ダナエの神話〜異星の邪神〜 第八話 神の遣いメタトロン(3)

  • 2014.04.05 Saturday
  • 19:53
友を見送ったスカアハは、目の前にそびえる怪物を睨んだ。
「なんとも恐ろしい化け物よ・・・。しかし、負けるわけにはいかぬ!」
拳を握り、黒い風を纏って黙示録の魔獣に飛びかかる。シヴァを中心としたインドの神々も、最強の魔獣を討ち倒そうと奮闘した。
そして・・・・戦いは熾烈を極めた。世界が終る時に現れるという魔獣は、想像を絶する強さだった。
胸に刻まれた「666」の数字から放たれる光が、シヴァの光線さえ上回る威力でインドの大地を焼いていく。
神々は次々に倒れ、遂にはシヴァとインドラ、そしてスカアハだけとなってしまった。辛うじて生き残ったパールバティも、息も絶え絶えに苦しそうに横たわっていた。
「・・・まさかこの私が・・・・ここまで追い詰められようとは・・・・。」
想像を遥かに上回る黙示録の魔獣の強さに、破壊の神シヴァでさえも遅れをとっていた。共に生き残っていたインドラさえ、もはや戦う気力が根こそぎ削がれていた。
「シヴァ殿・・・このまま戦っても勝ち目はない・・・。奴には我らの力がほとんど通用しないのだから・・・。」
「・・・仕方あるまい。コイツが現れるということは、世界に終わりが近づいているということだ。それは神々でも抗えぬ、常世の掟のようなものだ・・・。しかしだからといって、ミスミスこの化け物を取り逃がすわけにはいかん・・・。いったいどうすれば・・・・。」
困り果てた神々をよそに、黙示録の魔獣は暴れ回る。そして・・・傷つき横たわっていたパールバティを、パクリと飲み込んでしまった。
「ああ!私の妻が・・・・。おのれえええああああ!」
シヴァは額の目に全ての力を込め、破壊の光線を放つ。その直撃を受けた黙示録の魔獣は、わずかに後退してパールバティを吐き出した。
シヴァはさっと手を出して受け止め、心配そうに妻を見つめた。
「おい!無事か!しっかりしろ!」
「・・・・・・・・・・・・。」
パールバティは目を閉じたまま動かない。そして徐々に肌が黒く染まり、美しい顔が鬼のような形相へと変化していった。
「・・・おお・・・これは・・・・我が妻が・・・・。」
シヴァは怯えながら後ずさる。パールバティはガバッと起き上り、「がああああああああ!」と雄叫びを上げた。そして見る見るうちにシヴァを同じくらいにまで巨大化し、背中からニョキニョキと腕が生えて、額に第三の目が現れた。
「おお・・・我が妻が・・・破壊の化身、カーリーになってしまった・・・。これはもう、敵を仕留めるまで戦いをやめんぞ・・・。」
カーリーは手にした剣を振り回し、黙示録の魔獣に達向かって行く。そして狂ったように斬りかかり、突き刺し、口から毒を吐いた。
だが・・・・黙示録の魔獣は動じない。それどころか、さらに怒りをかって凶暴にさせてしまった。
「ギエエエエエエンッ!」
耳をつんざく高い雄叫びを上げ、七つの頭がカーリーに噛みつく。その力は強大で、一瞬のうちにカーリーを引き裂いてしまった・・・。
「なんと!カーリーまでもがあんなにあっさりと・・・・・。」
さすがのシヴァもこれには舌を巻いた。
「シヴァ殿・・・。いくら黙示録の魔獣とはいえ、あの強さは異常です。おそらく・・・我らでは相性が悪いのかもしれない・・・・。」
「相性が悪い・・・?どういうことだ?」
「奴めは異教の悪魔ゆえ、我らの力が通用しにくいのでしょう。ならばここは、神ではなく強力な天使に任せた方が賢明かもしれません。」
「強力な天使か・・・・ふうむ・・・。しかし残念ながら、我らはほとんど天使とは交流がないゆえ、どうやって頼めばよいのだ?」
「それは・・・・・どうしましょう?」
自分で提案しておきながら、インドラは困ったように笑う。
「我らの仲間は、時が経てば復活するだろう・・・。しかし蹂躙されたインドの地は中々元には戻らぬ・・・・。何としてもここでコイツを食い止めたいのだが・・・。」
インドの神々は、例え死んでもいくらでも転生出来る。しかしその間は、何も出来ずに黙示録の魔獣が暴れているのを見ているしかない。シヴァはますます困って頭を掻いた。
「う〜む・・・参った・・・。ヴシュヌとブラフマーにも来てもらえばよかったなあ。まあ今さら言ってもアレだが・・・・。」
「しかしシヴァ殿・・・なぜこんなに強力な悪魔がいきなり出現したのでしょうな?ここまでの強さなら、光の壁で戦っていた方が役に立つのでは・・・?」
インドラは不思議そうに首を傾げる。それについてはシヴァも「分からん」と答えるしかなかった。
「いずれにせよ、この化け物は我らの目の前にいるのだ。問題は、どうやってコイツを倒すかだが・・・・。」
その時、横に立っていたスカアハが「少しいいだろうか・・・。」と尋ねた。
「ああ・・・お主も生き残っていたのか。てっきりくたばったのかと思っていた。」
「勝手に殺さないでもらおうか・・・・。先ほどより話を聞いていると・・・天使の力を借りたいと思っているようだが?」
「うむ。我らの力は中々通用しにくいようだ。しかし天使の持つ光の力なら、コイツを倒せるやもしれん。」
「・・・ではこの場は我に任せて頂きたい・・・。我の旧友に、力を持つ天使がいるのだ。
その者に掛けあえば・・・最上級の天使を招いてあの怪物を仕留められるかもしれぬ・・・。」
「それは本当か!ならばすぐにその天使を呼べ!」
「・・・では私を空の上まで放り投げてもらいたい・・・。奴は雲の中にいることが多いゆえ、上手くいけば掴まえられるかもしれぬ・・・。ただしもし出会えなければ・・・・諦めるほかないが・・・。」
スカアハは腕を組んで空を見上げる。まるで大昔の友がそこにいるように・・・。
「シヴァ殿、ここはあの者に協力を仰ぎましょう。このままでは黙示録の魔獣を止められない。」
「・・・そうだな。では一つお願いするか。異国の神よ、我が手に乗れ。」
スカアハはシヴァの差し出した手に乗り、真っすぐに雲を見上げた。
「では行くぞ!準備はいいか?」
「いつでも構わぬ・・・やってくれ!」
「それでは・・・・ぬうりゃああああああ!」
シヴァは渾身の力でスカアハを投げ飛ばした。彼女は風を切って舞い上がり、グングンと空を上っていく。そして瞬く間に雲の中に到達し、口に手を当てて大声で叫んだ。
「おお〜い!サンダルフォン!いるか〜?私だ!スカアハだ〜ッ!」
雲の中にスカアハの声が響き渡る。しかし何の返事もなかった。
「サンダルフォン!いるなら返事をしてくれ!黙示録の魔獣が暴れているのだ!お主の力を貸してくれ〜!」
いくら叫んでも返事はなく、スカアハはじょじょに落下していく。
「くッ・・・。やはりそう都合よくいかんか・・・・。」
黒い風を身にまとい、落下するスピードを減速させる。そしてもう一度大声で叫んだ。
「サンダルフォ〜ン!いるなら出て来てくれえ〜!」
悲痛な叫びは雲の中に吸い込まれ、一筋の光が降り注いだ。
「おお・・・あの光は天使の光・・・・。」
雲から射す光がスカアハを包み、次の瞬間には巨大な天使が現れた。
「スカアハ!久しぶり!」
「おお、サンダルフォン・・・。来てくれたか。」
サンダルフォンは、実に不思議な姿をしていた。金属で出来た身体に、青く光る翼。その顔は無機質な機械のようで、金色の法衣を纏っている。
彼は優しくスカアハを受け止め、顔を近づけた。
「会いたかったよ。ほんとに久しぶりだ・・・・。」
「我も再会出来て嬉しいぞ。しかし今は思い出に浸っている時ではない。インドの大地にて、黙示録の魔獣が暴れておるのだ。」
「なんだってえええええ!あの最強の魔獣が!」
「うむ。なぜいきなりあんな化け物が現れたのか・・・・我にも分からん。しかしこのまま放っておくことは出来ぬ!どうかお主の兄に掛け会い、あの怪物を仕留めてくれ!」
「う〜ん・・・兄ちゃんかあ・・・。来てくれるかな?」
サンダルフォンは困ったように頭を掻いた。
「どうした・・・?何か都合でも悪いのか・・・?」
「そういうわけじゃないけど・・・・今喧嘩中なんだよね。まだ仲直りしてないんだ。」
「・・・・・・・・。」
「でも・・・事情が事情だから、とりあえず話してみるよ。兄ちゃんなら、黙示録の魔獣でもやっつけられるはずさ。」
「うむ、是非そうしてくれ。」
サンダルフォンは手首に着けた腕輪に話しかける。
「・・・もしもし?今どこ?・・・・・え?月?あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど、実はスカアハが・・・・・、」
サンダルフォンは、兄のご機嫌を窺うように話していた。時折「ごめんよ・・・」と呟き、困った顔をみせていた。
「うん、うん・・・それじゃお願い。はあ〜い。」
プチっと通話を切り、「来てくれるって」と笑った。
「それはよかった・・・。で、どのくらいで到着するのだ?」
「ええっと・・・今さっき月を出たところだから、五分くらいじゃないかな?」
「そうか・・・ならばそれまでは我々だけで耐えねばならんな。」
スカアハは大地を睨み、グッと拳を握った。
「サンダルフォンよ!下の大地では、インドの神々が奮闘しておる!我々もすぐ加に勢しよう!」
「ええ〜・・・・僕に黙示録の魔獣と戦えっていうの?あんまり乗り気になれないんだけど。」
「そんなことを言うな!あの魔獣には、インドの神々の攻撃が効きにくいのだ。お主の光の力なら、しばらくは足止め出来るかもしれぬだろう?」
「それはそうだけど・・・・。」
サンダルフォンは気弱な顔で俯く。そしてもじもじと指を動かしていた。スカアハはそんな彼を見上げ、励ますようにポンと叩いた。
「・・・弱気になるな・・・男の子であろう?」
「・・・うん!俺、いっちょ頑張る!」
「その意気だ。では黙示録の魔獣の元へ向かおう!」
サンダルフォンは、スカアハを手に乗せたまま一気に降下していてく。隼のように翼をたたみ、風を切って落ちていった。
「・・・・・あれか!」
黙示録の魔獣の姿を捉え、クルリと回転して飛び蹴りを放った。
「ギエエエエエエエン!」
強烈なキックをくらい、たまらず倒れこむ黙示録の魔獣。しかしすぐに起き上って雄叫びを上げた。
「こここ・・・・来い!ぶん殴ってやる!」
サンダルフォンはブルブルと震えながら構えた。黙示録の魔獣は雄叫びを上げ、サンダルフォンを突き飛ばした。
「うぎゃあッ!」
思い切り頭を打ち付け、痛そうにうずくまっていた。それを見ていたシヴァは、呆れた顔で呟いた。
「大丈夫なのか・・・あいつは?」
「うむ・・・。少々気の弱いところはあるが、実力はある。やる気さえ出してくれれば、きっと活躍してくれると思うのだが・・・・・。」
しかしスカアハの願いもむなしく、サンダルフォンはやられっぱなしだった。黙示録の魔獣に馬乗りにされ、ガツガツと噛みつかれている。
「痛いなあもお!やめろよ!」
「ギエエエエエエエン!」
サンダルフォンの身体は硬質な金属で出来ている。そのおかげで魔獣の牙は通らない。
しかしこのままでは、いつやられてもおかしくない状態だった。
「見ていられん・・・。助太刀してやるか。」
シヴァは右手を掲げ、チャクラムを投げた。チャクラムの鋭い刃が黙示録の魔獣を切りつけ、注意がこちらに逸れる。
「今だ!そいつを蹴り飛ばせ!」
しかし彼は、ブルブルと震えて動かなかった。
「怖い・・・・こいつ怖いよ・・・・。」
「くッ・・・・。なんと情けない奴・・・・・。」
シヴァは顔をしかめて舌打ちをする。
「おい異国の神!あんな奴で勝てるのか?」
「・・・もうすぐ彼の兄がやって来る。それまでの辛抱だ・・・・・。」
スカアハは拳を握って駆け出し、黒い風を放った。その風は渦を巻き、スカアハを高く舞い上げていく。
「ぬおりゃあああああああ!」
黙示録の魔獣に渾身の手刀を叩きこむ。すると大きな角にヒビが入った。
「まだまだ!」
続けて蹴りを放ち、ガツンガツンと魔獣の頭を殴っていく。
「サンダルフォン!お主は偉大な天使であろう!ならば戦え!お主の兄、メタトロンが来るまでの間、この獣と戦うのだ。我も力を貸すゆえ、立ち上がれ!」
スカアハは攻撃の手を緩めない。何度も魔獣の頭を殴っていく。
「ギエエエエエエエン!」
怒った魔獣は後ろ脚で立ち上がり、頭を振ってスカアハを振るい落とした。
「くッ・・・・。」
咄嗟に身を捻って着地するが、次の瞬間に、魔獣に飲み込まれてしまった。
「スカアハあああああああ!」
サンダルフォンは手を伸ばし、「うおおおおおおおお!」と立ち上がる。
「この怪物め!スカアハを返せ!」
拳を握り、強烈なボディブローを食らわせる。重たい音が響き、魔獣の腹がベコン!とへこんだ。
「ぐええええええええ!」
強烈なパンチを食らい、たまらず口を開ける魔獣。サンダルフォンはその隙に、魔獣の口に手を突っ込んでスカアハを助け出した。
「スカアハ!しっかりしろ!」
「・・・・・・・・・・・・・。」
スカアハは半分溶けかかっていた。黙示録の魔獣の強力な胃酸は、一瞬にして彼女の身体を蝕んでいたのだ。
「なんてことだ・・・。このままじゃ死んじゃう・・・。」
サンダルフォンは両手でそっと彼女を包みこんだ。彼の手に暖かい光が溢れ、傷ついたスカアハの身体を癒していく。
「お願いだ・・・治ってくれ。」
スカアハを助けようと懸命に頑張る。そこへ魔獣が襲いかかり、サンダルフォンの上に乗りかかった。
「うわあ!」
「ギエエエエエエン!」
ガシガシとかみつき、頭突きを食らわせる魔獣。
「やめろ!スカアハが・・・スカアハが死んじゃうだろ!」
目からビームを放って反撃するが、かえって相手を怒らせてしまっただけだった。
「グウウ・・・・・・。」
黙示録の魔獣は力を溜め、胸の「666」の刻印から光線を放とうとする。
「ああ・・・・やばい・・・・。」
いくら偉大な天使といえど、黙示録の魔獣の放つ光線には耐えられない。もうダメだと諦めかけた時、シヴァの剣が魔獣を貫いた。
「男子たるもの、簡単に諦めてどうする!最後まで戦えい!」
「で、でも・・・・。」
「でももへったくれもあるか!この程度の化け物・・・・ぬえええええええい!」
シヴァは剣を刺したまま魔獣を持ち上げる。そして思い切り地面に叩きつけた。
「ギエエエエエエン!」
魔獣は怒り狂い、胸の刻印から光線を放った。
「なんの!」
シヴァも負けじと額の目から光線を放つ。二つの力が激突し、はげしいせめぎ合いが起こった。
「ぬううううう・・・・・ぐおあああああああ!」
シヴァの光線は押し切られてしまった。後ろにいたインドラも一緒に吹き飛ばされ、遠くまですっ飛んでいった。
「ギエエエエエエン!」
黙示録の魔獣は勝ち誇ったように雄叫びを上げ、サンダルフォンの方を睨んだ。
「ああ・・・待ってくれ・・・。まだスカアハは治ってないんだ・・・・。」
必死に懇願するサンダルフォンだったが、魔獣はお構いなしに突っ込んで来た。
「ぐああああああああ!」
角がぶつかり、金属の身体にヒビが入る。
「痛い!やめろって!」
翼を振って追い払おうとするが、魔獣は止まらない。サンダルフォンの身体はビキビキと割れていき、ついには倒れ込んでしまった。
「・・・ダメだ・・・。ここでやられたら・・・スカアハが・・・・・。」
何としても彼女だけは守ろうと思い、残された力を使って傷を癒していく。暖かい光が溶けた身体を復活させ、スカアハは薄く目を開けた。
「・・・サ、サンダルフォン・・・・。」
「スカアハ・・・・もうちょっとだ・・・。もうちょっとで、傷が治るぞ・・・・。」
僅かに残った力を振り絞り、スカアハを癒していくサンダルフォン。しかし黙示録の魔獣は攻撃の手を止めない。何度も角を打ちつけ、鋭い牙で噛みついてくる。
「痛だだだだだあ!足が千切れるうううう!」
「グウウウウ・・・・・。」
魔獣は牙を突き立て、彼の足をかみ砕こうとする。
「サンダルフォン!我のことはもうよい!今すぐここから逃げよ!」
「・・・そんなことしたら・・・また君が食べられちゃう。大丈夫、すぐに兄ちゃんが来てくれるから・・・・。」
「サンダルフォン・・・・・。」
魔獣の攻撃に耐えながら、ニコリと笑ってみせる。
「このお!離れろ!」
サンダルフォンの羽が目に突き刺さり、魔獣は思わず後ずさった。
「ギエエエエエエエン!」
魔獣はさらに怒った。前足の爪で羽を抜き取り、恐ろしい形相で雄叫びを上げた。
「グウウウ・・・・・。」
鋭い目でサンダルフォンを睨み、口の中に灼熱の業火を溜めていく。
「や、やばい・・・・。今度こそやられるかも・・・・・。」
恐怖で泣きそうになるが、それでもスカアハだけは守ろうとした。彼女を庇うように魔獣に背中を向け、そっと胸に包みこむ。
「サンダルフォン!逃げるのだ!このままではお主が・・・・、」
「嫌だ!このまま逃げたら・・・・君はきっと食べられてしまう!」
「サンダルフォン・・・・なぜそこまで我を守ってくれるのだ・・・・?」
そう尋ねると、サンダルフォンは苦笑いをみせた。
「・・・兄ちゃんと喧嘩をしたのは・・・僕が情けなかったせいなんだ。邪神が地球を奪おうとしているのに、僕は何も行動を起こそうとしなかった・・・・。
今日だって・・・本当は黙示録の魔獣が現れることを知っていたんだ・・・。それなのに、僕は君が来るまで・・・・・。」
サンダルフォンは悔しそうに歯を食いしばる。自分に対する情けなさから、怒りがこみ上げてきたのだ。
「兄ちゃんに言われてたんだ・・・。黙示録の魔獣が現れたら、お前が戦えって・・・。兄ちゃんは大事な用があるから・・・こっちに戻って来るまでは・・・お前が戦えって・・・・。
でも、僕はそれを断った・・・。だから・・・・だから兄ちゃんと喧嘩を・・・・。」
スカアハは彼の気持ちを知り、「ふふふ・・・」と小さく笑った。
「・・・そうだったのか。それで我のことを・・・・・。」
彼女の傷はほとんど癒えていた。サンダルフォンの手から立ち上がり、魔獣の前に立って拳を構えた。
「何やってんだよ!隠れてないと死んじゃうぞ!」
「構わぬ・・・・。命がけで我を守ろうとしてくれた友を、みすみす死なせるわけにはいかぬからな・・・・。」
そう言ってニコリと微笑み、魔獣と向かい合う。
「さあ・・・来るがいい!我が力の全てをもって、その灼熱の業火を受け止める!」
「ギエエエエエエエン!」
スカアハは分かっていた。自分の力では魔獣の炎を受け止めきれないことを。しかし何もせずに友を見殺しにすることは出来なかった。
「スカアハ!ダメだ!」
サンダルフォンは手を伸ばしてスカアハを守ろうとする。しかし次の瞬間・・・・魔獣の口から灼熱の炎弾が撃ち出された。
「スカアハああああああああ!」
黙示録の魔獣の業火が、ケルトの女神を襲う。激しい火柱が立ち上り、キノコ雲が出るほどの爆発が起きた。
「うわああああああああ!」
その爆発はサンダルフォンにも襲いかかり、あまりの高熱に身体が溶けていく。
「う・・・うううう・・・・・。」
痛みに耐えながら目を開けると、魔獣はすぐ目の前に立っていた。
「く、来るなああああああ!」
ブンブンと拳を振って追い払おうとするが、魔獣は彼の腕に噛みついた。バキバキと音を立て、牙が食い込んで腕が砕かれそうになる。
「あああ・・・ごめんよスカアハ・・・・ごめんよ兄ちゃん・・・・・。」
友を守れなかったこと、そして兄の言いつけを守れなかったことを悔やみながら、死を覚悟した。魔獣は胸の刻印を光らせ、サンダルフォンにトドメを刺そうとしていた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
サンダルフォンはじっと目を閉じる。何も出来なかったことを悔やみながら、最後の時を迎えようとしていた。
そして・・・・・黙示録の魔獣の胸から、強烈な光線が放たれた。あらゆるものを無に還す呪われた光が、光り輝く天使の命を奪おうとしていた。
しかし・・・・彼は死ななかった。サンダルフォンと魔獣の間に、見えない壁のようなものが立ちはだかり、呪われた光線を防いでいる。
「・・・・な、なんだ・・・・・・?」
思わぬ出来事に息を飲んでいると、サンダルフォンの前に光の柱が立ち上った。
「ああああ!この光の柱は・・・・・・。」
思わず声を上げ、傷ついた身体を起こす。光の柱は天高く昇っていき、凄まじい轟音と共に一人の天使が現れた。
「に・・・兄ちゃん!」
突如現れた一人の天使・・・それはサンダルフォンの兄、メタトロンであった。
「弟よ・・・お前の戦い、しかと見ていたぞ。」
メタトロンは、弟と同じように金属の身体をしていた。それは白銀に輝く美しい身体で、白地に青い線が入った法衣を纏っていた。その顔は機械のように無機質だが、とても凛々しい印象を与えるものだった。
「お前の友・・・死んではいない。安心するがいい。」
そう言ってメタトロンは手を差し出した。
「スカアハ!」
彼女はメタトロンの手の上で倒れていた。気を失ってぐったりとしているが、大きな怪我はなかった。サンダルフォンは彼女を受け取り、「よかったあ・・・」と涙ぐむ。
「さて・・・とにかくこの獣を倒さねばな。」
メタトロンは黙示録の魔獣を振り向き、ギュッと拳を構えた。
「ギエエエエエエン!」
「獣と交わす言葉などない。来るがいい!」
最強の天使と、最強の魔獣の戦いが始まった。

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