ダナエの神話〜神樹の星〜 第八話 海底の廃墟(3)

  • 2014.02.18 Tuesday
  • 18:25

『海底の廃墟』3


色とりどりの海藻が波に任せて身を揺らし、優雅な舞踏会を開いている。
その周りをこれまた鮮やかな魚達が遊泳し、歌うように口をパクパク動かしていた。
「すごい・・・。これがラシルの海・・・・。」
ダナエの住む月の王国にも海はあるが、こんなに鮮やかな景色は広がっていない。思うがままに絵具を垂らしたような愉快さと楽しさは、ラシルの海の豊さを表していた。
「この星の海はすげえよ。とっくの昔に地球の海が失くしちまったもんを、今でもちゃんと持ってるんだ。」
「きっとラシルの星の人達は、海を大切に思ってるのね。」
「ああ、みんなこの海を大事にしてる。まあ、一部そうじゃない奴らもいるらしいが・・・。」
金次郎は舵を切るように海藻の手綱を掴み、ミズチの進路を変えていく。
「ラシルの廃墟の周りは海が荒れてるんだ。だから慎重に近づかないといけねえ。」
巧みな手綱さばきでミズチを操り、まるで空を飛ぶように海の中を駆けていく。目に見えない海流の動きを読み取り、決して潮の流れに逆らわずに先へ進んでいく。
「さすが漁師さん!自由自在に海を進めるのね。」
「海には流れがあるんだ。それを見極めるには、海底のでこぼこやら魚の動きやらに注意しなきゃならねえ。あとは長年の勘ってやつよ。」
熟練のレーサーのように華麗なドリフトを決め、荒れる海流を乗り越えてイソギンチャクの群れの上を飛んでいく。そしてしばらくそのまま進むと、海に沈む大きな街が見えてきた。
「王女さん。あれがラシルの廃墟だ。」
「あれが・・・・。」
ダナエはガラスに顔を張りつけるようにして、ミズチの腹の中から覗き込む。遠くの方に陽炎のように揺らめく七色の泡があり、その中に美しい街が建っていた。
「うわあ、立派な街ねえ・・・。とても廃墟とは思えないわ。」
「廃墟っていっても、中はボロボロってわけじゃねえんだ。ただユグドラシルの力が消えて、かつての力を失くしているだけなのさ。」
金次郎はミズチを廃墟の傍に寄せ、七色の泡の前に降りた。
「さて、それじゃ外に出るか。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!外に出るかって言っても、ここは海の中なのよ?」
カナヅチのダナエは不安そうに金次郎のズボンのゴムを引っ張る。
「おいおい、モモヒキが伸びちまうから離してくれ・・・。」
「ああ、ごめんなさい。ほら、私って思ってることが行動に出ちゃうタイプだから。」
「初めて会った王女様の性格なんか分からねえよ。」
金次郎は迷惑そうにズボンのゴムをさすり、ミズチの口の方へ向かう。
「心配しなくても大丈夫だよ。ついて来れば分かるから。」
「で、でも・・・・。」
ダナエは海が好きなくせに、水の中が苦手であった。高い所が苦手なジャムと同じようにブルブルと震え、コウを握ってギュウギュウと締めつける。
「ぐげ・・・・やめれ・・・。」
コウはペチリとダナエの手を叩き、ケホケホと咳をして肩に止まった。
「心配すんなって。もし溺れたら俺が魔法で助けてやるから。」
「でも・・・・。」
するとドリューもダナエの肩を叩き、安心させるように笑いかけた。
「大丈夫ですよ。いつもの張り切ったダナエさんはどうしたんです?」
二人に励まされ、ダナエは渋々頷いて「分かった」と呟く。そしてミズチの口の中まで来ると、金次郎がピュイっと口笛を鳴らした。
するとミズチは口を開け、プクプクと泡を吐き出した。ダナエ達はその泡につつまれて、外へ押し出される。
「な、大丈夫だっただろ?」
金次郎は皺を寄せて二コリと笑う。ダナエはホッと胸を撫で下ろし、笑って頷いた。
「それじゃミズチ、ちょっとここで待っててくれ。」
ミズチは「キュキュ」と鳴き、廃墟の周りを遊泳し始めた。金次郎はそれを見送ると、七色の泡に近づいてトントンとノックをした。
「お〜い、ニーズ!ちょっとここを開けてくれや。」
友達の家に来たように気軽に呼びかけると、廃墟の奥から何かを引きずる音が聞こえてきた。
そして建物の陰からヌッと巨大な影が現れ、こちらに近づいて来る。
「おう、ご無沙汰。ちょっと中に入れてくれよ。」
金次郎が手を振ると、巨大な影はさらに近づいて来て、その姿を露わにした。
「・・・キンジロウ?」
ダナエ達の前に現れたのは、ミズチよりもさらに二回りほど大きな龍だった。
「うおおおお・・・・。今度はブブカよりデカイのが現れたぞ・・・。」
シロナガスクジラの倍以上大きな龍は、やたらと大きな口を開いてニっと笑った。そしてキラキラ光る真っ白な歯を見せつけ、顔の割に小さな目をギョロリと動かした。
「こいつはニーズホッグってんだ。ユグドラシルの根っこに住みついてる龍で、根っこの穴を通ってこの星へやって来たのさ。」
紹介を受けたニーズホッグは、巨体を持ち上げて叫んだ。
「オ、オ、オ、オレハニーズホッグ!・・・・ヨロシク!」
「おいおい・・・喋り方が馬鹿丸出しだぜ。大丈夫か?」
コウは腕を組んでニーズホッグを見上げる。その巨体は龍というより、蛇とミミズを足して二で割ったように感じられた。歯と同じくらいピカピカ光る白い鱗を見せつけ、ニーズホッグはスンスンと鼻を動かす。
「キンジロウ・・・オマエ、今日ハ・・・中入レナイ。」
「はあ?なんでだよ?いつもは入れてくれるじゃねえか。」
「今日ノオマエ・・・土産モッテナイ・・・。ダカラ中ニ入レラレナイ。」
そう言われて、金次郎は「ああ、しまった!」と頭を掻いた。
「いっけねえ・・・。手ぶらで来ちまった・・・。」
顔をしかめて舌打ちをし、困ったように宙を睨みつける。ダナエは顔を覗き込み、「何かあったの?」と尋ねた。
「実はな、ニーズに渡す手土産を忘れて来ちまったんだよ。こいつは何かあげないと、中には入れてくれないからなあ・・・。」
「手土産かあ・・・。何かあったかな?」
ダナエは自分の鞄をゴソゴソと漁る。そしてジャムから受け取った山菜を取り出した。
「これじゃダメかな?」
ニーズホッグに向かって山菜を近づけると、スンスンと鼻を動かしてそっぽを向いた。
「オレ・・・ソンナノ・・・イラナイ・・・。何カ別ノモノヲヨコセ。」
「なんだよ、馬鹿のくせにわがままだなあ。他に何かないのかよ?」
「う〜ん、他に手土産としてあげられそうな物はないわねえ。困ったわ、どうしよう。」
せっかくここまで来たのに、中に入れないとは思ってもいなかった。ダナエは唇を尖らせ、必死に鞄の中を漁る。しかしめぼしい物は何も無く、お手上げのジェスチャーで首を振った。
するとドリューが何かを持ってニーズホッグに掲げた。
「もしよかったら、僕の描いた絵でどうかな?けっこう上手く描けてる自信があるんだけど。」
ドリューが掲げたのは、先ほど描いた絵だった。ニーズホッグは興味深そうに顔を近づけ、真剣な目で絵を鑑定している。
「フウム、ナカナカイイエジャナイカ・・・。シカシ・・・コノ絵ノタッチハ、ドコカデ見タキガ・・・・・。」
ニーズホッグは急に真剣な口調になり、むむっと眉間に皺を寄せる。
「多分それは、僕のお父さんが描いた絵じゃないかな?」
「オマエノ・・・親父ガ・・・・?」
「今から十五年前、僕は父に連れられてここへ来たんだ。その時に君は、夜の海の絵を受け取ったはずだ。」
ニーズホッグはじっと絵を見つめ、何かを思い出すように口元を歪めた。そして「ヌヌ!」と目を開き、大きな口を開けて叫んだ。
「覚エテイルゾ!オマエハアノ時ノ子供ダ!廃墟ノ中デ小便ヲモラシ、父親二怒ラレテイタアノ子供ダ!・・・タシカアノ時、オマエノ親父カラ絵ヲモラッタンダ。綺麗ナ空ノ絵ダッタ。モウアレカラ、二十年二ナルノカ・・・。」
ニーズホッグは、時の重みを感じるようにしみじみと海面を見上げる。
するとドリューは目を細めて冷めた顔をした。
「全然違う。それ僕じゃないよ。」
「・・・エ?ソウダッタカ?」
「そうだよ。僕はオシッコなんか漏らしてないよ。それにあげた絵は空じゃなくて海の絵だし、ここへ来たのは十五年前だよ。」
「・・・ヌウウ・・・。ソウイウコトハ先ニ言ッテモラワナイト・・・。」
「いやいや、最初にちゃんと言ったじゃん。こいつやっぱアホだぜ。」
コウは呆れ顔でニーズホッグを指差す。
「僕の父は確かに君に絵をあげたはずだよ。そして廃墟の中に入れてもらったんだ。だからもしよかったら、今回もこの絵をあげるかわりに中へ入れてくれないかな?」
ドリューは真剣な目で絵を差し出す。もしここで断られたら、それは自分の絵を否定されることに繋がる。
彼の心臓はバクバクと音を立て、激しく緊張しながらニーズホッグの返事を待った。
「・・・・イイダロウ。ソノ絵ハナカナカイイデキダ。ダガシカシ!」
大きな歯をガチガチと鳴らし、巨体を持ち上げて吠えるように叫ぶ。
「入ッテイイノハ、廃墟ノ真ン中マデダ。ソレ以上先ニ進ンデハナラン!
