霊体解剖 第十四話 研究(2)

  • 2015.07.01 Wednesday
  • 10:59
JUGEMテーマ:自作小説
凌辱を受けようが、身内を殺されようが、亜希子の心は折れない。
それどころか、見下すような目で朋宏を睨んだ。
「あんたは・・・・喜恵門がどうとか、宗派や宗教かどうとか・・・・・消えちまえばいいって言ったけど、そんなんじゃお姉さんは救えないわ・・・。だって・・・・そもそもの原因は・・・・喜恵門の力や、対立する宗派の中で生まれたんだから・・・・。自分がどういう運命の中に生まれて・・・・・どういう人生を歩んでるのか・・・・・まったく分かってない・・・・。
あんたの末路はきっと・・・・・あの風間って男と一緒ね・・・・・・。
死ぬ時になって後悔して・・・・・何も出来ないまま消えていく・・・・。愛するお姉さんも守れずに・・・・。」
亜希子は笑い、ゆっくりと身体を起こした。
そして朋広の前に立ち、「情けない弟・・・・」となじった。
「あんたのお姉さんは不幸者だわ・・・・・。こんな頼りなくて情けない男じゃ・・・・今まで苦労してきたでしょうに・・・・。それに比べて・・・・基喜は出来た弟よ・・・・・。あんたの言う通り、あいつは私に惚れてたけど、あんたみたいに大事な部分を理解してない馬鹿じゃなかった。だからいつだって・・・・私を本気で支えてくれた・・・・。そして私も・・・・あの子のことは好きだった・・・・。弟としても、男としてもね・・・・。もし血が繋がっていなかったら、きっと結ばれていたと思う・・・・。」
そう言って目を閉じ、汚れた自分の身体を抱いた。
「出来れば・・・・・基喜に最初に抱かせてあげたかったけど・・・・それは出来なかった・・・・。私たちがそういう関係にならないように・・・・・親が引き離したからね・・・・・。」
死んだ弟を想いながら、亜希子は強く自分を抱きしめる。
そして目を開け、「一つ質問するわ」と睨んだ。
「喜恵門の血を引く人間はね、多くの場合、一組の男女の兄弟として生まれるわ。そしてお互いに惹かれ合うことがほとんど。なんでか分かる?」
そう言って顔を寄せ、朋広の言葉を待つ。
朋広は目を逸らし、壁に灯るロウソクに視線を逃がした。
「・・・・・知ってる。風間に教えてもらったから。」
「じゃあ自分の口で言ってよ。その答えを・・・・・。」
亜希子は顔を覗きこみ、「ほら」と促した。
しばらく沈黙が流れ、二人の視線がぶつかる。
やがて朋広の方が目を逸らし、「血が薄くならないようにする為だ・・・」と答えた。
「そうよ・・・。兄弟で子を成せば、血は薄くならない。喜恵門の力が途絶えることはないわ。でもね、何世代にも渡ってそんな事をしたらどうなるか。分かるでしょ?」
その問いに朋広は答えない。亜希子は小さく笑い、「答える必要もないか」と言った。
「長い間、近親相姦を繰り返したらどうなるか?お互いによく分かってるもんね。」
そう言って足を上げ、三本しかない指を見せつけた。
どの指もやたらと大きく、少し右に曲がっている。
「私はこんな指してるし、基喜は生まれつき声帯がないから喋れない。」
「・・・・・・・・。」
「そしてあんた自身も、どう足掻いたってお姉さんとセックスすることは出来ない。なぜならあんたにはペニスが無いから。逆にお姉さんには短いペニスが付いてる。両性具有ってやつね。それに子宮がないから、子供は産めないわ。長い間繰り返された忌まわしい性交のせいで、喜恵門の子孫は歪な姿で生まれてくるの。」
「・・・・・・・・。」
