水面の白影 第八話 変貌する弟(2)

  • 2014.10.07 Tuesday
  • 18:16
「あんたも同じ場所へ行け・・・・・。」
「は?・・・・同じ場所って何よ・・・・・。」
意味が分からず、軽くパニックになる。しかしこれから良くない事が起こるのは確かだと思い、広明を押しのけて出窓に向かった。
「あんたちょっとおかしいで・・・・。悪いけどしばらく家には来おへんわ。」
ベランダの鍵を開け、慌てて外に逃げようとした。しかしまた腕を掴まれ、「いやあ!」と叫んで振り払った。
「触るな!こっちに近づくな!」
バッグで殴りつけ、思い切り突き飛ばす。しかし広明はビクともせず、叔母の顔のまま小さく笑っていた。
「あんたもあいつらと同じ場所へ行け・・・・・・。」
「は・・・・?だから何言うてんの・・・・?あんたマジでおかしいで・・・・。」
「・・・・おかしいのはお前。せっかく広明があんただけは許してやってくれって頼んだのに、それを台無しにした・・・・。
あの子の優しい気持ちを踏みにじった・・・・。しょせんはあのクズ男の娘・・・・。広明の姉に相応しくない・・・・・。」
「・・・・分からんわ・・・・何を言うてんの・・・・・。」
まるで話が通じない・・・・。これ以上ここにいては危険だと思い、慌てて逃げることにした。しかし窓の外に出た途端に、髪を掴まれて引き戻された。
「いや!やめろ!」
「・・・・逃がさない・・・・。」
広明はそのまま私を抱え上げ、かつて私が使っていた部屋に連れ込んだ。そして床に押し倒し、服とロングスカートを脱がしにかかって来た。
「ちょっと!何すんの!」
「・・・・あんたはもうじき死ぬんだから、最後くらい広明の願いを叶えてやろうと思って・・・・・・・。どうせ浮気したかったんでしょ?」
「ちょっと待ってよ・・・・。私はあんたとなんかごめんや!姉弟でそんなこと出来るか!」
バッグの中からスマホを取り出し、思い切り角をぶつけてやった。広明の額から血が流れ、私の鼻に落ちて来る。
「・・・・姉弟じゃないでしょ?半分しか血は繋がってないでしょ?」
「半分でも血が繋がってたら立派な姉弟やろ!ええから放せや!」
何度も何度もスマホで叩いているうちに、広明の顔は血だらけになってしまった。
「お願いやからやめてよ・・・・。あんたに襲われるのも、これ以上あんたを叩くのも嫌や・・・・お願いやからもうやめて・・・・。」
目に熱いものがこみ上げてきて、声が震えだす。しかし広明は止まらなかった。有り得ない怪力で私の服と下着を引き裂き、おぞましい行為に及んだ。
「いやあ!ほんまやめて!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
広明は何も答えない。叔母の顔のまま、ひたすら私の身体をまさぐってくる。いいように身体を弄ばれ、ただ喚くしかなかった。
「謝る!さっき言うたこと全部謝るから!だからやめて!ほんまお願いやから・・・・。」
気がつけば泣いていた・・・・。身内から身体を奪われる。それがどれほどおぞましいことか、自分で体験してみて初めて分かった。
《お父さんは・・・・きっとこんな感じで叔母さんを犯したんや・・・・。自分の妹やのに、欲情に負けて広明を孕ませたんや・・・・。》
必死の抵抗も虚しく、遂には入れられてしまった。
「嫌やってええええええ!ほんまやめろおおおおおお!」
自分でもこんな声が出るのかと驚くほど、大声で喚いた。そして次の瞬間には吐き気を催し、グッと口を押さえた。
その間にも広明は腰を振ってくる。胸を貪り、私の手をどけて唇まで重ねてきた。
「うおおげえええええええ!」
今朝食べた物を吐き出し、ツンと酸っぱい臭いがする。そのせいで呼吸が苦しくなり、口を開けて喘いだ。
「あああ!・・・あああ・・・ああああああ嫌やってええ・・・・やめてよお・・・・。」
きっと絶望というのはこういうことを言うのだろう。何気なく実家に来ただけなのに、まさか弟に犯されるとは思わなかった。
どうやらこいつは本気で頭がおかしくなっているらしく、もはや弟とは思えなかった。
今私を犯しているのは、ただの悪魔のようにしか見えない・・・・。それくらいに、身内から辱められるのは耐えがたい苦痛だった。
「もうやめて・・・・嫌やから・・・ほんま嫌やから・・・・。」
腰の動きが早くなり、広明の終わりが近づいているのを感じた。私はビクンと背中を逸らし、それだけは何としても阻止しようと思った。
