グレイヴ&リーパー〜墓場の王〜 第六十八話 血に染まる(2)

  • 2016.04.07 Thursday
  • 10:34
JUGEMテーマ:自作小説
水中へ逃げた緑川にトドメを刺そうと、ミノリは巨大な手を差し向けた。
『サル』と呼んでから、『人間はもうほっといていいわ。緑川にトドメを』と言った。
すると巨大な手は、ゆっくりと川の方へ向かった。
幾つものゾンビを操りながら、緑川を殺そうとする。
指先から伸びる糸で操られた死者たちが、気持ちの悪い動きをしながら川の中を探った。
すると人間に味方していた妖怪やUMAが、何かの気配を探るように辺りを見渡し始めた。
キョロキョロと目を動かしたり、クンクンと鼻を動かしてみたり、または耳を立てて集中してみたり。
そして一斉に麓の木立の中を睨み、そちらへ向かって駆けていった。
それを見たミノリは『まずい』と言って分身を解き放つ。
木立に向かった化け物を殺そうと、何十体も分身を放った。
やがて木立の中から争う音が聞こえてきた。
木が折れる音や、化け物の叫び声。
すると巨大な手は動きを止め、川の中を探っていた死者も動きが止まった。
しばらくすると、木立の中から獣の悲鳴が響いた。
それはとても甲高い声で、『ウキャ!』だの『ホッ!』だのと喚ている。
そしてすぐにその声の主が、木立から飛び出してきた。
それは真っ白なサルの骸骨だった。
器用に枝を伝い、川に逃げ込む。
すると巨大な手はそのサルを守るように、川の前に立ちはだかった。
幾つもの死者を操り、追いかけて来る妖怪やUMAを迎え撃つ。
双眼鏡でそれを見ていた鏑木は、「まさかあのサルが・・・・、」と呟いた。
「あの骸骨のサルが、巨大な手を操ってるのか?」
巨大な手は明らかにサルを守ろうとしている。
鏑木は無線を取り、すぐに米軍に伝えた。
木立の中から出て来た、あの骸骨のサルを撃てと。
すると蝶の大群と戦っていた戦闘ヘリの一機が、巨大な手の方へと向かった。
機関銃とロケット弾を飛ばし、激しい爆炎が上がる。
しかし巨大な手は相変わらず無傷で、吹き飛んだのは操られる死者や化け物だけだった。
それでもヘリは攻撃を続ける。
川をなぞるように機関銃を撃ち、大きな水柱がドミノのように上がった。
すると川の中からサルが現れて、また木立の中へ逃げようとした。
ヘリがすぐにミサイルを放ち、木立ごと吹き飛ばす。
『ギイイイイイイイイイイイ!!』
耳をつんざく雄叫びが聴こえ、サルが飛び出して来る。
そして巨大な手を操り、ヘリを鷲掴みにした。
その握力は凄まじく、装甲を割り、ローターをグニャリと曲げてしまった。
パイロットは悲鳴を上げ、それを見た仲間のヘリが助けようと向かって来る。
しかし巨大な手はしっかりとヘリを握っていて、下手に攻撃することが出来ない。
「手はほっとけ!サルだ!骨のサルを狙え!」
鏑木は無線機に向かって怒号を飛ばす。
しかし巨大な手はそうはさせまいと、掴んだヘリを投げつけた。
助けにやって来たヘリは、慌てて急旋回する。
投げられたヘリはそのまま川の中に落下して、爆炎を上げた。
「クソッタレ!」
鏑木は悔しそうに吠える。
巨大な手はさらに別のヘリに襲いかかり、またしてもメキメキと握り潰してしまった。
米軍はこの巨大な手を止める為に、骸骨のサルに攻撃をしかけた。
戦車や装甲車から機関銃が放たれ、巨大な手の操り主を粉砕しようとする。
しかしそこへ蝶の大軍がやって来て、自らを盾として攻撃を防いだ。
サルは川に逃げ込み、木立の中で化け物に受けた傷に苦しんだ。
至る所にヒビが入り、痛そうに『ホッ!ホッ!』と鳴いている。
そして激しい憎しみを抱いて、次々にヘリに襲いかかった。
巨大な手を動かし、まるでオモチャのように掴んでは投げ飛ばしてしまう。
暴れ狂う巨大な手は、マルよりも恐ろしい存在だった。
死者を操り、どんな攻撃も効かず、戦闘ヘリでさえオモチャ扱いするほどのパワー。
こんなものと戦っても勝ち目はなく、どうにかして骸骨のサルを仕留める必要があった。
しかし巨大な手の暴れぶりに、米軍も自衛隊も成す術がない。
このままでは化学兵器を搭載した装甲車までやられなかねないので、米軍はすぐに発射の準備に入った。
本来なら一か所に敵を集めてから撃つつもりだったが、そんな余裕もない。
化学兵器を搭載したミサイルは、徐々に角度を上げていく。そして麓の少し奥に狙いを定めた。
骸骨のサルはその動きに勘づき、巨大な手を差し向けた。
あの装甲車から放たれるミサイルは、通常のミサイルではないと感づいたのだ。
装甲車に巨大な手が迫る。それを撃ち落とそうと攻撃を仕掛けるが、まったく効果がない。
銃弾も砲弾も命中しているのに、一切傷がつかない。
このままでは本当にミサイルを撃つ機会を失う。
米軍の指揮官はすぐに発射命令を出した。
装甲車の操縦士は発射ボタンを押し、一発のミサイルが空へと放たれる。
それは麓の木立の奥で炸裂し、霧状の液体が撒かれた。
辺り一面に降り注ぎ、化け物たちの頭上に降り注ぐ。
するとその液体に触れた化け物たちは、一斉にのたうち回った。
蝶の大群も骸骨のサルも、そして人間に加勢していた妖怪やUMAも、気が狂ったかのように転げ回った。
『イギイイイイイイイイイイ!!』
骸骨のサルは苦しそうに身体を掻きむしり、七転八倒にのたうち回る。
まず最初に耐えがたい痒みが襲ってきて、全身に虫が湧いたような不快感に見舞われる。
それはすぐに痛みへと変わり、身体じゅうをドリルを突き刺され、そこに焼けた鉄を流し込まれるような激痛が走った。
その毒は風によって向きを変え、人間の方へも押し寄せた。
後退していた自衛隊にもその毒は襲いかかり、歩兵たちは一斉に苦しみ始めた。
化け物たちと同じように、この世の終わりのような叫びを上げて死んでいく。
「なんだこれは!マスクで防げるんじゃないのか!?」
鏑木は急いで部隊を後退させる。
毒は米軍の歩兵にも降り注いだが、毒にやられている様子はない。
「おい!こりゃどういうことだ!?吸い込まなきゃ大丈夫じゃなかったのか!?触れただけで効果が出てるじゃないか!」
そう無線に怒鳴ると、何の返事もなかった。
「事前に聞いていた情報と違うぞ!あれは呼吸器系を侵す毒で、しかも狭い範囲でしか効果がないんじゃないのか!いったいどうなってる!!」
大声で怒鳴りつけると、米軍の指揮官はこう答えた。
『分からない。こっちも混乱している。』
「嘘を言え!お前ら正確に毒の情報を伝えなかったな!」
『そんな事はない!情報は漏らさず伝えた!』
「ならどうして俺の部下が死んでるんだ!そっちの歩兵はピンピンしてるじゃないか!事前に解毒剤を飲んでいたとしか考えられない!」
『言いがかりだ!この毒は吸い込まなければ問題ないと聞いている!』
「聞いているって・・・・そっちも毒の詳しい情報は知らないのか?」
『新開発された兵器だ。大まかな説明は受けているが、詳細な部分までは分からない。しかし触れただけで効果を発揮するなんてことは知らなかった。』
「じゃあなんで効果を発揮してるんだ?人間も化け物も苦しんでるじゃないか!」
『だから分からないと言ってるだろう!そもそもこんな毒なら、近距離で使うはずがない!化け物を殺す安全な毒だということで使用したんだ!』
「化け物を殺す毒が安全なわけがないだろう!そっちは無事でこっちは死人が出てる!これは問題だぞ!」
『化学兵器を使いたいと言ってきたのは日本側だ!我々はただ協力したに過ぎない!責任は無い!』
「ふざけるなよ!こんな毒だと分かってれば、使わせるはずがなかった・・・・・、」
そう言い返そうとして、鏑木は口を噤んだ。
空中を漂う毒の霧が、妙に青く見えたからだ。
「なんだこれは?キラキラと光って・・・・まるで毒の鱗粉みたいな・・・・、」
その時、鏑木はハッと気づいた。
麓の奥のミノリにを向けると、彼女は羽から鱗粉をまき散らしていた。
それはキラキラと青く輝き、毒の霧と混ざって降り注いでいた。
「まさか・・・・これはミノリのせいか?あいつの鱗粉が混ざったから、米軍の毒が変質したのか?」
そう思ったものの、「しかし米軍側には被害が出ていない・・・」と疑問に思った。
「どうして俺たちだけ毒の効果が・・・・・、」
部隊を後退させながら、青く光る毒が降り注ぐのを見つめる。
するとその毒は米軍の歩兵に触れた瞬間、パッと消えてしまった。
「なんだ?」
鏑木は双眼鏡でじっと見つめる。
「消えた・・・・んじゃないな。あれは吸い込まれているのか?」
よく見ると、鱗粉は歩兵の体内に吸い込まれていた。
まるで掃除機のように、服の上からでも中へ吸い込まれている。
しばらく睨んでいると、やがて歩兵に異変が現れ始めた。
膝をついて苦しみ、自ら防毒マスクを外す。
そして喉を掻きむしり、苦しそうに喘いでいた。
そのうち皮膚が変色し始め、朽ちた樹皮のようにヒビ割れる。
やがてはボロボロと崩れ落ち、骨や筋肉が露わになった。
大勢の歩兵が同じように苦しみ、助けて求めている。
するとミノリが頭上にやって来て、その様子を可笑しそうに見つめた。
そして自分の胸を斬り裂き、ドクドクと脈打つ心臓を取り出した。
「何をしてるんだ・・・・?自分の心臓を取り出すなんて・・・・・、」
ミノリは両手で心臓を持ち、その一部を切り落とす。
すると切られた心臓の一部が地面に落ちた瞬間、毒で苦しむ歩兵たちが群がった。
それが救いの女神であるかのように、我先にと心臓に飛びかかる。
鏑木はその異様な光景を睨みながら、別の場所で動きがあったことに気づく。
川の方から、『イギイイイイイイイ!!』と悲鳴が聞こえたのだ。
「これはあのサルの・・・・・、」
双眼鏡を向けると、そこには緑川が立っていた。
首狩り刀をだらりと下げ、川面を睨んでいる。
その視線の先には、サルの頭が落ちていた。
「あいつ・・・・あのサルを殺しやがったのか・・・・、」
緑川は首狩り刀を振り、骨を細切れに切り裂いていく。
まるで野菜でも刻むかのように、いとも簡単にバラバラにしてしまった。
すると宙に浮かんでいた巨大な手が、ぶるぶると震え出した。
そして爆音を轟かせながら、四方八方に飛び散った。
飛び散った破片からは無数の人間の思念が浮かび上がって、悲鳴を上げながら辺りを漂う。
空はその思念によって覆い尽くされ、雲のように広がっていく。
そして風に吹かれて消えていった。
鏑木はゴクリと息を飲み、「あれは人間だったのか・・・・・?」と呟いた。
骸骨のサルは緑川によって殺され、巨大な手は消滅した。
ミノリが連れて来た恐ろしいUMAは、死神の手によって駆逐されてしまった。
これは喜ぶべきことなのか?
鏑木は判断に困っていた。
マルと巨大な手がいなくなったことは嬉しいが、その代わりに恐ろしい死神が現れた。
今度はその死神の相手をしなければならず、いったいどれほどの死者が出るのかと首を振った。
切り札の化学兵器はミノリに利用され、逆にこちらが痛手を被ることになった。
辺りに漂っていた鱗粉は、すでに風に吹かれて消えている。
しかしのその毒を受けた米軍の歩兵は、未だに苦しんでいた。
ゾンビのようなおぞましい姿になり、ミノリの心臓に群がっている。
予想もしない事ばかりが起きて、鏑木はただ混乱していた。
撤退すべきか?それとも最後まで戦うべきか?
眉間に皺を寄せながら窮地に立たされる。
するとミノリの心臓に群がっていた歩兵たちが、突然ヘドロのように溶け始めた。
スライムのようにドロドロした物体になり、ミノリの心臓を中心に固まっていく。
「まさか・・・・・・、」
鏑木は無線機を取り、「すぐに攻撃しろ!」と伝えた。
「新しい化け物が生まれるぞ!今すぐ攻撃するんだ!」
そう怒鳴ると、しばらくの沈黙があった。
米軍側も混乱していて、すぐに判断が下せなかったのだ。
しかしミノリの心臓を中心に集まったヘドロは、やがて人の形へと変わり始めた。
その姿はマルにそっくりで、再び恐ろしい怪人が生まれようとしていた。
このままではまた強敵が増えてしまう。米軍はすぐに攻撃を開始して、新たに誕生しようとしている怪人を葬ろうとした。
ミサイルが、戦車の砲弾が、そしてロケット弾が怪人を消し去ろうとする。
しかしそこにミノリが立ちはだかり、骨切り刀を振り上げて襲いかかった。
どんなに硬い物でも切断する骨切り刀は、例え戦車の装甲でも容易に斬ってしまう。
ミノリは二本の刀を振り回し、容易く戦車や装甲車を切り裂いていった。
頑丈さが売りの兵器は、骨切り刀の前では成す術がない。
ミノリは蝶のごとくヒラヒラと、そして俊敏に動く。
そのスピードと複雑な動きの前では、とてもではないが狙いを定めることなど出来なかった。
戦車も装甲車もあっという間に数を減らし、遂には全ての車両がバラバラにされてしまった。
斬られた車両からは、同じようにバラバラになった人間の遺体が出て来る。
その中には米軍の指揮官もいて、頭と胴体が五つに分断されていた。
指揮官を失ったことで、米軍は一気に統制を失う。
戦車も装甲車も失い、歩兵は怪人の材料となって生まれ変わろうとしていて、残っているのは戦闘ヘリだけだった。
それもわずかに三機ばかりで、すでにほとんどの武器は使い果たしていた。
この状態で戦い続けるのは無理で、鏑木の元に撤退を求める無線が入った。
「・・・・それしかないか。これ以上ここにいたら全滅だ・・・。」
鏑木が答える前に、米軍のヘリは去って行く。
ミノリはそれを追うことはせず、鏑木の方に目を向けた。
二本の刀をユラユラと振って見せ、『あなたはどうするの?』と問いかける。
「・・・・・・撤退する。」
短くそう言って、部隊を撤収させる。
本来なら死んでもミノリたちを止めることが任務だったが、それは死んで止められる場合の話である。
ここで戦いを挑んでも、自分を含めて部下が無駄死にするだけだった。
鏑木は本部に撤退のする事を伝え、すぐに部隊を退いた。
戦車や装甲車を反転させ、戦闘ヘリも麓から去って行く。
遠く離れた場所には機動隊が控えていて、彼らにも撤退しろと伝えた。
人間たちは亀池山の麓から去り、後には化け物だけが残される。
するとそれと入れ違いになるように、遠くから一機のヘリが飛んで来た。
それは東山たちを乗せたヘリで、一直線に麓へと向かう。
しかし撤退していく自衛隊に気づいて、彼らの元へと降りて行った。
ミノリは遠巻きにそれを眺めながら、『うん』と嬉しそうに頷く。
『これでしばらくは挑んで来ないでしょ。でも次に来る時はもっと大部隊ね。強い武器もたくさん持って来るだろうし。』
そう言って後ろを振り返り、『あんた勝てる?』と言った。
『人間はあんたも殺すつもりよ?一人で勝てる?』
そう問われた緑川は、首を傾げて『さあ?』と答えた。
『ていうか戦わなくていいじゃん。』
『そう答えると思ったわ。でも人間はあんたを追って来るわよ。』
『追って来られる数なんて知れてるだろ?俺は「向こう」に逃げられるんだから、大部隊で追いかけたり出来ないよ。』
『そうね。でも「向こう」は無くなるわ。私が消滅させるから。』
『それって俺を殺すってことだろ?』
『もちろん。あんたを殺さないと、王の半分が手に入らないからね。』
ミノリはクスクスと笑い、元の姿に戻った。
小さな身体で骨切り刀を揺らし、緑川の方に向ける。
するとヘドロになった米軍の歩兵が、ミノリの心臓の一部を依代として、怪人に生まれ変わった。
今度の怪人は鼻しかなく、真っ赤なマントに真っ赤な肌をしていた。
『うん、上出来。この怪人は三角のカクとでも名付けようかしら。』
そう言って骨切り刀を一本に戻し、『はい』と投げ渡した。
『それあげるわ。まずはそこの緑川ってやつを殺してちょうだい。私はその間にやることがあるから。』
ミノリはクルリと背中を向け、どこかへ飛び立とうとする。
『おい、どこ行くんだ?』
緑川は追いかけようと羽ばたく。すると真っ赤な怪人が襲いかかってきた。
『どけよカス。』
首狩り刀を振って腕を斬り落とし、返す刀で胴体を斬りつけようとした。
するとカクはマントを開き、米軍の思念を放ってきた。
緑川はモロにそれを受けてしまい、呪い殺されそうになる。
しかし首狩り刀も呪いを放ち、その思念を押し返した。
『あははは、また首狩り刀が短くなっちゃったわね。』
『なんだよこれ?しょうもない時間稼ぎだな。』
『時間を稼ぐ必要があるのよ。だって・・・・ケントの奴が余計なことをしてくれたから。』
『余計なこと?』
『周りを見てみなさいよ。色が変わってる奴らがいるでしょ?』
ミノリはそう言って周りに手を向ける。
辺りは毒で死んだ化け物の死骸で埋め尽くされていて、その中に赤や黄色、それに青などの鮮やかな色に染まった者がいた。
『ああ、ほんとだ。』
『よく見てみると、身体の中に花びらが見えるはずよ。』
『・・・・・ああ、あるな。ぼんやり浮かんでる。』
『これはケントの仕業よ。あいつは妖怪やUMAを全て消し去るつもりでいる。』
『そうなの?』
『あいつの頭の中には、とても不思議な花が一輪だけ咲いててね。それを誰かが飲み込むと、飲み込んだ本人を養分にして花粉をまき散らすの。
その花粉にやられたものは、やがて花を咲かせて死んでしまう。』
『へえ、あいつそんなことも出来るんだ。』
『花は宿主の死体を養分として、大きな花を咲かせるわ。それはまた花粉をまき散らし、やがて他のUMAや妖怪にも伝染する。
ケントは一度だけこの花を使っったことがあったわ。私を殺す為に。』
『でもお前は生き残ってるじゃん。ということは防ぎようがあるんだろ?』
『その通り。だからその為にケントを潰しに行って来るわ。あいつは多分自分で花を飲み込んだはずよ。でなきゃここまでの力は発現しない。』
そう言って色が変わった化け物たちを睨み、『あんたはそれまでカクと戦ってなさいな』と笑った。
『戻って来たら殺してあげるから。』
『いやいや、ちょっと待てよ。』
『なに?』
『その花を飲み込んだ奴は死ぬんだろ?だったらもしケントが飲み込んだなら、あいつはほっといても死ぬんじゃないの?』
『そうよ。でもね、あいつは恐ろしい奴なの。以前にこの力を使った時も、一度死んだわ。だけどその前に種子を残していたの。』
『種子?』
『ケントの死後、その種子が芽吹き、また新たなケントとして復活する。』
『なんだそれ?いくらでも生き返るってことじゃん。そんなのアリなの?』
『肉体が滅ぶ前に、思念だけ切り離しておくのよ。』
『ああ、なるほど・・・・。切り離した思念を、種子に宿らせるってこと?』
『そういうこと。それにどっちにしろ、ケントを殺さなきゃいずれ私まで死ぬかもしれない。
この力がどの程度の範囲まで及ぶのかは分からないけど、でも不安の種は取り除かなきゃ。』
『それなら歓迎だな。』
『何が?』
『だって今の俺もUMAだからさ。ほっといたら俺まで死ぬんだろ?』
『もちろんよ。なんなら一緒に来る?』
『やめとく。隙を見せたら寝首を掻かれそうだし。』
『それはあんたの方でしょ。』
ミノリはケラケラと笑い、『まあどっちにしろあんたじゃケントには勝てないわ』と言った。
『私はあんたの相手をしてる暇はない。ここで大人しく戦ってなさい。
カクに殺されるならそれまでだし、生き残っても私が殺す。逃げても必ず見つけ出す。死神にだって死は訪れるのよ。』
そう言って『バイバイ』と手を振り、山へ飛び去って行く。
『なあミノリ。』
『何よ?』
面倒くさそうに振り向くと、緑川はこう尋ねた。
『どうして「こっち」で暴れたの?』
『決まってるでしょ。あんたをおびき出す為よ。』
『そんなことしなくても、来てくれれば歓迎したのに。』
『嘘ばっかり。こっちから行ったら逃げるでしょ。』
『そんな事ないよ。俺はお前を探してたんだぞ。だって俺だって王の力が欲しいからさ。それにお前ってムカつくから殺そうと思ってたし。』
『そうなの?だったら「こっち」で暴れるだけ無駄だったわね。でもまあ・・・・こうしてノコノコ現れてくれたからよかったわ。
もうじき死ぬんだし、残された短い時間を堪能しなさいよ。』
ミノリは興味もなさそうに背中を向け、「向こう」へと消えようとする。
緑川はそんな彼女を見つめながら、『アホだなアイツ』と罵った。
『ケントが花を飲み込んだなんて本気で思ってるのか?化け物の色が変わってるのは、あいつのせいに決まってるのに。』
小声で呟いて、西の空を眺める。
そこには小さなシルエットが浮かんでいて、猛スピードでこちらに迫っていた。

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