった。
「おのれ、負けるかあッ!」
魔人はプラズマブレードをクロスさせ、黒い稲妻を纏って迎え撃った。
「うおおおおおおおおおおおッ!」
「ぬうううううううううううッ!」
ウェインの大剣と、魔人のブレードがせめぎ合う。
しかし圧倒的にウェインの力が勝り、七色の竜を纏った刃が魔人を貫いた。
「ぐおおおおおおおおおおお!馬鹿なあああああああッ!」
「このまま消え去れええええええええいッ!」
魔人を突き刺したまま、ウェインは空高く飛び上がって行く。
そして剣に力を込めて、七色の竜を解き放った。
「グオオオオオオオオオオオオンッ!」
魔人は七色の竜の牙に貫かれ、雲を突き抜けて舞い上がっていく。
「ぐあああああああああああ!おのれウェイイイイイィィン!」
七色の竜はトドメとばかりに魔人を噛み砕き、宇宙に達するほどの上空で炸裂した。
綺麗な虹色の光が飛び散り、まるで流星群のように降り注ぐ。
魔人は粒子のレベルに砕かれ、塵となって消えていった。
「やった!ついに魔人を倒した!」
ケイトは手を叩いて喜ぶ。
しかし何者かに首を掴まれ、ギリギリと締め上げられた。
「ああああああああ!」
「ケイト!」
ウェインは慌ててケイトの前に降り立つ。
そして彼女を締め上げる男に向かって剣を構えた。
「・・・ロビン・・・。またクローンで復活させられたのか・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
ロビンは虚ろな目でケイトの首を絞める。そしてニヤリと笑って目を光らせた。
「チッチッチ。なってないぞウェイン。俺を甘く見過ぎだ。」
「その声はバース・・・。貴様、どこまでしぶといんだ・・・。」
「ふふふ、さっきお前が言ったじゃないか。
俺の強さは、魔術と戦術の巧みさだと。だからほら、こうしてクローンを使って復活し、人質まで取ってやったぞ。」
「・・・貴様・・・。相も変わらず狡猾な奴だ。」
「おっと動くな。この女がどうなってもいいのか?」
ロビンの姿をした魔人は、ギリギリとケイトの首を締め上げる。
「ああああああああああ!」
「やめろ!そいつを放せ!」
「断る。もしこの女が大事なら、剣を引っ込めてもらおうか。
そして俺が竜王の力を頂くまで、そこで大人しく見ていろ。」
「くッ・・・・。俺としたことが迂闊だった。」
悔しそうに顔を歪め、ウェインはゆっくりと剣を下ろす。
するとケイトは首を振り、「ダメ・・・」と呟いた。
「竜王の・・・力を奪われたら・・・・地獄の門が・・・・開かれちゃう・・・。
それだけは・・・・絶対に・・・・、あああああああ!」
「やめろバース!」
「ふふふ、なかなか気の強い女だが、しょせんは人間。俺に抗う力などない。
さあ、ウェインよ。そこでじっとしていろ。下手な動きをみせたら、この女が死ぬぞ。」
「・・・くッ・・・。おのれバース、許さんぞ・・・・。」
何とか隙をみてケイトを助けようとするが、魔人はしっかりと彼女の首を掴んでいる。
下手に動けば一瞬でケイトは殺される。
ウェインは歯軋りをしながら、ただ黙って見ているしかなかった。
しかし、そこでふと考えた。
なぜ魔人は、ロビンの姿で復活したのかと。
竜王の力を得る為か?
いや、もしそうなら、まず自分の身体を復活させて、それからロビンのクローンを作るはず。
ならなぜロビンの姿で・・・・?そう考えた時、ふと閃いた。
「そうか・・・。クローンの力は完璧ではないんだな。
分割すればするほど、バースの魔力は弱くなっていく・・・。
本来ならば、ケイトを人質に取るなど姑息なことはしないはずだ。
あいつも相当追い詰められているということか・・・。」
ウェインは呟き、魔人を睨む。
しかしいくら力が弱まっているとはいえ、放っておけば何をしでかすか分からない。
今ここで確実にトドメを刺さなければ、いつか必ず力を取り戻し、災いを振りまく。
だがクローンの力がある限り、トドメを刺してもキリがない。
追い詰められているのは、魔人だけではなくウェインも一緒だった。
「さあ、それでは祠に戻ろうか。女よ、無駄な抵抗はするなよ。」
魔人はケイトの首に腕輪を回し、祠の入り口へ向かって行く。
しかしその時、「止まりなさい!」と高い声が響いた。
「お前は異界の女・・・。」
「ケイトを離すのよロビン!あなたはそんなことをする人じゃないでしょう?」
クレアは銃を構えて狙いを定める。
「待てクレア!あれはロビンではなく魔人なんだ!」
「分かってるわ。あれはロビンの気配じゃない。ロビンの皮を被った悪魔よ。
だからこそ、ここで仕留めないといけない。
ロビンの為にも、私達の世界の為にも!」
クレアは軍人の顔に戻っていた。
凛々しい表情は微塵の迷いもなく、戦いの覚悟を決めた戦士の目をしていた。
「ふふふ、異界の女よ。愛しい恋人を撃てるのか?
これはお前を愛した男だぞ。撃ってもいいのか?」
「ええ、撃てるわ。」
クレアは平然と答えた。
「ここへ来てからショックなことばかりで混乱していたけど、今は違う。
私はラーズの星を守る軍人!悪魔の戯言にはもう惑わされない!」
クレアは銃のスコープを覗き、魔人の額に狙いを定める。
すると彼女の後ろからトリスと老剣士が走って来た。
「ウェインよ!クレアが銃を撃ったら、灼熱の竜巻を放ってくれ!」
トリスは鬼気迫る声で叫ぶ。
「なぜだ?そんなことをしたらここにいる者達は・・・。」
「それでも構わん!クレアの銃に込められた銃弾は、細胞の分裂を無力化する細菌兵器なのだ!」
「細菌・・・兵器・・・?」
「もしその細菌がばら撒かれれば、この辺り一帯は死の世界になる!下手をすれば他の場所にまで被害が及ぶ。」
「なんだと!そんな危険な物を使わせる気か!」
「仕方がないのだ。これ以上魔人を分裂させるわけにはいかん・・・。
だから・・・・、クレアが銃を撃ったら炎の竜巻で細菌を焼き払ってくれ。」
ウェインは眉を寄せて険しい顔をする。そしてケイトの方を振り向き、大きく頷いた。
「確かに・・・それしか方法が無さそうだ。
ケイト、お前は絶対に助けてやる!だから・・・安心していろ。」
そう言って小さく笑いかけると、ケイトはコクリと頷いた。
「待て!この女がどうなってもいいのか!
そんな兵器を使えば、この女まで一緒に・・・・、」
「いいや、その前に俺が助ける。死ぬのはお前だけだ。」
ウェインは剣を構え、いつでも飛びかかれるように足を踏ん張る。
そしてクレアを見つめて言った。
「やれクレア!お前の手で、奴にトドメを刺してやれッ!」
「当然よ!あなたが犯した罪の報い、この銃弾で受けるがいいわッ!」
「やめろ!」
魔人はケイトを盾に身を隠す。
しかしクレアは構わず銃を撃った。
それは魔人とはまったく違う方向に飛んでいき、硬い岩に当たって跳ね返った。
「がはッ!」
細菌兵器を内蔵した弾丸は、跳弾となって魔人のこめかみを貫いた。
弾丸は魔人の頭の中で炸裂し、細胞の分裂を阻止する細菌が一気に溢れ出す。
それは瞬く間に身体じゅうに行き渡り、分裂の阻止と共に、細胞の破壊も始まる。
「・・・ごご・・・がはあああああ・・・・。」
魔人はケイト首を押さえて苦しみ、天を仰いで血を吐いた。
