ダナエの神話〜星になった神様〜 第百十七話 遠い空の彼方に(2)

  • 2017.04.16 Sunday
  • 17:07

JUGEMテーマ:自作小説

《だから何!?パワーでは圧倒的に私が勝ってるのよ!特殊な力なんかなくても・・・、》
そう言いかけた時、コウが「なくても勝てると思うのは、思い上がりだぜ」と遮った。
拳を握り、邪神を殴る。
すると硬い甲殻を切り裂いて、内臓にまでダメージを与えた。
《ごあッ!なんでお前ごときの攻撃で・・・・、》
「そりゃ特殊能力を使ってるからさ、な?」
そう言ってダナエを振り返ると、ニコリと笑った。
「進化して手に入れた三つめの能力。
これがある限り、特殊能力を封じられたあんたじゃ勝てないわ。」
ダナエの羽は無色透明になっている。
パタパタと動かすと、光の加減でキラキラと光った。
この羽には大きな能力が秘められていた。
後ろの景色まで透き通るほどの透明なこの羽を動かすと、自分自身も透明になれるのだ。
そして透明になっている間は、ほんの少しだけこの次元とズレた所にいる。
分かりやすく言うと、身体だけ亜空間へ避難させて、意識だけがこの次元にとどまっているのだ。
この状態になると、どんな攻撃も喰らわなくなる。
いかに強力な魔法であっても、身体は別次元にいるのだから、ダメージにはならないのだ。
だがその代わり、自分からも攻撃を仕掛けることが出来なくなる。
殴っても蹴っても、相手の身体をすり抜けてしまうからだ。
また魔法も使えなくなるというデメリットがあった。
ダメージを無効にする代わりに、相手にもダメージを与えることが出来なくなる。
言うなれば緊急避難用の技だった。
この技のおかげで、邪神の放った六つの魔法を切り抜けることが出来た。
ではどうしてコウも助かったのか?
それはこの技にはもう一つ秘密があるからだ。
無色透明な羽には、一つだけ色を与えることができる。
青でも赤でも緑でも、好きな色を塗ることができるのだ。
ではどうやって色を塗るかというと、この羽に魔法を当てる。
炎の魔法なら赤くなるし、風の魔法なら緑になる。
今、ダナエの羽は、下の方だけ紫に染まっている。
これは重力魔法を当てた証拠だった。
この羽に色を塗ると、透明になっている間でも、一つだけ魔法が使えるようになる。
邪神が六つの魔法を炸裂させる直前、コウは重力魔法を羽に当てた。
するとダナエは技を発動した後でも、重力魔法だけは使用可能になる。
ダナエは技を発動させて、まず自分だけ亜空間へ避難した。
その後に重力魔法を使い、空間に穴を空けた。
その穴は、ダナエが避難している亜空間へと繋がる穴だ。
コウはその穴を通り、ダナエはいる空間へと逃げ込んだ。
しかしそのまま飛び込んでは死んでしまう。
生身の妖精は亜空間で生きていけないからだ。
そこでコウは、結界魔法を使うことにした。
結界魔法は精霊の力を借りて行うのではなく、自分の魔力だけで行わなくてはならない。
以前のコウなら無理であったが、今なら出来る自身があった。
キーマから少しだけ教えを乞うたおかげで、魔力の使い方が各段に上達していたからだ。
ソナーや透視よりも高度な結界魔法は、とにかく難しい。
マナのように先天的に使えるなら別だが、後から習得するには相当な修練が必要になる。
しかしコウは使いこなした。
ダナエを助ける為に戦艦に乗り込んだ時のように、また高度な魔法を使いこなした。
結界を張り、ダナエがいる亜空間へ逃げ込む。
ここにいる限り、コウもダメージを喰らうことはない。
やがて六つの魔法が終わって、ダナエとコウは元の次元へ戻ってきた。
