セカンド・コンタクト 第九話 もう一つの真実(1) 

  • 2014.05.11 Sunday
  • 13:36
『もう一つの真実』


【「お父さん、このツクシってから揚げに出来る?」
ミリサは頬の横にツクシを掲げ、屈託のない笑顔で尋ねる。僕は首を振り、「無理だよ」と答えた。
「そんなものをから揚げにしたって美味しくないよ。」
「でも食べれるんでしょ、これ?」
「食べられるけど、から揚げにはしない。お浸しとかそういうのにするんだよ。でも苦いから、ミリサの好みじゃないと思うよ。」
そう言うと、ミリサは頬を膨らませてツクシを齧った。
「・・・・・不味い。」
「当たり前だろう。生で食うものじゃないんだから。」
ミリサの手からツクシを奪い、そっと池に投げた。
「あ、可哀想!」
「可哀想?」
「だって、それは世界で一つだけのツクシだよ?採ったんなら、ちゃんと食べてあげないと。」
ミリサは池に手を伸ばし、不味いのを我慢しながらツクシを食べ切った。
「・・・うげえ・・・不味い・・・。」
僕はそれを見て微笑ましく思った。ミリサは昔から変わったところがあり、異常なまでに命というものにこだわるのだ。
人でも動物でも虫でも、そして植物でさえも、その命を奪うことを良しとしない。
だからこの子が子供のころ、物を食べることを拒否して困ったものだった。
『命を殺して食べるなんて、バチがあたるもん!』
そうは言いながら、腹が減ると親の目を盗んで食べていた。
「ねえ、こっちのツクシはから揚げに出来る?」
「いいや、そっちのも無理だろう。ツクシっていうもの自体が、から揚げには向いていないんだから。」
「なんだ・・・じゃあ採るのやめとこ。」
ツクシに伸ばした手を引っ込め、辺りをきょろきょろ見回すミリサ。そして池の対岸に綺麗な桜とボケの花が咲いているのに気づき、そちらへ走って行った。
「おいおい・・・池に落ちるなよ。」
「落ちないよ、子供じゃないもん。」
ミリサは桜とボケの前に立ち、その匂いを嗅いでウットリとしていた。
「いい匂い・・・。私・・・桜って大好き。」
「そっちはボケの花だよ。桜はピンクの方だ。」
「どう違うの?」
「どちらも同じバラ科の植物だけど、桜はサクラ属、ボケはボケ属に分類される。
二つとも園芸品種としてたくさんの種類があるけど、日本に咲いている桜のほとんどはソメイヨシノだ。」
「ソメイヨシノ?」
「桜の種類の名前だよ。日本中に生えているソメイヨシノは、一つの木から株を分けたもので、まあいわばクローンだな。」
「クローンって・・・コピーってこと?」
「そういうことだ。」
「じゃあこの桜は偽物ってこと?」
「偽物ってことはないけど・・・みんな同じ遺伝子を持っているんだよ。分かりやくす言うと、双子がたくさんいるようなものさ。」
「ふうん・・・。」
ミリサは首を傾げながら、何とか僕の言葉を理解しようとしているようだった。
眉間に皺を寄せ、難しい顔で考えている。しかし考えるのに飽きたのか「なるほどねえ」と適当な相槌を打っていた。
「じゃあボケの花は?これもクローン?」
「それは違うよ。ボケの花は平安時代に中国から輸入された植物で、これもたくさんの種類があるんだ。でもソメイヨシノみたいに、同じ遺伝子を持った木がそこらじゅうに生えているってことはないよ。」
「じゃあこいつはオリジナルなんだね?」
「きっとね。」
ミリサはニコッと頷き、ボケの花に手を伸ばした。
「桜は大きいけど、ボケって小さいのね。」
「そうだね。でも近くで花が見られていいじゃないか。」
「うん。でも・・・桜くらい大きなボケの花があったらいいのに・・・。」
ミリサはわずかに表情を曇らせ、ボケの花びらに触れた。
「どうしてそう思うんだい?」
