不思議探偵誌〜探偵の熱い夏〜 第二話 若き芸術家の悲しみ

  • 2016.07.08 Friday
  • 12:45

JUGEMテーマ:自作小説

『ぜっっっっったいにイヤです!』
電話の向こうから由香里君の拒絶がこだまする。
悲鳴にも近いその拒絶は、何がなんでもイヤだという鉄の意志の表れだろう。
『なんで私がヌードモデルなんかやらなきゃいけないんですか!』
「だってあの子・・・・ええっと黄緑君だっけ?
その子がどうしてもって言うから・・・・・、」
『断って下さい!』
「いや、でも約束しちゃったんだよ。」
『なんでそんな勝手な約束するんですか!?』
「だって君と同じ大学だって言うからさ。」
『私はそんな人知りません!大学が一緒でも、ゼミや学部が違えば会うことなんてありませんから!』
「でもねえ・・・彼は今度のコンクールに懸けてるんだよ。
来年からは就活で忙しいから、絵を描いてる場合じゃないんだとさ。
だから大学最後のチャンスとして、何としても入賞したいみたいなんだ。
お願い出来ないかな?」
『イヤったらイヤです!』
由香里君の声はどんどん大きくなる。
耳がキンキンしてきて、電話を耳から離した。
『だいたいどうして久能さんに頼むんですか!
そんなにお願いしたいなら、直接私に言うのが筋でしょ。
人を頼るその根性が気に入りません。』
「いや、彼は君が留学してることを知らなかったんだよ。
もし君がいたら、直に頼んでたと思うよ。」
『もしそうだとしても、初対面の人にいきなりヌードモデルだなんて・・・・私は絶対にお断りです。』
「なら初対面じゃなければいいの?」
『え?』
「ほら、俺は君と付き合いが長いから。だから俺からお願いすれば・・・・、」
そう言いかけると、『久能さん』と声が低くなった。
『だんだん分かってきましたよ、久能さんの魂胆が。』
「ん?」
『要するに、久能さんは私の裸が見たいだけなんでしょう?』
「まさか。」
『いいえ、絶対にそうに決まってます。どうせ今頃イヤらしい顔してるんでしょう?』
そう言われて、俺は鏡を見てみた。
まるで原始人のように鼻の下が伸びて、ついでに鼻息も荒くなっている。
息子が天井を向いているのは言うまでもない。
『言っておきますけどね、絶対にモデルなんてやりませんから。
その黄緑君って人にそう伝えておいて下さい。』
「いや、でもねえ・・・・、」
『何を言っても無駄ですから。ていうかどうして勝手に約束なんか・・・・、』
由香里君は不満そうにグチグチ言っている。
俺は「クソ・・・・」と小さく舌打ちをした。
「せっかく一眼レフを買ったってのに・・・・損しちまったな。」
『え?』
「ん?」
『今・・・・一眼レフがどうとか言いませんでした?』
「いや、言ってないよ。」
『ウソ!はっきり聞こえましたよ!
どうせ私の裸を撮るつもりだったんでしょう?イヤらしい・・・・。』
「いや、まあ・・・その・・・なんだ。僕と君は付き合いが長いから、そろそろお互いの本当の姿を見せ合ってもいいんじゃないかと思ってね。」
天を向いた息子を撫でながら、小声で「鎮まれい・・・」と宥める。
由香里君は『はあ〜・・・』とため息をつき、『久能さん』と言った。
『昔からエッチなのは知ってますけど、そんなことばかりしてると、他の所に就職先を変えますよ?』
「ええ!」
『何を驚いているんですか!』
由香里君は鬼のように怒る。
俺は息子と共に元気を失くした。
「ゆ、由香里君・・・・君はこの事務所から去ってしまうと言うのか・・・・・・、」
『イヤらしいことばかりしてると、そうなるかもってことです。』
「そんな・・・・俺はただのスキンシップのつもりで・・・・、」
『どこかですか!ただのセクハラですよ!』
由香里君の怒りはMAXに達したらしく、もし目の前にいたら正拳突きを喰らっているところだろう。
『とにかくモデルなんてお断りです。』
「じゃあ何ならOKなんだ?」
『何にもOKなんて出しません!』
「いや、でもねえ・・・・せっかくの夏なんだよ。
君は留学に行って楽しいかもしれないけど、こっちはビッグ・マダムのママと飲み明かすことくらいしか・・・・、」
『またあんな店行ってるんですか!?』
「独り身ってのは夜が寂しいからさ。つい・・・・、」
『従業員のほとんどがすっぽんぽんの店なんて最低です。
しかもみんな男の人なんでしょう?』
「まあね。でも女並に綺麗だよ。もしよかったら君も・・・・、」
『行きません!』
「だったら何ならOKしてくれるんだい?」
悲しい声でそう言うと、『久能さん・・・』と憐れむような声が返ってきた。
『要するに寂しいんですね?』
「ん?」
『だって私がいないから、一人ぼっちで寂しいんでしょう?』
「失敬な。飲み友達くらいいるぞ。」
『でも仕事中は一人じゃないですか。』
「ま、まあ・・・・そうだけど・・・・、」
『私が留学に行くって言った時も、すごく寂しそうな顔してましたもんね。
たったの一ケ月なのに。
顔は笑ってたけど、目は落ち込んでましたよ。」
「いや、それはだな・・・その・・・・なんだ。君が向こうで危ない目に遭ったらどうしようとか・・・・、」
ごにょごにょ言うと、由香里君は笑った。
『こう見えてもそれなりに腕は立つんです。そんじょそこらの暴漢には負けませんよ。』
「身をもって知ってるよ。」
『ふふふ、もうちょっと待ってて下さい。
あと二週間もすれば帰りますから。』
「君ねえ・・・まるで俺がお母さんの帰りを待つ子供みたいじゃないか。」
『違うんですか?』
「・・・・・違うと思うよ、多分。」
『素直じゃないなあ。』
由香里君はまた笑い、『いいですよ、帰ったら一緒にプールでも行きましょう』と言った。
「ぷ、プール?」
『はい。』
「ということは・・・・・君は水着に・・・・・、」
『プールに行くんだから当然でしょう?』
「・・・・・・・・・・。」
『思えば一緒にどこかへ出かけたことなんてないですもんね。
一緒にいるのは仕事の時だけで、プライベートで出掛けるなんてことなかったし。
だから久能さんさえよければ・・・・・、』
「・・・・・一眼レフを買ったかいがあ・・・・、」
『写真はダメですよ。』
「・・・・・息子が萎えた。」
『はい?』
「いや、何でもない・・・・。」
ううん!と咳払いをして、「まあ楽しみにしてるよ」と答えた。
『帰るまでもうちょっとかかるけど、それまで我慢してて下さい。
また電話しますから。』
「ああ、それじゃ。」
『久能さんもしっかり仕事して下さいよ。私が帰った時に潰れてるなんてことがないように。』
「努力するよ。君も残りの留学期間を楽しんでくれ。じゃあ。」
電話を切り、ふうと息をつく。
「プールかあ・・・・そんな場所へ行ったのは何年前だろうなあ。」
もう遠い昔のことのような気がして、少しだけワクワクする。
「ついに由香里君の水着を拝める日がきたか。モデルは無理だったが、収穫はあったな。」
椅子から立ち上がり、タバコを咥える。
そしてトレンディドラマのように窓の外を見つめた。
「俺の方は大変喜ばしいことがあったけど、問題は黄緑君だ。
もう依頼料はもらっちゃったし、しかも全部エロ本に使ってしまった。
さて、どうしたらいいのやら・・・・。」
渋い目で街を眺め、煙を吐き散らす。
「・・・・・奴に聞いてみるか。」
スマホを手に取り、とある店にかける。
「・・・・・ああ、もしもし?俺だけど。
実はさ、ちょっとお願いしたことがあるんだけど・・・・・、」

