不思議探偵誌〜探偵の熱い夏〜 第六話 悪夢の正夢

  • 2016.07.12 Tuesday
  • 11:29

JUGEMテーマ:自作小説

古代アトランティスにあったオーパーツ、謎の髑髏。
どういうわけか、それが俺の手元にある。
昨日月刊ケダモノの編集長がやって来て、俺の手に預けていったのだ。
この髑髏の所有者は、幸運か不運に見舞われるという。
その噂が真実かどうか確かめる為に、俺が一日預かることになったというわけだ。
「どうしてこんな気味の悪い物を預かっっちゃったんだろうなあ。」
月刊ケダモノの編集長、椿茂美は、依頼の度に色仕掛けを使ってくる。
ハマるまいと注意していても、いつの間にか虜になっているのだ。
「あれこそ魔性の女だ。今度という今度は約束を守ってもらわなければ。」
この依頼を終えたら、茂美とエロイこと・・・・もとい大人の時間を過ごせる。
今まではなんやかんやと言い訳をして、結局そういうことはさせてもらえなかった。
だが今回ばかりは違う!
茂美・・・・明日の夜は覚悟しておくことだ!
俺はテーブルの上に置いた髑髏を睨む。
人の手に乗るくらいの大きさで、頭に角らしき物が生えている。
しかも目玉の穴は三もつある。
なんとも不気味な髑髏だが、預かるのは一日だけ。
幸運が起きるか不運に見舞われるかは知らないが、仕事である以上こなさなければなるまい。
今日は休みなので、家でダラダラ過ごす。
エロ本を読み、借りて来たエロDVDを眺め、芸人が騒ぎまくるバラエティを見ていた。
時刻は午後二時。
預かってから六時間以上経つが、何も起こらない。
俺はカップ麺で昼飯を済ませ、だらりと寝そべった。
どこかへ出かけたいが、コイツを置いて行くのは不安だ。
かと言って持ち歩くなんて嫌だから、今日は家にいるしかない。
頭はまだ二日酔いが残っていて、じわじわと痛む。
昨日ビッグ・マダムでしこたま飲んだせいで、頭痛と胸やけに苛まれていた。
「不思議なもんだ・・・・二日酔いになると、二度と酒なんか飲むかって思うのに、また飲んじまう。
人間の自制心なんて、そう大したもんじゃないな。」
哲学めいたことを考えていると、いつに間にか眠っていた。
「・・・・・・ああ!」
悪夢にうなされて、ガバッと飛び起きる。
「また悪夢か・・・・。前と同じで、事務所が焼ける夢だ。
由香里君は愛想を尽かし、俺の元から去ってしまう。
その元凶は・・・・茂美だ。」
頭を押さえ、「もうそろそろあの女とは縁を切った方がいいのかもしれんな」と呟く。
「これ以上関わっていたら、本当に俺の身が滅びかねない。
今回に依頼を終えたら、もう二度と仕事は引き受けな・・・・、」
そう言いかけた時、ふと気づいた。
「あれ・・・・髑髏がない。」
テーブルの上に置いた髑髏が、いつの間にか消えている。
「寝ぼけて蹴落ととしちまったのかな?」
そう思って部屋を捜すが、どこにもなかった。
「どこいったんだ?」
まさか空き巣が入ったのかと思い、ドアや窓を確認してみる。
しかしそのような形跡はなかった。
「おかしいな。」
ボリボリと頭を掻き、このまま見つからなかったらマズイと思った。
「困ったな・・・茂美からの預かりモンなのに。」
くまなく部屋を捜すが、どこにも見当たらない。
「・・・・まあいいか。失くしたもんはしょうがない。
茂美には上手いこと言って誤魔化しておくか。」
二日酔いは治まり、その代わりにまた酒が欲しくなる。
俺は今夜もビッグ・マダムへ繰り出すことにした。
「人間ってのは学習しない生き物だ。これでまた二日酔いだな。」
靴を履き、アパートの外に出る。
外は蒸し返すような空気で、しかも陽は落ちていた。
「随分眠ってたもんだ。」
暑い夜道を歩きながら、陽気に口笛を吹く。
するとその時、ポケットでスマホが鳴った。
「もしもし?」
『ああ、久能さん?』
「茂美さんか。何か用か?」
『あのね、落ち着いて聞いてほしいんだけど・・・・、』
「どうした?あんたらしくない神妙な声出して。」
『実はね・・・・久能さんの事務所、燃えてるのよ。』
「な・・・・・なにいいいいいい!?」
『今消防車が来てるわ。幸いボヤで済みそうだけど、急いで事務所まで・・・・、』
茂美が言い終える間に、電話を切って走り出した。
途中でタクシーを捕まえ、急いで事務所に向かう。
すると赤いランプを点滅させた消防車が来ていた。
「お・・・俺の・・・俺の事務所があああああああ!」
事務所からはモクモクと黒い煙が上がっていて、消防車が放水している。
「なんでこんな事に・・・・。」
火の始末はちゃんとしたはずだ。
タバコも消したし、コンロも確認した。
なのにどうして・・・・。
「久能さん!」
茂美がやって来て、「大変だったのよ」と言った。
「ウチの出版社は久能さんの上の階でしょ?だから煙が上がってきちゃって・・・・、」
「あんたの所はどうでもいい!どうして・・・・どうして俺の事務所が燃えてるんだ!?」
泣きそうな目で尋ねると、茂美は例の髑髏を取り出した。
「ああ!なんであんたがそれを・・・・、」
「実はね・・・・、」
茂美は言いにくそうにもじもじとした。
「これの持ち主である農家のおじいさんが、すぐに返してくれって電話してきたのよ。
約束じゃ一週間は預かってもいいってことになってたのに。」
「農家の爺さんだと?それは古代アトランティスの髑髏じゃないのか!?」
「まさか。嘘に決まってるでしょ。」
「んなッ・・・・・、」
「最近これと言ったネタがなかったらから、何でもいいからでっち上げようってことになってね。
そしたらウチの出版社のスタッフのお爺さんが、変わった骨を持ってるって言うのよ。
だからそれをネタにして、面白おかしく記事にしようとしたわけ。」
茂美はわざとらしい表情で、「ごめんねえ」と謝った。
しかし俺は「OKOK」と首を振った。
「そんなのはいい、いつものことだからな。」
「そう言ってくれると助かるわ。」
「だがな、どうして俺の事務所が燃えてるんだ?ていうかそれは俺の家にあったはずだろ?なんであんたが持ってる?」
「合鍵で開けたのよ。」
「あ、合鍵・・・・?いつの間にそんなものを・・・・、」
「けっこう前からよ。」
「言えよそういうことは!ていうかなんで合鍵なんか持ってるんだ!」
「だって久能さん、前に渡してくれたじゃない。
これを預けておくから、いつでも部屋に来てくれって。」
「そ、そうだっけ・・・・・?」
「ビッグ・マダムで飲んでる時にそう言ったわよ。あの時はベロベロに酔ってたから覚えてないのね。」
茂美はクスリと笑う。
「でね、コレを久能さんの家に取に行ったわけよ。
でも途中で落として壊しちゃってね。」
「こ、壊すだと・・・?」
「うん、この角の所・・・・バキっていっちゃったのよ。
だからおじいさんに渡す前に、どうにか直さなきゃと思って。」
「それと火事と何か関係があるのか?」
俺はグッと睨みつける。
茂美はクスっと肩を竦めた。
「そのおじいさん、近所に住んでるから、ウチの出版社まで取りに来てたのよ。
だから壊れたまま持って帰るとマズイじゃない?
それで久能さんの事務所に行って、ちょっと接着剤を借りようと思って・・・・、」
「ちょっと待ってくれ。今なんて言った?俺の事務所?」
「そうよ。」
「どうやって入った?鍵が掛かってたはずだろ?」
そう尋ねると、茂美は事務所の鍵を取り出した。
「なんであんたが持ってる!?」
「だから合鍵よ。家の鍵を渡してくれた時に、これも一緒に渡してくれたじゃない。」
「そ・・・・そうだっけ?全然覚えてないが・・・、」
「酔ってたからね。」
茂美はニコリと笑う。
俺は「ほんとかよ・・・」と睨んだ。
「とにかく、私は久能さんの事務所に入った。
でも接着剤が見当たらないから、別の方法を使ったの。」
「別の方法?」
「この髑髏、蝋で出来てるのよ。」
「ろ、蝋って・・・・ロウソクの蝋か?」
「ええ。」
「・・・・おい待て。ということは・・・・、」
「そうなの、コンロの火を使って、角を溶接しようとしたのよ。」
「・・・・・・・・。」
「幸い溶接は上手くいったわ。でもね、その時に近くにあったエロ本に火が燃え移っちゃったのよ。
これはいけないと思って、慌てて消防車を呼んだわけ。」
茂美は「危なかったわあ」と息をつく。
「だって久能さん、エロ本を山積みにしてるんだもの。
火は一気に燃え広がって、私まで焼け死ぬかと思った。
でもこの髑髏だけは守らないとと思って、おじいさんに返しに行ったのよ。」
そう言って「間一髪だったわ」と頷いた。
「どこが間一髪だ!俺の事務所が燃えてるじゃないか!」
「だって火が大きかったから。私じゃ消せないし、それに消防車も呼んだし。
出来る限りのことはしたわよ。」
「そういう問題じゃない!あんたのせいで俺は無職になるかもしれないんだぞ!」
「そうなったらウチで雇ってあげるわ。超能力探偵VSスカイフィッシュとか特集を組んであげる。」
「いらないよ!」
俺は頭を押さえ、「今度という今度は我慢できない!」と叫んだ。
「茂美さん、これは犯罪だぞ。」
「まあ。」
「警察に通報させてもらう。」
「あら?」
「やっていい事と悪い事があるからな。」
俺はスマホを取り出し、110番しようとした。。
するとその瞬間、由香里君から電話が掛かってきた。
『もしもし久能さん!事務所が燃えたって本当ですか!?』
「な、なんで知ってるんだ?」
『さっき茂美さんから電話があったんですよ!』
「茂美から?」
『事務所から出火したって。久能さん・・・・怪我とかしてないですよね?』
由香里君が心配そうに尋ねてくる。
俺は「平気さ」と答えた。
「今日は体調が悪くて休みにしてたもんでね。」
『そうなんですか!よかったあ・・・・、』
「それより由香里君、聞いてほしいことがあるんだ。
この火事の原因なんだが・・・・、」
そう言いかけると、由香里君は「知ってます」と答えた。
『空き巣が入ったんでしょ?』
「あ・・・・空き巣?」
『茂美さんがそう言ってました。盗みに入ったついでに、コンロの火を使ってコーヒーを飲もうとしてたって。
でもその時に、近くにあった仕事の書類に燃え移ったせいなんでしょ?』
「いや、そうじゃないんだ。書類に燃え移ったんじゃなくて、大量のエロほ・・・・・、」
そう言いかけて、俺はピタリと口を止めた。
『どうしたんですか?』
「いや、なんでもない・・・・、」
『さっき何か言いかけてましたよね?コンロの近くにエロほ・・・・・、」
「・・・・・・・・・・。」
『・・・・久能さん。まさかコンロの傍にエッチな本を置いてたんじゃ・・・・、』
「違うよ!そんな物置くはずないだろう!」
『事務所はそういう物を禁止にしたはずですよ?なのに・・・・、』
「だから違うって!その・・・火事になって、ちょっと気が動転しててさ。
だから茂美さんの言ったことが正解だ。全部空き巣のせいなんだよ。」
『ほんとですか?』
「ほんとほんと。残念ながら空き巣には逃げられてしまったけどね。でも事務所は大丈夫、火は消えかかってる。
だから君は心配しないで、留学を楽しんでくれたまえ、それじゃ。」
『あ、ちょっと久能さ・・・・、』
電話を切り、ゆっくりと茂美を振り返る。
「あ、あんた・・・・、」
「警察を呼べば、真実を話すことになる。でもそうなったら、由香里ちゃんの留守中に大量のエロ本を積み上げていたことになるわ。
しかもそれに燃え移って火は広がった。」
「だが元はと言えばあんたが・・・・、」
「なら全てを由香里ちゃんに知らてもいいの?」
「お、脅す気か・・・・?」
「そうじゃないわ。ただね・・・・悪夢が正夢になったら困るんじゃないかと思っただけ。」
「なんだと?」
「だって事務所が燃えて、その上由香里ちゃんにまで愛想を尽かされたら・・・・ねえ?」
茂美はクルクルと髑髏を回しながら、踵を返した。
「もちろん悪いとは思ってるわよ。だから依頼料は通常の10倍払うし、もちろん事務所の修理代も払う。」
「と、当然だ!焼けた事務所で仕事が出来るか。」
「それと今回ばかりは約束を守らないとね。」
「約束?」
「ふふふ、旅館のタダ券があるのよ。しかもそこは混浴。」
「こ・・・混浴?」
「一緒に行きましょう。由香里ちゃんには内緒で。」
「・・・・・ゴクリ。」
「あ、でも日帰りだからね。それ以上のことは期待しないで。」
そう言い残し、「それじゃまた」と去って行く。
「あ、そうそう。消防と警察の方には上手く言っとくわ。どっちの署長も私の友達だから、明日にでも営業出来るはずよ。安心してね。」
「・・・・約束、忘れるなよ。」
「ふふふ、じゃあね。」
茂美は今度こそ去って行く。
俺は火が消し止められた事務所を見上げた。
「なんて一日だ・・・・。」
悪夢が正夢になる・・・・こんな事があるだろうか。
「・・・・いや、正夢じゃないな。事務所は燃えたけど、由香里君が去ったわけじゃない。
しかし真実を話せば、呆れて去ってしまう可能性が・・・・、」
大量のエロ本に燃え移って火事になる。
こんな事を由香里君に言うわけにはいかない。例え茂美のせいだとしても。
「あの髑髏・・・・やっぱり本物なんじゃないか?とんでもい不幸が起きたぞ。」
呆然としながら、焼けた事務所を見上げる。
するとスマホが鳴って、メールを知らせた。
相手は由香里君からで、『ほんとに大丈夫ですか?』と心配している。
『私早めに切り上げて帰ります!事務所が燃えたなんて知ったら、呑気に留学なんてしてらません。』
「相変わらず心配性だな。」
俺は「平気だよ」と返した。
「火はもう消えた。修理費は茂美さんが出してくれるとさ。」
『茂美さんが?どうして?』
「ええっと・・・・日頃お世話になってるから、修理費用くらいならって言ってくれたのさ。」
『そうなんですか?でもやっぱり心配です。久能さん一人じゃどうにも出来ないだろうし、明日にでも帰ります。』
「俺は子供か。」
小さく笑いながら返信を打つ。
それから少しして、写真付きでメールが送られてきた。
『大丈夫です!私がついてますからね!』
グッと拳を握りながら、励ますような表情をしている。
俺は「君がいれば百人力だよ」と送った。
「でも本当に大丈夫さ。何かあったら連絡するから、留学を楽しんできなよ。」
『ほんとのほんとに大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だ。」
『ほんとにですか?私もう帰る準備をしてるんですけど。』
「気が早いな。本当に平気だよ。心配してくれてありがとう。
留学を終えて帰って来るのを待ってるよ。」
そう返すと、またしばらく空きがあった。
そして・・・・こんな写真が。
『水着買ったんです。帰ったらこれを着て一緒にプールに行きましょうね!』
「・・・・・ゴクリ。」
エロくはないが、明るくて健康的な感じの水着が、由香里君の魅力を惹きたてている。
「いい写真だ。壁紙にしとくよ。」
『そう言うだろうと思いました。でもエッチなことに使うのはダメですからね。』
「分かってる。一緒にプールに行くのを楽しみにしてるよ。」
俺も自分の写真を送る。
根起きて飛び出してきて、髪がボサボサになった写真を。
由香里君は「面白いから壁紙にしておきます」と言ってくれた。
健気で逞しい助手のおかげで、少し元気が出た。
しかも水着の写真までもらえるとは・・・・。
早速壁紙にして、息子が元気になっていくのを感じる。
「この火事がなけりゃ、こんな写真も手に入らなかった。
まあ・・・・今回はプラマイゼロってことで、よしとするか。」
画面の中には水着の由香里君がいる。
しかし俺はすぐに別の壁紙に変えた。
拳を握って、励ますような表情をしている由香里君に。
「この方が君らしい。水着も嬉しいけど、こっちの方が元気が出るよ。」
ポンと画面を叩き、励ます由香里君に笑いかけた。

 

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