勇気のボタン〜猫神様のご神託〜 第四十六話 天を突く光(7)

  • 2014.12.13 Saturday
  • 12:28
JUGEMテーマ:自作小説
社の中に飛び込むと、激しい風に包まれた。
そしてその風に運ばれ、ワープゾーンへの先へと辿り着いた。
アカリさんはゆっくりと俺を下ろし、「気をつけて」と言った。
「ここがベンジャミンの社の中・・・。」
社の中は、とても大きなお堂のようになっていた。
薄暗い部屋にかがり火だけが灯り、しかも壁には数多くの動物の絵が描かれている。
奥には巨大な稲荷像があって、その前に二人の人影が見えた。
「悠一!」
マサカリたちが駆けよって来て、俺と同じように奥の人影を睨んだ。
「なんかやべえ気をビンビン感じるんだ・・・。あの人影は間違いなく・・・・、」
「ああ、分かってる。お前らはここにいろ。」
俺はアカリさんと並んで、奥の人影に近づいて行った。
徐々に人影の姿が露わになり、予想していた通りの人物が現れる。
「翔子さん!!」
「有川さん・・・来てくれたんですね・・・・。」
翔子さんは無事だった。多少疲れた顔をしているものの、どこにも怪我はなさそうだった。
しかし手足は縛られていて、自由に身動き出来ないでいる。
その隣では、稲荷像を見上げるベンジャミンがいた。
「ベンジャミン・・・・翔子さんを助けに来た。彼女を解放してやってくれないか?」
そう呼びかけると、ベンジャミンは稲荷像を見上げたまま答えた。
「・・・・好きにしたらええ。」
「なんだよ、やけにアッサリしてるな。もう観念したか?」
「ああ・・・・どうやら事はワイの思い通りに行かへんかったようや。ダキニは負け、白髭や他の神々まで関わって来た。もう・・・ワイはお終いや。」
そう言ってクルリと振り向くと、その手には気を失った沖田を握っていた。
「沖田!!ベンジャミン・・・・まさか殺してないだろうな?」
「さあ・・・どうやろな?」
ベンジャミンはニヤリと笑い、沖田を下ろして頭を踏みつけた。
「・・・・こんなアホにそそのかされて誘拐まで企てのに、全てがパアや。もうこんな女にも用はない、返すで。」
ベンジャミンは翔子をさんを持ち上げ、手足のロープを噛みきった。
そして「ほれ」と俺の方に投げて寄こした。
「ちょ・・・ちょっと!なんてことを・・・・、」
翔子さんは放物線を描いて飛んで来る。俺はレシーブのように足を踏ん張り、彼女を受け止めようとした。
しかしアカリさんが尻尾を伸ばし、アッサリと翔子さんを受け止めた。
「翔子ちゃん!無事だった?」
「アカリさん・・・・ですか?」
「そうよ。こんな姿を見るのは初めてだもんね。ビックリした?」
「・・・いえ、嬉しいです、助けに来てくれて・・・・。」
翔子さんはホッとしたように尻尾に抱きつく。そして俺の方を見て、身軽に飛び下りてきた。
「有川さん!!」
翔子さんは駆け寄り、飛びつくように抱きついてきた。
その身体は小さく震えていて、いかに大きな不安の中にいたかが分かる。
「翔子さん!よかった・・・無事でいてくれて・・・。」
俺もそっと背中に手を回すと、翔子さんはさらに強く抱きついてきた。
「・・・・正直・・・・怖かったです・・・・。」
「当然ですよ、こんな所に閉じ込めらていたんだから。でももう大丈夫です、助けに来ましたから。」
そう言って抱いた腕をほどくと、「離さないで下さい!」と叫んだ。
「もう少し・・・このままでいさせて下さい・・・・。」
「しょ・・・翔子さん・・・・・?」
「・・・助けに来てくれるんなら、きっと有川さんだって信じてました・・・・。冴木君や祐希さんもいたけど・・・・でも絶対に有川さんだって・・・・。」
「・・・・いや、それはその・・・・勢いでですね・・・・この中に入ってしまって・・・。」
「そんなことないです!だってここからでも外の声が聞こえてたから・・・。みんながどうすることも出来ない中、有川さんだけが飛び込んで来てくれた・・・・。だから・・・信じていてよかった・・・・。」
