グレイヴ&リーパー〜墓場の王〜 第六十九話 血に染まる(3)

  • 2016.04.08 Friday
  • 09:43
JUGEMテーマ:自作小説
西の空から、小さなシルエットが迫って来る。
それは凄まじい速さでこちらに向かっていた。
『やっぱ来ると思ったよ。殺したはずなのに、なんか殺した気がしなかったからさ。』
そう言って緑川は、迫り来るシルエットを睨む。
そして早く来いと言わんばかりに、大きく手を振った。
ミノリもそのシルエットに気づき、『あれは・・・・?』と不思議に思う。
『・・・・・・・・ああ、沢尻。』
迫り来るシルエットの正体に気づき、『まだ生きてたのね』と笑った。
『あれあんたの宿敵でしょ?譲るわ。』
『いいけどさ、でもあいつってお前のこと狙ってるぞ。』
『まさか。目的はあんたでしょ。』
『そうだけど、でもあいつにとっちゃ俺がラスボスみたいなもんなんだよ。』
『ラスボス?』
『一番の敵であり、最後に戦うべき相手ってこと。それでさ、普通はラスボスと戦う前に中ボスだよ。だって弱いんだから。』
そう言って沢尻に手を振り、『早く』と呼んだ。
沢尻はだんだんとこちらに近づいて来て、その姿を露わにする。
『あれ、あいつ人間に戻ってるじゃん。』
緑川は不思議に思い、『もしかして花を飲み込んだせいかな?』と呟いた。
『花?何の花?』
『いや、だから化け物を殺す花だよ。お前が言ってたじゃん。』
『馬鹿ね、あれはケントが飲み込んで・・・・・、』
『違うね、ケントが沢尻に託したんだよ。だってそうでなきゃ説明がつかないもん。』
『何の?』
『俺さ、ここに来る前に沢尻を殺したんだよ。』
『それホント?』
『うん。でもあいつは生き返った。それってきっと、ケントの花と関係あるんじゃないかなと思ってさ。』
『あの花にそんな力は無いわ。』
『そっか、なら別のことが原因なんだな。でもどっちにしたって、沢尻は生き返った。それであいつが花を飲み込んだんだよ。俺を殺す為に。』
そう言って宙に舞い上がり、ミノリに斬りかかった。
『ちょっと・・・・、』
ミノリはあっさりとかわし、『カク!』と呼んだ。
赤い怪人が緑川の前に立ちはだかり、骨切り刀を向ける。
『なんだかよく分からないけど、でも沢尻が花を飲み込んだっていうのは本当なの?』
『ただの推測。でも当たってると思う。』
『そう・・・。ならケントの所に行っても無駄ね。あいつを殺さなきゃ・・・・・、』
ミノリは沢尻を睨み、『ただの人間なら怖くないわ』と微笑んだ。
『もうアチェもいないし、あいつには何の力もない。ケントを殺すより遥かに楽ね。』
そう言って沢尻の方へ向かって行く。
『カク、そいつを止めといてね。』
命令を受けて、カクは緑川に斬りかかる。
ミノリはその隙に沢尻の方へ向かい、『こんにちは』と手を振った。
『悪いけど死んでね。』
羽から鱗粉を放ち、沢尻を眠らせようとする。
しかし沢尻は真っ直ぐ突っ込んできて、平気な顔で鱗粉の嵐を抜けた。
『効かないの?』
ミノリは驚き、今度は蝶の大群を放って迎え撃つ。
すると沢尻はふっと息を吹き、キラキラと光る粉を放った。
その粉は蝶の大群に触れた瞬間、色鮮やかな花を咲かせた。
蝶は花に養分を吸い取られ、枯れ木のように崩れていく。
『ケントの技・・・・・やっぱりあいつの花を飲み込んでるのね。』
ミノリは蝶の化け物に変身して、サッと身を翻した。
そして木立の中から、緑川が投げた虫殺しの槍を見つけ出した。
それを振り回しながら、沢尻の方へと向かう。
『残った敵はあんたと緑川だけ。先に殺してあげるわ。』
そう言って槍を構えて突っ込むと、沢尻は両手を広げて立ち止まった。
『何?』
ミノリは訝し気に顔をゆがめる。
すると彼の後ろに、ペケの幻が重なって見えた。
『ペケ・・・・そいつに宿ってるの?』
ペケの幻は、沢尻の後ろで両手を広げている。
そしてその頭上には、ぼんやりと光る、黒い太陽が浮かんでいた。
『あ・・・・・・、』
ミノリは慄き、動きを止める。
『妖怪の・・・・王・・・・。』
ゴクリと息を飲み、少しだけ後ずさる。
『・・・・ずっと昔にこの星へ降りた・・・・遠い星の生命体・・・・。』
そう呟いて、『邪魔しないでくれる?』と言った。
『あんたはもう自分の居場所を持ってるでしょ?だったら私の邪魔しないで。』
黒い太陽を見上げ、槍を向ける。
『それに地球外生命体同士は戦わない決まりでしょ?その約束を破ったなら、あんただって居場所を失うかもよ?』
強い口調で言って、黒い太陽を牽制する。
『・・・・・・ん?あんた・・・・昔より光が弱くなってない?それに炎も小さいし・・・・・、』
そう言ってじっと見つめ、『ああ、なるほど・・・・』と頷いた。
『あんたも寿命が来てるのね。一人じゃ寂しいからって、妖怪を生み出した。しかも異界まで作って、自分の居場所を手に入れた。
でもそれも限界に来てる。このままじゃ異界ごと消滅して、妖怪は居場所を失うわ。だから私を殺し、「向こう」に妖怪を住まわせるつもりなのね。』
可笑しそう言って、『どいつもこいつも・・・・、』と吐き捨てる。
『よっぽど「向こう」が好きなのね。あんなものは仮初の世界に過ぎないのに、なぜかみんな欲しがろうとする。
「こっち」で受け入れられなかったり、上手く適応できない奴らが「向こう」へ群がって来る。もうあそこは社会不適合者の集まりね。』
ケラケラと笑い、『馬鹿ばっかり』と罵る。
『いいわ、弱ってるあんたなら勝てるかもしれない。元々妖怪なんて吐き気がするほど嫌いだし、親玉のあんたごと消し去ってやるわ。』
ミノリはまた自分の胸を斬り裂き、心臓を取り出す。
『これは王の心臓。弱るといけないからあまり使いたくなかったんだけど、そうも言ってられないわ。
自由に生命体を生み出す王の力で、邪魔な奴らは全員殺してやる。』
そう言って心臓に爪を突き刺し、グリグリといじくった。
すると青い血が噴き出して、悲鳴を上げるように脈打った。
飛び散った青い血は、大地に、川に、木立に、そしてUMAや妖怪の死骸に降り注ぐ。
するとそこから新しい命が誕生した。
ミノリとよく似た小さな生き物が、まるで蛆虫のように大量に湧いて出て来た。
『ほら、私がたくさん。みんな死んじゃうわよ。』
心臓を胸に戻し、沢尻に飛びかかる。
すると新たに生まれた無数のミノリも、沢尻の方へと飛びかかった。
このミノリたちは、ただの分身ではない。オリジナルと同等の力を持った、恐るべきUMAである。
その手には骨切り刀とよく似た刀を持ち、蝶の化け物に変身して襲いかかった。
すると黒い太陽は激しく燃え盛り、辺りに光を照らした。
黒い光が麓を覆うと、どこからともなく河童モドキが現れる。
河童モドキはペケの頭を掲げ、『グェ!グェ!』と雄叫びを上げた。
すると黒い光の中から、妖怪やUMAの群れが現れた。
ウェンディゴにオボゴボ、モスマンにミルメコレオ、それにドッペルゲンガーや牛鬼に、他にも大勢の化け物が現れた。
化け物の群れは、黒い太陽の光を受けて妖しく輝く。そして天にも届くほどの声で吠えた。
黒い太陽は一際大きく輝き、そしてゆっくりとしぼんでいく。
燃え尽きるロウソクのように、最後の輝きとばかりに燃え上がってから、静かに消滅していった。
河童モドキは奇声を上げ、ペケの頭をふりかざす。
化け物の群れも奇声を上げ、雷鳴のような合唱が響き渡った。
『なんなのこいつら・・・・・、』
ミノリは狼狽え、『まあいいわ』と沢尻を睨む。
『あんたを殺して、その次は緑川を・・・・・、』
そう言って、大勢のミノリで一斉に襲いかかろうとした瞬間、沢尻は地面へ落ちていった。
黒い太陽が消え去り、宙を飛んでいられなくなったのだ。
真っ逆さまに地面へ落ちていくと、河童モドキが受け止めた。
『グェ!』
沢尻は身を起こし、目の前にペケの顔を見せられる。
「・・・・・・・・。」
そっと手を伸ばし、その顔に触れる。
黒い太陽もペケも、そして妖怪もUMAも、自分の味方をしてくれる。
ミノリという強敵を倒す為に、人間との共闘を望んでいる。
自分たちの居場所を守る為に、今だけは手を取り合おうとしていた。
沢尻は「すまんな・・・」と河童モドキに言い、空を見上げる。
そこには大勢のミノリがいて、憎そうにこちらを睨んでいた。
「思い通りにならなくて怒ってる面だな。いい気味だ。」
そう言って「そっちは頼む」と河童モドキに笑いかけた。
「俺はあいつをやる。生かしておいたらいけない奴だ。」
沢尻は緑川の方に目を向ける。
すると彼はカクをバラバラに切り裂いていて、何度も刀を突き刺していた。
『こいつしぶとい。再生とかしなくていいんだよ。』
苛立ちながら、執拗に刀を突き刺す。
カクは挽き肉のように潰されてしまい、その後に何度も踏み潰される。
もはや原型をとどめておらず、スープ状になるまで踏みつけられた。
『・・・・・・やっと終わった。』
再生しないカクを睨んで、満足そうに笑う。
そして沢尻を睨み、『なに生き返ってんだよ』と殺気立った。
『殺しただろ?どうして生きてるんだ?』
「さあな。」
『・・・・いや、この言い方は違うな。生きてるのは俺だけだから、どうして直ったんだって言い方の方が正しい。』
「お前のこだわりなんざどうでもいい。一つ確かなのは、お前を仕留める為に地獄から戻って来たってことだけだ。」
『だからさ・・・何の映画のセリフだよそれ?いちいち臭いんだよクズ野郎。』
緑川は首狩り刀を振り上げ、沢尻に飛びかかろうとする。
しかしその時、少し離れた所から銃声が響いた。
タタタタタ!と連続的に響き、空へ向かって火を吹いている。
放たれた弾丸はミノリを狙っていて、彼女を殺そうと飛んでいく。
しかしあっさりとかわされて、「チッ・・・」と舌打ちをした。
「おい沢尻!人間に戻ってるじゃないか。」
「東山・・・・・。」
「30分で戻って来るって約束だったろ?遅いから迎えに来てやったぞ。」
そう言って菱形の鏡を取り出し、ドッペルゲンガーを呼び寄せる。
そして自分と同じ姿に変化させて、銃を撃たせた。
「ボケっとしてるな。ここで仕留めなきゃチャンスを失うぞ。」
東山は正確な射撃でミノリを狙う。すると一発の弾丸が羽を射抜いた。それもオリジナルのミノリの羽を。
「おい見ろ!親玉に当たったぞ。この状況に向こうも混乱してるらしい。これならいけるかもな!」
ミノリを睨み、馬鹿にしたように笑いかける。
『・・・・・ムカつく。ほんとに・・・・なんなのよ・・・・・、』
ミノリの顔から笑みが消え、獣のように鼻づらに皺を寄せる。
そして一斉に東山に襲いかかった。
すると河童モドキが吠えて、妖怪やUMAが集まって来る。そしてミノリの大群を迎え撃った。
東山も銃を撃ち、化け物に加勢する。
「沢尻!ここで仕留めなきゃならんぞ!こいつらを生かして返すな!」
東山は辺りに転がる仲間の死体を見つめる。
多くの人間が殺されて、もはやここは死体の山になっている。
しかし次に争いが起きれば、こんなものでは済まさない。
出来れば両方、最低でもミノリか緑川のどちらかを仕留めなければ、また悲劇を繰り返す。
東山は化け物に混じって戦う。
ミノリは強敵で、一体一体がとてつもなく強い。
小銃を連射してもあっさりとかわされ、しかも睡眠作用のある鱗粉を放ってくる。
東山は防毒マスクを被り、一歩も退かない覚悟で戦った。
河童モドキも先頭に立ち、口から粘液をまき散らした。
セリー状の透明な液体が、ミノリの動きを封じる。
そこへウェンディゴや牛鬼が襲いかかり、どうにか一体仕留めた。
しかしその間にこちらは何体もやられていて、小さな死体の山が出来ていた。
コピーのミノリは口から毒針を伸ばし、まるで蜂のように刺してくる。
その毒は強力で、大型のUMAでも一撃で痙攣し、小型のUMAなら即死するほどだった。
オリジナルのミノリも虫殺しの槍を振り回し、ウェンディゴを突き刺す。
『オオオオオオオオ・・・・・・、』
マルでさえ殺すほどの毒は、他の化け物では耐えることは出来ない。
『いくら粘っても無駄。死体が転がるだけよ。』
そう言って腕をかざすと、カクに貸していた骨切り刀が戻ってきた。
片手に虫殺しの槍、片手に骨切り刀を持ち、たやすく化け物の大群を葬っていく。
このままでは負けることは目に見えているが、それでも東山は踏ん張った。
相手の動きを読み、正確な射撃で頭を撃ち抜く。
『イギャアアアアアア!!』
「効く!当たれば倒せる!」
動きは素早いが、銃弾を跳ね返すほど頑丈ではない。
当てることさえ出来れば、小銃でも充分に勝てる。
ドッペルゲンガーも東山の動きを真似して、ミノリを一体撃ち抜いた。
『ギャアアアア・・・・、』
「いいぞ!その調子だ!」
敵は強いが、勝てない相手ではない。
なぜなら戦うのは自分だけではなく、多くの化け物がいるからだ。
諦めなければ、必ずミノリを倒せると信じていた。
戦いは激しさを増し、遠くから望遠レンズで狙っているマスコミも興奮する。
レポーターは説明にならないほどの早口でまくしたて、恐怖と興奮が入り混じった口調で状況を伝えた。
そして東山から少し離れた場所では、二人の男が睨み合っていた。
沢尻と緑川。
刑事と殺人鬼が、互いを殺そうと刃を交えた。

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