第十話 僕の相棒は君しかいないさ

  • 2010.04.26 Monday
  • 14:58
 緊迫したFBIの捜査本部では、誰もが慌ただしく走り回っていた。
多くの捜査官が資料を手に話し合い、また忙しく電話をかけていた。
ピリピリと張り詰めた空気の中、俺は少し肩の力を下ろそうと喫煙所でタバコをふかしていた。
いつもの倍はいるであろう捜査官が駆け回る中、俺は心の中で最も信頼出来る相棒のことを考えていた。
「スカリー、どうか無事でいてくれ。」
事件が起きたのは三日前。
FBIにレイと名乗る男から電話がかかってきた。
その男は名指しで俺を指名し、お前の大切な相棒は預かったと言った。
レイ?
何処かで聞いたことのある名前だと思ったら、キバールのオシッコ我慢事件の時に電話をかけてきた男だった。
あの事件も、元はこの男が無垢な少年の心に付け込んで引き起こしたものだった。
俺は大切な相棒と言われてすぐにスカリーを思いう浮かべた。
「スカリーを誘拐したというのか!?何の為に?
お前は一体誰なんだ!?」
「ふふふ、詳しいことはまた連絡する。それでは。」
そう言って電話は切れた。
そしてその翌日にまたレイから電話がかかってきた。
また俺を指名してきた。
「やあモルダー。元気にしているかな?」
「スカリーは!スカリーは無事なのか!?」
レイはおどけたように笑い、お前の相棒は無事だと言った。
「モルダー。スカリーを返して欲しければこちらの言う条件に従うことだ。」
俺はスカリーの為なら何だってする。
レイの要件を聞いた。
「二日後にまた連絡する。その時に詳しいことを。
それと下手なまねはしないことだ。君の大切な相棒の無事を保障しかねるのでね。
我々は大いなる目的の為に動いている。
彼女はその人質というわけだ。
ではまた二日後に連絡する。」
そして電話は切れた。
今日がレイが言っていた日だ。
何時かかってくるかも分からない電話に、捜査本部は慌ただしく動いていた。
俺が一本目のタバコを吸い終える頃、スキナーが喫煙所に入ってきた。
パンツだけ穿いて。
今やこのパンツスタイルはFBIで未来を先取りするクールビズだと大人気で、先ほどから目の前で動き回っている多くの捜査官もパンツ一丁だった。
ちなみに俺はというと、裸だった。
スキナーが心配そうに俺に話しかけてくる。
「モルダー。スカリーはきっと無事だ。
何たって君の相棒を務めるくらいだからな、今頃独力で脱出しているかもしれんぞ。」
もしそうならスカリーはすぐに俺に連絡を寄こすわけで、それはスキナーも分かっている。
焦燥している俺を励まそうとする彼の優しさだというのは分かるが、俺はそんな言葉も聞き入れられないくらいに焦っていた。
二本目のタバコに火を付け、長く煙を吐き出しながら俺は言った。
「スカリーが無事でいてくれたらそれいい。
だがその為に今はただ待っていることしか出来ないのが辛いんだ。」
スキナーはパンツの中からパンツを取り出し、それを俺に勧めてくる。
「裸だと風邪を引くぞ。
せめてパンツくらい穿くんだ。
私のブリーフだがな。」
俺は彼のブリーフを受け取り、それを穿いてまたタバコを吸った。
「少しデカイな。股の所が黄ばんでいるし。」
「贅沢をいうな。穿けるだけでもありがたいと思え。」
スキナーは笑いながら言った。
俺はスカリーの身に何かあったらどうしようかと、パンツの黄ばんだ部分を見ながら考えていた。
あの抜け目の無いスカリーが誘拐されるなんて。
レイは我々と言っていた。
ということは奴は何らかの組織に所属しているということだろうか?
もし大規模な組織ならスカリーを誘拐することくらいわけは無いのかもしれないが、それでも彼女が誘拐されるなんて、俺は自分を責めた。
家で痛車の動画サイトなど見ていた自分が悔やまれる。
そんな俺の気持ちを察してか、スキナーが言う。
「モルダー。自分を責めるな。
彼女が誘拐されたのは君のせいじゃない。」
スキナーの股間の部分も黄ばんでいて、それは最初に見た時より色が濃くなっている気がした。
ちょっと漏らしているのだろうか?
俺は二本目のタバコも吸いつくし、大き目のパンツを穿き直しながらこれからのことを考えていた。
「俺のせいじゃないのは分かっている。
しかしどうしても家で痛車のサイトなんて見てはしゃいでいた自分が情けなくなるんだ。
それに問題は、どうやってスカリーを取り戻すかだ。
今日はレイが連絡を寄こすと言っていた日だ。
俺は奴の電話を待つことしか出来ない自分が歯がゆいんだ。」
ふと見るとスキナーがパンツからブラジャーを取り出し、自分の胸に着けようとしていた。
「君も着けるか?心が落ち着くぞ。」
俺は首を振って拒否し、一体そのブラジャーは誰の物なのだろうとどうでもいいことを考える。
スキナーの黄ばみはやはりさっきより濃くなっていて、俺はこんな所で漏らすなよと辟易とする。
その時、捜査官の一人が喫煙所にかけ込んできた。
「奴です。レイからです。
モルダー捜査官を出せと要求しています。」
「何だと!」
俺より先にスキナーが立ち上がり、捜査本部のある部屋へ走っていった。
「モルダー!君も早く来るんだ!」
勢いよく走っていくスキナーの背中は必ず事件を解決してやるぞという覚悟に満ちていて、俺はそれに勇気づけられるように喫煙所を飛び出し、彼の後を追った。
スキナーのパンツの後ろは、こんもりとして茶色くなっていた。
俺は萎えた。
事件を解決したいのは分かるが、先にトイレに行くべきだ。
俺は走りながら捜査本部のある部屋に向かい、スカリーの無事を祈っていた。
何気なし見た俺の股間は、さっきより黄ばんでいた。
俺はスキナーから魔のパンツを穿かされたようだった。
裸の方が良かった。

                            第十話 つづく
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