VS変人類〜占い師 観月の挑戦〜 第二話 占い師VS路上芸術家(2)

  • 2015.12.06 Sunday
  • 14:13
JUGEMテーマ:自作小説
芸術って何なのか?
まさか占い師になって、そんな事を考える羽目になるとは思わなかった。
俺は男の作品を見つめながら、「綺麗ですね」と笑いかける。
「でもアレですよ。こういうのは専門家に見てもらった方がいいんじゃないですかね?芸術の意見とかって、占い師の仕事じゃないし。」
さっきから何度もそう言って、早々にお引き取り願おうとしていた。
しかし男は「意見言って下さい」と譲らない。
「それ、どう思います?直感でいいんで聞かせて下さい。」
「いや、だからさ・・・こういうのって専門家に・・・・、」
「でも俺はお金払ってるんです。あんたの意見・・・・拝借させて下さい。」
「・・・・・・・・・・。」
男の目は真剣で、何としても意見を言わせるつもりだ。
この時俺が考えていたことはただ一つ。
《帰ってくんねえかなあ・・・・この人。》
面倒くさい奴というのはどこにでもいて、出来ればあまり関わりたくない。
しかし金を払ってもらう以上は仕事であり、無碍に追い返すのはよくない。
どこからか悪い評判が立って、今後の商売に影響しないとも限らないからだ。
「じゃあ・・・・・質問。」
男の作品を指さしながら、「これって色紙?」と尋ねる。
「色は綺麗だと思うよ。でも・・・・何で出来てるのか分からない。これ、紙じゃないよね?」
そう尋ねると、男は嬉しそうに「違います!」と頷いた。
「それ、クーピーなんですよ!」
「クーピー?」
「ほら、あのクレヨンの細長い感じのやつ。子供の頃にお絵描きとかで使いませんでした?」
「・・・・ああ!知ってる知ってる!幼稚園の時とかに使ってたわ。」
「でしょう!あれの削りカスで表現してるんです。」
「削りカス?」
「ええ。あれって使ってると先が潰れてくるでしょ?だから鉛筆削りで削るんです。そうしたらね、まるで鰹節みたいに綺麗な削りカスが出て来るんですよ。」
「鰹節のカスって綺麗なの?」
「いや、そういう事じゃなくて、形がですよ。薄い膜みたいな感じの削りカスが出来るんです。」
「ああ・・・まあ何となくイメージ出来るけど・・・・、」
「アレってすごく綺麗なんすよ。だからそのまま捨てるのはもったいないと思って、それで作品を創ってるんです。」
「ふ〜ん・・・まあ確かに色は綺麗だけど・・・・でもよくそんなに削りカスを集められるね?もしかしてわざと削ってるの?」
「最初はたまたま出来た削りカスを使ってたんです。でも今は削りカスを集める為にクーピー買い込んでるんですよ。」
「それけっこうお金かからない?」
「いや、元がそう高くないんで平気っす。絵具とかパステル使い続けるより、けっこう安上がりなんで。」
「じゃあコストはいいわけじゃん。」
「そうなんですよ。アートってけっこう金がかかるから、その辺は大変なんすよ。専用の紙とか画材とかって、良い値段するから。」
「じゃあコスト軽減も考えた上で、これでやってるんだ?」
「まあ・・・・そういう部分も無きにしもあらずっていうか・・・・。」
「いや、そこが一番じゃないの?金が無いんじゃ続けられないし。」
「いや、それは違うっすよ。アートって自分が良いと思ったモンを使って表現するわけだし、お金だけで割り切れるもんじゃないっす。
占い師だって、タロットとか手相とかあるでしょ?何でもいいって感じでやってるわけじゃないっすよね?」
「まあそうだね。俺は手相でもタロットでもないけど。」
「じゃあ何なんすか?」
「んん?まあ〜・・・・強いて言うなら人相学かな。」
「人相学っすか?じゃあ顔見て占うんすか?」
「強いて言えばね。顔もそうだし、それにその人の言動や仕草。そういうのを見て、だいたいこういう人間だろうなってカテゴライズするわけ。」
「カテゴライズ?」
「要するにタパーンみたいなもんだよ。人間って一人一人違うもんだけど、でもやっぱり共通する部分ってあるでしょ?
で、その共通する部分が多い人達を、一つのカテゴリにしちゃうわけ。そうすると、だいたいこの人はこういう人間なんだろうなあって予測出来るでしょ?」
「ああ、なるほど・・・・。」
「そのカテゴリを、自分の中で幾つか作ってるわけよ。俺って昔からそういうのは得意だったから、これがけっこう当たるんだ。
それで何十組もカップルを成立させたし、結婚までいった奴もいる。」
「マジっすか!それ凄くないですか?」
「だから占い師やってんの。前はカフェの店員だったけど、そんなもんで一生食ってけないんじゃん?」
「まあそうっすね。俺もチラシ配りのバイトやってたけど、あの時は生活がきつかったっすもん。」
「俺は一生カフェのバイトなんて嫌だったから、こうして占い師になったわけよ。友達とも色々相談してさ、これが向いてるんじゃないかってことで始めたわけ。」
「じゃあ今はカフェの時よりかは・・・・、」
「もちろん収入は上がったよ。でなきゃやってないから。」
「はあ〜・・・・・すげえっすね。自分で道見つけて、それで飯食ってるなんて。」
男は感心したように呟き、「じゃあ人を見るのが得意って事なんすね?」と尋ねた。
「まあね。今のところは上手くいってるよ。」
「それじゃモノを見る目があるってわけっすね?」
「・・・・どうだろう?人を見ることは出来ても、それ以外の物はちょっとなあ・・・・。」
そう言いながら作品を手に取り、「これ、やっぱり俺の仕事じゃないよ」と返した。
「申し訳ないけど、いい加減はアドバイスは出来ない。アートのことなんて分からないし、知りもしないことを偉そうに言いたくないし。」
「いやいや!でもカップルを成立させて、結婚までいった人もいるんですよね?」
「それは人の相性を見て、こいつらなら上手くいきそうだなってアドバイスしただけだから。アートとは関係ないよ。」
「そんなことないっす!あんたならきっと・・・・・ええっと・・・・、」
「ああ、観月、下は真一。」
「観月さんなら、一般人より良い意見言えるはずっす!だって自分の力活かして飯食ってんだから、鋭いこと言えるはずっすよ!」
「いや、だからさ・・・・それとこれとは別じゃん?」
「ならただの感想でいいっす。俺の作品を見て、観月さんが思ったこと・・・・・率直に聞かせて下さい。」
男はそう言って頭を下げる。派手なバンダナがこちらを向き、真面目に頭を下げてるのか、それともふざけているのか分からない。
《これ、アレだな。なんか言わないと絶対に引き下がらないな。》
時間はもう10分を過ぎようとしていて、このまま引っ張れば延長料金がもらえるだろう。
でもこれ以上は本当に面倒くさいので、早々にお引き取り願うことにした。
「じゃあ・・・・」と前置きしてから、一枚のアクリル板を手に取る。
「これさ、色は綺麗なんだけど、何を言いたいのか分からないんだよね。」
「ああ、それっすか?それは宇宙です。」
「・・・・・ごめん、具体的にはどの辺が宇宙なわけ?」
「ほら、ここに土星とかあるでしょ?こっちには太陽。」
そう言って指をさすが、まったくもって分からない。ただクーピーの削りカスを散りばめているようにしか見えなかった。
「宇宙ねえ・・・・銀河系の方がいいんじゃない?色がカラフルだし。」
何気なく答えると、「ああ!そういう見方も出来るっすね」と納得した。
「それにさ、そっちのやつ。」
「ああ、これ?」
そう言って別のアクリル板を指さすと、「これ、戦場っす」と答えた。
「こっちのグレーの部分が土で、赤い部分が炎。そんで金色の所が死体っす。」
「なんで死体が光ってるんだよ・・・・。」
「いや、魂が天に昇る感じを表現しようと思って。」
「そんなの説明されて初めて分かることだよね?初見じゃ絶対に分からない。」
「観月さんでも?」
「他の誰でもだよ。だいたいさ、クーピーの削りカスを使うってアイデアはいいと思うけど、内容が分からないんじゃ意味ないよね?
