グレイヴ&リーパー〜墓場の王〜 第六十六話 共闘宣言(2)

  • 2016.04.05 Tuesday
  • 10:42
JUGEMテーマ:自作小説
『緑川。』
名前を呼ぶと、緑川はヒクヒクと触覚を動かした。
『何をしてる?』
『展示物を見てる。』
『見りゃ分かる。それは・・・・UFOの破片と書いてあるな?』
台に置かれたプレートを見てそう尋ねる。
『ここは自治体が運営してるはずだ。UFOの破片だなんてオカルト臭いもんをよく置いてるな。』
『いや、これは本物の破片だよ。』
『まさか「墓場の王」の一部だなんて言わないよな?』
『さすがにそれはないけどさ・・・・でもこのUFOの持ち主を知ってるよ。』
『ほう、それは誰だ?』
『フラッドウッズモンスター。』
『フラッド・・・・・・・ああ、あの丸い顔をした奴か。』
『俺さ・・・・あいつに利己主義者って言われたよ。』
『当たってるじゃないか。お前ほど自分の事しか考えてない奴はいないぞ。』
『でもってさ、俺は社会の寄生虫みたいに言われた。』
『俺に言わせれば寄生虫以下だな。お前は疫病を振り撒く病原菌と一緒だ。』
『そっちの方がいいよ。寄生虫ってのはさすがにな・・・・腹が立つから。』
そう言って破片を床に落とし、思い切り踏みつけた。
しかしビクともせず、硬い音が響くだけだった。
『さすがは本物のUFO。めちゃくちゃ硬い。骨切り刀でもないと斬れないな。』
『こいつでもいけるかもしれないぞ?』
『ああ、肉挽き刀。まあ出来るかもね。』
興味も無さそうに言って、その破片を蹴り飛ばす。
それは窓ガラスを割って、外の芝生へと落ちていった。
『緑川。』
『ん?』
『ここへ来た目的はなんだ?俺はてっきり亀池山に向かったと思ってた。』
『ならそっちへ行けば良かったじゃん。お前こそどうしてここにいんの?』
『さあな。気がつけばここへ来ていた。』
『どうせ「こっち」の端っこへ行ったんだろ?』
『そうだ。妙に気になってな。』
『だったら俺と一緒じゃん。』
『お前もここが気になったと?』
『うん、なんか悪い予感がしたんだよね。だから来てみた。』
『悪い予感なのに来てみたのか?』
『俺にとって良くない事があるなら、さっさと潰しとこうと思ってさ。そしたら案の定、この町に妖怪やUMAがわんさか集まってた。しかもなんか俺に恨みを持ってるみたいでさ。』
『お前はペケを殺したからな。妖怪から恨みを買うのは当然だ。』
『妖怪だけじゃなくて、UMAも敵意を持ってる感じだったぞ。』
『妖怪と同盟でも組んだんじゃないか?あいつらにとっちゃ、お前もミノリも敵でしかない。なら共闘して倒そうとしてるんだろう。』
『なるほど・・・・だからここに嫌な予感を感じてたのか。』
『妖怪たちはペケを崇拝してるよ。奴の首をかかげて、士気を高めていた。』
『へえ、化け物でもそういう人間臭いことするんだな。』
『俺も遺体の一部をもらった。』
そう言ってベルトに差した骨を見せると、『それペケの?』と首を傾げた。
『おそらくな。きっと仲間の証なんだろう。』
『仲間?』
『人間と化け物の。』
『なんで?』
『さっきも言ったが、奴らはミノリやお前を倒そうとしてる。だから人間と手を組むことにしたんだろう。』
『ああ、なるほど・・・・俺もミノリも共通の敵だからか?』
『そうだ。』
『ならお前は、また俺を殺しに来たってこと?』
『それ以外にお前を追う理由がない。』
『しつこいなやっぱ。』
『それが刑事だ。』
『なんか知らないけど怪我まで治ってるし。』
『いつの間にか治っていた。理由は分からんが、舌の毒針も再生してるぞ。』
そう言って口を開けると、そこには鋭い針が生えていた。
『お前がつけた傷はもう癒えた。今度こそ仕留める。』
地面を蹴り、タックルをかます勢いで間合いを詰める。
緑川は咄嗟に後ろへ退き、鱗粉を撒こうとした。
『させるか!』
沢尻は銃を抜いて、二発の弾丸を放つ。緑川は慌てて回避し、『弾切れなんじゃないの?』と睨んだ。
『嘘に決まってるだろ!』
『お前・・・・・・、』
狼狽える緑川に向かって、沢尻はタックルをかます。
そしてレスリングのようにそのまま床に押し倒した。
『敵の言うことを信じるなんて、意外とお人好しなんだ。』
そう言って馬乗りになり、口の中に銃を突っ込んだ。
『ごッ・・・・・、』
『終わりだ。』
沢尻は引き金を引く。しかしその瞬間に銃を持つ腕に痛みが走り、銃口が口の中から逸れてしまった。
弾は緑川の首をかすめ、床に穴を空ける。
『またこれか・・・・・、』
痛んだ腕を見てみると、そこには匕首が刺さっていた。
『お前が死ねよ。』
緑川は舌の毒針を伸ばす。
沢尻はそれを掴むと、肉挽き刀を当てて切り落とそうとした。
しかしまた匕首が飛んできて、咄嗟に刀で受け止めた。
『馬鹿。』
緑川はニヤリと笑い、するりと匕首をすり抜けさせる。そしてそのまま沢尻の首を狙った。
『馬鹿はお前だ。』
沢尻はこの動きを読んでいたように、肉挽き刀から手を放して匕首を受け止めた。
『素手で・・・・・、』
『見事なもんだろ?ヤクザのドスもこうやって止めたことがある。』
匕首を握りしめたまま、刀身に銃を当てる。そして引き金を引くと、銃が火を吹いて匕首をへし折った。
正真正銘最後の弾丸が発射され、ポイと銃を投げ捨てる。
緑川は舌打ちをして、『いつまで乗ってんだよホモ野郎』と後頭部を蹴り飛ばした。
『ぐッ・・・・・、』
沢尻は前のめりに倒れるが、すぐに起き上がる。
すると目の前に銃を突き付けられて、咄嗟に首を捻った。
それと同時に銃口が火を吹き、沢尻の顔をかすめる。
右側の頬が抉られ、鮮血が飛び散った。
『お返し。』
緑川はニコリと笑い、素早く首狩り刀を振る。
沢尻は肉挽き刀で受け止めるが、バランスを崩してうつぶせに倒れ込んだ。
その瞬間、首筋に殺気を感じ、身を切るような悪寒が走った。
振り向くと、すぐ目の前に首狩り刀が迫っていた。もはやかわす余裕はない。
このまま殺されるのだと諦めた時、何かが窓ガラスを突き破って、緑川に体当たりをした。
『・・・・・・・ごほッ・・・・、』
緑川は吹き飛ばされ、壁の本棚を突き破る。
沢尻は呆然としながら、「何だ・・・?」」と身を起こした。すると窓ガラスからまた何かが入ってきた。
それは白く細長い生き物で、身体の脇に無数の羽が生えていた。
そして少し遅れてから、黒くて丸いボウリング玉のような物体や、ゆらゆらと動く煙が入って来た。
『こいつら・・・・・さっき集まってた化け物か?』
中に入ってきたのはスカイフィッシュとツチノコ、そして煙々羅だった。
緑川はスカイフィッシュの体当たりを受けて吹き飛ばされ、壁にめり込んで悶絶していた。
脇腹を押さえ、苦しそうにえづいている。
そこへ妖怪やUMAが襲いかかり、緑川は慌てて逃げ出した。
沢尻の上を飛び抜け、出口へ向かおうとする。
しかし外には、巨大な髑髏の妖怪ガシャドクロがいて、出口を塞いでいた。
緑川は首狩り刀を振って殺そうとするが、またスカイフィッシュの体当たりを受けて吹き飛ばされる。
ガシャドクロの肋骨にぶつかって、苦しそうに身を起こした。
『お前ら・・・・・、』
歯を食いしばりながら立ち上がると、頭上からガシャドクロの拳が振り下ろされた。
それを間一髪かわすと、今度は足に何かが噛みついてきた。
『・・・・・・・・・・・。』
目を向けると、それは人面犬だった。
中年の男の顔をした犬が、必死に歯を立てている。
それに目を奪われていると、今度はどこからか冷たい風が吹いてきた。
辺りに白い霧が立ち込め、緑川はまさかと思って冷気の先を睨んだ。
すると遠く離れた場所から、ウェンディゴが迫っていた。
このままではまずいと思い、慌てて逃げようとする。すると今度は地面が割れて、巨大な目が現れた。
『なッ・・・・・・、』
驚いて後ずさると、地面はさらに割れて、牛の頭をした巨大な蜘蛛が現れた。
それは牛鬼という妖怪で、ウェンディゴに引けを取らないほど大きい。
『・・・・・・・・・・・・・。』
