春の鳴き声 第二話 イジメられっ子の再会(2)

  • 2017.01.01 Sunday
  • 10:39

JUGEMテーマ:自作小説

「ほな終わり。」
担任の声がかかって、みんな一斉に手を止める。
今日で期末テストは終わり。
みんなホッとしたような表情に変わる。
ホームルームも終わり、教室はガヤガヤと騒がしくなった。
僕はさっさと立ち上がり、荷物をバッグに詰めた。
すると案の定、柴田たちが絡んできた。
「お前さ、なんでいっつも全部の荷物持って帰んの?」
ムカつく顔をしながら、ボンとバッグを蹴る。
しかも取り巻きの連中に囲まれて、逃げ場を失ってしまった。
「そんなん全部持って帰ってたら重いやん。アホちゃうの?」
「・・・・・・・・・・。」
僕は目を逸らし、《ボカケス》と心の中で罵った。
机の中に教科書やら何やらを置いていったら、必ず捨てられたり破かれたりするに決まってる。
誰が好き好んで、こんな重いバッグを担ぐかっちゅねん!
「おいコラ。何か言えや。」
取り巻きの一人が、足を蹴ってくる。
その後ろでは、柴田と仲の良い女子たちがニヤニヤ笑っていた。
《ほんまムカつくなこいつら・・・・。》
心の中では悪態をつくけど、目は泣きそうになっているはずだ。
ジンと熱いし、視界がぼやけてくるから。
ガツ、ガツっと足を蹴られて、頭まで叩かれる。
そしてバッグを奪われて、中身を放り出されてしまった。
「あ・・・・、」
「なに?」
ジロっと睨まれて、情けなく目を逸らした。
柴田は俺のノートを開いて「お前真面目やな」とからかった。
「びっしりノート取ってるやん。」
パラパラ捲って「うお!」と驚いた。
「おいおい!みんな見てコレ!」
嬉しそうな顔をしながら、あるページを指さす。
周りが覗き込んで、いっせいに「きっしょ!」と笑った。
「お前何描いとんねん!」
ゲラゲラ笑いながら、「お〜い!みんな〜!」とノートをふりかざす。
「コイツこんな絵描いてんでえ!」
柴田が開いたページには、僕の好きな漫画の女キャラが描いてあった。
それもちょっとパンチラした格好で。
授業中に暇潰しに描いたやつだけど、今の今まですっかり忘れてた・・・・・。
「おいコラ。これなんなん?」
ニヤニヤしながら、目の前にノートを押し付ける柴田。
僕はグッと唇を噛んで、ただ泣くのを堪えていた。
「お前あれ?もしかしてオタク?」
柴田がからかうと、後ろの女子が「同人誌とか描いてそ〜」と爆笑した。
「お前さ、これマジでキモイで。なあ?分かっとん?」
「・・・・・・・・・・。」
「泣いてるし(笑)」
言い返したいが、怖くて何も言えない。
ここから逃げ出したいけど、取り巻きが怖くて動けない。
柴田は窓を開け、僕のノートを投げ捨てた。
「取って来いよ。大事なやつやろ。」
ボンとケツを蹴られて、「早よ」と睨まれる。
僕は取り巻きの隙間を縫って、教室の外へ駆け出した。
「拾ったら戻って来いよ〜!逃げたらどうなるか分かってるやろなあ〜。」
背中に声を聴きながら、僕はひたすら走った。
校庭のノートを拾い、ギュッと握りしめる。
そして・・・・・
「クソ柴田!死ねボケカス!」
「はあ?」
「お前がキショイんじゃボケ!」
「え?なに?お前死にたいん(笑)」
ゲラゲラと笑われて、「すぐ行くからそこ動くなよ」と言われた。
動くなよと言われて、動かない僕じゃない。
ああやって言い返したものの、柴田と喧嘩する度胸なんてないから。
だから走った。
校門まで走って、とにかく逃げた。
そして大通りまで出ると、向かいにある細い道に逃げ込んだ。
民家が並んでいて、その隙間に身を隠す。
「ええわ・・・もうやってられん・・・。アイツに頼も。」
学ランの内ポケットから、スマホを取り出す。
そして一番信頼できる友達に掛けた。
「もしもし?あのな、例のアレやっぱり頼みたいんやけど・・・・、」
アイツはすぐに引き受けてくれた。
ただ学校の傍で喧嘩をするのはマズイので、どこかにおびき出してくれと言われた。
「ほなイオンの駐車場の向こうは?空き地があるし、周りが林みたいになってるから、周りから見えにくいし。」
そこでいいと言われたので、「ほな頼むで」と電話を切った。
民家の隙間から出て、学校を振り返る。
しばらく待っていると、自転車に乗った柴田が出てきた。
取り巻き連中と、ムカつく顔で笑いながら。
「どうしよか。向こうは自転車やから、追いつかれてまう。」
指定した場所まで、どうやっておびき出すか?
