グレイヴ&リーパー〜墓場の王〜 第七十話 さよなら王様(1)

  • 2016.04.09 Saturday
  • 09:21
JUGEMテーマ:自作小説
警察と犯罪者、刑事と殺人鬼、そして人間とUMA。
沢尻と緑川は何もかもが対照的であるが、根底に流れるものは同じだった。
何が何でも自分の目的を達成するという執念と、その目的に対しての異常なまでの執着心。
沢尻は緑川を殺したがっていて、緑川は沢尻を殺したがっている。
沢尻はその為にケントから託された花を飲み、緑川はその為だけにわざわざ沢尻と戦っている。
ミノリに加勢すれば沢尻を殺すことはたやすいが、自分だけの手で沢尻を殺したかったのだ。
二人は刃を交え、鱗粉を飛ばし、花粉の吐息を吐き、一歩も譲らない戦いを演じる。
実力はほぼ互角だった。
しかもお互いがお互いの性格、それに戦い方をよく知っているので、なかなか致命傷を与えられない。
沢尻は堂々と正面から斬り込み、その中で隙を探そうとする。
緑川は相手の攻撃を受け流し、奇襲を仕掛ける隙を窺っている。
しかし決定的な一撃は生まれず、チャンバラ映画さながらの斬り合いを演じていた。
肉挽き刀の歪な刃が、緑川の頬をかすめる。
首狩り刀の鋭い刃が、沢尻の首をかすめる。
どちらもまともに喰らえばその時点で勝負は決するが、しかし分は緑川の方にあった。
彼の持つ首狩り刀は、所有者が危険に晒された時、呪いを放って守ろうとする。
もし沢尻の刃が緑川に致命傷を与えた時、その時は髑髏の呪いが襲いかかってくることになる。
緑川はそれを計算に入れて戦っていて、あえて致命傷を受けてもいいと思っていた。
そうすれば髑髏が沢尻を呪い殺してくれる。受けた傷は、その後に毒針で治せばいい。
注意すべきは即死するような攻撃を受けないようにすることで、一瞬で首を落とされればそこで終わる。
このまま退屈な斬り合いを演じるくらいなら、腹に一撃を喰らい、呪い殺してしまうのもアリだなと考えていた。
しかし沢尻も当然呪いは警戒していて、だからこそ下手な攻撃は出来なかった。
呪いを放つ暇もないほど、致命的な攻撃を加えなければいけない。
戦いは平行線を辿り、鱗粉も花粉も決め手にならない。
お互いが素早く攻撃をかわしてしまうので、やはり刀で首を落とす以外に決着がつきそうになかった。
鋭い斬撃が飛び交い、一進一退の攻防が続く。
しかし時間が経つにつれて、緑川の方に変化が現れ始めた。
なんと彼の身体も色が変わ出し、皮膚に赤い花弁が浮かび始めたのだ。
『ヤバ・・・・、』
緑川は小さく呟く。
このままではいずれ花に侵されて死んでしまう。
どうにか沢尻を殺さないと、花に養分を吸い取られ、土に還ってしまう。
このまま持久戦になれば負けるのは確実で、ここは一かバチかの賭けに出ることにした。
彼は大きく後退してから、自分で自分の腹を切り裂いたのだ。
『・・・・・・・・・・・。』
激しい痛みが走り、切られた傷から腸がはみ出してくる。
バケツをひっくり返したように大量の血が流れ、立っていることさえ出来なくなって、膝をついた。
大きな怪我を負い、緑川は動けない。
そこへ沢尻が迫って来て、肉挽き刀を振り上げた。
それを見た緑川は、咄嗟に身をよじる。
急所への攻撃を避けて、肩に喰らおうと思っていたのだ。
腹の傷は自分で付けたものだが、そこへ沢尻からも攻撃をもらえばどうなるか?
