不思議探偵誌〜探偵の熱い夏〜 第十三話話 化けの皮を剥げ

  • 2016.07.19 Tuesday
  • 12:57

JUGEMテーマ:自作小説

霊能力探偵、リチャード・田中。
俺は奴との勝負に負けてしまった・・・・。
負けたら看板を降ろさないといけない。
でないと、俺どころか由香里君まで奴の呪いで殺されてしまうかもしれない。
あまりに呆気ない勝負、あまりに早い決着。
俺は悠々と去って行くリチャード・田中の背中を見つめていた。
するとその時、犬が倉庫の方へ走って行った。
そして・・・・・・、
「おい、それは・・・・、」
犬は仏像を咥えていた。
足の付け根が欠けて、頭は犬の形をしている。
こんな仏像は二つとないだろう。
「おい、どこでこれを見つけたんだ?」
「ウォン!」
犬は倉庫に向かって吠える。
「倉庫にあったのは分かる。問題は倉庫のどこにあったのかってことだ。」
俺はじっと仏像を睨む。
これはリチャード・田中が見つけた仏像とまったく同じだ。
だったら奴が持っていた仏像はいったい・・・・・。
「まさか二つあったのか?しかし奴から送られたきたFAXには、そこんな事は書かれていなかったはずだ。
それにコイツは国宝級の仏像だ。そんなもんが同じ場所で二つも見つかるものなのか?」
謎が謎を呼び、「いったいどうなってんだ?」と眉を寄せた。
「・・・・ん?この仏像、ちょっと変だな。」
仏像は木で出来ている。大きさは30センチほど。
しかしその割には重かった。
「木造の仏像にしちゃかなり重い気がするな。もしかして中は金属なのか?」
俺は仏像を眉間に当てる。
俺の超能力の一つ、透視能力を駆使する為に。
この力は一センチ先まで透視することが出来る。
普段はエロ本の袋とじを覗くくらいしか使えない能力だが、今は役に立つはずだ。
「仏像の中身・・・・いったい何で出来ている?」
眉間に皺を寄せ、集中力を高める。
すると頭の中にある映像が浮かんだ。
「こ、これは!?」
仏像の中身が、透視能力によって露わになる。
「仏像の中に、また別の仏像が・・・・。」
透視で見えたもの、それは千手観音のようにたくさん手がある仏像だった。
「どうして仏像の中に仏像が・・・・、」
不思議に思っていると、犬が俺の手から仏像を奪った。
「おい!」
「グウウウウウ・・・・、」
仏像に牙を立て、噛み砕こうとしている。
「よせ!そんなことをしたらバチが当たるぞ!」
俺が止めても犬は聞かない。
メキメキと牙を突き立て、とうとう噛み砕いてしまった。
「ああ・・・・、」
木造の仏像が割れ、中から金ピカの千手観音が現れる。
「おお!金だ・・・・光り輝いている。」
眩いばかりの千手観音。
俺はそっと手に取り、ゴクリと息を飲んだ。
「すごい・・・・こんなの初めて見た。」
千手観音の大きさは、約15センチ。
割れた仏像より小さいが、それでもずっしりと重かった。
「金は鉄より重いからな。これいのせいで仏像を重く感じたんだ。」
俺は仏像を見つめながら、「しかし・・・」と呟く。
「どうして中に別の仏像が入っていたんだ?」
俺は仏像に詳しくないが、普通はこんな事はあり得ないはずだ。
「もしかしたらリチャード・田中の持って行った仏像にも・・・・、」
俺は奴を追いかけた。
黄金の仏像を抱えながら、奴を捜して走り回る。
「はあ・・・はあ・・・いないな。」
リチャード・田中はどこにもいなかった。
「アイツめ・・・・勝利を確信して、そのまま帰りやがったな。」
俺は奴の名刺を取り出し、そこに書かれた番号に電話を掛けようとした。
しかしその時、犬が金の仏像を奪い取った。
そしてスーパーの方へ戻って行く。
「待て!そいつを返せ!」
俺は慌てて追いかけて行く。
それとすれ違い様にパトカーが通り過ぎ、「犬は紐を着けて下さいよ」と怒られた。
「す、すいません・・・駄犬なもんで。」
苦笑いで頭を下げながら、犬を追いかける。
「待てコラ!」
スーパーの倉庫の前まで戻って来ると、犬は仏像を落とした。
「なんなんだお前は・・・・警察に怒らちまったじゃないか。」
そう言って仏像を拾うと、犬は倉庫の方へと走って行った。
「今度は何だ・・・・。」
いい加減うんざりしてきて、このまま置いて帰ろうかと本気で思う。
しかし犬は俺を呼んだ。
倉庫の前に立ち、「ウォンウォン!」と吠えてから、中へと消えて行く。
「この仏像は倉庫の中から持って来たんだったな。だったら・・・・まだ他にもあるというのか!」
俺はすぐに犬を追いかける。
そして倉庫の中へと入ると、犬は一人の老人に向かって吠えていた。
「ウォンウォン!」
「コラ!仕事の邪魔をするんじゃない。」
作業着を着た老人は、けたたましく吠える犬にうろたえる。
俺は「すいません」と駆け寄った。
「こいつバカなもんで。すぐに摘まみ出しますんで。」
そう言いながら老人に近づくと、急に顔を逸らした。
そして作業着の帽子を深く被り、スタスタと逃げて行ってしまう。
「ほら見ろ、お前のせいで怒ってるじゃないか。」
俺は老人を追いかけ、「すいません」と前に回り込む。
「仕事中にご迷惑をかけてしまって。」
「いや、別に・・・・・、」
老人はまた顔を逸らす。
クルリと背中を向け、また俺から逃げて行く。
「あ、あの・・・・、」
そこまで怒ることないだろうと思っていると、突然犬が老人に飛びかかった。
「うわあ!」
「おい!何してる!」
慌てて老人から犬を引き剥がす。
「バカかお前!いきなり人を襲うなんて!」
犬は牙を剥いて唸っている。
鼻に皺を寄せ、鋭い目で老人を睨む。
「いいか、飛びかかるなよ。」
犬を降ろし、地面に落ちた老人の帽子を拾う。
「すいません・・・お怪我はありませんでしたか?」
そう言いながら帽子を渡した時、「ん?」と思った。
「あんた・・・・・、」
「あ、いや・・・・・、」
「やっぱりそうだ。あんた空港で倒れていた爺さんじゃないか。」
悪霊に憑りつかれ、それをリチャード・田中に助けられた老人が、なぜか作業着姿でここにいる。
「あんたこんな所で何してるんだ?」
「これは、その・・・・、」
「まさかここで働いているのか?」
「・・・・・・・・・。」
「コラコラ、逃げるな。」
俺は老人の襟首を掴む。
するとその時、また犬が飛びかかった。
老人のケツに噛みつき、ポケットから何かを奪い取る。
「あ!それは・・・・、」
老人は慌てて犬を追いかける。
しかし足がもつれて転んでしまった。
「ウォン!」
犬が奪い取った物、それは一枚の紙だった。
「ウォンウォン!」
「なんだ?」
俺は紙を受け取り、「これは・・・」と唸った。
紙には文字が書いてあった。
「こいつはFAXか。」
俺は文字を読んでいく。しかし読むにつれて、眉間に皺が寄っていった。
『お前のキャリーケースに二体の仏像を入れてある。
そのウチの一体は本物の国宝で、闇ルートで売れば相当な額が手に入る。
もう一体は金で出来た千手観音が中に入っている。
こちらも国宝に近い代物だが、価値は俺の仏像より劣る。
そっちは仕事を手伝ってくれた礼として受け取ってくれ。
と言っても、元々お前の物だがな。
重さがまったく違うので、持てばどちらに金が入っているか分かるだろう。
明日中には取りに向かう。
くれぐれも失くしたりするなよ。』
俺は爺さんを見上げ、「これはどういうことだ?」と尋ねた。
「ここに書かれていること・・・・いったいどういうことだ?」
紙を揺らしながら爺さんに詰め寄る。
するとダっと逃げ出した。
しかし犬が咄嗟に回り込み、逃げ道を塞ぐ。
「爺さん、あんた何か隠してるな?」
「うう、これは・・・・・、」
「この紙はいったい何なんだ?」
「・・・・・ゴクリ。」
「あんた・・・・もしかしてリチャード・田中と知り合いなのか?」
そう尋ねると、爺さんは切ない顔で俯いた。
「私は・・・・、」
「んん?」
「私は・・・・坊主失格です。」
「なに?」
「仏に遣える身でありながら、悪に手を染めるなど・・・・人間すら失格だ。」
爺さんはその場に膝をつき、がっくりと項垂れる。
「爺さん・・・。」
俺も膝をつき、爺さんの目線に合わせた。
「もう一度聞く、あんたはリチャード・田中と面識があるのか?」
「・・・・・・・・・。」
「これは俺の想像だが、この紙は奴から送られてきたものじゃないのか?」
「・・・・・・そう・・・です。」
「やはりか。」
爺さんは顔を上げ、グッと目を閉じる。
そして俺の持っている千手観音に手を伸ばした。
「・・・・何代にも続いた家宝・・・・まさかこんな形で再会しようとは。」
爺さんは千手観音に触れながら、スッと涙をこぼした。
「爺さん、あんたの知ってることを聞かせてくれ。
あのリチャード・田中という男、いったい何者なんだ?
奴の持って行った仏像、そしてここにある千手観音像はいったい何なんだ?」
肩に手を置き、「答えてくれ」と頷きかける。
爺さんはポケットから数珠を取り出し、千手観音像を拝んだ。

            *

翌日の早朝、俺は空港へ来ていた。
今日は由香里君が帰って来る。
しかし今ここにいるのは、彼女を迎える為ではない。
俺は空港の入り口にあるポールに腰掛け、犬の紐を握っていた。
時計を確認すると午前5時半。
もうそろそろだと思い、空港前にある私鉄の駅に目を向けた。
まばらに人が出て来て、こちらへ歩いて来る。
その人影の中に、あの男の姿があった。
「よう。」
「久能さん・・・・。」
リチャード・田中は固まる。
俺は彼に近づき、「全部聞いたよ」と言った。
「あの爺さんが喋ってくれた。」
「なに?」
「あんた・・・・国宝の密輸が商売なんだってな。」
そう言うと。リチャード・田中は「はははは!」と笑った。
「何を言い出すかと思えば・・・・、」
クイッと眼鏡を直し、「見苦しいですよ」と嘲笑った。
「負けたからって、言いがかりをつけて腹いせですか。」
「そんなつもりはないさ。ただあんたの持ってるキャリーケースを見せてほしいだけだ。」
そう言って指さすと、「お断りだ」と首を振った。
「あなたに中を見せる義理などありませんよ。」
「どうしても見せないつもりか?」
「ええ。どうして私物をあなたに見せなければいけないんですか?」
「そうだな、確かに見せる義理はない。なら・・・・無理にでも覗かせてもらおう!」
俺は眉間に意識を集中させる。
すると・・・キャリーケースのフックがパチン!と外れた。
「今だ!」
指を向けると、犬が「ウォン!」と飛びかかった。
「うおおおお!」
リチャード・田中はもんどり打って倒れる。
その時にキャリーケースも倒れて、中身が飛び散った。
「・・・・・・・・。」
陶器や絵、それにアンティークな時計や年代物の書物など。
たくさんの物が散らばり、その中にあの仏像もあった。
俺はそれを拾い「これ、どうするつもりだ?」と睨んだ。
「これは国宝なんだろう?どうしてあんたのキャリーケースにある?」
リチャード・田中は犬を押しのけ、眼鏡を直しながら立ち上がる。
「今から警察に届けようと思っていましてね。」
「嘘つけ。これを持ってイギリスに帰るつもりだったんだろう?」
「まさか。」
小さく肩を竦め、散らばった物を掻き集める。
「それはあなたにお渡ししておきます。警察へ届けて下さい。」
「いや、その必要はない。なぜなら警察の方から来てくれるはずだからな。」
「な、なんだと?」
「あんたイギリスの警察にマークされているらしいじゃないか。」
「何を馬鹿な・・・・、」
「証拠が無いから捕まえることは出来ないが、要注意人物であることに間違いない。
だからあんたが日本へ渡って来た時、向こうの警察から連絡があったんだとさ。
三笠陽一という男に注意するようにと。」
そう言ってやると、リチャード・田中は顔色を変えた。
「お、お前・・・・どうして私の本名を・・・・・、」
「元々は古物商なんだろ?その中で色んな人脈が出来て、裏ルートへのコネクションも出来た。
だからあんたは古物商をやめ、国宝の密売を始めた。」
「貴様・・・・・いったいどこまで知っているんだ?」
リチャード・田中は怒りを滲ませる。
「無能な探偵ごときが、そこまで私のことを調べられるわけがない。
いったいどんな手を使った!?」
そう言ってビシっと指を突きつける。
すると彼の後ろから、一人の女がやって来た。
コツコツとヒールの音を響かせながら、ミニスカートから覗く艶めかしい足を見せつける。
「全て調べはついてるわ。」
女は小さく首を傾げ、ニコリと微笑んだ。
「なんだお前は・・・・?」
「私?オカルト雑誌の編集長よ。」
「オカルト雑誌だと?」
「そして久能さんと友達でもある、ね?」
そう言って女は笑いかける。
「茂美さん、わざわざ来てくれなくてもよかったのに。」
「ふふふ、まさか久能さんがこんな大物を捕まえるなんてね。
探偵らしい仕事をしたのは初めてじゃない?」
可笑しそうに笑いながら、キャリーケースから散らばった物を睨む。
「どれもこれも国宝に値するような物ばかり。闇ルートで捌けば儲かるでしょうね。」
笑顔を消し、険しい目で睨む。
「なんなんだお前らは・・・・。」
リチャード・田中は狼狽え、「こんな茶番はごめんだ」と首を振った。
「人を犯罪者呼ばわりするとは・・・・。こんな不快な連中と話すことなどない。これで失礼する。」
リチャード・田中は空港へ向かって歩き出す。
しかし突然足を止めた。
「な・・・なんで?」
誰もいない宙に向かって、目を見開いて驚いている。
「お前は成仏しははずじゃないのか?念願の仏像を取り戻して・・・・、」
そう言いながら、ゆっくりと後ずさった。
彼の視線の先には、目に見えない誰かがいる。
そして・・・・まるで幽霊のように、ゆらりと姿を露わした。
それは昨日倉庫で会った、あの爺さんだった。

 

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