透明な羽から生み出されるこの技は、どんな攻撃でもダメージを受けない、とても強力な技だった。
しかし大きな危険もある。
透明な羽に色を塗れば、一つだけ魔法が使えるが、もしダナエが死んでしまった場合、羽に色を与えた者も死んでしまうのだ。
相手からの攻撃を受けず、かつ自分だけ攻撃することが可能。
とてつもなく大きなアドバンテージを得ることができるこの技には、それ相応のリスクもあるのだ。
自分が死ねば、仲間も道連れにしてしまう。
だからこそ、ダナエはこの技の使用を躊躇っていた。
しかしこの技を使う以外に、邪神に勝つ方法はない。
ダナエはコウを信じて力を貸してもらった。
そしてコウもまたダナエを信じた。
二人は力を合わせ、邪神の魔法をしのいだのだ。
そして元の次元に戻ってきた後、邪神こっそりとある魔法をかけた。
まずコウが結界魔法を唱える。
邪神には反射能力があるが、結界魔法は跳ね返されることがない。
なぜなら直接邪神の身体に触れる魔法ではないからだ。
コウは邪神を包むほど大きな結界を生み出した。
それは結界の表面に魔法を張りつかせるという、特殊な能力を備えたものだった。
次にダナエが重力魔法をかける。
本来ならダナエに使えない魔法だが、コウが羽に色を塗ってくれたおかげで使用できる。
ダナエは強い重力を生み出して、こっそりと邪神に放った。
邪神はダナエたちが死んだと思っているので、油断してまったく気づかない。
ダナエの重力魔法は、コウの結界魔法に張り付いた。
邪神に気づかれないように、視界の後ろ側に。
なぜそんなことをしたかといと、コウの攻撃力を上げる為だ。
もしコウが重力魔法が張り付いた場所を殴れば、強力な重力に引っ張られて威力が増す。
先ほど邪神を切り裂くことが出来たのはこの為だった。
しかし邪神には反射能力もあるし、姿を消す力もある。
それに他にも、必ず何かしらの能力を備えているはずだった。
もし特殊な能力を使われたら、ダナエの技さえ通用しなくなるかもしれない。
それを憂慮して、金色の鱗粉を塗った槍を刺したのだ。
鱗粉の効果はしばらく続く。
ノリスの銃よりも持続時間が長いので、邪神はしばらくの間は攻撃を跳ね返すことが出来なくなる。
姿を消すことも、他の能力さえも封印される。
ダナエとコウの連携は、見事に邪神の裏を掻いたのだ。
《私はいっぱい食わされたってわけね。》
邪神は大したことでもないという風に笑った。
《力の無い者達が知恵を出し合い、みみっちい生き残りをかける。
切なさすぎて泣けてくるわ。》
「へ!強がってんじゃねえよ。今のお前には大したことは出来ねえぜ。」
コウはまた殴りかかる。
邪神の脚が千切れ、船の上から落ちていった。
「みんな!今がチャンスよ!」
ダナエが叫ぶと、アドネたちは一斉に飛びかかった。
「アドネの鎌は誰の首でも落とす!あんたの命を狩ってやるわ!」
鎌は黒く染まり、邪神と同じくらいに大きくなる。
それを一閃させると、邪神の首に食い込んだ。
「このまま首を落としてやる!」
食い込んだ鎌は、神経まで断ち切る。
しかし邪神は平然と立っていた。
「次は俺だ!」
シウンが飛び上がり、両手に熱を溜める。
そして邪神の首の付け根に振り下ろした。
大きな音が響き、首の付け根にヒビが入る。
拳の熱が中まで伝わって、邪神の体内から熱線が溢れた。
《・・・・・・・・・。》
しかしそれでも表情を変えない邪神。
小さくため息をつき、首を振った。
「今度は俺だ!」
ノリスは二丁を向け、無色透明の弾丸を連射する。
邪神の魔力はみるみる落ちていき、弱体化した。
「そんじゃアタシも。」
マナはリング状の光を放つ。
大きな光の輪が、邪神の頭を締め付ける。
「これで思い通りには動けないはず。」
邪神を操るのは無理でも、動きを止めるくらいなら出来る。
マナは「今のうちにやっちゃって!」と叫んだ。
「次ハ俺様ノ番ダ!」
ニーズホッグは体当たりをかまし、邪神をひっくり返らせる。
「コノママ臓物ヲ食イ千切ッテクレル!」
歯をカチカチ鳴らして、邪神の腹に噛みつく。
メキメキと音がなって、大きな歯が食い込んだ。
そしてずるずると内臓を引きずり出してしまった。
「マズイ肉ダ。口ノ中ガ腐リソウダ。」
噛み千切った内臓を吐き出し、また腹に齧りつく。
「俺ももう一発いかせてもらうぜ!」
コウは風の魔法を唱え、拳に竜巻を宿す。
「ケツから頭の先まで抉ってやるぜ!」
拳を脇に構え、邪神に突っ込む。
そしてお尻を目がけてアッパーを放った。
神器の力を宿した拳から、竜巻が放たれる。
邪神のお尻を貫通し、腹の中を通り、神経や肉をズタズタに切断しながら、頭のてっぺんまで飛び抜けた。
みんなの攻撃が決まって、邪神は見るも無残な姿になってしまった。
子供にいたぶられたバッタのように、脚がもげて身体が破れている。
しかしそれでも表情を変えない。
悲鳴の一つもあげずに笑っていた。
《あれだけ弱かった奴らが、ここまでになるなんて。
ゴキブリからネズミに昇格してあげるわ。》
「余裕かましてんじゃねえよ。お前はもうボロボロだぜ。」
コウはまた殴りかかる。
竜巻が駆け抜けて、邪神を痛めつけた。
「ダナエ!もうコイツに力は残ってねえ。トドメを刺してやれ!」
「う、うん・・・・。」
「どうした?」
「なんでもないわ。私も本気の一撃をお見舞いしてやる!」
そう言って手をかざすと、どこからか神器の弓矢が現れた。
「これで魂を貫く!二度と復活することのないようにね!」
弓矢を構え、邪神の胸を狙う。
「この矢に全てを乗せるわ!」
ダナエは雷の魔法を唱える。
空から大きな稲妻が走って、弓矢に宿った。
「まだまだ!もっと力を!」
ダナエは魔力を高める。
すると矢の形が変わっていった。
「おいダナエ、これって・・・・、」
「うん、神器の槍を矢として使うわ。」
「神器を同時に使うのか?」
「そうよ。神器の弓で、神器の槍を飛ばす。私のありったけの魔力を乗せてね。」
そう言って、今度は羽の形を変えた。
無色透明の羽が、オーロラの羽に変わる。
それを羽ばたくと、強力な磁場が発生した。
「邪神をS極に、神器をN極にして、お互いに引き合うようにする。
そうすれば威力も増すわ。」
「なるほどな。」
ダナエはしっかりと狙いを定める。
コウは「外すなよ」と言った。
「誰が外すもんか。」
ダナエの目に鋭い殺気が宿る。
そして邪神の胸を目がけて、神器の槍を放った。
磁場の力で、凄まじい勢いで飛んで行く。
槍は邪神の胸を貫き、魂そのものに刺さった。
「弓矢の神器は魂を射ることができる。そして槍の神器は傷口に魔力を集め、爆発させる。
これが決まれば、いかに邪神でも復活出来ないわ。」
ダナエの狙い通り、槍は魂に刺さった。
そして邪神の魔力が、魂に集まり始めた。
しかしそれだけでは終わらない。
神器に宿した雷の魔法が、魂を突き破るように炸裂した。
目も眩む閃光が飛び散り、バリバリと放電する。
その電気は、磁場の力によって邪神を包み込んだ。
シウンの熱線を火球に変えた時と同じように、雷を雷球に変えている。
雷球となった雷は、いつまでも邪神を苦しめた。
「神器の力と、進化して手にれた力。同時に使えばきっと勝てる。
でもこれでも倒せなかったら、その時はもう・・・・。」
ダナエの胸に不安が落ちる。
これで倒せるという自信がある。
しかしそれと同時に、「もしかしたら・・・」という不安もあった。
