霊体解剖 第十八話 結合(2)

  • 2015.07.05 Sunday
  • 12:31
JUGEMテーマ:自作小説
完全に視力を失った朋広は、がむしゃらに短刀を振り回す。
すると誰かの手が、そっと頬に触れた。
「大丈夫・・・・ここにいるわ・・・・。」
それは有希だった。朋広の頬を包み、そのまま唇を重ねる。
「亜希子はもういない・・・・私が殺したから・・・・。」
「有希が・・・・?」
朋広は短刀を下ろし、眼球の無い目を向けた。
「お前一人で亜希子に勝ったのか・・・・・?」
そう尋ねると、有希は「一人じゃないわ」と笑った。
「勉君が手伝ってくれたの。私の目になって・・・・一緒に戦ってくれた。」
「あの子が・・・・、」
「もちろん幽霊の方の勉君だけどね。でも私に味方してくれた・・・・。だから今の私は目が見えるの。とても歪な視界だけど、何も見えないよりはマシでしょ?」
有希はクスクスと笑い、朋広を抱きしめる。
「ねえ朋広・・・・一番恐ろしいのは、真っ暗な闇にいることよ。そんな場所では、観音様の光さえ届かない。だから早く本当の目に手に入れよう。あの子たちの身体に生まれ変わって、本当の光を取り戻さないと。」
優しい声で言う有希だったが、彼女の身体は酷く傷ついていた。
顔の半分が切り裂かれ、顎の辺りまで骨が見えている。
袈裟も切り裂かれ、乳房の間に勾玉の刺さった痕が残っていた。
そして痛々しいほど全身に擦り傷を負っていて、じんわりと血が滲んでいた。
亜希子との激しい格闘が、有希を絶命寸前まで追い込んでいた。
しかしそれでも有希は倒れない。勉の幽霊を取り込み、歪な光を手に入れ、まだ観音菩薩の救いを信じて、新たな身体に生まれ変わろうとしていた。
そして朋広は目が見えない。有希がボロボロに傷ついていることなど知らず、その顔に触れようとした。
しかし有希に止められ、「今は生まれ変わる方が先」と囁いた。
「新たな身体に生まれ変わって、世を乱す悪魔を粛清すればいいの。そうでしょ?」
新たな身体さえ手に入れれば、今までと変わらず、二人で生きていける。
それは有希にとっても、そして朋広にとっても、大きな希望だった。
「有希・・・店の奥から子供たちの気配を感じるんだ・・・・。」
「分かってる。私もあの子たちの色が見えるわ・・・・。でも他にも誰かいる。」
「そうだな・・・。一人は・・・・亜希子の弟だ。基喜といったか?」
「うん。もう一人は彼の父親。きっと手強いわ・・・・。」
有希は不安そうに言う。朋広は安心させるように姉を抱きしめた。
「でも大丈夫。私たちには観音様のご加護があるから。悪魔になんか負けないわ・・・。」
二人は手を握り、店の奥へと向かう。
目の見えない朋広に代わって、有希が優しく手を引く。
厨房へ入り、朋広が転ばないように気を付けながら、有希は注意深く進んだ。
そして事務所の前まで来ると、その足を止めた。
ドアは閉まっていて、奥から異様な気配を感じ取る。
「恐ろしい悪魔の気配を感じる・・・・。」
有希は怯え、手を合わせて観音菩薩に祈る。すると朋広は彼女の前に立ち、「俺一人でいい・・・」と言った。
「二人で入ったら、多分二人とも殺される・・・。俺がどうにか鈴音の身体を奪うから、有希はすぐにあの子の中に入れ。」
「嫌よ。一人で生きても意味がないわ。朋広がいないと・・・・。」
「お前が死んだら、俺の生きてる意味がないんだ。頼むから・・・・。」
真っ暗な眼孔を向け、朋広は有希を見つめる。
「残念ながら、俺たちが子供を成すことはないだろう。ここまで来て悔しいけど・・・・仕方ないんだ。」
「・・・・・・・・・。」
朋広の声は真剣で、有希は堪らず俯く。しばらく迷っていたが、やがて握った手をそっと離した。
