サッカー少年とお地蔵さん

  • 2016.07.04 Monday
  • 13:10

JUGEMテーマ:自作小説

学校の休み時間はいつもサッカーをする。
今日は隣のクラスの奴らと戦ってる。
今は0−2で俺のクラスが負けていた。
俺が本気を出せば逆転なんて余裕だけど、そんなことはしない。
サッカー部が本気を出したら、素人が可哀想ってもんだ。
相手のクラスにもサッカー部の奴がいるけど、もちろん本気は出していない。
適当にパスを回したり、たまに一人か二人くらい抜いてるだけだ。
サッカー部はシュートをしちゃいけない決まりになってるから、負けてても本気は出せない。
まあ決まりって言っても、なんとなくそうなってるだけなんだけど。
暗黙の了解?ってやつだ。
だけどまた相手にゴールを決められて、その次もまた・・・・。
さすがに0−4で負けるのはイヤだったから、ちょっとだけ本気を出させてもらうことにした。
これも暗黙の了解なんだけど、点差が3点以上になった時は、サッカー部もシュートをしていい決まりになってる。
だから相手のフィールドまで上がって、飛び込んで来たパスをヘディングで押し込んだ。
押し込んだ・・・・つもりが、ポールに当たって跳ね返ってくる。
俺はボールに飛び込んで、思い切りシュートを打った。
だけど相手のキーパーもこれまたサッカー部で、パンチングで上手いこと弾きやがった。
ボールはゴールを飛び越えて、グラウンドの後ろへ転がっていく。
俺は「取りに行くわ」と駆け出した。
グラウンドの周りにはフェンスが張ってあるんだけど、穴の開いてる場所がある。
ボールはコロコロと転がって、その穴から外へ出てしまった。
「ああ、面倒くさ・・・。」
フェンスの穴を潜り、外まで走る。
その時、クラスの奴が「危ない!」と言って、「え?」と振り返った。
その瞬間、すぐ目の前にトラックが来ていた。
「あ・・・・・、」
よける間もなく、トラックがぶつかる。
死んだ・・・・・そう思った。
だけどトラックはそのまま通り過ぎて、俺は無事だった。
なんで?と思ってると、背中に固い物が当たった。
振り返ると、そこにはお地蔵さんがいた。
このお地蔵さんは、学校の傍にある川の近くに立っていて、その後ろにはお墓がある。
夜になると勝手に動くって噂があって、俺はすぐに離れた。
でもその時、お地蔵さんの首にカメラがぶら下がってるのに気づいた。
「なんで?」
いつもはこんな物はないのに、なんでかカメラを持っている。
そのカメラをじっと見つめてると、お地蔵さんが喋り出した。
「ごめんな、助けてやれんで。」
「・・・・・・・・・・ッ!」
「あ、怖がらんでええから。」
お地蔵さんは「大丈夫、ビビらんでええから」と笑った。
そんなこと言ったって、怖いに決まってる。
だから逃げ出そうとしたんだけど、「後ろ振り向いたらあかん」と言われた。
「見たらあかんで。ショック受けるから。」
そう言われて、俺は「何が・・・?」と固まった。
「あのな、言いにくいんやけど・・・君死んだんや。」
「え?」
「さっきのトラックに撥ねられてな。」
「いや、でも通り過ぎて・・・・、」
「うん、君を撥ねてそのまま逃げたんや。」
「・・・・・マジ?」
「マジや。」
お地蔵さんは頷き、「ここ大型車は通行禁止なんやけどなあ」と言った。
「この道路、通学路になってるやろ?しかも道幅もそんなにないやん?
だから日中は大型車は通ったらあかんことになってんねん。」
「知ってるけど・・・・、」
「あのトラックな、ちょいちょいここ通ってんねん。
通ったらあかんって知ってるはずなんやけど、近道になるみたいでな。」
そう言って「はあ〜・・・」とため息をついた。
「君、まだ小学五年生やろ?」
「そうやけど・・・・、」
「その歳でなあ・・・・可哀想に。」
お地蔵さんは本気で悲しい顔をする。
そして「これ、役に立つと思うわ」とカメラを見せた。
「毎日ワイのお世話をしに来る人がおんねんけど、その人がコレ忘れていきよってん。
コイツでバッチリ証拠を押さえたから、まあ捕まるのは時間の問題やろ。」
「・・・・・・・・・。」
「どうした?」
「あのさ、写真撮る暇があるんやったら、なんで助けてくれへんかったん?」
「まあ・・・そら最もな疑問やな。」
「だからなんでって?」
「間に合わんかった。」
「・・・・・写真撮る暇あったのに?」
「写真なんてすぐ撮れるやん。でも動いて助けに行くとなると、さすがに間に合わんかってな。」
お地蔵さん「悪いとは思てるよ」と頷く。
「ワイ、ここで子供らの安全を守るのが仕事やねん。」
「ほな助けろや。」
腹が立って、お地蔵さんを睨んだ。
「子供を守るのが仕事なんやったら、なんで助けてくれへんかってん?」
「だから間に合わんかったんやって。出来るなら助けてる。」
そう言って「すまんなあ・・・」と謝った。
「でもな、君は無駄死にちゃうで。」
「は?」
「そう怒りいな。ええか?今回事故が起きて、このカメラにバッチリ証拠が残ってる。
ということは、あのトラックの運転手はじきに捕まるいうことや。」
「それはさっき聞いたし。」
「こういう言い方をすると君に悪いんやけど、でも君の犠牲のおかげで、この道路の安全は守られるんや。」
「・・・・どういうこと?」
「トラックは二度とここを通らんいうこっちゃ。
それに今後は取り締まりも厳重になるやろし、子供らもこの道歩く時は気いつけるようになるやろ。
君が亡くなったのは不幸なことやけど、でもそれは無駄とは違う。」
「・・・・そんなん言われたって・・・・、」
何て答えていいのか分からなくて、泣きそうになってくる。
するとお地蔵さんは「こっち来い」と手招きをした。
俺は鼻をすすりながら、お地蔵さんに近づいた。
「辛いやろな。助けてやれんで堪忍な。」
「・・・・・・・・。」
「大丈夫、君は極楽に行ける。」
「でもサッカー選手・・・・・、」
「そやな、それは残念やったな。夢は諦めなしゃあない。」
「嫌や・・・・・、」
「堪忍な、堪忍。」
お地蔵さんは俺の頭を撫でる。
それは硬い石の手だけど、でもなんでか暖かく感じだ。
「人が集まってきたな。もうじき警察も来るやろ。
ワイはこれだけ渡して来るさかい、ちょっと待っててや。」
そう言って歩き出し「こっち見たらあかんで」と注意した。
しばらくすると戻って来て、「ほな行こか」と俺の手を握った。
「行くって・・・・どこに?」
「まずは家に帰ろ。お父さんとお母さんに会いたいやろ?」
「でも俺・・・・・、」
「うん。」
「死にたあない・・・・・だってサッカー選手に・・・・、」
お地蔵さんの手を引っ張って、どこにも行きたくないと首を振る。
でも逆に僕の方が引っ張られた。
「嫌や・・・・行きたあない!」
足を踏ん張っても、力が入らない。
お地蔵さんは俺を振り向いてこう言った。
「また戻って来られる。ちょっと時間は掛かるけど。」
「ほんまに・・・・?」
「ほんまや。でもその時の君が、サッカー選手になりたいかどうかは分からん。」
「なる・・・・絶対になる・・・・、」
顔を上げてそう言うと、お地蔵さんはニコッと笑った。
「君の夢は君が決めることや。せやけどしばらくはこの世を離れなあかん。
でも大丈夫、ワイが一緒におったるから。」
もう一度笑って「ほな行こ」と手を引いた。
お地蔵さんと一緒に行く時、パトカーがこっちに走って来た。
僕はちょっとだけ振り返る。
すると校長先生が、警察の人にさっきのカメラを見せていた。
「・・・・・ちゃんと捕まえてや。」
前を向き、お地蔵さんと一緒に歩いていく。
「なあ?」
「ん?」
「天国にもサッカーある?」
「あるで。」
「試合とか出来る?」
「ようやってる。」
「マジで?」
「ワイはようキーパーをやらされる。でも動きが遅いから、しょっちゅうゴール決められるけど。」
「あはは、あかんやんそれ。」
「下手でな。」
「俺が教えたるよ。」
「ほんまに?」
「うん、俺けっこう厳しいから覚悟しときや。」
「出来たらお手柔らかにしてほしいな。」
「ええか?まずキーパーっていうのは・・・・、」

 

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