呪いのカメラ

  • 2016.07.01 Friday
  • 12:06

JUGEMテーマ:自作小説

あれは暑い夜のことでした。
仕事を終えた私は、いつものように電車で帰宅。
駅に着き、改札を出て、線路を渡す陸橋の上で、疲れを吐き出すように背伸びをしました。
その時、後ろから誰かがぶつかってきて、思わず陸橋から落ちそうになりました。
「危な・・・・。」
慌てて手すりに摑まると、ふとおかしなものが目に目に入りました。
駅の外に子供がいたのです。
カメラを持って、じっと一点を睨んでいます。
時刻は夜の10時。
こんな時間に、子供が何をしているんだろうと不思議に思いました。
気になった私は、「僕?」と声を掛けました。
「こんな時間に何してるの?」
返事はありません。
線路を向いたまま、小さなデジカメを構えているだけです。
「写真撮ってるの?」
「・・・・・・・・・。」
「一人で来てるの?」
「・・・・・・・・・。」
「夜は危ないから、もう帰った方がいいよ。」
「・・・・・・・・・。」
子供は何も答えません。
ただじっと一点を見つめているだけです。
私は不思議に思い、子供の視線の先に目を向けようとしました。
いったい何があるのだろうと。
すると駅に停まっていた電車が、ゆっくりと動き出しました。
子供はカメラを構え、シャッターに指を掛けます。
「電車を撮るの?」
「・・・・・・・・・。」
「それ撮ったら、もう帰った方がいいよ。子供が夜に一人でいちゃ危ないから。」
子供は私を無視して、シャッターを切ります。
たった一枚、パシャっと。
すると私の方を見て、ニコリと笑いました。
「僕、これで帰れる。」
そう言ってカメラを押し付けてきました。
「じゃあね、お姉さん。ごめんね・・・・。」
子供は手を振りながら、線路の方へ歩き出します。
「危ないよ。線路は歩いちゃダメだから。」
引き止めようとすると、周りにいた人たちが慌ててやってきました。
そして子供の方を見つめています。
私はてっきり子供を線路から連れ戻そうとしているのだと思いました。
しかし・・・・そうではありませんでした。
集まってきた人たちは、ある一点をじっと見つめているのです。
「何・・・・?」
不思議に思って覗いてみると、そこには人が倒れていました。
それも上半身が無い状態で・・・・。
私は悲鳴を上げ、その場から逃げ出そうとしました。
しかしなぜか駅から出ることが出来ません。
「どうして・・・・。」
不思議に思った時、ふと子供から押し付けられたカメラが気になりました。
「あの子・・・・写真を撮ってたはず。」
電車が通る瞬間を撮っていたなら、轢かれた瞬間が写っているはず。
怖いと思いましたが、好奇心に負けて画像を再生してみました。
「・・・・・・・・・なんで?」
カメラには人が撥ねられる瞬間が写っていました。
しかし私が驚いたのは、そのことではありません。
「撥ねられてるの・・・・・私?」
カメラの中には、電車に撥ねられる私が写っていました。
まさかとは思いつつも、さっきの場所へ戻りました。
「・・・・・・・・・・。」
下半身しかない遺体・・・・それは紛れもなく私でした。
穿いているスカート、履いている靴、そして左足にある火傷の痣・・・・・。
怖くなり、足が震えました。
もう一度カメラを見つめ、画像を確認。
さっきと同じ写真が出て来て、信じられない思いで首を振りました。
「なんで・・・・どうして私が撥ねられて・・・・、」
わけが分からず、泣き出したい気分に駆られます。
その時、指がコマ送りのボタンを押してしまい、前の写真が表示されました。
それを見た私は、今度こそ悲鳴を上げました。
「あああああ・・・・、」
前のコマに写っていたもの、それはさっきの子供だったのです。
そして・・・・私と同じように、電車に撥ねられていました。
「どうして・・・・、」
まさかとは思い、他の写真も確認します。
「・・・・・・・・いや・・・、」
どの写真にも、電車に撥ねられる人が写っているではありませんか。
私はいよいよ怖くなって、ボロボロと泣き出しました。
しかしこの場から逃げようと思っても、なぜか駅の外へ出られません。
「これ・・・・もしかしたら・・・・私も撮らないといけないんじゃ・・・・、」
カメラを私に押し付けたあの子供。
あの子は写真を撮った後、嬉しそうに笑っていました。
そしてこう呟いたのです。
「僕、これで帰れる。」
私は確信しました。
あの子と同じように、人が撥ねられる瞬間を撮らないと、ここから出られないのだと。
それから二年、私はこの駅にいました。
来る日も来る日も、誰かが撥ねられないか待ち続けます。
しかし一向に事故が起きる気配はなく、とうとう痺れを切らしました。
事故が起きないなら、自分で起こすしかない・・・・。
私は陸橋の上に立ち、電車から降りて来る人達を待ちかまえました。
幸いなことに、今の私は人の目に映りません。
だから・・・・後ろからドンと突き飛ばしたのです。
私と同じくらいの年齢の、若い男の人を・・・・。
彼は線路に落ち、ピクリとも動きません。
私はすぐに駅の駐車場まで降りて、彼にカメラを向けました。
「早く・・・・早く動いて・・・・・。」
二年も待ったこの瞬間・・・・ようやくここから出られるかと思うと、手が震えます。
私はすでに死んでいるので、この駅から出たらどうなるのかは分かりません。
だけど永遠にこんな場所にいたら、天国にも地獄にも行けず、生まれ変わることもないでしょう。
だから・・・・早くと願いなら、電車を睨みました。
「あの・・・・何してるんですか?」
ふと声をかけられて、顔を上げまました。
そこにはさっき突き飛ばした若い男の人がいました。
「こんな夜に何してるんですか?」
私がニコリと微笑むと、彼は「こんな夜に写真撮ってるんですか?」と眉をひそめました。
二年前のあの夜と、まったく同じ光景・・・・。
ただ立場が逆なだけで・・・・。
ゆっくりと電車が動き出し、線路に倒れる彼に迫っていきます。
私はカメラを向け、シャッターを切りました。
「これでやっと・・・・・。」
そう呟いて、彼にカメラを押し付けます。
「あなたのおかげで自由になれます。
大変だろうけど頑張って。それじゃあ。」

 

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