取り残された夏の中へ 第十二話 背中合わせの二人(2)

  • 2015.07.20 Monday
  • 12:04
JUGEMテーマ:自作小説
月空の夜に、木根がプロポーズをした。
それはとてもロマンチックな言葉で、俺までジーンと来るほどのプロポーズだった。
しかし涼香は、なぜか怒っていた。木根の脛を蹴り飛ばし、胸倉を掴んで顔を近づけた。
そして鬼のような形相で、こう喚いた。
「こっちだって色々考えてたんだよ!三年前に好きだって言われたことを絡めて、どうプロポーズしようか考えてた!なのにアンタと来たら、先に言っちまいやがる!普段はマヌケな事しか言わないクセに、どうしてこんな時だけカッコつけるわけ!?せっかく・・・・私からカッコよくプロポーズしようと思ったのに・・・・・台無しだあ・・・・・・。」
そう言って涙ぐみ、鼻をすすりながらしゃっくりをした。
「いつも通りマヌケなこと言っとけよ!皺が増えたとか、ヤラせてとか!別に減るもんじゃないし、風邪でもない限りヤラらせてやるわよ!でも・・・・こういうのは私に譲ってよ・・・・・。いつだってアンタのワガママ聞いてんだから、こういうのくらい私にカッコつけさせてよ・・・・・。」
溜まった涙がボロボロとこぼれ、「うわあああああん!」と子供のように声を上げる。
拳を握り、ぐるぐるパンチのように振り回して、木根を叩きまくる。
「私の言うはずだったセリフを返せえええええ!なんでおいしい所だけ持ってくのよおおお!あああああああん!!」
「おいやめろ!落ち着けお前!」
「くたばれ!お前なんかくたばっちまええええええ!!」
「バカ!落ちるだろうが!押すんじゃねえよ!」
「死んで蛍なれ!この馬鹿野郎おおおおおお!」
「ちょ・・・・ちょっとマジで・・・・・斎藤おおおおおお!助けて・・・・・、」
涼香は木根の胸倉を掴み、橋の手摺りに叩きつける。まるで子供のように喚きながら、顔を真っ赤にして。
涙と鼻水が溢れ、いつもの凛とした涼香とは程遠い顔だ。
こういう顔は、むしろ園田や実花の方が似合いそうだが、あいつらだってここまで酷くはならないだろう。
しかし涼香の怒りはとどまるところを知らない。両手で木根を締め上げ、今にも川に落とそうとしている。
「ちょ・・・・見てないで助けろよ!」
木根は足をばたつかせ、必死に落ちまいと抵抗している。
俺は後ろから涼香を羽交い締めにして、「落ち着け!」と叫んだ。
「木根を殺す気か!?」
「そうよ!殺してやる!」
「馬鹿かお前!ちょっとおかしいぞ・・・・・。」
「こんなん・・・・こんなんじゃ台無しじゃない!せっかく私からカッコよくプロポーズしようと思ったのに・・・・どうしてくれんのよおおおお!!」
涼香の力はとても強く、なかなか引き離すことが出来ない。
するとそこへ、もう一つ泣き声が響いてきた。
「みんな私も見てよお!せっかく川まで入ったのにい!」
そう叫んだのは実花だった。
いつの間にか川に降りていて、しかも膝まで浸かっている。
「何やってんだお前!?」
「私だってここに思い出があるんだよ?なんで涼香と木根君ばっかり贔屓するの!?」
「してないよ!涼香が暴れて困ってるだけだ!」
「そんなのいつもの事じゃない!もういいから私の思い出も見てよ!」
そう言ってさらに川の中へ進み、ワンピースの裾まで浸かった。
そして何かを捕まえる振りをして、「こうやって蛍を取って、君が好きだって言ってくれたの!」と喚いた。
「彼が私にプロポーズしてくれたのもここなのよ!」
「はあ?何の話だよ?」
「だから私の婚約者の話!彼がここでプロポーズしてくれたの!」
「婚約は破棄したんだろ!?だったら関係ないだろ!」
「だから思い出は良い事とは限らないって言ったじゃない!もういいからみんなこっち来てよ!私の思い出を見てえ〜!」
実花はさらに川の中へ進んでいき、腰の辺りまで浸かっている。そしてさらに進もうとした時、足を滑らせて転んだ。
水しぶきを上げながら、派手に沈んでいく。友恵が「実花ちゃん!」と叫び、手摺りに駆け寄った。
「実花ちゃん!実花ちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「大変!溺れてる!」
そう言って俺の服を引っ張り、「早く助けに行って!」と叫んだ。
「このままじゃ実花ちゃんが死んじゃう!」
「でもこのままだと木根が・・・・・、」
「木根君なんか落っこちてもいいから!」
「お前もめちゃくちゃ言うな・・・・。」
「だってそんなのただの痴話喧嘩じゃない!ほっとけばいいのよ!」
そう言って俺の服を引っ張り、「早く!」と喚いた。
「やめろ!服が破ける!」
「そんなもん弁償してあげるから!実花ちゃんを助けて!」
「こんな暗い川の中を助けに行けるか!俺まで溺れて・・・・・・、」
「また友達がいなくなってもいいの!?正也君の時みたいになってもいいの!?」
そう言われて、ビクンと身体が波打った。腹の底から熱いものが込み上げ、気がつけば涼香を離していた。
涼香はまた木根に掴みかかり、川に落とさんばかりの勢いで締め上げる。
しかし木根は、「俺はいいから実花を!」と叫んだ。
「早く助けに行ってやれ!」
「あ、ああ・・・・・・・・。」
「ボケっとするな!これは正也が与えてくれた罪滅ぼしかもしんねえぞ!」
木根はいきなり意味不明な事を言った。俺は「え?なに・・・・?」と聞き返したが、また友恵に引っ張られた。
「木根君の言う通りだよ!正也君は斎藤君を助ける為に、水の中に飛び込んだ!だから・・・・今度は斎藤君が助ける番よ!自分と向き合って!」
「な・・・・なんだって?いったい何を言って・・・・・、」
「いいから早く!」
友恵は俺の手を引っ張り、橋を戻って行く。そして川へ続く土手を駆け降りると、「実花ちゃん!」と叫んだ。
「今行くからね!待っててよ!」
そう言って俺の背中を押し、川の中に進ませた。
「私も行きたいけど、泳ぎは得意じゃないの!下手に行ったら私も溺れちゃうから、斎藤君お願い!」
友恵は真剣な目で見つめる。
しかし俺は、さっきこいつらに言われたセリフが、頭の中でぐるぐると渦を巻いていた。
でも今はそれどころじゃない。水面でもがく実花の悲鳴が聞こえて、今は助けに行くことだけを考えた。
友恵の言ったとおり、もう友達を失うのは御免だから・・・・・。
Tシャツを脱ぎ、靴も脱いで泳ぎやすい格好になる。そしてジーパンも脱いで、パンツ一丁になって川を進んだ。
いったいどれほどの深さがあるのか分からないが、もし俺まで溺れたら洒落にならない。
情けない格好だが、服が水を吸って溺れるよりはマシだ。
「実花!すぐ行くからな!」
しっかりと川底を踏みながら、慎重に急ぐ。足裏に小石が当たって激痛が走るが、それでも負けじと進んで行く。
そして腰まで浸かる深さまで来た時、実花に向かって手を伸ばした。
「掴まれ!」
溺れる実花に向かって手を伸ばすと、向こうも必死に手を伸ばして来た。
幸いそこまで深くはないので、足さえ踏ん張れば立っていることが出来る。
俺はどうにか実花の手を掴み、力任せに引き寄せた。
「おい!大丈夫だ!もう大丈夫だから!」
「あ・・・ああ!ああ・・あああ・・・・・。」
実花はパニックになっていて、足が着くはずなのに立つことが出来ない。
俺は両手で抱きかかえ、素早く岸の方へ戻った。
「大丈夫だ。もう大丈夫だから。」
「し・・・・死ぬ・・・・・。」
「死なないよ。死んだりしない。」
岸へ運び、草の上に寝かせる。実花は肩で息をしていて、死人のように真っ青になっていた。
目は見開き、口は鯉のようにパクパクさせて、心ここにあらずという顔だった。
「実花ちゃん!大丈夫?」
友恵が駆け寄り、心配そうに肩を抱く。実花はただ震えるばかりで、スッと涙を流した。
「し・・・・・死んじゃうところだった・・・・・。怖かったよお・・・・・。」
「なんで川の中に入るのよ!こんな暗いんだから危ないよ。」
「だ・・・・だって・・・・私の思い出が・・・・・。」
「思い出の為に死んだら意味ないじゃない。生きてるから思い出があるんだよ。無茶なことしちゃダメよ・・・・。」
友恵は背中を撫でてやり、「とにかく車に戻ろう」と言った。
「涼香に家まで送ってもらお。今日はもう帰った方がいい。」
そう言って実花を立たせ、支えながら歩いて行く。
二人は土手を上がり、車の傍に行く。実花は崩れ落ちるように膝をつき、ぽつりと呟いた。
「さ・・・・斎藤君と・・・・同じことしちゃった・・・・。溺れて死んじゃうところだった・・・・。」
そう言って俺を見上げ、「助けてくれてありがとう・・・・」と瞳を揺らした。
「怖かった・・・・・ほんとに死ぬかと思った・・・・・。」
また涙が流れ、俯いて顔を覆う。
俺は何も言わずに実花を見つめ、そして友恵に視線を移した。
「・・・・さっきから何なんだ?俺が溺れたとか、正也がそれを助けたとか・・・・。いったい何の事だよ?」
問い詰めるように尋ねると、友恵は「うん・・・・」と頷いた。
「もう話した方がいいかもね。これ以上隠しても意味がないし、それに最後はあそこへ行くつもりだったから・・・・・。」
「あそこ?どこの事だよ?」
「・・・・・貯水塔。」
「貯水塔?それって正也が亡くなった、あの貯水塔のことか?」
「そう・・・・あの白い貯水塔。」
友恵は言ってしまったという風に俯き、実花の背中を撫で続ける。
俺は意味が分からず、「それってどういう事か詳しく・・・・・、」と尋ねようとした。
その時、何かが川に落ちる音が聞こえて、まさかと思って振り返った。
「木根!落ちたのか!?」
そう言って橋に戻ると、そこには木根がいた。
「ああ・・・・無事だったか。」
ホッと息をつくと、木根は俺の胸倉を掴んだ。
「涼香が落ちた!」
「は?」
「勢い余って自分から落ちやがったんだよ!」
「・・・・・お前が落としたんだろ?」
「バカ言うな!嫁さんになる女を落とすわけねえだろ!」
木根は必死に弁明するが、服装は乱れていて、どう見ても揉み合った後だった。
「ほら、ボケっとしてないで助けに行くぞ!」
そう言って一目散に走り出す。しかし土手を下りようとした時、涼香は自力で岸に這い上がって来た。
「アンタあああああ!よくも落としたな!婚約者を殺すつもり!?」
鬼の形相で叫び、しかしすぐに子供のように泣き出す。
「ヒドイ!ヒドイよあんた!プロポーズは横取りするわ、川に落として殺そうとするわ・・・・・あんたを殺して私も死んでやるううううう!」
「おい落ち着け!さっきのは不可抗力だ!」
「うるさい!結婚式なんてすっ飛ばして、葬式開いてやる!私と一緒に棺桶に入れてやるうううう!」
再びぐるぐるパンチを炸裂させながら、「うわあああああああ!」と襲いかかる。
木根は本気で怯え、「ふざけんな!」と逃げ惑った。
どうやらこいつらは、本心をぶつけ合うと喧嘩になるらしい。
お互いに傍にいたいのに、目と目が合うと争いが起こる。
それを回避するには、背中を向けて寄り添うしかないようだ。
木根が本気になれば涼香が引き、涼香が本気になれば木根が引く。
ある意味では、とてもバランスの取れた夫婦になるかもしれない。
しかし・・・・・そんな事はどうでもいい。今の俺には、周りをどうこう考える余裕などなかった。
《正也が俺を助ける為に、貯水塔に飛び込んだ・・・・・・。そんな記憶、俺には無いぞ・・・・。》
まだブルブルと震えている実花、それを慰める友恵、そして見苦しいまでに痴話喧嘩を続ける木根と涼香。
しかしそんな事はどうでもよく、俺は一人取り残された子供のように、じっとその場に佇んだ。
《やっぱり・・・・あの貯水塔で何かあったんだ。俺だけが忘れてる何かが・・・・。》
記憶の糸は未だ絡まっていて、正しく結ぶことが出来ない。
この絡まった記憶の中に、いった何が隠されているのか?
それを思い出そうとすると、黒くてべったりした何かが、手足に絡みつく感覚が襲って来る。
正しい記憶を呼び覚ますなと、頭のどこかから警報を発しているように。
思い出してはいけない、直視してはいけない何かが、絡まった記憶の中にある・・・・・。
月に照らされる川を見つめながら、記憶を正しく結ぼうと試みる。
しかしどうしても上手くいかない。触れられそうで触れられない、痛いほどのもどかしさを感じるばかりだった。
消えてしまった蛍を掴むように、ただ虚しさだけが押し寄せていた。


            *****


ついさっきまでの出来事を思い出していると、いつの間にか心が落ち着いていた。
まるで子供の様に喚く涼香、それに怯える木根、そして相変わらず自己中な実花。
順々にあの時の三人の顔を思い出すと、なんだか可笑しくなってきた。
馬鹿な思い出ほど気持ちを落ち着かせるものはなく、今日の出来事は、この先もきっと俺を笑顔にしてくれるだろう。
しかし思い出に浸っているだけでは、前に進めない。
今は腹を括って、この貯水塔の中に入るしかない。なぜなら・・・・ここに俺の正しい記憶があるのだから。
俺以外の全員が知っている、11年前の夏に起きた本当の出来事。
正也が死んだ真実。俺の間違った記憶に埋もれた真実。
それを確かめる為に、俺は行かなければならない。
その為に、みんながこうして集まってくれた。そしてその為に、思い出巡りという企画を開いてくれた。
この俺を、11年前の夏と向き合わせる為に。
じっと貯水塔を見上げ、その姿に圧倒されて俯いてしまう。
木根がポンと肩を叩いて、「んな不安になるな」と言った。
「こうしてみんな集まったんだ。お前一人で行くわけじゃねえんだぞ。」
そう言ってポンポンと肩を叩き、「ここへ入るのは久しぶりだなあ」と見上げた。
「今来ても不気味な感じがするよな。よくこんな場所へ肝試しに行こうと思ったもんだ。」
すると涼香も頷き、「あん時は若かったよねえ」としみじみ言った。
「あれからもう11年か。長いような短いような・・・・・中途半端な時間だよね?」
そう尋ねると、実花が頷いた。
「私は短いと思うな。だってまだ30になってないもん。」
「どんな理屈よそれ?」
「だって30過ぎたら、女の人生が変わるんだよ?だからそれまでに結婚したかったの。でも婚約は破棄しちゃったし、誰か良い人いないかなあ・・・・。」
そう言って寂しそうに俯くと、佐野がチラチラと視線を送った。
「ここにお前を好きな男が一人いるぞ。」
園田が笑いながら佐野の背中を押す。
「こいつまだ諦めてないんだ。」
「お前!余計な事を・・・・・、」
佐野は怒り、慌てて実花から目を逸らす。
「・・・・いや、その・・・・なんかすぐに諦めるなんて出来なくて・・・・。」
バツが悪そうに言って、実花から離れて行く。
木根が「こんな女のどこがいいんだか・・・・」と呆れ気味に言い、園田も頷いていた。
「おうデブ。お前も涼香のことは諦めるんだぞ。もうじき俺の嫁さんになるんだからな。」
「わ・・・・分かってるよ!そんなことしたら不倫になるだろ!」
園田は顔を真っ赤にしながら言い返す。それを聞いた涼香は「不倫て・・・・あんたが不倫て・・・・」と、何とも言えない顔をしていた。
11年経っても、こいつらは相変わらずだ。まるであの頃のまま時間が止まっているように、胸を突く懐かしさがこみ上げて来る。
すると友恵が「みんな変わらないでしょ?」と笑った。
「みんなあの時のまま。良い所も悪い所も、一つも変わってない。」
「・・・・・そうだな。きっと11年なんて、大した時間じゃないんだろうな。人が変わるには、もっと時間が要るんだよ。」
そう答えると、「私はそうは思わないな」と返してきた。
「人が変わるにはキカッケが要ると思う。それが無ければ、何年経っても同じままじゃないかな?」
「・・・・・そうかもな。でもそれって、正也が亡くなってから、俺は変わってしまったって言いたいんだろ?」
「そうだよ。斎藤君は斎藤君だけど、今と昔じゃ違う人間だと思う。もちろん悪い意味でね。」
「はっきり言うな。お前こそ変わったんじゃないの?」
「そうかもね。でも正也君を亡くして辛かったのは斎藤君だけじゃない。私も一緒だよ。それに他のみんなも・・・・。」
友恵は周りに目を向け、憂いのある表情を見せる。それは演技臭くもあったが、今の友恵の本心を表している。
「思い出巡りは、斎藤君の為に企画したの。たまたま思いついたみたいに言ったけど、でも元々これが目的だった。」
そう言って一歩前に進み、白くそびえる貯水塔を見上げた。
「だから・・・・来てくれてよかった。もし断られたら、斎藤君は一生今のままで、間違った思い出の中に生きることになる。
でもそれだけは嫌だった。だからこうしてみんなで集まって、斎藤君が変われるキッカケを用意したの。」
友恵の声は低く、それでいて淀みなく澄んでいた。頭のお団子を揺らしながら、ニコリと笑って見せる。
「だけど予定通りにはいかないもんね。だって一発目からつまづいちゃって、木根君たちが帰っちゃうんだもん。」
そう言って、喧嘩を続ける木根たちを見つめた。
「佐野君と園田君は殴り合っちゃうし、私は私でおじいちゃんを弔う為に、銭湯に忍び込んじゃうし・・・・。斎藤君の為に企画したことなのに、みんな自分の思い出に浸っちゃって。」
そう言いながら俺の後ろへ周り、そっと背中を押した。
「行こう。今日の主役は斎藤君なんだから。最後にバシっと締めくくらなきゃ!」
友恵に押されながら、俺は貯水塔に近づく。あの時と同じようにフェンスが立ちはだかり、侵入者を拒むように上が反り返っていた。
「おい、俺が鍵開けてやるからな!」
木根はいつの間にか木に登っていて、あの時と同じように侵入した。
《本当に入るんだな・・・・またここに・・・・・。》
なんだか身震いがしてきて、あの嫌な感覚が襲って来る。
全身に重油をぶちまけられたような、重い液体が手足を絡める感覚が・・・・・。
鼓動が高鳴り、自然と息が荒くなる。
手足は鎖を巻き付けたように重くなり、目眩がして瞬きを繰り返した。
今日・・・・11年の時を経て、俺はあの夏に戻ることになる。
そこにあるのは後悔したくなるような記憶かもしれないが、ここまで来て足を止めたくはない。
鼓動はますます高鳴っていき、目の前のフェンスがゆっくりと開いた。
「ほら、見つからないうちに中へ入ろうぜ。」
木根は中へ向かって顎をしゃくる。それと同時に、友恵が背中を押した。
足が動き、貯水塔の敷地内へ入る。頭のどこかで止まっていた時間が、スイッチを押したように回り始めた。

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