VS変人類〜占い師 観月の挑戦〜 第六話 占い師VS猫

  • 2015.12.10 Thursday
  • 14:04
JUGEMテーマ:自作小説
季節は初夏。
初夏といえば清々しい気がするけど、実際は雨ばっかり続く鬱陶しい季節だ。
日曜の午後、俺は仕事をサボって茶を飲んでいた。
本来は木曜が定休日だけど、たま〜にこうしてサボることもある。
だって今日みたいな鬱陶しい雨の日は、とても働く気になれないからだ。
外はパラパラと雨が降っていて、街並みがグレー一色に染まっている。
空もグレー、街もグレー、見るもの全てがグレー。
そんな日は心までグレーになるってもんで、こういう時は友達と遊ぶに限る。
顔馴染みのマスターがいる喫茶店で、二人の友達と茶を飲んでいた。
この二人は高校時代からの友達で、俺が占い師になる時にも相談に乗ってくれた。
というより、この二人と相談しながら、占い師になることを決めたのだ。
二人とも中々良い奴で、しかも付き合いが長いから気を遣うこともない。
俺はこいつらのおかげで今の仕事に就いてる。そしてこいつらは俺のおかげで彼女が出来た。
お互いに持ちつ持たれつ。これぞ友達の正しい姿ってもんだと思う。
喫茶店へ来て小一時間。俺たちは他愛のない話を続けていたが、だんだんとそれにも飽きてきた。
「場所変える?」
そう提案すると、ジャニーズ系の顔をしたイケメンの杉原が「だるい」と答えた。
「鬱陶しいんだよ梅雨って。こういう日って動きたくない。」
「そんなもんみんな同じだろ。だから俺だってサボってんだし。」
「いや、それは真面目に働けよ。」
「いいんだよ、俺は誰にも雇われてるわけじゃねえし。働きたい時に働いて、休みたい時に休むの。」
「良い身分だなお前は。俺なんか先週と先々週は休日出勤だぜ。そんでようやくの休みにこんな天気だよ。」
「まあ人に雇われるってのはそういうことだろ。」
「俺も占い師になろうかな・・・・・。」
「無理無理。この仕事は向き不向きがあるから。」
「だろうな。お前みたいにペラペラ口の上手い奴じゃないと無理だよ。」
「口だけじゃない。洞察力と観察力が優れてるから出来るの。」
「確かにお前は人の性格とか相性とか見抜くのは上手いけどさ。でもそれだけでずっとやっていけるもんなの?」
「今のところは大丈夫・・・・・と言いたいところだけど、ここ最近は二連敗だったな。」
「二連敗?何が?」
杉原は興味を惹かれたようで、「占い師に勝ち負けとかあんの?」と尋ねた。
俺は「いや、ちょっと変わった客が来てさ・・・・」と、銀鷹君とマッチョマンのことを話してやった。
「・・・なんていうか、今までに占ったことのないタイプなんだよ。ていうか出会ったことすらないタイプだな。
だからどういう人種にカテゴライズしていいのか分からなくて、最終的に恥かいたって感じだ。」
「ほお、そんな面白い奴らがいるのか。是非会ってみたいな。」
「プライベートで会う分には面白いだろうけどな、占いの客として来られたら最悪だぞ。」
「でもそのマッチョマンはお前が客引きしたんだろ?」
「だからそういう変わり者だってことを見抜けなかったんだよ。」
「ならお前の洞察力も落ちたってことじゃねえの?昔ならそんなヘマしなかっただろ。」
「んなことねえよ。」
「でも実際に負けたんだろ?」
「まあ・・・・そうだけど・・・・、」
「もうそろそろ占い師も辞め時なんじゃねえの?」
「なんでだよ。一応は儲かってるんだぞ。」
「それがいつまで続くかって話だよ。だってお前さ、占い師のクセに手相もタロットも出来ねえじゃん。」
「そんなもん俺には必要ねえの。この目と話術があれば。」
「でも二回も負けただろ?」
「うるさいな。そういう事もたまにはあるんだよ。」
イライラしながらタバコを吹かし、窓に向かって吐き出した。
するともう一人の友達である高司の顔が映っていて、じっと一転を見つめていた。
「お前どこ見てんの?」
そう尋ねると、「向かいのコンビニ」と言った。
「店員が猫に餌やってる。」
「・・・・・ああ、ほんとだな。あんた事したら住みついちゃうんじゃねえの?」
「あれ、けっこう歳のいった猫だな。」
「そうなの?」
「俺、こう見えてけっこう犬とか猫とか詳しいんだよ。」
「そんなの初めて聞いたな。」
「いや、マジで分かるんだよ。あの猫はけっこうな高齢者だ。」
高司は厳つい顔で見つめながら言う。すると杉原が「高齢者って」とツッコんだ。
「猫の歳なんか分かるのかよ?」
「だから分かるんだって。俺、そういうのに詳しいから。」
「具体的にどう分かるんだ?」
「まあ顔とかかな。猫も顔に歳が出るから。」
「ほんとかよ。」
「マジだって。」
「でもこっからだと遠いじゃん。猫の表情とか分かんねえだろ。」
「・・・・じゃあ・・・動きとか?」
「じゃあってなんだよ、じゃあって。お前絶対に詳しくないだろ。」
「そんなことないって。俺の猫とか犬を見る目は確かだから。」
高司は意地でも引き下がらない。「あの猫は高齢者で間違いない」の一点張りだ。
すると杉原が面白がって尋ねた。
「なんでそんなに意地張るんだ?どうでもいいことだろ?」
「なんでって・・・・子供の頃の夢が動物学者だったからな。」
「マジで?それこそ初耳だわ。」
「俺、ムツゴロウ王国とかすげえ好きだったんだよ。だから本気であそこで働こうと思ったこともある。」
「思うだけなら誰でも出来るわな。実行はしたの?」
「いや、しなかった。」
「なんで?面白そうなのに。」
「いや、よくよく考えたら、そこまで動物学者になりたくないかなあって・・・・、」
「なんだよそれ?どうせ他のもんにでも興味が移っただけだろ。」
「まあな。その後すぐに服の方が好きになったから。」
「ほら見ろ。やっぱ全然詳しくねえじゃん。」
「いや、詳しいのは詳しいって。けっこう図鑑とか読んでたし、それに野良猫とかに餌やってたし。」
「野良に餌やるなよ。いっぱい集まって来るぞ。」
「だからこそ詳しいんだよ。」
高司は鼻息荒く言って、「間違いない、あの猫は高齢者だ」と断言した。
「ほう、そこまで言うなら勝負してみるか?」
杉原は意地悪そうに笑い、「負けたらここ全部奢りな」と言った。
「いいぞ。でも勝負って何をどうするんだ?」
「決まってるだろ、そこの占い師にやってもらうんだよ。」
そう言って杉原は、俺の方にタバコの煙を飛ばした。
「お前さ、ちょっとあの猫の歳を当ててみてよ。」
「はあ?何言ってんだお前。」
俺も煙を飛ばし返す。
すると「お前なら出来る」と言われた。
「変人みたいな路上アーティストとか、男みたいな女と結婚したマッチョマンを占ったんだ。猫だって占えるよ。」
「馬鹿かお前、猫は獣だろうが。獣占う占い師なんかいねえよ。」
「いや!お前なら出来る!なんたって何十組ものカップルを誕生させて、しかも結婚まで漕ぎ着けた奴もいるんだから。」
「それとこれとは関係ないだろ。」
「でもモノを見る目はあるってことだ。それとも何か?やっぱ昔に比べて見る目は衰えたか?」
そう言ってまた煙を飛ばしてくる。その顔はぶん殴りたいほど憎たらしくて、「うっせえ馬鹿」と返した。
「猫なんか占ったって何の得もないだろ。無駄なことさせんな。」
「あ、逃げるのか?」
「お前な・・・・俺は仕事で占いやってんの。いくら暇だからって、タダでそんなしょうもない事出来るか。」
「ほほう、一人前にプロ意識かね?」
「当たり前だろ。それで飯食ってんだから。」
「じゃあさ、これが仕事に繋がればいいわけだ?」
「仕事に繋がるならな。」
そう答えると、杉原は「おい」と高司を肘で突いた。
「条件変更。もしお前が負けたら、こいつの所で占ってもらえよ。」
「なんでだよ?インチキ占いなんかしたくねえよ。」
高司は本気で嫌そうな顔をする。
俺は「誰がインチキだコラ」と睨んだ。
「だってお前のってただの屁理屈じゃん。」
「何言ってんだ。お前らに彼女見つけてやっただろ。」
「それ何年前の話だよ。とうに別れてるっての。」
「それはお前らが悪いんだよ。上手くやらないからフラれたんだ。」
「いや、俺も杉原もフッった方なんだけど。」
「もったいないよなあ・・・せっかく良い女紹介してやったのに。」
「まあ確かに良い女だったけど、でも金使いが荒すぎだよ。誕生日にブランド物の靴とバッグと服を同時にねだられちゃ敵わねえって。別れて当然だろ。」
「悲しいねえ、金の無い男ってのは。」
「あの頃はまだ大学生だっての。そんな金あるわけないだろ。」
高司は不満そうに言い、ズズッと酸っぱいコーヒーをすすった。
すると杉原が「でも罰がなきゃ勝負になんねえ。だから占ってもらえよ」と説得した。
「だから嫌だって。」
「でも猫を見る目には自信があるんだろ?だったら負けないだろ。」
「でもなあ・・・・、」
「まあそう言わずにさ。新しい彼女が出来たんだから、二人の相性を占ってもらっても損はねえだろ。」
そう言ってポンと肩を叩く杉原。高司は「う〜ん・・・・」と腕組みをした。
「おい、今のなんだ?新しい彼女って。」
身を乗り出して尋ねると、杉原が「言ってなかったっけ?」と首を傾げた。
「なんも聞いてねえよ。詳しく聞かせろ。」
「こいつ一か月前に彼女が出来たんだよ。しかもめちゃ可愛いの。」
「マジで!?なんで俺に最初に報告しないんだよ?」
ちょっと怒りながら尋ねると、高司は「なんで最初にお前に報告しなきゃいけないんだよ」と顔をしかめた。
「だって俺はお前らの兄貴みたいなもんだろ?だったら最初に言ってもらわないと。」
「誰が兄貴だよ。手のかかる弟みたいなクセしやがって。」
「いいから詳しく聞かせろよ。」
そう言ってさらに身を乗り出すと、「おっとそこまで」と杉原が止めた。
「これ以上聞きたいなら、あの猫を占ってもらおうか。」
「はあ?だからなんで獣を占なわなきゃいけないんだよ。」
「占う理由ならあるだろ。もし高司が負けたら、お前の所で占ってもらわなきゃいけないんだから。仕事に繋がるぞ。」
「人をインチキ呼ばわりする奴を奴を占う気はない。」
「でも高司の彼女のことを聞きたいんだろ。」
「当然。そういうのはまず俺に報告してもらわないと。」
「いいか?もし高司がお前の所に占いに来たら、彼女のことを話さなきゃいけないんだ。・・・ていうか、彼女本人を連れて行かなきゃいけない。」
「はあ?」
高司が叫び、「ふざけんなよ」と怒った。
「インチキ占い師の所に彼女を連れていくわけないだろ。」
「いいや、連れて行かなきゃいけないんだ。だってそうしないと、ちゃんと二人の相性を見てもらえないから。」
「いやいやいや・・・だからいいってそういうのは。そもそも占い自体が好きじゃないし。」
「でもこれは勝負だから。そしてお前はその勝負に乗っただろ?」
「最初からこんな条件なら乗ってねえよ。」
「でも猫を見る目には自信があるんだろ?」
「それは・・・まあ・・・・、」
「なら負けるはずねえじゃん。この勝負・・・・受けてもらうぞ。」
杉原の説得はいつだって強引で、高司は舌打ちしながらコーヒーをすすった。
「んな怒んなよ。どうせ暇なんだし、何か面白いことしないと。」
そう言って笑い、今度は俺の方に目を向けた。
「というわけで、高司はやる気満々だ。」
「どこがだよ?無理矢理じゃねえか。」
「そんな事ない。こいつは勝負したがってる。そして俺も勝負したがってる。だから後はお前次第だ。」
「知らねえよ、お前らの勝負なんか。」
「じゃあ高司の彼女を見たくないの?こいつらの相性をその目で判断したいとか思わない?」
「それは・・・・思うけどさ。ていうか、そういうのはまず俺に報告してもらわないと。」
「だろ?だったらやろうぜ。ちゃっちゃとあの猫を占ってくれよ。」
杉原はまた憎たらしい顔で笑う。
《こいつただ楽しんでるだけだな。でも高司の彼女には会ってみたいし・・・・。》
俺はしばらく迷ったが、「いいぞ」と頷いた。
「でもさ、俺があの猫の歳を当てたとして、誰がそれを証明するんだよ?」
「ああ、それは大丈夫。だってあの猫、コンビニの近所の家の猫だから。」
「そうなの?」
「だと思う。」
「思うだけかよ・・・・違ってたらどうすんだ?」
「大丈夫だって。その家から出て来るのを見たことがあるんだから。」
「たまたま庭に忍び込んでただけじゃねえの?」
「そんなことない。きっとあの家の猫だ。」
「強引にも程があるだろお前・・・・。」
顔をしかめながら言い返すと、「大丈夫だって、心配すんな」と何の根拠もない断言をした。
「猫の歳は、その家の飼い主に聞けば分かるよ。」
「聞くって・・・・いきなり猫の歳なんか聞きに行ったら、不審者扱いされるだけだろ。」
「大丈夫、俺が聞きに行ってやるから。」
こいつは何としても俺に猫を占わせるつもりだ。いくら言っても引きそうにないし、ここはやっぱりやるしかない。
「・・・・分かった。じゃあ占ってやるよ。」
タバコを灰皿に押し付け、コーヒーを一口飲む。
猫の年齢を当てるなんて初めてのことだけど、乗っかってしまった以上はしょうがない。
ここでビシっと当てれば、高司も俺も見直すだろうし、何より最近の汚名を挽回出来そうな気がした。
《変人どものせいで、最近はちょっとへこんでたからな。これを当てれば自信が戻るかも。》
水で口直しをして、気を引き締める。
コンビニの方を見ると、店員がまだ餌をやっていた。
遠くて顔が分かりづらく、「ちょっと傍まで行ってくるわ」と席を立つ。
ドアへ向かう俺に、「まあ頑張って」と杉原の笑い声が響いた。


             *


人の年齢が顔に出るように、獣だって年齢が顔に出る。
コンビニの前まで来た俺は、しゃがんで猫を覗いていた。
いきなり近づくと逃げるもんだから、わざわざコンビニで餌まで買った。
そいつでおびき寄せてから、まじまじとその表情を窺っていた。
「こいつ若くはないな。なんかこう・・・初々しさがないもん。」
猫といえども、顔にはそれなりの表情がある。
だからじっと観察すれば、若いかどうかくらいは分かる。
だけど高齢者かどうかまでは分からず、どうしたもんかと悩んだ。
「なあ、お前何歳?もう年寄りになってんの?」
手を伸ばして頭を撫でる。ビクッと警戒したが、餌に夢中でそこまで気にしないようだ。
「猫の歳なんか分かんねえよ。俺、ムツゴロウさんじゃねえし。」
占い師になってまだ二年だけど、よもや猫を占うことになるなんて思わなかった。
まあ俺の占いは、手相でもタロットでもなく、相手の表情や言動から内面を読み取るって方法だから、やり様によっては猫に通用しないわけでもないと思う。
だけどいくらこの優れた観察力をもってしても、俺には猫の知識がない。
知識がないなら、いくら観察しても答えなんて出ない。
「どうしたもんかね、これ。猫に詳しい奴なら分かるんだろうけど・・・・、」
半分諦めながら、チラリと喫茶店の方を見る。
杉原も高司も、見張るように俺を睨んでいた。
「あいつら・・・俺がズルしないか見てやがる。」
この猫のことを詳しく知るには、さっき餌をやっていた店員に聞くのが一番だ。
ああいうのは猫好きのやることだから、きっと猫にも詳しいだろう。
それにこの猫がよくここへ来るのなら、もしかしたら年齢だって知ってるかもしれない。
店の中を見ると、さっきの店員が品出しをしていた。
化粧っ気の少ない地味な感じだけど、顔はまあ可愛い。
細身のジーンズがよく似合うほどスタイルもいいし、それに制服の上からでも分かるほども胸も大きい。
髪はシンプルに後ろで括っていて、このご時世に黒髪というのもポイントが高い。
「けっこう可愛いな。でも雰囲気からして彼氏はいない。それに見た目ほど若くはないだろうな。パッと見は22か23くらいに見えるけど、多分もう30手前だ。」
俺の女を見る目は確かで、年齢、彼氏の有無、既婚者かどうかはもちろんのこと、処女かどうか、それに思考や主義、人格までかなりの確率で当てられる。
品出しをしている可愛い女は、歳は28か29。彼氏はいないが結婚歴あり。しかし既婚者の雰囲気ではないので、おそらくバツイチだろう。
子供は・・・・多分いない。母親には特有の空気があるけど、それも感じさせない。
表面上は大人しそうに見えるけど、実はかなり気が強いタイプと見た。
攻撃的な性格ではないだろうけど、でも一本芯が通ってるというか、自分が信じることは絶対に曲げない性格だ。
しかも男を見る目はかなり厳しいだろうし、女に対してもそれなりに厳しい目を持ってる。
だけど何より、自分に対して一番厳しいタイプに思えた。
《可愛いしスタイルもいいけど、ああいうのは地雷の一種だ。なんつうか・・・・自分なりの正義感を持ってて、それを絶対に正しいと信じ込んでるタイプだな。》
正義感が強いと言えば聞こえはいいけど、自分こそ正義と思ってる奴は、とにかく鬱陶しいだけだ。
それは男女関係なく鬱陶しいし、過去に付き合った女にそういう奴がいた。
《ああいうのって最初はいいんだけど、付き合ううちにだんだん面倒臭くなるんだよな・・・。ありゃきっと旦那から鬱陶しがられて、別れを切り出されたと見た。》
そんなことを考えながら女を観察していると、ポケットのスマホが鳴った。
「もしもし?」
『おい、女観察してどうすんだよ?猫を占え、猫を。』
杉原が笑い交じりに言ってくる。
「今占ってる最中なんだよ。」
『嘘つけ。ずっと女ばっか見てんじゃねえか。』
「そういう仕事だから。ついクセが出ちゃうんだよ。」
『どういう仕事だよ。占い師だろうがお前は。』
「占いなんてほとんど女しか来ないんだよ。だから女を見るのが仕事みたいなもんなの。」
『まあ屁理屈はともかく、その猫の歳は分かったのか?』
「いや、全然。」
『んだよ、全然ダメじゃねえか。』
「うるせえな。猫なんか占えるわけねえだろ。」
『言っとくけど、店員に話を聞くのはダメだからな。あくまでお前の力で占えよ。』
「分かってるって。もう切るぞ。」
『あと5分だけな。それが過ぎたらここ全部お前の奢りってことで。それと高司の彼女もなし。』
「奢るのはいいけど、高司の彼女のことは絶対に聞くからな。」
そう言って電話を切り、猫を振り返った。
「お前まだ食ってんのかよ?」
猫はほとんど餌を食べ尽くし、空になった缶を舐めている。
「お前飼い猫なんだろ?だったら卑しいことすんなよ。」
そう言って空き缶を奪おうとした。
するといきなり手を引っ掻かれて、「痛ッ!」と引っ込めた。
「おまえ・・・餌もらったクセになんだその態度は!」
引っかかれた手はミミズ腫れのようになっていて、薄っすらと血が滲んでいた。
「だから獣は嫌いなんだよ。ほら、もういいだろ。」
強引に空き缶を奪い取り、ゴミ箱に捨てる。
「もういいや、猫の歳なんか分かんね。」
こんなものを当てたって何の得もない。
高司の彼女に会う方法なんていくらでもあるわけだし、もう喫茶店に戻ることにした。
「とっとと家帰れお前。野良猫に間違われて保健所に連れてかれるぞ。」
猫は食後の手入れをしていて、ペロペロと手を舐めている。
俺は背中を向け、喫茶店の方へ歩き出した。
すると「あの」と声を掛けられ、足を止めた。
「さっき手を引っ掻かれてましたよね?」
餌をやっていた可愛い店員が、絆創膏を片手に近づいて来る。
「これ、よかったら。」
そう言って箱から一枚取り出し、そっと差し出した。

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