第五話 それはただの生理現象さ

  • 2010.04.13 Tuesday
  • 16:34
 クソ暑い夏の車の中、隣にいるのはスカリーではなくむさ苦しい男の刑事だった。
「なあモルダー、今日でもう5日目だ。そろそろ動いてもいいんじゃないのか?」
今回ジェフというニューヨーク市警の刑事とコンビを組まされ、捜査が難航している事件にあたれとスキナーから言われたのは一週間ほど前だった。
「関係者の話を聞く限り、どうも普通の事件ではなさそうだ。
俺も事件の書類に目を通したが、これはXファイル臭がぷんぷんする事件だ。
現地の警察と協力し、合同で捜査に当たるように。」
FBIと言えども所詮はサラリーマンと同じ、上からの命令には逆らえない。
隣にはいつものように知的で少し冷徹な笑みを浮かべるスカリーの姿はなく、今頃彼女はバケーションを利用してのんびりと羽を伸ばしながら寄ってくる男に極上のSな態度をもってつっぱね返しているはずだった。
何が悲しくて、俺はこんな培養に失敗したサボテンみたいな顔と、スト兇離譽戰襭永造貌阿の遅いザンギエフのような男と仕事をしなければならないのか。
不満を言った所で何かが変わるわけではなく、とりあえずは与えられた仕事をこなすことに意識を傾けてきたが、こんな男と5日も一緒だとやはり気が滅入ってくる。
「モルダー、新発売のバーガーだ。チーズの間に肉が挟んであって、さらに肉の中にもチーズが入ってる。ポテトと一緒に頬張るとギトギトの油が口の中を満たしてたまんないね。
君も一つどうだ?」
俺は軽く手を振って遠慮し、タバコを一口ふかして窓の外に目をやる。
「新発売のバーガーとやらはいらないが、さっきジェフが言った事には一理ある。」
今回の事件の内容はこうだ。
一月ほど前に年配の女性から警察へ電話がかかってきた。
「息子が部屋から出てこないの!それどころか10日ほど前から自分の部屋がある二階へも上がってくるなと言っている。何とかしてちょうだい!」
電話で対応した警官はそういうことは内の範疇で無いから他所へ電話してくれと言ったという。
しかし女性は続けた。
「したわよ!けど何処も内じゃ無理だっていうから警察に頼んだの。
息子の部屋から異臭がするのよ!部屋に近づこうとすると暴れ出すし。
外に出て窓から様子を見てみると奇妙な動きをしていて時々叫んだりするの。
それに主人の部屋にあった拳銃が無くなっているし。」
拳銃という言葉を聞いて警官は真面目に話を聞き出したそうだ。
「それで、その拳銃は息子さんが持っていると?」
「分からないけど、多分そうだと思う。
それと三日前に変な電話がかかってきたの。
お前の息子は人類の限界を試されている。
もし成功すればそれは偉大なことだ。
しかし失敗すれば、大きな悲劇が起こるぞって。
私もう怖くなって!
主人に相談したってどうにもならないし。
きっとあの子誰かに脅されて何かをさせられているのよ。
そして上手くいかなかったらあの拳銃で何かしでかすつもりなんだわ!
お願いだから早くなんとかしてちょうだい!」
涙交じりに悲痛な叫びを訴えてくる女性に、警察は息子が何らかの事件に巻き込まれている可能性あると判断し、捜査を開始した。
当初は脅迫の疑いがあるとみて女性の自宅の電話に逆探知の機械を設置して待っていたが、それ以降電話はかかってこない。
また警官が無理やり部屋に入ろうとするとが息子は頑なに拒否。
もし無理に押し入ってその息子が拳銃を使って発砲してもいけないので、警察は地道に交渉を続けていたが、自分の目的の邪魔をするなの一点張りで進展は無し。
部屋の異臭はだんだんと強さを増していき、また窓から見える息子の奇行もエスカレートしていっている。
そしてその中で宇宙がどうとか、人類の存亡がかかっているだとかいう言葉が聞こえてきたので警察は普通の事件では無いと判断。
そしてXファイル扱いで俺が駆り出されたというわけだ。
仕事は選べないにしても、せめて相棒くらい選ばして欲しかったのが本音だ。
この5日間、俺も粘り強く交渉に臨んだが進展は無く、ジェフは息子の母が振舞う手料理をむさぼっているだけだった。
きっとこの男は三大欲求の食の部分が9割以上を占めているのだろう。
いつまでたっても進展の無いこの事件、もはや待つのもジェフの食べるだけのクッキングパパっぷりを見せつけられるのもうんざりだった。
ここは意を決して息子の部屋に突入するべきかもしれない。
「なあジェフ。さっきお前が言った通り、そろそろこっちから積極的に動いてもいいかもしれない。」
俺はこの事件をさっさと解決し、スカリーとの言葉のSMごっこをすることを心から求めていた。
「ああ、そうだなモルダー。でもこのビッグテリヤキチキンと特大チーズとバターとピクルスのバーガーを食ってからな。
あ、後コーラも飲んでから。」
俺はお前がバーガーの食材になってこいと思った。
マヨネーズをかけて、キャサリンに食わせてやりたいが、グルメのあの犬はきっと吐くだろう。
 
                             第5話 つづく
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