VS変人類〜占い師 観月の挑戦〜 第十話 占い師VS占い師(3)

  • 2015.12.14 Monday
  • 13:10
JUGEMテーマ:自作小説
オカルト占い師は椅子にふんぞり返り、真剣な顔で笑っている。
その挑発的な態度に苛立ったが、でも今は怒っている時じゃない。
ここでこいつの嘘を見抜かないと、俺は占い師として終わるかもしれないのだから。
《嘘・・・・この若ハゲの嘘・・・・。そんなもんどうやって見抜けってんだよ?こいつになんか興味ないから、ぜんぜん会話とか覚えてねえし・・・・。》
俺は困り果てた。しかし困ってるだけではチャンスを失う。
だから占い師を続ける為に、恥を忍んで頭を下げた。
「頼む!なんかヒントくれ!」
膝に手をつき、深く頭を下げる。
よもやこの若ハゲに頭を下げる日が来るなんて思わなかったが、最近は「よもや」ばかりなので、もう気にしていられない。
この先も占い師を続ける為なら、一瞬の恥なんていくらでもかいてやる!
・・・・じっと頭を下げ続けていると、オカルト占い師は「仕方ないなあ」と根負けした。
「いいよ、なら一つだけヒント。」
「お願いします!」
「全部今までの会話にヒントが隠されてる。」
「それ・・・・ヒントって言うのか?」
「君がちゃんと僕との会話を覚えていれば、見抜くことが出来るはずだよ。」
「・・・・・・覚えてねえ。」
「ほら、それ。君は女の人以外はほんっとに見ようとしないからね。でも男もちゃんと見ていれば、見抜けるはずなんだよ。
だってまがりなりにも、二年もこの道で飯を食ってきたんだから。だからちゃん集中さえすれば見抜けるはずだよ。」
そう言って「これ以上は何も教えないからね」と黙り込んだ。
「会話・・・・今までの会話にヒント・・・・・、」
ブツブツ言いながら、頭を抱え込む。
目を見開き、オカルト占い師との会話を思い出した。
《ほんのついさっきの会話だ。思い出せないはずがない。どうにか記憶を引っ張り出すキッカケさえ掴めれば・・・・・、》
うんうんと悩みながら、チラリとオカルト占い師の方を見る。
するとあの猫が目に入って、電波女のことを思い出した。
《ええっと・・・・確かこいつとの会話の始まりは、この猫だったはずだ。そこからあの電波女に話題が変わって、その後に靴屋の万引きがあった。
そんでこのビルの取り壊しの話になって・・・・・・、》
猫を睨みながら考えていると、ふとあることに気づいた。
《この猫の飼い主がこのオカルト野郎。そんであの電波女の友達・・・・・。なんかそこにヒントがあるような・・・・・、》
記憶を手繰り寄せ、どうに会話の内容を思い出す。
するとわずかに「ん?」と思うことがあった。
それはとても小さな違和感だけど、でもどうしても心に引っかかった。
この違和感の正体を探る為、俺はさらに記憶を手繰り寄せた。
《靴屋で万引きがあった後、ちょっとだけ『あれ?』って思うことがあったんだよな・・・・。大して気にしなかったけど、さっきの違和感と繋がるかも・・・・、》
眉間に深い皺を寄せて、じっとテーブルを睨み付ける。
集中すればするほど周りの音が聴こえなくなり、その代わりに鮮明に記憶が蘇ってきた。
《コールド何とかの話は・・・・・まあどうでもいい。これは説教みたいなもんだからな。大事なのはその次だ。
このビルが取り壊されるのはビックリだけど、でもそんなの俺は全然知らなかった。いや、俺だけじゃなくて、このビルで商売してる人達は誰も知らない。
知ってるのはただ一人、このオカルト占い師だけ。それはビルのオーナーから直接教えられたから・・・・。
これってよくよく考えると、すごいコネだよな。公式に発表してないことを教えてもらえるなんて、よっぽど深い付き合いがないと無理だ。》
そう考えながら、ざっとビルの中を見渡した。
《建って50年か・・・・確かにボロイ感じがするよな。いちおう客は入ってるけど、でもこのままじゃどんどん駅前の綺麗なビルに客を取られていくだけだ。
ここを最初に建てたオーナーは、いつかこういう日が来るって思ってたんかな?もう亡くなってるらしいけど、きっとここを建てた時は、潰れることなんて考えてなかっただろうな。
今はボロイって言っても、当時としては立派なビルだったんだろうし。》
このビル、そして初代のオーナーの気持ちを想像していると、また違和感があった。
それは先ほど感じた違和感に繋がるもので、《これってやっぱり・・・・、》と、ある一つの疑いが浮かんだ。
《このオカルト占い師は、一つだけ嘘をついてる。でもその嘘は、何も今日の会話の中でついた嘘じゃないはずだ。
『今までに一つだけ』って言ってたから、この二年の間についた嘘なんだ。
でもこいつとは大したことは話してないし、ほとんど嫌味の言い合いばっかりだった。
だけど・・・・つい最近、嫌味以外のことも話した。そう・・・・あれは銀鷹君が来た次の日、こいつと俺で、あることを見抜き合ったんだ。
こいつはピッタリそれを当てやがったけど、俺は間違えた。だから嘘をついてるとしたら、その部分しかない。》
もう一度猫に目を向け、じっと見つめる。
くあっと欠伸をしながら、オカルト占い師の膝で丸まった。
《こいつがついた嘘は分かった。でもその嘘を突きつけたら、今度は根拠を求められるはずだ。いったいどうしてそれが嘘だと思うのか?それを説明しろって言ってくるに決まってる。》
今までに掘り起こした記憶を整理しながら、根拠を求められた際の反論を考える。
そしてゆっくりとオカルト占い師に視線を向け、むっつりと黙り込んだその顔を睨んでやった。
「あんたのついた嘘って、年齢のことだろ?」
そう尋ねると、「どうしてそう思うの?」と返してきた。
「今までの会話の中で、何個か違和感があったから。」
「どんな?」
「まずあんたは、電波女のことを『その子』とか『優しい子』って呼んでた。でもこれはおかしい。」
「どうして?仲がいいからそう呼んだだけだよ。」
「いや違う。『子』って呼び方は、自分より年下に対して使う呼び方だ。でもあの女はあんたより年上だろ?」
「なんでそんなこと君に分かるのさ?太良池さんは自分の歳なんか教えてないはずだろ?」
「教えられなくても分かるよ。だって俺は、女を見抜く目はだけは自信があるからな。特に年齢と彼氏の有無、それに既婚者かどうかはすぐに分かる。」
「君の得意なコールドリーディングだね。女性を見る目に関しては凄いと思うよ。」
「そこはあんたも認めるところだから、説明はいらないよな?」
「うん、二年間隣で見てたからね。」
「なら続けるけど、あの電波女は28か29で間違いない。でもってあんたは、この前に25って答えたよな?」
「見た目より若いだろ?」
そう言って笑うが、俺は真面目な顔で睨み付けた。オカルト占い師は笑みを消し、「どうぞ」と先を続けるように促した。
「25のあんたが、年上の女に向かって『子』を付けて呼ぶのは、ちょっと違和感がある。
絶対に無い事とは言えないけど、でもどうしても引っかかるんだよ。」
「どうして?あり得ない事じゃないなら、違和感を覚える必要なんてないはずだろ?」
「そうだな。でもあの電波女は、異常なまでに礼儀とか常識とかにこだわりを持ってると思うんだよ。
相手のことなんかお構いなしに、自分が正しいと思ったことをやる。そんな病的なほど真面目に憑りつかれた奴が、年下に『子』を付けて呼ばれるのを許すとは思えない。」
「本人にそんな呼び方はしないよ。」
「分かってるよ。でもそういう呼び方をするってことは、自分より下に見てるってことだ。だったらあの電波女と接する時だって、年下を扱うような感じで話してるんだと思う。
それをあの電波が許すとは思えないってことだよ。」
一息にそう答えると、オカルト占い師は「なるほど」と笑った。
「まあ理屈は通ってるかもね。でもそれだけじゃ弱いよ。」
「分かってるよ、だから他にも違和感を覚えた部分があるんだ。」
そう言って乾いた唇を舐め、気持ちを落ち着かせた。
「次に違和感を覚えたのは、靴屋の店長だ。」
「店長?へえ、どこに違和感を覚えたの?」
「万引き犯を警察に引き渡したあと、店長はあんたの所へ礼を言いに来たよな?」
「律儀だよね、良い店長だよ。」
「あの時店長はこう言ってたんだ。『どうも毎回すみません』って。これってさ、あんたはちょくちょく万引き犯を見つけてるってことだよな?」
「まあそうなるね。」
「だけど俺がここへ来て二年の間に、あんたが万引き犯を見つけた所を見たことがない。なら『毎回すみません』って言い方に違和感を覚えたんだよ。」
「君が休んでる時に見つけてるんだ。おかしな事じゃない。」
「俺が休むのは、基本的に木曜だけだ。たま〜にサボったりする日もあるけど、でも週に何回も休んでるわけじゃない。
だったら数少ない休日の時に限って、あんたが万引き犯を見つけてるとは考えにくい。」
「でも実際にあの店長は『毎回すみません』って礼を言ったんだよ?なら君が休みの日に万引き犯を見つけてるっいうのが、一番筋が通るんじゃないの?」
「いいや、違う。」
「どう違うのさ?」
「さっき見つけた万引き犯は、俺がここへ来て二年の間に、初めて見つけたやつなんだよ。」
「なら『毎回』っておかしいじゃない。」
「そう、おかしいんだよ。でもこう考えると筋が通る。あんたは相当昔から占い師を続けてる。それも4年や5年じゃない。
きっと何十年も続けてるんだ。そんでその間にたくさんの万引き犯を見つけてきた。だからあの店長は『毎回』って言ったんだよ。」
「いや、その理屈こそおかしい。だって僕は25なのに・・・・・、」
「だからそれが嘘だって言ってんだろ。あんたは25なんかじゃない。もっと年上だよ。」
そう言って靴屋に目を向け、「多分さっきの店長だって・・・」と続けた。
「あの人、一見若く見えるけど、でも見た目より歳食ってると思う。」
「どうしてそう思うの?」
「だって万引き犯を見つけた時の対処が、あまりに冷静だったから。いくら店長だろうと、若い奴ならあそこまで落ち着いて対応できるとは思えない。
だからけっこうなキャリアがあるんだよ。きっと実際の年齢は40とかその辺だと思う。」
「それ君の予想でしょ?」
「そうだよ。でも占いなんてそんなもんだろ。物的証拠がなきゃ成り立たないっていうなら、俺たち占い師は飯の食い上げじゃねえか。」
そう答えると、オカルト占い師は「確かに」と笑った。
「でもまだそれだけじゃ弱い。確かに僕たち占い師の仕事に、物的証拠は必要ない。でも逆に言えば、物的証拠なんて必要ないと思わせるくらいの理屈が必要なんだよ。
その理屈が正しいかどうかはさておき、相手を納得させる力がなきゃいけない。」
「それも分かってる。だから・・・もう一個あるんだよ、違和感が。」
「ならそれが最後だね?」
「ああ、これが最後。」
「その違和感を説明する理屈が弱かったら、僕は納得しないだろう。これがどういう意味か分かるよね?」
「あんたは俺の突きつけた嘘を認めない。だから俺の負けになる。」
「ならこれが本当に最後だ。君の得意の屁理屈で、僕を納得させてみてよ。」
オカルト占い師は余裕の笑みでふんぞり返る。
俺は目を逸らし、テーブルの上に視線を落とした。
《ようやくこの勝負の意味が分かってきた。これはオカルト占い師が、本当に嘘をついているかどうかはどうでもいいんだ。
大事なのは、その嘘が本当の嘘であると思わせるくらいの理屈を聞かせること。そしてその理屈でこいつを納得させなきゃいけない。
要するにこれは、俺を新しいビルへ連れて行くかどうかの試験みたいなもんだ。》
オカルト占い師が、何を意図してこんな勝負をしかけてきたのかは分かった。
そしてそれが見えてくると、今の自分に何が求められているのかも分かるような気がした。
《もしここで躓くようなら、俺に占い師としての未来はない。俺は手相もタロットも出来ないから、このコールド何とかに頼るしかないんだ。
だから何としてもこいつを納得させる理屈を披露しないといけない。・・・・瀬戸際の勝負だ。》
杉原や高司が言うように、もしかしたら俺の占いはただの屁理屈なのかもしれない。
しかし占いが人生相談であるという考えは、今でも変わらない。
だったら重要なのは、当たっているかどうかではなく、相手を納得させられるかどうかだ。
一番最後に感じたこの違和感・・・・これをいかに理屈として形にするかに全てが懸っている。
テーブルに視線を落としたまま、幾つもの理屈を組み立てていく。
自分の言葉、相手の反論、その反論に対しての切り返し・・・・・。
周りの音が聴こえなくなるほど、理屈の海に没頭していった。

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM