グレイヴ&リーパー〜墓場の王〜 第七十五話 災害になる二人(1)

  • 2016.04.14 Thursday
  • 10:48
JUGEMテーマ:自作小説
緑川が化け物の群れと戦う少し前、沢尻達は亀池山の麓に到着していた。
空に浮かんでいたUFOはゆっくりと上昇していき、陽炎のように消え去った。
沢尻は橋の前に立ちながら、その光景を眺めていた。
全ての元凶となった厄介者が、ようやくこの星から去ってくれた。
それは嬉しい事のはずなのに、なぜか寂しさも感じていた。
親に見捨てられた子供のような、飼い主に捨てられた犬のような、何とも言えない複雑な感情を抱いていた。
「お前でも感傷に浸るんだな。」
東山が言い、UFOの去った空を見上げる。
「切ない顔して何を考えてる?」
「別に。ただ何となく寂しさがある。」
「どこが?あんな物のおかげで、どれだけの惨劇が起きたか・・・・。俺は心底ホッとしてるよ。」
「・・・・そうだな。アレはまだ俺たちには必要のない物だった。王もここへ帰って来るのは早すぎたと後悔してるだろう。」
そう言って麓を見渡し、そこに広がる凄惨な光景に目を細めた。
昨日の戦いで果てていった人間たちは、今もそのまま残されている。
自衛隊や在日米軍の兵士が、物言わぬ肉の塊となって転がっていた。
「こうして見ると・・・・残酷だなと思う反面、どこか冷めた目で見てしまう。死んだら肉の塊・・・・当たり前のことなのに、そう思うのは不謹慎かな?」
「今はそうだとしても、彼らは生きていた。必死に戦ったんだ。俺にはとてもそんな風には見えない。」
「なら俺は冷たい奴か?」
「かもしれんな。まあ今さら驚きはしない。そういう見方の出来る奴じゃないと、緑川を仕留めるのは無理だろう。
あいつは人間の持つ善悪の観念を逆手に取る。それはつまり、あいつ自身がそういうものに縛られていないってことだ。自由過ぎるんだよ、あいつもお前も。」
東山は吐き捨てるように言う。沢尻は頷き、山に視線を移した。
「王が消えた今、緑川はもう動き出してるはずだ。」
「分かっている。だからドッペルゲンガーを使わせた。きっと化け物どもが動いてくれているはずだ。」
「妖怪とUMA・・・・かなりの数で攻めるつもりだろうが、緑川に勝てると思うか?」
「無理だろう。しかし勝てなくてもいい。追い詰めることが出来ればそれでいいんだ。そうなりゃあいつは必ず「こっち」に逃げて来る。そこを俺たちが叩く。」
「あいつもさすがに人間と化け物の両方を相手にしちゃ勝てないか・・・・。しかしそうそうこっちの思い通りに動いてくれるとも思えん。」
沢尻は橋を渡り出し、「俺たちは「向こう」へ行こう」と言った。
「ここは自衛隊に任せればいいさ。」
「じっとしてるつもりはないってか?」
「当然だ。」
「あいつはお前の事を一番警戒してる。だからお前の方から来ることも予想してるだろう。下手にこっちから行けば、返り討ちに遭うかもしれんぞ?」
「今更死ぬのをビビッてられるか。」
「そうじゃなくて、お前が死んだら緑川を仕留めるのが難しくなると言ってるんだ。チャンスが来るまで待つべきだ。」
二人が橋の真ん中で言い合いをしていると、「行きたきゃ行ってこい」と誰かが言った。
「別にお前らなんざいなくても、俺たちだけで充分だ。たかが警官二人いなくなったところで、こっちに支障が出るとでも思ってるのか。」
そう言ったのは鏑木だった。
遺体を回収する部下を見つめながら、チラリと視線を流す。
「もうじき応援も来る。お前らなんか抜けても問題ない。」
不機嫌そうに言って、死んでいった仲間を見つめる。
「おい。」
そう言って沢尻に目を向け、「ここに肉の塊なんてない」と睨んだ。
「こいつら俺の部下だ。化け物から街を守る為に戦ったんだ。分かってるか?」
「・・・・すまない。軽率な言い方だった。」
「お前はアレだろ?緑川と同類なんだろ?」
「よくそう言われる。」
「そうか。ならお前もあいつと一緒にくたばったらどうだ?」
鏑木は小さく笑いながら言う。すると東山が「おい」と食ってかかった。
「こいつがあんたの部下をなじったのは悪かった。しかしな、そういう言い方はするもんじゃないだろう。」
「緑川と同類ってことは、いつアイツみたいになってもおかしくないって事だ。だから俺個人としては、緑川と刺し違えてくれるのが一番うれしい。」
「何言ってやがる。確かにこいつは緑川と似てる所がある。しかしまったく同じというわけじゃない。だからこそ、あいつを仕留めようとここまで来たんだ。」
「同類だからこそ、相手が気に食わんってこともある。」
「だとしても、こいつがいなきゃ緑川はもっと人を殺していた。あんただって奴と戦ったんだろう?あいつが俺たちだけで止められると思うか?」
「思うね。いくら強かろうが、しょせんは一人の人間だ。」
そう言って二人の前まで歩いて来て、「UFOは消えたが、応援は予定通り来る」と頷いた。
「ここへ大部隊が向かってる。前回の戦いとは比べものにならないほどの部隊だ。負けることはあり得ない。」
「UFOが消えたのに大部隊が?」
沢尻が尋ねると、「この山を丸裸にする為さ」と答えた。
「UFOは去ったが、まだ油断は出来ない。もし緑川が「こっち」に現れたら、この山ごと焼き払う。逃げ場なんてないくらいに、ミサイルや砲弾が降り注ぐだろう。」
「しかし「向こう」へ逃げられたら・・・・・、」
「その為の化け物との連携だろうが。」
「それはそうだが・・・・・、」
「それにお前らだって「向こう」へ行くんだろう?なら緑川を「こっち」へ追い出すくらいの事はしてみせろ。でなけりゃ奴と刺し違えればいいんだ。」
鏑木は本気でそう言った。
こんなわけの分からない争いの為に、いったいどれほどの部下が死んでいったか。
それを思うと、とても平静ではいられなかった。
「俺たちはな、確かにこの国を守る為にいる。でも化け物と戦う訓練なんざ積んじゃいないんだ。奴らと戦うってことは、死にに行くのと同じようなもんだった。」
遺体袋に回収されていく亡骸を見ながら、「俺だってこうして生きてるのが不思議なくらいだ」と言った。
「昨日の戦いで全滅していてもおかしくなかった。現に米軍の方はほぼ壊滅状態だったからな。」
「ああ・・・。」
「もう御免だよ、こんな事は・・・・・。相手が化け物だろうが、国や国民を守る為だというなら戦うしかない。でもな、俺たちはゴーストバスターズじゃないんだ。
あんなわけの分からない奴らの為に、これ以上犠牲を出してたまるか。」
悔しそうに眉をひそめ、「お前らに愚痴ったところでしょうがないが・・・」と言った。
「もしまた化け物の大群が現れたら、こんな風に死人が出る。その時俺たちが負けてしまったら、さらに大勢の人が犠牲になる。だから・・・・死んでも緑川を仕留めて来い。
それが無理なら「こっち」へ炙り出せ。俺たちが必ず叩き潰してやるから。」
鏑木は強い口調で言う。沢尻の目を睨み、「あいつは生かしておいたら何をしでかすか分からない」と首を振った。
「そうだな。UFOは去ったが、「向こう」が消えた様子はない。ならここで緑川を仕留めないと、あいつは延々と暴れ続ける。」
沢尻も回収されていく遺体に目を向け、小さく黙祷を捧げた。
「俺たちは「向こう」へ行く。あんたは「こっち」で戦う。お互い命懸けで。」
「だから刺し違えろって言ったんだ。死んでも役目を果たして来い。でなきゃこっちから行って、ケツを蹴り上げてやる。」
そう言って踵を返し、遺体が転がる土手に降りていく。
「なああんた!」
「なんだ?」
「娘が世話になったってな。礼を言うよ。」
深く頭を下げると、「助けられたのはこっちだ」と答えた。
「あの子が来てくれなきゃ、もっと大きな被害が出ていた。今はどうしてる?」
「安全な所にいるよ。色々とあって傷ついてるが、でも必ず立ち直る。あいつは俺の娘だからな。」
「そうか・・・・。だったら刑事にだけはならないように言っておけよ。ああいうタイプは無茶をする。きっと長生きできない。」
「散々言ってるよ。でも本人はどうやらこっちに来たがってる。」
「だったらお前が守ってやらないとな。親父がこんなんじゃなけりゃ、もっと別の道に進もうとしたかもしれないのに。」
皮肉っぽくそう言って、もう話すことはないとばかりに去っていく。
東山は「なんなんだあいつは・・・」と顔をしかめた。
「緑川と刺し違えろなんて言っときながら、今度は娘を守ってやれか。いったい何が言いたいんだか。」
「多分・・・・あいつも元々は自衛官になる気はなかったんじゃないか?ただ親の背中を見て育ったから、気がつけばここにいたって口だろう。」
「ならお前の親父も?」
「いや、いたって普通の仕事だった。」
「そうか。ならあいつの言うことの方が正しいかもな。お前みたいな変わり者の親父じゃなければ、早苗ちゃんも苦労しなかったろうに。」
そう言って歩き出し、「早く来こう」と振り返った。
「ああ。でもまだドッペルゲンガーが・・・・、」
「戻って来たよ。」
菱形の鏡を取り出すと、東山の隣にドッペルゲンガーが現れた。
「こいつが戻って来たってことは、化け物どもはすでに戦ってるってことだ。今なら緑川の背後を突けるかもしれん。」
「そうだな。この騒ぎもそろそろ終わりにしないと。」
肉挽き刀を振り、空を切る音を響かせる。
ペケの遺した形見でどこまで戦えるか?この歪な刃で、緑川の腐った魂を切り裂けるか?
死ぬ覚悟はあっても、確実に仕留められる自信はない。しかしそれは、緑川も同じかもしれないと思った。
あいつと自分が似ているのなら、抱えている不安も同じだろうと。
「緑川・・・・俺はお前が怖い。だけどお前も俺を怖がってるんだろう?だったら今すぐ行ってやるよ。」
山を見上げ、完全に顔を出した陽に目を細める。
東山が合図を出し、ドッペルゲンガーは大きく口を開けた。
二人を飲み込み、緑川の待つ「向こう」へと消えていく。
鏑木は橋を振り返り、彼らが健闘してくれる事を祈った。


            *


大きな大きな首狩り刀が、死神の鎌のように命を刈り取る。
たった一閃するだけで、周りにいるUMAや妖怪を切り裂いていく。
しかしそれでも化け物は怯まない。数に物を言わせて、緑川に襲いかかる。
殺しても殺しても群がって来る化け物たち。
緑川はイナゴの大群を思い出し、『こいつら虫と一緒だな』と舌打ちをした。
『空から殺虫剤でも撒いてやりたいよ。』
そう言って羽を動かし、鱗粉をばら撒いた。
化け物は鱗粉を吸い込み、激しく嘔吐する。しかしそれでも怯む様子を見せなかった。
敵の数は圧倒的で、緑川は苦戦を強いられる。
しかしどんなに猛攻を仕掛けられても、決して池の傍から離れなかった。
なぜならそこには無数の髑髏が並べられていて、それこそが首狩り刀の力を支える物だったからだ。
すでに100匹以上の化け物を切り裂いているので、刀はどんどん短くなる。
しかし池の傍にいれば、いつだって髑髏を補充できる。柄の部分から伸びた数珠つなぎの髑髏が、池の周りの髑髏を吸い上げて力を保っていた。
刀はゆうに10メートルは超えていて、たった一閃でウェンディゴや牛鬼まで葬ることが出来る。
それにツチノコやのっぺらぼう、スカイフィッシュなどの小型の化け物は、ほんの一振りで10匹は死んでいく。
かつて戦ったUMAや妖怪は、もはや敵ではなかった。
戦い方も倒し方も熟知しているので、いくら多勢で来られても引けは取らない。
しかし中々倒せない厄介なUMAもいる。それがオボゴボだった。
オボゴボは池に浸かり、牙の先から毒を飛ばしてくる。そして池に近づきすぎると、その巨体で水中に引きずり込もうとしてくるのだ。
しかも攻撃を仕掛けようとすると、サッと水中に逃げてしまう。
緑川は鬱陶しそうに舌打ちをして、『虫殺しの槍があればな・・・』と呟いた。
『あれってどこにいったんだっけ?確かミノリに向かって投げて、その後は・・・・・、』
そう言いかけた時、目の前にドッペルゲンガーが現れた。
黒い影のような身体をうねらせながら、手を振って攻撃してくる。
緑川はかがんでそれをかわそうとするが、咄嗟に後ろへ飛び退いた。
なぜならドッペルゲンガーの手の中から、虫殺しの槍が伸びてきたからだ。
『お前が持ってんのか!』
この毒を喰らえばひとたまりもない。緑川は首狩り刀を振り、ドッペルゲンガーを一刀両断した。
そして虫殺しの槍を奪おうと時、斬られたドッペルゲンガーの中から、別のドッペルゲンガーが現れた。
『ちょッ・・・・・、』
緑川は驚き、また後退する。
ドッペルゲンガーは虫殺しの槍を拾い、緑川の喉目がけて突いてきた。
『手品みたいことするなよこの雑魚!』
首を捻ってそれをかわすと、ズボンの後ろに手を突っ込む。
そこから匕首を取り出し、虫殺しの槍を叩き落とした。
ドッペルゲンガーは武器を失い、背中を向けて逃げようとする。
『逃がすか馬鹿。』
首狩り刀を振り回し、逃げていくドッペルゲンガーを切り裂く。
その時、背後に気配を感じて、振り向きざまに斬りつけた。
『ああああああああああああ・・・・・、』
そこには煙々羅がいて、虫殺しの槍を拾おうとしていた。
『これ元々お前の仲間が持ってたんだよな?でも返さないぞ。』
そう言って槍を拾うと、池の上に舞い上がった。
巨大ムカデやモスマンが邪魔をしてくるが、鱗粉を放って嘔吐を見舞わせる。
そして池の中央までやって来ると、わざと水面まで近づいてオボゴボを挑発した。
首狩り刀でバシャバシャと水を叩き、おびき出そうとする。
すると緑川の挑発に引っかかって、オボゴボが顔を出した。
『イイイイイイイイイ!』
姿に見合わない甲高い声で、牙を剥いて襲いかかって来る。
緑川は槍を逆手に持ち、オボゴボの口の中へ投げ入れようとした。
しかし遠くから銃声が響いて、咄嗟に後退した。
『なんだ?もう沢尻が来て・・・・・、』
そう言って銃声のした方を見ると、そこには河童モドキがいた。
ウェンディゴの頭の上で、緑川が隠しておいた機関銃を向けている。
『なんだアイツ。』
緑川は素早く飛び回り、銃弾を回避する。するとそこへオボゴボが飛びかかってきて、毒液を吐いた。
『鬱陶しいなお前。』
サッと毒液をかわし、オボゴボの頬に槍を突き立てる。
『イギイイイイイイイイイ・・・・、』
槍の尖端から毒液が注がれ、オボゴボの体内は一瞬にして腐敗する。
すると緑川の背後から水柱が上がり、またオボゴボが現れた。
『まだいたのか・・・・、』
咄嗟に反転し、虫殺しの槍を振る。するとそこへ機関銃が連射され、羽を撃ち抜かれてしまった。
『あの雑種野郎・・・・・、』
羽に穴が空いたせいで、わずかに機動力が落ちる。
そこへ今がチャンスとばかりに、空を舞う化け物たちが襲いかかってきた。
ウェンディゴも遠くから電撃を放ち、河童モドキは銃を連射する。
空中で四方八方から攻撃を受け、さすがの緑川も狼狽える。
『ほんっと鬱陶しいなお前ら・・・・。』
苛立たしそうに舌打ちをするが、このままでは殺されかねない。
ここはいったん退いて、体勢を立て直そうとかと考えた。
しかし勢いづいた群れにそれをやると、戦いの流れが不利になる。
緑川は『しょうがない』と呟き、追い詰められた時の最終手段に出た。
あえて機関銃の銃撃を受け、大怪我を負ったのだ。
するとその瞬間、首狩り刀の髑髏が巨大化して、周りの化け物たちに襲いかかった。
断末魔の叫びを上げながら、無念のうちに殺された苦痛を吐き出す。
オボゴボもスカイフィッシュも巨大ムカデも、そして迫りくる弾丸ですら、その呪いによって腐敗していく。
呪いは強大で、池の周りの髑髏を消費ながら、どんどん広がっていく。
それは遠くから銃を撃っていた河童モドキにまで迫り、慌てて逃げ出していった。
池の周りはおぞましい髑髏によって埋め尽くされ、地獄の蓋が開いたような、見るのも躊躇われる光景に変わっていく。
緑川はしばらくの間は傷を治さなかった。
血が流れて意識が朦朧とするが、回復してしまえば呪いが終わってしまう。
池の傍に横たわり、地獄の蓋が開いたような光景の中で、じっと目を閉じていた。
四方八方から髑髏の叫びが聞こえていて、逃げまどう化け物の阿鼻叫喚も響いてくる。
彼の周りにいた化け物は全て死に、池の中のオボゴボも息絶える。
しかしそれでもまだ傷を治さず、呪いを放ち続けた。
このまま化け物を圧倒する事が出来れば、戦意を失って逃げ出してくれるかもしれない。
そう願いなら、傷口を押えて意識を保っていた。
《もう・・・・そろそろ限界かな・・・・・。》
傷口から血が流れ、さすがに意識を保つのに限界がやって来る。
死んでしまっては元も子もないので、毒針を打ち込んで治そうとした。
しかし彼の傷が癒える前に、髑髏の叫びが消えた。
《なんだ・・・・?》
どうしたのかと思って目を開けると、呪いの髑髏がある場所に向かって吸い込まれていた。
『あ・・・・・・・、』
緑川は思わず声を上げる。
なぜなら河童モドキが掲げるペケの頭に、髑髏が吸い込まれていたからだ。
『なんで?あいつ死んだんじゃ・・・・・、』
ペケには人の思念を操る力があった。だから髑髏の呪いを吸い込んだとしても、おかしなことではない。
しかしどうして死んだはずのペケが、呪いを吸収しているのか?
緑川は傷が癒えるのと同時に立ち上がり、河童モドキを睨みつけた。
『あの雑種・・・・やっぱ普通の化け物じゃないな。』
ペッと唾を吐き、朦朧とする頭を叩く。
血を失った分目眩がするが、今はよろけていられない。
首狩り刀を構え、呪いが吸い込まれていく様子を眺めた。
やがて全ての呪いが吸い込まれ、死んだはずのペケの顔が震え出す。
すると河童モドキは驚く行動に出た。
なんと自分で自分の頭をもぎ取ってしまったのだ。
河童ともチュパカブラとも付かない頭が、ごろりと地面に転がる。
河童モドキは頭を失い、首の先から千切れた骨が伸びていた。
そしてその千切れた骨の先に、ペケの頭を乗せた。
するとペケの頭からも骨が伸び、河童モドキの骨と結合した。
『おい・・・・なんだよそれ・・・・、』
さすがの緑川も慄き、一歩後ずさる。
結合した骨は、河童モドキとペケの頭をしっかりと繋ぐ。
そして骨の周りに肉が付き、皮膚まで再生した。
『・・・・・・・・・・・・。』
緑川は顔をしかめ、無言で立ち尽くす。
こんなの有りなのか?と思いつつ、冷や汗を垂らしながら刀を構えた。
ペケの頭に変わった河童モドキは、その繋がり具合を確かめるように、グルリと頭を動かした。
そしてパンパンと頬を叩き、『おい』と隣ののっぺらぼうに呼びかけた。
『頭持っといて。』
そう言われて、のっぺらぼうは河童モドキの頭を拾う。
『ちゃんと持っててな。』
指を差しながらそう言って、緑川の方に目を向ける。
『・・・・お前、もう終わりだから。』
河童モドキは声までペケに変わっていた。緑川はさらに慄き、ごくりと唾を飲んだ
『まさか生き返ったとかじゃないよな?』
そう尋ねると、河童モドキは『流石にそれはない』と答えた。
『俺たちの守り神、ペケは死んだ。これはただの頭だから。』
『・・・・でもさっき髑髏を吸い込んでた。それに声までアイツになってるし・・・・、』
『俺がやったの。』
『お前が・・・・?』
『俺、頭が一番重要な部分じゃないんだよ。あんなもんはいくらでも取り換えられるから。』
『だったらどこに身体の中心があるんだ?心臓か?それとも腹?』
『教えるわけないだろ。馬鹿じゃないのお前。』
そう言ってペケの頭を叩き、『俺は死んだ身体を再利用できるんだ』と答えた。
『ペケは死んだけど、でも頭は不敗せずに残ってる。俺の粘液をぶっかけて保存してたから。』
『粘液で保存・・・・・?』
『空気に触れなきゃ腐らないだろ?薄い膜みたいに張り付かせて、この頭を保存しといたわけ。まあ真空パックと一緒だな。』
『・・・・・・・・・・・・。』
『例えばさ、人間でも臓器移植とかするだろ?アレと一緒だよ。使えるパーツを再利用してるだけ。』
『でも・・・・頭をくっ付ける前に髑髏を吸い込んでたじゃん?』
『まああれくらいなら結合しなくても出来るよ。こうやって爪を指せば、部分的に繋がれるから。』
そう言って、頭に爪を突き立てた。
『これでお前の切り札である、髑髏の呪いを封じたってわけ。ペケにはそういう力があったから、頭さえ再利用できるなら俺にも可能なんだよ。』
『・・・・・ほとんど反則だなそれ。』
『どこが?さっきも言ったけど、人間だって臓器移植をするんだ。そして移植は人間の専売特許じゃない。俺たちだって出来るんだよ。』
そう言い返され、緑川は黙り込む。
『もうお前に手は残されていない。切り札が通用しないんじゃ勝てないだろ?』
『そんな事ないよ。まさか化け物が機関銃を撃つなんて思わなかったから、ちょっと焦っただけだ。次にあんな奇襲が通用すると思う?』
そう言って池の周りの髑髏を吸い上げ、首狩り刀を大きく伸ばした。
その長さは15メートル以上あり、『これが短くなるまで、いったいどれだけ殺せると思う?』と笑った。
『きっとお前は、池の周りの髑髏を吸い取る事も出来るんだろう?』
『出来るよ。かなり時間がかかるけど、やれない事はない。』
『でも首狩り刀の髑髏は無理だ。呪いになって放たれれば別だけど、数珠繋ぎになってる状態じゃ吸い取れない。もしそんな事が出来るなら、とうにやってるだろうから。』
『それがどうした?』
『簡単な事じゃんか。お前は池の周りの髑髏を吸い取れる。でも時間がかかる。なら俺はその間にお前らを殺しまくる。』
『そうだな。』
『お前が池の周りの髑髏をすい尽くす頃、もう仲間はいない。全部俺が殺すからな。その時、お前は一人で俺と戦わないといけない。勝つ自信がある?』
『さあね?』
『強がるなよ。ビビってるんだろ?』
緑川は挑発的に笑う。しかし河童モドキは小さく首を振った。
『お前・・・・やっぱ馬鹿だな。』
『何が?』
『お前が相手にするのはUMAや妖怪だけじゃないってこと・・・・忘れてないか?』
河童モドキはそう言って、緑川の後ろに目をやる。
その視線に釣られて緑川も後ろを向いた瞬間、身体に何かが纏わりついた。
『なんだ・・・・?』
見てみると、背中から足元にかけて、べっとりとした粘液が絡まっていた。
羽にもたっぷりと絡んでいて、歩く事も飛ぶ事も出来ない。
『お前・・・・・、』
緑川は眉間に皺を寄せ、まとわりつく粘液を睨む。
『古臭い手え使ってんじゃねえよ。』
そう言って首狩り刀を振り回し、河童モドキに投げつけた。
しかしその瞬間、背後から銃声が響いた。
ギン!という金属音が響き、投げた首狩り刀が撃ち落とされる。
『・・・・・・・・・・・。』
緑川は落ちた刀を睨みながら、ゆっくりと後ろを振り返る。
彼の複眼に、最も警戒すべき男の姿が映った。

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