邪神はとにかくしぶとい。
怨念ともいうべきしぶとさが、邪神の最大の恐ろしさだった。
雷球は邪神を焼き続ける。
そして神器の槍も、魔力を集めて爆発させようとしている。
これが決まれば、邪神の魂は粉々に砕け散る。
いかに大きな力を持っていようとも、魂が砕かれたら立ち直ることは出来ない。
ダナエは願う。どうかこれで決まってくれと。
魂に刺さった槍が、邪神の体内にあるすべての魔力を集める。
大きな魔力が一点に集中して、邪神の魂は今にも弾け飛ぼうとしていた。
魔力を失った邪神の身体は、死んだ虫のように動かなくなる。
胸の辺りだけがピクピクと痙攣して、辛うじて生きているような状態だった。
やがて雷球も消え去って、邪神は真っ黒に焼かれていた。
そして胸から眩い閃光が走り、魂もとろも粉々に吹き飛んでしまった。
頭も脚も、それに羽も胴体も、砂塵のように宙を舞う。
「よっしゃ!」
「やったわ!」
ノリスとアドネは手を合わせて喜ぶ。
シウンとマナも嬉しそうに頷いた。
「俺たちの勝ちだ。」
「しぶとい奴だった。タダで戦うには割りの合わない化け物だわ。」
みんなホッとした様子で笑い合う。
そしてコウも「やったな」と笑った。
「ダナエ、これで邪神はお終いだ。」
「うん・・・・。」
「もうちょっと嬉しそうな顔しろよ!」
そう言ってバシバシと背中を叩いた。
「ねえコウ。」
「なんだ?」
「本当にこれで終わりなのかな?」
「終わりなのかなって・・・粉々に吹き飛んだじゃねえか。」
「そうだけど・・・・、」
「魂だって粉々のはずだぜ。生きてるわけねえって。」
「そう・・・だよね。私たちの勝ちなんだよね。」
「ああ。だからもっと喜べよ。」
みんなは嬉しそうにはしゃぐ。
コウは「やったな!」と言って、アドネたちの所へ行った。
「ほんとにこれで終わりだといいんだけど・・・・。」
ダナエは空を見上げる。
そこにはまだ分厚い雲があった。
「邪神を倒したのに、どうしてこの雲は晴れないの?
倒したなら消えるはずなのに・・・・・。」
未だに空を覆う暗い雲。
これが消えない限り、ダナエの胸は晴れなかった。
するとジル・フィンがやって来て「よくやった」と肩を叩いた。
「まさか本当に邪神を倒すなんて。」
「・・・・・・・・。」
「どうした?勝ったのに嬉しそうじゃないね。」
「だって・・・・まだ雲が晴れないから。」
「ああ、これか・・・。まあすぐには消えないかもしれないね。」
「邪神がいなくなったのに?」
「こ雲は邪神とは関係なしに存在してるんだろう。」
「だけどこれを生み出したのは邪神なんだよ?だったらこの雲だけ残ったりするかな?」
「ならダナエは、まだ邪神が生きていると言いたいのかい?」
「分からない。勝ったのは間違いないけど、でも本当に倒したのかどうかは分からないわ。」
「その根拠は?」
「だから分からないの。
雲が消えないせいだけじゃなくて、なんかこう・・・しっくりこないのよ。」
「それは今までアイツに苦しめられてきたからだよ。
きっとダナエの胸の中に、軽いトラウマがあるんだろう。」
「そうなのかな?」
「時間が経てば、きっと信じられるようになるさ。邪神はもういないんだってね。」
「そうだよね・・・もういないよね、きっと。」
「ああ、奴はもういない。」
ジル・フィンは優しく笑いかける。
ダナエは「もういない」と呟き、自分を納得させようとした。
しかしどうしても胸の中の不安は消えない。
この目で邪神が死ぬところを見たのに、それでも気持ちは晴れない。
空を覆う暗い雲のように、ダナエの胸はまだ沈んでいた。
《どうしてこんなに不安になるの?
魂が砕け散ったんだから、絶対に生きていないはずなのに。》
根拠のない不安は、解消することができない。
広い広い砂漠の中で、あるかどうかも分からないオアシスを探すように、ダナエの心はひたすら迷走していた。
喜ぶ仲間を見ても、その輪の中に入ることが出来ない。
暗い顔をしたまま、また空を見上げた。
「・・・・あれ?さっきより暗くなってる。」
グレーに染まっていた空が、だんだんと黒に近づいている。
まるで墨汁をぶちまけたかのように、黒い染みが広がっているのだ。
「ねえジル・フィン、空がおかしなことに・・・・、」
そう言って振り向いた時、そこには誰もいなかった。
「あれ?ジル・フィン?」
周りを見渡すと、他の仲間もいなくなっている。
それどころか箱船さえ消えていた。
「そんな・・・・なんでみんないなくなってるの?」
いったいどこへ行ってしまったのだろうと、辺りを探す。
その時、空から真っ黒な染みが落ちてきた。
「これは・・・・、」
空を見上げ、思わず悲鳴を上げる。
「いやあ!」
暗い雲の中に、真っ黒な渦が広がっていた。
そこからポタポタと黒い染みが降っていたのだ。
「なんで!?いったいどうなってるのよ!」
降り注ぐ黒い染みに、ダナエは慌てて逃げ出した。
すると目の前も真っ黒に染まり、横も後ろも、そして足元さえも黒く滲んでいった。
「なによこれ・・・・どうなってるの?」
ダナエ以外の全てが、真っ黒に塗り潰されようとしている。
そして・・・やがてはダナエ自身も黒く染まり始めた。
「いやあ!」
指の先から黒く染まり、しだいに肘の辺りまで上ってくる。
ダナエは羽をアゲハチョウに変えて、金色の鱗粉を振り撒いた。
「なんだか分からないけど、おかしな力が働いているんだわ。
だったらこの鱗粉で消し去ってやる!」
バタバタと羽ばたき、たくさんの鱗粉を飛ばす。
しかし真っ黒な染みに侵されて、たちまち消えてしまった。
「そんな・・・・鱗粉が効かないなんて。」
すでに肩まで黒く染まり始めている。
このままでは完全に真っ黒になり、やがては周りの景色に滲んでいきそうな気がした。
「どうにかしなきゃ!」
頭を捻り、ピンチを切り抜ける方法を考える。
「この黒い染みは、きっと邪悪なものだわ・・・・。
だったらこの方法なら防げるかも。」
ダナエは槍を掲げ、ある精霊を呼び寄せる。
それは蛾の精霊だった。
「お願い!私を悪魔の姿に!」
蛾の精霊はダナエと融合し、その姿を変えさせる。
天使のような輝きは消え去り、代わりに悪魔のような姿に変貌した。
「・・・・助かった。」
悪魔の形態に進化することで、どうにか黒い染みを防ぐことが出来た。
「邪悪なものなら、こっちも悪魔になれば防げるわ。」
嫌っていた悪魔の姿だが、案外役に立つと微笑んだ。
「さて、みんなはどこに行ったんだろう?ていうかこの黒い染みは何?」
周りは全て黒一色。しかも渦潮のようにうねっている。
「これは空から降ってきたものだわ。ならあの暗い雲が関係してるのかしら?」
ダナエはとりあえずこの場から離れた。
どこか遠くまで飛べば、この黒い染みが晴れるのではないかと思ったのだ。
しかしいくらとんでも黒いまま。
星のない夜の中に、一人投げ出されたような気分だった。
「嫌な感じ。まるで虚無の世界を漂ってるようだわ。」
何の光もない世界は、不安と同時に、なぜか安心をもたらした。
「不思議なものね。真っ暗な方が落ち着くってこともあるんだから。
でもこの黒い染みからは、やっぱり邪悪なものを感じる。」
それからもしばらく飛び回ったが、やはり真っ黒なままだった。
「どうしよう・・・どうやったらここから出られるんだろう?
悪魔の姿になっちゃったから、重力魔法で空間に穴は空けられないし・・・・困ったわ。」
途方に暮れるダナエ。
その時、背後に嫌な気配を感じた。
「今・・・・確かにアイツの気配が・・・・。」
振り向いても誰もいない。
すると今度は足元から気配がした。
「また!」
慌てて飛び退き、「邪神ね!」と叫ぶ。
「あんたやっぱり生きてたのね!」
目を吊り上げて、ギュッと槍を構える。
「これはあんたのせいでしょ!いったいみんなをどこへやったの!?」
今度は頭上から気配を感じて、「たあ!」と槍を突いた。
しかし何の手応えもなかった。
「隠れてないで出て来なさい!」
邪神は気配だけをちらつかせる。
怒ったダナエは「それならこっちから見つけてやるわ」と言った。
大きな蛾の羽を羽ばたき、灰色の鱗粉を飛ばした。
それは嵐のように吹き荒れて、黒い景色を覆っていった。

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