イイナ?」
今までのオチャらけた雰囲気と違い、ニーズホッグは幻獣の威厳をもって睨む。それは拒否することを許さないほどの迫力で、ドリューは思わずダナエを見つめた。
「ええっと、ああ言ってますけど・・・・どうしますか?」
ダナエは口元に手を当てて、「う〜ん」と考える。そして首を傾げながらニーズホッグを見上げた。
「ねえ、どうして真ん中より先に入っちゃいけないの?」
「ソレハナ、ソノ先ニオレノ住処ガアルカラダ。他所者ニズカズカ入ラレテハ困ノダ。」
「なるほど・・・。プライベートを見られたくないってわけね。いいわ、分かった。廃墟の真ん中より先には入らない。だから中に入れてもらってもいい?」
長い髪を揺らし、機嫌を窺うように見上げる。ニーズホッグはその目をじっと見返し、小さな目を閉じてコクリと頷いた。
「イイダロウ。シカシ一ツ忠告シテオクガ、廃墟ノ中ハ危険ダゾ。ナゼナラ、ココデハ・・・・、」
「魂と魂が直接会話をするんでしょ?大丈夫、それを分かったうえで来てるから。」
「・・・ソウカ、ナラバ何モ言ウコトハナイ。中ヘ入ルガイイ。」
ニーズホッグは廃墟を覆う泡の一部を齧り取り、大きな穴を開けた。
「それじゃ行こうか。」
ダナエの言葉にみんなは頷き、穴を通って中に入っていく。それと同時に身を包んでいたミズチの泡も消え、廃墟を漂う不思議な空気が押し寄せてきた。
「なんだろうこれ・・・まるで夢の中にいるような感じ・・・・。」
廃墟の中は独特の空気で満たされていた。現実であって現実でないような、地面に足をついているのに浮いているような、まるで異世界に迷い込んだような気分にさせられる場所だった。
「ねえ、コウ。不思議な場所ね。」
そう言ってコウを振り返ると、急に目がくらんで倒れそうになった。
「おいおい、大丈夫か王女さん。」
「うん・・・なんだかちょっと目眩がして・・・。」
クラクラする頭を押さえながら顔を上げると、金次郎の胸の辺りが光って見えた。
「これは・・・もしかして魂?」
よく見ると自分の胸も光っていて、言葉を発する度に脈打っていた。
「これこそが、魂と魂の会話なんだよ。自分がほんとうに思っていること以外を口にすると、途端に胸が締め付けられるんだ。そしてその後に、自分が自分に問いかけて来る。『おい、今の言葉は本当にお前が望んだ言葉か?』ってな。だから嘘を吐いたり、自分を誤魔化したりする度に苦しむことになるから、よく気をつけることだ。」
「そうか・・・これが魂と魂をコンタクトさせる時の危険なのね・・・。」
ゴクリと息を飲み、真剣な目で胸の光を見つめる。触ってみると、心臓のように鼓動を刻んでいるのを感じて、なんだか落ち着かない気分になってきた。
「ダナエ、何か喋ってみろよ。」
「何かって、何を?」
「いや、お前が嘘を吐かないかどうか試してやろうと思ってな。」
「・・・なるほど、また私を馬鹿にして遊ぶつもりね。いいわ、かかってらっしゃい!」
口を真一文字に結び、腰に手を当てて胸を張る。コウはクスクスと笑い、憎たらしい笑顔を浮かべながら言った。
「じゃあ質問。ダナエは、現実と空想の世界のルールをちゃんと理解している。」
「もちろんよ。実体があるかないか、それと不思議な力があるかないか。そうでしょ?」
「ピンポ〜ン。じゃあ次、ダナエは鈍チンである。」
「・・・最近はちょっとだけ賢くなってきた・・・と思う・・・。」
意地を張って自信が無さそうに言うダナエ。すると急に魂がうずき出し、熱いやら痒いやらで居ても立ってもいられなくなった。
「なにこれ・・・気持ち悪い・・・。」
そして魂から声が響いてくる。『あなたは鈍チンでしょ?』と。
「うう・・・やだ・・・。自分から馬鹿にされるとすごく傷つく・・・。」
涙目で胸を押さえ、「ごめんなさい、嘘つきました」と素直に謝る。すると途端に魂は大人しくなり、気持ち悪さがスッとひいていった。
「なるほど、こういう具合になるのか。勉強になった。」
コウは他人事のように頷き、笑いながらダナエの肩を叩いた。そして金次郎も苦笑いをみせながら禁煙パイポを咥えた。
「今のは大した嘘じゃなかったからこの程度ですんだけど、本当に自分を誤魔化すような嘘を吐いた時は、もっと辛い目に遭うから気をつけろよ。」
「・・・うう・・・先に進むのが怖い・・・。」