やっぱりこっちも自転車が必要になると思った。
僕はまた民家の隙間に隠れて、柴田たちをやり過ごす。
そして急いで駐輪場まで戻って、自分の自転車に跨ろうとした。
でも・・・・
「あいつら・・・・、」
僕の自転車はボロボロにされていた。
カゴはボコボコにへこんで、タイヤはパンクしている。
サドルは無くなってるし、ペダルも何かで擦ったように傷だらけだった。
「まだ乗れるかな。」
サドルがないので立ち乗りをする。
ペダルを漕ぐと、スカスカで転びそうになった。
「あかん・・・・チェーンもやられてる。」
自転車が使えないんじゃ、あいつらをおびき出せない。
どうしたもんかと困っていると、後ろから「使う?」と誰かが声を掛けてきた。
「俺のでよかったら使う?」
そう言ってくれたのは、同じクラスの委員長だった。
「俺、親に迎えに来てもらうから。」
「ええの?」
「だって困るやろ?」
「いや、そうじゃなくて、そんなことしたら西田君も目えつけられるんちゃうかと思って。」
「あいつらもうおらんから、バレへんて。」
そう言って「使いいな」と自転車を向けた。
「ほんまにええの?」
「うん。あ、でもあいつらには貸したこと内緒な。」
「分かった。ありがとう。明日返すから。」
ありがたく自転車を借りて、一気に駆けだす。
少し走ると柴田の背中が見えてきて、メンチを切りながら追い抜かした。
「あ!」
「何が『あ!』やねんボケ。死ね。」
ペッと唾を吐き、慌てて逃げ出す。
いつもなら絶対にこんなことは出来ないけど、今日はアイツがいてくれる。
だからどこまでも強気に出れた。
「待てコラ!」
怒鳴り声が響いて、柴田たちが追いかけて来る。
僕は必死に自転車を漕いで、少し離れたイオンの駐車場を目指した。
「待て言うとるやろ!」
「死にたいんかコラ!」
「うっさいボケ!お前が死ね柴田!」
「ええわ、お前絶対殺す。」
柴田の人相が変わる。
《コイツ、マジギレしたら血の気が引くタイプなんやな。》
目を見開き、顔は無表情。
今捕まったら、冗談抜きで殺されるかもしれない。
だから本気で漕いだ。
漕いで漕いで必死に漕いで、ようやくイオンが見えてきた。
僕は一気に駐車場を駆け抜け、その向こうにある空き地へと走る。
そして近くまで来ると、自転車を乗り捨てた。
空き地と駐車場の間にはフェンスがあるので、それを越えないといけない。
そう高くはないから、急いで登れば捕まることはないはずだ。
はずだったけど・・・・・捕まった。
「はい終了。」
柴田が僕の右足を掴んでいる。
取り巻きどももやって来て、「手え離せコラ」と群がった。
抵抗虚しく、ズルズルと引き下ろされる。
顔を上げると、目の前に柴田の顔があった。
「お前覚悟できとんやろ?」
「・・・・・・・・・・。」
「謝っても無駄やで。マジで殺さな気がすまんわ。」
髪の毛を掴まれて、膝蹴りを入れられる。
息が詰まり、「おえッ・・・・」と吐きそうになった。
すると取り巻きの一人が「ここじゃヤバイ」と柴田を止めた。
「ようさん人がおる。あんまやりよったら通報されるかも。」
「ほな向こうの空き地に連れて行ったらええやん。」
柴田は僕にヘッドロックをかけて「大声出すなよ」と言った。
そしてグルリと駐車場の外を回って、ありがたくも僕の目的地まで連れていってくれた。
「ここならええやろ。」
教室一個分の広さの空き地に、枯れた草が茂っている。
周りは高い木々で覆われていて、中に入ると外から見えない。
柴田は「なあ?」と僕の髪を掴んだ。
「今日どしたん?んん?」
「・・・・・・・・。」
「いや、殺す言うたらほんまに殺すで?」
「・・・・・・・・。」
「何その目?冗談で言うてる思てんの?」
「・・・・思ってないよ。でもお前じゃ無理やから。」
「は(笑)?」
「お前が僕をボコボコにする前に、お前がボコボコになるから。」
「いやいやいや(笑)ボコボコじゃなくて殺す言うてんねん。
ていうかなんで俺がボコボコ?お前勝てると思てんの?」
柴田は馬鹿にしたように笑う。
取り巻き連中も爆笑して、「シバっちゃん、もうやってもたら?」と言った。
「そなや。」
柴田は笑顔を消して、グッと拳を握る。
「とりあえず鼻いくわ。そのあと歯あな。」
「いや、顔はまずいんちゃう?バレるで?」
取り巻きに言われる柴田だったが、「それくらいやらんと気が済まん」とキレていた。
「どうせ中学生どうしの喧嘩やし、警察なんかに捕まらんって。
学校にバレたって、センコーらは隠すだけやし。」
「そやな。菊池ン時もそうやったし。」
「あのブスがまだおったら、お前がイジメに遭わへんかったかもしれへんのにな。可哀想に。」
柴田の拳が動く。
僕の顔に目がけて。
でもそれが当たる前に、アイツがその腕を掴んでいた。
「シュウちゃん、来たで。」
ニコッと笑う井口、僕は「助けて・・・」と呟いた。
「うん、分かっとる。」
井口は力任せに柴田を投げ飛ばす。
片手でヒョイっとやっただけなのに、柴田はゴロゴロ転がっていった。
「なんやねんお前!」
取り巻き連中が殺気立つ。
でも井口が「え?なに?」と詰め寄ると、誰もが黙り込んだ。
今日の井口は、短パンに加えてタンクトップだった。
冬なのによくもまあこんな格好をする。
でもその服装のせいで、中学生離れしたマッチョな肉体が剥き出しだ。
取り巻きどもは黙り込んで、井口と目を合わせようとしなかった。
「誰か俺とやんの?」
そう言って睨むと、みんな後ずさった。
まあ当然だろう。どこからどう見てもゴリラモドキなんだから。
「じっとしとけ。動いたらシバくぞ。」
怖い顔をしながら言って、柴田の元へ行く。
「こいつが主犯やな。」
髪の毛を掴み「立て」と引っ張る。
「お前俺のダチに何してくれてんねん。」
バコン!と大きな音がして、井口のビンタが炸裂する。
柴田はよろめいて、「ちょ、待って・・・・」と怯えた。
「殺すぞお前。」
またビンタが炸裂。
いや、ビンタっていうより、平手でどつかれてる感じだ。
「シュウちゃん俺のダチやねん。何手え出してくれてんねん。」
また平手のパンチ。
柴田はヨロヨロっとなって、鼻血を出した。
「おいコラ、聞いてんのか?」
顎を掴み、無理矢理上を向かせる。
空手で鍛えた太い指がめり込んで、柴田の顔が歪んだ。
「しゅ、しゅいまへん・・・・、」
「ああ?」
「ひゃんべんひへふばはい・・・・、」
「何言うてるか分からんわボケ。ちゃんと喋れ。」
ちゃんと喋りたくても、井口の指が食い込んで顎が動かない。
「なんて?なんて言うたん?」
わざとらしい顔をしながら、耳を近づける。
柴田は涙目になりながら、「ひゅいまへんへひた・・・・、」と謝った。
「だからちゃんと喋れや。」
顎を掴んだまま、ローキックをかます。
柴田の身体がふわっと浮いて、でも顎を掴まれてるから倒れることが出来ない。
「謝るんやったらちゃんと謝ってんか。ちゃんとな。」
「ひゅ、ひゅいまへん・・・・、」
「だからちゃんと喋れや。」
またローキック。
鈍い音がして、「あうあッ!」と悲鳴を上げた。
「ひゅいまへん!ひゅいまへん!はんべんひへふだはい!」
「ええ!?なんてえ!?」
またまたローキック。
さっきのやつよりも強烈で、柴田は「いだいッ!」と泣いた。
「ほうやへて・・・・、」
「え?だからなに?」
「ほへんなはい・・・もうへえはひまへんはら・・・・、」
「お前日本語喋れよ。言うてる意味分からへんねん。」
「あ・・・あご・・・ゆびが・・・・、」
「ああ?なんてえ!?」」
「はやまりまふはら・・・もうはんべんひへふだはい・・・・、」
「だから分からんて。アホなんかお前は。」
その後、ローキック、「ふうはへん・・・」、ローキック、「はんべんひへふばはい・・・」と、同じようなやり取りが何度も続いた。
取り巻き連中は怯え切って、その場から動くことが出来ない。
そして僕もだんだんと柴田が可哀想になってきて、「もうええで」と言った。
「もう許したって。」
「ええんか?」
「だってこれ以上はさすがに・・・・、」
「でもこの手のやつって、半端にやったら後から何するか分からんで?」
「でももうええねん。許したって。」
「そう?シュウちゃんがそう言うんやったら。」
井口は掴んでいた顎を離す。
「ああ・・あ・・・・、」
柴田はその場に倒れて、ぶるぶる震えながら泣いた。
「おいコラ、分かってると思うけどな・・・、」
井口は柴田の髪を掴み、「これで終わりにしとけよ」と睨んだ。
「もしまた手え出したら・・・・、」
「もう二度としません!すんません・・・、」
「それと親や学校に泣きつくなよ。こっちにはコレがあるから。」
そう言ってポケットからスマホを取り出した。
「お前らがシュウちゃんイジメてるとこ、しっかり撮ったから。しょうもないことしたらネットに上げるで?」
「誰にも言いません・・・・絶対に言いません・・・・、」
「ホンマやな?嘘やったら殺すぞ?」
「約束します!なんにも言いません!」
「もうしょうもないことするなよ。」
「はい・・・すいません・・・・、」
「ほな行け。」
ドンと柴田のケツを蹴飛ばす。
取り巻きが柴田を立たせて、肩を支えながら逃げて行った。
僕はホッと息をつく。
「大丈夫か?」
「まあ・・・ちょっとビビったけど・・・・、」
「もうないと思うけど、またなんかあったら言うてや。次はあんなもんじゃすまさへんから。」
マッチョな筋肉がピクピク動いて、僕は「もう大丈夫やろ」と引きつった。
井口は「みんな大した怪我がなくて何よりや」と笑う。
「いや、柴田怪我してるやん。」
「あんなん怪我のうちに入らへんて。」
「それお前基準やろ。」
「そやな。」
可笑しそうに笑って、「そうそう」と何かを思い出していた。
「あの子らも連れて来たんや。」
「え?」
「だから昨日の子と、そのお姉ちゃん。」
そう言われて、僕は「マジで・・・」と固まった。
「そら連れて来るやろ。自分をイジメてた憎き相手がシバかれるんやで。
見たいに決まってるやん。」
そう言いながら、井口は「なあ?」と後ろを振り返る。
するとそこには二人の女の子がいた。
一人は昨日の可愛い子。
そしてもう一人は、俺の前に柴田にイジメられていた、発達障害のあの子だった。

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