勇気のボタン 二人の道 第九話

  • 2014.02.08 Saturday
  • 18:28
藤井から別れを告げられて半年。
何度も謝りの電話やメールを送ったが、返事は一切なかった。
まあ当然だろう。俺は言ってはいけないことを言ったのだから。
俺とあいつは一緒だ。
だから・・・あいつの気持ちは分かっていたのに・・・。
なのに、それを踏みにじるようなことを言ってしまった。
こんな・・・こんな動物と話せる以外取り得のない男と一緒にいてくれたのに。
だからこの半年間は、なるべく藤井のことを考えないようにしていた。
思い出すと辛くなるし、自分が情けなくなってくるし。
本当に誰かを好きになるっていうことは、その分苦しむことなのかもしれない。
そして、その人のことがどんなに愛しくても、永遠に関係が続くわけじゃないのかもしれない。
これからもっともっと時間が経って、「そういえばあんな恋愛もあったなあ」なんて言う日が来るのかもしれない。
でも・・・どんな言葉を並べたところで、それは結局自分を慰める言い訳なのだ。
偶然立ち寄ったコンビニで藤井と再会し、俺の心は痛いほど疼き出した。
忘れたと思っていたのに、藤井を見た瞬間に身体が熱くなった。
俺は・・・まだあいつのことが好きなんだ・・・・・。
そうさ、本当のことを言うと、この半年の間に藤井のことを考えなかった日は一度もない。
あいつのことを思い出すたびに、それを忘れようと必死に誤魔化していただけだ。
・・・・まだ・・・終わってないのかもしれない・・・・。
あんな場所で偶然に再会して、しかも藤井の方から話しかけてきた。
いや、話しかけるというより、何かを頼もうとしていた。
それもかなり切羽詰まった顔で・・・。
別れた男に、あそこまで必死な顔で頼むことってなんだろう?
また動物に関することかな?
それとも、もう一度同盟を組もうとか?
恋愛関係は無理だけど、動物のことに関してだけは仲良くしようとか?
・・・・分からない。全てはただの想像でしかない。
動物たちは、俺に気を遣ってか一度も藤井のことを話題に出したことはない。
まだ藤井と付き合う前、一度だけあいつと大ゲンカをしたことがあった。
あの時も、こいつらは気を遣って藤井の名前を口にしなかったっけ。
でも・・・本当は言いたいだろうな。
藤井のことや、あいつと過ごした思い出のことを。
・・・悪いなお前ら、毎回毎回気を遣わせてしまって。
飼い主なのに、余計な心配や気づかいをさせてしまって。
・・・・季節は初夏。
ちょうど二年前のこの時期に、藤井と再会したんだ。
あの夜の公園で、モンブランを捜しに行った時にバッタリと。
いや、バッタリじゃないな。あいつは俺に会いに来るつもりだったんだから。
藤井のことを考えて苦しいと思うのは、また同じ季節がやって来たからかな?
夏を運んでくるこの匂いが、妙に俺の心を掻き立てる・・・。
開けた窓の外にはトンボが飛んでいるけど、俺の心は沈んだままだ。
ずっとずっと前にやめたタバコにも手を出してるし、これじゃ成長する前の俺に逆戻りじゃないか。
淡い夏の匂いを感じながら、タバコの煙がふわっと宙に消えていくのを眺めていた。

            *

藤井と会った日の夜、マサカリの散歩から帰って動物たちに餌をやっていた。
いつもならもっと騒ぐのに、この半年間はずっと大人しい。
最初は戸惑ったけど、今は慣れてしまった。
あれだけ賑やかだった俺の家は、いまやシンと静まり返っている。
マサカリとモンブランの喧嘩も減ったし、カモンの毒舌もキレがなくなっている。
チュウベエはさらに間が抜けて馬鹿になっているし、マリナはさらに大人しくなってしまった。
きっと・・・こいつらの心の中にあることは、俺と同じなんだ。
『藤井に戻って来てほしい』
でも余計なことをベラベラ喋れば、思わず藤井の名を口にしてしまうことを恐れているんだろう。
まったく・・・俺は飼い主として失格だな。
コンビニで藤井と会った時の熱はまだ抜けず、夕食を食べる気にもなれなくて出かけることにした。
玄関にいって靴を履いていると、マサカリがトタトタと歩いてきた。
「どっか行くのか?」
「ああ、ちょっと散歩にな。お前も来るか?」
「いや、さっき行ったばかりだからいいや。飯食って腹も重いし。」
「そうか。一時間ほどで帰ってくると思うから、留守番を頼むぞ。」
マサカリは返事をする代わりに尻尾を振り、部屋に戻ってクッションに寝そべっていた。
俺はゆっくりとドアを開けて外に出て、少しばかり温い空気を吸い込んだ。
「まだちょっとだけ陽が残ってるな。」
地平線には薄っすらと紺色の光が残っていて、街に濃いシルエットを作り出している。
俺はパタンとドアを閉め、ポケットに手を突っ込んで歩き出した。
階段を下りてアパートの敷地から出て、もう一度初夏の空気を吸い込んだ。
「夏ってのは・・・・どうしてこう切なくなるんだろうな。
ワクワクもするけど、それ以上に切ない気持になってくるよな。」