「どうにか・・・・・どうにかして、朋広を生き返らせてみせる。だからここは任せるわ。また会えるはずだから・・・・。」
有希はゆっくりと下がり、厨房へ引き返していく。
彼女が離れて行く気配を感じると、朋広は事務所のドアに顔を向けた。
そっと手を当て、ドアノブを探る。ひんやりとした丸い金属に触れ、息を飲んでそれを握った。
朋広は何も見えない。しかしそれでも、優れた霊感のおかげで、人や幽霊の気配は感じ取れる。
もう一度息を飲み、ドアノブを回す。その時、ホールの方から有希の悲鳴が聞こえた。
朋広はとっさに振り返り、「有希!」と叫ぶ。
すると事務所のドアが開いて、中からミミズクが現れた。
「お前は・・・・、」
口を開こうとした瞬間、ミミズクの爪が襲いかかる。
朋広の耳は千切られ、鋭い痛みが走る。
「お前えええええ!」
耳を押さえながら、短刀を振り回す。そこへまたミミズクの爪が襲いかかり、短刀を奪われてしまった。
武器を失くした朋広は、うろたえながら後ずさる。
何も見えず、武器さえもない。これでは戦いようがなく、いったいどうしたらいいのか弱ってしまった。
その時また有希の悲鳴が聞こえて、「どうした!?」と叫んだ。
「有希!どうした?何が起きてる!?」
尋ねても返事はなく、また悲鳴が響き渡る。
何が起きているのか分からないが、有希の身が危険に晒されていることだけは確かだった。
朋広は歯を食いしばり、どうすればいいかを考える。
このまま有希の元へ向かっても、ミミズクが邪魔をしてくる。
視界も奪われ、武器も奪われ、もう自分には何もない。
・・・・・それならば、自分も奪えばいい・・・・。
・・・足りないものは、他人から奪ってしまえば済む話・・・。
そう思って、朋広は事務所に駆けこんだ。
中には三つの人間の気配。一つは星野のもので、後の二つは勉と鈴音。
朋広は星野の脇を駆け抜け、勉に飛びかかった。
「お前の身体を寄こせ!それは俺のものだ!」
勉を押し倒し、馬乗りになって首を絞める。このまま勉を殺し、まずは勉の心・・・・霊体を追い出す。
その後に自分も死んで、勉の身体を乗っ取るつもりだった。
勉の首は細く、これならすぐに折れると確信した。
しかしふと違和感を覚え、眉間に皺を寄せた。
「・・・・・・・マネキン?」
そう呟いた瞬間、こめかみに衝撃が走った。
その衝撃は脳を揺らし、思わず床に倒れる。
すると二つの気配が駆け寄って来て、朋広に覆いかぶさった。
「おい!なんだ!どうなってる!?」
わけが分からず、パニックになって暴れ狂う。すると今度は後頭部に衝撃が走り、頭の中がミキサーで掻き回されたかのように、意識が揺らいだ。
「誰!?俺に乗ってる奴は誰だ!?あいつらの親父か!?」
大声で叫んでも、誰も返事をしない。そして捻じられ、両手を縛られてしまった。
「何をする!俺を捕まえてどうする気だ!?」
足をばたつかせながら、真っ暗な眼孔を仰がせる。
すると「朋広君・・・」と声が響き、小さなすすり泣きが聞こえた。
「・・・・・鈴音?」
「朋広君・・・・・なんでよ・・・・友達や思ってたのに・・・・。」
鈴音の声が響き、それと同時に朋広の身体が軽くなる。
「お・・・・お前らか・・・・?俺に襲いかかったのは・・・・・、」
「だって・・・・このままやったら、おじさんが殺すって言うから・・・・、」
「おじさん?」
「亜希子さんのお父さん・・・・。だから私とお兄ちゃんで、朋広君を捕まえようって・・・・・。」
鈴音は言葉に詰まり、ただすすり泣く。すると今度は勉が口を開いた。
「おじさんの力を借りて、僕たちも霊体を切り離したんです。」
「なんだって?」
「さっきのマネキン・・・・あれは僕たちの霊体が入っていたんです。おじさんにやってもらいまいした。」
「はあ・・・?なんでそんな事を・・・・、」
「朋広さんを助ける為です。それと・・・・有希さんも。」
勉は声に詰まり、一瞬だけ口を噤む。唾を飲み、少し間を置いてから続けた。
「有希さんと朋広さんが、僕の身体を狙ってるのは知ってました。だけどこのままだったら、二人はおじさんに殺される。だから僕と鈴音が戦おうって決めたんです。そうすれば、朋広さんを助けられるんじゃないかって・・・・。」
それを聞いた朋広は「お前は馬鹿か・・・?」と眉を寄せた。
「お前は俺たちを助けたいんじゃなくて、有希を助けたいんだろ?アイツに惚れてるから。」
「・・・・そう・・・・かもしれません。」
「言っておくけどな、お前にキスをしたのは演技だぞ。俺たちが敵じゃないと信じ込ませる為にやったことだ。」
「それも分かってます。でもやっぱり・・・・僕は有希さんのことが好きなんです。それに鈴音にも迷惑を掛けたから、その罪滅ぼしをしたいと思って・・・。」
勉は妹を振り返り、朋広の前に背中を押した。
「鈴音は二人のことを、本当の友達だと思っていたんです。僕のせいで肩身の狭い思いをして、学校にも通わなくなりました。でもそれを支えてくれたのは、有希さんと朋広さんです。だから今でも、二人には感謝しているんですよ。」
そう言って、「そうだよな?」と鈴音を振り返った。
「・・・・・・・・。」
鈴音は何も答えず、まだ泣いている。勉は手を伸ばし、幼い子をあやすように頭を撫でた。
「鈴音はまだ二人のことを友達だと思っているんです。だったら僕は、鈴音の友達を守ろうと思いました・・・。それくらいしか、罪滅ぼしとして出来ることがないから・・・。」
勉は自分を責めるように言い、己の犯した罪を悔いた。
「僕は人の目玉を取るなんて、とんでもない事をしました。目を奪うってことは、何も見えなくなるってことです。そんな酷い事を、僕は平気でしました。だけどあの時の僕は、全然酷い事をしたって思いませんでした。欲しいから手に入れて、何が悪いんだろうって思ってたんです・・・。でもそれは悪いことだって、風間さんが教えてくれたんです。僕にしっかりと、教えてくれたんです・・・・。」
噛みしめるように言って、勉は項垂れる。朋広は顔を上げ、「それで改心したってのか?」と尋ねた。
「そうです・・・。きっと風間さんは、僕のこの先の人生を考えてくれていたんだと思います。悪い心は切り離したけど、でもそれで終わりじゃないから・・・・。罪を犯したのは僕自身だし、あの悪い心だって、僕の一部だったから。だからいくら悪い心を切り離し立って、何も無かった事にはならないよって言ってくれたんです。自分の罪を受け止めて、真っ直ぐ歩けって・・・・。」
言葉を絞り出すように勉は言った。しかしそれを聞いた途端、朋広は笑い出した。
部屋中に笑い声が響き、「綺麗事だな!」と叫んだ。
「風間は散々間違った道を歩いて来た。アイツはお前を救おうとすることで、自分に懺悔していただけだ!恩に感じているなら、それは大きな間違いだぞ!」
「そうかもしれないけど、でも最後は僕を助けてくれました!僕の知ってる風間さんは良い人です!」
「お前の知ってる風間はな。でも俺の知ってる風間は違う。有希を騙し、利用し、俺たちを間違った道へ引きずり込んだ張本人だ。しかも今までの悪事を償うこともなく、全てを俺たちに丸投げしやがった。それに最後の最後で、僅かな光まで奪っていきやがった。説教まで垂れてな。俺は悪魔なんて信じないが、最もそれに近い人間がいるとするなら、それは間違いなく風間だ!」
朋広は大声で叫ぶ。勉が今までに放った全ての言葉を掻き消すように、強く言い放つ。
勉は「でも・・・、」と言い返そうとしたが、鈴音が「もうええよ・・・・、」と止めた。
「何言うても無駄やと思う・・・・。朋広君、今はおかしいなってる。何か言うたって、意地になるだけやから・・・・。」
鈴音は疲れたように言い、椅子に座りこむ。それと同時に、「私もそう思うわ」と事務所の入り口から声がした。
「もうそいつに何言ったって無駄よ。だってそいつにとって重要なのは、有希ちゃんだけだから。」
そう言って中に入って来たのは有希だった。
朋広はその声に反応して「有希か!」と叫ぶが、途端に顔をしかめた。
「いや、違うな・・・。声は有希だが、中身が違う。お前は亜希子だな!」
そう言ってから、「有希はどうした!?」と叫んだ。
すると有希はニコリと笑い、「その通りよ」と答えた。そして「有希ちゃんは死んだわ」と続けた。
「有希ちゃんは私と基喜が殺した。私と基喜もアンタ達に殺されたから、これでおあいこよね。」
そう言いながらゆっくり歩き、朋広の前に膝をついた。
「有希ちゃんは死んだ。でも彼女の霊体はまだここにいるわ。」
「・・・・・お前、有希の身体を奪ったのか?」
「そうよ。私の身体は包丁でめった刺しにされて、もう使い物にならない。だからこの子の身体を頂いた。そしてアンタの身体も貰う。基喜の為にね。」
そう言った瞬間、ドアの向こうからミミズクが現れた。
そして朋広に飛びかかり、鋭い爪で喉元を掴んだ。
《有希は・・・・・死んだ・・・・。》
基喜はそう言って、朋広の首を締め上げる。
しかし朋広は身を捩り、足を蹴りあげてミミズクを追い払った。
「ふ・・・・・ふざけるな!有希を返せ!許さんぞ!有希を返せえええええ!!」
腕を縛られたまま、朋広は膝をつく。壁に身体を預け、ゆっくりと立ち上がった。
そして気配で亜希子の位置を察知すると、口を開けて噛みつこうとした。
しかしミミズクに邪魔をされ、鋭い爪で頬を切られてしまった。
「嫌だ!有希は・・・・・有希が死ぬなんて・・・・。そんな事はあってはいけない!誰が死んでも、あいつだけは生きてなきゃいけないんだ!だって俺が生まれてきたのは、あいつの為なんだ!あいつがいないと、俺は生まれてきた意味が無くなってしまう!それは死ぬより辛いことなんだよおおおお!!」
朋広は天に向かって吠える。真っ暗な眼孔を向けて、空高く遠吠えをする狼のように。
朋広にとっての光とは、目を通って入ってくる光のことではない。
・・・有希がいる。有希の役に立つ。有希を支える・・・。
そうやって自分の存在理由を確認することこそが、いつの間にか自分にとっての光となっていた。
・・・・本当は気づいていた・・・・有希を支えるのは、有希の為ではないと・・・・。
・・・・有希を支えることによって、自分を支えていたのだと・・・・・。
・・・・なぜなら有希は、一分の隙もない菩薩のような人間で、誰かの助けがなくても、一人でやっていける人間だったから・・・・。
・・・・自分は双子の弟として生まれてきたのに、光は常に有希の方に当たる。その度に、どうして自分が生まれてきたのだろうかと、疑問と苦しみを感じていたから・・・。
・・・・だから有希の支えになることで、自分も光に当たりたかった。自分は有希の残りカスから出来た、いてもいなくてもいいような人間ではないと、そう言い聞かせたかったから・・・。
しかし有希は死んだ。それはすなわち、朋広にとって自分の支えを失うことであり、存在理由を否定されることに他ならない。
だから叫んだ。獣のように鋭く、そして大きな声で、喉が潰れるほど叫んだ。
いつまでもこうして叫び続けられると思うほど、胸の中には怒りと悲しみが溢れていた。
しかしその叫びは、あっけなく終わった。ミミズクの爪が、朋広の喉を切り裂いたのだ。
切られた喉から声が漏れ、息も漏れ、やがては血も漏れて、朋広の咆哮は終わりを迎える。
崩れ落ちるように膝をつき、そのまま仰向けに倒れる。
切られた喉から血が垂れて、床に流れて落ちる。
開けっぱなしの口から、ヨダレと血、そして泡が滲んで顔を汚していった。
「ゆ・・・・・き・・・・・。」
朋広は掠れる声で呟き、すぐに息絶えた。
身体から霊体が抜け出し、ゆっくりと立ち上がる。
すると誰かが頬に触れて、《朋広》と呼んだ。
《・・・・・有希?》
《・・・・残念だけど、私たちの負けみたい。》
《・・・・ああ、そうだな。本当に残念だ。本当に・・・・・。》
朋広は静かに言う。怒りも悲しみも通り越し、感情さえも消えた、深い闇のような声だった。
《そんなに嘆かないで。観音様は、ちゃんと私たちに救いを与えて下さった。私たちが『一つ』になれるという救いを。》
有希は微笑み、朋広の手を取る。そして自分の隣に立つ、勉の幽霊に触れさせた。
《この子ね、私たちの役に立ちたいんだって。風間さんがいなくなって、もう自分には何も残されていないから、せめて何かの役に立ちたいって。》
そう言って小さく微笑み、朋広を抱きしめた。
《私も朋広も、そして勉君も、みんな一つになって観音様の所に行くのよ。救いをもたらしてくれる、偉大な観音様の元へ・・・・・。》
有希は菩薩のように、とても柔らかな顔で笑った。
朋広は納得がいかないという風に立ち尽くしていたが、そこへ勉の幽霊が手を伸ばした。
朋広の手を握り、そして有希の手も握る。
それを強く引っ張ると、自分の眼孔に押し込んだ。
眼球のない、真っ暗な眼孔。それに触れた途端、二人は霧のように拡散した。
そしてブラックホールに飲み込まれるように、勉の眼孔に吸い込まれていった。
勉の幽霊は目を閉じ、何かに祈るように手を合わせる。
その姿はまるで、菩薩の前で瞑想する僧侶のようであった。
やがて閉じた瞼から黒い涙が流れ、床に落ちる前に霧散する。
その瞬間、勉の幽霊は瞼を開けた。
真っ暗だった眼孔の中には、眼球が復活していた。
右の眼は赤く、左の眼は青い。それぞれの瞳の奥には、有希と朋広がいた。
二人とも目の奥で何かを叫んでいて、まるで牢屋に閉じ込められた囚人のように、絶望の表情をしていた。
そして朋広だけでなく、有希までもが眼球を失っていた。
二人は勉の幽霊の目玉の奥で叫ぶ。ここから出してくれ・・・・・と。
赤い瞳に宿る有希は、灼熱の猛火に苦しみ、青い瞳に宿る朋広は、切り裂くような冷気に苦しんでいた。
そして二人は感じていた。この先、永遠にここから出ることは出来ないと・・・・。
だから必死に口を開けて、出してくれ・・・・助けてくれ・・・と喚いていた。
勉の幽霊という、一つの霊体に宿りながらも、二人が顔を合わせることはない。
灼熱と冷気、それぞれが犯した罪の報いを受けるように、ただ苦しめられるばかりであった。
そして目の中に閉じ込められている限り、二度とお互いが会うことはない。
亜希子、基喜、勉、鈴音、誰もが言いようの無い辛い表情を見せる中、一人だけ笑っている者がいた。
「亜希子、基喜、あの二人を徹底的に研究し、霊体に関して新しい論文を出しなさい。そうすれば、神社の跡を継がせてあげよう。」
星野は涼やかな笑みで言い、事務所を後にする。
有希と朋広は、勉の幽霊の眼球となることで、霊体の一部として結合していた。
そこには救いも滅びもなく、地獄へも極楽へも行くことは出来ない。
何をどう足掻いても、二人の前に光が射すことはなかった。

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