ダナエの神話〜星になった神様〜 第百十六話 遠い空の彼方に(1)

  • 2017.04.15 Saturday
  • 08:22

JUGEMテーマ:自作小説

地球から遥か遠くに浮かぶ、空想の星ラシル。
地球とよく似た環境で、宇宙から見ると瓜二つだ。
しかし今、この星は暗い雲に覆われている。
宇宙から眺めると、濃いグレーに染まっていた。
ラシルは暗い雲によって蝕まれていく。
放っておけば、ラシルの生命を根絶やしにしてしまうだろう。
その全ての元凶、邪神クイン・ダガダ。
地球の悪魔でさえも恐れる、銀河の支配を企む欲望の怪物。
その怪物は今、新たな進化を遂げて、凄まじい力を手にしていた。
月の魔力を放棄したダナエでは、まったく手も足も出ないほどに。
          *

「なんて強いの・・・・・。」
意気込んで挑んだものの、邪神の強さは圧倒的だった。
一番強いダナエが歯が立たないのだから、他の仲間ではどうにも出来ない。
何も出来ないまま、ただただ追い詰められていった。
「クソ!このままやられてたまるか!」
シウンは自爆を覚悟で突っ込む。
しかし「ダメ!」とダナエが止めた。
「お願いだからそういうことはやめて!」
「だがこのままでは全滅するだけだ!」
「だからって命を武器にしないで!」
ダナエは先頭に立ち、みんなを守るように羽を広げた。
「みんな私の後ろにいて。」
「お前一人で戦うつもりか?」
「それしかないじゃない。下手にみんなでかかれば、余計な犠牲者が出るだけよ。」
「俺たちは仲間だろう!なのに信用していないのか!?」
「してるわ!だけど・・・邪神は強すぎる。まさかここまでなんて・・・・、」
ダナエは悔しそうに歯を食いしばった。
《だから言ったでしょ。月の魔力がないお前らなんか怖くないって。》
邪神はゲラゲラと笑い、青色の業火を吐き出す。
「きゃああああああ!」
「ダナエ!」
コウが助けに入ろうとするが、「来ちゃダメ!」と止めた。
「これ普通の炎じゃないわ!雷と融合させてる!」
「雷と・・・・?」
「まるで電気を流されてるみたいに、全身に鋭い熱が伝わってくる!」
「だったら俺たちも一緒に・・・・、」
「ダメったらダメ!一瞬で焼け死ぬわよ!」
コウは「クソ!」と唸った。
金色の鱗粉のせいで、クワガタモードは解除されている。
このまま助けに入っても、確かに焼け死ぬだけだった。
ダナエは風の魔法を唱え、竜巻を起こす。
青い業火は竜巻に遮られて、空へ昇っていった。
《ふふふ・・・だから言ったでしょ。この結界を張ったままでいいのかって。》
邪神は金色の鱗粉を見上げる。
《これがある限り、私は姿を消すことが出来ない。
でもその代わり、お前らも特殊な力は使えなくなる。
せっかく手に入れた神器でさえね。》
「くッ・・・・・、」
《でも正々堂々と戦えって言ったのはあんただから、文句はないわよね?》
邪神は脚を振り上げ、鞭のように叩きつけた。
ダナエは間一髪かわしたが、風圧でバランスを崩した。
「きゃあ!」
《終わりよ!》
再び青い業火が襲いかかる。
ダナエは《もうダメだ・・・・》と目を閉じた。
《ごめんみんな・・・・私が月の魔力を捨てたばっかりに・・・・。》
邪神の言う通り、月の魔力があればここまで苦戦しなかっただろう。
しかし捨てた物を取り戻すことは出来ない。
自分たちの力で邪神を倒すしかないのだ。
青い業火はダナエを包み、灼熱の苦痛を与える。
「ああああああああ!」
「ダナエえええええ!」
コウは青い業火の中へ飛び込んでいく。
アドネは「ダメよ!」と手を伸ばしたが、間に合わなかった。
「俺が行く!」
シウンがコウの後を追いかける。
「俺がこんな炎くらい吸い取ってやる!」
そう言って業火の中に飛び込み、炎を吸収しようとした。
しかしほんの少し吸い込んだだけで、全身に激痛が走った。
《ぐううッ・・・・そうか、この炎には雷も混ざって・・・、》
シウンは炎や熱なら吸収できる。
しかし電気は吸い取ることが出来ない。
それどころか、あまりに電撃を喰らい過ぎると、身体が弾け飛ぶ危険があった。
《超人の肉体は電撃を無効化することができる。
だが限界を超えてしまうと、その瞬間粉々に・・・・。》
痛みを堪えながら、それでも炎を吸い尽くそうとする。
「ううう・・・・ぐうう・・・おおおおおおおおお!」
全身がバラバラになりそうな痛みを堪えながら、どうにか業火を吸い尽くす。
しかしその瞬間、手足が弾け飛んでしまった。
「ぐうおおおおお!」
「シウン!」
アドネが「しっかりして!」と抱きかかえる。
「すぐに治してあげるから!」
「お・・・・俺はいい・・・。あの二人は・・・・、」
ダナエとコウは無事だった。
シウンが守ったおかげで、軽い火傷ですんでいる。
「コウ!早くシウンを治して・・・・、」
アドネがそう言いかけた時、頭上から青い光が降り注いだ。
「ま、また・・・・、」
アドネの真上に邪神の顔があった。
口を開け、青い業火を吐こうとしている。
「俺を盾にしろ!」
「馬鹿!これ以上は死んじゃうでしょ!」
シウンを抱えて逃げ出すアドネ。
しかし邪神の脚に捕まってしまった。
「しまった・・・・、」
「馬鹿野郎!何やってんだ!」
ノリスが咄嗟に駆け出す。
二人を助け出し、業火から逃げ出した。
「気いつけろ!」
「ごめん・・・・。」
「つうか走れ!炎が迫って来る!」
青い業火がすぐそこまで迫ってくる。
「やばい!このままじゃ焼かれちまう!」
足元に炎が迫り、靴が溶けていく。
しかしその時、突然邪神の動きが止まった。
「なんだ?」
振り向くと、ニーズホッグが邪神に噛みついていた。
「邪神!イツマデモ好キ勝手ハサセンゾ!」
《ミミズの分際で・・・・。》
邪神は身体を捻り、ニーズホッグを軽く投げ飛ばす。
《お前もここで焼け死ね。》
青い業火が吐き出され、ニーズホッグを襲う。
しかしどこからか水が飛んできて、その業火を包んでしまった。
《私の炎を・・・・。》
「僕もニーズホッグと同じ気持ちさ。これ以上お前の好きにはさせない。」
《ジル・フィン・・・・。》
ジル・フィンは杖をかざし、邪神に水のロープを巻き付けた。
《この程度で動きを止められるとでも?》
邪神は高らかに笑う。
そして《お前ら全員吹き飛べ!》と叫んだ。
万華鏡のような目がチカチカ光って、邪神の回りに六つの球が浮かぶ。
「これは・・・・、」
ジル・フィンは息を飲み、「みんなここから逃げろ!」と叫んだ。
《もう遅い。》
邪神の周りに浮かぶ六つの球は、それぞれに異なる魔力を宿していた。
火、氷、風、雷、土、そして光。
それを見たマナは「噓でしょ・・・」と慄いた。
「異なる属性の魔法を、六つ同時に使えるっていうの?」
属性の違う魔法を同時に使うのは、そう珍しいことではない。
ダナエもコウも、今までに何度もやっている。
しかし六つ同時というのは、とんでもない荒業だった。
「みんな早く逃げるんだ!」
ジル・フィンは邪神から離れていく。
アドネもシウンを抱えて走り出し、ノリスもマナも逃げ出した。
ニーズホッグも、いそいそと駆け出す。
しかしダナエとコウは逃げなかった。
その場にとどまり、邪神を見上げている。
「何をしている!早くこっちへ!」
ジル・フィンが水のロープを向ける。
しかしそれを掴もうとはしなかった。
「ねえコウ・・・・信じていいよね?」
「ああ。俺もお前を信じる。だからやってくれ。」
二人はヒソヒソと話しながら、何かを頷き合っていた。
「二人とも!そこにいちゃダメだ!」
「ジル・フィン。私たちは逃げないわ。」
「何を言ってるんだ!六つの魔法が同時に襲ってくるんだぞ!
