VS変人類〜占い師 観月の挑戦〜 第四話 占い師VSボディビルダー(2)

  • 2015.12.08 Tuesday
  • 13:18
JUGEMテーマ:自作小説
会話上手というのは、聴き上手と言い換えてもいい。
聴くのが上手い奴ほど、会話は弾むものだ。
しかしただ黙っていても、相手は喋ってくれない。それが人見知りな奴なら尚更で、何か喋るきっかけを与えてやらないといけないのだ。
まず俺はマッチョマンの悩みを当ててやった。
それはズバリ、気が小さいということ。
これを当てると、マッチョマンは「さすがだなあ」と笑っていた。
しかしこれはキッカケに過ぎない。笑って受け流せるということは、俺の答えは核心をついていないのだ。
マッチョマンにとっての真の悩みは、気が小さいということじゃない。
そこからさらに掘り下げないと、本当の悩みは見えてこないのだ。
だから俺は、あえて踏み込んだ質問をした。・・・・いや、質問というより断言だな。
するとマッチョマンは「恥ずかしながら・・・・」と顔を赤くした。
「そうなんだよ・・・僕は女性が苦手なんだ・・・・。」
俺は「多分そうだと思いました」と笑った。
「申し訳ないけど、あんたからは男臭さってほとんど感じないんです。そういう男って、とにかく女に縁がないんですよ。」
「やっぱり分かる?」
「ええ、そりゃもう。」
「どの辺がそう思うのかな?」
「ん〜・・・なんていうか、良い人過ぎなんですよ。」
「ああ、それよく言われるよ。」
「そういう人って好きな女が出来ても、結局良い人で終わっちゃうもんなんです。男として見てもらいたいなら、嫌われてもいいから積極的にならないと。」
「だよね・・・・それは分かってるんだけど・・・・。」
「そういえばこの前ジムで言ってましたよね?高校生なのに、小学生の弟に腕相撲で負けたって。」
「ああ、言ったよ。」
「じゃあ弟の年齢を教えてくれません?」
「年齢?どうして?」
「だって小学生って言ったって、小一と小六じゃ全然違うでしょ?それって大人と子供くらい力の差がありますよ。だから弟さんは何年生だったのかなと思って。」
「ああ、ええっと・・・・・、」
「今弟さんは幾つですか?」
「僕の10歳下だから、今は26だね。」
「なら腕相撲で対決した時、あんたは高校何年生でした?」
「高2だよ。まだ17になって間もなかった。」
「そうなると、その時の弟さんは7歳ってことっすね?」
「ええっと・・・・そうなるな・・・・。」
「ならあんたは17歳の時に、7歳の弟と腕相撲をして負けたと?」
「・・・・まあ・・・・うん。」
マッチョマンはバツが悪そうに俯く。これみよがしにおでこを掻き、目を合わせようとしなかった。
《分っかりやすいなこの人。》
ちょっと笑いそうになりながら、それでも我慢して続けた。
「普通に考えて、17歳が7歳に腕相撲で負けるってあり得ないですよね?」
「・・・・・そうかな?」
「そうですよ。だって7歳って小2くらいでしょ?だったら小6の子でも充分勝てますよ。それを17歳の高校生が負けるってのはあり得ないでしょ?」
「・・・・いや、まあ・・・・。」
「だからね、俺はこう思ってるんですよ。あんたが腕相撲で負けたのは、弟じゃなくて女の子なんじゃないかって。」
そう尋ねると、マッチョマンは顔を上げて「違うよ!」と叫んだ。
「いくら何でも女の子には負けな・・・・・、」
「いやいや、いくら何でも7歳の子に負けるほどあり得ないことじゃないでしょ。」
「・・・・それは・・・・、」
「実はね、俺も経験があるんすよ、同級生の女友達に負けた経験が。」
少し顔を近づけながら言うと、マッチョマンは一気に食いついた。
「ほんとに!?」
「ほんとっす。俺も高二の時に、女友達と腕相撲したんすよ。でもまったく勝てなかったんす。
三回やったけど、三回とも負け。その後ハンデもらって、ちょっと傾いた状態からやったんです。でも負けちゃって。」
わざとらしく肩を竦めながら言うと、マッチョマンは「そうか・・・君もか・・・・」と呟いた。
「あれってけっこうショックっすよね。俺もその日はずっとへこんでましたもん。だけど俺って、そんなに強さとかこだわる方じゃなかったし、それに運動神経はよかったんす。
だから体力なくても、そんなに惨めになることはなくて。」
「そうか・・・君は強さにこだわりがないんだね・・・・。」
「そうっす。だって腕っぷしがあるより、頭が良い方がいいじゃないっすか。そりゃ格闘家にでもなりたいなら話は別だけど、俺は球技の方が好きだったし。」
「運動神経は良いって言ってたね。なら野球やサッカーも?」
「もうバッチリ出来ましたよ。何度も部活に誘われたし、俺も本気でそっちの道に行こうかと思ったくらいだし。」
「いいなあ・・・・運動神経が良いのか。そりゃコンプレックスになることもないか。」
「ちなみに失礼だけど、あんたは運動神経は・・・・、」
「良くないよ。体育の時間なんて憂鬱だったし、特に球技の時は最悪だった。ほんとにもう・・・・地獄だったよ・・・・、」
マッチョマンは落ち込み、「実はさ・・・・、」と続けた。
「女性が苦手なのは、それが理由なんだよね。」
「ほうほう。」
「あれは高二になったばかりの頃だったよ。僕のいた学校は、学年が変わってすぐに球技大会があるんだ。でもって僕らの学年はバレーだった。」
「ああ、それキツイっすね。あれって球技苦手な人にとっては地獄でしょ?」
「そうなんだよ。案の定みんなの足引っ張っちゃって、そこにいるだけで迷惑って感じだった。
でもね、僕のクラスにはバレー部の奴がいたんだ。それもけっこう上手くてさ、中学の時なんか県大会で準優勝してるんだよ。」
「おお、そりゃ心強いじゃないですか。」
「まあそうなんだけど・・・・でも部活やってる奴が、球技大会で本気出すわけないじゃない。」
「そりゃそうでしょ。県大会で準優勝するような奴が本気出したなら、あっさり終わっちゃいますって。」
「ああいう時って、上手い奴はわざと下手な奴にボールを回すんだよね。誰も頼んでないのに・・・・、」
「それは仕方ないですよ。だってあれはお祭りっつうか、学校のイベントだから。上手い奴は他の奴にボールを回しますよ。」
「それが地獄なんだよ。だって僕のところにボールを回されたって、何にも出来ないんだから。ろくにトスも出来ないから、ただボールを落とすばかり。
ほんとにもう・・・・足引っ張っちゃって・・・・、」
「じゃああんたのクラスは負けちゃったわけですか?」
「学年でビリ。もうほとんど僕のせいみたいなもんだよ・・・・。」
「ふう〜ん・・・・でもそのバレー部の奴もヒドイっすね。いくら何でも、そんなに何回もボール回さなくてもいいのに。」
「いや、別に僕だけに回してたわけじゃないよ。彼はみんなに均等に回してた。でも僕だけが毎回落としちゃって・・・・、」
「ああ、それで負けたら確かにへこみますね。」
「だろ?でもそれだけならよかったんだよ。あんなのどうせ学校にイベントだし、みんなすぐに忘れてくれるから。」
「優勝しても特に何もないですしね。」
「でもさ、そうはいかなかったんだ。球技大会が終わった次の日、学校へ行くとある女の子から呼び出された。」
「呼び出されたって・・・・まさか告られたんすか?」
「いやいや、違うよ。その逆、僕に文句を言いに来たんだよ。」
「文句?」
「ああ。僕を呼び出したその子は、バレー部の男の子のことが好きだったみたいなんだ。だからせっかく彼からボール回してもらってるのに、それを落とすのが気に食わなかったらしい。」
「あ〜・・・・いますね、そういう女。面倒臭くて鬱陶しい奴が。」
「うん、まあ・・・・確かに・・・、」
「彼女ならまだしも、どうせ友達ですらないんでしょ?」
「本人は友達と思ってたみたいだよ。バレー部の子は違うって言ってたけど。」
「じゃあただの痛い女じゃないすか。俺なら鼻に肉でも詰め込んでドブに捨てときますね。」
「はははは!君すごいね、僕もそういうことが言えたらいいんだけど。」
「俺ね、自分がムカついた時は意外とパワーが出るんすよ。他の時はぜんぜんダメなんすけどね。」
「それは潜在的に力があるってことだよ。君、強い部類の人間だね。」
「そうっすかね?腕力なんて全然無いけど。」
「でも喧嘩であんまり負けたことないでしょ?」
「うん、それが不思議と。ああいう時って、なんか身体が熱くなるんすよ。だから勢いで乗り切っちゃうっていうか。」
「じゃあやっぱり強い部類の人間だよ。僕とは逆だ。」
マッチョマンは笑い、「で、話を戻すけど」と続けた。
「美術室の自販機の裏に呼び出された僕は、その子から延々と罵られた。しかも他にも女の子がいて、一斉に捲し立ててくるんだよ。
あの頃の僕は、心だけじゃなくて身体だって弱かった。だからもう涙目になるしかなくて・・・・、」
「そりゃあ辛かったっすね。俺がいりゃ耳と鼻にブロッコリー詰めて、沼に沈めてやったのに。」
「僕にはとてもそんな勇気はなかったよ。だからとうとう泣き出しちゃってね。それであんまりえぐえぐ泣くもんだから、さすがに向こうも気の毒になってきたみたいで。」
「なら許してもらえたわけだ?」
「まあ一応は・・・・。けどね、許してはもらえたんだけど、今度は面白半分にからかい始めたんだよ。こいつ男のクセに女より細いって。
だからちょっと腕相撲してよって、美術室に連れていかれて・・・・、」
「なるほど、そこで女の子に負けたわけだ。」
俺は腕相撲のジャスチャーをしながら尋ねた。
「・・・相手は全部で五人いた。でも五人全員に負けたよ。しかもその中の一人は、僕より全然小柄だったんだ。でもあっさり負けちゃってさ。そうするとみんなゲラゲラ笑うわけ。」
「そりゃ確かに地獄っすね。」
「そうだよ・・・地獄なんだよ・・・。でも本当の地獄はその後から始まった。」
「もしかしてイジメっすか?」
「それに近いような感じだよ。別に暴力とか、お金を取られたりとかはなかったけど、事あるごとにパシリにさせられた。
やれジュースを買って来いとか、雑誌を買って来いとか。たまにエロ本を買って来いっていうのもあったよ。」
「それ、そいつらの男友達が頼んだんじゃないですか?」
「それは分からないけど、でもすごく恥ずかしかった。それは高校を卒業するまで続いて、僕はすっかり女性恐怖症になったってわけ。」
「さすがにそれは同情しますよ。でも高校を出たんなら、もうその女どもからは解放されたんでしょ?」
「うん、僕はすぐに地元から離れて働き出したからね。でもって高校の頃からこっそり始めた筋トレを、その後も続けた。」
「腕相撲に負けたから筋トレに目覚めたんだ?」
「だって悔しかったから。別にその女の子に勝ちたいとかじゃなくて、あんなに惨めに負けた自分が許せなかった。
だから働きながらずっとトレーニングを続けて、けっこう良い身体になってきたんだ。
それでアマチュアのボディビルの大会とかにも出るようになって、一度だけ優勝したこともあるよ。」
「おお!マジすっか!凄いじゃないですか。」
「そんなに大きな大会じゃなかったんだけど、でも嬉しかったな。それが僕の人生で、唯一自慢できることだよ。」
マッチョマンはようやく笑顔を見せた。自分にとってたった一つの自慢を語る時、とても良い表情をしていた。
「でもね、優勝はそれっきり。今じゃ予選落ちばっかりだよ。だからそろそろこの道も捨てようかなと思ってさ。」
「ふう〜ん・・・・なんかもったいないっすね。せっかくそこまで鍛え上げたのに。」
まるでプロレスラーみたいな身体を見つめながら、やっぱり良いガタイだなと感心する。
マッチョマンは心の内を語り、落ち込んだような、でもどこかスッキリしたような顔をしている。
だけどまだ勝負は終わっていない。
だって肝心の俺のアドバイスはここからなんだから。


 

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