楽しいことの裏側には、それと同じくらいの悲しさがある。
花見の季節に、そしてクリスマスに、それを楽しむ人間の裏で、寂しさに涙を流す人間もいる。
俺も、ずっと昔はその裏側の人間だった。
生来人と喋るのが得意ではなくて、ほとんど友達は出来なかった。
初めての彼女だって、二十歳を超えてから出来たのだ。
「動物が・・・・動物だけが・・・俺を支えてくれたな。」
大人になるまでの間、俺が心を開いているのは動物に対してだけだった。
この力のせいで同級生からはいじめられるし、親には頭を疑われて病院へ連れて行かれたこともあった。
周りにいる人間は、誰一人として俺を理解してくれなかった。
「あの時は辛かったな・・・誰も味方がいなくて・・・・。」
そう、あの時は誰一人として味方はいなかった。
人間には・・・・・・。
でも、動物は違った。
あれは小学生の時、ドルという野良犬と仲良くなったことがある。
白い毛をした雑種の老犬で、優しい顔をしたメスだった。
ドルは元々は飼い犬だったのだが、家族が引っ越しをする時に捨てられたのだった。
そしてドルの家には俺と同じくらいの男の子がいて、その子とはずいぶん仲が良かったと言っていた。
きっとドルは、俺に対してその男の子のことを重ねて見ていたのだろう。
夏休みに入っても、俺はずっとドルと遊んでいた。
友達のいない俺の為に、日が暮れるまで毎日一緒に遊んでくれた。
しかしある日、突然ドルは姿を見せなくなった。
俺はしばらくドルを捜し回った。夏休みの全てを使って、ドルの行きそうな場所を何度も捜したのだ。
しかしいくら捜しても見つけることが出来ず、きっと嫌われてしまったのだと落ち込んだんだ。
でも・・・夏休みが明けて学校が始まった時、同級生が会話しているのを聞いて真実を知った。
『あのウロウロしてた白い犬、保健所に連れて行かれたらしいよ。
チーちゃんのお母さんが電話したんだって。』
・・・・・ショックだった。
俺の・・・俺の一番の友達だったのに・・・・。
あんなに優しくて、あんなにずっと一緒に遊んでくれたのに・・・。
一度人に捨てられて、それでも生きていこうと決めていたのに・・・・。
なんでそんな酷いことをするんだ?何で俺から友達を奪うんだ?
子供だった俺はますます心を閉ざし、、ほとんど誰とも喋ることはなくなった。
そう・・・俺は・・・あの時から人間を嫌いになっていったんだ。
俺をいじめる同級生、俺を病院に連れていく両親、そして・・・ドルを保健所へ送った大人達・・・。
人間とは何て嫌な生き物なんだ!でも・・・俺も人間じゃないか。
子供だった俺は、何ともいえない矛盾に嫌気がさし、動物と喋ることさえ避けるようになっていた。
でも・・・ある一匹の猫と出会って変わった。
その猫はたまきという名前で、ドルと同じような真っ白な綺麗な猫だった。
確かたまきと会ったのは二十歳くらいの時だったと思うが、それでもたまきの方が何倍も貫禄があった。
人生の酸いも甘いも知り尽くしたようなメス猫で、なぜか人間の社会のことにも通じていた。
そういう意味ではとても変わった猫だったが、俺は彼女に救われたのだ。
『あんたの持つその力は、なんにも恥ずかしいものじゃない。
胸を張って堂々としていればいいの』
その言葉のおかげで、どれほど俺が救われたことか・・・。
人間嫌いは相変わらずだったが、動物に対しては心を開くようになっていた。
多少は明るくなった俺は、お礼を言う為にたまきが住みついている神社に行ったのだが、彼女はいなかった。
その後も何日か通ったが、やはり会うことは出来なかった。
今思えばとても不思議な猫だったが、たまきのおかげで俺は立ち直れたんだ。
そしてそれから年月が経ち、マサカリ達と出会った。
みんな個性的で、一緒にいると退屈しない連中だった。
それからまた月日が経ち、俺は夜の公園で藤井と再会した。
その出会いこそが、本当の意味で俺を変えてくれたのだ。
藤井と過ごす時間や、同盟の活動の中で知り合う人間や動物のおかげで、俺は変わったんだ。
自分に自信が持てるようになったし、こんな俺にも勇気があることを知った。
だから・・・ずっと藤井と一緒にいたいと思ったんだ。
藤井がいて、動物たちがいて、他にはなんにもいらない。
それこそが俺の人生のすべて。そう思えるくらい、大切なものだったのに・・・。
「ほんとに馬鹿だよなあ・・・俺は・・・・・。」
夜の街灯を見上げ、寄って来る羽虫を払いながら呟く。
季節が変わったおかげで夜でも寒くはないが、俺の心はずいぶんと冷え切ったままだ。
何も考えずに、そして何も感じずに歩いていると、いつの間にかあの公園に来ていた。
「なんだよ・・・無意識のうちにここへ来ちゃったのか・・・・。
どんだけ未練がましいんだか俺は・・・・。」
バカバカしくなって小さく笑い、公園の中に入って遊具を見渡した。
「ここだよなあ・・・ここでモンブランの名前を呼んでたら、林の奥から藤井が出てきたんだ。」
あの時はビックリしたが、今同じことが起きたらどうだろう?
俺はやっぱりビックリするのかな?
「・・・ははは、何考えてんだか俺は・・・。
呼んでも藤井が出て来るわけないんじゃんか。」
分かっている。そんなことは分かっているのに・・・なぜか気持ちが抑えられない。
今すぐにでも林の奥に向かって、藤井の名前を叫びたい。
そうすれば・・・・きっと藤井は・・・・・。
気がつけば口元に手を当てていた。
そして大きく息を吸い込み、林の中に向かって叫んだ。
「藤井いいいいいいい!」
俺の声が暗い林の中に吸い込まれていく。
・・・・何も返ってこない。ただ生温い風が吹いてくるだけだ。
もう一度息を吸い込み、藤井の名前を叫ぶ。
「藤井いいいいいいいいいい!」
今度はさっきより大きめに叫んだが、やはり林の中からは何も返ってこない。
耳を澄ましていると、かすかに葉っぱが揺れる音が聞こえた。
しかしそれは風に揺れているだけであって、俺の声に返事をしているわけではない。
「・・・あるわけないか、藤井の声が返ってくるなんて・・・。
最初から分かってたけど、でも・・・・寂しいな。」
しばらく真っ暗な林の中を見つめ、自分を納得させるように頷いた。
「終わりさ・・・もう。終わりなんだ・・・。」
小さな呟きは温い風と共に消えていく。
俺はポケットに手を突っ込み、思い出の場所に背を向けて振り返った。
そして・・・・・・我が目を疑った。
俺の目の前に、じっとこちらを見つめる藤井が立っていた。
「藤井・・・・・。」
思わず声が漏れてしまい、しかしその後は何も言葉が出て来なかった。
鼓動はバクバクと激しく唸り、瞬きさえ忘れてその顔に見入っていた。
「・・・・・久しぶり。」
少しだけ伸びた髪を揺らし、藤井は語りかけるように笑った。
しかしすぐに笑顔は消え、また静寂が戻ってくる。
温い風が頬を撫でていき、俺の鼓動はさらに速くなっていく。
そして無意識に足が動いて、藤井の前に歩み寄っていた。
「藤井・・・いつからいたんだ・・・?」
じっと顔を見つめると、藤井は少しだけ目を逸らした。
「有川君が来る前から・・・ずっと・・・。」
有川君か・・・・。そうだよな、もう今は付き合ってるわけじゃないんだもんな。
小さな寂しさは、一瞬にして大きな悲しみに変わり、痛いほど胸を締め付けた。
藤井は目を逸らしたまま公園の横にある蒸気機関車を見つめ、懐かしそうに笑った。
「むかし・・・ここに野良猫の親子がいたよね。
お腹を空かした子供を抱えて、お母さんの方はガリガリに痩せてさ。」
俺も蒸気機関車を見つめ、「ああ、覚えてるよ」と答えた。
「あの時は大ゲンカをしたんだ。
子猫をどうするかで、お前と母猫は意地を張り合ってたもんなあ。
俺がそれに対して余計なツッコミを入れたもんだから、お前を怒らしちゃったんだ。」
「ふふ・・・あの時は本当に大変だったね。
なんとか一匹だけ里親が見つかったけど、他の子猫は母猫と一緒にどこかへ消えちゃったから。
みんな元気でいてくれるといいけど・・・・。」
藤井は目を細め、あの時の猫達を思い浮かべているようだった。
「そのあと有川君に電話して、仲直りしたんだよね。
あの電話をかける時・・・すっごく緊張したんだよ。」
そう言って藤井は俺の方を見つめ、ニコリと笑ってみせた。
その笑顔は、俺がよく知っている藤井の顔だった。
いつでもこの笑顔が傍にあったんだ・・・。
俺も動物たちも、この笑顔のおかげで明るくなっていたんだ。
「あの時はちゃんと仲直り出来たけど・・・・今度はそうはならなかった。
ずっと考えてたんだけど・・・やっぱり私は・・・・。」
藤井は言いづらそうに口を噤み、悲しそうな瞳で公園を見つめた。
そうさ、俺が馬鹿なせいで喧嘩をして、俺が馬鹿なせいで別れたんだ。
全ての理由は俺にあるんだから、俺が動かなきゃ始まらないんだ。
だから・・・・ちゃんと謝らないと・・・・。
「藤井。」
俺は低い声で呼びかけ、藤井に近寄った。
「・・・・・・・・・・。」
藤井は何も言わずにこちらを見上げ、俺の言葉を待っている。
大丈夫だ・・・ちゃんと素直な気持ちを言えばいいだけなんだから・・・。
考えることなんてないんだ。心の中から出て来る言葉をそのまま・・・。
「お、俺さ・・・・この半年間、ずっとお前のことを・・・・・、」
意を決してそう言いかけた時、俺の言葉を遮るように藤井が口を開いた。
「ねえ、一つだけお願いがあるんだ。」
「お、お願い・・・・?」
突然言葉を遮られたせいで、俺は拍子抜けして素っ頓狂な声を出した。
藤井は鞄の中を漁り、一枚の写真を取りだした。
そしてわずかに躊躇いながら、それを俺の方に差し出した。
「なんだこの写真は?」
「うん・・・ちょっとね・・・。とりあえず見てみて。」
なんだか意味ありげな言い方だな。
受け取るのが怖い気もするが、断るわけにもいかない。
ゆくっりと手を伸ばして写真を受け取り、じっと見つめた。
「これは・・・子猫?」
街灯が照らす写真の中には、小さな子猫が写っていた。
場所はどこかの草原だろうか?
青々とした草が茂り、晴れた空が眩しく広がっている。
子猫はカメラに目を向けて手を伸ばしていて、濃いキジトラ模様が印象的だった。
「可愛い子猫だな。それで、この猫がどうかしたのか?」
「うん・・・実は・・・・・。」
藤井は言いにくそうにもじもじと指を動かしている。
「なんだよ、何か特別な事情でもある子猫なのか?」
「・・・特別かと言われると、特別かもしれないけど・・・・。
でも事情があるのは私の方なの・・・。」
「お前に?何の事情があるんだ?」
こいつがもじもじとするのは珍しいことではないが、今日は少しばかり様子が違っていた。
まるで自分を責めるような感じで唇を噛み、肩を竦めて俺の顔をチラチラと窺っている。
「あのね・・・その子の母猫を捜してあげてほしいんだ。」
「この子猫の母猫を?ということは、こいつは野良猫ってことか?」
「うん。二週間前に、私のマンションの近くで拾ったんだ。
雨に濡れて可哀想だったから、家に入れて乾かしてあげたのね。
そうしたら急に泣きだしたの。お母さんに会いたいって。」
「まあこれだけ小さい猫だったら母親が恋しいだろうな。」
「そうなの。ずっとお母さんのことを呼んでいて、すごく寂しがってる。
だから・・・私が必ずあなたのお母さんを見つけてあげるって約束したんだけど、全然うまくいかなくて・・・。
でも諦めるわけにはいかないから、地道に捜し回っていたのね。
張り紙や聞き込みもしたけど、それでも上手くいかなくて困ってたら・・・。」
そこでまた言い淀み、今度は完全に俯いて黙ってしまった。
なんだよ、そんなに言いにくい事情があるのか?
俺は緊張しながら藤井の言葉を待った。
「・・・その・・・実家に帰らなきゃいけなくなって・・・・。」
「実家に?」
「うん・・・・・。」
「なんか暗い声だな?どうかしたのか?」
「・・・・・・・・・・・。」
俺は思った。これはまったく藤井らしくないと。
こいつが動物のことをほったらかして、他の事を優先するなど考えられない。
「その・・・実家に帰るってのは、一時的に帰るんじゃなくて、向こうに住むってことなのか?」
「・・・多分ね。もうここにいる理由もないし、それに・・・大事な用があるから。」
「大事な用?この子猫をほったらかしてまでやる用事か?」
「私はその子のことを優先したい。でも・・・今回ばっかりはそうもいかないから。」
「なんだよ、さっきからもったいぶった言い方してさ。俺には言いにくいことなのか?」
そう尋ねると、藤井は小さく首を振った。
鞄を握りしめ、ゴクリと喉が鳴るのが聞こえた。
「言いにくいっていうか・・・今だから言えるっていうか・・・・。」
「今だから言えるって・・・・・どういうことだよ?
まさか俺達が別れたことに関係してるのか?」
「・・・・・・うん。」
一気に不安が押し寄せてきた。
別れたから言えることなんて・・・だいたい理由が限られているんじゃないか?
「もしかして・・・他の恋人が出来たからとか?」
心臓が口から飛び出しそうなほど緊張して尋ねると、藤井は険しい顔で横を向いた。
「あのね・・・悠ちゃんと別れたあと、久しぶりに実家へ帰ったんだ。
自分から別れようって言ったくせに、すごく落ち込んじゃって・・・。
なんだかこの街にいられなくなって・・・お正月の連休があったから、しばらく戻ろうと思って。
そしたら・・・向こうで昔に付き合ってた人に会って・・・それで・・・・。」
「・・・・ヨリを・・・戻したのか?」
ああ・・・目の前が暗くなっていく。
もしここで「うん」と言われたら、俺は地獄へ真っ逆さまじゃないか。
こんな展開はぜんぜん予想していなかったな・・・。
そんな俺の心を見透かしてか、藤井は少しだけ笑った。
「違うよ。今はまだ・・・そんな関係にはなってないから。」
「あ・・・ああ!そ、そうか・・・・よかった・・・。」
急に安堵が押し寄せ、口の中が渇いて舌を動かした。
「でもね、この先はどうなるか分からない。」
「・・・・え?そ、それは・・・どういう意味で・・・?」
「その人はね、今でも私のことが好きだって言ってくれたの。
そして、もしよかったら・・・自分の仕事を手伝ってくれないかって。」
「ほ、ほほう・・・そうなのか・・・へへえ・・・なるほど・・・・。
で、それはどんな仕事なんだい、ええ?」
なんだ、今の聞き方は?
俺の頭が明らかにおかしくなってるぞ。
どうやら予想もしない展開にバグを起こしているらしい。
藤井は可笑しそうに少しだけ笑い、話の先を続けた。
「その人が今やってる仕事っていうのが、ペット探偵なんだ。」
「ぺ・・・ペット探偵・・・?」
「その人ね、ちょっとだけ悠ちゃんと似てるところがあって、動物は好きなんだけど、人が苦手だったの。
だから三年前にサラリーマンを辞めて、二年くらい時間を掛けてしっかりと動物のことを勉強したんだって。
そして去年の夏頃に探偵業を始めて、今はそれなりに上手くやってるみたい。
でも人手が足りなくて困ってるって言ってた。
こういう仕事に憧れる人は多いけど、実際は地味で大変だし、忍耐も根気もものすごく必要だから、みんな続かないんだって。
本当に動物が好きで、本当に動物を愛している人じゃないと、すぐに辞めちゃうみたい。」
「へええ・・・・そういうもんなのか・・・。」
まあ何となく分かる気がする。
動物と話せる力を持っていても、動物に関するトラブルを解決するのは難しいのだ。
ならば普通の人がペットを捜そうとなると、もっともっと大変な仕事に違いない。
そしてその大変な事を脱サラしてまで始めるとは、よっぽど動物のことが好きなんだろう。
「なんかすごい仕事だな。暇がほしくて会社を辞めた俺とは大違いだ。
ぜんぜん似てないんじゃないか、その人?」
「・・・そう言われれば、似てるとも言えないかな。
何となく雰囲気が似てるところはあるけど、あの人はもっと計画的というか・・・。」
う〜ん・・・サラリと貶されているのか、これは?
しかし俺が無計画な人間であることは当たっているので、何も言い返せないが。
「その人・・・・沖田君っていうんだけど、沖田君はとにかく動物が好きなんだ。
それが縁で付き合い始めたようなものだったから。」
「そうか・・・じゃあお前は、沖田君とやらの所に戻るってことか?」
「そう・・・なるね。ずっと迷ってたけど、もうこの街にいる理由もないし、会社も辞めちゃったし。」
「お、お前も会社を辞めたのか?」
「そうしないと実家に帰れないでしょ?今月の中旬に退社して、すぐに向こうに戻るつもりだったんだ。
でも・・・その時にこの子を拾ったから・・・・。」
藤井は俺に渡した写真を見つめて言う。
その目は、子猫に対して申し訳なさそうに謝っているようだった。
「そっか・・・じゃあ俺に会いに来たのは、この子猫のことを任せる為だったんだな?」
「うん・・・。沖田君の仕事が忙しいから、すぐに手伝ってくれって言われて。
だから・・・本当に身勝手だって分かってるけど、その子のことをお願い出来ないかな?」
「・・・・それは・・・・。」
うん、別にいいよ!って簡単に引き受けられるわけないだろ。
こんな話を聞かされて、しかもこんな予想外の展開になって・・・・。
今さら俺の気持ちなんか言えないじゃんか!
困った顔で黙っている俺を見て、藤井は窺うような目で見つめてくる。
「やっぱり・・・無理かな?
子猫の母親捜しを出来る人なんて、有川君しか思いつかなくて・・・。」
そりゃまあ、母猫を見つけるなんてのは、動物と喋れる人間にしか無理だろう。
しかし俺は躊躇っていた。
この頼みを引き受けてしまえば、それは藤井との決別を意味するように思えたからだ。
「藤井、これを引き受ける前に、一つだけ聞きたいことがあるんだ。」
「何?」
藤井は不思議そうに首を傾げる。
俺は写真持った手を下げ、真っすぐに藤井を見つめながら尋ねた。
「お前は・・・沖田って奴のことが好きなのか?」
「・・・・・・・・・・・。」
沈黙か・・・。ということは、俺の質問は核心をついたってことの証拠だろう。
もし違うなら、すぐにそう言えばいいのだから。
藤井は少し迷うような表情をみせてから、小さく首を振った。
「今は・・・・違う。私はまだ・・・悠ちゃんのことが・・・。」
呼び方が付き合っていた頃に戻っているが、藤井はそのことには気づいていないようだった。
だったら、これは本心ということで間違いないってことだろう。
「でも、今は一緒にいられない。
だって、同盟の活動を始めて変わったのは、悠ちゃんだけじゃないから。」
「俺だけじゃない?それは・・・お前にも変化があったってことか?」
「うん。私は昔から動物のことが好きで、この力を活かして何かの役に立ちたかった。
そして、悠ちゃんと同盟を組むことで、その夢は叶った気がしたの。
でも活動を続ければ続けるほど、もっともっと動物の役に立ちたいと思うようになった。
おぼろげだった夢が形を持ったことで、自分の目標が見えたの。」
「それは・・・・どんな目標なんだ?」
「今よりもっと、自分を鍛えるってことかな。
たくさん同盟の活動をしてきたけど、上手く解決してハッピーエンドの方が少なかった気がする。
だからもっともっと力を入れて活動しなきゃって思ったんだけど、それも空回りするばかりで・・・。
その子猫の母親捜しだって、きっと悠ちゃんと一緒ならもう解決してるよ。」
藤井は自嘲気味に笑い、悔しそうな目で足元を見つめる。
「それは買いかぶりだよ。俺は大したことは出来ない。
いっつものらりくらりと行き当たりバッタリで、お前が言ったように計画性なんてないんだから。
ただなんとなく、自分の感覚を頼りに動いてるだけだよ。」
そう言うと、藤井は拳を握って詰め寄ってきた。
「それよ!その感覚っていうのが、私は鈍いの。
悠ちゃんより計画性はあると思うけど、いっつも肝心なところでドジするし・・・。
やる気も明後日の方向にいって空回りすることが多いし・・・。
今まで二人で活動してたけど、私が役に立ったことなんかほとんどない。
それどころか失敗ばかりして、悠ちゃんに助けてもらうていうのがいつものパターンだから。
もう・・・そういう自分が情けなくて嫌になったの。」
「だから、沖田の所へ行って自分を鍛えようっていうのか?」
「・・・うん。正直なところ、また失敗ばかりしそうで怖いけど、でもこれはチャンスだから。
プロの探偵の元で働けば、きっと今より鍛えられると思うし・・・。」
藤井の顔は真剣だった。
きっと、今の藤井の目には動物のことしか映っていないんだろう。
だったら・・・沖田がどうとか、俺との恋仲がどうとかは二の次なのかもしれない。
やっと見つけた自分の道。それは何ものにも代えられない。
その気持ちは。俺も少しだけ分かる気がするな・・・。
むかし、たまきという猫に言われた言葉。
『あんたの持つその力は、なんにも恥ずかしいものじゃない。
胸を張って堂々としていればいいの』
あの言葉のおかげで、俺は自分の道が開けた。
誰にも心を開かなかったのに、動物に対してだけは心を開くようになった。
そして・・・そのおかげで色々な出会いを経験して、人間にも心を開くようになったんだ。
だったら、今度は藤井の番なのかもしれない。
こいつには夢があって、それがしっかりと形に成ろうとしている。
なら色恋がどうとかで、それを邪魔するわけにはいかない。
これは藤井にとって、人生の分岐点になるはずだから。
「藤井、この子猫のことは任せろ。俺が必ず母猫を見つけてみせる。」
「悠ちゃん・・・いいの?」
「ああ、こんな役目は俺にしか無理だろう?
それに最近はマサカリ達も退屈してるから、みんな喜んで手を貸してくれるはずさ。」
「よかった・・・断られたらどうしようかと思ってた・・・。ありがとう。」
藤井は涙ぐんで俯き、小さく鼻をすする。
俺はその肩に手を置き、藤井の目を真っすぐに見つめた。
「きっと、今が藤井にとって大事な時なんだ。
だから・・・俺も今は自分の気持ちをしまっておくよ。」
「悠ちゃんの気持ち・・・?」
「実はな、コンビニでお前に再会した時、俺はすごく嬉しかったんだ。
何度も忘れようとしたけど、やっぱり無理だった。
だから・・・もう一度しっかり謝って、俺の気持ちを伝えるつもりだった。
さっき林に向かってお前の名前を叫んでたのもその為だよ。
あそこから出て来てくれたらいいなと思ってさ。」
そう言って小さく笑うと、藤井は驚いたように目を見開いていた。
「うそ・・・・。だってあんなにボロクソ言ってたくせに・・・・。」
「ええっと・・・それはごめん・・・。あれは言い訳のしようがないよな。
そればかりは、許してくれなんて言えないよ。
でもやっぱり、俺はお前のことが・・・・。」
そう言いかけて、グッと言葉を飲み込んだ。
ダメだ、ダメだ!これは今は言ってはいけない。
せっかく藤井が自分の道を歩もうとしているのに、それを邪魔するようなことは言ってはいけないんだ。
もう意地とか感情とかに負けていられない。そんなものはグイっと心の中に押し込んで、素直にものを言わないと。
「誰だって、自分が変わる瞬間ってあると思うんだ。
俺は昔、たまきっていう猫と出会ってから変わった。あれがきっかけだったんだ。
だったら藤井にだって、何かが変わるきっかけが訪れるかもしれない。
俺はそれを邪魔することは出来ないから、今は自分の気持ちはしまっておく。
そして・・・もしまた会うことがあったら、その時は伝えるよ。
俺の・・・お前に対する素直な気持ちを・・・。」
「悠ちゃん・・・。」
藤井の目がじわりと涙で濡れていく。
俺はその手を握り、小さく揺さぶって語りかけた。
「戦ってこいよ、藤井。
俺が一人ぼっちの殻から抜け出したように、お前だってきっと何かが変わる。
自分のやりたいことに真剣に向き合えば、きっと何かが変わるんだ。
その時まで・・・・俺は待ってるよ。マサカリ達と一緒に。」
そうさ、これこそが今の俺の素直な気持ちだ。
これ以外に、今の藤井にかけるべき言葉なんてないんだ。
藤井はボロボロと涙をこぼし、鼻水をすすってしゃっくりをあげる。
「う・・ううう・・・・なによ・・・今日の悠ちゃん・・・・。
別れてから・・・久しぶりに会ったのに・・・すごい偉そう・・・・。」
「え?ああ、いや・・・違うんだ!別にそんなつもりで言ったわけじゃなくて!
俺も同じような経験があるから、お前にも頑張ってほしいと思ってだな・・・その・・・。」
しまった、ちょっと熱くなりすぎたか。
今のはテレビドラマに出て来る鉄血教師みたいだったかな・・・。
しかし藤井はしゃっくりをしながら首をふり、「そうじゃない!」と叫んだ。
「嬉しいの・・・。きっと嫌われてると思ってたから、まさかそんなふうに言ってくれるなんて・・・。
ずっと一人で抱え込んでた自分が馬鹿みたい・・・・。ふうう・・・・。」
涙は滝のように溢れ、鼻水も子供のように垂れていく。
しゃっくりのし過ぎで顔は赤くなり、俺はなんだか可笑しくなって笑ってしまった。
「顔がビチョビチョだぞ。いい歳して子供みたいな泣き方するなよ。」
指で涙と鼻水を拭ってやると、藤井はギュッと抱きついてきた。
俺の背中に手を回し、痛いくらいに指を立てて抱きしめてくる。
「私・・・頑張ってくるから・・・。もっと動物の役に立てるように、頑張ってくるから・・・。
だから待っててね。いつか必ず、ちゃんと帰ってくるから・・・。」
「うん、待ってるよ。その時まで、ほんのちょっとのお別れだ。」
俺たちは強く抱きしめ会い、お互いの存在を確認しあった。
それはまるで、俺が勇気を振り絞って告白をした、あの夏の夜のようだった。
しばらく抱きしめ会ったあと、俺たちはじっとお互いを見つめた。
そしてほんの軽いキスを交わし、二人とも照れながら笑った。
生温い風が駆けていく中、手を繋いで駅まで歩いていく。
何も言わずに、ただ二人だけの時間を感じて・・・。
きっと藤井も、あの夜のことを思い出しているはずだろう。
時々見つめ合い、小さく笑って歩いていく。
街灯が照らす夜の道をすり抜け、駅に到着して藤井は切符を買う。
そして長い髪を揺らして、そっと俺の手を握ってきた。
「正直いうと、すごく不安なんだ。
でもそれを怖がってちゃダメなのよね。
私は自分の夢があるから、ここで逃げたらダメなんだよね?」
「ああ、お前ならきっと大丈夫だよ。
俺の人生で出会った中で、お前ほど動物に情熱を燃やすやつはいなかったからな。
きっと大丈夫さ。」
「ありがとう・・・。私、戦ってくるから。
もっと成長して帰って来るから、その時まで待っててね。」
「うん。あ!でも・・・あんまり遅いと、カモンとは会えなくなるかもしれないな。
ハムスターの寿命はそんなに長くないから、三年後とかだともういないかもしれないぞ?」
冗談っぽく言うと、「もう、やめてよ」とかなり真剣に怒られてしまった。
「冗談だよ。でもお前の家の猫はどうするんだ?実家に連れて行くのか?」
「もちろん。うちの家族はみんな動物好きだもの。
ただ、実家にいる猫と仲良く出来るかどうかが心配だけどね。
でも喧嘩したって私がいるから大丈夫。なんたって動物と話せるんだから。」
胸を張って笑い、握った手を小さく振る。
「・・・・・それじゃ、もう行くね。」
「うん・・・またな。」
俺達は、またあの夜の時のようにキスをした。
なんだかとても甘酸っぱい気持ちになり、照れ臭くて咳払いをして誤魔化してしまった。
藤井は微笑みながら手を離し、改札へ続く階段を上がっていく。
「悠ちゃん。ちょっとの間だけのお別れだけど・・・元気でね。」
「ああ、マサカリ達とワイワイやりながら待ってるよ。お前も元気でな。」
俺は手を振り、藤井も手を振り返して笑う。
そしてクルリと前を向き、コツコツと靴を鳴らして階段を上がっていった。
藤井の姿が遠ざかる。階段の向こうへ・・・・そしてこの街の向こうへ遠ざかろうとしている。
「藤井!」
俺は階段に駆け寄り、周りの目もはばからずに大声で叫んだ。
「俺達には、二人だけの絆がある!
他の誰にもない、二人だけの特別な絆があるんだ!
だから・・・・・どんなに離れていても繋がってるからな!」
振り向いた藤井は、また泣きそうな顔で涙ぐみ、大きく頷いて手を振った。
そして階段を駆けのぼり、改札へ向かう通路へ消えていった。
「行っちまった・・・・。まさかこんな展開になるなんてなあ。」
たまたま散歩に出かけた夜に、無意識にあの公園に辿り着いた。
そして林の中に向かって叫ぶと、本当に藤井が現れた。
緊張しながら俺の気持ちを伝えようとすると、話はあらぬ方向へ転がり始め、まったく予期しない展開になった。
「でも・・・これでいいんだよな。
藤井にとっては、今は自分のことが一番大事な時なんだ。
だから・・・いつか戻って来るまで待つだけさ。」
藤井が消えた階段を見つめ、しばらくそのまま立ち尽くす。
温い風は駅の中にも吹きつけ、俺の短い髪をさすっていく。
「・・・帰るか。」
多少未練がましく思いながら、踵を返して駅から出る。
一年前にはあった駅の近くのコンビニがなくなっていて、なんだか寂しく感じる。
「ちゃんと時間は流れてるんだよなあ。だったら、変わらないものなんてありゃしないか。」
藤井と手を繋いで土手を歩いた時、この時間は永遠のものだと思った。
しかし・・・それは幻だった。
永遠なんてどこにもなくて、あの幸せは俺と藤井が作り上げていたものだった。
だったら、それはいつか変化の時が訪れて当たり前だ。
いつか藤井が戻って来た時、あいつはどんなふうに変わってるんだろう?
今よりもっと大人びて、運動神経なんかもよくなったりしてて・・・。
「それはないか。大人びるのはともかく、あいつの運動神経の悪さは筋金入りだもんな。」
一人で呟いて小さく笑い、信号の手前で後ろを振り返った。
「藤井、頑張ってこいよ。お前が戻ってくるまで、俺も一人で同盟の活動を続けるからさ。」
再会がいつになるか分からないし、再会した時に二人がどういうふうに変わっているのかも分からない。
でも・・・胸にしまった藤井への想いだけは、失くすわけにはいかない。
あいつが帰ってきた時、こいつを伝えないといけないのだから・・・。
信号を渡り、暗い夜道に抱かれながら歩いていく。
夏の夜ってのは、どうしてこうも人の心を高ぶらせるのか?
楽しくて、切なくて、でも心地良い・・・・。
初夏の匂いを堪能しながら歩いていると、ふとあいつらのことを思い出した。
「ああ、そういえば一時間ほどで帰るって言ったんだっけ・・・。
もうとっくに時間は過ぎてるから、あいつら心配してるかもな。」
俺は街灯の照らす夜道を走り出す。
もう藤井が消えた駅を振り向くことはせず、あいつらが待つアパートへ向かっていく。
そうさ、俺にだって自分の向かう道がある。
あいつらの待つアパート、そしてこれからの自分の人生。
とりあえずは・・・一人でも同盟の活動を続けていくだけさ。
今は何も見えなくても、真っすぐ進んでいけば必ず何かがあるはずだ。
少しずつ、地道に活動を続けていこう。
いつか藤井が戻ってきた時、また二人で始められるように。
夜の空気も、そして夜の星も、みんなが夏を迎える準備をしている。
これからだ。これからまた、暑くて長い夏が始めるんだ。
高鳴る鼓動と、淡い喜びを抱き、俺は自分が帰るべき場所へ駆けて行った。

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