それだったらどんな画材使っても一緒じゃないの?」
「そう・・・・・思いますか?」
「俺にはそう思える。だって素人だもん。だから専門家に見てもらえって言ってんの。違う意見が聞けるかもしれないでしょ?」
「そんな・・・・観月さんでも分からないなんて・・・・・、」
「初めて会った人間をなんでそんなに信用してんだよ・・・・。何度も言うけど、俺はアートに関しちゃ素人だから。だから思ったことを言っただけ。」
そう言いながら時計を見ると、あと二分ほどで終了だった。
《さっさと終われってんだよまったく・・・・。だいたいへこむくらいなら最初から聞くなよな。》
男は本気で落ち込んでいて、薄っすらと涙まで溜めている。
《マジかよ・・・・。こいつ本気でこんなモンを良いと思ってたのか?》
純粋というか馬鹿というか・・・・・しかしそこまで本気だったのなら、もう少し言葉を選んでやればよかったかなと後悔する。
「なあ?一つ聞いていい?」
「・・・・・・っす。」
「今さ、どうやって食ってるわけ?売れない作品で生計が成り立つわけないよね?」
「・・・・・・っす。」
「え?なんて?」
「・・・・貯金・・・・・切り崩してるっす・・・・。」
「ああ、そうなんだ。じゃあけっこう貯めてたんだね?」
「色々とバイトやって・・・・生活切り詰めてたんす・・・・。そんで一年間アートに没頭して、それ持って勝負かけようと思って・・・・、」
「それで出来たのが、その削りカスアートなわけだ?」
「・・・・・・っす。」
「ならこのまま上手くいかなかったらどうするの?普通の仕事を探す?」
「・・・・・分からないっす・・・・。失敗した時のこと・・・・考えてなかったんで・・・・・、」
「すごい冒険だなオイ。」
「だって・・・・上手くいくと思ってたから・・・・・、」
「まあそういう勢いは大事だと思うよ。それがないと、新しい道に踏み出せないからな。だけど実際問題として、その作品じゃ売れないでしょ。
だからさ、昨日のオッサンが言ったように、ちょっと作品を見つめ直してみたら?」
そう言うと、男はようやく顔を上げた。
「泣くなよいい男が。」
「・・・すんません・・・・。」
「あ、ちなみにもう15分経ってるんだよね?どうする?延長する?」
「はい・・・。あ、いや・・・・でもお金があんまり・・・・、」
「ああ〜・・・・ならいいや。出来た時に持って来てよ。」
「・・・・・・っす。」
「絶対ね。」
男はまた俯き、まるで遺影のように作品を抱えている。
これはこれでちょっと面白い光景だけど、でも笑うともっとへこむだろう。
ここはあのオッサンが言葉足らずで出来なかったことを、この俺がやるしかない。
「俺さ、二年前からこの仕事を始めたんだけど、正直始める時は不安だったよ。上手くいかなかったらどうしようって、けっこう怖かった。
だからそれなりに勇気はいったんだよね。新しい事に挑戦する時って、やっぱそれなりに度胸がいるから。」
「はあ・・・・・。」
「でもさ、逆も然りだと思わない?自分が正しいと思ってやってることがさ、実は自分の為にならないって事もあると思う。
でもさ、そういう時って中々やめられないんだよね。だって辞めるってことは捨てるってことにも等しいから、勇気がいるもんだよ。」
「そう・・・・っすかね?」
「辞めて分かることってあると思うんだよ。だからさ、ここらでちょっとアートから離れてみるってのはどうかな?」
そう言って少しだけ顔を近づけ、「もしあんたが本当にアートを必要としてるなら、きっとまた始めるよ」と続けた。
「俺さ、どんなことでも縁だと思うんだよね。人でも夢でも、縁があるかどうかって大事なことだよ。
だからもしあんたがアートに縁があるなら、きっとまた戻って来るし、出会えるよ。だからここはちょっと勇気を出して、別れてみるってのはどうかな?」
「別れるって・・・・それ恋人みたいっすね?」
「そう考えると分かりやすい。だって腐れ縁とかってあるじゃん。断ち切った方が本人の為なのに、ズルズルと引き伸ばしちゃってさ。
もう愛情も何もないのに、なんか寂しいから一緒にいるみたいな。」
「ああ、それ分かるっす。俺もそういう彼女いましたもん。」
「ならさ、別れたこと後悔してる?今でも一緒にいればよかったなあって思う?」
「いや、全然。あのまま続けてたって、ただの惰性っていうか・・・・前に進めない感じでしたからね。」
「ならアートだって一緒だよ。今はべったりくっ付いてるから分からないだろうけど、しばらくの間別れてみれば、自分にとって必要な相手だったかどうか分かるはずだよ。
それでさ、アートは人間じゃないんだから、あんたのこと嫌ったりしないよ。ヨリを戻そうって言っても、フラれたりしない。また必ずやり直せるよ。」
そう、時には辞めることも必要。
俺もあの時カフェの店員を辞めていなければ、今でもおしぼりとコーヒーを運んでいただろう。
慣れた仕事を手放すのは勇気がいるが、そうしないと前に進めない時だってある。
この男はアートに固執するあまり、少し周りが見えなくなっている部分はある。
だって・・・・こんなわけの分からないもので、本当に道が開けると思い込んでいたんだから。
きっと専門家が見たところで、一蹴されるのがオチだと思う。
だけど俺は専門家じゃないので、こればっかりは偉そうに口に出来ない。
まあ言えることは言ったわけだし、この男の望み通り、作品の意見も聞かせてやった。
時間はもう20分を超えていて、これ以上のタダ働きはごめんだ。
だってこの男が、後から本当に金を払うなんて期待していないから。
「一生懸命作った作品が売れないっていうのは、そりゃショックだと思うよ。でも売れないもんは売れないんだよ。」
「・・・・そう・・・・っすね・・・。」
「だからさ、ここはちょっとアートと距離を置こうよ。そうすりゃ一番大事な部分が見えて来るはずだから。」
「一番大事って・・・・なんすか?」
「あんたが金の為にアートをやってるのか?それともアートこそが自分の人生と思ってやってるのかってことだよ。
もしも金の為っていうのなら、別のことでもいいわけじゃん?」
「ああ、まあ・・・・・、」
「でもアートが自分の人生だとしたら、きっと辞めない。それを判断する為にも、今は別れる時だと思う。」
そう言って時計の針を止め、「じゃあここまで」と話を終わらせた。
「俺だってこれで食ってんだ。これ以上はタダじゃ出来ないよ。」
「いや、でも金は後から・・・・・、」
「別にいいよ。延長料はサービスで。」
「・・・・・・・っす。」
男は頭を下げ、いそいそと作品をしまう。そしてテーブルに2000円を置いた。
馬鹿デカいバッグを肩に掛け、ゆっくりと立ち上がった。
そして丁寧に椅子を戻し、また小さく頭を下げる。
「なんか色々とありがとうございました。」
「別にお礼なんていいよ。こっちはお金もらってるわけだし。」
「・・・・俺・・・観月さんみたいに、やっぱ自分の信じる道で生きたいっす。だから・・・・いつかきっとアートに戻って来ます。」
「自分で決めることだよ、好きにしたらいいと思う。まだそこまで歳いってないんだし、時間はあるでしょ。」
そう言って笑いかけると、男は「幾つに見えます?」と尋ねた。
「ん〜・・・・多分30台前半?」
「ああ、やっぱそれくらいに見えますよね。」
男は可笑しそうに笑い、「もっと若いっす」と答えた。
「いま幾つなの?」
「17っす。」
「マジで!?」
思わず立ち上がりそうになって、「ほんとかよ・・・・?」と睨んだ。
「よく老けて見られるんすけど、まだ17なんすよ。」
「・・・・・高校は?」
「辞めました。」
「ならその歳でフリーターやって、アートの世界に飛び込もうとしてたのか?」
「そうっす。だってやりたいことに歳とか関係ないっすから。」
「親は反対とかしなかったの?」
「そりゃしましたよ。ウチけっこう金持ちなんで、なんでそんな道行くんだみたいな。」
「なんだよ・・・ボンボンなのかよ・・・・。」
「でもそれは親の金っすから。俺のじゃないし。」
「いや、でもまだ17じゃん。別に親のスネ齧ってもいい年頃だろ。」
「まあそうなんすけど・・・・でもやっぱ誰かの言いなりとか嫌なんで。自分の人生なんだから、自分の生きたいように生きたいっていうか。」
「俺が17の時なんて、そんなまっとうなこと考えなかったな。ダチとその辺フラフラしてたわ。」
「いや、それが普通だと思いますよ。俺、自分で変わってるって自覚してるんで。」
「なら俺の意見なんて参考にならなかっただろうな。なんか偉そうに言っちゃって恥ずかしいじゃんか・・・・。」
「そんなことないっすよ。だって観月さん、自分のやりたいことで飯食ってるんすもん。冗談抜きで尊敬しますよ。」
「まあそう言ってもらえると嬉しいけどさ・・・・。」
なんか予想外のことを聞かされて、こっちの方が驚いてしまう。
「じゃあ・・・・今は一人暮らし?」
「そうなんすよ。でも17のガキに部屋貸してくれるとこなくて。」
「まあ親に反対されてるもんな。未成年だと保護者の同意がなきゃ無理か。」
「そうなんす。だから自分で家建てたんすよ。」
「はあ!?家を建てる・・・・・?」
「まあ家っつっても、雨風凌げる程度ですけどね。竜胆公園の森の奥に、拾ってきた木とか板で小屋を作ったんです。」
「それ・・・・勝手に住んでもいい場所なのか?」
「まあダメでしょうね。でもホームレスのおっちゃんとかもいて、けっこうみんな親切なんすよ。」
「・・・・お前すごいわ。こっちが尊敬するよ。」
俺は立ち上がり、テーブルの2000円を返した。
「これいいよ。」
「え?いや、でも・・・・・、」
「なんかお前面白かったからさ。こういう仕事してなきゃ、お前みたいな変わりもんの話を聞くこともなかっただろうし。」
「いやいや!それはダメっすよ!だってこれ・・・観月さんに占ってもらったお金で・・・・、」
「じゃあもしビッグアーティストになったら、何十倍にもして返してよ。」
しぶる男に金を押し付け、「まあまた来なよ」と肩を叩いた。
「木曜以外ならここにいるからさ。たま〜に他の日も休んでるけど。」
「ああ・・・・なんかすんません・・・。タダで占ってもらって・・・・。」
男はそう言いながら、「じゃあコレ・・・」と何かを取り出した。
「名刺?」
「はい。売れた時の為に作っとこうと思って。」
「銀鷹武史・・・・めっちゃ強そうな名前だな。」
「ケータイとかの番号も書いてあるんで。」
「分かった。じゃあ俺のもやるよ。」
テーブルに戻り、バッグの中をゴソゴソと漁って、数少ない名刺を取り出した。
そこに電話番号を書き、「ほい」と手渡した。
「自分の番号を書いて渡すなんて、女の子以外にやったことないわ。」
「マジすか?じゃあ俺が初めてなんすね。」
「うん、まあ・・・・やっぱりお前って面白いからさ。17でそこまでやる奴なんて滅多にいないと思うし、だから飯とか困ったら連絡してこいよ。なんか奢ってやるから。」
「マジっすか!じゃあありがたく頂きます!」
銀鷹君は嬉しそうに言い、「そんじゃ」と頭を下げて去って行く。
「あのオッサンに言っとくよ。銀鷹君が謝ってたって。」
「よろしくお願いします。そんじゃまた。」
銀鷹君はニコリと笑い、手を振って去って行った。
「・・・・変わった奴もいるもんだ。まさか男に名刺渡して、しかもタダで占ってやるなんて・・・・。これって俺の負けだよな?」
自分より10も年下の奴が、あそこまで頑張ってるとつい応援してくなってしまう。
でも俺だってまだまだ若いわけだし、このままビルの隅の占い師で終わるつもりはない。
まだこれといって先は見えないけど、そろそろ次の道を考えてもいいかもしれない。
「占い師をやめるつもりはないけど、やっぱ今のままじゃなあ・・・・。」
銀鷹君からもらった名刺をいじりながら、自分のテーブルへと戻る。
今日はそこそこ客が来てくれて、まあそれなりに儲かった。
しかし銀鷹君の印象が強すぎて、どの客の悩みも同じにしか聞こえなかった。


            *


翌日、ハゲのオカルト占い師が出勤してきたので、銀鷹君が謝りに来たことを伝えた。
するとハゲはこう一言。
「言われなくても知ってるよ。そういう未来が見えたもん。」
「霊能力で?」
「当たり前だろ。君みたいな屁理屈占い師じゃないんだから。」
「・・・・だったら休むなよハゲ・・・・。」
「ん?なんか言った?」
「いや、何も。」
愛想笑いで誤魔化し、「屁理屈はてめえだろ・・・・」と呟く。
「あのさ・・・・・、」
「はい?」
突然声色を変えて話しかけてきたので、気味が悪いと思って睨んでしまう。
「あの子若かったでしょ?」
「ええ、まあ・・・・・、」
「多分16か17くらいだと思うんだよねえ。」
「よく分かりますね。」
「だから僕にはそういう力があるから。君とは違うんだよ。」
「・・・・なら俺の年齢は?」
「26だろ?」
「前に教えましたっけ?」
「だからあ!見れば分かるの。何度も言わせないでよ。」
「・・・・じゃあおたくの年齢も当ててみましょうか?」
「いいよ。幾つに見える?」
「・・・・・45から50の間。」
そう答えると、オッサンはニヤリと笑った。
「ハズレ。」
「なら本当は?」
「25。」
それを聞いて一瞬固まる。
「・・・・・・・マジで?」
「僕って老け顔だし、それに禿げてるだろ?だからよく中年に見られるんだけど、実は若いんだよ。まだ20代半ば。」
「・・・・・・・・・・。」
「君より年下なんだよ。ビックリしただろ?」
オカルト禿げ野郎は憎たらしそうに笑い、「オッサンオッサン言ってるけど、君の方がオッサンだよ」と馬鹿にしやがった。
俺は立ち上がり、思い切り頭を叩いた。
「てめえ年下じゃねえか!それ知ってりゃ敬語なんて使わなかったんだ!このハゲ!」
「君が勝手に使ってたんだろ!僕のせいじゃ・・・・、」
「知ってるなら黙ってんじゃねえよ!ああ、ムカつくわお前!」
そう言ってまた頭を叩くと、「キャリアは僕の方が上だよ!」と言い返してきやがった。
「そっちこそ先輩に敬意を払えよ!屁理屈占いのくせに!」
「黙れ若年ハゲ!これからはタメ口だかんな!」
もう一発頭を叩き、イライラしながら座る。
銀鷹君にしろ、このオッサンもどきにしろ、最近の若者はいったいどうなってるのか?
・・・・いや、もしかしたら、俺だって他人から見たら変わり者の若者なのかも・・・。
《断じてこのオッサンもどきと一緒にされたくないな。》
そうは思いながらも、やっぱり一緒なのかもと、ちょっと不安になった。

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