「きっとこれから、もっと酷くなるわ。そしてやがては子孫を残せなくなって、喜恵門の血は途絶える。いくら御神体や仏像があろうとも、弱りきった血じゃ、その力を目覚めさせることは出来ない。」
「・・・・・・・・。」
「いい?私たちはね、生まれながらにして、呪われた血筋を生きていくのよ。いつかこの血脈が途絶えて、喜恵門の力が消えうせるまでは・・・・。でもそれは、まだ少し未来の話。」
亜希子はそう言って、朋広の股間を撫でた。ペニスがないその股間は、クリトリスよりも少しだけ大きな性器が付いているだけで、睾丸さえもない。
つるりとしたその股間を撫でながら、「これじゃ僧兵に私を犯させるしかないわね。惨め・・・・」と笑った。
朋広は唇を噛み、殺意の目で睨む。そして手を伸ばし、その首を強く掴んだ。
強靭な握力で締め上げるが、亜希子は全く動じない。
「動揺してるわね。色がすごく揺らいでる・・・・・。殺意に満ちた、激しい波のような・・・・。」
「もういい・・・・喋るな。」
「お断り。嫌なら殺せば?」
「・・・・・・・・・・。」
「それとも自分で犯す?・・・・・ああ、ごめん。ペニスがないから無理か?それに私を殺したら、勉君たちの居場所が分からないもんね。」
「・・・・・・もういい。いいから。」
朋広は首を締め上げ、今にも頸椎を折ろうとしている。しかし亜希子の言う通り、殺せば勉達の居場所は分からなくなってしまう。
だから必死に堪え、どうにか腕を離した。
亜希子は短く咳き込み、また朋広を見据える。
「あんた・・・・・本当にお姉さんを助けたいなら、改心したら?」
「改心・・・?」
「いくら信心がなくても、あんたは仏派の人間でしょ?それに観音像を通して、力を開眼させたんでしょう?」
「それがどうした?俺は一度だって、菩薩や仏なんて信じたことはない。全ては人間のやることじゃないか。」
「そうよ。でもあんたも人間じゃない。あんたはお姉さんのことを心配してるみたいだけど、お姉さんだってあんたのことを心配してるかも。あんたが風間を殺したりしたから、その事で胸を痛めて、菩薩様に許しを乞うてるかもよ?」
「はあ?何を言って・・・・・。」
朋広は呆れたように首を振る。しかし亜希子はやめない。
「あんたはお姉さんのことを支えてるつもりかもしれないけど、実は支えられてるのはあんたの方かもってことよ。私と基喜もそうだった・・・。あの子は私の支えになることで、自分を支えていた。あんただって、本当はお姉さんの為じゃなくて、自分の為にお姉さんを支えてるんでしょう?そうやって自分に役割を持たせることで、自分はこの世に必要な人間だって言い聞かせてる。」
「・・・・・・・・・・。」
「あんたは演じてるだけよ。お姉さんの支えになるという、麗しい弟を。でも本当は、自分の方が支えられてる。必死になってお姉さんを助けようとするのは、自分の為でしょ?だから・・・・あんたが勉君や鈴音ちゃんを狙うのは、全て自分の為。」
「・・・・・うるさい・・・・。」
「あの子たちもまた、喜恵門の力を持ってる。それでいて、五体満足の身体を持ってる。だからあの子たちを利用して、お姉さんを守ろうとしてる。そして・・・・・あの子たちの身体まで乗っ取ろうとしてるわ。お姉さんの心を鈴音ちゃんの身体に入れ、自分の心を勉君の身体に入れようとしている。そうやって身体だけ別人に生まれ変わることで、二つのメリットがある。一つは、お姉さんを風間の呪縛から解放出来ること。そしてもう一つは、お姉さんとセックスする為でしょ?」
亜希子はニヤけた顔で挑発する。ペニスのない股間を撫で、「あんたのここにはアレがないから」と笑った。