肩に一撃を喰らっただけでも、それは致命傷を後押しするダメージになる。
そうすれば呪いが発動して、沢尻を殺せると考えていた。
しかし沢尻は途中で手を止めた。
緑川に当てる寸前で、ピタリと刃を止める。
そして刀の向きを変えて、ゆっくりと首に向けた。
「自分で怪我して呪いを撃つ気だったか?」
『・・・・・・・・・・。』
「お前にしちゃ安易な策だな。」
『・・・・・・・・・・。』
「・・・・かなり深く切れてるな。これなら・・・・何もしないでもくたばりそうだ。」
そう言って刀を下げ、一歩後ずさった。
「俺が攻撃しなけりゃ呪いは撃てないだろ。」
『・・・・・・うん。でもまあ・・・・自分で怪我は治せるから。』
緑川は舌の毒針を伸ばし、腹を刺そうとする。
すると沢尻は素早く刀を振り、毒針を切り落とそうとした。
緑川はこの動きを読んでいたように、サッと毒針を引っ込める。
そして自分から腕を出して切らせようとした。
沢尻は慌てて刀を止め、舌打ちをする。
「狡い奴め。」
『なんで?チャンスなんだぞ・・・・・殺せよ・・・・・、』
「いや、やめておく。」
『じゃあ傷を治すだけだ。』
「構わん。そうなればまた斬り合いを演じるだけだ。そして時間が経てばお前は死ぬ。ケントの花の力でな。」
そう言って赤く変色していく緑川を睨んだ。
「黒い太陽が教えてくれたよ。あの花は化け物を殺す力を持ってると。」
『みたいだな。化け物が全滅するんだろ?』
「いや、そうはならない。」
『は?』
「あの花は若い化け物だけを殺すんだ。」
『若い・・・・、』
「誕生して間もないUMAや妖怪だけってことだ。全ての化け物が死ぬわけじゃない。だから残念ながら、ミノリを殺すことは出来ない。お前は死ぬがな。」
『・・・・・・・・・・・・。』
「そしてお前が死ぬなら、俺は本望だ。例えここで死んでも悔いはない。」
『・・・・・俺が死んでもミノリが残ってるぞ・・・・。』
「そうだな。しかしミノリよりもお前の方が手強い。何をしでかすか分からないし、それに頭がイカれてる。それならまだ明確な目的を持つミノリの方がマシだ。
目的さえ分かっていれば、手段も推察できるからな。ミノリはいずれ死ぬよ。人間と化け物の手でな。」
『・・・・・・・・・・。』
「だから死ぬのはお前と俺だ。巻き添えを喰らう化け物たちは可愛そうだが、しかしこれしか手段がない。」
『・・・・・嘘だな。』
「何が?」
『ミノリは以前に・・・・この花でケントに殺されそうになったって言ってた。だから若いUMAだけが死ぬなんて・・・・、』
「ならその時のミノリは若かったんだろう。きっとUMAになって間もない頃だったのさ。」
『・・・・・・・・・・。』
「なあ緑川・・・・もう終わりだ。終わりにしよう。」
そう言って刀を下げ、じっと彼を見下ろした。
「お前はもう充分戦ったよ。これ以上生きたって、同じような戦いが続くだけだぞ?」
『・・・・・・・・・・・・・。』
「そうやって戦い続けて何が楽しい?一人で生き続けて、いったい何がしたい?アチェはそう尋ねなかったか?」
『・・・・・・・・・・・・・。』
「俺もアチェも、それにケントだって・・・・・ある意味じゃお前のことは認めてた。
お前の犯した罪は許されないが、それでも・・・・間違った道にさえ進まなければ、きっと世の中で活躍していただろうに・・・・。」
『・・・・・興味ないよ・・・・。』
緑川は腹を押さえながら、今にも死にそうな顔で答える。
どうにかこの状況を脱したかったが、沢尻は常に殺気を漲らせている。
下手な動きをしたところで、未然に防がれるだけだった。
「もし・・・・もしお前が俺の子供だったら、きっとこんな風にはならなかった。なぜならお前は俺とよく似ているからだ。
良い所も悪い所もよく分かるから、ちゃんと躾が出来たろうに。」
『・・・・・・・・・・・・・・。』
