撮ってはいけない

  • 2016.07.03 Sunday
  • 11:04

JUGEMテーマ:自作小説

神社を撮るのが趣味だった。
特に人の来ない寂れた神社はいい。
山の麓にひっそりと立ち、木立に囲まれて光が届かない神社が最高だ。
車を走らせれば、意外とそういう神社は見つかる。
誰かが言っていたけど、参拝者の来ない神社には、近寄らない方がいいらしい。
祈りを捧げる人間がいないと、神様がどこかへ行ってしまうからだそうだ。
そしてその代わりに、悪いモノが棲みつくようになる。
ホントかどうか知らないけど、でもそういう神社こそが好きだった。
車を走らせ、人が来ない寂れた神社を探す。
すると奥まった路地の方に、鳥居らしきものが見えた。
畦道に車を止め、バッグからカメラを取り出す。
時代はデジカメだけど、僕はいまだにフィルムカメラを使っている。
それもレンズが二つ付いた二眼レフだ。
縦に二つのレンズが並んでいて、上はファインダー用、下は撮影用だ。
フィルムを装填し、露出計を携えて神社に向かう。
奥まった路地に立つ神社は、木立に囲まれて真っ暗だった。
鳥居はヒビが入り、長く手入れがされていないことが分かる。
「ええな。」
露出計を向け、光を計る。
そしてファインダーを覗き、シャッターを切った。
カチンという小さな音が響き、フィルムに鳥居が焼きつけられる。
僕は鳥居を潜り、暗い参道を歩いた。
するとすぐに本殿が見えてきた。
曲がった参道の上に、ポツンと建っている。
ここまでやって来ても、高い木立のせいで光は届かない。
薄暗い本殿、両脇に座る狛犬。
僕は胸を弾ませ、カメラを向けた。
「・・・おっと、その前にお賽銭を。」
十円を入れ、鐘を鳴らして手を叩く。
薄暗い神社を何枚も撮影し、新しいフィルムに詰め替える。
胸が弾むと、シャッターを切る回数も増える。
新しいフィルムで撮り終え、また次のフィルムを装填する。
そして撮影を終えて満足し、神社を出た。
するとその時、鍬を担いだ婆さんに出くわした。
「あんた、この神社の写真撮ったんけ?」
「ええ・・・・、」
「悪いこと言わんから、その写真は捨てとき。見たらあかんで。」
そう言い残し、婆さんはどこかへ行ってしまった。
気味悪い婆さんだなと思い、神社を後にする。
それから翌日、現像に出していた写真が仕上がった。
店に行き、写真を受け取ろうとすると、店員が難しい顔でこう言った。
「あの・・・・この写真って・・・・、」
「はい?」
「一応プリントしたんですが、ちょっと確認してもらっていいですか?」
店員は袋から写真を出す。
それを見た僕は、眉を寄せて固まった。
「なんやこれ・・・・・、」
薄暗い神社を撮ったはずなのに、そこには人が写っていた。
鳥居の前に立ち、手招きをしている。
しかも手招きをしているその人物は・・・・あの婆さんだった。
「なんであの婆さんが写って・・・・・、」
「こっちの写真も見て頂けますか?」
店員に言われ、カウンターに並べられた写真を見つめる。
そこには鍬を振り上げて、誰かを殴っている婆さんがいた。
鬼の形相で鎌を振り上げ、返り血を浴びている。
そして・・・・殴られているのは僕だった。
頭から血を流し、死にそうな顔で叫んでいる。
店員は「これって・・・・」と顔をしかめる。
僕はお金だけ払い、「破棄してもらっていいですか?」と尋ねた。
そして店員に写真を押し付け、店を後にした。
その日の夜、嫌な気分で眠りについた。
夢の中にあの神社が出て来て、僕は一人で立っている。
そこへあの婆さんがやって来て、こう呟いた。
「写真を捨てろと言うたやろ。」
そう言って鎌を振り上げ、僕を殴った。
「ここに棲みついとるって、神さんにバレたら不味いんや。
あの写真を見たもんは死んでもらうで。」
夢の中で、僕は婆さんに殺された。
でもしょせんこれは夢だと分かっていた。
怖いけれど、目が覚めればなんてことはない。
そう思って、死にゆく自分を眺めていた。
だけど・・・すぐに夢じゃないと分かった。
なぜなら死んだ僕の傍に、あの店員もいたからだ。
パックリと頭を割られて、目を剥いている。
その横には同じ制服を着た店員がいて、彼もまた死んでいた。
これは夢・・・・現実じゃない・・・・・。
そう思っても、こんな光景を見せられたら怖くなる。
だから僕は逃げた。
神社から駆け出し、とにかく逃げた。
だけどどこまで走っても、逃げることは出来なかった。
振り返ればいつだってそこに神社があり、あの婆さんが立っている。
だから僕は、逃げて逃げて逃げ続けた・・・・。
あれからどれくらいの月日が経っただろう・・・。
僕は今でも逃げ続けている。
走っても走っても終わらない道を走って、出口を探している。
そしてどんなに走っても、振り向けばそこにはあの神社があった。
鳥居の奥から婆さんが現れ、鍬を振りかざす。
僕はこの悪夢から、二度と覚めることはなかった。

 

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