「赤ちゃんおんねんで!そんなことしたら死んでまうやろ!ええ加減にせえやあああああああああ!」
拳を握って何度も叩きつけ、ありったけの声で叫びまくる。しかし叔母の顔をした広明は、逆に笑顔になって腰を振ってきた。
・・・・・いや、よく見るともう叔母の顔じゃない・・・・元の顔に戻っている。そして広明の後ろに、白い煙のようなものがユラユラと揺れていた。
《なにこれ・・・・気持ち悪い・・・・・。》
白い煙のようなものは、なんとも言えない気持ちの悪い動きをしていた。そして広明に纏わりつくように、スッとその中へ入っていった。
その途端、広明の力が増した。まるで万力のような力で胸を掴まれ、痛みのあまり叫び声を上げた。
「ぎゃあああああ!やめてええええ!」
もはや犯されるどころではない。このままでは命まで取られかねない。犯されることは女にとって最大の苦痛だと思っていたが、やはり死ぬことの恐怖の方が上だった。
私は抵抗するのを止め、ただただ震えながら広明が満足するのを待つしかなかった。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・いったいどれだけ時間が経っただろう・・・・。広明はまだ腰を振り続けていて、何度も何度も射精していた。
もはや痛覚は消え失せ、考えるまでもなくお腹の子が死んでいることが分かった。
しかしそれでも広明は止まらない。人間の限界を超えた体力で、まったく衰えることなく私を犯し続けた。
そして一瞬だけお腹に激痛が走り、空気を震わせるほどの叫びを上げた。
「ああああががあああああああああ!」
ビクンと背中が反り、お腹の中がカッと熱くなる。すると途端に身体が楽になり、痛みから解放された。
《ようやく・・・・ようやく終わった・・・・。》
安堵のあまり涙が出て来て、手をついて身を起こした。すると広明はまだ腰を振っていて、その視線の先には私が転がっていた。
《・・・・・・・・・ッ!》
思わずその場から離れ、口元を押さえる。状況を理解するのに数秒かかったが、すぐに何が起きたのか分かった。
《・・・ああ・・・・・私・・・死んだんや・・・・・。》
床に倒れる私の股から、大量に血が流れていた。床はびっしょりと赤く濡れ、広明の足まで血に染まっていた。
《子宮・・・・破裂したんやな・・・・。もう赤ちゃんどころじゃないわ・・・・・。》
広明は死んだ私を何度も犯し、微塵の疲れもみせずに射精を続ける。最初は吐き気を覚えて見ていたが、やがて笑いがこみ上げてきた。
《こいつ・・・・正真正銘のクズやな。やっぱりあのオトンの血を引いてるんや。こんなガキ、うちで引き取る必要なんてなかったんや・・・・・。》
私は部屋の隅に座り、やたらと冷静な目で自分が犯されるのを眺めていた。
《とうに死んでるっちゅうねん・・・。いつまでやっとんやか・・・・。》
広明の顔は、まるで理性が吹き飛んだ獣に見えた。そして時々白い影が見え隠れして、まるで何かに操られているように思えた。
《・・・・もしかしてやけど、これは広明の意志じゃないとか・・・・?》
狂ったように腰を振るう広明は、とてもではないが私の知る弟には見えなかった。
《冷静に考えたら、こいつに私を犯す度胸なんてあるはずがない。ほなやっぱりあの白い煙みたいなのが関係してるってことか・・・・?》
まだ空が明るいうちに始まった凌辱は、日が暮れるまで続いた。絶倫にもほどがあるが、なんだか見ていておかしくなってしまった。
《変な感じや、死んだ自分を見るなんて。私・・・・ずっとここに留まるんかな?》
時間が経つにつれて、生きていた頃の感覚が薄れていく。まるで自分が空気になったような、そして水になったような不思議な感覚だった。
《死んだもんはもうしゃあないけど、ずっとここにおるのは勘弁やな。私ってこれでもけっこう真面目に生きてきたんやから、最後は天国に行かせて欲しいんやけどなあ・・・。》
膝を抱えてぼんやりそう願うと、《それは無理》と声が響いた。何事かと声のした方を見てみると、あの白い煙が揺らめいていた。
《あんたは天国なんかには行けない。私たちと同じように、あの池に沈むの。》
そう言って気持ちの悪い動きをしながら、ゆっくりと私に近づいて来た。
《・・・・あんた、さっきから何なん?なんか私のことを知ってるみたいな口ぶりやけど、いったい誰やねん?》
顔をしかめて睨みつけると、白い影はより気持ちの悪い動きをした。
《・・・・野々村幸子・・・・・。》
《野々村幸子・・・・・?》
一瞬誰のことだか分からなかったが、すぐに閃くものがあった。
《ああ!あんたもしかして・・・・・叔母さん?》
《そう・・・・私は広明のお母さん・・・・。あんた達に息子を盗られた女。》
白い影はノイズのかかったテレビのようにザラザラと乱れた。
《あんたアホとちゃうか?誰がそんな変態弟を盗るかっちゅうねん。それはうちのオトンが勝手に持って帰って来たんや。誰もこっちから欲しいなんて言うてないで。》
投げやりな口調で言うと、叔母は《それは違う・・・・》と答えた。
《私は奪われた・・・・。兄に殺されて、広明を奪われたの・・・・。》
《兄って・・・・うちのオトンのこと?》
《そう・・・あんたの父親で、私の兄・・・・。あいつは一生私のことを愛するって言ったのに、さっさと他の女と結婚しやがった・・・・。》
《それがうちのお母さんってこと?》
《それ以外に誰がいるの?あの女は私と兄の仲が良いことを知りながら、割って入ってきた。そしていつの間にか兄を奪い取って、お前みたいなアバズレのクソを産ませたの。》
《あんた言いたい放題やな。誰がアバズレやねん。私はこれでも男には厳しい方やっちゅうねん。》
顔をしかめて言い返すと、いきなり首を掴まれた。
《うぐうッ・・・・やめて・・・・・。》
《死んだから痛みがないとでも思ってる?もしそう思ってるなら、むしろ逆よ。死んでからの方がよっぽど痛いんだから。
楽になれるのは、まっとうな生き方とまっとうな死に方をした人間だけ・・・・。私は・・・・そうじゃなかったから今でも苦しんでるわ。》
叔母は私の首を離し、まだ腰を振り続ける広明を抱きしめた。
《兄は私じゃない女を選んだ・・・・。だから私も別の男と結婚したわ・・・。ちょっと頼りない人だったけど、それなりに良い人だった・・・。
だからもう兄のことは忘れようって決めてたのに、あいつはまた私に迫って来た・・・・・。妻も娘もいるクセに、自分の性欲を満たす為だけに・・・・。》
叔母の声はとても切なかった。そして愛おしそうに広明を撫で、頬を寄せて見つめていた。
《よせばいいのに、私は兄と寝てしまった・・・・。そしてたった一回のセックスで、この子を宿したの・・・。》
《叔母さんは・・・・広明のことを大事に想ってるんやね・・・・?》
《当たり前でしょ。私は自分の家族はみんな大事に想ってる。死んだ夫も、そして浅子のことも・・・。それと少し前まで池にいた、浅斗のことだって・・・・・。》
《浅斗・・・・叔母さんの孫か・・・。でも浅子が殺した・・・・。》
《うん、可哀想にね・・・・。でもそれは浅子のせいじゃない。水田ってクズのせいだから。あいつがクズなせいで、浅子も浅斗も辛い思いをしていた・・・・。
だから浅斗が水田を殺そうとした時、手を貸してあげたわ。電線を切って、それを身体に巻きつけてやった。
あっさり死なれると苦しみを与えられないから、なるべく力を加減してね。》
《じゃ、じゃあ・・・・・実際に水田を殺したのは叔母さんなん?》
《・・・・仕方ないでしょ?可愛い孫を殺人者にはさせたくなかったから・・・。》
叔母は白い影からゆっくりと人の姿へ変わっていく。それは浅子ととてもよく似た顔で、そして広明ともそっくりな顔立ちだった。
《私はこの子を妊娠したことを嬉しく思ってたわ・・・・。だって家族が増えるのはいいことでしょ?いくら兄の子供でも、生まれて来る赤ん坊に罪は無いわけだし。》
《・・・・そうやね。生まれて来る赤ん坊に罪はない・・・。私だって子供が二人おるから、その気持ちはよく分かるよ。》
《そうでしょ?この子は何も悪くないの。でもあの馬鹿兄貴ときたら、この子を殺そうとした・・・・。
自分の嫁に恐れをなして、実の子供をおろさせようとしたのよ。こんなの許せる?》
叔母は強く広明を抱きしめ、そっと私の身体から離していった。
《広明、もう終わりにしようね・・・。ずっとそんなことしてると身体が汚れるから。》
まるで幼稚園児の子供に話しかけるように、ゆっくりと丁寧に諭している。広明は素直に頷き、ズボンを上げて部屋から出て行った。
《・・・・なんちゅうマザコンや。オカンの言うことやったら何でも聞くんかい。》
怒りを込めてそう言うと、また首を絞められた。
《言葉は気をつけようね・・・・。でないと・・・・・・、》
《・・・わ・・・・分かった・・・・。ごめんなさい・・・・・。》
身も凍るような・・・・いや、魂も凍るような恐ろしさを感じ、素直に頷くしかなかった。同じ死人であるはずなのに、この迫力の違いはいったいなんなんだろう?
《あんたの父親はね、広明を殺そうとした。でもそれだけじゃないわ。あの親族会議の後も、実は何度か会いに来ていたの。もし出来るなら、広明をおろしてくれないかって。》
《そ、そうなん・・・・?》
《身勝手でしょ、男なんて。自分が子供を産まないものだから、平気で他人の命を奪えるの・・・・。それが実の子供であってもね。》
叔母は再び白い煙に戻り、気持ちの悪い動きで窓の傍に立った。
《私は絶対に広明をおろすつもりはなかった。でもその代償として孤独になってしまった・・・・。
夫は娘を連れて出て行くし、親戚も実家の親も私から距離を置いていった。それに近所からはいわれのない悪口を言われて、ほとほと参ったわ・・・・。
だから広明には悪いと思いながらも、あの池に身を沈めた・・・・。》
《じゃ、じゃあ・・・・やっぱり自殺やんか。なんで私のお父さんに殺されたなんて言うんよ?》
《・・・・私はね、自殺する前に兄に会いに行ったのよ。そしたらね、あいつはまた別の女を作ってたの。》
《それほんまに・・・・?》
思わず身を乗り出すと、叔母の白い影にノイズが走った。
《・・・・最低でしょ?実の妹が自殺しようとしてるのに、あいつはまた別の女と遊んでたってわけ・・・・。しかも妊娠までさせてね・・・・。》
《・・・・・・・・・・・・・・・。》
《私が兄に会いに行ったのは、自殺する前に広明のことを頼みたかったから。だから一緒にいた女を蹴り飛ばしてやって、サッサと追い払ったわ。
そして兄に向かってこう言ってやったの。もし広明を引き取ることを拒否するなら、洗いざらい何もかもを遺書に書いて、それをばら撒いてから死んでやるって。
そしたらあいつは慌てて止めに入ってきた。急に兄貴面して、自殺なんかよせって言ってね・・・・。》
《・・・・最低やな、人間のクズや・・・・・。》
《そうよ、そしてあんたもそのクズの血を引いてるでしょ?》
叔母は嫌味に笑って振り返る。私は何も言えず、ただ黙っているしかなかった。
《確かに私は自殺した。でもその原因を作ったのはあの馬鹿兄貴なのよ。あいつがもっと自分の行為に責任を持ってくれれば、私は死なずにすんだ。
広明だって、こんなクソみたいな家でずっと苦しむこともなかった。この星野家のおかげで、私も広明も、そして浅子も浅斗もみんな不幸になったの。
だからこの家の人間は、全員殺すことに決めたのよ!》
叔母は怒りに顔をゆがませ、音割れしたビデオのように叫んだ。それは死人の私から見ても気味悪く、想像を超えた憎しみを持っていることが分かった。
《・・・・もしかしてお父さんとお母さんはもう・・・・・、》
《今朝殺したわ・・・。あの池に沈んでる・・・・。》
《・・・・・嘘や・・・・。》
《嘘じゃない。それにあんたもあの池へ行くのよ。ずっとあそこで縛りつけてやる。》
《冗談やめてや!私は何も悪くないやろ!悪いのはお父さんで、私はずっと広明の味方やった!》
《嘘言うんじゃない・・・・。あんたは外面はいいけど、中身はクズみたいに口が悪いでしょ?
そんな奴は信用出来ない・・・・。もし生かしておいたら、広明に何をするか分かったもんじゃないわ。》
叔母は白い身体をくねらせ、私の髪を掴んだ。そしてズルズルと引きずり、部屋の外へ連れて行こうとした。
《ちょっとやめて!私は悪くないって!ていうかずっと広明を支えてきたんやから!なんでこんなことされなあかんの!》
必死に抵抗するが、叔母の力には敵わない。まるで大人と子供が綱引きをするように、ズルズルと引きずられていく。
《きっと死人の力ってのは、恨みの力なんや・・・・。叔母さんはごっつうお父さんのことを恨んでるから、ここまで力が出せるんや・・・。
それやったら私じゃ到底この人には勝たれへん・・・・。》
自慢じゃないけど、私はそれなりに真面目に生きてきた。確かに口が悪いところは認めるけど、それでも性根は腐っていないつもりだ。
だから広明にだって優しくしたし、家庭だって大事にしてる。しかし叔母は急に足を止め、私を振り返った。
《そういうのを思い上がりっていうのよ・・・・。それと忘れ物だわ。あんたの身体を持って行かなきゃ・・・・。》
叔母は私の遺体を掴み、人形でも捨てに行くかのようにぞんざいに扱った。そして玄関を開けて家を出たところで、白い煙の中に閉じ込められてしまった。
私の魂も、私の身体も・・・・・。
《さあ、あの池に行こうね。あんたのお父さんとお母さんが待ってるから。》
《ちょっとほんまやめて!広明!助けてよ!》
家に向かって大声で叫ぶと、窓が開いて広明が顔を出した。
《広明!お願いやから助けて!あんた私のこと好きなんやろ?》
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
広明はじっと私を見つめ、何も言わずに窓を閉じてしまった。その目はまるで、興味を失くしたオモチャを見るような冷徹な目だった。
《あのガキ・・・・人を犯すは殺すわ・・・・しかも最後は見捨てるんかい!》
怒りが湧きあがり、広明のいる部屋を睨みつけた。
《ええか!覚えとけよ!私はお前を呪う!永遠に呪って、絶対に許さへんからな!》
外はすっかり暗くなっていて、雲のかかる月に私の声が響く。叔母は相変わらず気持ちの悪い動きをしながら、有り得ない早さで池まで走っていった。
そして私を池に投げ入れる前、鼻が触れるほど顔を近づけて言った。
《言っておくけど、あんたを殺したのは広明じゃない、この私よ。それにあんたを犯したのも、私が広明にやらせただけ。だからあの子にはなんの罪も無いわ。》
《はあ・・・・?そんな屁理屈が通ると思って・・・・・・、》
そう言いかけた瞬間、頭を押さえて池に沈められた。
《もし広明に何かしたら、あんたを許さない。あんたはただこの池で沈んでいればいいの。分かった・・・・?》
《・・・・・・・・・・・・・。》
なるほど・・・・さすが広明の母親だけあって、頭のイカレ具合が半端ではない。これはもう下手に逆らうより、いつかここを抜け出せる機会を窺った方がいいだろう。
私は何も言わず、ただ池の底に沈んでいった。するとそこには父と母の亡骸があって、その横に二人が立っていた。
《優子・・・・・。》
母が泣きそうな顔を見せる。そして父もまた申し訳なさそうに目を伏せていた。二人は叔母と同じように白い影になっていて、ユラユラと揺らいでいた。
そして私もすぐに白い影になり、見えない力で池に縛りつけられてしまった。
《お母さん、お父さん・・・・大丈夫・・・。いつか必ずここから出よう。》
二人を励まし、水面の叔母を睨む。叔母はニコリと笑い、まるで籠の中のモルモットを見るような目をしていた。
《もしかしたら、また広明を傷つける輩が出て来るかもしれない。その時は、あんた達もあの子を守るのに協力するのよ。》
そう言い残し、叔母はどこかへ去って行った。
《あのババア・・・・ただじゃすまさへん・・・・・。》
水面を睨みつけ、必ず復讐してやると誓った。そしてそれから一週間ほどして、一人の人物が池を訪れた。
叔母はその人物を池に沈める為に、私たちを働かせた。もちろん断りたかったけど、いま抵抗すると何をされるか分からない。
いつか一矢報いるその時が来るまで、大人しく奴隷を演じるしかなかった。
この日・・・・・池の底に新たな仲間が加わった。それはこの池の事件でお世話になった、あの三和という刑事だった。

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM