ダナエの神話〜星になった神様〜 第百十五話 神器の力(12)

  • 2017.04.14 Friday
  • 17:11

JUGEMテーマ:自作小説

「邪神・・・・とうとう動き出したわ。」
墜落した戦艦からは、まだもうもうと黒い煙が溢れている。
その中心で、巨大な影が動いていた。
その影はダナエたちに殺気を向けている。
まるで針の上に立たされるような、恐ろしい殺気を。
コウはゴクリと息を飲む。
「さっきの邪神の群れは、きっと時間稼ぎだ。あいつが完全に羽化るすまでの。」
「ええ。そして今・・・・完全に目覚めた。
あいつのパワーは、私たち全員よりも遥かに上だわ。」
邪神はゆっくりと歩きながら、黒い煙から出てくる。
その姿は、予想よりもスッキリしたものだった。
もっと禍々しい姿だと思っていたのに、ダナエたちは拍子抜けした。
「なんだあれ?あんな恰好なら、さっきの群れの方が強そうだぜ。」
「見た目に騙されちゃダメよ。」
「でも魔力だってそんなに感じねえ。もしかしたら羽化を失敗したのかな?」
新たに生まれ変わった邪神。
その姿はまるでステルス戦闘機のようだった。
マイマイカブリのような姿形はそのままだが、表面がツルツルの平らになっている。
全身は真っ黒で、所々に白い線が走っていた。
六本の脚は、以前よりも細くなっている。
自慢の大顎も、これまた小さくなっていた。
しかし目だけは前よりも大きい。
顔からはみ出しそうなほど大きくなって、万華鏡のように輝ている。
「全然強そうに見えない。魔力だって大したことなさそうだし。
やっぱり羽化に失敗したんだよ。」
「私はそう思わない。あの狡賢い邪神が、失敗した姿で出て来るなんて思えないわ。」
ダナエは気を引き締める。
「みんな!見た目に惑わされちゃダメよ!あいつは今までよりも強くなってるはず!」
アドネもシウンも、そしてノリスもマナも、コウと同じように拍子抜けしていた。
「ねえダナエ・・・あれ、ほんとに強いのかな?」
「強いかもしれないし、弱いかもしれない。
だけど強いと思って挑めば、痛い目に遭うことはないわ。」
「確かにそうね。だったら気を引き締めなくちゃ!」
アドネは鎌を振り上げ「みんな!気合入れていくわよ!」と叫んだ。
ダナエは「私が先頭を行く。みんなはその後に続いて!」と飛んでいった。
しかしコウが「待て!」と止める。
「いきなり近づく奴があるかよ。」
「ぼうっと見てる方が危険だわ。あいつは何をするか分からない奴なんだから。
こっちから攻めて、先手を取らないと。」
「ならまずは磁場で引き寄せればいいだろ。」
「・・・・あ!」
「はあ・・・・さっきはあんなに上手く戦ってたのに、どうしてその事を忘れるかね?
やっぱりバカチンだな。」
「バカチン言わないでよ。」
ダナエはムスっと怒って、羽を羽ばたいた。
オーロラの光が飛んでいき、邪神を包む。
「よし、そのまま引き寄せろ。」
「うん!」
ダナエは強力な磁場を発生させ、邪神を引っ張った。
すると簡単にこちらに引き寄せられてきた。
「抵抗するかと思ったのに、やけに大人しいわね。」
「かえって怖いな。油断するなよ。」
「何よ、さっきまで弱いとか言ってたクセに。」
「愚痴はいいから、慎重に引き寄せろよ。」
「分かってるってば。」
邪神はズリズリとこちらへやって来る。
そしてある程度まで引き寄せた時、急に磁場が消えてしまった。
「あれ?」
「どうした?」
「磁場が消えちゃったの。」
「なんで?」
「分からない。羽を動かしても、すぐに消えちゃう。」
《馬鹿なガキ・・・・。》
「なんですって?」
《月の魔力を手放すなんて・・・・これでお前らに勝ち目はない。》
「そんなのやってみなくちゃ分からないわ!」
《私が恐れていたのは、あの魔力だけ。
それを失った今、お前たちなんてゴキブリと一緒よ。》
邪神は高らかに笑う。そして突然姿が消えてしまった。
「消えた!?」
「気配を探れ!どっかにいるはずだ!」
ダナエたちは必死に邪神の気配を探る。
しかしまったく何も感じなかった。
ノリスが「逃げたのか?」と言う。
シウンは「そんなはずはない」と首を振った。
「あいつは俺たちに殺気を向けていた。逃げるはずがない。」
「でもどこにいねえぜ。」
忽然と消えてしまった邪神。
気配すらも消えて、本当に逃げてしまったかのようだった。
しかしその時、ダナエの触覚がピクピクと反応した。
「・・・・いる。まだいるわ!」
触覚に神経を集中させて、微かな気配を探る。
「・・・・・・アドネ!後ろ!」
「え?」
アドネは後ろを振り向く。しかし誰もいない。
「何よ?誰もいないじゃな・・・・、」
「しゃがんで!」
アドネの頭を押さえつけ、槍を振る。
すると何かとぶつかって、ダナエの槍は弾き返された。
《勘の良いガキ。》
「やっぱりまだいるわ!油断しないで!」
ダナエはまた触覚に神経を集中させる。
その時、目の前に紫色の波が広がった。
「何?この波は・・・・。」
「ソナーだ。」
コウは両手を広げ、魔力を波状に飛ばしていた。
「奴に当たれば跳ね返ってくるはずだ。」
「いつの間にそんな魔法を使えるようになったの?」
「キーマのおかげさ。」
「?」
コウは魔力を飛ばし続ける。
そして微かな動きを感じ取った。
「シウン!後ろだ!」
シウンは咄嗟に振り向き、両手でガードする。
次の瞬間、凄まじい衝撃で叩かれて、地面にめり込んでしまった。
「ぐおッ・・・・、」
「シウン!」
「大丈夫だ・・・・。不意打ちだったもんで油断しただけだ。」
そう言って地面から這い出て、「邪神め・・・」と呟いた。
「コウよ、やっぱりアイツは弱くなってるのかもしれない。」
「なんだって?」
「さっきの一撃、はっきり言って大したことはなかった。
これならまだ兵隊の邪神の方が強い。」
「そう・・・なのか?」
「それに本当に強くなったなら、コソコソ隠れながら戦う必要はないだろう。
もっと堂々としていればいいはずだ。」
「言われてみれば・・・・、」
「間違いない、アイツは弱くなってる。」
「ということは、やっぱり羽化に失敗したんだな。」
これはチャンスだった。
弱体化したとあれば、倒せる可能性は充分にある。
「みんな!俺が位置を探る!指示した場所に攻撃してくれ!」
「了解!」
みんなは武器を構えて辺りを窺う。
しかしダナエは「違う」と首を振った。
「羽化に失敗だなんて、そんなヘマをするような奴じゃないわ。」
「でもアイツは弱くなってるんだぜ?失敗したとしか考えられないだろ。」
「・・・・試してるのかも。」
「試す?何を?」
「自分の力を。」
「どういうことだ?」
「アイツも私と一緒なのよ。進化して、あまりに大きな力を手に入れたんだわ。
それをそのまま使うのは危険だから、こうやって力の使い方を試してるのよ。」
「要するに、これは準備運動ってことか?」
「きっとね。強い力は自分まで滅ぼす危険がある。
そうならない為に、ちょっとずつ力を解放してるんだと思うわ。」
「なら準備運動が終わったら・・・・、」
「本気で来ると思う。」
コウの背筋に冷たい汗が流れる。
邪神は弱体化したのではなく、ただ準備運動をしていただけ。
もし本気で来られたら全滅しかねない。
「あいつは目に見えないし、気配すらほとんどない。
いちいちソナーで居場所を探ってたんじゃ、とても戦えない・・・・。」
困った顔で言いながら「どうにかならないのか?」と尋ねた。
「手はあるわ。」
「ホントか!?」
「進化して手に入れた力は、磁場を操る力だけじゃない。他に二つあるのよ。」
そう言って羽の形を変えた。
オーロラのようだった羽が、アゲハチョウの羽に変わる。
その羽を羽ばたくと、金色の鱗粉が降り注いだ。
「これは?」
「まあ見てて。」
キラキラと降り注ぐ綺麗な鱗粉。
まるで砂金をばら撒いたように、辺りが黄金色に輝いた。
「金!金よ!」
マナが手を挙げて喜ぶ。
「集めて売らなきゃ!」
小さな結界を作り、その中に鱗粉を溜めていく。
すると鱗粉に触れた途端に、結界は消えてしまった。
「あれ?なんで?」
不思議そうに首を傾げていると、背後から邪神が現れた。
「きゃあ!」
マナは慌ててノリスの後ろに隠れる。
「姿が見えるようになった・・・・。」
ダナエは「怖がってる場合じゃないわ」と言った。
「ノリス!」
「分かってらあ!」
ノリスの銃から弾丸が放たれる。
邪神を直撃して、爆炎を上げた。
「これで反射能力は消えたはずだ。やるなら今のうちだぜ。」
そう言うのと同時に、シウンとアドネが飛びかかっていた。
「たあああああ!」
「おおおおおお!」
二人の攻撃が同時に炸裂する。
しかし邪神はビクともしない。
平然とその場に立っていた。
《この鱗粉は何?》
「これは特殊な結界を生み出す鱗粉よ。」
《特殊な結界?》
「この鱗粉の中では、基本的な魔法しか使えなくなるの。
火を放ったりを風を起こしたりは出来るけど、結界魔法や幻術みたいな魔法は使えなくなるわ。」
《なるほど・・・・特殊効果を防ぐ結界ってわけね。》
「この中じゃ小細工は通用しないわ!正々堂々と戦いなさい!」
《正々堂々ですって?六対一のクセによく言うわ。》
邪神はゲラゲラと笑う。
《でもまあ・・・準備運動はこれくらいでいいかしら。
身体も温まってきたし、本気でやらせてもらうわよ!》
万華鏡のような大きな目が、チカチカと輝く。
その瞬間、邪神の魔力が膨れ上がった。
「なッ・・・・、」
驚いて後ずさる仲間たち。
ダナエは先頭に立ち、「援護をお願い!」と言った。
みんな臨戦態勢に入る。
邪神は不敵に笑った。
《ねえ?》
「なによ。」
《この結界を張ったままでいいの?》
「だからなにがよ?」
《・・・いいえ。別に困らないならいいけど。》
またゲラゲラ笑い、《それじゃやりましょうか》と殺気を向けた。
《もうお前らみたいなガキに振り回さるのはゴメンでね。
ここでケリつけさせてもらうわ。》
「それはこっちのセリフよ!この戦いで最後にしてやる!」
ブンブンと槍を回し、気合を入れ直す。
蝶の羽を広げ、邪神に飛びかかっていった。

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

GA

にほんブログ村

selected entries

categories

archives

recent comment

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM