第7話 君の意見はいつだって正しいさ(3)

  • 2010.04.21 Wednesday
  • 15:21
 女というのは何故か男同士の恋に興味があるらしい。
しかし何でもいいというわけではなく、やはりその女性ごとの好みにあったボーイス・ラブがあるのだろう。
さきほどまで号泣していたスカリーはいびきをかいて寝ており、起こすか起こすまいか判断に迷う所だった。
しかしモルダーとスカリーが揃ってこそのXファイルである。
俺はスカリーを起こして、とりあえずまだ残っているヨダレを拭くように言った。
「ごめんなさい。途中から展開が読めて飽きてぃちゃって。
で?結局被害者はどっちとくっついたの?」
気になる所はそこか。
俺は日記を読み進めていくうちに事件の解決になりそうな部分があったことを伝え、どっちとくっついたかは書いてなかったと言った。
「チッ!やっぱり肝心な所が抜けているわね。
そんなのじゃ安物の同人誌でも読んでいる方がマシだわ。」
すっかり注目する所がズレているスカリーを、俺は事件に集中するように促し、日記の最後の部分を見せた。
「あら、この日付って事件のあった当日じゃない!
どういうこと?」
「日記は三人が家に帰った後の事は詳しくは書かれていない。
きっとその後何かあったはずだと思うんだが、注目して欲しいのはこの部分なんだ。」
俺は日記の最後の方を指で指し示した。
「まさかあれが生き物だったなんてって所ね。
これって・・・。」
俺は頷く。
「きっと妙な石とネバネバした生き物のような物のことだろう。
それがどう事件に絡んでいるのかは分からない。
けどこうは考えられないか?
どちらも地球外のものだった。」
「また始まったわね・・・。」
スカリーが呆れ顔でため息をつく。
「しかし妙な石を拾ったのはアリゾナ州のグランドキャニオン。
隕石の可能性もある。そしてその隕石は金属生命体だったのかもしれない。
それにアマゾンはまだまだ未知の生物が潜んでいる可能性がある。
どちらも地球外のものである可能性は否定出来ない。」
スカリーは黙ったまま腕を組んでいる。
「そしてここからは僕の勘なんだが、家に帰った三人は口論になったはずだ。
何たって三角関係なんだからな。
そしてそれはだんだんと白熱していき、やがては殴り合いのような形でマイケルとジョーイが争い始めた。
その時に妙な石とネバネバが何らかの反応を起こしたんだ。
それが事件に結びついた。」
我ながら中々悪くない推理だと思うが、きっとスカリーはいつもの反応を見せるのだろう。
しかし返ってきた言葉は以外なものだった。
「悪くない推理ね。三角関係が引き起こした事件。
大筋はそれで合っていると思うわ。
それと妙な石とネバネバが生き物だった。
これも完全には否定はできないかもしれない。
見つけた場所から考えるとその可能性もあるわ。
それらがどうにかこうにかなって被害者は死に至った。
そのどうにかが問題なんだけど・・・。」
珍しく俺の推理に肯定の意見を述べてくれたことが嬉しくて、俺は思わずスカリーに抱きついた。
金的が潰されそうになった。
「子供が出来ない体にしてあげましょうか?」
ああ、良い!
その金的蹴りと冷徹な言葉こそが俺の生きがいだ。
君はやっぱりそこいらの腐女子とは一味違う。
俺は股間を抑えて立ち上がり、気になっていることを確認した。
近くにいた警官を捕まえてマイケルとジョーイの所在を掴んで欲しいと頼んだのだ。
警官はすぐに確認しますと言って出ていった。
さて、問題はどうやっって事件に至ったか?
それを考えるのは難儀しそうだった。
スカリーは自分のハンカチについたネバネバを眺めていて、何かを考え込んでいた。
俺はその姿を見ていらぬことを考え込んでいた。
膨張したあれの位置をずらし、スカリーに話しかけた。
「どうしたんだい?難しい顔をしているけど、何か分かったのか?」
スカリーは一瞬目を閉じ、そして俺の方を見て言った。
「東京タワーとエッフェル塔。」
「何だって?東京タワーとエッフェル塔?
それがどうしたんだ?」
「日本のハイレベルな腐女子の間では、東京タワーとエッフェル塔のどちらが攻めでどちからが受けかという非常にマニアックで海外の腐女子達では太刀打ち出来ない会話がなされているそうよ。」
そいつは何というか、マニアックを通り越している。
ちなみに今の俺が気になっているのはスカリーが何故そんなことを知っているかだ。
まさか、彼女も日本のエキサイティング・コメント動画「NIKONIKO DOUGA」を見ているというのか。
頼むからやめてくれスカリー。
どんどんと俺の中での君のイメージが崩れていく。
「しかしその話がこの事件にどう関係があるんだい?」
俺は悲しみながらも再度あれの位置をずらしながら聞いた。
「多いにあるのよ。さっきあなたは警官にマイケルとジョーイの居場所を警官を確認するようにと警官に頼んだわね。
「ああ、そうだ。二人はこの事件の重要参考人だからな。」
スカリーは全てを見抜いたかのような顔でこう言った。
「これは私の推測なんだけど、おそらくその二人はできてるわ。」
「何だと!」
「本当よ。これは多少変態が入った程度の男のあなたには分からないでしょうけどね。
けどきっとその二人はできてる。
あなたの言うように三人で言い争う内にヒートアップしてマイケルとジョーイは殴り合いになったはず。
けどそこで愛が芽生えたのよ。」
何故だ!?
そんなものはいくら考えたってドクター・ドリトルでも思いつかない発想だ。
俺が多少変態が入った程度の男だから分からないなんて関係あるものか!
「男は殴り合いの後は友情が芽生えるもの。
これは腐女子の間では常識だわ。
ただ問題は二人ともゲイだったってこと。
芽生えたのは友情ではなく愛情だった。
分かるわよね?この二人がくっつけば誰がはじき出されるか。」
「当然被害者だ。」
こんな馬鹿げた推理を真面目に聞いている自分が悲しい。
相手がスカリーでなければ便器に顔を突っ込ませた後、裸にしてニューヨークのメインストリートに貼り付けてやる所だ。
「お互いに愛を感じるようになったマイケルとジョーイは被害者が邪魔になった。
けど二人にとってもかつての恋人。
殺したりはしなかったと思うわ。」
「しかし実際に被害者は死んでいるんだぞ。」
「だから東京タワーとエッフェル塔の話をしたのよ。
この話は一見頭の弱い行く所まで行った腐女子の戯言に聞こえるけど、そうじゃなかった。
あの時この部屋あったのは東京タワーとエッフェル塔では無く、妙な石とネバネバした生き物のような物だった。
それは被害者がマイケルとジョーイの思い出の品として持つ内に自分の意志を持つようになったのよ。
妙な石はマイケルの、ネバネバはジョーイの分身と言ってもいいかもしれない。
きっと生き物だけど自我というものを持たなかったこの二つは、被害者のマイケルとジョーイを思う心があまりにも強すぎてその意識が宿ってしまったんだわ。」
腐女子モードになるとこうも変わるものなのか。
スカリーが今口にしている推論は、本来は俺が得意とするはずなのだが。
いつもなら俺がそんなことを言っても「あなた疲れてるのよ」の一言で片付けられてしまうのに。
さらにスカリーは続ける。
「そしてここからが本題よ。意志を持ったこの二つの物体はいわば本人達の分身のようなものと言ったわよね。
それがあの日、この分身達は本体に会ってしまった。
マイケルとジョーイが争い、それがやがて愛に変わってしまった時、この分身達は愛の力によって反応して本体に乗り移ったのよ。
当然二人は驚いた。
助けてくれと叫んだかもしれないわ。
それを見た被害者は二人の間に割って入って、その分身達を何とかしようとした。
その時、被害者は分身達に攻撃されてあんな姿になったのよ。
地球外の生物ですもの。
私達人間では考えられないような力を持っていてもおかしくは無いわ。
あの胸の傷はその時に受けたもの。
道理でどんな凶器とも判別がつかないはずだわ。
そして被害者とその近くから発見されたネバネバ。
あれは被害者と分身達が争っている時に付着したもの。
これもまた地球外のものだからどんなに調べたって分かりっこないわ。
そして分身達は本体と合体し、マイケルとジョーイは何処かへ駆け落ちした。
これがこの事件の真相よ。」
俺の膨張したあれはすっかり収まり、スカリーとは思えない馬鹿げた推論をどうしたものかと高速で頭が処理をしている所だった。
ツッコミ所は満載すぎてツッコめず、俺は今度キャサリンやるマヨネーズは低カロリーにしようかなどと考えていた。
いくらXファイルでもこの推論は常軌を逸している。
俺は腐女子モードになっているスカリーを正気に戻すべく話しかけた。
「あのな、スカリー・・・。」
その時だった。
マイケルとジョーイの所在の確認を頼んでいた警官が戻ってきた。
俺は頭をかきながら報告を聞いた。
「それで、二人は何処にいた?」
警官は敬礼をし、力強くこう言った。
「ハワイのビーチで抱き合いながら寝そべっていました。
話しを聞くと駆け落ちをしたとのことでした。」
そんな馬鹿な・・・。
「それと二人の体の事なんですが・・・。」
警官が言いにくそうに口ごもっている。
俺は先を促した。
「何だ?言ってみろ。」
ハッと返事をして警官は続けた。
「その、正直に言いますと二人はビーチで昼間から行為に及んでおりまして、そしてマイケルの男根がまるで石のように頑丈で硬質なものだったと。
それと二人はネバネバだったので、ローションを使ったのかと聞いた所、ジョーイが笑いながらこれは俺達にとってこれはナチュラルさと言いました。
どうやらそのネバネバはジョーイの体から分泌されているようでした。」
頭が痛くなってきた。
「やけに早くハワイにいると分かったな?
「はい。マイケルの部屋に二人が情熱的に燃えるには常夏のビーチ、ハワイに行くしかないと日記がありまして。」
マイケル、お前もか!
俺はうんざりしながら警官に下がっていいと言った。
何故か警官は興奮しているようだった。
まさか彼もゲイなのだろうか?
いや、今はそんなことはどうでもいい。
スカリーの馬鹿げた推論は全て正しかったのだ。
何時も俺が宇宙人だ何だと言うと軽くあしらうくせに、この差は何なのだ。
これが腐女子の力なのだろうか?
スカリーは別段驚きもせず、落ち着いて髪を掻き上げている。
「お手柄だなスカリー。君が優秀な捜査官だってことは勿論知っているけど、今回のは驚きだよ。
けど何故君はそんなに冷静なんだい?」
ふうっとため息をつき、俺の方を見ながら彼女は言った。
「最初に言ったでしょ。こんな安直な展開の日記しか書けない奴のボーイズ・ラブを読むくらいなら、同人誌でも読んでいる方がマシだって。
私はマニアックでかつ作品としては二流のボーイズ・ラブの展開を予想して言い当てただけ。
あなただって、ドラゴンボールでクリリンがエネルギー弾の連発を放った後に「やったか!?」なんて言っていて、実際に敵がやられている所なんて見たことないでしょう。
それと同じよ。」
馬鹿らしいが妙に説得力のある意見に俺は反論出来なかった。
確かに、クリリンがやったことはない。
少し疲れたようにスカリーがため息をつく。
「今日は君のおかげで事件が解決できた。後は僕達にまかせて君は先に帰ればいいさ。」
「ええ、そうするわ。家に帰ってもっと上物のボーイズ・ラブで口直しをしなくちゃ。
じゃあ、後はお願いね。」
俺の言っていることはいつも妄想のように捉えられ、彼女言うことは馬鹿げたことでも核心を突いている。
全く、君の意見はいつだって正しいさ。
とりあえず、家に帰って熱いコーヒーでも飲みたい気分だった。
寝起きの電話でキャサリンとのランデブーを頼まれても、今回の彼女のお手柄に免じて快く引き受けるとしよう。
「スカリー!」
俺は帰ろうとしているスカリーを呼びとめた。
「そう言えば被害者の名前は何だったかな?」
彼女は振り向いてダルそうに答えた。
「ヒトサワ・ガ・サセール」よ。
なるほど、お後がよろしいようで。
俺も家に帰ってたら、ちょっとボーイズ・ラブとかいうものを見てみるか。
今回の唯一の戦利品、スカリーのヨダレ付きハンカチも、その臭いは薄くなってきていた。
そう言えばスカリーも自分の指についたネバネバをハンカチで拭き取っていたはずだ。
あれを何に使うのか?
少し考えただけでまたあれが膨張し、おれはその位置をずらすことなく堂々とさせたまま事件の後始末に取り組んだ。
俺もスキナーと関係を持てば、スカリーもボーイズ・ラブで興味を持ってくれるだろうか?
俺は想像してみた。
スキナー、いくら想像したってやっぱりあんたとは無理だ。
俺は臭いの薄くなったハンカチを嗅いで、頭を正気に戻そうと思った。

                             第7話 完
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