緑川は息を飲み、咄嗟に鱗粉をまき散らそうとした。
しかしその時、背筋に悪寒を感じてしゃがみこんだ。
次の瞬間、緑川の頭上を肉挽き刀が駆け抜ける。そして沢尻の『チッ』という舌打ちが聴こえた。
『相変わらず勘がいいな。致命傷になるような攻撃には反応しやがる。』
『・・・・・これ全部お前が呼んだのか?』
『知らん。しかし援護に来てくれたのは間違いなさそうだ。』
そう言って周りの妖怪やUMAに目を向け、『これのおかげかな?』とペケの骨を振った。
『仲間の証だ。』
『・・・・なら俺も骨を拾っとくんだったな。』
『無駄だよ、そんなことしたって誰もをお前を仲間だなんて思わない。』
沢尻は肉挽き刀を振り、緑川の頭上に振り下ろした。
それを首狩り刀で受け止める緑川だったが、ガシャドクロに捕まれて、身動きを封じられてしまった。
『おい!』
『無駄だ、もう逃げられんさ。』
チャンスとばかりに、沢尻はまた刀を振る。そこへウェンディゴも駆けて来て、緑川は窮地に陥った。
『うざ・・・・・・。』
舌打ちをしながら、面倒くさそうに顔をしかめる。
そして次の瞬間、緑川は忽然と姿を消した。
首狩り刀が地面に落ち、沢尻の足元でカランと鳴る。
『消えた・・・・。』
さっきまでガシャドクロの手に握られていたのに、今はどこにもいない。
『まさか「向こう」へ逃げたのか?』
沢尻は焦るが、それはあり得ないと思い直す。
『いや、「こっち」から「向こう」へ行くには、亀池山からじゃないと無理だ。だったらどこへ・・・・・、』
触覚を立てながら気配を探っていると、頭上から空気の動きを感じた。
見上げると、そこには虫のように小さい何かが飛んでいた。
『危なかった。死んじゃうとこだったよ。』
『緑川・・・・・・。』
『大きさを変えられるって便利だよね?』
そう言って笑う緑川は、人間の手の平ほどの大きさに縮んでいた。
そして次の瞬間、巨大な蛾の化け物に変身した。
『・・・・・・・・・・・。』
驚きのあまり、沢尻は言葉を失う。
緑川は『ビックリしただろ?』と笑い、鱗粉をまき散らした。
『まずい・・・・・!』
沢尻はすぐに口元を覆ったが、鱗粉は大量に撒かれていた。
辺り一面にキラキラと降り注ぎ、それを吸い込んだ者は激しい嘔吐に見舞われる。
妖怪やUMAの大半が鱗粉にやられ、身を捩ってえづき出した。
緑川は元の姿に戻り、サッと手をかざす。
するとガシャドクロの傍に落ちていた首狩り刀が飛んできて、すっぽりとその手に収まった。
『とりあえずみんな死ね。沢尻もな。』
そう言って凄まじい速さで宙を駆け巡り、縦横無尽に刀を振り回した。
その刃は豆腐のように化け物を切り裂き、荒れ狂う死神の鎌となって命を奪っていく。
鱗粉の毒が利かない化け物たちも、その素早い太刀から逃れる術はなく、蟻が踏み潰されるように次々と死んでいった。
形勢は一気に逆転し、辺りは虐殺ショーが繰り広げられる。
頭が落ち、腕が落ち、胴体が割られて臓物が飛び出す。
その刃は沢尻にも襲いかかるが、どうにか肉挽き刀で受け止めた。
『ぐッ・・・・・、』
『ストーカーの骨なんか捨てちまえよ。両手使わないと死ぬぞ。』
そう言って鎖鎌のように刀を振り回し、目に映るものは全て切り払った。
『オゴオオオオオオオオオ!』
嘔吐していたウェンディゴが、怒り狂って強烈な電気を放つ。
しかしあっさりと足を切り落とされて、その場に崩れた。
『ゴオオオオオオオ!』
それでもまだ戦う気は衰えず、口から強烈な冷気をまき散らした。
すると緑川は『アホ』と笑い、空高くに逃げていった。
冷気は辺り一面を覆い、極寒のブリザードのように吹き荒れる。
そのせいで妖怪やUMAのほとんどが凍り付き、命を落としていった。
残ったのは大きくて耐力のある化け物だけで、ガシャドクロと牛鬼のみだった。
『デカブツは良い的だよ。』
冷気を受けて動きが鈍くなったところへ、首狩り刀を一閃させる。
ガシャドクロは頭蓋骨を割られ、牛鬼は頭と胴体が切り離される。
どちらも断末魔の叫びをあげて、そのまま崩れていった。
『ウゴオウオオオオオオオオ!』
ウェンディゴはさらに怒り狂って冷気を吐き出すが、足がないのでは思うように動けない。
そして緑川にあっさりと背後を取られて、頭に刀を突き刺された。
『ゴオオオオオオオ・・・・・・・、』
『図体だけの馬鹿。』
そう言ってグリグリと刀を回し、最後は横一閃に薙ぎ払う。
ウェンディゴの脳はぐちゃぐちゃにシェイクされ、頭の上半分が落ちていく。
そのまま後ろへ倒れていき、シェイクされた脳をばら撒きながら絶命していった。
『・・・・・・・・・・・・。』
沢尻は建物に中に避難していて、どうにか冷気の直撃は免れていた。
しかしそれでも身体の半分が凍り付き、寒さで動くことが出来なかった。
そこへ緑川がやって来て、『ははは』と馬鹿にしたように笑う。
『あのまま凍死してた方が楽だったのに。』
そう言いながら近づいて、頭を蹴り飛ばした。
『ぐがッ・・・・・・・、』
『まあよく頑張ったと思うよ。』
『・・・・緑・・・・・川・・・・・・、』
『腹の子供はもらうな。』
『・・・・・・・・・・・・・。』
『この身体だっていつか死ぬわけだし、その時は子供の身体を乗っ取らなきゃいけないから。』
『クズめ・・・・・・、』
沢尻は悔しそうに吐き捨てるが、緑川は『でも俺に子供を育てさせるつもりだったんだろ?』と笑った。
『お前は俺の目的に気づいてた。いつかこの身体に寿命が来た時、子供の身体を乗っ取るつもりだって。』
『・・・ああ・・・・お前みたいなクズなら・・・・そうするだろうと思ってな・・・・・、』
『でもそれはお前にとっても好都合なことだった。だって子供の身体を乗っ取るとなると、俺が育てなきゃならないからな。
そして子供が大きくなった時、俺を倒してくれるだろうと期待してたんだろ?』
『この子は・・・・アチェの血も引いてる・・・・・。なら・・・・彼女の意志を受け継いで・・・・お前を殺してくれるかもしれない・・・・・。』
『なるほどね。でもそうはならない。俺好みに育てるからさ。そして立派に成長したら、身体だけ頂く。』
『・・・・・・・・・・・・・。』
『だから子供はちょうだいね。』
そう言って服を引き千切り、腹に刃を当てた。
それをゆっくりと手前に引くと、いとも簡単に腹が裂けてしまった。
『うごうあああああ・・・・・・、』
『・・・・・小さい卵が三つあるな。まあ一つでいいや。三人も孵ったら面倒だし。』
腹に手を入れ、強引に卵を引きずり出す。
『うごおおおおおおおあああああああ!』
ブチブチと嫌な音を立て、腹の中から卵をもぎ取った。
緑川はじっとそれを見つめ、『これでいいや』と一つだけ飲み込んだ。
残りの分は床に投げ捨て、グチャリと踏み潰してしまう。
グリグリと足を動かし、虫でも殺すようにすり潰した。
『み・・・・緑・・・・・、』
『お前はもういらない。さよなら。』
そう言って首を刎ねようとした時、また窓からスカイフィッシュが飛んで来た。
『もういいから。』
緑川は軽く刀を振るい、スカイフィッシュを切り落とす。
次々に妖怪やUMAが入って来るが、いとも簡単に切り裂いていった。
『雑魚が群れても雑魚だから。0にいくら掛けても0にしかならないんだよ。』
切り落としたツチノコやスカイフィッシュを踏み潰し、沢尻の首に刀を当てる。
『・・・・・・・・・・・。』
『凄い目で睨むね。死ぬのが怖い?』
『・・・・・クソ野郎・・・・・。』
『威勢がいいね。もっといたぶってやりたいけど、でも長居は出来ない。』
そう言って窓の外へ目をやる。
『まだ化け物がやって来る音が聴こえる。敵にはならないけど鬱陶しいから、さっさと引き上げなきゃ。』
『・・・・お前は死ぬ。絶対にお前の思い通りにはならない。』
『かもね。でもそうなったらなったで仕方ないよ。失敗を怖がってちゃ何も出来ないからさ。』
ニコリと言って、沢尻の首に当てた刀を引く。
『緑川・・・・・お前は必ず・・・・・・、』
首狩り刀は何の抵抗もなく食い込み、そのまま首を切って落とした。
『か・・・らず・・・・・自分の・・・・こど・・・・も・・・に・・・・・・、』
首を落とされた沢尻は、パクパクと口を動かす。
頭にだけになってもしばらく生きていたが、やがて糸の切れた人形のように動かなくなってしまった。
緑川は刀を構え、さらに細切れにしようとする。
徹底的に破壊して、万が一でも蘇生する可能性を潰したかった。
しかし割れた窓から二体のドッペルゲンガーが入ってきて、両手を広げて襲いかかってきた。
緑川は首狩り刀で斬りつけ、あっという間に一体を倒した。
残ったドッペルゲンガーは緑川に化け、肉挽き刀を拾って斬りかかってくる。
『その刀貰おうと思ってたのに・・・・、』
先に奪われてしまい、悔しそうに舌打ちをする。
そこへ続々とUMAや妖怪が迫ってくる気配を感じて、すぐに建物から逃げ出した。
宙へ舞い上がり、空から襲って来る巨大ムカデやモスマンを切り払う。
『まあ卵は頂いたしいいか。最悪沢尻が生き返っても、どうせ何も出来ないだろうし。』
そう言って襲い掛かって来る化け物を切り伏せ、隙を見て退散した。
UMAや妖怪たちは大声で喚き、緑川を追い払ったことに歓喜する。
やがて河童モドキもやって来て、じっと沢尻の死体を見つめた。
『・・・・・・・・・・・・。』
河童モドキは、沢尻の手からペケの骨を取り上げる。しばらくその骨を見つめ、おもむろに沢尻の首に当てた。
それを斬られた首の中に、強引に押し込んでいく。
首からはわずかに骨がはみ出ていて、彼の遺体は異様な姿になった。
河童モドキは『グェ』と鳴き、床に転がった彼の頭を拾う。
そして首から突き出たペケの骨の上に、しっかりと挿し込んだ。
『グェ。』
河童モドキが鳴くと、ドッペルゲンガーが近くへやって来た。そしてウネウネと動きながら、沢尻の体内へと入り込んでいった。
沢尻の首が黒い影に覆われ、切断された部分が繋がっていく。
そして妖怪たちに抱えられて、天文台の外へと出された。
『グェ』
河童モドキは、空を見上げて大きく鳴く。
その空は真っ黒に染まっていて、月のない夜のように闇が広がっている。
しかし闇に覆われながらも、なぜか明るい。それは空の上から、黒い光が射しているせいだった。
妖怪たちは奇声を上げ、UMAも獣のように鳴く。
その声は、まるで神を讃える歌であり、畏敬の念を捧げる祈りのようでもあった。
すると首を落とされたはずの沢尻が、ゆっくりと目を開けた。
まるで黒い光に命を吹き込まれるように、この世へと戻ってきた。
そして不思議なことに、UMAとなっていた身体が人間に戻っていた。
触覚と羽は消え、真っ白な体毛も抜け落ち、目も複眼ではなくなっている。
「・・・・・・・・・・。」
沢尻は身を起こし、元に戻った自分の姿を見て、「なんだ・・・・?」と呟く。
そして頭上から黒い光が射していることに気づき、目を細めながら見上げた。
「・・・・・・・・・・・・。」
黒い光は空から射していて、その中心に真っ黒な球体がある。
・・・・いや、正確には、黒い炎で燃え盛る球体が浮かんでいた。
それはまるで、暗闇の中の太陽であり、見ているだけで鳥肌が立つほど恐ろしかった。
「・・・・・・UFO?それとも・・・・・、」
謎の黒い太陽は、真夏の太陽のように激しく燃え盛る。
しかしそこから放たれる光は、夏の陽射しのように暖くはない。
冬の雨空のように、冷たくて陰鬱な光だった。
沢尻は立ち上がり、黒い太陽に手を伸ばす。その時、脳裏にペケの顔が浮かんで、こう呟いた。
『・・・・・花を・・・・・・。』
次の瞬間、黒い太陽は消え去り、空は青に戻っていた。
妖怪とUMAはうるさいほど奇声を上げ、空に向かって手を伸ばしている。
沢尻は繋がった首を撫で、自分が生きていることを実感する。
そして銃のホルダーに手を伸ばし、中から一輪の花を取り出した。
花弁は真っ赤に色づき、血のような真紅の汁が垂れていた。

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