しかも一発一発が凄まじい威力をしているはずだ!」
「でも逃げない。だってまだ出来ることがあるから。」
「出来ることだって?」
「新しい進化をして、今までにない力が三つ使えるようになった。
だけど三つ目の力だけは、使うのを躊躇ってたの。
でも・・・・私はやることにした。コウを信じて。」
ダナエとコウは見つめ合い、小さく頷いた。
「じゃあいくよ、コウ。」
「おお!やってくれ。」
ダナエの羽が、また別の形へと変わっていく。
美しいアゲハチョウの羽が、だんだんと薄くなっていったのだ。
そして完全に色が無くなって、無色透明の羽になった。
それはグラスウィングバタフライという、最も美しいと言われる蝶の羽だった。
色がないので、向こう側まで透けて見える。
しかし羽を動かすと、光の加減で様々な色に見えるのだ。
羽ばたけばキラキラと光り、生ける芸術のような美しさだった。
遠くから見ていたアドネが、「本物の天使みたい・・・」と呟く。
しかしその瞬間、邪神の魔法が炸裂した。
火、氷、風、雷、土、光。
六つの魔法がコンビネーションブローのように襲いかかる。
まずは炎が炸裂した。
シウンの熱線と同等の威力を持った炎が、一瞬で二人を飲み込む。
「ダナエ!コウ!」
アドネが駆け出そうとする。
しかしジル・フィンに止められた。
「ちょっと!どいてよ!」
「行けば死んでしまうよ。」
「それはあの二人も一緒でしょ!助けなきゃ!」
「いや、あの二人には勝算があるようだ。」
「勝算?」
「今は信じて見守ろう。」
ダナエは言った。まだ手は残されていると。
それがどういう手なのか分からないが、ジル・フィンはその言葉を信じることにした。
《ダナエ、君はハッタリを言う子じゃない。だから・・・期待してるよ。》
炎の魔法は生き物のようにうねり、熱風を巻き散らす。
すると今度は氷の魔法が襲いかかった。
光り輝く雪の結晶が、炎の中に落ちていったのだ。
その瞬間、激しい炎は一瞬で消え去った。
代わりに激しいブリザードが吹き荒れて、絶対零度近くまで温度が下がる。
「うおおおお!ここもやべえぜ!」
冷たい風が押し寄せて、ノリスは顔を覆う。
「もう少し遠くへ離れよう。」
みんなは箱舟の近くまで避難する。
それでも身を切るような寒さが襲ってきた。
辺りは一瞬で白銀の世界に変わる。
しかし今度は風の魔法が炸裂して、大きな竜巻が起こった。
それは氷の魔法全てを飲み込むほど巨大で、たちまち冷気は掻き消されてしまった。
その代わり、大地を抉るほどの威力で風が吹き荒れる。
あまりの風速に、空の雲まで吸い寄せられるほどだった。
「なんて風だ・・・・飲み込まれたら一瞬でバラバラだ。」
シウンが顔を覆いながら言う。
「みんな、箱舟の中に隠れよう。」
ジル・フィンがみんなを船の中に押し込む。
すると次の瞬間、立っていられないほどの強い地震が起きた。
「うわあああああ!」
「きゃあああああ!」
船の中で転げ回って、頭や背中を打つ。
「痛あ〜い・・・・、」
「なんだってんだチキショウ!」
「今度は大地の魔法のようだね。」
ジル・フィンは窓の外に目をやる。
しかしすぐに「これは・・・」と息を飲んだ。
「違う!これは雷の魔法だ!」
「雷ですって?」
「なんで雷で地震が起こるんだよ?」
「外を見てごらん。」
みんなは窓に駆け寄る。そして言葉を失った。
さっき大地が揺れたのは、土の魔法のせいではなかった。
あれは特大の雷が落ちたせいで、空気と大地が震動していたのだ。