          *

翌日、俺は黄緑君のアトリエに来ていた。
アトリエと言っても美術部の部室なんだけど、絵やら画材やらが散らかっていて、まるで画家の住処のように見える。
そして窓際の椅子には、一人の人物が据わっていた。
服を脱ぎ、裸体を晒しながら、女とは思えない鍛え抜かれた背中を見せつけて座っている。
「さあ黄緑君、思う存分描いてくれたまえ。」
そう言って手を向けると、黄緑君は「あの・・・」と困った顔をした。
「どうして背中を向けてるんですか?僕は正面から描きたいんですけど。」
「ええっと・・・・さすがに正面は抵抗があるらしくて。背中ならOKということなんだ。」
「・・・・まあ百歩譲ってそれはよしとします。でもどうして顔を隠してるんですか?
これじゃ誰だか分からない・・・・。」
椅子に座った人物は、般若のお面を着けていた。
こちらを振り返り、黒い髪をなびかせる。
「これ、怖いんですけど・・・・、」
「ええっと・・・アレだよ、顔を見られるのは恥ずかしいらしくて。」
「でもそれじゃ誰だか分からないじゃないですか。」
「とりあえず身体だけ描けばいい。顔は後日ってことで。」
「なんでそんな面倒臭いことを・・・・、」
「だって恥ずかしいからさ。ヌードモデルなんて初めてで、さすがに抵抗があるんだよ。」
「抵抗があるのに引き受けてくれたんですか?」
「そこはまあ・・・・俺の説得で。」
ビシッと親指を立てると、黄緑君は「顔が見れないんじゃ意味がない」と言った。
「僕は写実画なんですよ。顔を見せてもらわないと。」
「だから後日に見せるって。」
「でも・・・・・、」
「四の五の言わない。彼女も忙しいんだから、さっさと描いてくれ。」
ポンと背中を叩くと「なんだかなあ・・・」と描き始めた。
「君は彼女の肉体美が描きたかったんだろう?」
「確かにすごい筋肉してますよね。女性とは思えない。
でも・・・・こんなに肩幅あったかな?」
「あるさ、直に見たら。」
「意味が分からないです。」
黄緑君はせっせと絵を描く。
俺は「上手いもんだな」と感心した。
「さすがは美術部だ。」
「でもよく引き受けてくれましたね。本条さんは留学中だったんでしょ?
それなのにこんなにすぐモデルをやってくれるなんて。」
「そこはほら、俺と彼女の仲だから。」
「もしかして付き合ってるんですか?」
「そうじゃなくて、俺は所長、彼女は助手だ。所長命令には逆らえないさ。」
「でも彼女バイトでしょ?そこまでやってくれるもんなのかな・・・・?」
「だからつべこべ言わない。時間は夕方の五時までだから、あと三時間しかないぞ。」
「分かってます。筆の速さには自信があるんで、それまでに仕上げちゃいますよ。」
「そうしてくれ。」
俺は頷き、外へ出てタバコを吹かす。
「あ、ここ禁煙ですよ。」
「え?大学なのに?」
「大学だからです。吸いたいなら一階の喫煙ルームに行って下さい。」
「なんだよ、大学まで禁煙がトレンドなのか。俺の時代とは変わったもんだ。」
タバコを咥えながら、喫煙ルームに向かう。
今日は日曜日で、学生の数は少ないようだ。
一本目を吸い尽くし、外でジュースを買う。
そして二本目を吸いに喫煙ルームへ入ろうとした時、「ぎゃああああああ!」と悲鳴が聴こえた。
「この声は黄緑君!」
俺は急いでアトリエまで向かう。
ドアを開けながら「どうした!?」と叫んだ。
「ち・・・ち・・・ち・・・・、」
「ち?血が出てるのか?」
「違います!本条さんに・・・・・あってはいけない物が・・・・、」
「何い!?」
俺は般若の面を着けたモデルを見る。
するとこちらを向いていて、出してはいけない物を晒していた。
「NOおおおおおおおおおおお!」
俺は上着を脱ぎ、男性の象徴とも言うべき物を隠すように巻き付ける。
「おいコラ!正面を向くなと言っただろう!」
そう怒ると、モデルは「だって・・・」と言った。
「その子、とっても可愛いんだもの。私のタ・イ・プ!」
般若の面を着けたまま投げキスを飛ばすモデル。
黄緑君は「これはどういうことですか!」と睨んだ。
「なんで本条さんにそんな物が付いてるんですか!?」
「あ、いや・・・・これはその・・・・、」
「ねえ坊や、あなたウチの店で働かな・・・・げぶッ!」
「喋るんじゃない!」
グイッとアレをつねり、「こんなモン見せやがって・・・」と怒る。
「正面を向くなとあれほど言っただろう・・・。」
「でも久能ちゃん、あの子があんまり可愛いから。私のタ・イ・プ・・・・・・、」
「それはもう聞いたよ!」
「ヒャン!つねらないで!」
モデルは腰を引き、その場にうずくまる。
俺は黄緑君を振り返り、「ははは・・・」と笑った。
「あ、あのだね・・・・これはつまり・・・・、」
「・・・・なるほど、そういうことだったんですね・・・・、」
黄緑君はゆっくり立ち上がる。
俺に詰め寄り、「よくも騙してくれたな」と言った。
「だ・・・騙すなんて人聞きの悪い。俺は君の依頼をこなそうとしただけで、でもちょっとした手違いがだね・・・・、」
「どうして・・・・どうして言ってくれなかったんですか・・・・・、」
「いや、だって・・・ねえ。こっちは依頼料をもらってるわけだし、ちゃんとそれに応えないとと思っただけで・・・・、」
「こんな事になるなら、モデルなんて頼むんじゃなかった・・・・。僕は自分が情けない!」
黄緑君は泣きながら首を振る。
まるでブライト艦長に殴られて、「親父にも殴られたことないのに!」と叫ぶアムロのような顔で。
「こんな・・・・こんなのって・・・・、」
「あの・・・・黄緑君、依頼料は返すから。全部エロ本に使っちゃったんだけど、明日返品してくるよ。
なあに、あそこの本屋のオヤジは知り合いだから、開封しててもきっと返品してくれ・・・・、」
「そうじゃない!そんなこと言ってるんじゃないんだよ!」
黄緑君はものすごい形相で叫ぶ。
ストリートファイター兇覗蠎蠅旅況發魘瑤蕕ぁ顔をゆがめているリュウを一時停止した時のように。
「本条さんが・・・・本条さんが・・・・、」
「あ、あの・・・・ちょっと落ち着こうか?顔がスト兇嚢況發魘瑤蕕辰浸のザンギエフみたいな顔になってるから・・・・、」
「本条さんが・・・・・・・、」
「分かった!なら俺が脱ごう!こう見えてもそれなりに鍛えて・・・・・、」
「本条さんが・・・・・男だったなんて!」
「そう、彼女は男だ。実はビッグ・マダムというお店のママで・・・・・・って、はい?」
俺はピタリと固まる。
モデルになる為に脱ぎかけていたズボンを上げ、「黄緑君?」と顔を覗き込む。
「僕は知らなかった!本条さんが男だったなんて!」
「・・・・・いやいやいや!それは違う・・・・・、」
「僕は女性画が描きたかったんだ!フェルメールのように、写真すらも超える美しい女性画を!
それが・・・・それがこんな結末になるなんて・・・・、」
「あ、あのさ・・・・君は大きな誤解をしているよ。由香里君はれっきとした女で・・・・、」
「じゃあさっきのアレは何なのさ!?」
そう言ってモデルの下半身に巻き付いた、俺のシャツを睨んだ。
「あんなのが付いてたんじゃ・・・・男に決まってるじゃないか・・・。」
「ええっと・・・・あれはだね、実は由香里君じゃなくて・・・・、」
「男なんだろ!彼女・・・・いや、彼は男なんだろ!」
「違うよ!由香里君はれっきとした女だ。」
「じゃあアンタ見たのかよ!?」
「へ?」
「ちゃんとその目で確認したのか?本条さんが女だって・・・・ちゃんと見たことあるのかよ!?」
「・・・・・・いや、ないけど。」
そう、この目で確認したことなどあるわけない。
・・・・まさか、由香里君は実は男で・・・・・って、ないから!
「もういい・・・・僕は他のモデルを探す・・・・、」
「あ、黄緑君・・・・。」
「依頼料は返さなくていいです。勘違いした僕が悪いんだから・・・・。」
「だからさ・・・彼女は女で・・・・、」
「でもその目でみたことはないんだろ?」
「・・・・もし見ようとしたら、翌日には棺桶に入ってるだろうな。」
「ほら、ほらほら!きっとあなただって騙されてるんだ・・・・本条さんは男なんだよ。」
そう言ってフラフラとした足取りで美術室を出て行った。
「・・・・・そう言われればこの目で確認したことはないな。
女とは思えないほど強いし、それに男勝りだし・・・・。実は男だったりして・・・・・・、」
俺まで疑いはじめ、「いやいや、ないから!」と首を振った。
「・・・・まあいいか。依頼料は返さなくていいんだし、由香里君もモデルをやらずに済んだ。
一件落着ってことで。」
モデルの下半身に巻いたシャツを取り、「仕事は終わりだ」と言った。
「さっさと帰るぞ。」
「ねえ久能ちゃん・・・・。」
「なんだ?」
「さっきの彼、ものすごくタイプなの。ウチの店に勧誘してもいいかな?」
「好きにしろ。ただしその前にお面を外せ。そして下は隠せ。」
俺はシャツを着ながら、日照りの強い外へと出る。
色々あったけど、とりあえず依頼は完了。
くあっと欠伸をしながらアトリエを後にした。

          *

あの一件から三日後、ビッグ・マダムのママからLINEが来た。
『えへへ〜!可愛い男の子ゲット〜!』
そこには写真が添えられていて、すっぽんぽんになった黄緑君がいた。
『もう絵の道は諦めたんだって。
これからは自分の肉体美を究める道に行くそうよ。
今はジムに通って筋肉を鍛えてる。
ゆくゆくは世界的なボディビルダーになるんだって張り切ってるわ!』
俺はすぐに返信を打つ。
近いうちに店に遊びに行くよと。
LINEを閉じ、スマホを置く。
うんと背伸びをしながら、「暇だな・・・」と鼻くそをほじった。
「依頼が解決したのはいいけど、相変わらずの暇さだ。
ギャラは全てエロ本に消えたし、これじゃいつか潰れるかもな。」
ほじった鼻くそを飛ばしながら、「帰るか・・・」と立ち上がる。
するとタラリ〜ン!とスマホが鳴って、由香里君からのメールが届いた。
『この前のモデルの話、ちゃんと断ってくれましたか?
もし引き受けたりなんかしたら承知しないですからね。』
「大丈夫、心配ないよ。」
笑いながら返信を打つ。
『とりあえず帰国したら事務所に寄るつもりです。
その後は大学に寄って、その黄緑君って子に会うつもりです。
そういう頼みをする時は、ちゃんと本人に言いなさいって。
あ、でも引き受けるつもりはないですけどね。』
「うん、それがいい。大学へ行って、彼の誤解をきちんと解いて・・・・、」
そう打とうとして、ピタリと手を止めた。
「・・・・・いや、大学へは寄らない方がいい。
しばらく休学することをお勧めする。」
そう返信して、事務所を後にした。
由香里君は『どうしてですか?』と尋ねて来るが、「戻ってくれば分かる」と返した。
「ちなみに俺は何も悪くない。勘違いしたのは黄緑君だ。
だからまあ・・・・後はよろしく頼む。」
そう打つと、『また何かやらかしたんですか?』と返ってきた。
そして数分後、電話が掛かってきた。
『ちょっと久能さん!どういうことですか!
さっき大学の友達に電話したら、私が男って噂が広まってるじゃないですか!
いったい何をやらかして・・・・、』
「あ〜・・・・電波が悪いみたいだ。あ〜由香里君?ゆか・・・く・・・・、」
『コラ!誤魔化すな!どういうことか説明して・・・・、』
俺は電話を切り、何も聞かなかったことにする。
「由香里君が帰って来る前に、どこかに身を隠した方がいいかもしれないな。
下手すれば棺桶に入ることになる。」
何度も電話が掛かってくるが、聴こえないフリをする。
今日はビッグ・マダムに寄って、朝まで飲んでいくことにした。

 

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