「だって・・・さっきのお父さんの話を聞いて、あんまり桜が好きじゃなくなったから・・・。
だからボケの花が桜くらい大きかったら、もっと見ごたえがあるのにって思って。」
僕は少しだけ後悔した。根っからの学者肌のせいで、説明を求められるとつい余計なことまで喋ってしまう。
ミリサが求めていたのは、そんな理屈っぽい答えではないのだ。もっと感覚的な、そして観念的な答えだったのだろう。
僕とミリサが別の人間であるように、桜とボケとは、なぜ別の存在なのかを問いたかったのだ。ミリサは優しくボケの花を撫で、その根元に腰を下ろした。
「お父さん、下から見上げると綺麗だよ。」
そう言って地面を叩いて座るように促す。僕はミリサの横に腰を下ろし、彼女の澄んだ瞳を見つめた。
「ミリサ、最近はあまり夢にうなされていないね。心が落ち着いているのかな?」
「まあね。もうお母さんが死んで二年になるし・・・さすがに落ち着かなきゃ困るでしょ?」
ミリサは僕を見て笑い、ボケの木にもたれかかった。
そして気持ちよさそうに目を閉じ、まるでボケの木と同化するようにまどろんでいった。
そんな彼女を見つめ、僕は心底ホッとしていた。二年前に妻を失くしてから、ミリサは心を病んでしまった。元々少し精神に障害を抱えていたのだが、母が死んだことによってそれが悪化してしまった。
一時はどうなることかと思ったが、どうやら快方に向かっているようで安心した。
僕もボケの木に身体を預け、目を閉じて春の陽気を感じた。すると池の対岸に家族連れがやって来て、ワイワイとにぎわい始めた。
ミリサはその声に反応してパッと目を開き、立ち上がって僕の手を引いた。
「行こう、お父さん。」
「どうした?もう帰りたいのか?」
「いいから行こう。」
ミリサは強引に僕の手を引っ張り、池のほとりを歩いていく。
《きっと・・・あの家族がうらやましく映ったんだな。》
僕はミリサの機嫌を損ねないように、黙って一緒に歩いた。すると対岸にいた家族連れの少年が、こちらに向かって走って来た。
ぶつからないように道を空け、少年の姿を目で追う。彼はボケの花を見上げ、手を伸ばして花びらを千切った。それを興味深そうに見つめ、ポケットにしまっていた。
そして父に呼ばれて家族の元に戻る途中、躓いて転びそうになっていた。
僕は咄嗟に手を伸ばして少年を掴み、池に落ちるすんでの所で引き揚げた。
「大丈夫かい?」
少年に顔を近づけ、頭を撫でてやる。彼は恥ずかしそうに俯き、そして僕の横に立つミリサを見つめた。
少年のその目を見た途端、僕は思わず笑いそうになった。
《この子、ミリサに惚れたな。》
少年はじっとミリサを見つめ、頬を赤く染めている。そしてもじもじと手を動かし、さらに顔を赤くしていった。
そんな少年を可愛らしいと思ったのか、ミリサが珍しく自分から話しかけた。
「僕、気をつけてね。池に落ちたら溺れちゃうよ。」
そう言って頭を撫で、ニコリと微笑みかける。
少年はさらに顔を赤くして、ポケットからボケの花びらを取り出した。
「・・・これ、あげる。」
小さな手の平に、シナシナになった花びらを乗せ、ミリサの顔を見ながら差し出した。
「これは何?」
「桜。」
ミリサは一瞬困ったように笑い、小さく頷いてからそれを受け取った。
「桜・・・?うん、ありがとう。」
そう言ってまた少年の頭を撫でると、彼は一目散に家族の所へ走って行った。
「可愛い子ね。」
ミリサは受け取った花びらをポケットにしまい、少年の後ろ姿を見送っていた。
「お父さん、さっきの所に戻ろ。」
ミリサは僕の手を引き、ボケの花の下に腰を下ろした。そして車に乗り込んだ少年に向かい、ニコニコと手を振った。
「珍しいじゃないか、他人にそこまで明るく振舞うなんて。」
「そうだね・・・。でも、なんだかあの子がすごく可愛く思えちゃって。これって母性本能?」
「さあ、どうだろうね?」
僕は肩を竦めて笑い、しばらくミリサと一緒に座っていた。
春の陽気を存分に楽しみ、親子水入らずの時間がゆるやかに流れていく。
やがてミリサがスッと立ち上がり、「帰ろう」と言った。
「お母さんのお墓参りも終わったし、春の景色も楽しんだし、もうじゅうぶん。」
「そうだな、じゃあ家に帰ったらから揚げでも作るか?」
「ほんと?やった!」
ミリサは手を叩いて喜び、僕の手を引っ張って車まで走って行った。
「帰りは私が運転するね。」
「大丈夫か?いくら調子がいいって言ったって、あまり無理はしない方が・・・・、」
「心配ない、心配ない。今日の私は一味違うから。」
「そうかい?いつもと同じにしか見えないけど?」
そう尋ねると、ミサは指を立てて首を振った。
「ふっふっふ。お父さん、、聞いて驚かないでよ?」
「それは聞いてみないと分からないな。」
「あのね・・・さっきの子がボケの花びらをくれたでしょ?」
「ああ、それがどうかしたのかい?」
「・・・私ね、あの花びらから声が聞こえたの。まるで子供の頃みたいに。」
「花の声が・・・?」
「うん、さっきから声が聞こえるのよ。私は人間になりたい・・・・って。これってさ、今日の私が一味違う証拠でしょ?だって・・・私はようやく昔に戻ったんだもん。花や虫の声が聞こえていた、あの頃に・・・・。」
「ミリサ・・・・。」
僕は悲しかった・・・。心が落ち着いて快方に向かっていると思ったのに、どうやら違うようだ。
ミリサの心は、現実と非現実の境目がなくなりつつあるらしい。歳と共に治まっていた症状が再発するなんて、やはり妻の死が大きなショックを与えていたようだ。
「ミリサ、やっぱりお父さんが運転するよ。」
「ダ〜メ。今日は私に任せなさい。」
ミリサは胸を張って運転席に乗り込み、鍵を寄こせと手を出してくる。
《こうなったら聞かないからな。まあ仕方ない、途中まで運転させてやるか。》
僕はポケットから鍵を取り出し、ミリサの手の上に置いた。
「気をつけて運転するんだぞ。」
「分かってるって。それじゃ出発!」
キーを回してエンジンを掛け、危なっかしいハンドル捌きで走り出す。
しかし三十分も運転していると、ハンドル捌きも安定し、運転から危うさが消えていった。
「そうそう、その調子。」
「ふっふっふ、やっぱり今日の私は一味違うでしょ?」
ミリサは胸を張って笑い、しっかりと前を見て運転する。ゆるやかな一般道を走り抜け、やがて高速道路の近くに差し掛かった。
「もういいよ、あとはお父さんが運転するから、そこの路肩に停めてくれ。」
「いいよ、家まで私が運転するから。」
「それは駄目だ。もし何かあったら・・・・、」
「心配しなくても事故なんかしないよ。平気だって言ってるでしょ。」
ミリサの顔が僅かに曇る。これ以上何か言えば、本気で怒り出して不機嫌になるだろう。
それはミリサの精神を不安定にさせ、さらに症状を悪化させてしまう可能性がある。
「分かったよ・・・でも家までは駄目だ。ここから四時間もかかるんだから、途中でお父さんが交代する、いいね?」
「・・・・しょうがないなあ、じゃあ途中で代わってあげるよ。」
ミリサは渋々頷き、丁寧にハンドルを切って高速道路の入り口を上った。
「後ろ、車が来てるから気をつけて。」
「・・・・・うん。」
「・・・・はい、今だ。ゆっくり入っていって。」
「・・・・・・・・・・・。」
ミサはガチガチに緊張していた。肩に力が入り、眉間に皺を寄せて前を睨んでいる。
やっぱり僕が代わった方がよかったかと思ったが、サービスエリアに到着するまでは運転を代われない。
「ミリサ、落ち着いて運転するんだ。大丈夫、高速は注意さえ怠らなければ、一般道より楽だから。」
「・・・・・・・分かってる。」
分かってなかった・・・。ミリサは青い顔をして、ブルブルと顎を震わせていた。なんたって二年ぶりの運転で、それ以前もほぼペーパードライーバーだ。
僕は科学者でありながら、事故を起こさないように神に祈った。
しばらく走ると、サービスエリアの看板が見えた。
「ミリサ、あと一キロしたらサービスエリアがあるから、そこで運転を代わろう。」
「・・・・うん・・・。」
じょじょにサービスエリアへ近づき、やがて入り口が見えた。
「そこを左に曲がるんだ。」
「・・・・・・・・・・。」
「ほら、スピードを落として、ウィンカーを出すんだ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「ミリサ、落ち着いて運転すれば大丈夫だから。」
「・・・・・無理・・・・。」
ミリサはガチガチに固まり、そのままサービスエリアを通り過ぎてしまった。
「・・・・仕方ないな・・・。もう少し行けば料金所があるはずだから、そこの路肩に止めよう。」
「・・・・ごめん・・・。」
「謝らなくてもいいさ。運転させたお父さんが悪いんだから。」
ミリサの背中を撫でて落ち着かせ、今さらながら運転させたことを後悔する。
《もし何かあってお前まで失ったら、僕は生きる気力を失くしてしまうだろうな。》
ミリサの横顔を見つめながら、買い置きしていた缶コーヒーに口をつけた。
やがて料金所の看板が見えて、その前に長蛇の列が出来ていた。
「ありゃあ・・・渋滞してるな。」
渋滞はかなり長く続いていて、その一番後ろには見覚えのある車があった。
「あのワンボックスは・・・さっきの親子連れか?」
大きなタイヤをはいた特徴的なワンボックスカーには、やはりさっきの家族が乗っていた。
「同じ道だったんだな。ミリサ、スピードを落とせ。このままじゃ追突するから。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「ミリサ、早くスピードを落とすんだ。」
「・・・・声・・・・?」
「何・・・?」
「声が聞こえるの・・・。さっきの花びらから、大きな声が聞こえてくるの・・・。」
まずいと思った・・・。運転という極度の緊張の為に、ミリサの心はますます不安定になっているらしい。
僕はいざという時の為にサイドブレーキを握り、もう一度ミリサに呼びかけた。
「ミリサ、早くブレーキを踏みなさい。怖がらなくていいから・・・・、」
そう言いかけた時、僕の頭に声が響いた。
『人間に・・・・人間になりたい・・・・。』
「・・・・・・・・ッ!」
『もう・・・陰は嫌だ・・・・人間になりたい・・・・誰かの目に見える・・・存在になりたい・・・・。』
《・・・な・・・なんだこれは・・・・?》
人の声とも獣の声ともつかない奇妙な声が、僕の頭に話しかけてくる。
いや、これは・・・・僕に話しかけているんじゃない。ただ・・・声が漏れているんだ・・・。
『・・・ずっと・・・ずっと昔からいるのに・・・誰も見てくれない・・・。もう・・・陰は・・・クローンは嫌だ・・・・。』
あまりに非現実的な出来事に、頭の中が混乱する。鼓動が跳ね上がり、息が荒くなってサイドブレーキを握る腕に力が入る。
「・・・・サイドブレーキ?・・・・まずい!追突する!」
ミリサはブレーキを踏んでいなかった。僕と同じように混乱した顔をしていて、もはや運転どころではなかった。
目の前にはあの家族連れの車が止まっていて、それはもうすぐ近くにまで迫っていた。
僕は咄嗟にサイドブレーキを上げ、思い切りハンドルを切った。しかし・・・・間に合わなかった。
車の側面が前の車体にぶつかり、隣の車線へ押し出した。そして・・・・前方からやって来た大型バスと衝突して、轟音を響かせて大破した。
僕の車は蛇行して高速道路の壁にぶつかり、なんとか止まってくれた。
その瞬間、ミリサが弾かれたように車から降りた。そしてあの家族連れの元へ走って行く。
「浩太君!」
そう叫んで、道路に倒れる少年を抱きかかえた。
《ミリサ・・・なぜその少年の名前を知っているんだ・・・?》
疑問に思ったが、今はそれどころではなかった。僕もミリサの横に走り、道路に倒れる家族連れを見つめた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
一目見て、あの少年以外は全員死んでいると分かった。
首があらぬほうに曲がりっていたり、頭が割れて大量の血が流れていたり・・・、素人目にも、ハッキリと死んでいると分かる光景だった。
ミリサは少年を抱きかかえ、何度も彼の名前を叫んでいた。
少年はぐったりとして腕を投げ出し、薄く目を開けていた。頭から赤黒い血が流れ、顔の半分を染めている。
しかし・・・・辛うじて生きている。ほんのかすかだが、胸が上下して口元が動いていたからだ。
僕は近くの公衆電話に走り、すぐに救急車を呼んだ。そしてミリサの元へ戻り、膝をついて肩を撫でた。
「もうすぐ救急車が来る。あまりその少年を動かしてはいけない。」
「・・・浩太君・・・。」
ミリサは泣くじゃくっていた。涙を流して鼻を赤くして、顔をくしゃくしゃに歪めていた。
そして・・・胸のポケットから、ヒラリと何かが舞い落ちた。それは、少年がくれたボケの花びらだった。
花びらは少年の頬に落ち、彼の血を吸いこんでさらに赤く染まる。
ミリサはその花びらを摘まみあげ、ギュッと胸に抱きしめた。
やがて救急車がやって来て、少年を病院へと運んでいった。僕たちも軽い怪我を負っていたので、後からやって来たパトカーで病院に連れられた。
残念なことだが・・・やはり少年の家族は死んでいた。病院に運ばれた時点で、すでに息絶えていたのだ。
生き残ったのはあの少年だけで、集中治療室で生死の境をさ迷っていた。
僕とミリサは警察から事情聴取を受け、過失で人を死なせた罪で起訴されることになった。
ただし・・・ミリサは無罪放免だった。精神に障害を抱えていたおかげで、罪に問われることはなかったのだ。
代わりに僕が責任を追及され、施行猶予のついた有罪判決を受けることになった。
検察から解放されて自由が利くようになってから、すぐに少年のいる病院へ行った。
彼は未だに目を覚まさず、最悪は死ぬまでこのままだろうと医者が言っていた。
そして・・・近いうちに、少年の命は終わるだろうとも・・・。
僕は重い石を飲まされたような気分になり、浮かない顔で家に帰った。
しばらく検察に拘束されていたせいで、ミリサを一人ぼっちにさせてしまった。
僕は家に帰るとすぐにミリサを抱きしめ、慰めの言葉をかけてやった。
「ミリサは何も悪くない・・・。悪いのは、ミリサに運転をさせたお父さんなんだ。だから自分を責める必要はないんだよ。」
ミリサはかなり深刻なダメージを受けていた。どんなに慰めの言葉をかけても、表情一つ動かさずに虚ろな目をしていた。
そうなるのも無理はない・・・。ミリサは誰よりも命というものを大切にしていた。それなのに、自分のせいで三人も人を死なせてしまったのだから・・・。
その日から五日間、ミリサは一言も喋らなかった。そして六日目の朝早くに、書置きを残して姿を消した。
『私は許されないことをした。もう・・・生きているのが苦しい。ごめんなさい、お父さん。』
その短い文章は、一瞬にして僕を絶望へ叩き落とした。
「ミリサ・・・・ミリサ!」
書置きを投げ捨て、玄関に向かう。僕は孤独になる恐怖に駆られながら、ミリサを捜しまわった。】

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