「なんだありゃあ・・・・、」
ノリスは空を見上げ、ポカンと口を開ける。
そこには大きな雷球が浮かんでいた。
箱船よりも遥かに巨大で、隕石が空に浮かんでいるかのような迫力だった。
「あんなもんが落ちたら・・・・、」
目を見開き、ゴクリと息を飲む。
「また揺れるだろう。何かに掴まってた方がいい。」
そう言った次の瞬間、空に浮かぶ雷球が弾けた。
辺りは真っ白に輝き、少し遅れて轟音が響く。
空気が揺れ、大地も揺れ、グラグラと船が傾いた。
「うおおおおおお!」
「きゃあああああ!」
目もくらむ閃光、鼓膜が破れそうな轟音、立っていられないほどの大きな揺れ。
誰もが心の底から怯えた。
「こんな魔法を喰らって、あの二人は本当に大丈夫なの?」
アドネが心配そうに呟く。
しかし雷の後に、さらに大きな衝撃がやってきた。
なんと箱船から半径十キロもの大地が、突然沈み始めたのだ。
「なんだ!?地面が下がってるぞ!」
「いやあ!飲み込まれる!」
みんなはパニックになる。
ジル・フィンは「落ち着くんだ!」と言った。
「カプネ!すぐに船を飛ばしてくれ!」
そう叫ぶと、天井のスピーカーから声が返ってきた。
「バッキャロウ!エネルギーが空っぽなんだよ!」
「ならすぐに補充する!」
ジル・フィンは動力部まで駆けていく。
そして急いで魔力を注いだ。
「どうだい!?」
「これなら何とか飛べらあ!」
カプネは急いで船を飛ばす。
車輪が回り、大地から離れていった。
その瞬間、大地は深く沈んでいって、中からマグマが溢れ出した。
「危なかった・・・・。」
ジル・フィンはほっと息をつく。みんなの所へ戻る途中で、ふと窓の外を見てみた。
「・・・・なんてことだ。」
土の魔法はまだ終わらない。
これからが本領を発揮する時だった。
沈んだ大地からマグマが吹き上げ、その後には別の何かが盛り上がってきたのだ。
「これは・・・・固まった溶岩が、新たな大地として浮かんできてるのか?」
半径十キロもあるマグマの塊が、ものすごい勢いで飛び出してくる。
その衝撃で、周囲の大地はガラスのようにヒビ割割れていった。
「まずい!また陥没するぞ!」
割れた大地は脆くなり、また沈んでいく。
最終的には半径二十キロの大地が深く沈んでしまった。
「なんという威力だ・・・・。」
大地の一部がぽっかり抜け落ちる。
ジル・フィンの背中に冷たい汗が流れた。
「ここまでパワーアップしてるのか、邪神は・・・・。」
急いでみんなの所へ戻ると、窓の外に釘付けになっていた。
ジル・フィンも横に並び、「どうした?」と覗き込む。
「最後の魔法が・・・・。」
アドネが空を指さす。
火、氷、風、雷、土ときて、最後の光の魔法が炸裂する。
空に閃光が走り、地上に向けて光の束が降り注いだのだ。
「あれは・・・・レーザーか?」
ジル・フィンの目に、太さが三キロはありそうなレーザー光線が映る。
それは沈んだ大地をさらに抉り、マントルの底まで貫通していった。
そして・・・・、
「うおおおお!」
太さが三キロもあるレーザーが、無数の光の束に分かれていったのだ。
まるで竹ぼうきのように拡散して、縦横無尽に大地を駆ける。
「ラシルが・・・・焼かれる・・・・。」
今までに見たこともないほど、凄まじい威力の魔法。
ジル・フィンは「これではもう・・・・」と呟いた。
「あの二人は生きてはないだろう・・・・。」
ダナエは言っていた。勝算はあると。
しかしこれだけの威力の魔法を見せつけられると、その言葉も虚しく感じられた。
一発一発が絶大な威力を秘めているのに、それが六発も降り注いだのだ。
「ダナエ・・・・これでも勝算があるのかい?」
きっともう生きていないだろうと思いながら、それでも二人に語り掛ける。
やがてレーザーは消えて、辺りに静けさが戻った。
「・・・・・・・・・。」
誰もが言葉を失う。
六発の魔法が炸裂した後には、マグマの海だけが広がっていた。
遥か遠くまで赤い波に覆われて、とても生物がいられるような環境ではなくなっていた。
全員の胸に同じ気持ちが溢れる。
あの二人はもう生きてはいないと。
窓に張り付き、ごうごうと滾るマグマの波を見下ろした。
「・・・・・うう・・・う・・・。」
アドネが俯き、嗚咽する。
膝をつき、がっくりと項垂れて「ダナエえ・・・コウ・・・・」と呟いた。
他の仲間も暗い表情に変わる。
シウンは悔しそうに歯を食いしばり、ノリスは無言で二人がいた場所を見つめている。
マナも浮かない顔をしながら目を伏せていた。
「なんで・・・・なんでよ・・・。なんで逃げなかったのよ・・・・。」
アドネの言葉が宙を舞い、みんなの胸を締めつける。
「何が勝算よ!こんなの・・・こんなのどうにもならないじゃない!」
そう言ってジル・フィンに掴みかかった。
「あんたが見殺しにしたんだ!
私は助けようとしたのに、勝算がどうとか勝手なこと言って!」
ガクガクと揺さぶり、胸倉を締め上げる。
「あんたこの星の神様なんでしょ!だったらなんで見殺しにしたのよ!」
「僕はあの二人を信じたんだ。今さら後悔してもどうにもならない。」
「あんたの気持ちなんか聞いてないわよ!
あの時あんたが邪魔しなければ、私は二人を連れて逃げてた!
それなのに・・・・、」
ボロボロと涙をこぼし、ジル・フィンを睨みつける。
「責任取れ!責任取って生き返らせろ!」
「残念だが、僕に死者復活の力はない。」
「だったら誰かに頼んでやってもらえ!」
「アドネ、ちょっと落ち着こう。」
「あんたが怒らせてんのよ!いいからダナエとコウを返せ!」
耳がキンキンするほどの声で怒鳴るアドネ。
見かねたノリスが「やめろ」と引き離した。
「まだ死んだと決まったわけじゃねえ。」
「でもあれだけ凄い魔法だったのよ!大地もめちゃくちゃだし、きっともう・・・、」
「確かに生きてる可能性は低いだろうな。だが今はやることがあるだろうが。」
「やること・・・・?」
「邪神はまだ生きてる。」
そう言われて、アドネはやっと落ち着きを取り戻した。
「そうよね・・・自分の魔法で死ぬわけないもんね・・・・。」
「あの二人がどうなったかは分からねえが、邪神を倒さなきゃいけねえことに変わりはねえ。」
アドネはズズッと鼻をすすり、窓の外を見つめる。
「邪神がどこにもいない。きっとまた消えたんだわ。」
ステルスを使う邪神は、ダナエの鱗粉がなければ見つけることは困難だ。
いつ、どこから襲って来るか分からない恐怖に、大きな緊張が走った。
するとその時、船の上から「オイ!」と声がした。
「この声はニーズホッグ・・・・。」
「邪神ダ!」
「なんですって!?」
「船ノ前ニイルゾ!」
みんなは急いで甲板に向かう。
すると船首のすぐ先に邪神が飛んでいた。
《逃げられると思った?ゴキブリども。》
「・・・・・・・・。」
姿を消して襲って来ると思っていたのに、堂々と正面から挑んできた。
邪神は船の上に降りて、《さあ》と脚を広げた。
《あの二人が死んで悲しいでしょう?仇を討ちなさい。》
そう言って挑発するが、誰も動くことができない。
《どうしたの?恐怖で動けない?》
不敵に笑いながら、ゆっくりと近づいてくる。
《それとも力の差に絶望したかしら?》
巨体が迫り、万華鏡のような目で見つめてくる。
《ふふふ、月の魔力さえあれば、どうにか出来たかもしれないのにね。
それをあっさり手放すなんて・・・・お前らの大将は本当に馬鹿。》
口を空け、青い業火を溜める。
《あのガキが馬鹿なことしたせいで、お前らも死ぬの。
あの世で会ったら、せいぜい罵ってやりなさい。》
邪神は今にも青い業火を吐こうとしている。
しかしそれでも誰も動かない。
それは邪神に怯えてるからでもなく、絶望しているからでもない。
むしろその逆で、大きな希望を抱いていた。
なぜなら邪神のすぐ後ろに、あの二人が飛んでいたからだ。
《さあ、これでお終い。》
邪神は青い業火を吐き出す。
その瞬間、ノリスが銃を撃った。
神器の宿った弾丸が、青い炎を跳ね返す。
邪神は《無駄よ》と笑って、また業火を吐こうとした。
「無駄かどうか、すぐに分かるぜ。」
ノリスはもう一発お見舞いする。邪神に当たり、爆炎を上げた。
「これでテメエの反射能力は消えた。」
《だから何?お前らの攻撃くらいじゃビクともしな・・・・、》
そう言おうとした瞬間、首筋に激痛が走った。
《な、何・・・・?》
後ろを振り向くと、そこにはダナエがいた。
《あんた!なんで生きてるの!?》
「さあ、なんででしょう?」
ダナエはニコリと笑いながら、槍を突き刺していた。
「邪神、やっぱりあんたは強い。神器の力なしじゃとても勝てないわ。」
ダナエは槍の神器を使っていた。
この槍で刺されたら、傷口に全ての魔力が集中する。
そしてやがては吹き飛んでしまうのだ。
《・・・・と思ってるんでしょ?甘いわね。》
邪神は大きく吠えて、体内の魔力の流れを操作した。
すると傷口に集まっていた魔力が、再び全身へと流れ始めた。
《こんなことしても無駄よ。》
「それはどうかしらね?」
ダナエはニコリと笑う。
次の瞬間、邪神は身体に違和感を覚えた。
《何?なんか妙な感覚が・・・・、》
「槍の先に、金色の鱗粉を塗っておいたの。」
《金色の鱗粉?》
「特殊効果を打ち消す鱗粉よ。あんたは今、自分でその鱗粉を体内に巡らせたわけ。」
《まさか!その為に神器の槍を・・・・、》
「この槍で刺せば、一か所に魔力が集まる。
そうなれば、あんたは必死に魔力を全身へ戻そうとするだろうと思った。
そして思い通りにそうしてくれたわ。」
《く・・・クソガキいいいい・・・・・。》
邪神の目がチカチカと光る。
金色の鱗粉を体内に拡散してしまった以上、しばらくは特殊な力は使えなくなる。
「この鱗粉が効いている限り、あんたは反射能力もステルス能力も失う。」
《だから何!?パワーでは圧倒的に私が勝ってるのよ!特殊な力なんかなくても・・・、》
そう言いかけた時、コウが「なくても勝てると思うのは、思い上がりだぜ」と遮った。
拳を握り、邪神を殴る。
すると硬い甲殻を切り裂いて、内臓にまでダメージを与えた。
《ごあッ!なんでお前ごときの攻撃で・・・・、》
「そりゃ特殊能力を使ってるからさ、な?」
そう言ってダナエを振り返ると、ニコリと笑った。

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