『それに俺の子供だったら、早苗ってよく出来た妹までいるんだ。あいつはいいぞ、俺より刑事に向いてる。なるつもりはないと言ってるが、多分そっちへ進むだろう。」
そう言って小さく笑い、「残念だ・・・・・」と首を振った。
「俺の子供じゃないにしても、お前が幼い頃に出会えていたら、こんな風にはならなかった。残念だよ・・・・・・。」
沢尻はゆっくりと刀を構え、「もういいだろ」と睨む。
「ここまで戦ったんだ、自分で付けた傷で死にたくないだろう。最後は俺の手で終わりにさせてくれないか?」
そう言って肉挽き刀を振り上げ、「動くなよ」と釘を刺した。
「もう終わりなんだ。お前はよく戦ったし、好きに生きただろう。だからもう終わりにしよう。ちゃんと弔ってやるから。」
『・・・・・・・弔いなんかいらない。死んだら終わりなんだから・・・・、』
緑川は死にそうな声で言って、その場に倒れる。
身体じゅうには花弁が浮かんでいて、いつ花が咲いてもおかしくない状態だった。
『・・・・・・死にたくない・・・・・・まだ・・・・・・・、』
そう呟き、ゆっくりと動かなくなっていく。
沢尻は複雑な感情でそれを見つめていて、彼の最後の瞬間を看取ろうとした。
やがて緑川はピクリとも動かなくなる。
口を半開きにして、壊れた人形のように横たわる。
その時、沢尻はポロリと呟いた。
「すまん・・・・・。」
なぜか熱いものがこみ上げてきて、彼の傍に腰を下ろした。
「殺す以外に何も出来なかった・・・・・すまん・・・・。でも・・・俺もすぐに逝くさ。」
沢尻は自分の手を見つめる。
その手は紫に変色していて、びっしりと花弁が浮かんでいた。
呼吸をする度に花粉をまき散らし、それは風に乗って宙へ飛んで行く。
それを見つめていると、空から何かが向かって来た。
大きな羽を羽ばたき、『あはははは!』と笑っている。
『よくやってくれた!ありがとね!』
ミノリが笑いながら飛んできて、緑川の死体をかっさらっていく。
そして脳に毒針を突き刺し、チュルチュルと吸い始めた。
「・・・・・・・・・・・・・。」
沢尻は立ち上がり、無表情な目でそれを睨む。
もう何もすることも出来ないが、それでも刀を構え「ミノリ・・・・」と呼びかけた。
「王の脳が欲しいなら、もって行けばいい・・・・。ただし・・・緑川の身体は返してくれないか?この手で弔ってやりたいんだ・・・・・、」
『いいわよ、こんな物に用はないもの。』
そう言ってチュルチュルと音を立てて緑川の脳を吸っていく。
半透明の管の中を、彼の脳が流れていく。
その脳は青味がかっていて、それは王の脳である証だった。
それを美味そうに吸い尽くすと、『はい』と緑川を投げ捨てた。
ぼとりと地面に落ち、手足が妙な方向へ曲がる。
すると沢尻の背後から銃声が響いて、ミノリを撃ち落とそうとした。
「沢尻!」
東山が駆けてきて、「クソッタレが!」と吐き捨てる。
「何をボケっとしてる!緑川を仕留めたんなら、こっちに手を貸せ!」
そう言って銃を撃ち続け、舌打ちしながらマガジンを交換した。
「あいつを逃がすな!ここで仕留めないと・・・・・、」
「そうだな・・・・。」
「これを使え!お前も撃つんだ!」
予備のライフルを渡し、「射撃は得意だろ」と促した。
「あんな奴を逃がしちゃ駄目だ!この星から飛び去ったって、またいつ戻って来るか分からない!ここで殺すんだ!」
「ああ・・・・・、」
銃を受け取った沢尻は、それをミノリに向ける。
しかしすぐに膝をつき、そのまま倒れ込んだ。
「おい沢尻!」
「・・・・・・・・・・。」
「どうした!?立て!」
東山は心配そうに肩を掴む。
すると彼の身体は、砂のようにボロボロと崩れ始めた。
「なんだこりゃ・・・・・、」
「・・・東山・・・・もう・・・時間だ・・・・、」
「まさか緑川の毒でも受けたのか?」
「・・・・・俺は・・・・役目を全うした・・・・。ミノリは・・・・お前たちと・・・・化け物の手で・・・・・、」
「おい!しっかりしろ!」
「・・・・それと・・・・早苗に・・・・さよならと・・・・・・・・・。刑事になっても・・・・俺のように・・・・無茶はするな・・・と・・・、」
そう言って小さく笑い、そのまま動かなくなる。
「沢尻!おい沢尻!!」
東山は激しく揺さぶる。すると沢尻の身体から無数の茎が生えてきて、色とりどりの花を咲かせた。
そこからキラキラと光る花粉が放たれ、辺りを漂って行く。
それは空に舞い上がり、オーロラのように輝いた。
そのオーロラに触れたミノリの群れは、身体から花を咲かせた。そして干からびた人形のように、砂となって崩れ落ちた。
誕生して間もないUMAや妖怪は、全てこの花粉の犠牲になる。
花を咲かせ、養分を吸い取られていく死んでいく。
やがてミノリの群れは壊滅し、オリジナルのミノリだけが残った。
河童モドキはこの花粉の犠牲になる前に、「向こう」へと戻っていく。化け物の群れを引き連れながら、陽炎のように消え去った。
後に残されたのは東山とミノリ、そして緑川と沢尻の死体だけだった。
沢尻は全身から花を咲かせ、養分を吸われていく。
そして瞬く間にすべてを吸い尽くされ、ボロボロと土に還っていった。
「沢尻!」
東山は土を手に取り、悔しそうに握りしめる。
厳つい顔がさらに厳つくゆがみ、歯を食いしばって彼の死を悼んだ。
「・・・・・・・・・・・。」
握った土を落とし、空に舞うミノリを睨む。
「・・・・逃がすか・・・・絶対に逃がすものか・・・・・・。」
『もうこんな星に用はないわ。さっさと「向こう」を消して、私は宇宙へ出る。』
「逃がさんと言ってるだろうが!」
東山は銃を撃つ。しかしミノリはケラケラ笑いながらそれをかわし、虫殺しの槍を投げてきた。
「うお・・・・、」
間一髪それをかわすと、ミノリは『バイバイ』と手を振った。
「おい待て!」
『そんなに私を殺したいなら、追いかけてくればいいじゃない。あなただってパートナーを持ってるんでしょ。』
そう言って陽炎のように薄くなり、向こうへ消えようとした。
『王の心臓を使って、またたくさんの私を生み出すわ。そして「向こう」の生き物を全て殺してやる。
その後はUFOを乗っ取って宇宙へ出る。「向こう」はすぐに消滅するわよ。』
可笑しそうに笑いながら、『今日は良い日だわ』と微笑む。
東山は彼女を追う為に、ドッペルゲンガーを呼び寄せる。
自分一人で勝てるとは思っていないが、何もせずに見逃すことは出来なかった。
しかし「向こう」へ行こうとしたその瞬間、「なんだ?」と顔をしかめた。
『・・・・・・あ・・・・・・、』
ミノリが頭を押さえて苦しみ始めたのだ。
顔を歪め、『ギイヤアアアアアアアア!!』と悲鳴を上げる。
元の姿に戻り、気が狂ったように空を飛び回る。
『アアッギャアアアアアアア!!イダアアアアアアアアアアアアイ!!』
爪を立てて顔を掻きむしり、『嫌ああああああああ!』と叫ぶ。
東山は「なんだ・・・・?」と息を飲んだ。
「なんで苦しんでる?誰かから攻撃でも受けてるのか?」
そう言って周りを見渡すと、おかしなことに気づいた。
「・・・・・な・・・・・・、」
脳を吸われた緑川の死体から、無数の花が咲いていた。
それは花粉をまき散らし、まっすぐに空へと昇っている。
その花粉はミノリに纏わりつき、彼女の体内へ吸い込まれていた。
やがて花は枯れ、色を失って崩れていく。そして緑川の身体も土に還り、馬糞のようにこんもりと土が盛り上がった。
『イッギャアアアアアアアア!!』
ミノリはまだ叫んでいて、必死に頭を押さえている。
獣のように口を開け、大きな複眼はガラスのようにヒビ割れていった。
『あんたああああああああ!!ふざけんじゃないわよおおおおおお!!』
そう言って骨切り刀を振り上げ、自分の頭を突き刺そうとした。
しかしその瞬間、ミノリの頭の中から、一本のナイフが飛び出してきた。
額を突き破り、ゆっくりと顔面を裂いていく。
『ぎゃあああああああああ!!』
そのナイフは茶色くくすんでいて、まるで豆腐でも斬るかのように、簡単にミノリの顔を裂いていく。
そして首元まで切り裂くと、彼女の顔はパックリと割れた。
『・・・・・あ・・・・ああ・・・・・・あああ・・・・・・、』
ミノリはガクガクと震え、割れた顔のまま宙に浮かんでいる。
すると彼女の顔の中から、一匹の蛾が現れた。
その蛾はナイフを持っていて、刃先にミノリの血がポタポタと垂れている。
『・・・・・・・・・・・・。』
蛾はすぐに地面へ降り、土に還った緑川の死体に飛び込んだ。
すると土に還った緑川の身体が、油粘土のように人の形になっていく。
東山は銃を撃つことさえ忘れて、ただ立ち竦んでいた。
土は人の姿になっていき、やがて本物の人に変わっていく。
東山はそれを見つめながら、ゆっくりと後ずさった。
「・・・・・・・・・・・・・。」
言葉を失い、背を向けて逃げ出したくなる。
その時、ふと傍を見ると、また信じられない光景が目に入った。
「・・・・・・・・・・・・。」
土に還った沢尻から咲いた花が、幾つもの小さな蛾を解き放ったのだ。
その蛾はアチェのような姿をしているが、顔には別の誰かの面影があった。
「・・・緑川・・・・・?」
出て来た無数の蛾を見つめて、東山は呟く。
しかしそのうちの一匹は、沢尻の面影を持っていた。
花から生まれた無数の蛾は、そのまま空へと舞い上がる。
そして陽炎のように、ゆっくりと「向こう」へ消えていった。
しかし沢尻の面影を残した蛾はその場に留まり、じっと宙を睨んでいた。
するとまたミノリが『ギャアアアアア!!』と叫び、彼女の顔の中からもう一匹蛾が現れた。
その蛾はアチェと瓜二つで、真っ直ぐにこちらへ飛んでくる。
そして沢尻の面影を持った蛾に近づくと、その手を取って微笑みかけた。
『まだ終わってないわよ・・・・・。』
そう言って手を引き、土に還った沢尻の死体に飛び込む。
するとその土も、もこもこと動いて、油粘土のように人の姿に変わっていった。
東山はだらりと銃を下げ、放心したように立ち尽くす。
「なんなんだお前ら・・・・・・・、」
もうついて行けないという風に、深くため息をつく。
人の姿へと変わっていく土は、やがて東山のよく知る人物へと形を成していく。
片方は緑川、もう片方は沢尻と、死を覆してこの世に戻ってきた。
復活した緑川は、人間に戻っていた。そして沢尻も、傷一つなく完璧に蘇っている。
片方が死ねば片方も死ぬし、片方が生き返れば片方も生き返る。
東山は「お前らは双子か何かか?」と呟き、「まるで鏡映しだな」と笑った。
すると『てめえらああああああ!!』とミノリが叫びが響いた
その顔はパックリと割れたままで、水道のように血が飛び出している。
そしてゆっくりと地面へ降りて来て、鬼の形相で睨んだ。
『よくも・・・・・私の身体を使って・・・・・・、』
二つに割れた顔が、憎しみに歪む。そして『私はお前らの養分じゃねえんだよ!!』と叫んだ。
『こんな・・・・こんなのが王の脳ミソの力なんて・・・・・・。だったらいくらでも生き返るってことじゃない・・・・・。身体は滅んでも思念は消えないなんて・・・・・・、』
そう言って蝶の化け物に変身し、割れた顔に毒針を突き刺した。
『もういい!ほんっとにこんな星はもうたくさん!誰もかれもが私の邪魔をする。挙句の果てには、死に損ないどもが私を養分に生き返るわ・・・・・・もうこんな星はうんざりよ!』
六本の腕を広げ、『あとは馬鹿どもで好きにやってりゃいいわ』と罵った。
『頭の悪い馬鹿が、頭の悪い争いを続けてる。いい?この星にはあんた達の知らない生命体がウヨウヨいるのよ?
そいつらが争い始めたら、あんたらなんか一瞬で滅ぶのよ!だから私がそれを変えよとうとした。
宇宙へ飛び出して、王よりももっと強い生命体の力を宿して、この星を住みやすい世界に変えようとした。
でももういいわ。これ以上馬鹿には付き合えない。私はどうにかして宇宙へ行く。そしてどこか別の星で暮らして・・・・・・、』
怒りとも諦めとのつかない表情で、沢尻たちを見下ろす。しかし言い終える前に、背後から首を刎ねられた。
『あんた・・・・いつの間に・・・・、』
頭が宙を舞い、ぼとりと地面に落ちる。ボールのようにコロコロと転がり、岩に当たって止まった。
『・・・・・クソ野郎・・・・・・。』
上を向いたミノリの目には、緑川が映っていた。
首狩り刀を構え、刃先から赤い血が垂れている。
『お前は本当に死神ね。災いばっかり振り撒く。今まで私が出会った中で、一番頭の悪い奴よ。』
ゴミでも見るような目で、恨みつらみを吐き出す。
『明確な目的も無い、信念や思想も無い。やってることは行き当たりばったりで、気に入らなければすぐに殺す。
生きてるのは自分だけなんて妄想を信じて、世の中を滅茶苦茶にしようとする。あんたみたいのがいるから、住みにくい世の中になるのよ。
自分が誰からも必要とされていないゴミだって分かってる?死神どころか、ただの疫病神だって自覚してる?』
淡々とした口調で言い、『きっとあんたは全てを敵に回すわ』と笑った。
『自分以外のものを全て敵に回す。あんたは人でも妖怪でもUMAでも平気で殺す。平気で裏切る。生きてるのは自分だけで、他は石ころなんて本気で思ってる。
そんな奴はね、生命の敵なのよ。あんたはこの星に住む全ての生き物の敵よ。いずれ細菌やウィルスまで敵に回して、居場所を無くす・・・・・、』
「長いよ、セリフが。」
そう言って緑川は、ミノリの頭に首狩り刀を突き刺した。
ミノリは『ぎゃッ・・・・、』と悲鳴を上げ、苦痛に顔を歪めた。
「グチグチ不満ばっか言ってんじゃないよ。てめえが馬鹿だから世の中が馬鹿に見えるんだろ?」
そう言って首狩り刀をグリグリと回し、ミノリの頭を抉る。
『い・・・・ぎい・・・・・・、』
「何がこの星から去るのが目的だよ。後で戻ってきて、自分の好きなように作り変えるつもりだったんだろ?」
『ぎゃッ・・・・・・、』
「ほんっとどうしようもねえゴミだなお前は。世の中なんてさ、思う通りにいくわけないじゃん。
だから俺も戦ってんだよ。生きてるのは俺だけなのに、なぜか石ころがぶつかってくる。そんで俺を殺そうとするんだよ。」
『ぐぎゃッ・・・・・・ぎい・・・・・・、』
「だから嫌でも戦ってんの。アホどもは「一人で戦い続けて何が楽しい?」とかほざくけど、戦いたくて戦ってんじゃないんだよ。
邪魔な石ころがぶつかってくるから戦ってるだけ。だいたい俺は誰も殺してないんだよ。石ころ砕いて殺人になるわけないだろ?」
ドリルのようにグリグリと刀を回し、ミノリの顔を抉っていく。
『お・・・・お前・・・・・ほんとに・・・・・最悪の・・・・・クズね・・・・・、』
「クズなんか世の中にいっぱいいるよ。でもクズを潰したって、またクズが湧くんだよ。だからどうやったって理想の世界なんてあり得ないわけ。
なのにお前はさ、宇宙に飛び出せば何かが手に入るんじゃないかって期待してんだろ?この星が嫌だからって、宇宙へ逃げ出そうとしてるだけじゃんか。」
淡々と言いながら、ミノリが潰れて行く様子を眺める。
「それってさ、仮病使って学校サボるガキとどう違うんだよ?引きこもってオナニーばっかしてるニートと何が違うんだ?何かを変えたいなら、この星に残って戦えってんだよ。」
そう言ってミノリの頭を突き刺したまま、川の方へ向かう。
そしてコンクリートの護岸に向かって、思い切り叩きつけた。
『ぎゃぐッ・・・・・・・、』
グチャリと音がして、頭の半分が潰れる。
「お前が宇宙へ飛び出すことはないよ。ここで死ぬんだから。」
何度も何度も護岸に叩きつけ、ミノリの頭を潰していく。
そしてトドメの一撃を加えようとした時、刀の先から頭がすっぽ抜けた。
彼女の頭は、ボチャリと音を立てて川に落ちる。そしてプカプカと浮かびながら、ゆっくりと流れて行った。
「まあいいか。どうせ死ぬだろ。」
ミノリの頭は、もうほとんど原型を留めていない。
川に流されながら、中身がドロリとはみ出していった。
すると「向こう」から一匹の河童が現れ、面白半分に石をぶつけ始めた。
ミノリはパクパクと口を動かして、まだ怒りや恨みを綴っている。
しかし大きな石をぶつけられて、遂に絶命した。
「アホな最後だな。ゴミに相応しい死に方だよ。」
可笑しそうにその光景を見つめてから、地面に横たわるミノリの胴体に目を向ける。
そして首狩り刀で胸を切り裂き、中から心臓を取り出した。
「心臓が二つあるな。青い方が王で、こっちの茶色いのがミノリのやつか。」
茶色い心臓は地面に捨てて、グチャリと踏み潰す。
そして青い心臓を睨み、「頂きます」と頬張った。
「・・・・・・・・・・きっしょ。」
肉が苦手な緑川は、吐きそうになりながら心臓を頬張る。
「・・・・生臭い・・・・焼けばよかったな。」
拳大の心臓をもごもごと噛み砕き、胃の中へ流し込む。
するとその心臓はすぐに元通りに戻って、緑川の胸に移動した。
「・・・鼓動が二つ。気持ち悪いけどすぐ慣れるか。」
とんとんと胸を叩き、「さて・・・・」と東山を睨んだ。
「どうする?まだ続ける?」
そう言って首狩り刀を向けると、東山は「化け物が・・・・」と息を飲んだ。
「死んだと思ったら生き返り、挙句の果てにはミノリまで殺しちまいやがる・・・・・。どうかしてんじゃないのか、お前。」
「なんで?ミノリはみんなの敵だろ?むしろ感謝されるべきだと思うけど?」
「お前も全員の敵だ!」
「だったら戦う?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「ほら、ビビってる。」
緑川はケラケラと笑い、「で・・・・そっちはどうする?」と、東山の横に立つ者を睨んだ。
「沢尻・・・・・お前まで生き返ってやがる。とっととくたばっとけよ。」
そう言って首狩り刀を向けると、沢尻は小さく首を振った。
「・・・・残念だが・・・・今の俺じゃお前に勝てそうにない。」
「そりゃそうだよ。だって王の力を全部頂いたんだから。」
「ならこの場で俺たちを殺せばいい。そうすれば、もうお前に敵はいなくなる。」
「いいや、まだ残ってるよ。たくさんの妖怪やUMAが俺を殺そうとしてる。」
「そうだな。しかしお前にとっては敵じゃないだろう。このまま「向こう」へ行って、UFOを奪えば目的は達成だ。」
「なんか白けた口調だな。どうしたの?」
「どうもしないさ。ただお前にこの星から出て行ってほしいだけだ。そしてもう二度と戻って来るな。」
沢尻は肉挽き刀を拾い、「とっとと消えろ」と刀を向けた。
「UFOでも何でも乗っ取って、月でも火星でも好きな所へ行って来い。ここはお前のいる場所じゃない。」
「そうだな。でも・・・・やっぱり引っかかるな。お前があっさりと俺を見逃すはずがないもん。一体何を企んでるの?」
「何も。」
「嘘つくな。どんなに誤魔化しても、その目は何かを狙ってる感じじゃん。」
「じゃあ今ここで殺せばいいだろう。俺はもうただの人間だ。楽に勝てるだろう?」
「冗談言うなよ。お前の中からさ、あいつの気配を感じるんだよ。」
「あいつ?」
「アチェだよ。」
緑川は鬱陶しそうに言う。
「あいつまだ生きてるんだろ?お前の中でさ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「王の脳ミソって、身体が滅んでも思念だけは残る力があるんだよ。だからアチェの思念はまだ残ってる。
あいつも王の脳ミソを持ってたから、きっと今でも思念は生きてるはずなんだ。」
そう言って背を向け、「もういいや」と宙に舞い上がった。
「とりあえず「むこう」に行って、王のUFOを乗っ取る。その後は宇宙旅行でもして、また戻って来るよ。」
緑川は陽炎のように消えながら、「みんなが忘れた頃に戻って来て、また暴れようかな」と笑った。
「じゃあね、みんな。いつか必ず戻って来るから。」
そう言って「向こう」へ消え去っていく。
沢尻は何もせずにそれを見送ると、すぐに踵を返した。
「おい!」
東山が追いかけ、「これからどうする・・・」と尋ねた。
「あのまま奴をほっとくのか?」
「まさか。」
「じゃあどうする?」
「もちろん仕留めるさ。」
「しかしあいつはUFOを乗っ取るつもりだぞ?もしそうなれば、宇宙へ逃げられる。手の出しようがなくなるぞ。」
「そんなことはさせない。」
「させないって・・・・じゃあどうやって止めるんだ?」
「イナゴ。」
「は?」
「ケントの放ったイナゴが、しばらくの間だけUFOを守ってくれるさ。それにミントもいるしな。」
沢尻は足を止め、亀池山を見上げる。
「もう緑川に味方はいない。人間もUMAも妖怪も、全てがあいつの敵だ。」
山に一瞥をくれ、背中を向けて歩き出す。
「東山。」
「なんだ?」
「骨切り刀と虫殺しの槍を回収しといてくれ。」
「・・・・・ああ!そうだな。」
「それとドッペルゲンガーを使って、化け物どもにコンタクトを取ってくれ。一緒に緑川を討とうと。」
「一緒に・・・・?」
「挟み撃ちにするんだよ。「向こう」からは化け物に攻めてもらって、「こっち」からは俺たちで攻める。あいつの逃げ場を全て奪うんだ。」
「いや、しかしUFOを乗っ取られたら・・・・・、」
「すぐには無理だ。UFOに近づくには、ケントの放ったイナゴのいる場所を通らなきゃならない。あのイナゴは「向こう」そのものを消すほど凶悪だそうだ。
となれば、緑川はまた首狩り刀を大きくする必要がある。」
「なるほど・・・・それで「こっち」へ出て来たところを叩くと?」
「ああ、今度は大部隊で叩く。もっと強い武器も用意してな。そうすりゃあいつは「向こう」へ逃げようとするだろう。その時は化け物どもに攻めてもらう。」
「それなら確かに挟み撃ちに出来るな。しかし・・・・そう上手くいくか?相手はあの緑川だぞ?」
東山は不安そうに尋ねる。すると沢尻は「大丈夫だ」と笑った。
「他にもまだ味方がいる。」
「味方?どこに?」
「俺が蘇る時、無数の蛾が飛んで行っただろう。」
「ああ、花の中から出て来てたな。あれはもしかして・・・・・、」
東山は小さな蛾が消え去った空を見る。
沢尻は「あれは希望さ」と言い、ニコリと微笑んだ。
その顔には、アチェの面影が強く滲んでいた。

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