「あんたはこう言ったわよね?事が終われば、煮るなり焼きなり、好きにしたらいいって。あれは嘘ね。あんたは身体だけ勉君に生まれ変わって、心ゆくまでお姉さんを犯すつもりなのよ。そして抜け殻になった元の身体を差し出して、煮るなり焼くなり、好きにしろって言うつもりだったんでしょ?あんた自身は勉君の振りをしてさ?」
「・・・・・・違う。」
「違うことないわ。あんたはきっと、最初は純粋な気持ちだった。ただお姉さんが好きで、だから守りたいって、素直な気持ちだった。でも風間を殺して、変わってしまった。人を手に掛けることを覚えて、目的の為なら手段を選ばないというやり方が、とても便利だと気づいてしまった。」
「・・・・・・・・・・・。」
「だから基喜だって殺したし、私だって殺そうとしてる。口を割ったら、その瞬間に殺すつもりなんでしょ?」
「・・・・・・違う。」
「いい?風間に呪われてるのは、お姉さんじゃない。あんたの方よ。平気で人を殺して、平気で女を犯して、そして平気で勉君たちまで殺そうとしてる。あの風間って男も、子供までは手にかけなかったはずよ。だから・・・あんたが一番呪われてるわ。完全に自分を見失う前に、改心しなさいよ。必要だったら手を貸してあげるし、なんなら喜恵門の力を封印だってしてあげる。」
「嘘を言うな。出来るかそんなこと。」
「出来るわ。だって喜恵門の力は、元々は神道系のものだもの。仏派の連中は、優れた理論や学問の体系で力を使ってるけど、でも完璧には無理よ。あれは本来、仏や菩薩がどうとかいう力じゃないからね。風間に教わってないの?」
「いいや・・・・聞いていない・・・。」
「そう。なら・・・・改心するって約束してよ。そうしたら、その力を封印してあげるわ。もちろんお姉さんの力も。」
そう言うと、朋広は「有希も・・・?」と眼の色を変えた。
「ええ、彼女の力も封じ込める。そして、もう二度と目覚めないようにしてあげる。私とお父さんなら、それが出来る。だから約束して、改心するって。お姉さんの為に、そして自分の為に。」
「・・・・それは・・・・、」
「何度も言うけど、支えてもらってるのはあんたの方よ。お姉さんは、きっとあんたの事を心配してる。無理をしてるって分かってるから、きっと心を痛めてる。だからお願い・・・・勉君や鈴音ちゃんを巻きこんだりしないで。これ以上道を踏み外せば、あんたは風間と同じ末路を・・・・・、」
そう言いかけた時、亜希子は白目を剥いて倒れた。
そして彼女の後ろには、袈裟を着た有希が立っていた。
その手には注射器を持っていて、針の先から透明な液が垂れていた。
「朋広・・・・・。」
有希は注射器を落とし、ゆっくりと近づく。そして朋広に抱きついて、「悪魔に惑わされちゃダメよ・・・」と呟いた。
「こいつは私たちの邪魔をする悪魔・・・・・菩薩様の敵なのよ・・・。だから耳を傾けちゃダメ・・・・。」
弟を抱きしめながら、有希は逞しい弟の胸に顔を埋める。
「前に言ったでしょ・・・・・私を支えてって・・・・。」
漏れるようなその呟きが、朋広の耳をくすぐる。亜希子の言葉で揺らいでいた心が、一瞬にして有希の方へと引き戻された。
「全ては・・・・観音様のお導きの先に・・・・答えがあるの・・・・。だから・・・・誰の言葉も聞いちゃダメ・・・・。」
そう言って顔を上げ、朋広の頬を両手で包む。そしてそっと唇を重ねて、潤んだ瞳で見つめた。
朋広は固まり、「有希・・・・」と囁く。
二人はしばらく唇を重ねた。そして有希は朋広の手を取り、本来なら女性にあるはずのない性器を、そっと握らせた。
それは固く勃起していて、熱を持って脈打っていた。
「これは本当の私の身体じゃない・・・・・。だからあの子たちの身体が必要なのよ・・・・・。
そして私たちで子供を産んで、子孫を残す。その子もまた、血の繋がった兄弟と愛し合い、純粋な血が守られていくの。」
「・・・・・・・・・。」
「そうやって血を守り続けることで、いつか観音様の救いがもたらされる。この世の汚れが祓われて、悪魔はいなくなるわ・・・・。だから・・・・惑わされないで、悪魔の言葉に・・・・。いつだって観音様が見ていらっしゃるんだから。」
有希は裾をたくし上げ、直に自分のペニスを握らせる。
激しく唇を絡ませ、腰まで振り始める。
気がつけば、朋広も手を動かしていた。有希と舌を絡め会い、袈裟を剥いで胸をまさぐった。
やがて有希が小さく喘ぎ、ペニスが波打った。
しかし睾丸が無い為、射精は起こらない。なんとも言えない後味の悪いまま、二人の愛撫は終わった。
「ねえ朋広・・・・こんなの寂しいでしょう?愛し合うなら、最後までいきたいじゃない。」
「・・・・・・・・ああ。」
「だから・・・・早くあの子たちを見つけましょ。この悪魔を殺して、霊体を取り出して、直接聞いてやればいいのよ。・・・・ね?」
有希は穏やかな表情で微笑み、部屋を出て行く。
朋広はしばらく立ち尽くし、有希のペニスの感触を思い出していた。
自分にアレがあれば・・・・・。アレを有希の中に入れることが出来れば・・・・・。
そう思った途端、自分に嫌気が指した。
自分は有希を愛し、有希を支える為に生きているのに、その有希を抱きたいなんて・・・・・どうかしている。
倒れた亜希子を睨み、膝をついて、そっと抱き上げる。
「あんたの言うことは・・・・・・当たってるかもしれない・・・・。俺はもう・・・・有希の支えでいるだけでは、満足出来ないようだよ。あいつを自分のものにしたいと思ってる・・・・。これじゃ目的が変わってる!こんな・・・・こんなんじゃ・・・・。」
亜希子を抱えて立ち上がり、僧兵に毛布か大きめのタオルを持って来るように言った。
僧兵の一人が慌てて外に駆けて行き、薄い毛布を抱えて来る。
朋広はそれを受け取ると、亜希子の身体を包んだ。
「臭うし、汚い。部屋を綺麗にしといてくれ。」
そう言い残し、亜希子を抱えて出て行く。
階段を上がり、蔵の外までやって来ると、有希が本堂に向かって手を合わせていた。
そして背中を向けたまま、「ちょっと早いけど、研究に取りかかろうか?」と言った。
有希は本堂を通り過ぎ、その奥にある大きな鐘に歩いて行く。
なびく黒髪、美しい佇まい、そして唇と胸の感触に、波打っていたペニス・・・・。
朋広は有希の後ろ姿を見つめながら、また欲情を覚えた。
「亜希子さん・・・・・。俺の中にも悪魔が芽生えてるみたいだ。改心すると約束したら、俺たち姉弟を救ってくれるか?」
気絶する亜希子を見つめ、汚れた顔を拭ってやる。
亜希子の言った通り、朋広は風間に呪われていた。
しかしそれは、悪霊や悪魔の仕業ではない。
自分が最も愛する、姉の魅惑に負けての呪いだった。
朋広は自嘲気味に笑う。
悪霊や悪魔の呪いなら、追い払えば済む。
しかしこの手の呪いとなると、そう簡単にはいかない。
自分が死ぬか、有希が死ぬか。もしくは勉と鈴音の身体を手に入れて、姉と結ばれるかしなければ、決して解けない呪いだろうと思った。
朋広は葛藤を抱えながら、境内の清水で、亜希子の身体を洗ってやった。

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