すっかり気落ちして、俯いたままトボトボと歩いていく。するとドリューが慌てて引き止め、元いた場所に引き戻した。
「ダメですよ、勝手にうろついたら。ここはけっこう迷いやすいんですから、下手したら出られなくなっちゃいますよ。」
「そうなの?」
「この廃墟は元々ユグドラシルの住処でしたからね。街のいたる所に根っこを張り巡らせた跡があるんです。そこへ迷い込んだから最後、無限地獄のように出られなくなる可能性があるんですよ。だから絶対に一人でうろついたらいけません、分かりました?」
「うん、分かった。一人でウロウロしない。」
するとまた胸がうずき出し、身をよじって笑い出した。
「あはははは!今度はくすぐったい!」
「お前・・・また嘘吐いたな・・・。」
コウは呆れ顔で肩を竦め、お手上げのポーズをする。ダナエはゲラゲラ笑い転げ、必死にごめんなさいを連発していた。
「こりゃ気をつけないとな。まあ俺は正直だからいいけど。」
コウは可笑しそうにニコニコと笑う。
「じゃあ街の真ん中まで案内してやるよ。ついて来な。」
金次郎はパイポを揺らしてスタスタと先を歩いて行く。後ろではズリズリと音を響かせて、ニーズホッグがどこかへ去っていった。
「うう・・・私この場所苦手かも・・・。なるべく喋らないようにしよ・・・。」
胸を押さえながら立ち上がり、金次郎のあとをついていく。かつて繁栄を極めた街は、今でも立派な建物をそのままに残していた。
教会のような大きな建物、モザイク模様のレンガの家、お城のように立派なデパート。そして街のいたる所に緑があって、ライオンを象った石像が建つ噴水があった。ダナエは目を輝かせ、キョロキョロと辺りの街並を見渡す。
「すごいねコウ。とっても立派で綺麗な街だわ。」
「そうだな。残念ながら、月の王国より遥かに進んでるって感じだぜ。」
後ろからシャカシャカと音が聞こえて振り返ると、ドリューが一心不乱に街並をスケッチしていた。
「根っからの画家だな、あいつは。」
「それだけ絵が好きなのよ。好きにさせてあげましょ。」
ドリューのペンの勢いは止まらない。ダナエはそれを微笑ましく見つめ、ふとある疑問が浮かんだ。
「ねえキンジロウ。昔ここに住んでいた人達はどこへ行ったの?」
そう尋ねると、金次郎は「さあなあ」と口元を歪めた。
「街の奴らに聞いた話じゃ、ユグドラシルと一緒に邪神と戦って死んだらしい。生き残った者はこの街を捨てて、別の場所へ移っていったみたいだぜ。」
「そっか・・・。ここに住んでいた人達、きっとこの場所を離れたくなかっただろうね。」
「そりゃあそうだろ。なんたって、自分の故郷を追われるわけだからな。悔しかったに違いないと思うぜ。」
金次郎は同情の念を抱きながら、複雑な街並をスイスイと歩いて行く。所々に大小様々な穴が空いていて、身軽にピョンと飛び越えていく。
「この穴に落ちるなよ。出て来られなくなるから。」
「ああ、これがユグドラシルの根っこの穴なのね。これだけ色んな場所に穴があるってことは、街じゅうに根が張り巡らされていたのね。」
「そうさ、それだけユグドラシルがデカイ樹ってことだろうよ。」
深い穴に注意しながら、ダナエは金次郎のあとをついていく。目に映る街並はとても美しいが、それに心を奪われてばかりはいられない。ここへ来たのは、ユグドラシルに関する情報を手に入れる為だった。
「ねえ、ユグドラシルが生えていた場所ってどこなの?」
「街の中心辺りだな。今から行くところさ。」
「じゃあそこへ行けば、何か分かるかもしれないってことね?」
「どうだろうな?あそこはドデカイ穴が空いてるだけで、何も残っちゃいねえと思うが。」
「・・・そっか。でもとりあえず行ってみる価値はあるわよね。」
「まあなあ、俺はあんまりあの辺はウロウロしねえから、よく探したら何かあるかもしれねえな。」
二人はお喋りをしながら歩いていく。その後ろをついて行くコウは、振り返ってドリューに言った。
「おい、絵を描くのもいいけど、お前もちゃんと案内しろよ。
それが条件で連れて来てやった・・・・・って、あれ?どこいったあいつ?」
後ろにいるはずのドリューの姿は、忽然と消えていた。シャカシャカとスケッチをする音も聞こえなくなり、不思議に思って辺りを飛び回った。
「お〜いドリュー、どこだ〜?まったく、また勝手にどっか行ったのか?一人でウロウロするなとか偉そうなこと言ってたくせに。」
不満そうに唇を尖らせ、しばらく辺りを捜してみる。すると根っこの穴の近くに、ドリューのペンと絵が落ちていた。
「これは・・・・まさか!」
コウは穴の中を覗き込む。暗くて深い穴はまったく底が見えず、ドリューの姿を捜すことは出来ない。口に手を当てて大声で呼んでみても、まったく返事はなかった。
「こりゃあ大変だぞ!」
コウは慌てて金次郎とダナエを呼び、穴の近くに落ちているペンと絵を指差した。それを見たダナエは膝をついてペンを拾い上げ、引きつった顔で穴の中を見つめた。
「どういうこと・・・?もしかして、穴に落っこちたってこと?」
「だろうな、それしか考えらない。きっと絵を描くのに夢中で、足元の穴に気づかなかったんだろう。」
コウは絵を拾い、周りの景色とスケッチを見比べた。
「ほら、同じ風景だ。きっとこの絵を描いてる時に落ちたんだよ。」
「そんな・・・。危ないから注意しろって言ったのはドリューなのに・・・。」
ペンを握りしめ、穴に向かってドリューの名を叫ぶ。しかしウンともスンとも返事はなく、立ち上がって穴を見下ろした。
「助けに行こう。」
ペンを鞄にしまい、ダナエは穴に飛び込もうとする。しかし金次郎に「やめとけ!」と止められた。
「この中は迷路みたいになってんだ!一度入ったら出て来られないぞ。」
「それでもいい!ドリューをほっとくことなんて出来ないわ!」
ダナエはジタバタと手足をもがき、金次郎の腕を振り払う。そして思い詰めた顔で彼を見つめ、鞄にしまったペンを握りしめた。
「ドリューは私の友達なの。だからこのままほうっておくなんて出来ないわ。例えこの穴が危険な場所だったとしてもね。」
ダナエの目は力強く、そして真っすぐに金次郎を見据える。青い瞳はぶれることなく澄んでいて、胸の光がうずくこともなかった。
「魂がうずかないってことは、本気で言ってるんだな。」
「当然よ、私はこんな時に絶対に嘘を言ったりしないもの。ドリューは大切な友達。
だから何としても助けに行きたいの。」
金次郎は顔をしかめたまま腕を組み、躊躇いがちに頷いた。
「分かった。王女さんの頼みとあっちゃしょうがねえ。この坂田金次郎、命に換えてもお守りし、根っこの穴を案内しよう。」
「ほんと!ありがとうキンジロウ!」
ダナエは手を取って喜ぶ。金次郎は恥ずかしそうに「よせやい」と頭を掻き、忙しなくパイポを揺らしていた。コウは首を傾げながら二人の間に割って入り、指を向けて尋ねた。
「でもさ、案内するって言ったって、あんたこの中を知ってんのか?」
「うんにゃ、全然。」
「じゃあ意味ないじゃん!なんで案内するなんて偉そうに言ったんだよ!」
「いいんだよ!男ってのは、こういう時はカッコをつけるもんなんだ!」
「勢いだけじゃねえかあんた・・・。なんか不安になってきたぜ・・・。」
コウは呆れた顔で息を吐く。金次郎はそんなコウを無視して穴の前に立ち、屈伸運動を始めた。
「それじゃ王女さん、俺が先に入ってみるから、合図をしたら下りてきな。」
初老の顔を眩しく輝かせ、親指を立ててカッコをつける。ダナエは「気をつけてね」と手を握り、心配そうに見守った。
「それじゃ行ってくるぜ!あばよ!」
金次郎は威勢よく穴に飛びこむ。しかしたるんだ腹が穴につっかえて、身動きが取れなくなってしまった。
「ぐあ、しまった!」
「何やってんだよあんたは・・・・。」
コウは金次郎の頭に舞い降り、馬鹿にするように額を叩く。
「くそ・・・。なんて恥さらしな格好だ。こんなんじゃお天道様に顔向けできねえ。」
悔しそうに唇を噛み、思い詰めた表情でダナエを見上げる。
「王女さん、俺を足で踏んづけて中に押し込んでくれ!」
「そんな・・・足で踏むだなんて・・・。」
「いいからやってくれ!このままじゃ海の男の名が泣くってもんだ。さあ、早く!」
金次郎は覚悟を決めた目で睨む。ダナエは困ったようにコウと顔を見合わせ、「どうしよう?」と呟いた。
「いいんじゃない、踏んづけてやれば。本人がやってくれって言ってるんだし。」
「でも・・・さすがに足で踏むなんて・・・。」
いくらオテンバとはいえ、初老の男を踏みつけるのには抵抗があった。どうしたものかと考えていると、良いアイディアが浮かんで手を叩いた。