ウェインはその隙に一瞬で距離を詰め、魔人の腕を斬り落としてケイトを救い出した。
「ケイト!大丈夫か!」
「・・あ・・あああ・・・・・・。」
弾丸から放たれた恐ろしい細菌は、魔人の近くにいたケイトにも感染していた。
ガクガクと肩を震わせ、苦しそうに顔を歪めている。
「大丈夫だ!すぐに助けてやる!」
ウェインは右手に黄金の竜気を纏わせ、一点に収束させてケイトの胸に打ち込んだ。
「むうん!」
「ああ!」
ビクンとケイトの身体が跳ね、暖かい竜気が体内を駆け巡っていく。
竜の持つ強い生命力が身体を満たし、瞬く間に細菌を駆逐していった。
「ああ・・・・ウェインさん・・・。」
「よかった。無事でよかった・・・。」
「私・・・また守られちゃいましたね・・・。私が守るなんて、偉そうなこと言ったのに・・・。」
「いいさ、魔人さえ倒せれば問題ない。そして、お前が無事ならそれでいい。」
「ウェインさん・・・。」
ウェインの言葉に、ケイトは小さく微笑んで目を閉じた。
「さあ、お前はここにいろ。俺には最後の仕上げが残っている。」
ウェインは剣を振りかざし、大地を蹴って回転した。
「むうううんッ!」
灼熱の炎を纏う竜巻が立ち昇り、凄まじい熱風で細菌を吸い上げていく。
「これで終わりだ・・・・。」
ウェインはゆっくりと剣を下ろしながら呟く。
しかし魔人の黒い爪が伸びてきて、両腕を斬られてしまった。
「がはあッ!馬鹿な・・・。」
「ウェイイイイイン・・・・・。
このままでは終わらんぞ・・・。せめて・・・せめてお前らも道連れだ・・・・。」
魔人は最後の力を振り絞り、ゾンビのような姿で黒い息を吐き出した。
「ああ・・・なんてこと・・・・。」
魔人の放った黒い息は、炎の竜巻を飲み込んでいく。
そして辺りに漂う細菌を活性化させ、風に乗せてばら撒いていく。
「ダメ!そんなことしたらみんな死んじゃう!」
ケイトは手を伸ばして叫ぶ。
黒い風を吸い込んでしまったトリスや老剣士、そしてクレアは苦しそうに胸を押さえて倒れていく。
その風はさらに広がり、里じゅうの人間が細菌に侵されて倒れていった。
「ふははははは!ウェインよ、くやしかったらこの風を止めてみろ!
その傷ついた腕では無理だろうがな、ははははは!」
「バース・・・。おのれえええええッ・・・・。」
「ふふふ、これにて竜人と魔人の戦いは終わりだ。
ウェインよ、俺の最後のプレゼントを有難く受け取れ!
はははははは!」
魔人は再び黒い息を吐き出し、乾いた砂となって消えていった。
「バースめ・・・。最後の最後でこんな足掻きをみせるとは・・・。」
ウェインは立ち上がり、剣を握ろうとするが、手に力が入らなかった。
「くそッ・・・。あの爪には細菌と呪術がかかっていたか・・・・。
しばらく傷は治りそうにないな・・・。」
ウェインは悔しそうに黒い風を見つめる。細菌と呪術が混ざり合った風は、里を死の世界に変えようとしている。
このまま放っておけば、風は気流に乗って広がり、さらに大きな被害で出る。
しかし今の自分にはどうすることも出来ず、歯を食いしばって見ているしかなかった。
「・・・大丈夫です、ウェインさん。私が・・・私がみんなを助けてみせます。」
「ケイト・・・・。」
ケイトは長い髪を揺らし、二コリと笑いかけた。
「ウェインさんは竜人だからともかく、私も細菌には感染していません。
それはきっと、この腕輪のおかげ・・・・。」
聖者の腕輪は淡い光を放ち、ケイトを細菌から守っていた。
「だから、この力をもっともっと引き出せば、みんなは助かるはず。
私はもう一度この腕輪で奇跡を起こして、みんなを守ってみせる!」
ケイトは目を閉じ、聖者の腕輪を握って祈りを捧げる。
魔人の残した黒い風は、里の空で悪魔のように渦巻いていた。

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