VS変人類〜占い師 観月の挑戦〜 第八話 占い師VS占い師

  • 2015.12.12 Saturday
  • 11:41
JUGEMテーマ:自作小説
オカルトだの電波だの、そういうものに染まった人間は恐ろしい。
この前の電波女の一件から一カ月、俺は憂鬱な気持ちのまま仕事を続けていた。
果たして俺は、本当に占い師に向いているのか?
ここ最近は体調も悪いし、これはあの女の呪いのせいなんじゃないのか?
消えない葛藤を抱えながら、目の前を通り過ぎる客を眺める。
すると遅れてやって来た若ハゲのオカルト占い師が、大きなカゴを抱えながら隣に座った。
「どうも。」
笑顔で挨拶して、テーブルに大きなカゴを乗せる。
「なんだそれ?」
「あ、これ?なんだと思う?」
「さあ?」
「君も知ってるもんだよ。」
「はあ?」
「まあ見れば分かるって。」
オカルト占い師はカゴの蓋を開け、中から一匹の獣を取り出した。
「ほら、知ってるでしょ、この子。」
「・・・・・・・・・・。」
それを見た瞬間、俺は血の気が引いた。
オカルト占い師が取り出したのは、一匹の真っ黒な猫だったのだ。
「ん?どうしたの?なんかビビってるけど・・・・、」
「・・・・・・・・・・。」
「これさ、僕の飼ってる猫なんだけど、今から一カ月前に事故に遭ったんだよね。」
「・・・・・・・・・・。」
「幸い優しい人が病院へ連れて行ってくれて、どうにか一命を取り留めたんだ。でも酷い重体だったから、ほんとに危なかった。
獣医さんが言ってたよ、あとちょっとでも連れて来るのが遅かったら、多分助からなかっただろうって。」
そう言って膝の上に乗せ、「でもどうにか助かったんだ。よかったねえ」と頭を撫でている。
「治るまで時間がかかったよ。今でもまだ歩き方が変でさ、完治するにはもう少しかかるみたい。」
「そ・・・そうなんだ。」
「顔なんか酷かったよ。でも幸い脳は無事だったから、死なずにすんだんだ。」
「それは・・・・ラッキーだったな。」
「撥ねた車はそのまま逃げちゃってさ。だから今捜してるところなんだ、僕の力を使ってね。」
「へ・・・へえ。霊能力で?」
「まあそんなところ。」
オカルト占い師は猫を抱えたまま、「今日はずっと一緒にいようね」と頬ずりをする。
そしておもむろに俺の方を見て、威圧的に尋ねた。
「君、この子に見覚えあるでしょ?」
「・・・・・・さあ?」
「嘘ついたらダメだよ。だって太良池さんから聞いたんだから。」
「太良池・・・・・。」
聞きたくない名前が出てきて、思わず息を飲む。
《もしかして、あの電波女が言ってた知り合いの占い師ってコイツのことだったのか?・・・・ていうか、その猫の飼い主はお前だったのかよ・・・・。》
沈んだ表情で考えていると、オカルト占い師はニヤニヤと笑った。
「君さ、ここ一月ほど顔色が悪かったよね?まるで何かを思いつめたみたいに。」
「いや・・・・・、」
「それって太良池さんのことを気にしてたんでしょ?彼女に呪われるんじゃないかって。」
「は?何わけの分かんねえこと言ってんだよ・・・・。」
そう答えると、「そういうの信じないんじゃなかったの?」と言って、「ねえマルちゃん」とキスをした。
「この子ね、すっごく人懐っこい子で、誰にでもついて行くクセがあるんだよね。だから外に出さないように注意してたんだけど、たま〜に隙を見て脱走しちゃうんだ。」
「・・・・・へえ。」
「一か月前にも脱走してさ、でもだいたいどこへ行ったかは想像がついてた。僕の友達がバイトしてるコンビニだよ。」
「・・・・・そう。」
「そこには猫好きの女の人がいて、いつも餌をくれるんだよ。」
「・・・・・ふうん。」
「その子、太良池さんっていうんだけど、すっごく優しい子でさ。僕とも仲が良いし、マルちゃんのことも可愛がってくれるんだ。」
「・・・・・へえ。」
「でね、一カ月ほど前に太良池さんの店に一人の男がやって来た。そいつは自称占い師で、態度も言葉遣いも悪かったんだって。」
「・・・・はあ。」
「そいつはマルちゃんに引っ掻かれて怪我をした。でも優しい太良池さんは、そいつに絆創膏を貼ってあげたんだ。
しかもズボンについたマルちゃんの毛まで取ってあげたのに、全然感謝しないんだよ。」
「・・・・・ふうん。」
「しかも!その後マルちゃんのことを蹴飛ばしたんだ。もう最悪でしょ?」
オカルト占い師は、まるで鬼の首でも取ったかのように責めてくる。
俺は言い返そうとしたが、あえて最後まで聞くことにした。
「それで・・・・?」
「その後さ、男は太良池さんに散々失礼なこと言ったんだ。しかも占い師のくせに、マルちゃんが撥ねられることも予測できなかった。」
「・・・・・ほう。」
「でもまあそれは仕方ないんだよ。だってそいつ、占い師のくせに、ロクな占いが出来ないんだもん。霊能力はもちろんのこと、手相もタロットも出来ない。
四柱推命も姓名判断も出来ないし、得意技といえばベラベラ屁理屈並べることだけ。」
「・・・・・ならあんたは出来るの?霊力以外の占いが。」
睨みながら尋ねると、「当たり前だろ」と返された。
「手相やタロットは、占い師として基本中の基本だよ。出来ない方がおかしい。」
「そんなことないだろ。みんなが手相やタロットやってるわけじゃない。」
「まあそうだけど・・・、」
「じゃあみんが出来て当たり前って嘘じゃねえか。出来ない奴もいるんだろ?」
「でも大抵は出来るもんだよ。」
「ほんとかよ・・・・・。」
「少なくともどっかの誰かさんみたいに、屁理屈並べるだけってことはないね。全部は無理でも、最低何らかの技術は身に着けてるよ。まあ僕は全部出来るけど。」
勝ち誇ったように言いながら、「それでさ・・・・、」と切り出す。
「あんまりグチグチ責め立てても悪いから、もう本題を言うね。」
急に真剣な口調になり、俺は少し身構えた。
オカルト占い師は目の前の靴屋に目を向けながら、「君さ、ここから出て行ってくれないかな?」と言った。
「え?出て行けだって・・・・?」
「正直さ、君が来てからここの空気が悪いんだよね。」
「はあ?」
その言葉にカチンと来て、思わずガンを飛ばした。
するとオカルト占い師は「僕の隣を見てよ」と、俺の反対側に目を向けた。
そこには三つのテーブルが並んでいて、それぞれのテーブルに占い師がいる。
オカルト占い師の隣から、オバハン、オバハン、そして若い女だ。
誰もが目の前の客に向き合って、手相だのタロットだのを使って占っている。
客は真剣に話を聴いていて、時折驚いたように頷いていた。
「みんな口には出さないけど、君のことはよく思ってないよ。」
「・・・・・だから何だよ?」
「あれ?分からない?」
「はっきり言えハゲ。」
そう答えると、「ほら、それ」と指をさされた。
「君さ、口が悪すぎるんだよ。まずそれが空気を悪くしてる。」
「生まれつきだから仕方ねえだろ。」
「へえ、そうなんだ。君って生まれつき口が悪いからって、仕事中までそんな口の利き方するんだね?」
「お前にだけだろ。客にはしてない。」
「そうかな?口には出してなくても、心の中じゃ酷いこと言ってるでしょ。」
「それはお前の勝手な想像だろ。」
「いいや、見てれば分かる。」
「偉そうに言うな。お前は心の内が読めんのかよ?」
「読まなくても分かるよ。だって君、内面がけっこう表に出てるからさ。きっと胸の中で悪態ついてるんだろうなあって分かる。」
そう言って「例えばさ、ファミレスなんかでも愛想の悪い店員っているじゃない?」と続けた。
「本人はちゃんとしてるつもりなんだろうけど、明らかに不機嫌な店員とかさ。あれって絶対に接客業に向いてないと思うんだよね。」
「なんだよ?俺がそういう奴らと同じって言いたいのか?」
「そうだよ。上手く隠してるつもりだろうけど、でも態度の悪さが滲み出てる。だから君の所に来る客って、変わった人ばっかりじゃん。まともな人はほとんど来ないでしょ?」
「そもそもまともなら占いなんて来ねえだろ。」
荒い口調で言い返すと、「ほらそれも」と指をさされた。
「それってお客さんを見下してるってことだよ。愛想の悪い店員と何も変わらない。」
「だってそうじゃんか。まともな人間なら占いなんて来ないだろ。」
「あのね、まともかどうかは問題じゃなくて、客商売として正しい仕事をしてるかどうかなんだよ。」
「はあ?なんだ偉そうに・・・・・、」
「占い師って言ったって、結局はお客さん相手の商売なんだよ。だから絶対に見下すようなこと言っちゃダメ。そんなの仕事の基本だろ。」
「知ってるよそんなこと。」
「知ってるならそういうこと言うなよ。」
オカルト占い師は「でもまあ・・・・それだけならまだ許せる」と顔をしかめた。
「一番いけないのは、大した実力もないクセに、自分が凄いみたいに勘違いしてるところだよ。」
「・・・・お前、さっきから喧嘩売ってんのか?」
思わず胸倉を掴みそうになるが、グッと堪えた。
「あのな、俺はこれでも真面目に仕事してんだ。それ以上ぬかすなら表出ろや。」
カッと身体が熱くなってきて、椅子から腰が浮く。
「俺はこの仕事に誇りを持ってる。それを馬鹿にされちゃ許せねえんだよ。」
拳が硬くなり、「俺が気に入らねえんならそう言えよ」と睨んだ。
しかしオカルト占い師は平然とした顔で「喧嘩なんてゴメンだよ」と笑った。
「僕、子供じゃないからね。喧嘩したって一円の得にもならない。」
「じゃあもう喋るな。それ以上ぬかすなら表に引っ張ってくぞ。」
「どうぞお好きに。僕は手を出さない。その代わり警察を呼ぶだけだから。」
そう言ってスマホを取り出し、「110、準備しとこうか?」と笑った。
「てめえから喧嘩売っといて、ヤバくなったら警察頼みかよ。腰抜けだなお前は。」
「コールドリーディング。」
「何?」
「君の使ってる占い、コールドリーディングっていうの。知らない?」
いきなりわけの分からないことを言われて、「なんだそれ?」と眉を寄せた。
「いきなり何を意味不明なこと言ってんだ?」
「いや、知らないならいい。」
「気になるだろ、言えよ。」
「だから君のやってる占いの種類さ。それ、コールドリーディングっていうんだよ。」
「だからそれが何か教えろって・・・・、」
そう言いかけると、オカルト占い師はおもむろに目の前を指さした。
「あの靴屋さんに、若い男の客がいるね?」
「それがどうしたよ?」
「さっきからチラチラ見てたんだけど、あの子靴盗むね。」
「はあ?」
「まあいいから見てなって。」
自信満々そう言って、腕組みをしながら見つめている。
《なんだよコイツ・・・なんでこんなに調子乗ってんだ。》
イライラを抑えながら、靴屋の若い男に目をやる。
歳は10代の後半くらいで、おそらく高校生か、大学の一回生といったところだろう。
スポーツシューズを持ちながら、店の中をウロウロしていた。
そして店の奥へ行ってしまい、姿が見えなくなった。
・・・・しばらくすると、若い男は袋に入った商品を抱えて出て来た。
それを見た俺は、「おい、予想が外れたな」と笑った。
「何が盗むだよ。ちゃんと買ってるじゃねえか。」
馬鹿にしたように言うと、オカルト占い師は店に向かって手を挙げた。
店員がそれに気づき、店の奥へと走って行く。
すると俺と同い年くらいの男が出て来て、キョロキョロと辺りを見渡した。
「あれ、あの靴屋の店長じゃんか。」
「そうだよ。」
オカルト占い師はニヤリと笑い、さっき靴を買って行った若い男を指さした。
すると店長はその男を追いかけ、「ちょっといいですか?」と呼び止めた。
若い男は「あ?」と睨むが、店長は笑顔で何かを話しかけている。
そして袋に入った商品を指さしながら、何かを問い詰めていた。
若い男は「言いがかりつけんな!」と怒りだすが、店長は笑顔を崩さない。
そしてオカルト占い師の方に指を向けて、こう言った。
「目撃者がいるんだよ。」
それを聞いた若い男は、一気にトーンダウンする。
しかしまだ「言いがかりだ!」と怒っていて、店長と言い争いを始めた。
「なんだ?何やってんだよあいつら・・・・?」
二人の様子を見つめていると、やがて店長がこう一言。
「警察行こうか?」
それを聞いた若い男はさらにトーンダウンして、急に大人しくなった。
店長は袋に入った商品を預かり、若者を店まで連れて行く。
野次馬たちがそれを見ていて、ガヤガヤと騒ぎ立てていた。
「なんだ?もしかして万引きしてたのか?」
そう呟くと、「だから言ったでしょ」とオカルト占い師が答えた。
「あの子靴を盗んだんだよ。」
「いや、でもちゃんと袋に・・・・・、」
「あれは事前に用意していた物。店員に見えない場所に隠れて、その中に商品を隠したんだよ。」
「なんで分かるんだよ?」
「だって見てたから、あの子の行動とか表情を。」
「はあ?盗む現場は見てねえじゃんか。」
「盗みを働く前の行動を見てたのさ。それで怪しいと思ったわけ。」
「おいおい、そんなんで犯人って決めつけるのか?」
「違うよ、あくまで疑いを持っただけ。万引き犯かどうかは証拠が必要でしょ?」
「じゃあどこにその証拠があるんだよ?」
「それは今店長がやってるよ。あの店はPOSレジが入ってるから、在庫の状況は一発で分かる。
レジに履歴だって残るから、あの子の持ってた商品がレジを通ったかどうかもすぐに分かる。」
「じゃあもしちゃんと買った商品だったら?」
「その時は店長が頭下げるしかないね。」
「いや、お前があの男を万引き犯みたいに言ったんだろ?ならお前のせいじゃんか。」
「僕は何も言ってないよ。ただ店員に手を挙げて、あの子の方を指さしただけ。」
「それは・・・まあそうだけど・・・・、」
「まあすぐに分かるよ。もうじき出て来るんじゃないかな?」
俺たちはしばらく靴屋を見ていた。
すると二人組の警官がやって来て、店の中へと消えていった。
少し待っていると、さっきの若い男が警官に連れられて出て来た。
店長はそれを見送ってから、こちらに向かって歩いて来た。
「どうも毎回すみません。」
そう言ってオカルト占い師に頭を下げる。
「いや、たまたま見つけだけだからさ。で、あの子は認めたの?」
「ええ、在庫数えたら数が合わなかったんです。それにレジを通った記録もないし。」
「でもそれを突きつけても認めなかったでしょ?」
「そうなんですよ。これは別の店で買ったもんだって言い張って。」
「ははは、子供らしい言い訳だよね。」
「そんなもんが通用するわけないですよ。だってウチの店の袋に入ってるんですから。しかも中にあるのは一足だけ。その一足分の在庫が合わず、レジを通った記録もない。
こんなもん言い逃れ出来ませんよ。」
「でも認めなかったでしょ?」
「ええ、頑なに。」
「そりゃそうだよ。だってあの子初犯じゃないと思うからね。きっと今までにも捕まったことがあるんじゃないかな。」
「まあ手口が巧妙ですからね。佐々木さんが教えてくれなかったら絶対に気づかなかったし。」
「キョロキョロと店員の様子を窺ってたからね。しかも慣れた様子で。あれは絶対に初犯じゃないよ。」
「まあ後は警察にお任せします。こっちとしては商品さえ戻ってくればそれでいんで。」
店長はそう言って「おかげで助かりました。また何か気づいたら教えて下さい」と、会釈を残して戻って行った。
「・・・・というわけ。どう?」
オカルト占い師は肩を竦め、勝ち誇ったように笑った。


 

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