「そうだ!足じゃなくてアレを使えばいいんだわ。」
明るい声でそう言って、ダナエはコスモリングから銀の槍を呼び出した。そしてピュンっと振って風を斬り、金次郎の前に刃を突き立てた。
「キンジロウ、これで頭を叩いてあげるわ。足で踏むより下品じゃなくていいでしょ?」
ダナエはニコニコと笑い、本気の目で言う。金次郎はブルブルと首を振って「待ってくれ!」叫んだ。
「そんなもんで叩かれたら、俺の頭が割れちまう!」
「大丈夫!上手いことやるから。そおれッ!」
銀の槍が振り下ろされ、柄の部分が「メキッ」とめり込む。
「ふべらッ!」
金次郎の脳天に凄まじい衝撃が走り、鼻血を吹き出して穴の中に落ちていく。そしてしばらく待つとメキョっと音が聞こえて、呻く声が響いた。
「お〜い!キンジロウ!中はどうなってる?」
ダナエは穴に顔を近づけ、大声で呼びかける。しかしいつまで待っても返事はなかった。
「おかしいわ・・・。何かあったのかしら・・・。」
「ああ、お前のせいでな・・・。きっと今頃気を失ってるぜ。」
コウはため息交じりに首を振り、スイっと穴の中へ飛んで行った。そして光の魔法を使って手の平を輝かせ、暗い穴の中を照らした。
「コウ、中はどうなってる〜?」
「坑道みたいに奥へ続いてる。キンジロウは白目を剥いて気を失ってるけどな。」
「下りても大丈夫そう?」
「大丈夫、大丈夫!早く来いよ。」
ダナエは槍を握りしめ、えいっと飛び込んだ。そして着地と同時に柔らかいものを踏み、「ぐへ」
と声が聞こえた。
「おいおいダナエ!お前の足がキンジロウの大事な所にめり込んでるぞ。」
「え?大事な所?・・・きゃあ、エッチ!」
サッと飛び退き、咄嗟に銀の槍を振る。またしてもキンジロウの頭に柄がめり込み、白目を動かしてピクピクと痙攣していた。
「お前・・・トドメを刺すなよ。こりゃしばらく起きないぞ・・・。」
「ああ、ごめんキンジロウ!わざとじゃないのよ、ちょっと反射的に・・・。」
慌てて駆け寄り、金次郎の頭を優しく撫でる。
「そいつはもうダメだ。ここへ置いて行こう。」
「もう!死んだみたいに言わないでよ。ちょっと気を失ってるだけじゃない。」
ちょっとどころか大層に気を失っている金次郎は、しばらく目を覚ましそうになかった。
その顔は苦笑いのように歪み、笑っているのやら泣いているのやら分からなかった。
「ほんとにごめんね。あとで迎えに来るから、今はここで寝ていてね。」
申し訳無さそうに言い、銀の槍を握って立ち上がる。そして穴の奥を見つめ、注意深く観察してみた。
「ドリューはいなさそうね・・・。どこかへ行っちゃったのかしら?」
心配そうに呟いて少しだけ歩いてみると、地面に点々と足跡が残っていた。
「おお・・・これはドリューの足跡かもしれないぞ。」
コウは足跡の傍に舞い降り、手の光を先に向ける。根っこの道はウネウネと曲がりながら先まで続いていて、途中でいくつもの道に別れていた。
「こりゃ確かに迷いそうだな。この足跡を辿っていくしかなさそうだ。」
「そうね、とにかく先に進んでみましょ。早くドリューを見つけないと、何かあったら大変だから。」
二人は足跡を辿り、慎重に進んでいく。地面は僅かにぬかるんでいて、ダナエの足跡も点々と残っていく。
「これは海水が染み出てるのかな?」
「だろうな。転ばないように気をつけろよ。」
地面からは微かに潮の香りが漂っている。それは先へ進むにつれて強くなり、ダナエは不安になって足を止めた。
「ねえ、いくら海底に浮かんでいる街だっていっても、ちょっと潮の香りが強すぎない?」
「そうか?俺はそこまで感じないけど、ダナエは鼻が利くから臭うのかもな。」
頭は鈍チンだが、五感の鋭いダナエはすぐに異常を感じ取る。潮の香りは鼻をつき、そして妙な胸騒ぎがして槍を構えた。
「この先に・・・何か良くないものがある気がする・・・。」
「良くないもの?なんだよそれ?」
「分からない。でも・・・きっと良くないものよ。」
ゴクリと唾を飲み、震える足で進んでいく。冷たい汗が背中に流れ、鼓動が速くなっていく。この先に、見たくないものがある気がしてならない。出来ればここで引き返したかったが、ドリューを見捨てるわけにはいかず、何とか自分を奮い立たせて進んでいった。
するとコウも何かに気づいたようで、鼻をヒクヒク動かして眉を寄せた。
「これ・・・潮の香りだけじゃないな・・・。不安を掻きたてるこの臭いは・・・・血?」
そのことはダナエも感じていたが、あえて口にしなかった。血の臭いがするなどと言ってしまえば、本当に血生臭いことが起こりそうで、ブルブルと首を振って否定した。
「きっと何か別の臭いよ。この街には私達以外誰もいないんだから、血の臭いなんてするはずがないわ。」
しかしそう言った途端に胸がうずきだし、立っていられないほど痛み出した。
思わず膝をつき、胸を押さえて顔をしかめる。
「おい、大丈夫か?顔色が悪いぞ。」
「うん・・・平気・・・。でも・・・やっぱりちょっと苦しいかな・・・。」
大きな手に握られているように胸が痛み、自分の声が自分に語りかけてくる。
『ダナエ、ほんとうは分かっているんでしょう?この先で、ドリューが死んでいるかもしれないって。勘のいいダナエなら、きっと気づいているはず。』
頭の中に自分の声が響き、ケラケラと笑っている。何度も何度も同じことを語りかけ、面白そうに笑っている。
「違う!私はそんなこと思ってない!ドリューは・・・ドリューは死んでなんかいないわ!」
『いいえ、きっとドリューは死んでいる。なぜだか分からないけど、彼はきっと死んでいる。あなたの勘が、そう告げているでしょ。この血の臭いは、絶対にドリューのものだって。だから嘘をついちゃダメ。ちゃんと認めないと。自分の心を、自分の思考を、そして、自分の感覚を。』
「嫌だ!もうやめて!自分の声でそんなことを聞きたくない!」
『でもあなたは思ってるわ。だって、これはダナエの魂の声なんだから。嘘も偽りも無い、ダナエの本当の声なんだから・・・。ふふふ、ねえ、ダナエ。自分と向き合うって怖いでしょ?
これが・・・これがほんとうのあなた。一見明るくみえるけど、誰よりも心配症で、誰よりも不安に駆られる・・・。だから認めましょうよ。ドリューは死んでるって。ふふふ。』
「うるさい!私はそんなこと思ってない!嘘を吐いてるのはあんたの方よ!」
ダナエは狂ったように槍を振り回し、見えない敵に向かって刃を斬りつける。しかしいくら槍を振ったところで自分の魂を切り裂けるはずもなく、しかもそのせいでさらに魂は痛みだした。
『ダメダメ、そんなことしても余計に傷つくだけよ。ほら、認めましょ。ドリューは死んでいる。そして、あなたは怖くて怖くてここから逃げ出したいって。友達の死を見るのは怖くて仕方ないから、ここから逃げ出したいって言いなさい。そうすれば胸の痛みも治まるし、私の声も聞こえなくなるから、うふふふ。』
「やめて!お願いだからもうやめてよお・・・・・。」
握っていた槍を落とし、頭を抱えてうずくまる。胸の痛みは熱いほど暴れ出し、息をするのも辛くなって咳込んだ。
「認めない・・・そんなの認めないわ・・・。あんたの言うことなんか、絶対に認めないんだから・・・。」
拳を握って自分の胸を殴りつけ、またゴホゴホと咳き込む。見かねたコウが背中をさすり、心配そうに顔を覗き込んだ。
「どうしたんだよ・・・。胸が痛いのか?」
「・・・・違う・・・あんたの声なんか信じない・・・。信じないから・・・。」
胸の痛みを堪え、頭に響いてくる声を無視して立ち上がる。ふらつく足取りで先へすすみ、震える足を悔しそうに叩いた。
「おいおい、無理すんなよ・・・。ちょっと休んでいくか?」
「いいえ、先に進みましょう。私なら大丈夫だから。」
「大丈夫って・・・めちゃくちゃ冷や汗が出てんじゃん。顔も真っ青だし。」
「いいの!行くって言ったら行くの!私は・・・自分なんかに負けない。」
真一文字に口を結び、親の仇でも睨むように前を見据える。こうなっては誰の言葉も受け付けず、ひたすら意地を張り通す。
そのことをよく知っているコウは、説得するのを諦めて頷いた。
「分かったよ、でもあまりカッカするなよ。何があるか分からないんだから、冷静になるんだ。
いいな?」
暴走しないように釘を刺し、ダナエを先導するように飛んで行く。穴の奥から漂う臭いはさらに強烈になり、鼻を押さえて顔をしかめた。
「こりゃやっぱり血の臭いだ・・・。でもいったい誰の血だ?」
「・・・・・・・・・・。」
ぬかるむ足元に気をつけながら、息を飲んで歩みを進めて行く。するとふと誰かの気配を感じて、分岐する道に身を隠した。
「誰かいるな・・・。でも、これはきっとドリューの気配じゃない。」
コウはゴクリと喉を鳴らし、ダナエを見つめた。その顔は完全に血の気が引いて真っ青になり、カタカタと唇が震えていた。
「俺・・・なんだかこの先を見たくないな。すごく嫌な予感がするんだ。それに・・・身も凍るような恐ろしい気配を感じるし・・・。」
コウの背中にぞわりと悪寒が走る。この先にはとても恐ろしい何かがが潜んでいる。ニーズホッグかとも考えたが、あの巨大な龍より、もっと強い気を感じていた。
「なあダナエ、一旦引き返すか?これ絶対にヤバイぜ。俺達だけじゃ酷い目に遭うかもしれない・・・。」
恐ろしい悪寒に腕をさすりながら、ブルリと身を震わせる。しかしダナエは首を振り、強く槍を握りしめた。
「ダメよ、ここで引き返したらドリューを見つけられない。それに、いざとなったらプッチーの神様が助けてくれるわ。」
「・・・・そうだな。俺達にはプッチーがあるんだもんな。あの強い神様達なら、どんな敵だって怖くないよな?」
コウは無理に笑って自分を納得させる。ダナエも相槌を打ち、爆発しそうな鼓動を押さえながら先へ進んだ。
「コウ、もっと先を照らして。」
「OK。」
手の光をさらに輝かせ、穴の奥の方に向ける。すると赤い液体がじわりと地面に滲んでいて、その向こうに誰かがうつ伏せに倒れていた。
「あれは・・・・ドリューッ!」
ダナエは一目散に駆け寄り、ドリューの身体をゆすった。
「ドリュー!ねえドリューったら!しっかりして!」
大声でゆさぶってもピクリとも動かず、その身体は氷のように冷たかった。ダナエは泣きそうになるのを我慢しながら、ドリューを抱え起こした。
「ドリュー!しっかりしてよ!」
そう叫んで身体を裏返すと、腹の辺りからじっとりと血が滲んでいた。
「きゃあああああ!ドリュー!」
我慢していた涙がこぼれ落ち、大量の血を見てパニックになる。するとそこへコウが飛んで来て、「どけ!」とダナエを突き飛ばした。
「・・・・・・死んでる?いや、まだ少しだけ息があるな。早く治さないと!」
コウは宙に舞い上がり、両手を掲げて呪文を唱える。
「水の精霊、土の精霊、ドリューの身体に力を与えて・・・・、」
すると突然低い女の笑い声が響き、身体じゅうに悪寒が駆け抜けた。思わず魔法を唱えるのをやめ、咄嗟に後ろに下がる。
「誰ッ!」
ダナエは槍を握って前に出る。逃げ出したくなる恐怖を必死に我慢して、コウとドリューを守るように立ちはだかった。
穴の奥からはまた笑い声が響き、カツカツとヒールの音が迫ってきた。そして暗い穴の奥から、一人の美しい女性が姿を現わした。
「ふふふ・・・子供がこんな所で何をしているのかしら?」
女は長い黒髪をなびかせ、紫のワンピースを翻してダナエの前に飛んできた。
「・・あ・・・・ああ・・・・・・。」
女の鋭い眼光に圧倒され、ダナエは震えながら下がっていく。ぬかるみに足をとられて尻もちをつき、思わず槍を落としてしまった。
「何をそんなに怖がってるのかしら?可笑しな子ね、うふふ・・・・。」
女は美しくも冷淡な顔を笑わせ、首にかけた大きな数珠を触った。そしてその手には、ドリューの描いたスケッチが握られていた。
「ああ!・・そ・・・その絵は・・・・。」
思わず指を差し、ガチガチと顎を震わせる。女は絵を持ち上げ、首を傾げて微笑んだ。
「これ?そこの画家さんが描いた絵よ。よく出来てるわよね、中に入ることが出来る絵なんて。
あら?でもよく見れば、このスケッチに描いてある女の子ってあなたじゃない?」
女はヒールを鳴らして近づき、膝をついてダナエの顔を覗き込む。そしてそっと顎に指を当て、観察するように見つめた。
「あなた・・・この星の魂じゃないわね。それに地球の魂でもない。これは・・・月ね?
あなたは月から来た魂。うふふ、珍しいこともあるものだわ。この星に地球以外の魂がいるなんて。」
女は目を細めて二コリと笑う。ダナエはその顔に恐怖を覚え、無意識に言葉を発した。
「・・・じゃ・・・邪神・・・・。」

 

                         (つづく)

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