翔子さんは俺の首に手を回し、さらに強く抱きついてくる。
それを見ていた動物たちは、案の定ニヤニヤとからかい始めた。
「おいおいおい〜・・・・なんだよ悠一?ここへ来て翔子へ乗り換える気かあ〜?」
「黙れブルドッグ・・・・。」
「まあまあ、どうせ悠一にとって最後のモテ期なんだ。藤井と二股ってのもアリだぜ?」
「インコもうるさいよ。」
「ははは!女の扱いに慣れてないもんだから、どうしていいのか分からねえんだ!見ろよ、どこに手を置いていいのか困ってるぜ!さっきからソワソワしてる!」
「だからうるさいよ・・・・。こういう展開になると思ってなかったんだから・・・。」
「ウッソだあ〜!ちょっとは期待してたんでしょ?ねえねえ?ここなら藤井さんも見てないから、思い切ってキスくらいしちゃいなさいよ!」
「・・・もう勘弁してくれ・・・。これ以上飼い主をオモチャにするな・・・。」
顔を赤くして困っていると、翔子さんは小さく笑った。
「ごめんなさい・・・・ワガママ言っちゃって。もう大丈夫です。」
そう言って身体を離し、動物たちの頭を撫で始めた。
「みんなもありがとうね、助けに来てくれて。」
・・・・・正直言おう・・・ちょっとだけこんな展開を期待していた。
でもそれは決して妙な下心とかではなくて、やっぱりこういう時にはこう・・・期待するもんだよ、うん・・・。
別に二股だとか、藤井を裏切るつもりなど毛頭ない!ええ、それはもう・・・本当にない!
「見ろよ、悠一の奴まだ顔が真っ赤だぜ。」
マサカリはまだからかってくるが、これ以上相手をしていたらキリがない。
俺はベンジャミンの方を向き、ここから出るよう説得した。
「なあベンジャミン・・・。お前のことを心配してる人だっているんだ。だからとりあえずここから出て、ウズメさんやゴンゲンのじいさんと話してみたらどうだ?あの人たちなら、きっとお前の想いを理解してくれると思う。」
そう呼びかけると、ベンジャミンは何も言わずに稲荷像を見上げた。
もはや怒りはないようで、その代わりにドス黒い何かが背中を覆っている。
「・・・・ワイはな・・・・別に稲荷でいたいとか、そういうことはどうでもええねん・・・。ただ・・・人間の手せいで無惨に殺される動物を救いたかっただけや・・・。でも・・・どう頑張ってもそれは無くならへんのやなあ・・・・。」
「ベンジャミン・・・・お前の気持ちはよく分かるよ。だって俺だって今までに・・・・、」
「よく分かるやと?ほう、ほなお前は・・・愛しい者を殺されたことがあるんか?」
「い・・いや・・・そういう経験はないけど・・・・・。」
「それやったらワイの気持ちは分からへん・・・・。誰が何と言おうと・・・この心は埋められへんのや・・・・。」
ベンジャミンは稲荷像に手をつき、「コレが俺の理想や」と言った。
「こんなデカイ稲荷になれたら・・・・誰も怖くあらへん・・・・。
でも・・・それは無理やわなあ・・・・。稲荷が自分で造った像を拝むなんて・・・ヤキが回っとる証拠や・・・。」
ベンジャミンは悲しそうな声で言い、クルリとこちらを振り返った。
「・・・もう最後や・・・ワイの人生はここで終わる・・・・・。それやったら・・・・最後の華くらい咲かせようやないか!!」
そう叫んで稲荷に変化し、自分で自分の心臓を貫いた。
「ベンジャミン!」
アカリさんが慌てて駆けより、ベンジャミンの傷口に手を当てた。
「アンタ何してるのよ!こんなことしたって何も変わらないのに・・・・・。」
「アカリ・・・・ワイはな・・・どうせ一人や・・・・。だから・・・もうええねん・・・・。」
「いいって何がよ!?私はアンタと同じで、大事な者を人間に殺された!だから私ならアンタの気持ちが分かる!一緒に白髭様に謝ってあげるから、こんな所で自殺なんかするんじゃないわよバカ!!」
「アカリ・・・お前は・・・ええ女やな・・・・。俺と再婚でもするか・・・・?」
ベンジャミンは冗談混じりに笑う。するとアカリさんも「そうね・・・」と笑い返した。
「あんたが本気なら考えてもいいわ。でも今はそれより傷を治さないと!」
そう言って必死に傷口を押さえ、何かを唱えていた。
アカリさんの手先がぼんやりと光り、傷口の血が止まっていく。
「・・・・ダメだ・・・・血は止まっても、心臓が傷ついてるから・・・・・。」
どうやら稲荷の力でも、ベンジャミンの傷は治せないらしい。それでも必死に助けようとしていた。
しかしベンジャミンは「もうええ・・・」と呟き、巨大な稲荷像を見上げた。
「もう・・・もうええんや・・・・。なあアカリ・・・・もうやめてくれ・・・・。」
「嫌よ!勝手にくたばらせてたまるか!」
「いいや・・・・とっくにくばったってんねん・・・・。ホンマやったら、キツネの時にくたばってる・・・・。運よく藤井が見つけて・・・助けてくれたけど・・・・ホンマはあの時に死ぬはずやった・・・。だからもうええねん・・・。」
「よくない!せっかく繋がった命なんだから、無駄にするなバカ!」
アカリさんは何がなんでもベンジャミンを助けようとしている。
同じ過去、同じ境遇を持つ稲荷として、どうしても彼を死なせたくないという想いが、ヒシヒシと伝わってきた。
そんなアカリさんを見つめながら、ベンジャミンは「アホな奴や・・・」と笑っていた。
そして・・・・・アカリさんの奮闘も虚しく、静かに息絶えていった。
「ああ・・・そんな・・・・ベンジャミン!!死なないでよ!勝手に死ぬなんて許さない!戻って来なさいよ!!」
アカリさんは動かぬベンジャミンに叫び続けた。それは大きな部屋の中にこだまし、痛いほど耳を揺さぶる。
動かなくなったベンジャミンは静かにその声を聞いていて、稲荷像を見上げたままこの世から去ってしまった。
そしてその身体から、白い何かが抜け出してきた。
それはユラユラと宙を漂い、やがて稲荷像に吸い込まれていった。
するとただの石像だった稲荷像が、突然雄叫びを上げた。
その雄叫びは雷鳴のように響き渡り、悲しみとも怒りともつかない感情を吐き出しているようだった。
そして・・・・・石の身体にヒビを入れながら、ゆっくりと動き出した。
「おいおいおい!なんかえらい事になっちまったぜ!!」
マサカリが慌てて俺の後ろに隠れる。
巨大な稲荷像が突然動きだし、その巨体でこちらに向かって来る。
「・・・・悠一、早く逃げよう。食われちまう・・・。」
カモンも胸ポケットに隠れ、「早く早く!」と急かす。
「そ・・・そうだな・・・。翔子さん!早く逃げましょう!」
俺は翔子さんの手を引き、慌てて逃げ出した。
しかし扉は固く閉まっていて、押しても引いてもビクともしなかった。
「クソ!なんで開かないんだ!外から鍵でも掛ってるのか!?」
必死に扉を引っ張っていると、翔子さんが「待って!」と叫んだ。
「あの石像・・・・私たちを襲うつもりはないみたいですよ・・・。」
「へ?」
言われて振り向くと、稲荷像はピタリと止まっていた。
そして壁に描かれた動物の絵を見渡し、悲しそうに吠えていた。
「どうしたんだ・・・・なんか悲しんでるみたいだけど・・・・。」
不思議に思っていると、翔子さんが「あれ・・・ベンジャミンの魂なんだわ・・・」と呟いた。
「彼が死ぬ時、身体から白い何かが抜け出したでしょ?あれはきっとベンジャミンの魂なんですよ。それであの稲荷像に宿っているんです。だからあんなに悲しい声を・・・・。」
翔子さんは稲荷像の前まで歩き、「ベンジャミン?」と呼びかけた。
「あなたは・・・ずっと寂しがってたんでしょ?ここへ閉じ込めている間、あなたはずっと辛そうな目をしていた・・・。
心の内に抱える傷が、今でも癒えないんだね・・・・。」
「翔子さん・・・・?」
「有川さん、ベンジャミンはきっと・・・・報われない動物の魂を助けてあげるつもりなんです。」
翔子さんはそう言って、壁の動物の絵を見渡した。
「ベンジャミンが言っていました。ここに描かれている絵には、報われない動物の魂が宿っているって・・・。だから・・・きっと助けてあげるつもりなんですよ・・・。最後の力を使って・・・。」
「報われない動物の魂って・・・・どういうことですか?」
「分かりません・・・・。けど・・・とても悲しい目でそう言っていました。これは私の勘ですけど、きっと目の前で無惨に死んでいった動物の魂じゃないかと・・・。それを絵に描いて、ここに飾っていたんだと思います。」
「でも・・・どうしてそんなことを?」
そう尋ねると、翔子さんは再び稲荷像を見上げた。
「きっと寂しかったんだと思います。彼の目は、ずっと孤独を宿しているように感じたから。だから自分と同じような境遇の動物を、絵に描いて飾ったんだと思います。絵に描かれた動物の魂が寂しくないように。そして・・・自分自身の寂しさを誤魔化す為に・・・・。」
翔子さんはじっと稲荷像を見上げる。それは孤独なベンジャミンを労わるような、とても優しい眼差しだった。
そして稲荷像に近づこうとした時、アカリさんが「離れて!」と抱きかかえた。
「近づいちゃダメ!あれは・・・もうじき壊れるわ・・・。」
稲荷像は身体じゅうヒビだらけになっていて、今にも崩れそうだった。
そして・・・・やがてビキビキと前足が折れ、そのまま前のめりに倒れていった。
「ああ!」
翔子さんが短く叫んで手を伸ばす。ベンジャミンの魂が宿った稲荷像は、頭を残して砕け散ってしまった。
痛々しいその姿は、まさに彼の心の傷を表しいているようだった。
「・・・・有川・・・・。」
ベンジャミンは目を動かし、ギロリと俺を睨んだ。
その目は赤く血走っていて、もう彼の力が限界であることを物語っていた。
「ワイは・・・・もうじき逝く・・・・。だから・・・ついでにこの部屋の動物たちも連れて行く・・・。報われへんまま現世に残ったら・・・あまりに惨めやからな・・・。」
「ベンジャミン・・・・。お前・・・翔子さんの言うとおり孤独だったん・・・・・、」
「同情なんかいらん・・・・。その代わり・・・・ワイの頼みを聞いてくれや・・・。」
「頼み・・・・?」
「ああ・・・。お前・・・まだダキニのミッションが残っとるやろ?」
「ええっと・・・そうだっけ?これが最後だったような・・・。」
本当はあと一つ残っているんだけど、知らないフリをして誤魔化した。
すると「バレバレやアホ」と笑われた。
「だから・・・ワイがダキニ代わって・・・最後のミッションを出したる・・・・。」
ベンジャミンの声がだんだんと掠れていく。目も力を失くし、今にも終わりを迎えそうだった。
「お前・・・・沖田の仕事を引き継げや・・・・・。」
「お・・・沖田の・・・・?」
「そや。そこで寝とるボンクラの仕事を引き継ぐんや・・・・。」
そう言ってベンジャミンが見つめた先には、沖田が転がっていた。
「ああ、ヤバイ!アイツのこと忘れてた!」
俺は慌てて駆け寄り、沖田を抱え起こした。気を失ってはいるけど、どこも怪我はなさそうだった。
「・・・もう・・・そいつに・・・ペット探偵は無理や・・・・。だからお前がやれ・・・。それで・・・・その目に映った・・・報われない動物たちを・・・・助けて・・・・・・、」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・ベンジャミン?」
ベンジャミンは静かに息を引き取った。・・・・と思ったら、急に目を開けて雄叫びを上げた。
「グオオオオオオオオオオオオン!!!」
「な・・・なんだ!?」
ベンジャミンの稲妻のような雄叫びがこだまする。すると壁に描かれた絵から、動物たちの魂がワラワラと出て来た。
それはゆっくりと稲荷像に吸い込まれ、淡く光って震えだした。
「マズイ!悠一君!早く逃げるわよ!」
アカリさんは扉に体当たりして、力任せに押し開けた。
その先にはワープゾーンが広がっていて、波紋のように空間が揺らいでいた。
「ここにいたら私たちまで巻き込まれる!さあ早く!」
アカリさんは翔子さんを抱えて逃げて行く。ワープゾーンに飛び込み、空間を波打たせて消えてしまった。
「おい悠一!俺たちも早く行こうぜ!」
「そうだ!稲荷と心中なんてゴメンだぜ!」
「いや、意外とあの世の方が楽しかったりして・・・・。」
「じゃあカモンだけ行けば?私はゴメンよ。」
動物たちはワープゾーンの前に並び、急かすように俺を待っていた。
「・・・・そうだな、確かに心中なんてゴメンだ。でも・・・・。」
俺は稲荷像を振り返った。報われない動物の魂が、その身を依り代にして昇天しようとしている。
そして・・・ベンジャミンはその糧となるつもりだ。
「ベンジャミン・・・お前の出したミッション・・・出来るかどうか分からないけど、挑戦してみるよ。
でもさ・・・いったい何をもってクリアとするんだ?」
そう尋ねても、ベンジャミンはもう答えない。じっと横たわり、動物の魂を昇天させようとしている。
「・・・じゃあな、ベンジャミン。藤井にもお前のことは伝えておくよ。」
俺は沖田を担ぎ上げ、扉に向かって走った。そして動物たちと一緒にワープゾーンへ飛び込んだ。
激しい風が身を包み、外へと運んで行く。
その時・・・後ろからベンジャミンの声が聞こえた。
激しい風の中に、彼の最後の言葉が飛んでくる。
《何をもってクリアとするかやって?そんなもん自分で決めろ・・・・。》
ベンジャミンの言葉は風の中に消えていく。
そしてあっという間に外まで辿り着き、社の前に投げ出された。
「痛ッ!」
着地を失敗して、思い切り背中を打つ。ゲホゲホと咳き込んでいると、翔子さんが駆け寄って来た。
「有川さん!大丈夫ですか!?」
「ええ・・・・まあ・・・何とか・・・・。」
「・・・・よかった・・・。中々出て来ないから、ベンジャミンと一緒に逝っちゃったのかと心配しました・・・。」
「まさか・・・。でもアイツの出したミッションは受けることにしましたよ。
ペット探偵・・・・出来るかどうか分からないけど、やってみることにします。」
「そうなんですか・・・。でもどうやったらクリア出来るんですか?ベンジャミンは何も言ってませんでしたけど・・・・。」
「いや、最後にこう言われましたよ・・・。それは自分で決め・・・・・、」
そう言おうとした時、後ろから大きな音が響いた。
何かと思って振り向くと、社からいくつもの光の筋が立ち昇っていた。
それは瞬く間に空まで届き、あっという間に消えていった。
「あれは・・・動物たちの魂か・・・・?」
じっと天を睨んでいると、最後に一番大きな光の柱が上がった。
それは流れる雲を割り、ダキニの時と同じように光が降り注いだ。
「ベンジャミン・・・・お前も一緒に昇っていったか・・・・。今度はもう少し大人しい奴になって戻って来てくれよ。」
天からの光は、しばらく社を照らしていた。しかし流れる雲に遮られ、薄く掠れて消えていった。
社に目を向けると、何事もなかったかのように静まりかえっている。
そして風に乗って、どこからか声が聞こえてきた。
それは風の鳴る音か?それともただの幻聴か?
ハッキリとは分からないくらいに小さな声が、俺の耳を掠めていった。
《期待してるぞ・・・。》
翔子さんが手を握ってくる。そして動物たちも周りに集まって来た。
きっと・・・みんな今の声が聞こえたんだろう。
光が消えた空は、いつもと変わりなく雲を運んでいる。
主を失った社は、次なる稲荷を待つようにひっそりと佇んでいる。
耳鳴りがするほど静かな中で、俺たちはじっと天を仰いでいた。

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM