ダナエの神話〜宇宙の海〜 第三十七話 海底の死闘(8)

  • 2014.08.09 Saturday
  • 18:51
邪神は身体に怨霊を浮かび上がらせたまま、ダナエを包むシャボン玉に突進していく。
しかしその時、頭上から眩い光が降り注いだ。
《なに・・・・?》
足を止めて頭上を見上げると、そこには白馬に乗った天使がいた。
《天使・・・・?なぜ天使がこんな所に・・・・?》
不思議に思って見つめていると、天使は透明な杖をかざして光の弾丸を放ってきた。
《おのれ・・・・お前もこのガキの仲間か!次から次へと鬱陶しい・・・・。》
邪神は触手を振って光の弾丸を跳ね返し、白馬の天使に襲いかかった。
《セバスチャン!》
《ビヒイイイン!》
天使は馬を蹴り、邪神の触手をかわしながら旋回した。そしてダナエの前に降り立つと、傷ついた彼女を見つめて唸った。
《かなり痛めつけられているな。どれ、私の力を分け与えよう。》
そう言って透明な杖を振りかざすと、その先から青白い光が放たれた。
《妖精の王女ダナエよ。これは月の光だ。すぐにその身を癒し、力を与えてくれるだろう。》
そう語りかけると、ダナエは「・・・私を知ってるの?」と目を向けた。
《我は月に住む死神なり。一度顔を合わせているはずだが、この姿では分からぬか?》
そう言って白馬の天使は笑い、白いローブを脱いで裏返した。ローブの裏は表とは反対に真っ黒に染まっており、それを羽織ると死神の姿に変わった。
《ほれ、これで思い出したであろう?》
そう問いかけると、ダナエは「アドネの館の死神!」と指をさした。
《そうだ。我はコウという妖精に一本取られ、彼の願いを叶えてやることにしたのだ。》
「じゃ・・・じゃあコウは無事なのね?」
《うむ。もうそこまで来ているはずだ。》
そう言って死神のサリエルが後ろを振り向くと、邪神の触手が迫ってきた。
《遅い。》
サリエルはヒョイっと鎌を一閃し、あっさりと触手を切り払った。するとそこへ邪神の牙が襲いかかってきたが、その牙でさえ簡単に切り落としてしまった。
《ぬうう・・・私の攻撃をこうも容易くかわすなんて・・・。いったい何者!》
《我は死神のサリエル。死を守る番人にして、神に仕える天使なり。そして今は月に身を寄せている。》
《月・・・?月ですって?》
邪神は不思議そうに首を捻った。
《どうして死神が月なんかに身を置いているの?》
《貴様に教える義理はない。それよりも・・・・自分の身を心配することだ。》
《は?何を言って・・・・、》
邪神がそう言いかけた時、首の付け根に激痛が走った。
《ぎゃあああああああ!》
《このくされ外道め!今こそ俺の槍で退治してくれるわ!》
邪神の首元には、怒りに顔をゆがめるクー・フーリンがいた。そして魔槍ゲイボルグを首に突き刺し、尖端を枝分かれさせて掻き回した。
《ぎゃあああああああ!ふざけんじゃねえぞテメエ!》
邪神は首を振ってクー・フーリンを振り落とし、爪を振りかざして襲いかかった。すると今度はそこへ、キラキラと光り輝く妖精が飛んできた。
《あ・・・あんたは!》
《よう、おばちゃん。久しぶり。》
コウは虹色に煌めく光を纏って、邪神に笑いかけた。
《あんたのおかげで酷い目に遭ったよ。肉体は失うわ、仲間は傷つけられるわ。》
《それはこっちのセリフよ!事あるごとに邪魔をしやがって・・・・すり潰してやるわ!》
《おお、おっかねえ。これだからヒステリックな女には近づきたくないぜ。》
コウはあっさりと邪神の攻撃をかわし、毒で苦しむアリアンロッドたちの上に舞い上がった。
《七色に煌めく光の精霊よ!俺の仲間から毒を消し去ってくれ!》
そう叫んで羽をはばたくと、七色の光は小さな天使に姿を変えて飛んでいった。そして瞬く間にアリアンロッドたちから毒を吸い取り、ニコッとピースをして消えていった。
《よっしゃ!・・・て、やべ!あの光を使ったから息が・・・・。》
コウは慌ててシャボン玉を作り出し、その中に入って仲間の元に駆け寄った。
「アリアン!来てたんだな!」
《ああ、ついさっきだがな。それよりお前も無事でよかった。》
アリアンロッドは微笑みながらコウを見つめ、剣を拾って邪神を睨んだ。
《しかし今は再会を喜び合っている場合ではない。あの悪魔をどうにかしなければ・・・。》
《だな。じゃあちょっとの間そっちは任せるわ。俺はダナエを見てくる。》
《ああ、頼んだぞ。》
コウは慌ててダナエの方に飛んでいく。アリアンロッドはそれを見送ると、後ろに立つ二人に話しかけた。
《さて・・・二人とも、もう毒は消えたな?》
《うむ、コウ殿のおかげで全快だ。》
《んだ。オラもばっちりだべ。》
《そうか・・・ならば行くぞ!今日ここで、あの憎き邪神を討ち取ってくれる!》
《おおう!》
《んだ!》
アリアンロッドは剣を構え、スクナヒコナは矢を番え、そしてクトゥルーは足をうねらせて邪神に挑みかかった。
《邪神!いつぞやの借り、今ここで返すぞ!》
《ラシルの廃墟で会った脆弱な神か・・・・。あんたごときに何が出来るっていう・・・ふべらあああああああ!》
アリアンロッドは虹を纏い、幾つにも分身して斬りかかった。
《脆弱かどうか・・・その身で思い知るがいい!》
そう言って剣を逆手に構え、分身したまま飛び上がった。
《食らえ!月影空蝉の太刀!》
分身したアリアンロッドの背後に月の幻が浮かび上がる。そしてその月が消えるのと同時に、一瞬だけ辺りに闇が訪れた。そして次の瞬間・・・・邪神の足が一本斬り落とされ、海流に飲まれて流されていった。
《うごう!よくも私の足を・・・・、》
悔しそうに顔を歪める邪神だったが、そこへ今度はスクナヒコナの矢が飛んできた。
《こんなオモチャが効くと思って?》
小さな矢は邪神の硬い身体に跳ね返され、ぽとりと地面に落ちる。しかし落ちた矢からニョキニョキと木が生えてきて、幾つものひょうたんを実らせた。
《邪神よ、せっかくの戦いだ。それなりに楽しく参ろう。》
そう言ってスクナヒコナは矢を構え、全てのひょうたんを射抜いていった。すると貫かれたひょうたんから酒があふれ、邪神の身体に染み込んでいった。
《ほれ、たっぷり飲め。それはどんな敵でも酩酊する妖かしの酒だぞ。》
ひょうたんの酒が染み込んだ邪神は、まるで泥酔したようにふらふらと倒れ込んだ。
《おのれ・・・なんてふざけた攻撃・・・・。》
《言ったであろう。せっかくの戦いだ、酒でも飲んで楽しくやれい。》
邪神は何とか立ち上がろうとするが、強烈な酔いのせいでフラフラと倒れ込んだ。
《こ・・・こんな醜態を晒すなんて・・・許さない!》
《んだんだ、オラもオメさんのことは許さねえべ。》
背後からクトゥルーの声が響き、邪神は思わず振り返った。すると無数の棘が飛んできて、顔にプスプスと突き刺さった。
《あぎゃあ!な・・・何よこれは!》
《それは支配の棘だ。オメさんはもうオラの操り人形だべ。》
クトゥルーは可笑しそうに笑い、まるでマリオネットでも操るように足を動かした。するとその動きに連動して、邪神までもがクネクネと動き出した。そして自分の爪で自分を切りつけ、痛そうにもがいていた。
《ぐうう・・・・またしても醜態を・・・。私を辱める気か!》
《何言ってんだ。オメさんのやってることは最初から恥ずかしいべ。力で何かを支配しようとするなんて、恥ずかしい奴のやるこだ。》
《この・・・タコの分際で偉そうに!こんな棘なんかで私を支配出来るなんて思うなよ!》
そう言って身体に浮かぶ怨霊をうごめかせ、クトゥルーの棘とひょうたんの酒を飲み込ませていった。
《ちょっと遊んでやれば調子に乗って・・・・くたばれガキども!》
邪神は目を輝かせ、羽をひらいて飛び上がった。そしてグルリと一回転すると、そのまま海底に向かって落下してきた。
《全員まとめて海底に飲み込まれるがいいわ!》
邪神は猛烈な勢いで海底に体当たりし、大きな亀裂を作ってマグマを噴火させた。
《この海底のすぐ下には、溶岩の通り道があるのよ。全員まとめて灼熱の地獄に飲み込まれるがいいわ!》
邪神の作った大きな亀裂から、赤いマグマが吹き上げてくる。辺りは一瞬で真っ白な泡に包まれ、さらに亀裂が広がっていった。
《まずい!クトゥルーよ、とりあえず闇に避難だ!》
《いんや、避難なんてしねえ。マグマを闇に飲みこませればいいだけだ。》
クトゥルーは海底に闇を作り出し、噴出したマグマを飲みこませた。しかしそこへ邪神の体当たりが炸裂し、角が突き刺さって血を流した。
《いだだだだだ!》
《このタコ!調子に乗ってんじゃないわよ!》
邪神はそのままクトゥルーを持ち上げ、スクナヒコナの方に叩きつけた。
《ぬぐああああああ!》
スクナヒコナの上にクトゥルーの巨体が落とされ、さらには爪で切り刻まれてしまった。
《ぐべえッ!》
《ふん!しょせん軟体動物なんてこんなものね。》
勝ち誇ったように胸を張ると、背中に痛みが走って振り向いた。
《調子に乗ってるのは貴様の方だ!》
《いかれた脳筋馬鹿の神か・・・。あんたもこいつらと一緒にくたばりなさい!》
邪神は羽を広げてクー・フーリンを弾き飛ばした。そして大きな牙を復活させ、ガッチリとクー・フーリンを挟み込んだ。
《ぬぐおおおおおお!》
《鎧ごと潰してやるわ。》
クー・フーリンの赤い鎧が、メキメキとへこんでいく。そして腹に牙が突き刺さり、口から血を吐いて槍を落とした。
《ぬぐお・・・・。》
《雑魚が・・・・身の程をわきまえなさい。》
あっというまに三体の神を倒し、後ろに立つアリアンロッドの方を振り向いた。
《さあて・・・あんたもくたばりなさい。》
《・・・邪神め、相変わらず傍若無人な・・・・。》
アリアンロッドは再び分身し、さっきと同じ技を放った。
《食らえ!月影空蝉の・・・・、》
《それはもう見たわ。》
邪神は赤い目を光らせ、分身したアリアンロッドを照らした。
《・・・・・そこね!》
《ぐはああああああッ!》
邪神の赤い光は、分身の中から本物のアリアンロッドを見抜いた。そして彼女の腹に角を突き刺し、地面に叩きつけて踏みつけた。
《はがあッ!》
《やっぱり脆弱じゃない。ほらほら、もっと苦しめば?》
《あああああああああ!》
邪神の足がアリアンロッドを蹂躙する。しかしその時、背後に身も凍る殺気を感じて飛びのいた。
《死神・・・・。》
サリエルは凍りつくような目で邪神を睨んでいた。そしてセバスチャンを蹴り、鎌を振りあげて雄叫びを上げた。
《ボオオオオオオオ・・・・・。》
《なによこれは・・・気持ちの悪い声ね。・・・・ん?身体が動かな・・・うぐうッ!》
邪神の胸は突然痛み出し、まるで魂が引き裂かれるような感覚に陥った。そこへサリエルの鎌が振り下ろされ、首を斬り落とされてしまった。
《・・・そんな・・・・この私が死神ごときに・・・・。》
邪神の頭はユラユラと海を漂い、ゆっくりと海底に落ちていった。しかしサリエルはまったく喜ぶ表情をみせず、鎌から青白い光を放ってアリアンたちを助けていった。邪神はその隙に首だけで動き、すぐに身体とくっついてしまった。
《皆の者よ・・・・ここは各個で戦わず、上手く連携を取って攻めるのだ。》
サリエルのおかげで傷が癒えたアリアンたちは、一斉に邪神を取り囲んだ。
《まったく・・・これだけの神を相手一歩も引かんとは、敵ながら大した奴だ。》
アリアンロッドは剣を構え、周りの仲間を見渡した。
《こいつは一人一人の力では到底倒せない。私が合図をかけるから、奥義を以て一斉に攻めるのだ!》
皆は頷き、それぞれが自分の必殺技の態勢に入った。
《・・・ほんと、嫌になっちゃうわ・・・。諦めの悪い虫って性質が悪いのよね。》
《黙れ!虫は貴様の方だろう!》
《・・・・そうね。私は虫よ。そして・・・かつては一国の王女でもあった。》
《一国の王女・・・・?》
《あんた達に話すようなことじゃないわ。どっちにしたって、全員ここで死んでもらうんだから。》
邪神は羽を開き、黒い風を纏った。するとその風の中から、禍々しい気を放つ七つの武器が現れた。剣に槍、そして弓矢に斧、それと棍棒と杖、最後に指輪。そのどれもが禍々しい気を放っていて、闇のように黒く染まっていた。
《もうあんた達の相手をしている暇はないわ。私はユグドラシルを喰い尽くす為にここへ来たんだもの。》
《ユグドラシルを喰い尽すだと?》
《私の一番の脅威になるのは、あの神樹だけ。だからあいつさえ倒せば、もう敵はいなくなる。今までは僅かながら力を蓄えていたから無理だったけど、もうそれも残り少なくなっている。地球から呼び寄せた馬鹿な龍神が暴れてくれているおかげで、この星が壊れかかっているからね。》
それを聞いたアリアンロッドは《どういうことだ!》と剣を向けた。
《あの九頭龍とかいう馬鹿デカイ龍神が暴れてくれれば、この星は滅茶苦茶になるでしょ?そうするとユグドラシルは、この星を守る為に必ず力を使うと考えたわけ。そして案の定、私の予想通りになった。ユグドラシルは九頭龍の暴虐からこの星の命を守る為に、残された力を全て使おうとしているのよ。燭龍とかいう別の龍神がやって来たのは予想外だったけど、でもこれは良いハプニングだわ。だって・・・一人で暴れるより、二人で暴れてくれた方がこの星が滅茶苦茶になるもの。そのおかげで、ユグドラシルも急速にエネルギーを消耗しているみたいだし。》
《貴様ッ・・・・どこまでも狡猾な!》
《うふふ・・・頭が回るって言ってほしいわね。地球を支える龍神だかなんだか知らないけど、しょせんはただのトカゲ。あんなものを手懐けることくらいわけないわ。》
そう言って可笑しそうに高笑いし、地球の神々を睨みつけた。
《さて・・・もう終わりにしましょ。しょせんあんた達なんて私の敵じゃないんだから。》
《ぬかせ!そんな呪われた神器に頼らなければ、何も出来ない分際で!》
《あんただって自分の剣を持ってるじゃない?同じでしょ?何が違うの?》
邪神は馬鹿にしたように笑い、周りに浮かぶ七つの神器を動かした。
《あんた達程度なら一つでも充分なんだけど、さっさとやっちゃいたいから全部使わせてもらうわ。》
《出来るものならやってみろ!私たちはそう簡単に負けたりはしない!》
アリアンロッドは虹を纏い、剣をゆらりと動かした。
《行くぞみんな!一斉に奥義を放ち、邪神を仕留めるのだ!》
そう言って剣を振りあげ、みんなに合図してから一斉に飛びかかった。
《馬鹿ね・・・・本当に地球の者は馬鹿ばっかりだわ・・・。》
邪神はうんざりしたように言い捨て、七つの神器を飛ばした。アリアンロッド、スクナヒコナ、クトゥルー、クー・フーリン、そししてサリエル・・・・。みんながそれぞれの必殺技を放ち、神殺しの神器を掻い潜って邪神に挑みかかった。
だがしかし・・・・神殺しの神器は突然動きを変え、神々に襲いかかった。みんなは必殺技を以て迎撃しようとしたが、神殺しの神器にはまったく効かなかった。
アリアンロッドの剣は折れ、スクナヒコナの弓矢は砕かれ、クトゥルーの足は斬り落とされ、クー・フーリンの槍は叩き潰され、そしてサリエルの鎌までもがグニャリと曲げられてしまった。
武器を失った神々は成す術を失くし、七つの神器に翻弄されていく。弓矢がスクナヒコナの小さな身体を貫き、槍がクトゥルーの頭を突き刺し、棍棒がクー・フーリンの腕を叩き折り、杖と指輪は呪いを放ってサリエルに激痛を与えた。そして・・・・最も強力な神器である神殺しの剣が、アリアンロッドの身を切り裂いた。
みんなは一瞬にして倒れ、そこへこれでもかといわんばかりに追撃が加わる。神々は悲鳴を上げ、己の無力を感じながらただただ敗北の味を舐めさせられた。
《うああああああああああ!》
《うふふ・・・・確かケルトの女神だったかしら?私ね、あなたみたいな正義感に燃える女は反吐が出るほど嫌いなのよ。他の奴より苦しませて殺してやるわ。》
邪神は剣を自由自在に動かし、徹底的にアリアンロッドを痛めつけていった。鮮血が飛び散り、アリアンロッドの顔は苦痛に歪んでいく。
《ぐああああああああああああ!》
《うふふ・・・ごめんねえ。私ってサドっ気が強いから、あなたみたいにいい声で鳴かれたら、ゾクゾクして燃えちゃうのよ。》
邪神は舌舐めずりをして、苦しむアリアンロッドを見て楽しんでいた。
《まだまだ、もっと踊ってちょうだい。苦痛と恥辱にまみれて、絶望の中で死んでいくがいいわ。》
神殺しの剣は、幾度もアリアンロッドを切りつけていく。もはや彼女に成す術はなく、ひたすら翻弄されて、倒れることすら許されなかった。そこへ邪神の触手が襲いかかり、服を引き裂いていく。そして露わになったその身に、彼女が最も嫌う類の攻撃を仕掛けていった。
《さあ、もっともっと鳴きなさい。快感と痛みの狭間で、気が狂うほどもだえ苦しめばいいわ。その時・・・いかに自分が無力か悟るでしょう。》
《ふううあああああああああ!》
剣に痛めつけられ、触手にその身を弄ばれ、身も心もズタズタに引き裂かれていく。他の神々もただただ神殺しの神器に痛めつけられ、彼女を助ける余裕はなかった。
《あら?もう鳴くのはお終いなの?だったら力を与えてあげるわ。弱者は生かさず殺さず、飴と鞭を使い分けて楽しむオモチャだから・・・うふふ。》
邪神はダナエの時と同じように、触手をアリアンロッドの口に押し込んだ。そしてドクドクと力を注ぎ、傷を癒して力を与えていった。
《むぐううううううう!》
《あら、そうやって触手を咥えてる方がいいわね。その方がエロティックで痛めつけがいがあるわ。力も簡単に注げるしね。》
《むううううううう!》
アリアンロッドは、己の無力に絶望を抱き始めていた。かつてここまで苦戦する敵に出会ったことはなく、心の中の正義がくじけそうになっていた。そしてその目から涙を流し、地球で共に旅をした仲間に助けを求めた。
《・・・コウ・・・お前はあのピラミッドの神殿でこう言ったはずだ・・・。辛かったら甘えてもいいと・・・。なら・・・助けてくれ!もうこれ以上・・・・痛みと屈辱の連鎖には耐えれらない・・・。コウ・・・ダナエばかり見てないで・・・私を・・・・・。》
アリアンロッドの心は、もう限界に達していた。しかしその時、突然神殺しの剣が動きを止めた。
《あら・・・どうしたのかしら?》
不思議そうに首を捻る邪神だったが、弓矢と棍棒までもが動きを止めてしまった。
《変だわ・・・どうして急に動きが止まったのかしら・・・?》
剣、弓矢、棍棒の三つの神器は、まったく邪神の意志に反応しなくなってしまった。そしてボトリと地面に落ち、緑の淡い光を放ち始めた。
《どういうこと?どうして急に動かなくなったの?それにあの淡い光はいったい・・・。》
邪神は目を凝らして三つの神器を見つめた。すると三つの神器に、小さな丸い玉が付いているのを見つけた。
《あれは何?・・・・何かを丸めて固めたような物だけど、いったいいつあんな物が付いたのかしら?》
邪神は考える。この神器は我が身と同じくらいに大切なものだから、決して他人に触らせることはない。ならばあの小さな玉は、いったいどこで付いたのか?
《これは私の魂と直接繋がる神器だから、絶対に他の者には触れさせない。でもかといって、私はあんな玉を付けた覚えはないし・・・・。》
じっと考える邪神だったが、ハッとあることを思い出した。
《・・・そうだわ。あの時、カプネとかいうカエルにこの神器を見せたんだわ。箱舟を差し出す代わりに、これを見せろってうるさかったから・・・・。間違いない!これはあのカエルの仕業だわ!》
そのことに気づいた邪神は、顔を歪ませて怒り狂った。
《あのガマ野郎!害の無い無力な獣人だと思ったら、とんだ喰わせ者だわ!箱舟は盗み去るし、おまけに私の神器に下らない仕掛けを・・・・・。許さない!あいつも拷問リストに追加してやる!そして地獄より辛い目に遭わせて・・・・、》
そう言いかけた時、神器に付いた丸い玉が炸裂した。それは花火職人であるカプネが作った特製の爆弾で、しかも強力な呪術士の呪いまで掛っていた。
小さな玉は海の水を押しのけて大爆発を起こし、巨大な泡の柱を立ち上らせた。そしてその爆発のせいで神器にヒビが入り、さらには呪いまでかかってしまった。
《ぎゃああああああああ!》
神器を傷められた邪神は、身をのけ反って苦しんだ。神殺しの神器と邪神の魂は繋がっているため、そのダメージは直接邪神を傷めつけたのだ。そして彼女の魂にも呪いが掛り、その力の半分を封じ込められてしまった。
《うごうおおおおおおおお!ふざけるなあのカエル野郎おおおおおお!殺す!絶対にブチ殺してやるうううううう!》
邪神は怒りに燃え、それに反応して身体中の怨霊も雄叫びを上げた。しかしカプネの爆弾が与えたダメージは絶大で、邪神はひっくり返って足を縮こめた。
それはまるで、死んだ虫のポーズそのものであった。

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